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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007162
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】カテーテルシャフトおよびカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/14 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61M25/14 512
A61M25/14 516
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108374
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】森 謙二
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 卓也
(72)【発明者】
【氏名】神山 洋輝
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267BB09
4C267BB12
4C267BB40
4C267CC04
(57)【要約】
【課題】ワーキングチャンネルに対する処置具の挿抜しやすさを向上させる。
【解決手段】カテーテルシャフト2は、外層38と、内層40とを備える。内層40には、少なくとも1つのワーキングチャンネル42、少なくとも4つのプルワイヤルーメン44および少なくとも1つのセンサルーメン46が設けられている。ワーキングチャンネル42は、カテーテルシャフト2の軸心C1に対して偏心している。カテーテルシャフト2の軸と直交する断面視で、ワーキングチャンネル42における外層38の外周面に最も近い部分42Aの外層38の外周面からの最短距離は、各プルワイヤルーメン44およびセンサルーメン46のそれぞれにおける外層38の外周面に最も近い部分44A,46Aの外層38の外周面からの最短距離より長い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルシャフトであって、
外層と、
前記外層に覆われる内層と、を備え、
前記内層には、処置具が通される少なくとも1つのワーキングチャンネル、プルワイヤが通される少なくとも4つのプルワイヤルーメン、およびセンサの少なくとも一部が通される少なくとも1つのセンサルーメンが設けられており、
前記ワーキングチャンネルは、前記カテーテルシャフトの軸心に対して偏心しており、
前記カテーテルシャフトの少なくとも一部において、前記カテーテルシャフトの軸と直交する断面視で、前記ワーキングチャンネルにおける前記外層の外周面に最も近い部分の前記外層の外周面からの最短距離は、各プルワイヤルーメンにおける前記外層の外周面に最も近い部分の前記外層の外周面からの最短距離、および前記センサルーメンにおける前記外層の外周面に最も近い部分の前記外層の外周面からの最短距離より長い、
カテーテルシャフト。
【請求項2】
前記内層には、流体が流れる少なくとも1つの流体ルーメンが設けられており、
前記少なくとも一部において、前記断面視で、前記ワーキングチャンネルにおける前記外層の外周面に最も近い部分の前記外層の外周面からの最短距離は、前記流体ルーメンにおける前記外層の外周面に最も近い部分の前記外層の外周面からの最短距離より長い、
請求項1に記載のカテーテルシャフト。
【請求項3】
カテーテルシャフトであって、
外層と、
前記外層に覆われる内層と、を備え、
前記内層には、処置具が通されるワーキングチャンネルを形成する少なくとも1つのワーキングチャンネルチューブ、プルワイヤが通されるプルワイヤルーメンを形成する少なくとも4つのプルワイヤルーメンチューブ、およびセンサの少なくとも一部が通されるセンサルーメンを形成する少なくとも1つのセンサルーメンチューブが設けられており、
前記ワーキングチャンネルチューブは、前記カテーテルシャフトの軸心に対して偏心しており、
前記カテーテルシャフトの少なくとも一部において、前記カテーテルシャフトの軸と直交する断面視で、各プルワイヤルーメンチューブおよび前記センサルーメンチューブは前記外層に接し、前記ワーキングチャンネルチューブは前記外層に非接触である、
カテーテルシャフト。
【請求項4】
前記外層は、内周面に第1補強層を有し、
前記少なくとも一部において、各プルワイヤルーメンチューブおよび前記センサルーメンチューブは前記第1補強層に接し、前記ワーキングチャンネルチューブは前記第1補強層に非接触である、
請求項3に記載のカテーテルシャフト。
【請求項5】
前記内層には、流体が流れる流体ルーメンを形成する少なくとも1つの流体ルーメンチューブが設けられており、
前記少なくとも一部において、前記断面視で、前記流体ルーメンチューブは前記外層に接する、
請求項3に記載のカテーテルシャフト。
【請求項6】
前記外層は、内周面に第1補強層を有し、
前記少なくとも一部において、前記流体ルーメンチューブは、前記第1補強層に接する、
請求項5に記載のカテーテルシャフト。
【請求項7】
前記内層は、前記ワーキングチャンネルを取り囲む第2補強層を有する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカテーテルシャフト。
【請求項8】
前記断面視で、前記カテーテルシャフトの軸心と各プルワイヤルーメンの軸心とを結ぶ4本の仮想線を想定した場合に、周方向で隣り合う2本の前記仮想線がなす角度は、それぞれ他の角度との差が35°以下である、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカテーテルシャフト。
【請求項9】
前記流体ルーメンは、ガイドワイヤが通されるガイドワイヤルーメンを兼ねる、
請求項2または5に記載のカテーテルシャフト。
【請求項10】
前記少なくとも一部は、前記カテーテルシャフトの先端領域の少なくとも一部を含む、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカテーテルシャフト。
【請求項11】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの基端側に位置するハンドルと、
を備えるカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カテーテルシャフトおよびカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カメラが挿通されるカメラチャンネルと、鉗子が挿通される鉗子チャンネルと、複数のプルワイヤルーメンとを備えるカテーテルシャフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/172321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、鉗子等の処置具が通されるワーキングチャンネルと、カメラを含むセンサや、プルワイヤ等が通される複数のルーメンとを有するカテーテルシャフトについて鋭意検討を重ねた。その結果、ワーキングチャンネルに対する処置具の挿抜しやすさを向上させることができるシャフト構造に想到した。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワーキングチャンネルに対する処置具の挿抜しやすさを向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、カテーテルシャフトである。このカテーテルシャフトは、外層と、外層に覆われる内層と、を備え、内層には、処置具が通される少なくとも1つのワーキングチャンネル、プルワイヤが通される少なくとも4つのプルワイヤルーメン、およびセンサの少なくとも一部が通される少なくとも1つのセンサルーメンが設けられている。ワーキングチャンネルは、カテーテルシャフトの軸心に対して偏心している。カテーテルシャフトの少なくとも一部において、カテーテルシャフトの軸と直交する断面視で、ワーキングチャンネルにおける外層の外周面に最も近い部分の外層の外周面からの最短距離は、各プルワイヤルーメンにおける外層の外周面に最も近い部分の外層の外周面からの最短距離、およびセンサルーメンにおける外層の外周面に最も近い部分の外層の外周面からの最短距離より長い。
【0007】
本開示の他の態様は、カテーテルシャフトである。このカテーテルシャフトは、外層と、外層に覆われる内層と、を備え、内層には、処置具が通されるワーキングチャンネルを形成する少なくとも1つのワーキングチャンネルチューブ、プルワイヤが通されるプルワイヤルーメンを形成する少なくとも4つのプルワイヤルーメンチューブ、およびセンサの少なくとも一部が通されるセンサルーメンを形成する少なくとも1つのセンサルーメンチューブが設けられている。ワーキングチャンネルチューブは、カテーテルシャフトの軸心に対して偏心している。カテーテルシャフトの少なくとも一部において、カテーテルシャフトの軸と直交する断面視で、各プルワイヤルーメンチューブおよびセンサルーメンチューブは外層に接し、ワーキングチャンネルチューブは外層に非接触である。
【0008】
本開示の他の態様は、カテーテルである。このカテーテルは、上記何れかの態様のカテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの基端側に位置するハンドルと、を備える。
【0009】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ワーキングチャンネルに対する処置具の挿抜しやすさを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るカテーテルの平面図である。
図2】カテーテルの先端の斜視図である。
図3】カテーテルの先端の斜視図である。
図4】実施の形態1に係るカテーテルシャフトの断面図である。
図5図5(A)は、図4のA-A線に沿った断面図である。図5(B)は、図4のB-B線に沿った断面図である。
図6】プルワイヤルーメンの配置を説明するための図である。
図7】実施の形態2に係るカテーテルシャフトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るカテーテル1の平面図である。カテーテル1は、例えば胆管や膵管といった生体の器官の処置に用いることができる。カテーテル1は、カテーテルシャフト2と、ハンドル4と、先端チップ6とを備える。
【0014】
カテーテルシャフト2は、長尺の管状部材である。カテーテルシャフト2の素材としては、樹脂等の可撓性材料が例示される。カテーテルシャフト2の長さは、例えば200mm~4800mmである。カテーテルシャフト2の基端(近位端)には、ハンドル4が設けられる。カテーテルシャフト2の先端(遠位端)には、先端チップ6が設けられる。以下では適宜、カテーテル1およびカテーテル1を構成する各部材における先端チップ6側を「先端側」といい、ハンドル4側を「基端側」という。また、カテーテルシャフト2の軸が延びる方向を「軸方向」といい、軸と直交する方向を「径方向」といい、軸周りの方向を「周方向」という。
【0015】
詳細は後述するが、カテーテルシャフト2は、1つのワーキングチャンネル42と、4つのプルワイヤルーメン44と、1つのセンサルーメン46と、2つの流体ルーメン48とを有する(図4参照)。各プルワイヤルーメン44には、プルワイヤ56が通される。
【0016】
カテーテルシャフト2は、プルワイヤ56の引っ張り操作によって意図的に湾曲させることができる先端領域2Aを有する。先端領域2Aは、カテーテルシャフト2を構成する樹脂の硬度(例えばショアD硬度)を先端領域2Aと先端領域2Aより基端側の領域とで異ならせること等によって、所望の範囲に形成することができる。先端領域2Aは、例えばカテーテルシャフト2の先端から50mmまでの領域である。
【0017】
ハンドル4は、体外に配置されて医師等の施術者によって操作される。ハンドル4は一例として、グリップ8と、2つの操作ノブ10,12と、ワーキングチャンネルポート14と、センサポート16と、流体ポート(図示せず)とを有する。
【0018】
グリップ8は、施術者により把持される。操作ノブ10には、2本のプルワイヤ56の基端側が取り付けられる。操作ノブ12には、残り2本のプルワイヤ56の基端側が取り付けられる。操作ノブ10が一方向に回動すると、操作ノブ10に接続される一方のプルワイヤ56が基端側に引っ張られる。操作ノブ10が他方向に回動すると、操作ノブ10に接続される他方のプルワイヤ56が基端側に引っ張られる。操作ノブ12が一方向に回動すると、操作ノブ12に接続される一方のプルワイヤ56が基端側に引っ張られる。操作ノブ12が他方向に回動すると、操作ノブ12に接続される他方のプルワイヤ56が基端側に引っ張られる。4本のプルワイヤ56の引っ張り操作により、多方向に先端領域2Aを曲げることができる。プルワイヤ56を用いて先端領域2Aを曲げる技術は公知であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0019】
ワーキングチャンネルポート14は、ワーキングチャンネル42に連通される。施術者は、ワーキングチャンネルポート14を介してワーキングチャンネル42に対して処置具を挿抜することができる。センサポート16は、センサルーメン46に連通される。センサポート16を介してセンサルーメン46にセンサのケーブル18が通される。一例として、ケーブル18にはコネクタ20が設けられており、センサポート16にコネクタ20が取り付けられることでハンドル4に対してケーブル18が固定される。流体ポートは、流体ルーメン48に連通される。
【0020】
先端チップ6は、カテーテルシャフト2の先端に嵌挿される。カテーテルシャフト2の先端側が体内に挿入されることで、先端チップ6が体内の処置部位に送り込まれる。図2および図3は、カテーテル1の先端の斜視図である。なお、図2および図3では、外層38の先端チップ6と重なる部分を切り欠いた状態を図示している。また、図3では、プルワイヤ56の図示を省略している。
【0021】
先端チップ6は、カテーテルシャフト2の軸方向に延びる、おおよそ円柱状の部材である。先端チップ6の素材は、例えばカテーテルシャフト2と同様である。先端チップ6は、先端側から基端側にかけて延びる第1貫通孔22を有する。第1貫通孔22の基端側は、ワーキングチャンネル42に連通される。
【0022】
先端チップ6は、先端にセンサ溝24を有する。センサ溝24の底部には、センサルーメン46が連通される。本実施の形態のカテーテル1は、センサとしてカメラモジュール26を有する。カメラモジュール26は、CMOSイメージセンサを搭載するカメラヘッド28と、カメラヘッド28から延びるケーブル18とで構成される。カメラヘッド28は、センサ溝24に嵌め込まれる。ケーブル18は、センサルーメン46に通される。
【0023】
先端チップ6は、外周面の基端側に4つのプルワイヤ溝30を有する。各プルワイヤ溝30は、先端チップ6の基端から軸方向に延びる細幅部32と、細幅部32の先端に位置し、細幅部32より幅が太い太幅部34とを有する。細幅部32の基端はプルワイヤルーメン44に連通される。プルワイヤ溝30には、プルワイヤ56が嵌め込まれる。プルワイヤ56は、小径部58と、大径部60とを有する。小径部58は、プルワイヤルーメン44内に延在し、先端側がプルワイヤルーメン44から突き出て細幅部32に嵌め込まれる。大径部60は、小径部58の先端に位置し、太幅部34に嵌め込まれる。操作ノブ10,12の操作によりプルワイヤ56が基端側に引っ張られる際、大径部60は、太幅部34と細幅部32との段差に引っ掛かり基端側への変位が規制される。これにより、プルワイヤ56の引っ張り操作によって先端領域2Aを曲げることができる。
【0024】
先端チップ6は、先端側から基端側にかけて延びる、2つの第2貫通孔36を有する。一方の第2貫通孔36の基端側は、一方の流体ルーメン48に連通される。他方の第2貫通孔36の基端側は、他方の流体ルーメン48に連通される。なお、本実施の形態の第2貫通孔36は、基端側部分が先端チップ6の外周面において露出している。つまり、第2貫通孔36の基端側部分は、溝状となっている。
【0025】
続いて、カテーテルシャフト2の構造について詳細に説明する。図4は、実施の形態1に係るカテーテルシャフト2の断面図である。図5(A)は、図4のA-A線に沿った断面図である。図5(B)は、図4のB-B線に沿った断面図である。図4にはカテーテルシャフト2の軸と直交する断面を示し、図5(A)および図5(B)には、当該軸と平行な断面を示している。なお、図5(A)および図5(B)では、ケーブル18およびプルワイヤ56の図示を省略している。
【0026】
カテーテルシャフト2は、外層38と、外層38に覆われる内層40とを備える。また、内層40には、1つのワーキングチャンネル42と、4つのプルワイヤルーメン44と、1つのセンサルーメン46と、2つの流体ルーメン48とが設けられている。これらのチャンネルおよびルーメンは、内層40に内包されるとともに、内層40内で互いに分離している。
【0027】
外層38は、シングルルーメン構造を有する管状部材である。内層40は、マルチルーメン構造を有する管状部材である。内層40は、外層38に収容される。内層40の先端は、外層38の先端よりもカテーテルシャフト2の基端側に位置する。カテーテルシャフト2の先端における内層40が窪んだ部分に、先端チップ6が差し込まれる。
【0028】
外層38の素材としては、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)等の良好な滑り性、機械強度、柔軟性および生体適合性を持つ合成樹脂が例示される。内層40の素材としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリウレタン、ナイロン、ポリエステル等の合成樹脂が例示される。外層38および内層40の構成材料には、造影剤、顔料等が混練されてもよい。外層38および内層40の硬度は異なってもよい。例えば、外層38は内層40より硬度が高い。なお、内層40が外層38より硬度が高い場合もあるし、内層40と外層38とが同じ硬度である場合もある。
【0029】
外層38は、内周面に第1補強層50を有する。本実施の形態では、第1補強層50は外層38の一部分と解釈される。第1補強層50は、一例として素線が螺旋状に巻かれたコイルで構成される。なお、第1補強層50は、複数の素線が筒状に編み込まれた編組で構成されてもよい。素線の素材としては、タングステン、ステンレス鋼、ニッケルチタン等の生体適合性金属や、ナイロン、ポリエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー等の生体適合性材料が例示される。外層38が第1補強層50を有することで、内層40に内包されるチャンネルやルーメンの形状を維持しやすくすることができる。なお、図4では、第1補強層50を模式的に示している。
【0030】
ワーキングチャンネル42は、カテーテルシャフト2の基端から先端にかけて延びる管であり、ワーキングチャンネルポート14から挿入あるいは引き抜かれる処置具の通路である。処置具としては、鉗子、カニューラ、ダイレータ、ガイドワイヤー、スネア、注射針、高周波ナイフ、ステント等が例示される。なお、ワーキングチャンネル42は、2つ以上であってもよい。ワーキングチャンネル42は、内層40に埋設されるワーキングチャンネルチューブ52によって形成される。つまり、ワーキングチャンネルチューブ52の内側面がワーキングチャンネル42を区画し、ワーキングチャンネルチューブ52の内部空間がワーキングチャンネル42となっている。
【0031】
ワーキングチャンネルチューブ52の基端は、ワーキングチャンネルポート14に連通される。ワーキングチャンネルチューブ52の先端は、第1貫通孔22に連通される。ワーキングチャンネルチューブ52の素材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)等の良好な滑り性を持つ合成樹脂が例示される。
【0032】
内層40は、ワーキングチャンネル42を取り囲む第2補強層54を有する。本実施の形態の内層40は、ワーキングチャンネルチューブ52との界面に第2補強層54を有する。第2補強層54は、外層38に非接触である。つまり、第2補強層54と外層38との間に内層40が介在する。第2補強層54は、例えば第1補強層50と同様に、コイルや編組で構成される。内層40が第2補強層54を有することで、ワーキングチャンネル42の形状を維持しやすくすることができる。なお、図4では、第2補強層54を模式的に示している。
【0033】
4つのプルワイヤルーメン44は、それぞれカテーテルシャフト2の基端から先端にかけて延びる管であり、プルワイヤ56が通されて収容される。なお、プルワイヤルーメン44は、少なくとも4つであればよいが、好ましくは4つである。各プルワイヤルーメン44は、内層40に埋設されるプルワイヤルーメンチューブ62によって形成される。つまり、プルワイヤルーメンチューブ62の内側面がプルワイヤルーメン44を区画し、各プルワイヤルーメンチューブ62の内部空間がプルワイヤルーメン44となっている。
【0034】
各プルワイヤルーメンチューブ62の基端は、操作ノブ10または操作ノブ12に連通される。各プルワイヤルーメンチューブ62の先端は、プルワイヤ溝30に連通される。プルワイヤルーメンチューブ62の素材は、例えばワーキングチャンネルチューブ52と同様である。
【0035】
センサルーメン46は、カテーテルシャフト2の基端から先端にかけて延びる管であり、センサの少なくとも一部が通されて収容される。本実施の形態では、センサの一部としてケーブル18がセンサルーメン46に通される。ケーブル18としては、電源ケーブルや信号ケーブルが例示される。なお、センサルーメン46にはセンサ自体が通されてもよい。カテーテル1に搭載されるセンサとしては、カメラモジュール26以外に熱電対、超音波センサ、光センサ、圧力センサ等が例示される。なお、センサルーメン46は、2つ以上であってもよい。センサルーメン46は、内層40に埋設されるセンサルーメンチューブ64によって形成される。つまり、センサルーメンチューブ64の内側面がセンサルーメン46を区画し、センサルーメンチューブ64の内部空間がセンサルーメン46となっている。
【0036】
センサルーメンチューブ64の基端は、センサポート16に連通される。センサルーメンチューブ64の先端は、センサ溝24に連通される。センサルーメンチューブ64の素材は、例えばワーキングチャンネルチューブ52と同様である。
【0037】
2つの流体ルーメン48は、カテーテルシャフト2の基端から先端にかけて延びる管であり、流体が流れる通路である。流体ルーメン48を流れる流体としては、処置部位に供給される生理食塩水や、処置部位から回収される体液(血液や組織液)等が例示される。なお、流体ルーメン48は、1つまたは3つ以上であってもよいし、省略される場合もある。各流体ルーメン48は、内層40に埋設される流体ルーメンチューブ66により形成される。つまり、流体ルーメンチューブ66の内側面が流体ルーメン48を区画し、各流体ルーメンチューブ66の内部空間が流体ルーメン48となっている。
【0038】
各流体ルーメンチューブ66の基端は、流体ポートに連通される。各流体ルーメンチューブ66の先端は、第2貫通孔36に連通される。流体ルーメン48を介してカテーテルシャフト2の先端側に送った生理食塩水を第2貫通孔36から放出することで、処置部位を洗浄することができる。また、処置部位に溜まった体液を第2貫通孔36から吸引し、流体ルーメン48を介してカテーテルシャフト2の基端側に回収することでも、処置部位を洗浄することができる。これらにより、カメラモジュール26の視界、ひいては施術者の視界を確保することができる。流体ルーメンチューブ66の素材は、例えばワーキングチャンネルチューブ52と同様である。
【0039】
続いて、内層40に内包されるチャンネルおよびルーメンの配置について説明する。ワーキングチャンネル42およびワーキングチャンネルチューブ52は、カテーテルシャフト2の軸心C1に対して偏心している。つまり、ワーキングチャンネル42およびワーキングチャンネルチューブ52の軸心C2は、カテーテルシャフト2の軸心C1に対してずれている。なお、カテーテルシャフト2の軸心C1は、外層38の軸心と実質的に等しい。
【0040】
また、カテーテルシャフト2の軸と直交する断面視で、ワーキングチャンネル42における外層38の外周面に最も近い部分42Aの外層38の外周面からの最短距離は、各プルワイヤルーメン44における外層38の外周面に最も近い部分44Aの外層38の外周面からの最短距離、センサルーメン46における外層38の外周面に最も近い部分46Aの外層38の外周面からの最短距離、および流体ルーメン48における外層38の外周面に最も近い部分48Aの外層38の外周面からの最短距離より長い。つまり、ワーキングチャンネル42の軸心C2は、カテーテルシャフト2の軸心C1に対してずれてはいるものの、プルワイヤルーメン44、センサルーメン46および流体ルーメン48の各軸心よりも軸心C1から近い位置にある。ワーキングチャンネル42が2つ以上であったり、プルワイヤルーメン44が5つ以上であったり、センサルーメン46が2つ以上であったり、流体ルーメン48が1つや3つ以上である場合も、上述した位置関係が満たされるように各チャンネルおよび各ルーメンが配置される。
【0041】
また、カテーテルシャフト2の軸と直交する断面視で、各プルワイヤルーメンチューブ62、センサルーメンチューブ64および流体ルーメンチューブ66は外層38に接し、ワーキングチャンネルチューブ52は外層38に非接触である。なお、本実施の形態の外層38は、内層40側を向く面に第1補強層50を有する。このため、各プルワイヤルーメンチューブ62、センサルーメンチューブ64および流体ルーメンチューブ66は第1補強層50に接し、ワーキングチャンネルチューブ52は、第1補強層50に非接触である。つまり、ワーキングチャンネルチューブ52の軸心C2は、カテーテルシャフト2の軸心C1に対してずれてはいるものの、プルワイヤルーメンチューブ62、センサルーメンチューブ64および流体ルーメンチューブ66の各軸心よりも軸心C1から近い位置にある。
【0042】
本実施の形態において「チューブが外層38あるいは第1補強層50に接する」とは、当該チューブと外層38あるいは第1補強層50との間に内層40が介在しないことを意味する。また、「チューブが外層38あるいは第1補強層50に非接触である」とは、当該チューブと外層38あるいは第1補強層50との間に内層40が介在することを意味する。なお、カテーテルシャフト2の製造過程で、外層38を構成する樹脂成分と内層40を構成する樹脂成分とが溶けて混ざり合うことがある。本実施の形態では、外層38および内層40の境界部において両層の樹脂成分が混ざり合う部分は、外層38に含まれる。
【0043】
ワーキングチャンネル42がカテーテルシャフト2の軸心C1に対して偏心している場合、ワーキングチャンネル42と外層38との間に介在する内層40の厚みが薄い薄肉部が形成されやすい。本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、薄肉部があると、カテーテルシャフト2が湾曲した場合等にワーキングチャンネル42の側壁に皺ができたり、できる皺が大きくなったりする場合があることを突き止めた。特に、薄肉部の厚みが0.28mmを下回ると皺が形成される傾向が強まり、厚みが薄くなるにつれて、形成される皺が大きくなり、0.1mm以下では形成される皺が顕著に大きくなることが確認された。ワーキングチャンネル42に生じた皺が大きくなると、処置具を挿抜し難くなり、処置具の操作性が低下し得る。この課題は、本発明者らが初めて見出したものであり、当業者の一般的な認識として捉えてはならない。
【0044】
このような課題への対策として、ワーキングチャンネル42を上述のように配置することで、ワーキングチャンネル42の周囲に薄肉部が形成されることを抑制でき、皺の発生を抑制することができる。あるいは、形成される皺が大きくなることを抑制することができる。この結果、ワーキングチャンネル42に対する処置具の挿抜しやすさを向上させることができる。また、これによりカテーテル1を用いた手技の作業性を高めることができる。
【0045】
また、ワーキングチャンネル42の軸心C2をカテーテルシャフト2の軸心C1に近づけることで、第2補強層54の設置スペースが確保しやすくなる。そして、第2補強層54を設けることで、皺の発生あるいは皺の巨大化をより抑制することができる。また、ワーキングチャンネル42の軸心C2をカテーテルシャフト2の軸心C1に近づけることで、カメラモジュール26の画角内に処置具が入り込みやすくなる。これにより、処置具をより操作しやすくすることができる。なお、上述した皺の発生あるいは巨大化と、当該発生あるいは巨大化の抑制に関する説明において、ワーキングチャンネル42は、ワーキングチャンネルチューブ52と読み替えることもできる。
【0046】
本実施の形態では、カメラヘッド28は先端チップ6に固定されており、センサルーメン46に挿通されない。したがって、センサルーメン46にはケーブル18のみが挿通される。このため、例えばカメラモジュール26のリユース等を目的として、カメラモジュール26全体をセンサルーメン46に挿通する場合に比べて、センサルーメン46の径を小さくすることができる。これにより、ワーキングチャンネル42およびワーキングチャンネルチューブ52の軸心C2をカテーテルシャフト2の軸心C1により近づけやすくすることができる。
【0047】
また、カテーテルシャフト2の軸と直交する断面視で、ワーキングチャンネル42、プルワイヤルーメン44およびセンサルーメン46がおおよそ真円形状を有するのに対し、流体ルーメン48は長孔形状を有する。これにより、ワーキングチャンネル42およびワーキングチャンネルチューブ52の軸心C2をカテーテルシャフト2の軸心C1に近づける配置設計が流体ルーメン48によって阻害されることを抑制しながら、流体ルーメン48の断面積を大きくして流体の流量を確保しやすくすることができる。
【0048】
また、ワーキングチャンネル42およびワーキングチャンネルチューブ52の軸心C2をカテーテルシャフト2の軸心C1に近づけることで、4つのプルワイヤルーメン44をカテーテルシャフト2の周方向に均等に配置しやすくすることができる。図6は、プルワイヤルーメン44の配置を説明するための図である。なお、図6では、ケーブル18およびプルワイヤ56の図示を省略している。本実施の形態では、カテーテルシャフト2の軸と直交する断面視で、カテーテルシャフト2の軸心C1と各プルワイヤルーメンの軸心C3とを結ぶ4本の仮想線を想定した場合に、周方向で隣り合う2本の仮想線がなす角度は、それぞれ他の角度との差が好ましくは35°以下であり、より好ましくは30°以下であり、さらに好ましくは25°以下である。
【0049】
具体的には、軸心C1と、図6において左上に位置するプルワイヤルーメン44の軸心C3とを結ぶ仮想線を仮想線L1とする。また、軸心C1と、図6において右上に位置するプルワイヤルーメン44の軸心C3とを結ぶ仮想線を仮想線L2とする。また、軸心C1と、図6において右下に位置するプルワイヤルーメン44の軸心C3とを結ぶ仮想線を仮想線L3とする。また、軸心C1と、図6において左下に位置するプルワイヤルーメン44の軸心C3とを結ぶ仮想線を仮想線L4とする。また、仮想線L1と仮想線L2とがなす角度を角度θ1とする。また、仮想線L2と仮想線L3とがなす角度を角度θ2とする。また、仮想線L3と仮想線L4とがなす角度を角度θ3とする。また、仮想線L4と仮想線L1とがなす角度を角度θ4とする。このとき、角度θ1~θ4は、それぞれ他の角度との差が35°以下である。
【0050】
例えば、カテーテルシャフト2の直径が3.8mm、ワーキングチャンネル42の直径が2mmであるとき、角度θ1~θ4の差をほぼ0とすることができる。また、カテーテルシャフト2の直径が3.1mm、ワーキングチャンネル42の直径が1.2mmであるとき、角度θ1~θ4の差を15°以下とすることができる。
【0051】
このようなプルワイヤルーメン44の配置により、先端領域2Aを曲げる方向によって先端領域2Aの曲がり具合や操作ノブ10,12の操作感に差が出ることを抑制することができる。これにより、カテーテル1の操作性を向上させることができる。なお、4つのプルワイヤルーメン44は、カテーテルシャフト2の軸心C1からおおよそ等しい距離に配置される。例えば、カテーテルシャフト2の軸と直交する断面視で、軸心C1から各プルワイヤルーメン44の軸心C3までの距離の差は、カテーテルシャフト2の半径に対して15%以下である。
【0052】
上述したチャンネルおよび各ルーメンの配置、ならびに各チューブの配置は、カテーテルシャフト2の軸方向で、カテーテルシャフト2の少なくとも一部において満たしていればよいが、先端領域2Aの少なくとも一部において満たしていることが好ましく、先端領域2Aにおける湾曲の頂点を含む領域において満たしていることがより好ましく、先端領域2Aの全体において満たしていることがさらに好ましい。
【0053】
カテーテルシャフト2は、一体成形品として構成される。この一体成形品を得るための成形方法は特に限定されない。カテーテルシャフト2の製造方法の一例では、まず、マンドレルの外周に配置された状態にあるワーキングチャンネルチューブ52、プルワイヤルーメンチューブ62、センサルーメンチューブ64および流体ルーメンチューブ66が用意される。このとき、予め準備しておいた各チューブがマンドレルに被せられてもよいし、各チューブが押出成形によりマンドレルの外周に形成されてもよい。
【0054】
次に、ワーキングチャンネルチューブ52の外周に第2補強層54が形成される。例えば、ブレーダーから素線が送り出されてワーキングチャンネルチューブ52の外周に巻き付けられ、コイル状の第2補強層54が形成される。次に、内層40を構成する溶融樹脂が押出成形機から押し出されて、各チューブを埋設するように内層40が押出成形される。次に、内層40の外周に第1補強層50が形成される。例えば、ブレーダーから素線が送り出されて内層40の外周に巻き付けられ、コイル状の第1補強層50が形成される。次に、外層38を構成する溶融樹脂が押出成形機から押し出されて、内層40を被覆するように外層38が押出成形される。以上の工程により、カテーテルシャフト2が得られる。
【0055】
(実施の形態2)
本実施の形態に係るカテーテル1は、流体ルーメン48が追加の機能を備える点を除いて、実施の形態1に係るカテーテル1の構成と概ね共通する。以下、実施の形態2に係るカテーテル1について、実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
【0056】
図7は、実施の形態2に係るカテーテルシャフト2の断面図である。図7にはカテーテルシャフト2の軸と直交する断面を示している。なお、図7では、ケーブル18およびプルワイヤ56の図示を省略している。
【0057】
本実施の形態に係るカテーテルシャフト2においても、カテーテルシャフト2の軸と直交する断面視で、ワーキングチャンネル42における外層38の外周面に最も近い部分42Aの外層38の外周面からの最短距離は、各プルワイヤルーメン44における外層38の外周面に最も近い部分44Aの外層38の外周面からの最短距離、センサルーメン46における外層38の外周面に最も近い部分46Aの外層38の外周面からの最短距離、および流体ルーメン48における外層38の外周面に最も近い部分48Aの外層38の外周面からの最短距離より長い(図4参照)。
【0058】
また、カテーテルシャフト2の軸と直交する断面視で、各プルワイヤルーメンチューブ62、センサルーメンチューブ64および流体ルーメンチューブ66は外層38に接し、ワーキングチャンネルチューブ52は外層38に非接触である。また、各プルワイヤルーメンチューブ62、センサルーメンチューブ64および流体ルーメンチューブ66は第1補強層50に接し、ワーキングチャンネルチューブ52は、第1補強層50に非接触である。
【0059】
また、本実施の形態の流体ルーメン48は、ガイドワイヤ68が通されるガイドワイヤルーメンを兼ねる。カテーテルシャフト2がガイドワイヤルーメンを備えない場合、ガイドワイヤ68はワーキングチャンネル42に通すことになる。しかしながら、ガイドワイヤ68と処置具とを同時にワーキングチャンネル42に通すと、ガイドワイヤ68が処置具の挿抜や操作に干渉し得るため、同時挿通は避けることが望まれる。このため、ワーキングチャンネル42に通されているガイドワイヤ68を一度引き抜いて処置具を通したり、あるいはその逆の作業が発生したりすることになる。この結果、カテーテル1を用いた手技の作業性が低下し得る。
【0060】
これに対し、流体とガイドワイヤ68であれば、流体ルーメン48に同時に通しても互いに干渉し合うことがないか、干渉の程度が低い。このため、流体ルーメン48をガイドワイヤルーメンとして用いることができる。そして、流体ルーメン48をガイドワイヤルーメンとして用いることで、カテーテル1を用いた手技の作業性を向上させることができる。
【0061】
本実施の形態の流体ルーメン48は、カテーテルシャフト2の軸と直交する断面視でおおよそ真円形状を有する。ガイドワイヤ68は、一般的に断面形状がおおよそ真円形状である。このため、流体ルーメン48の断面をおおよそ真円形状とすることで、実施の形態1のように断面が長孔形状である場合に比べて、ガイドワイヤ68が流体ルーメン48の側壁に接触することを回避しやすくすることができる。
【0062】
流体ルーメン48の断面をおおよそ真円形状とした場合でも、仮想線L1~L4で形成される角度θ1~θ4の差を35°以下とすることができる。例えば、カテーテルシャフト2の直径が3.8mm、ワーキングチャンネル42の直径が2mm、一方の流体ルーメン48の直径が0.85mm、他方の流体ルーメン48の直径が0.8mmであるとき、角度θ1~θ4の差を32°以下とすることができる。
【0063】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。各実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0064】
実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[第1項目]
カテーテルシャフト(2)であって、
外層(38)と、
外層(38)に覆われる内層(40)と、を備え、
内層(40)には、処置具が通される少なくとも1つのワーキングチャンネル(42)、プルワイヤ(56)が通される少なくとも4つのプルワイヤルーメン(44)、およびセンサの少なくとも一部(18)が通される少なくとも1つのセンサルーメン(46)が設けられており、
ワーキングチャンネル(42)は、カテーテルシャフト(2)の軸心(C1)に対して偏心しており、
カテーテルシャフト(2)の少なくとも一部において、カテーテルシャフト(2)の軸と直交する断面視で、ワーキングチャンネル(42)における外層(38)の外周面に最も近い部分(42A)の外層(38)の外周面からの最短距離は、各プルワイヤルーメン(44)における外層(38)の外周面に最も近い部分(44A)の外層(38)の外周面からの最短距離、およびセンサルーメン(46)における外層(38)の外周面に最も近い部分(46A)の外層(38)の外周面からの最短距離より長い、
カテーテルシャフト(2)。
[第2項目]
内層(40)には、流体が流れる少なくとも1つの流体ルーメン(48)が設けられており、
少なくとも一部において、断面視で、ワーキングチャンネル(42)における外層(38)の外周面に最も近い部分(42A)の外層(38)の外周面からの最短距離は、流体ルーメン(48)における外層(38)の外周面に最も近い部分(48A)の外層(38)の外周面からの最短距離より長い、
第1項目に記載のカテーテルシャフト(2)。
[第3項目]
カテーテルシャフトであって、
外層(38)と、
外層(38)に覆われる内層(40)と、を備え、
内層(40)には、処置具が通されるワーキングチャンネル(42)を形成する少なくとも1つのワーキングチャンネルチューブ(52)、プルワイヤ(56)が通されるプルワイヤルーメン(44)を形成する少なくとも4つのプルワイヤルーメンチューブ(62)、およびセンサの少なくとも一部(18)が通されるセンサルーメン(46)を形成する少なくとも1つのセンサルーメンチューブ(64)が設けられており、
ワーキングチャンネルチューブ(52)は、カテーテルシャフト(2)の軸心(C1)に対して偏心しており、
カテーテルシャフト(2)の少なくとも一部において、カテーテルシャフト(2)の軸と直交する断面視で、各プルワイヤルーメンチューブ(62)およびセンサルーメンチューブ(64)は外層(38)に接し、ワーキングチャンネルチューブ(52)は外層(38)に非接触である、
カテーテルシャフト(2)。
[第4項目]
外層(38)は、内周面に第1補強層(50)を有し、
少なくとも一部において、各プルワイヤルーメンチューブ(62)およびセンサルーメンチューブ(64)は第1補強層(50)に接し、ワーキングチャンネルチューブ(52)は第1補強層(50)に非接触である、
第3項目に記載のカテーテルシャフト(2)。
[第5項目]
内層(40)には、流体が流れる流体ルーメン(48)を形成する少なくとも1つの流体ルーメンチューブ(66)が設けられており、
少なくとも一部において、断面視で、流体ルーメンチューブ(66)は外層(38)に接する、
第3項目または第4項目に記載のカテーテルシャフト(2)。
[第6項目]
外層(38)は、内周面に第1補強層(50)を有し、
少なくとも一部において、流体ルーメンチューブ(66)は、第1補強層(50)に接する、
第5項目に記載のカテーテルシャフト(2)。
[第7項目]
内層(40)は、ワーキングチャンネル(42)を取り囲む第2補強層(54)を有する、
第1項目乃至第6項目のいずれかに記載のカテーテルシャフト(2)。
[第8項目]
断面視で、カテーテルシャフト(2)の軸心(C1)と各プルワイヤルーメン(44)の軸心(C3)とを結ぶ4本の仮想線(L1~L4)を想定した場合に、周方向で隣り合う2本の仮想線(L1~L4)がなす角度(θ1~θ4)は、それぞれ他の角度との差が35°以下である、
第1項目乃至第7項目のいずれかに記載のカテーテルシャフト(2)。
[第9項目]
流体ルーメン(48)は、ガイドワイヤ(68)が通されるガイドワイヤルーメンを兼ねる、
第2項目、第5項目または第6項目に記載のカテーテルシャフト(2)。
[第10項目]
少なくとも一部は、カテーテルシャフト(2)の先端領域(2A)の少なくとも一部を含む、
第1項目乃至第9項目のいずれかに記載のカテーテルシャフト(2)。
[第11項目]
第1項目乃至第10項目のいずれかに記載のカテーテルシャフト(2)と、
カテーテルシャフト(2)の基端側に位置するハンドル(4)と、
を備えるカテーテル(1)。
【符号の説明】
【0065】
1 カテーテル、 2 カテーテルシャフト、 4 ハンドル、 38 外層、 40 内層、 42 ワーキングチャンネル、 44 プルワイヤルーメン、 46 センサルーメン、 48 流体ルーメン、 50 第1補強層、 52 ワーキングチャンネルチューブ、 54 第2補強層、 62 プルワイヤルーメンチューブ、 64 センサルーメンチューブ、 66 流体ルーメンチューブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7