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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025071538
(43)【公開日】2025-05-08
(54)【発明の名称】変性多糖類
(51)【国際特許分類】
   C08B 3/12 20060101AFI20250428BHJP
   C08B 31/04 20060101ALI20250428BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20250428BHJP
【FI】
C08B3/12
C08B31/04
C11D7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181788
(22)【出願日】2023-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 久晶
【テーマコード(参考)】
4C090
4H003
【Fターム(参考)】
4C090AA02
4C090BA15
4C090BA24
4C090BB12
4C090BB52
4C090BB97
4C090BD36
4C090CA38
4C090DA31
4H003DA01
4H003DC02
4H003EB41
4H003FA21
(57)【要約】
【課題】 再汚染防止能に優れる変性多糖類を提供する。
【解決手段】 多糖類が有する水酸基が、2以上のカルボキシル基を有するカルボン酸又はその塩によりエステル化(置換)された変性多糖類であって、該変性多糖類は、単糖単位当たりの該カルボン酸又はその塩による置換度(DS)が1以上である、変性多糖類。
【選択図】なし



【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類が有する水酸基が、2以上のカルボキシル基を有するカルボン酸又はその塩によりエステル化(置換)された変性多糖類であって、
該変性多糖類は、単糖単位当たりの該カルボン酸又はその塩による置換度(DS)が1以上である、変性多糖類。
【請求項2】
前記多糖類が、デンプン及び/又はセルロースである、請求項1に記載の変性多糖類。
【請求項3】
前記カルボン酸は、ジカルボン酸の無水物である、請求項1又は2に記載の変性多糖類。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の変性多糖類を含む洗剤組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性多糖類に関する。より詳しくは、洗剤等に有用な変性多糖類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料類に用いられる洗剤には、洗剤の洗浄効果を向上させることを目的として、ゼオライト、ポリエチレングリコールなどの洗剤ビルダー(洗剤助剤)を配合することが行われている。
上記の各種洗剤ビルダーに加えて、近年では、重合体が洗剤ビルダーとして洗剤組成物に配合されている。例えば、ポリカルボン酸系重合体は、カルボキシル基又はその塩を分子内に有する重合体であって、無機粒子等の分散性能に優れるため、洗剤用途に好適に用いられている。
【0003】
しかし、ポリカルボン酸系重合体等の重合体は、生分解性が低く、環境への影響において課題があった。
近年、環境負荷の低減の観点から、多糖類等の生分解性に優れる原料を用いる技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、二塩基性有機酸無水物の存在下でデキストリンまたは薄い沸騰デンプンを加熱することを含む、低置換度(DS)デキストリンおよびデンプンエステルの製造方法が開示されている。
特許文献2には、原料グルコースポリマーと多価カルボン酸の混合水溶液を、乾燥して均一な粉末とし、加熱処理を行うことを特徴とする、イオン交換能力を有するグルコースポリマーの製造が開示されている。
特許文献3には、(i)置換の程度が10%~80%であり、(ii)平均分子量が15,000~200,000g/モルである基材デンプンから調製される、無水物変性デンプンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3732207号明細書
【特許文献2】特開2004-307768号公報
【特許文献3】特表2022-548022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり多糖類とカルボン酸とを用いて得られる変性多糖類が種々開発されている。しかし、従来の変性多糖類は、再汚染防止能において充分ではなかった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、再汚染防止能に優れる変性多糖類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、変性多糖類について種々検討したところ、2以上のカルボキシル基を有するカルボン酸又はその塩により多糖類が有する水酸基をエステル化(置換)して得られた、単糖単位当たりの該カルボン酸又はその塩による置換度(DS)が1以上である変性多糖類が、再汚染防止能に優れることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
本発明は、以下の変性多糖類等を包含する。
〔1〕多糖類が有する水酸基が、2以上のカルボキシル基を有するカルボン酸又はその塩によりエステル化(置換)された変性多糖類であって、該変性多糖類は、単糖単位当たりの該カルボン酸又はその塩による置換度(DS)が1以上である、変性多糖類。
〔2〕上記多糖類が、デンプン及び/又はセルロースである、上記〔1〕に記載の変性多糖類。
〔3〕上記カルボン酸は、ジカルボン酸の無水物である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の変性多糖類。
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の変性多糖類を含む洗剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の変性多糖類は、上述の構成よりなり、再汚染防止能及び生分解性に優れるため、洗剤等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0011】
1.変性多糖類
本発明の変性多糖類は、多糖類が有する水酸基が、2以上のカルボキシル基を有するカルボン酸又はその塩(以下、多価カルボン酸類ともいう)によりエステル化(置換)された変性多糖類であって、該変性多糖類は、単糖単位当たりの該カルボン酸又はその塩による置換度(DS)が1以上である。
上記置換度が1以上であることにより、変性多糖類中のカルボキシル基又はその塩の基の量が充分なものとなり、汚れに対して優れた分散性を発揮し、再汚染防止能に優れることとなる。
また、多価カルボン酸類を用いてエステル化により多糖類を変性することで、変性多糖類は生分解性に優れるものとなる。
変性多糖類の置換度として、再汚染防止能の観点からは、好ましくは1.5~3であり、より好ましくは2~3である。
変性多糖類の置換度として、生分解性の観点からは、好ましくは1.2~3であり、より好ましくは1.5~2.5である。
上記置換度は、実施例に記載の方法により算出することができる。
【0012】
上記変性多糖類の重量平均分子量は、特に制限されないが、5000~100000であることが好ましい。より好ましくは8000~80000であり、更に好ましくは10000~50000である。
変性多糖類の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0013】
上記多糖類のエステル化に用いられるカルボン酸は、1分子中に2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸であれば特に制限されないが、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アコニット酸、クエン酸、トリメリット酸等のトリカルボン酸;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸等やこれらの無水物やこれらに置換基等が結合した誘導体等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
上記多価カルボン酸の塩としては、特に制限されないが、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン、トリエチルアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。
【0015】
上記多価カルボン酸の誘導体における置換基としては特に制限されないが、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。
【0016】
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基(アミル基)、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、i-プロピル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、i-アミル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、t-アミル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-エチル-2-メチルプロピル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、t-オクチル基、分岐したノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、イコシル基等の脂肪族アルキル基;シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基(C7)、アダマンチル基(C10)、シクロペンチルエチル基等の脂環式アルキル基等が挙げられる。
【0017】
上記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
上記アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基、イコシニル基等が挙げられる。
上記アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o-,m-若しくはp-トリル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基及びピレニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0018】
上記多価カルボン酸の誘導体における置換基として好ましくは炭素数1~20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~10のアルキル基である。
【0019】
上記多価カルボン酸として好ましくは、脂肪族ジカルボン酸及びその無水物及びこれらの誘導体であり、より好ましくはコハク酸、マレイン酸、これらの無水物及びこれらに炭素数1~20のアルキル基が結合した誘導体であり、更に好ましくはコハク酸無水物である。
上記多価カルボン酸が無水物である場合、エステル化の際に架橋反応が進行することをより充分に抑制することができる。
上記多価カルボン酸の炭素数は特に制限されないが、2~12であることが好ましい。より好ましくは4~8であり、更に好ましくは4~6である。
上記多価カルボン酸が置換基を有する場合、上記多価カルボン酸の炭素数には置換基の炭素数も含まれるものとする。
【0020】
上記コハク酸の誘導体としては、例えば、メチルコハク酸無水物、エチルコハク酸無水物、プロピルコハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、ペンチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、ヘプチルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、トリデシルコハク酸無水物、テトラデシルコハク酸無水物、ペンタデシルコハク酸無水物、ヘキサデシルコハク酸無水物、ヘプタデシルコハク酸無水物、オクタデシルコハク酸無水物、イソオクタデシルコハク酸無水物等のアルキレン-ジカルボン酸無水物;プロペニルコハク酸無水物、ブテニルコハク酸無水物、ペンテニルコハク酸無水物、ヘキセニルコハク酸無水物、ヘプテニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物等のアルケニレン-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0021】
本発明の変性多糖類の原料の多糖類としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース等の単糖類を構成単位として有するものであれば特に制限されないが、デンプン、セルロース(β-1,4-グルカン)、グリコーゲン、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、デキストラン、デキストリン、グルコマンナン、β-1,3-グルカン、α-1,2-グルカン、α-1,3-グルカン等が挙げられる。
上記多糖類を構成する単糖類としては、炭素数5~7のアルドースが好ましく、より好ましくは炭素数6のアルドースであり、更に好ましくはグルコースである。
上記多糖類は、植物資源から単離される天然多糖類あっても、合成多糖類であってもよい。
天然のデンプンとしては、例えば、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ(コーン)、米、タピオカ、サゴ、大麦、エンドウ、キノア、キャッサバ等の植物から得られるものが挙げられる。
【0022】
上記多糖類としては、デンプン、セルロースが好ましく、より好ましくはデンプンである。デンプンは、アミロース及び/又はアミロペクチンを含むものであればよく、酸処理等により可溶化したものであってもよい。
【0023】
上記多糖類の平均分子量は、特に制限されないが、2000~100000であることが好ましい。より好ましくは2000~50000であり、更に好ましくは2000~10000である。
多糖類の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0024】
上記変性多糖類は、原料の多糖類が有する水酸基が上記多価カルボン酸類によりエステル化(置換)された構造を有するものであって、単糖単位当たりの該カルボン酸又はその塩による置換度(DS)が1以上であればよく、エステル化されていない水酸基を有していてもよく、該水酸基に多価カルボン酸類以外の化合物が結合していてもよい。
上記変性多糖類は、多価カルボン酸類による置換度が1以上であれば、多価カルボン酸類以外の化合物による水酸基の置換度は特に制限されないが、2以下であることが好ましい。
【0025】
上記多糖類が有する水酸基に結合してもよい、多価カルボン酸類以外の化合物としては特に制限されず、水酸基と反応できる官能基を有するものであればよい。
水酸基と反応できる官能基としては、カルボキシル基又はその塩、エポキシ基、水酸基等が挙げられる。好ましくはカルボキシル基又はその塩、エポキシ基である。
【0026】
上記多価カルボン酸類以外の化合物は、水酸基と反応できる官能基を有するものであればよいが、疎水性基を有するものが好ましい。
疎水性基としては、例えば、上述の炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。
【0027】
多価カルボン酸類以外の化合物として好ましくは、一価のカルボン酸類;エポキシ化合物;アルコール類等が挙げられる。
【0028】
上記一価のカルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸の飽和脂肪酸類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸(パウリン酸)、エルカ酸、ネルボン酸等のモノ不飽和脂肪酸;リノール酸、エイコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸;α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸等のトリ不飽和脂肪酸;ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸等のテトラ不飽和脂肪酸;ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸等のペンタ不飽和脂肪酸等及びこれらの塩が挙げられる。
【0029】
上記エポキシ化合物としては、例えば、プロピレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシペンタン、1,3-ブタジエンモノオキシド、グリシジルメチルエーテル、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert-ブチルグリシジルエーテル、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシヘキサン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、グリシジルメタクリレート、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、3,4-エポキシテトラヒドロフラン、2,3-エポキシノルボルネン等が挙げられる。
【0030】
上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数1~20の脂肪族アルコール、シクロヘキサノール等の炭素数3~20の脂環族アルコール、(メタ)アリルアルコール、3-ブテン-1-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オールなどの炭素数3~20の不飽和アルコールなどが挙げられる。
【0031】
2.変性多糖類の製造方法
本発明の変性多糖類の製造方法は、特に制限されず、原料の多糖類と多価カルボン酸若しくはその塩又はその無水物とを反応させて得ることができる。
本発明はまた、多糖類と多価カルボン酸若しくはその塩又はその無水物とを反応させる工程を有する変性多糖類の製造方法でもある。
原料の多糖類及び多価カルボン酸若しくはその塩又はその無水物の具体例及び好ましい形態は上述のとおりである。
【0032】
上記反応工程において、多価カルボン酸類の使用量は特に制限されず、所望の置換度を考慮して決定すればよいが、多糖類の単糖単位当たりの多価カルボン酸類の使用量(モル比)は、1.1~20であることが好ましい。より好ましくは1.5~15であり、更に好ましくは1.8~10であり、特に好ましくは2~8である。
【0033】
上記多糖類と多価カルボン酸類との反応工程において、塩基又は酸等の触媒を用いてもよい。上記反応工程において塩基触媒を用いることが好ましい。
塩基触媒としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等である。好ましくはアルカリ金属の炭酸塩であり、より好ましくは炭酸カリウムである。
【0034】
上記多糖類と多価カルボン酸類との反応工程において、溶媒を用いることが好ましい。
溶媒としては特に制限されないが、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール類;n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の脂肪族または芳香族ハロゲン化物;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;N-メチル-2-ピロリドン等のN-アルキルラクタム類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のN,N-ジアルキルアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホラン類などが挙げられる。
溶媒として好ましくは、水、エーテル類、スルホキシド類であり、より好ましくは水、アニソール、ジメチルスルホキシドである。
【0035】
3.変性多糖類の用途
本発明の変性多糖類は、洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤、分散剤、繊維処理剤、スケール防止剤(スケール抑制剤)、セメント添加剤、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー等に好適に用いることができる。中でも、洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤、分散剤により好適に用いることができ、更に好ましくは、衣料用洗剤用途である。
【0036】
本発明は更に、本発明の変性多糖類、又は、本発明の製造方法により製造されてなる変性多糖類を必須成分とする洗剤用ビルダー、洗剤、洗剤組成物、水処理剤又は分散剤でもある。
本発明の洗剤、洗剤組成物は、固形であっても、液体であってもよい。また食器用のものであっても、洗濯用のものであってもよいが、洗濯用のものが好ましい。
【0037】
本発明の洗剤、洗剤組成物における、本発明の変性多糖類の含有割合は、洗剤又は洗浄組成物の総量に対して、0.1質量%~15質量%であることが好ましい。より好ましくは0.3質量%~10質量%、更に好ましくは、0.5質量%~5質量%である。
【0038】
本発明の洗剤、洗剤組成物は、本発明の変性多糖類以外に溶剤、界面活性剤、洗浄補助添加剤、カプセル化剤等のその他の成分の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
洗浄補助添加剤としては、ビルダー、界面活性剤又は増粘剤、泥汚れ除去/再付着防止剤、ポリマー汚れ遊離剤、ポリマー分散剤、ポリマー油脂クリーニング剤、酵素、酵素安定化系、漂白化合物、漂白剤、漂白活性剤、漂白触媒、増白剤、染料、色相剤、移染防止剤、キレート剤、抑泡剤、柔軟剤、香料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【実施例0039】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0040】
<変性物の重量平均分子量の測定条件>
装置:Waters社製 Alliance HPLC
検出器:Waters社製 2414 RI Detector
カラム:株式会社レゾナック製 OHpak SB-806M HQ×2、OHpak SB-G 6B
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
溶離液:100mMリン酸バッファ/アセトニトリル=92/8(w/w)
検量線:American Polymer Standards社製 ポリアクリル酸標準
【0041】
<実施例1>
ガラス製反応容器にジメチルスルホキシド14.32g、無水コハク酸2.71g、アニソール0.59g、炭酸カリウム0.19gを仕込み、均一に溶解するまで室温で撹拌した。次いで、溶性でんぷん(富士フイルム和光純薬製)2.20gを反応容器に添加し、室温で撹拌した。42時間後、撹拌を停止し、反応後の懸濁液をエタノール300mLに滴下して生成物を沈殿させた。続いてろ過により沈殿物を回収し、少量のエタノールで沈殿物を洗浄した。さらに、沈殿物を60℃で3時間減圧乾燥し、変性物(1)を得た。酸価測定から見積もった変性物(1)の置換度は1.34であった。また、変性物の重量平均分子量は22000であった。
【0042】
<実施例2>
ガラス製反応容器にジメチルスルホキシド11.26g、無水コハク酸6.40g、アニソール0.46g、炭酸カリウム0.15gを仕込み、均一に溶解するまで室温で撹拌した。次いで、溶性でんぷん1.73gを反応容器に添加し、室温で撹拌した。120時間後、撹拌を停止し、反応後の懸濁液をエタノール300mLに滴下して生成物を沈殿させた。続いてろ過により沈殿物を回収し、少量のエタノールで沈殿物を洗浄した。さらに、沈殿物を60℃で3時間減圧乾燥し、変性物(2)を得た。酸価測定から見積もった変性物(2)の置換度は2.37であった。また、変性物の重量平均分子量は33100であった。
【0043】
<置換度(DS)>
1)酸価測定
100mLビーカーに変性物を0.20g採取し、純水/アセトニトリル(=50/50vol%)60mLに溶解した。続いて自動滴定装置(HIRANUMA製 COM-A19)を用いた中和滴定により変性物の酸価を測定した。
2)置換度
酸価:AV(mgKOH/g)は、試料1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHのmg数である。コハク酸変性したでんぷんのAVは、多糖類の置換度をx、水酸化カリウムの分子量を56、無水コハク酸の分子量を100、グルコース構造単位の分子量を162として、下記のように記載できる。
AV=1000×56×x/(162+100×x)
式を変形すると、
x=162×AV/(1000×56-100×AV)
上記1)酸価測定において、中和滴定により求めた各試料の酸価を、式中のAVに代入することで、置換度xを算出した。
【0044】
<再汚染防止能の測定>
下記の洗浄工程、すすぎ工程、乾燥工程をこの順序で行う洗濯処理を行い、布への再汚染防止能を測定した。
洗浄工程:
被洗物として、下記の綿布2種類を用いた。
綿布(1):再汚染判定布として綿メリヤス(谷頭商店製)5cm×5cmを5枚用意した。
綿布(2):Testfabrics社より入手した綿布を綿布(1)と合わせて30gになるように用意した。
炭酸ナトリウム4.37g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル4.16g、硫酸ナトリウム2.06g、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(16%)11.61g、塩化ナトリウム0.65g、亜硫酸ナトリウム0.08g、純水977.07gの洗剤液を調製した。また、炭酸水素ナトリウム15.44g、0.1N塩酸100g、純水884.6gからなる炭酸水素ナトリウム水溶液、および塩化カルシウム二水和物59.00g、塩化マグネシウム六水和物27.20g、純水913.8gから3000dH硬水を調製した。さらに、製造例により得られた変性物の1質量%水溶液を調製した。
ポリ容器に純水4055.46g、上記の3000dH硬水5.76g、洗剤液172.8gの混合溶液を調製し、Tergot-o-meter(大栄科学社製、製品名:TM-4)用の1Lポットに882.1gずつに分け入れた。各ポットに炭酸水素ナトリウム水溶液4.5g、合成ゼオライト0.18g、変性物の1質量%水溶液8.24g、純水5.00gを加えて撹拌した。
その後、並漉赤土を1.8g加え撹拌したのち、綿布(1)及び(2)を投入し、撹拌速度120rpm、25℃で10分間洗浄を行った。
すすぎ工程:
洗浄工程後の被洗物を、1.5分間脱水した後、別途調製した25℃の4dH硬水900mLを入れ、120rpm、25℃で3分間すすいだ。この操作(脱水およびすすぎ)を2回繰り返した。
乾燥工程:
すすぎ工程後の被洗物を1.5分間脱水した後、綿布(1)のみ取り出し、綿布で挟み、アイロンで乾燥した。
上記洗濯処理を行った綿布(1)及び洗濯処理前の綿布(1)について、反射率計(分光式色差計、日本電色工業株式会社製、製品名:SE6000)を用い、反射率(Z値)を測定し、下記式より再汚染防止率を求めた。
再汚染防止率=(洗濯処理を行った後の綿布(1)のZ値)/(洗濯処理前の綿布(1)のZ値)×100
【0045】
<生分解性試験>
実施例により得られた変性物の生分解性試験をOECD301Fに則り実施した。
培地の作製:
培地原液A~D液を下記方法により調製した。
A液;リン酸二水素カリウム(KHPO)0.850g、リン酸水素二カリウム(KHPO)2.175g、リン酸水素二ナトリウム・12水和物(NaHPO・12HO)6.7217g、塩化アンモニウム(NHCl)0.050gを50mlサンプル瓶に計量し、適量の水に溶解して100mlメスフラスコに移した後、標線まで水を加えた。
B液;塩化カルシウム・2水和物(CaCl・2HO)3.640gを適量の水に溶解して100mlメスフラスコに移した後、標線まで水を加えた。
C液;硫酸マグネシウム・7水和物(MgSO・7HO)2.250gを適量の水に溶解して100mlメスフラスコに移した後、標線まで水を加えた。
D液;塩化鉄(III)・6水和物(FeCl・6HO)0.025gを適量の水に溶解して100mlメスフラスコに移した後、標線まで水を加えた。
上記の培地原液A~Dを25℃に調温し、1LメスフラスコにAをホールピペットで10ml入れ、水およそ800mlで希釈した。その後、B、C、Dをホールピペットで各1mlずつ加え、25℃に調温した水で標線まで希釈した。上記培地を試験に必要な量に合わせて複数個分を作製した。作製した培地を5Lビーカーに移して混合し、撹拌しながら1時間以上バブリングを行った。
汚泥溶液の作製:
生分解性試験に使用する汚泥は南吹田下水処理場から入手した。まず、下記の方法で入手した汚泥の濃度を測定した。入手した汚泥を撹拌しながらバブリングを行い、ホールピペットを用いて5mlとり、ろ紙を用いて吸引ろ過した。このようにして汚泥を採取したろ紙を5枚用意し、乾燥機にて105℃で1時間乾燥させた後、その5枚の平均の重量減少によって汚泥の濃度を算出した。この汚泥を上記で作製した培地によって希釈し、1000ppmの汚泥溶液を作製した。
変性物水溶液の作製:
実施例により得られた変性物を純水で希釈し、2質量%の変性物水溶液を得た。また標準物質として、安息香酸ナトリウムを純水で希釈し、2質量%の安息香酸ナトリウム水溶液を得た。
BOD試験:
BODの測定には圧力センサー式BOD測定器を用いた。ふらん瓶に上記で調製した培地を144.75gはかりとった後、2%変性物水溶液0.75gを加えた。なお、ブランク測定用には純水を0.75g、標準物質測定用には2%安息香酸ナトリウム水溶液0.75gを加えた。その後溶液のpHを測定し、溶液のpHの値が7.4±0.2となるように、0.1M塩酸水溶液でpHの調整を行った。その後、1000ppm汚泥溶液を4.5ml入れて試験液とした。ふらん瓶に撹拌子を入れた後、CO2吸収剤ホルダーにCO2吸収剤(ヤバシライム)を1.8g入れて、セットしBODセンサーを取り付けた。BODセンサーを取り付けた、ふらん瓶を22℃の恒温槽中で撹拌し、圧力センサーからBODの値を算出した。
分解率の算出:
変性物の理論的酸素要求量(ppm)を算出し、ブランク測定のBOD値と変性物を用いて測定したBOD値の差から分解率を算出した。試験開始28日後の分解率を生分解率として以下の数式により算出した。
分解率(%)=(変性物由来の生物化学的酸素消費量)/(変性物の理論酸素要求量)×100
【0046】
【表1】