(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007160
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ゴム組成物および免震装置
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20250109BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20250109BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20250109BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/34
F16F15/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108371
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊本 恒史
(72)【発明者】
【氏名】福田 滋夫
【テーマコード(参考)】
3J048
4J002
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA08
3J048DA01
3J048EA38
4J002AC011
4J002AC061
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】高荷重に耐えつつ、水平方向の柔軟性を維持できるゴム組成物を提供すること。
【解決手段】ゴム組成物は、ゴム材と、ゴム材に分散されたフィラーとを含む。フィラーは二軸配向性を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材と、
前記ゴム材に分散されたフィラーと、を含み、
前記フィラーが二軸配向性を有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のゴム組成物において、
前記フィラーが板状または薄片状を呈することを特徴とするゴム組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のゴム組成物において、
前記フィラーの含有量が40~100PHRの範囲内であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の前記ゴム組成物で板状に形成された複数のゴム板と、
前記複数のゴム板の間に積層された複数の硬質板と、
積層された前記複数のゴム板および前記複数の硬質板を、前記複数のゴム板および前記複数の硬質板の積層方向から挟んで支持する一対の支持板と、
を有する、免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物および免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震発生時における振動が建築物に伝わることを抑制するための免震装置の研究が行われている。このような免震装置では、エネルギーを効率よく吸収するゴム成分が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ゴム成分と、フィラーとを有するゴム組成物が記載されている。フィラーは、扁平形状の有機変性フィラーであり、ゴム成分に添加することで、ゴム組成物の弾性率に適度な異方性を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ゴム組成物を使用した免震装置は、鉛直方向において荷重を受けながら使用されるため、高荷重に耐えつつ、水平方向の柔らかさを維持する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載のゴム組成物は、圧縮応力と、水平方向におけるせん断による弾性率とは、改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、高荷重に耐えつつ、水平方向の柔軟性を維持できるゴム組成物および免震装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
ゴム材と、
前記ゴム材に分散されたフィラーと、を含み、
前記フィラーが二軸配向性を有することを特徴とするゴム組成物が提供される。
【0008】
上記課題を解決するため本発明の他の態様によれば、
本発明の前記ゴム組成物で板状に形成された複数のゴム板と、
前記複数のゴム板の間に積層された複数の硬質板と、
積層された前記複数のゴム板および前記複数の硬質板を、前記複数のゴム板および前記複数の硬質板の積層方向から挟んで支持する一対の支持板と、
を有する、免震装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム組成物によれば、高荷重に耐えつつ、水平方向の柔軟性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1A、Bは、免震装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、せん断応力と、圧縮応力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態のゴム組成物および免震装置について、添付した図面を参照して、詳細に説明する。本発明のゴム組成物および免震装置は、以下に示す実施の形態に限定されない。
【0012】
(免震装置の構成)
図1Aは、免震装置10の平面図であり、
図1Bは、
図1Aに示されるA-A線の断面図である。
図2は、免震装置10の部分拡大断面図である。なお、添付した各図面は、いずれも模式図であり、実際の寸法を示すものではない。
【0013】
図1A、Bおよび
図2に示されるように、免震装置10は、複数のゴム板20と、複数の硬質板30と、一対の支持板40(連結板)とを有する。なお、本実施の形態の免震装置10は、上記の構成に加え、一対のフランジ板50と、保護ゴム層60と、を有する。なお、本実施の形態では、複数のゴム板20および複数の硬質板30により積層体70が構成されている。
【0014】
ゴム板20は、ゴム組成物により形成されている。ゴム組成物は、ゴム材と、フィラーとを含む。
【0015】
ゴム材としては、天然ゴム(NR)が使用される。天然ゴムの例には、SMR-CV60、STR-CV60、SVR-CV60、RSS#1、RSS#3など、各種のグレードのものが含まれる。また、天然ゴム以外の各種合成ゴムを、本発明の効果を阻害しない範囲で、天然ゴムと併用できる。合成ゴムの例には、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM)などのオレフィン系ゴムが含まれる。合成ゴムは、耐久性の点から、ジエン系ゴムが好ましい。
【0016】
ゴム材に含まれる天然ゴムの含有量は、天然ゴムがゴム成分全体の50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0017】
フィラーについては一般に、粒子形状に合わせてモデル的に分類化されており、そのモデル的分類を表1に示す。
【0018】
【0019】
本実施の形態にかかるフィラーは二軸配向性を有するものであり、板状または薄片状を呈している。
板状または薄片状のフィラーの例には、カオリナイト、塩基性炭酸マグネシウム、セリサイト、タルク、マイカなどが含まれる。
【0020】
当該フィラーの含有量は特に限定されないが、40~100PHR(Per Hundred Rubber)の範囲内が好ましく、60~100PHRの範囲内がより好ましい。
【0021】
硬質板30は、複数のゴム板20の間に配置されている。硬質板30の種類は、鋼板であれば特に限定されない。硬質板30の例には、亜鉛をめっきした亜鉛めっき鋼板、スズをめっきした錫めっき鋼板(ブリキ)、クロム酸処理を施したティンフリースチールが含まれる。硬質板30の厚みは、鉛直荷重と水平方向の変形の観点から、1.0mm以上が好ましい。
【0022】
支持板40は、積層体70を複数のゴム板20および複数の硬質板30の積層方向から挟み込む。支持板40は、フランジ板50を固定するための複数の第1貫通孔41が配置されている。複数の第1貫通孔41の数は、特に限定されず、適宜設定される。支持板40は、鋼板であれば特に限定されず、硬質板30と同様の材料を使用できる。支持板40の厚みは、硬質板30よりも厚い方が好ましい。支持板40の厚みは、鉛直荷重に対する耐久性と、水平方向の変形を許容する観点から、6.0mm以上が好ましい。
【0023】
フランジ板50は、支持板40を積層方向から支持し、支持板40および建物と、支持板40および建物の基礎の間に配置されている。フランジ板50には、支持板40に対して固定するための複数の第2貫通孔51が配置されている。第2貫通孔51の数は、第1貫通孔41の数と同じである。また、複数の第2貫通孔51は、複数の第1貫通孔41に対応した位置に配置されている。また、フランジ板50の外縁部分には、建物および建物の基礎に対して固定するための第3貫通孔52が配置されている。第3貫通孔52の数は、特に限定されない。第3貫通孔52の数は、適宜設定できる。フランジ板50は、鋼板である限り特に限定されず、硬質板30および支持板40と同様の材料を使用できる。フランジ板50の厚みは、使用する硬質板30よりも厚い方が好ましい。フランジ板50の厚みは、鉛直荷重に対する耐久性と、水平方向の変形を許容する観点から、10.0mm以上が好ましい。
【0024】
保護ゴム層60は、ゴム板20および硬質板30が外部環境に接触することを防止することで、免震装置10の耐久性を向上させる。保護ゴム層60に使用するゴム材は、防水性、硬質板30との密着性や追従性などを考慮して適宜選択すればよい。ゴム材は、ゴム板として使用可能な天然ゴムや、ジエン系合成ゴム、あるいはこれらに樹脂などを添加したゴム組成物を使用できる。ジエン系合成ゴムの例には、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)などの合成ゴム材料が含まれる。ゴム材は、耐候性の観点から、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)が好ましい。
【実施例0025】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0026】
[ゴム組成物の作製]
ゴム材として、天然ゴムであるSVR-CV60と、イソプレンゴムであるLIR30(株式会社クラレ)とを使用した。
カーボンブラックとして、シーストSP(東海カーボン株式会社)を使用した。
球状フィラーとして、ホワイトンSSB赤(白石カルシウム株式会社)と使用した。
板状または薄片状フィラーとして、トランスリンククレー37(BASF)と使用した。
共架橋剤としてバルノックPM(大内新興化学工業株式会社)を使用した。
加硫促進剤としてノクセラーNS(大内新興化学工業株式会社)を使用した。
【0027】
各材料を表2に示す組成比となるように配合し、バンバリーミキサーを用いて均一に混練して各ゴム組成物を得た。
【0028】
ゴム組成物の各材料を表2に示す。
【0029】
【0030】
[評価]
(水平方向のせん断応力)
水平方向のせん断応力は、せん断試験片(縦25mm×横25mm×厚さ3mmのゴム板を、2枚の縦25mm×横85mm×厚さ3mmの鋼板で挟み込んだ試験片)をひずませた場合の応力とした。せん断速度は、20mm/分とした。
【0031】
(垂直方向の圧縮応力)
垂直方向の圧縮応力は、圧縮永久ひずみ試験片(JIS K 6262に準じた大形試験片)を垂直方向に圧縮したときの応力とした。圧縮速度は、10mm/分とした。
【0032】
[結果]
図3は、せん断応力と、圧縮応力との関係を示すグラフである。
図3の横軸は、せん断応力を示しており、縦軸は、圧縮応力を示している。
図3の黒色で塗りつぶしたシンボルは、実施例を示しており、白抜きのシンボルは、比較例を示している。丸のシンボルは、ひずみが10%の場合の結果を示しており、三角のシンボルは、ひずみが20%の場合の結果を示しており、四角のシンボルは、ひずみが25%の場合の結果を示している。
【0033】
図3に示されるように、板状または薄片状フィラーは、球状フィラーに比べて圧縮応力への補強が大きいことがわかる。また、ひずみが大きいほど、せん断応力および圧縮応力に対するフィラーの効果が大きくなることがわかる。ひずみが25%以上の領域では、フィラーが40PHR以上含まれることで、板状または薄片状フィラーが効果を顕著に発揮できることがわかる。また、ひずみが25%の場合、板状または薄片状フィラーは、球状フィラーに比べて、圧縮応力が高くなることがわかる。
【0034】
(効果)
以上のように、本実施の形態のゴム組成物では、フィラーが二軸配向性を有しているため、高荷重に耐えつつ、水平方向の柔軟性を維持できる。