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特開2025-7179キャリアプレートおよびウインドレギュレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007179
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】キャリアプレートおよびウインドレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20250109BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E05F11/48 D
E05F11/48 Z
B60J1/17 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108404
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 信裕
(72)【発明者】
【氏名】有井 秀明
【テーマコード(参考)】
3D127
【Fターム(参考)】
3D127AA12
3D127CB05
3D127DF09
3D127DF26
(57)【要約】
【課題】複数の排出構造同士の隙間への液体の浸入を防止できるキャリアプレートおよびウインドレギュレータを提供する。
【解決手段】窓ガラスを保持し、ガイド部材に沿って移動するキャリアプレートであって、浸入した液体を第1の側に排出する第1排出構造と、前記液体を前記第1の側とは反対の第2の側に排出する第2排出構造と、を備え、前記第1排出構造の第1上端部と、前記第2排出構造の第2上端部とは、前記液体の落下方向において前記第2上端部が下になるように重なっており、前記第2上端部は、前記落下方向とは反対方向に向かって湾曲する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスを保持し、ガイド部材に沿って移動するキャリアプレートであって、
浸入した液体を第1の側に排出する第1排出構造と、
前記液体を前記第1の側とは反対の第2の側に排出する第2排出構造と、
を備え、
前記第1排出構造の第1上端部と、前記第2排出構造の第2上端部とは、前記液体の落下方向において前記第2上端部が下になるように重なっており、
前記第2上端部は、前記落下方向とは反対方向に向かって湾曲する、
キャリアプレート。
【請求項2】
前記第1排出構造および前記第2排出構造の少なくとも一方は、他の部分よりも傾斜がなだらかな部分を有する、
請求項1に記載のキャリアプレート。
【請求項3】
前記傾斜がなだらかな部分は、前記キャリアプレートの肉抜き部分に配置されている、
請求項2に記載のキャリアプレート。
【請求項4】
前記第1上端部は、前記落下方向に向かって湾曲する、
請求項1に記載のキャリアプレート。
【請求項5】
前記第1排出構造および前記第2排出構造は、それぞれ樹脂で形成されている、
請求項1に記載のキャリアプレート。
【請求項6】
前記第1排出構造および前記第2排出構造は、前記ガイド部材に係合される係合部材が取り付けられる領域を避けて配置されている、
請求項1に記載のキャリアプレート。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のキャリアプレートと、
前記ガイド部材と、
前記ガイド部材に沿って前記キャリアプレートを移動させる駆動部と、
を備える、ウインドレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアプレートおよびウインドレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の窓ガラスを伝わってドア内部に浸入する雨水などが、キャリアプレートの昇降を案内するガイドレールやキャリアプレートに一端が連結されるインナーケーブルを伝わって下方へと流れることによって、ガイドレールやインナーケーブルに錆が発生することがある。
【0003】
特許文献1には、ガイドレールやインナーケーブルの配置箇所に雨水が流れないようにするワイヤ式レギュレータが開示され、また、特許文献2には、複数の雨水案内部が設けられたワイヤ式レギュレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-063158号公報
【特許文献2】特開2021-156148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のワイヤ式レギュレータは、雨水案内部成形時に雨水案内部に割れが生じることを抑制するため複数の雨水案内部を有しているが、複数の雨水案内部が設けられている場合、雨水案内部同士の隙間から雨水が浸入することがある。
【0006】
本開示は、複数の排出構造同士の隙間への雨水などの液体の浸入を防止できるキャリアプレートおよびウインドレギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るキャリアプレートは、窓ガラスを保持し、ガイド部材に沿って移動するキャリアプレートであって、浸入した液体を第1の側に排出する第1排出構造と、前記液体を前記第1の側とは反対の第2の側に排出する第2排出構造と、を備え、前記第1排出構造の第1上端部と、前記第2排出構造の第2上端部とは、前記液体の落下方向において前記第2上端部が下になるように重なっており、前記第2上端部は、前記落下方向とは反対方向に向かって湾曲する。
【0008】
本開示の一態様に係るウインドレギュレータは、上記のキャリアプレートと、前記ガイド部材と、前記ガイド部材に沿って前記キャリアプレートを移動させる駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
複数の排出構造同士の隙間への雨水などの液体の浸入を防止できるキャリアプレートおよびウインドレギュレータを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ウインドレギュレータの構成の一例を示す図
図2】キャリアプレートの第1面について説明するための図
図3】キャリアプレートの第2面について説明するための図
図4】キャリアプレートの第1面側を斜め上方から見た斜視図
図5】キャリアプレートの第2面側に係合部材が固定された様子を示す図
図6】係合部材により、キャリアプレートがガイドレールに係合された状態を説明するための図
図7】キャリアプレートがガイドレールのほぼ最上部に位置している状態における、ガイドレール、駆動部、およびキャリアプレートの位置関係を示す図
図8】キャリアプレートがガイドレールのほぼ最上部に位置している状態における、ガイドレール、駆動部、およびキャリアプレートの位置関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る各実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(ウインドレギュレータの概要)
本開示の実施の形態に係るウインドレギュレータ100は、例えば車両などのドアに搭載される。ウインドレギュレータ100は、ケーブルの巻き取りと繰り出しを行うことでケーブルを介して駆動力をキャリアプレートに伝達し、キャリアプレートに取り付けられた窓ガラス(ウインドウ)を移動させる。
【0013】
図1は、ウインドレギュレータ100の構成の一例を示す図である。図1には、ウインドレギュレータ100が、車両のバックドア、すなわち車両の後面に設けられたドアが有するインナーパネルに取り付けられた場合の例が示されている。すなわち、図1は、バックドアに取り付けられた状態のウインドレギュレータ100を、車両の後方から見た図である。以下の説明では、図1に示す各方向を用いて説明を行う。
【0014】
図1に示す上下方向および左右方向は、ウインドレギュレータ100がバックドアに取り付けられた車両を基準とした上下方向および左右方向にそれぞれ対応する。なお、図1における紙面手前方向は車両の後方向に、図1における紙面奥方向は車両の前方向に、それぞれ対応するものとする。
【0015】
ただし、図1に示される各方向は一例であり、本開示のウインドレギュレータは、必ずしも図1に例示した方向に対応して設置される必要はない。
【0016】
図1に示す例では、ウインドレギュレータ100は、2つのガイドレール10と、4つのプーリーブラケット20と、ケーブル30と、駆動部40と、2つのキャリアプレート50と、を備えている。ただし、図1に示されるウインドレギュレータ100は一例であり、本開示のウインドレギュレータは、例えば、1つのガイドレールと、2つの方向転換部材と、ケーブルと、駆動部と、1つのキャリアプレートと、を備えるウインドレギュレータであってもよく、ケーブルを介して駆動部によりキャリアプレートを移動させるウインドレギュレータであれば特に限定されない。
【0017】
(ガイドレール10の構成)
2つのガイドレール10は、それぞれが窓ガラスの移動方向に延伸し、互いに略平行に配置される。図1に示す例では、ガイドレール10の延伸方向および窓ガラスの移動方向は、図1における上下方向とは異なる方向であるが、本開示では窓ガラスの移動方向とウインドレギュレータの上下方向とが一致してもよい。ガイドレール10は、キャリアプレート50を移動可能に支持し、キャリアプレート50の移動を案内する。ガイドレール10は、本開示のガイド部材の一例である。
【0018】
(プーリーブラケット20の構成)
プーリーブラケット20は、ケーブル30の移動方向を転換するプーリーの回転軸を支持する部材であり、該回転軸に、プーリーが回転可能に支持される。プーリーはケーブル30の移動方向を転換する方向転換部材の一態様である。図1に示す例では、プーリーブラケット20は、2つのガイドレール10の上端部と下端部にそれぞれ設けられている。
【0019】
(ケーブル30の構成)
動力伝達部材であるケーブル30は、駆動部40の駆動力をキャリアプレート50に伝達するための部材である。ケーブル30は、例えば、金属素線、樹脂繊維素線などを撚り合わせた可撓性を有するワイヤである。図1に示す例では、ケーブル30は、3本のケーブル30a、30b、30cにより構成される。
【0020】
ケーブル30aは、一端が駆動部40に接続される。ケーブル30aは、駆動部40から左側のガイドレール10の上端部に設けられるプーリーブラケット20に向かって伸び、さらに、当該ガイドレール10に係合される右側のキャリアプレート50に向かって伸びている。そして、ケーブル30aの他端は、当該キャリアプレート50に接続される。
【0021】
ケーブル30bは、一端が左側のガイドレール10に設けられるキャリアプレート50に接続される。このケーブル30bは、当該キャリアプレート50から当該ガイドレール10の下端部に設けられるプーリーブラケット20に向かって伸びている。さらに、ケーブル30bは、当該プーリーブラケット20から、右側のガイドレール10の上端部に設けられるプーリーブラケット20に向かって伸びている。そして、ケーブル30bの他端は、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート50に接続される。
【0022】
ケーブル30cは、一端が駆動部40に接続される。このケーブル30cは、駆動部40から右側のガイドレール10の下端部に設けられるプーリーブラケット20に向かって伸び、さらに、当該ガイドレール10に係合される右側のキャリアプレート50に向かって伸びている。そして、ケーブル30cの他端は、当該右側のキャリアプレート50に接続される。
【0023】
なお、図1に示す例では、ケーブル30全体の内、駆動部40から左右のガイドレール10に設けられるプーリーブラケット20までの部分は、ケーブル30を保護するためのアウターケーシング31に覆われている。
【0024】
(駆動部40の構成)
駆動部40は、ケーブル30の巻き取りと繰り出しとを行うことによって、キャリアプレート50を移動させる装置である。
【0025】
駆動部40は、例えば、ケーブル30が巻かれるドラムと、ドラムが収容されるドラムハウジングと、モータと、モータの回転をドラムに伝達するウォームギヤなどの動力伝達部と、を備える。図1に示す例では、駆動部40は右側のガイドレール10に固定されている。
【0026】
モータが順方向に回転すると、モータの回転運動が動力伝達部を介してドラムに伝達されることにより、ドラムが順方向に回転する。この場合、ケーブル30aがドラムに巻き取られて、ケーブル30cがドラムから繰り出される。これにより、2つのキャリアプレート50は、2つのガイドレール10のそれぞれに沿って上昇する。
【0027】
一方、モータが逆方向に回転すると、ドラムが逆方向に回転する。この場合、ケーブル30cがドラムに巻き取られて、ケーブル30aがドラムから繰り出される。これにより、2つのキャリアプレート50は、2つのガイドレール10のそれぞれに沿って下降する。
【0028】
(キャリアプレート50の構成)
キャリアプレート50は、窓ガラスを保持しながら、ガイドレール10上を窓ガラスとともに昇降移動する部材である。なお、図1では窓ガラスの図示は省略されている。図1では、キャリアプレート50がガイドレール10の長手方向中央部付近に位置している状態が示されている。
【0029】
キャリアプレート50は、ウインドレギュレータ100が車両のドアに取り付けられた後、当該車両が雨天環境など、水などに例示される液体に曝される環境に置かれた場合に、外部から浸入してくる液体を排出するための排出構造を複数備えている。また、キャリアプレート50が備える複数の排出構造は、複数の排出構造同士の隙間への液体の浸入を防止できるようにキャリアプレート50に配置されている。以下では、本開示の実施の形態に係る複数の排出構造を含むキャリアプレート50の構造について、詳細に説明する。
【0030】
図2および図3は、キャリアプレート50の第1面51および第2面52についてそれぞれ説明するための図である。図2に示す第1面51は、図1におけるキャリアプレートの外部側の面であり、図3に示す第2面52は、図1における内部側の面である。
【0031】
図2および図3では、図1と同様に、第1面51または第2面52が、ウインドレギュレータ100が車両に取り付けられた状態における上下方向および左右方向に対しほぼ平行な状態を示している。
【0032】
また、図4は、キャリアプレート50の第1面51側を斜め上方から見た斜視図である。
【0033】
図2から図4には、図1に示すウインドレギュレータ100における、左側のキャリアプレート50の構造が示されている。なお、図1に示す例では、ウインドレギュレータ100における右側のキャリアプレート50の構造は、図2から図4に例示される左側のキャリアプレート50の構造と左右対称に形成されている。ただし、本開示はこの例に限定されず、本開示のウインドレギュレータが複数のキャリアプレートを備える場合、それぞれのキャリアプレートは同じ構造を有していてもよい。
【0034】
図2から図4に示す例では、キャリアプレート50は、本体部53と、第1取付部54と、第2取付部55と、支持部材56と、を有する。
【0035】
本体部53は、キャリアプレート50の本体を構成する部分である。本体部53は、例えば金属部材で形成される。本体部53には、第1取付部54、第2取付部55、および支持部材56が第1面51側から取り付けられる。
【0036】
第1取付部54および第2取付部55は、例えば樹脂で形成された部材である。第1取付部54および第2取付部55には、キャリアプレート50が備える排出構造の少なくとも一部が形成されている。
【0037】
第1取付部54および第2取付部55には、それぞれ、本体部53に取り付けるための凸構造(突起など)が形成されている。一方で、本体部53には、当該構造とともに第1取付部54および第2取付部55を本体部53に固定するための凹構造(穴部など)が形成されている。第1取付部54および第2取付部55に形成された構造が本体部53に形成された穴部に嵌め入れられることにより、第1取付部54および第2取付部55が本体部53に取り付けられ、固定される。
【0038】
支持部材56は、窓ガラスを支持するための部材である。支持部材56は、窓ガラスを支持するための台座構造などを有する。本実施の形態では、支持部材56は樹脂などで形成されている。
【0039】
このように、第1取付部54、第2取付部55、および支持部材56を、樹脂を用いて形成し、金属で形成された本体部53に取り付けることにより、キャリアプレート50全体を金属で形成する場合と比較して、キャリアプレート50全体の重さを軽減できる。また、第1取付部54および第2取付部55には後述する排出構造などの突起物が種々形成されているが、第1取付部54および第2取付部55を本体部53と別体に形成することにより、キャリアプレート50全体を一体形成する場合と比較して、形成工程が容易となる。また、複雑な形状を有する第1排出構造61および第2排出構造62を一体に形成した場合に生じうる、樹脂の割れなどを防止できる。
【0040】
また、キャリアプレート50は、第1排出構造61と、第2排出構造62と、を備える。
【0041】
第1排出構造61は、上側から浸入してきた液体を第1の側に排出するための構造である。第1の側とは、図2および図3に示す例では、車両の左側である。これに伴い、第1排出構造61は、第2排出構造62よりも左側に配置されている。
【0042】
第1排出構造61は、本体部53に取り付けられた第1取付部54から本体部53を構成する面からほぼ垂直な方向に向かって、所定の幅突出する板状に形成された構造である。第1排出構造61が有する板状構造は、複数の曲がった箇所を含む。
【0043】
図2に示すように、第1排出構造61が有する板状構造は、第1上端部611と、第1曲部612と、第1案内部613と、第1排出部614と、を備える。
【0044】
第1上端部611は、第1排出構造61の上端部かつ右端部付近に設けられた構造である。第1上端部611は、第2排出構造62が有する第2上端部621(詳細は後述)と、上下方向に互いに離れて配置されており、かつ、液体の落下方向において、第2上端部621が下となるように互いに重なっている。
【0045】
第1上端部611の右端部には、落下方向(すなわち、下方向)に向かって湾曲する第1曲部612が設けられている。第1曲部612は、上側から浸入して第1排出構造61に行き当たった液体のうち、第1上端部611から落下する一部の液体の落下方向が、右方向ではなく下方向となるような向きに湾曲して形成されている。
【0046】
第1案内部613は、上側から浸入してきた液体のうち、第1排出構造61に行き当たった液体の大部分を左側に案内するための構造である。第1案内部613は、左側に向かうにつれて下方に傾斜する構造を有する。また、第1案内部613は、第1排出構造61に含まれる他の構造より傾斜が急となるように形成されている。これにより、第1案内部613は、液体を好適に左側に案内することができる。
【0047】
第1排出部614は、第1排出構造61の左端部に形成されている構造である。第1排出部614は、第1案内部613により案内されてきた液体を、左方向に排出させる。このため、第1排出部614は、第1案内部613と同様に左側に向かうにつれて下方に向かうように傾斜するものの、第1案内部613よりも傾斜がなだらかとなるように形成されている。これにより、液体は第1排出部614から勢いよく左側に排出される。このため、第1排出部614から排出された液体は、例えば車両のドア内部において、ウインドレギュレータ100全体よりも左側に排出される。これにより、第1排出構造61の下側に配置されるウインドレギュレータ100の構成、例えば、ガイドレール10およびケーブル30などの少なくともいずれかに液体が到達しにくくすることができる。
【0048】
第2排出構造62は、上側から浸入してきた液体を、第1の側とは反対の第2の側に排出するための構造である。第2の側とは、図2および図3に示す例では、車両の右側である。これに伴い、第2排出構造62は、第1排出構造61よりも右側に配置されている。
【0049】
第2排出構造62は、本体部53に取り付けられた第2取付部55から本体部53を構成する面からほぼ垂直な方向に向かって、所定の幅突出する板状に形成された構造である。第2排出構造62が有する板状構造は、複数の曲がった箇所を含む。なお、第2排出構造62が有する板状構造における、第1取付部54から突出している幅は、例えば第1排出構造61が有する板状構造において、第2取付部55から突出している幅と同じであってもよいし、異なっていてもよい。後述するように、第2排出構造62の一部は第1排出構造61の一部よりも下側に配置されるので、上側から浸入してきた液体を第2排出構造62の下方に配置されるウインドレギュレータ100の構成の方に向かわせないようにするという観点からすれば、第2排出構造62の幅の方が第1排出構造61の幅よりも広く形成される方がより望ましい。
【0050】
図2に示すように、第2排出構造62が有する板状構造は、第2上端部621と、第2曲部622と、第2案内部623と、平坦部624と、第3案内部625と、第2排出部626と、を備える。
【0051】
第2上端部621は、第2排出構造62の上端部かつ左端部付近に設けられた構造である。上述したように、第2上端部621は、第1上端部611と、上下方向に互いに離れて配置されており、かつ、液体の落下方向において、第2上端部621が下となるように互いに重なっている。
【0052】
第2上端部621の左端部には、落下方向とは反対方向(すなわち、上方向)に向かって湾曲する第2曲部622が設けられている。第1上端部611と第2上端部621とが液体の落下方向において互いに重なっていること、および、上方向に湾曲した第2曲部622が設けられていることにより、第1排出構造61の第1上端部611(第1曲部612)から落ちてきた液体が第2上端部621よりも左側に浸入しないようになっている。
【0053】
第2案内部623および第3案内部625は、上側から浸入してきた液体のうち、第2排出構造62に直接行き当たった液体、および第1排出構造61から落下してきた液体をより右側に案内するための構造である。第2案内部623および第3案内部625は、右側に向かうにつれて下方に傾斜する構造を有する。図2に示す例では、第2案内部623よりも第3案内部625の方が、傾斜が急となるように形成されている。
【0054】
第2案内部623の右側であって、第2案内部623と第3案内部625との間には、平坦部624が設けられている。平坦部624は、第2案内部623および第3案内部625よりも傾斜がなだらかな部分である。図2および図3に示す例では、平坦部624はウインドレギュレータ100が車両に取り付けられた状態において、ほとんど傾斜していない。なお本開示はこれに限定されず、平坦部624は第2案内部623および後述の第3案内部625よりも傾斜がなだらかであれば、右側に向かうにつれてわずかに下方に傾斜していてもよい。
【0055】
平坦部624は、第2排出構造62の上から浸入してきた液体の微小な液滴を集め、ある程度以上の大きさの液滴にまとめて右側に流すための構造である。例えばウインドレギュレータ100の上側から浸入してきた液体が微小な液滴であった場合、液滴同士が互いに集まらずに分子間力などによって第2案内部623および第3案内部625の傾斜面に張り付き、右側へ流れない場合がある。
【0056】
平坦部624は、あえてなだらかな傾斜を有するように形成されたことにより、微小な液滴同士を集めてある程度以上大きな液滴とすることができる。平坦部624により生成された大きな液滴は、平坦部624の右側に配置されており傾斜が急である第3案内部625に差し掛かったとき、微小な液滴のままの場合よりも、第2案内部623の傾斜に沿って右側に流れやすい。これにより、第2排出構造62全体として液滴を右側に排出する効率を向上させることができる。
【0057】
平坦部624は、キャリアプレート50を構成する第2取付部55の肉抜き部551と重なるように形成されている。肉抜き部551は、第2取付部55を形成する樹脂が他の部分よりも薄くなるように形成された部分である。平坦部624を肉抜き部551に重なるように形成したことにより、肉抜き部551における第2取付部55の強度低下を軽減できる。
【0058】
第2排出部626は、第2排出構造62の右端部に形成されている構造である。第2排出部626は、第3案内部625により案内されてきた液体を、右方向に排出させる。このため、第2排出部626は、第2案内部623および第3案内部625と同様に右側に向かうにつれて下方に向かうように傾斜するものの、第2案内部623および第3案内部625よりも傾斜がなだらかとなるように形成されている。これにより、液体は第2排出部626から勢いよく右側に排出される。このため、第2排出部626から排出された液体は、例えば車両のドア内部において、キャリアプレート50よりも右側に排出される。これにより、第2排出構造62の下側に配置されるウインドレギュレータ100の構成、例えば、ガイドレール10およびケーブル30などの少なくともいずれかに液体が到達しにくくすることができる。
【0059】
以上、キャリアプレート50の第1排出構造61および第2排出構造62について説明した。第1排出構造61および第2排出構造62は、キャリアプレート50の第1面51側、すなわちウインドレギュレータ100が車両に取り付けられた状態において、車両の外部側となる面に設けられている。ウインドレギュレータ100の上側から浸入してきた液体は、このような第1排出構造61および第2排出構造62に沿って、左右方向に分かれて排出される。このため、水などの液体に曝された場合に錆が生じうるガイドレール10やケーブル30などが存在しない箇所に向かって、液体を好適に排出することができる。
【0060】
キャリアプレート50の排出構造は、第1排出構造61および第2排出構造62に分かれており、かつ第1排出構造61が設けられた第1取付部54と第2排出構造62が設けられた第2取付部55とが別体に形成されている。これにより、キャリアプレート50全体が一体形成される場合と比較して、形成工程が容易となる。また、第1排出構造61および第2排出構造62が図2などに示すように複雑な形状を有していても、容易に形成することができるとともに、一体形成にて複雑な形状を形成した場合に生じうる、部品の強度低下や割れなどの事態を回避できる。
【0061】
なお、図2および図4に示すように、第1排出構造61および第2排出構造62は、第1面51における領域Rを避けるように配置されている。
【0062】
図2から図4では図示が省略されているが、この領域Rに対応するキャリアプレート50の第2面52側には、キャリアプレート50をガイドレール10に取り付けるための係合部材が取り付けられる。
【0063】
図5は、キャリアプレート50の第2面52側に係合部材70が固定された様子を示す図である。係合部材70は例えば突起部(図示せず)を有し、図2に示す領域R内に形成されている穴部に当該突起部を嵌め入れることにより本体部53に固定される。
【0064】
図6は、係合部材70により、キャリアプレート50がガイドレール10に係合された状態を説明するための図である。図6には、キャリアプレート50がガイドレール10のほぼ最上部に位置している状態における、キャリアプレート50およびガイドレール10を上方から見た様子が示されている。図6に示すように、ガイドレール10の内部に係合部材70が収容されることで、キャリアプレート50はガイドレール10に係合されている。係合部材70はガイドレール10の内部をガイドレール10に沿って移動可能であり、これに伴ってキャリアプレート50もガイドレール10に沿って移動可能となっている。
【0065】
図7および図8は、キャリアプレート50がガイドレール10のほぼ最上部に位置している状態における、ガイドレール10、駆動部40、およびキャリアプレート50の位置関係を示す図である。図7および図8に示されるキャリアプレート50は、図1における右側のキャリアプレートである。
【0066】
図7には、ウインドレギュレータ100の構成のうち、ガイドレール10、駆動部40、およびキャリアプレート50を、斜め上方から見た様子が示される。図7に示すように、キャリアプレート50に設けられた第1排出構造61および第2排出構造62の直下には、ガイドレール10およびケーブル30など、液体に曝されることにより錆が生じうる部品が位置している。従って、キャリアプレート50が有する第1排出構造61および第2排出構造62により、ウインドレギュレータ100の上側から浸入してきた液体が液体により錆が生じうる部品に掛からないように、液体を好適に排出することができる。図示は省略するが、図1に示される左側のキャリアプレート50についても同様に、第1排出構造61および第2排出構造62により、液体により錆が生じうる部品に掛からないように、液体を好適に排出することができる。
【0067】
図8には、駆動部40とキャリアプレート50とを上方から見た様子が示される。図8に示すように、上述した第1排出構造61および第2排出構造62は、キャリアプレート50の第1面51側に形成されている。一方で、駆動部40は、キャリアプレート50の第2面52側に配置されている。このように、キャリアプレート50の排出構造と、駆動部40との前後方向の位置が互いに重ならないように配置されている。このため、第1排出構造61の第1排出部614から排出される液体は、駆動部40の後側を通過し、駆動部40に掛からないようになっている。
【0068】
以上、本開示の実施の形態に係るキャリアプレート50、および当該キャリアプレート50を備えるウインドレギュレータ100について説明した。本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、請求の範囲内において種々の変更が可能である。
【0069】
上述した実施の形態では、ウインドレギュレータ100が車両のバックドアに取り付けられる態様について説明した。本開示のウインドレギュレータは、例えば車両のサイドドアに設けられていてもよい。また、本開示のウインドレギュレータが搭載される車両には、乗用車、トラック、二輪車など、種々の車両が含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートおよび当該キャリアプレートを有するウインドレギュレータに適用できる。
【符号の説明】
【0071】
10 ガイドレール
20 プーリーブラケット
30,30a,30b,30c ケーブル
31 アウターケーシング
40 駆動部
50 キャリアプレート
51 第1面
52 第2面
53 本体部
54 第1取付部
55 第2取付部
551 肉抜き部
56 支持部材
61 第1排出構造
611 第1上端部
612 第1曲部
613 第1案内部
614 第1排出部
62 第2排出構造
621 第2上端部
622 第2曲部
623 第2案内部
624 平坦部
625 第3案内部
626 第2排出部
70 係合部材
100 ウインドレギュレータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8