(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025071719
(43)【公開日】2025-05-08
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 3/12 20060101AFI20250428BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20250428BHJP
【FI】
G05D3/12 T
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182132
(22)【出願日】2023-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智博
(72)【発明者】
【氏名】長津 雄大
(72)【発明者】
【氏名】中野 遼太郎
【テーマコード(参考)】
5H303
5H501
【Fターム(参考)】
5H303BB06
5H303BB14
5H303CC01
5H303DD01
5H303FF03
5H303GG04
5H303KK02
5H303KK03
5H303KK04
5H303KK27
5H501DD01
5H501GG01
5H501JJ25
5H501LL34
(57)【要約】
【課題】位置決め精度を向上させることができるモータ制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態によるモータ制御装置は、モータにより動作される駆動機構の位置指令を、1次関数によりモータの位置指令として調整し、モータの角度を検出する角度センサの検出値を、1次関数により駆動機構の検出位置として調整する調整部と、調整部の1次関数による出力と、駆動機構の伝達関数による出力と、の差に基づいて、モータの移動量を補正する移動量補正部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより動作される駆動機構の位置指令を、1次関数により前記モータの位置指令として調整し、前記モータの角度を検出する角度センサの検出値を、1次関数により前記駆動機構の検出位置として調整する調整部と、
前記調整部の1次関数による出力と、前記駆動機構の伝達関数による出力と、の差に基づいて、前記モータの移動量を補正する移動量補正部と、
を備える、モータ制御装置。
【請求項2】
前記移動量補正部は、前記駆動機構の検出位置に基づいて、前記駆動機構の伝達関数を用いて前記モータの移動量に対する補正量を演算する、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記移動量補正部は、前記モータの位置指令に対して、前記モータの移動量の補正を行い、
前記移動量補正部は、前記角度センサの検出値に対して、前記モータの移動量の補正を引く、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記駆動機構の伝達関数は、2次関数である、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記調整部は、電子ギヤである、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記モータと、
前記角度センサと、
をさらに備える、請求項1に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボアンプにより機械(駆動機構)の位置決めを行う場合がある。この場合、駆動機構の移動量の最小指令単位に対するモータ移動量の補正は、サーボアンプのギヤ設定により賄われることがある。このギヤ設定は比例(1次関数)であるため、駆動機構がリンク機構といった2次関数の場合、駆動機構の位置決めに若干の誤差が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-175906号公報
【特許文献2】特開平5-337729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位置決め精度を向上させることができるモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態によるモータ制御装置は、モータにより動作される駆動機構の位置指令を、1次関数によりモータの位置指令として調整し、モータの角度を検出する角度センサの検出値を、1次関数により駆動機構の検出位置として調整する調整部と、調整部の1次関数による出力と、駆動機構の伝達関数による出力と、の差に基づいて、モータの移動量を補正する移動量補正部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態による上位装置およびモータ制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態によるサーボアンプの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による上位装置100およびモータ制御装置200の構成の一例を示すブロック図である。
【0009】
上位装置100は、モータ制御装置200に機械指令位置を送信する。機械指令位置は、駆動機構の位置指令である。駆動機構については、後で説明する。
【0010】
モータ制御装置200は、モータ10と、角度検出器20と、サーボアンプ50と、を備える。
【0011】
モータ制御装置200のうち、サーボアンプ50を含む少なくとも一部は、例えば、織機に用いられるが、産業機械等に用いられてもよい。
【0012】
モータ10は、図示しない駆動機構と連結され、駆動機構を動作させる。駆動機構の伝達関数は、1次関数ではない。駆動機構は、例えば、2次関数の伝達関数を有する。駆動機構は、例えば、リンク機構である。より詳細には、駆動機構は、例えば、織機に用いられるパイルモーション機構である。本実施形態による駆動機構は、伝達関数が決まっている駆動機構であれば、他の駆動機構であってもよい。
【0013】
角度検出器(角度センサ)20は、モータ10の角度(位置)を検出する。角度検出器20は、角度検出器20の検出値をサーボアンプ50に送信する。角度検出器20は、例えば、エンコーダまたはレゾルバである。
【0014】
サーボアンプ50は、上位装置100から機械指令位置を受信し、角度検出器20から角度検出器20の検出値を受信する。サーボアンプ50は、受信した角度検出器20の検出値を用いてモータ10をフィードバック制御する。また、サーボアンプ50は、
図2を参照して後で説明するように、駆動機構の位置決めの際に生じる誤差を補正する。
【0015】
次に、サーボアンプ50による位置決め誤差の補正の詳細について説明する。
【0016】
図2は、第1実施形態によるサーボアンプ50の構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
サーボアンプ50は、第1アンプ部30と、第2アンプ部40と、を有する。
【0018】
第1アンプ部30は、位置決め誤差の補正処理を行う。第2アンプ部40は、フィードバック制御によりモータ10の位置制御を行う。尚、第1アンプ部30による補正処理は、第2アンプ部40の位置制御と同じ処理周期で行われる。
【0019】
第1アンプ部30は、微分器D30と、電子ギヤ31と、加算器A30と、減算器S30と、電子ギヤ32と、積分器I30と、移動量補正部33と、を有する。第2アンプ部40は、減算器S40と、位置ループ演算部41と、を有する。また、モータ制御装置200は、積分器I1と、積分器I2と、積分器I3と、をさらに備える。
【0020】
微分器D30は、上位装置100で生成された機械指令位置を受信する。微分器D30は、機械指令位置を微分し、分配指令を送信する。
【0021】
積分器I1は、微分器D30から分配指令を受信する。積分器I1は、分配指令を積分し、機械指令座標を送信する。
【0022】
電子ギヤ31は、微分器D30から分配指令を受信する。電子ギヤ31は、駆動機構の指令単位での分配指令を、所定の比率(比例関係)を用いて、モータセンサパルス単位でのモータ10の位置指令に調整する。すなわち、電子ギヤ(調整部)31は、モータ10により動作される駆動機構の位置指令(分配指令)を、1次関数によりモータ10の位置指令として調整する。電子ギヤ31は、モータ10の位置指令を送信する。
【0023】
加算器A30は、電子ギヤ31からモータ10の位置指令を受信し、移動量補正部33から単位時間(制御周期)あたりの移動補正量を受信する。加算器A30は、モータ10の位置指令に単位時間あたりの移動補正量を加算し、単位時間あたりの移動補正量が加算されたモータ10の位置指令を送信する。
【0024】
積分器I2は、加算器A30から位置指令を受信する。積分器I2は、位置指令を積分し、モータセンサパルス指令値を送信する。
【0025】
減算器S40は、加算器A30から位置指令を受信し、角度検出器20から位置フィードバック(モータセンサパルス)を受信する。位置フィードバックは、上記の角度検出器20の検出値である。減算器S40は、モータ10の位置指令から位置フィードバックを減算し、単位時間あたりの位置偏差量を送信する。
【0026】
位置ループ演算部41は、減算器S40から単位時間あたりの位置偏差量を受信する。位置ループ演算部41は、位置ループ処理の演算によりモータ10の位置指令から速度指令を生成し、速度指令を送信する。尚、位置ループ演算部41は、減算器S40を含めて位置制御部と呼ばれる場合がある。その後、速度指令から電流指令が生成され、電流指令はモータ10に入力される。
【0027】
積分器I3は、角度検出器20から位置フィードバックを受信する。積分器I3は、位置フィードバックを積分し、モータセンサパルス現在値を送信する。
【0028】
減算器S30は、角度検出器20から位置フィードバックを受信し、移動量補正部33から単位時間あたりの移動補正量を受信する。減算器S30は、位置フィードバックから単位時間あたりの移動補正量を減算し、単位時間あたりの移動補正量が減算された位置フィードバックを送信する。
【0029】
電子ギヤ32は、減算器S30から位置フィードバックを受信する。電子ギヤ32は、モータセンサパルス単位での位置フィードバックを、所定の比率(比例関係)を用いて、駆動機構の指令単位での位置フィードバックに調整する。すなわち、電子ギヤ(調整部)32は、角度検出器20の検出値を、1次関数により駆動機構の検出位置として調整する。尚、電子ギヤ32の比率は、電子ギヤ31の比率の逆数である。電子ギヤ32は、位置フィードバックを送信する。
【0030】
積分器I30は、電子ギヤ32から位置フィードバックを受信する。積分器I30は、位置フィードバックを積分し、機械現在位置を送信する。機械現在位置は、例えば、ユーザにより監視される。
【0031】
移動量補正部33は、電子ギヤ31、32の1次関数による出力と、駆動機構の伝達関数による出力と、の差に基づいて、モータ10の移動量を補正する。移動量補正部33は、補正演算部331と、微分器D33と、を有する。
【0032】
補正演算部331は、積分器I30から機械現在位置を受信する。補正演算部331は、駆動機構の関数(伝達関数)を用いて、機械現在位置から補正量絶対値を演算し、補正量絶対値を送信する。より詳細には、補正演算部331は、駆動機構の伝達関数を用いて、機械現在位置から本来の駆動機構の位置を演算する。補正演算部331は、機械現在位置と、本来の駆動機構の位置と、の差として補正量絶対値を演算する。すなわち、補正演算部331は、駆動機構の検出位置(機械現在位置)に基づいて、駆動機構の伝達関数を用いてモータ10の移動量に対する補正量(補正量絶対値)を演算する。
【0033】
微分器D33は、補正演算部331から補正量絶対値を受信する。微分器D33は、補正量絶対値を微分し、単位時間あたりの移動補正量を送信する。これにより、離散値系の位置制御に対して補正を行うことができる。
【0034】
上記のように、加算器A30は、モータ10の位置指令に単位時間あたりの移動補正量を加算する。これにより、移動量補正部33は、モータ10の位置指令に対して、モータ10の移動量の補正を行う。この結果、駆動機構の実位置を補正することができる。尚、単位時間あたりの移動補正量の演算方法によっては、加算に代えて減算が行われてもよい。従って、移動量補正部33による「モータ10の移動量の補正を行う」ことは、加算に限られず減算であってもよい。
【0035】
上記のように、減算器S30は、位置フィードバックから単位時間あたりの移動補正量を減算する。これにより、移動量補正部33は、角度検出器20の検出値に対して、モータ10の移動量の補正を引く。この結果、補正は内部位置制御に適用され、駆動機構の現在位置(機械現在位置)は、移動量補正部33による補正が行われる前の単位系となる。尚、単位時間あたりの移動補正量の演算方法によっては、減算に代えて加算が行われてもよい。従って、移動量補正部33による「モータ10の移動量の補正を引く」ことは、減算に限られず加算であってもよい。
【0036】
以上のように、第1実施形態によれば、移動量補正部33は、電子ギヤ31、32の1次関数による出力と、駆動機構の伝達関数による出力と、の差に基づいて、モータ10の移動量を補正する。これにより、位置決め誤差を抑制することができ、位置決め精度を向上させることができる。
【0037】
(第1比較例)
第1比較例として、移動量補正部33が設けられない場合について説明する。
【0038】
駆動機構の位置決めを行う場合、駆動機構の移動量の最小指令単位に対するモータ移動量の調整は、電子ギヤ31、32の設定により行われている。ボールねじ等のように、駆動機構の伝達関数が1次関数である場合、適切に位置決めを行うことができる。しかし、駆動機構の伝達関数が2次関数である場合、電子ギヤ31、32の1次関数による出力と、駆動機構の伝達関数による出力と、の間の差が生じてしまう可能性がある。従って、モータ10の位置と、駆動機構の実際の位置と、の間に誤差が生じてしまう可能性がある。この結果、駆動機構の位置決め誤差が生じてしまう可能性がある。
【0039】
これに対して、第1実施形態では、移動量補正部33を設けることにより、移動量の誤差を補正することができる。この結果、位置決め精度を向上させることができる。
【0040】
(第2比較例)
第2比較例として、ピッチ誤差補正が行われる場合について説明する。
【0041】
ピッチ誤差補正では、位置決め誤差の量(補正量)は、ピッチごとに取得されて補正が行われる。しかし、補正テーブルが必要であり、また、補正値の設定が難しい場合がある。また、ピッチ誤差補正では、ピッチ間では直線補間等の補間が行われる。
【0042】
これに対して、第1実施形態では、補正量は伝達関数を用いて演算される。すなわち、補正量の演算が関数化されている。これにより、テーブル格納領域を削減することができ、また、誤差補正に関する設定をより簡易化することができる。また、ピッチ間を含むいずれの位置においても補正量を適切に取得可能である。
【0043】
本実施形態によるモータ制御装置におけるデータ処理方法の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、データ処理方法の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、データ処理方法の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
200 モータ制御装置、10 モータ、20 角度検出器、30 第1アンプ部、31 電子ギヤ、32 電子ギヤ、33 移動量補正部、40 第2アンプ部、50 サーボアンプ