(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007189
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】空間除染方法及び空間除染装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61L9/01 H
A61L9/01 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108419
(22)【出願日】2023-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】391030620
【氏名又は名称】日本空調サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153981
【弁理士】
【氏名又は名称】衛藤 寛啓
(74)【代理人】
【識別番号】100129492
【弁理士】
【氏名又は名称】毛利 大介
(72)【発明者】
【氏名】中司 等
(72)【発明者】
【氏名】中島 勇一
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CA04
4C180EA53X
4C180EB05X
4C180KK02
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】除染の効果が高い空間除染方法及び空間除染装置を提供すること。
【解決手段】空間除染方法では、空気及び酢酸を含む混合ガスを空間に供給し、過酸化水素を含む水溶液を用いて前記空間を加湿する。空間除染装置は、混合ガス供給ユニットと、加湿ユニットとを備える。混合ガス供給ユニットは、空気及び酢酸を含む混合ガスを空間に供給する。加湿ユニットは、過酸化水素を含む水溶液を用いて前記空間を加湿する。前記混合ガス供給ユニットは、例えば、酢酸溶液の中に空気を送気してバブリングすることで、前記混合ガスを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気及び酢酸を含む混合ガスを空間に供給し、
過酸化水素を含む水溶液を用いて前記空間を加湿する、
空間除染方法。
【請求項2】
請求項1に記載の空間除染方法であって、
酢酸を含む溶液の中に空気を送気してバブリングすることで、前記混合ガスを生成する、
空間除染方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空間除染方法であって、
空間除染方法を行っているとき、前記空間の湿度が60%RH以上80%RH以下である、
空間除染方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の空間除染方法であって、
空間除染方法を行っているとき、前記空間における酢酸の濃度が10ppm以上100ppm以下であり、前記空間における過酸化水素の濃度が10ppm以上100ppm以下である、
空間除染方法。
【請求項5】
空気及び酢酸を含む混合ガスを空間に供給するように構成された混合ガス供給ユニットと、
過酸化水素を含む水溶液を用いて前記空間を加湿するように構成された加湿ユニットと、
を備える空間除染装置。
【請求項6】
請求項5に記載の空間除染装置であって、
前記混合ガス供給ユニットは、酢酸溶液の中に空気を送気してバブリングすることで、前記混合ガスを生成するように構成された、
空間除染装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間除染方法及び空間除染装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製造所、バイオハザード施設、細胞培養加工施設等には、除染を行う必要がある空間が存在する。除染の方法は、特許文献1に開示されている。除染の方法として、過酢酸を含む溶液を、噴霧装置を用いて空間に噴霧する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
除染の効果が一層高い空間除染方法が望まれている。本開示の1つの局面では、除染の効果が高い空間除染方法及び空間除染装置を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面は、空気及び酢酸を含む混合ガスを空間に供給し、過酸化水素を含む水溶液を用いて前記空間を加湿する、空間除染方法である。本開示の1つの局面である空間除染方法は、除染の効果が高い。
【0006】
本開示の別の局面は、空気及び酢酸を含む混合ガスを空間に供給するように構成された混合ガス供給ユニットと、過酸化水素を含む水溶液を用いて前記空間を加湿するように構成された加湿ユニットと、を備える空間除染装置である。本開示の別の局面である空間除染装置は、除染の効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】混合ガス供給ユニットの構成を表す説明図である。
【
図2】空間除染装置の構成を表すブロック図である。
【
図3】小型ブースと空間除染装置とを表す説明図である。
【
図4】実施例1における酢酸の濃度と、過酸化水素の濃度と、温度と、湿度との推移を表すグラフである。
【
図5】比較例1における酢酸の濃度と、温度と、湿度との推移を表すグラフである。
【
図6】安全キャビネットと空間除染装置とを表す説明図である。
【
図7】安全キャビネットにおける空気の循環経路とBIの設置場所とを表す説明図である。
【
図8】実施例2における酢酸の濃度と、過酸化水素の濃度と、温度と、湿度との推移を表すグラフである。
【
図9】比較例2における過酸化水素の濃度と、温度と、湿度との推移を表すグラフである。
【
図10】クリーンルームと空間除染装置とを表す説明図である。
【
図11】実施例3における酢酸の濃度と、過酸化水素の濃度と、温度と、湿度との推移を表すグラフである。
【
図12】比較例3における過酸化水素の濃度と、温度と、湿度との推移を表すグラフである。
【
図13】微生物検査室と空間除染装置とを表す説明図である。
【
図14】実施例4における酢酸の濃度と、過酸化水素の濃度と、温度と、湿度との推移を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.空間除染方法
本開示の空間除染方法は、空間を除染する。空間は、例えば、医薬品製造所、バイオハザード施設、細胞培養加工施設等にある空間である。空間は、例えば、安全キャビネット、アイソレータ、アクセス制限バリアシステム(Restricted Access Barrier System)等の内部の空間である。空間は、例えば、清浄区域の空間、無菌操作区域の空間である。清浄区域の空間、無菌操作区域の空間は、例えば、食品工場等にある。空間は、例えば、その空間と他の領域との境界にある壁、床、天井、又は設備機器を含む。
【0009】
除染とは、空間に存在する微生物を減少させることを意味する。除染とは、例えば、空間に存在する微生物を予め指定された菌数のレベルにまで減少させることを意味する。除染とは、例えば、BIを6log以上減少させることである。BIとは、バイオロジカルインジケータであり、指標菌を意味する。
【0010】
本開示の空間除染方法では、空気及び酢酸を含む混合ガスを空間に供給する。本開示の空間除染方法では、例えば、酢酸を含む溶液(以下では第1溶液とする)の中に空気を送気してバブリングすることで、混合ガスを生成する。第1溶液は、例えば、酢酸の水溶液である。第1溶液における酢酸の濃度は、5w/v%以上50w/v%以下であることが好ましい。第1溶液における酢酸の濃度が5w/v%以上である場合、空間を除染する効果が一層高い。第1溶液における酢酸の濃度が50w/v%以下である場合、空間除染方法を行うときの安全性が一層高い。
【0011】
混合ガスは、空気及び酢酸に加えて、水蒸気をさらに含んでいてもよい。混合ガスを生成し、空間に供給する方法として、
図1に示す混合ガス供給ユニット1を使用する方法がある。
混合ガス供給ユニット1は、流量計11と、容器13と、トラップ15と、配管17、19、21と、を備える。配管17は、図示しない空気供給源から供給された空気18を、流量計11を経て、容器13の内部に送る。流量計11は、容器13の内部に送られる空気18の流量を計測し、表示する。空気18の流量は、例えば、1L/min以上5L/min以下である。
【0012】
容器13の内部には第1溶液23が収容されている。配管17の先端17Aは第1溶液23の中にある。そのため、先端17Aから出た空気18によりバブリングが生じる。容器13のうち、第1溶液23の液面より上の部分には、混合ガス25が生じる。混合ガス25は、第1溶液23を通過した空気のバブルから成る。混合ガス25は、空気と、酢酸とを含む。混合ガス25は、微量の水蒸気も含む。
【0013】
混合ガス25は、容器13から、配管19を通り、トラップ15に流れる。トラップ15は空の容器である。トラップ15において、混合ガス25から、突発した水滴が除去される。混合ガス25は、トラップ15から、配管21を通り、空間除染方法の対象である空間105に流れる。
【0014】
本開示の空間除染方法では、過酸化水素を含む水溶液(以下では第2溶液とする)を用いて空間105を加湿する。第2溶液における過酸化水素の濃度は、2w/v%以上6w/v%以下であることが好ましい。過酸化水素の濃度が2w/v%以上である場合、空間105を除染する効果が一層高い。過酸化水素の濃度が6w/v%以下である場合、空間除染方法を行うときの安全性が一層高い。
【0015】
例えば、加湿器を用いて第2溶液を気化させ、空間105を加湿することができる。加湿器として、市販の製品を使用できる。加湿器の形式として、超音波式、スチーム式、気化式、ハイブリッド式等が挙げられる。
【0016】
例えば、噴霧器、噴霧ノズル、又は加湿器を用いて第2溶液を噴霧することで、空間105を加湿することができる。噴霧器として、例えば、消毒剤の噴霧に用いられる電動噴霧器等が挙げられる。加湿器として、例えば、超音波式の加湿器等が挙げられる。
【0017】
本開示の空間除染方法を行っているとき、空間105の湿度は、60%RH以上80%RH以下であることが好ましい。空間105の湿度が60%RH以上である場合、空間105を除染する効果が一層高い。空間105の湿度が80%RH以下である場合、結露を一層抑制することができる。
【0018】
本開示の空間除染方法を行っているとき、例えば、湿度センサを用いて空間105の湿度を測定することができる。例えば、測定した湿度の値に基づき、空間105の湿度を調整することができる。例えば、測定した湿度の値に基づき、加湿器やノズルを制御することで、空間105の湿度を調整することができる。
【0019】
本開示の空間除染方法を行っているとき、空間105における酢酸の濃度は、10ppm以上100ppm以下であることが好ましく、10ppm以上70ppm以下であることがさらに好ましい。空間105における酢酸の濃度が10ppm以上である場合、空間105を除染する効果が一層高い。空間105における酢酸の濃度が100ppm以下である場合、除染後のガス処理が簡便になる。空間105における酢酸の濃度が70ppm以下である場合、除染後のガス処理がさらに簡便になる。空間105への混合ガス25の供給量が多いほど、空間105における酢酸の濃度は高くなる。第1溶液23における酢酸の濃度が高いほど、空間105における酢酸の濃度は高くなる。空間105における酢酸の濃度の測定方法は、検知管を用いる測定方法である。
【0020】
本開示の空間除染方法を行っているとき、空間105における過酸化水素の濃度は、10ppm以上60ppm以下であることが好ましい。空間105における過酸化水素の濃度が10ppm以上である場合、空間105を除染する効果が一層高い。空間105における過酸化水素の濃度が60ppm以下である場合、空間除染方法を行うときの安全性が一層高い。第2溶液における過酸化水素の濃度が高いほど、空間105における過酸化水素の濃度が高くなる。第2溶液を用いた加湿を促進するほど、空間105における過酸化水素の濃度及び湿度が高くなる。
【0021】
空間105における過酸化水素の濃度の測定方法は、定電位電解法である。過酸化水素の濃度の測定には、定電位電解式ポータブルガス検知器を使用する。本開示の空間除染方法では、例えば、混合ガス25を空間105に供給すると同時に、第2溶液を用いて空間105を加湿する。この場合、空間105を除染する効果が一層高い。
本開示の空間除染方法を行っているとき、空間105における過酢酸の濃度は1ppm以下であることが好ましい。その場合、空間除染方法を行うときの安全性が一層高い。
【0022】
2.空間除染装置101
本開示の空間除染装置101は、例えば、
図2に示す構成を備える。空間除染装置101は、混合ガス供給ユニット1を備える。混合ガス供給ユニット1は、空気及び酢酸を含む混合ガス25を生成し、混合ガス25を空間105に供給する。
【0023】
混合ガス供給ユニット1として、例えば、
図1に示すものが挙げられる。
図1に示す混合ガス供給ユニット1の構成は、前記「1.空間除染方法」の項で述べたものである。
本開示の空間除染装置101は、例えば、本開示の空間除染方法を行うために使用される。第1溶液23及び混合ガス25は、例えば、前記「1.空間除染方法」の項で述べたものである。
【0024】
空間除染装置101は、加湿ユニット103を備える。加湿ユニット103は、第2溶液を用いて空間105を加湿する。加湿ユニット103は、例えば、加湿器を用いて第2溶液を気化させ、空間105を加湿する。加湿器として、市販の製品を使用できる。加湿器の形式として、超音波式、スチーム式、気化式、ハイブリッド式等が挙げられる。第2溶液は、例えば、前記「1.空間除染方法」の項で述べたものである。
【0025】
加湿ユニット103は、例えば、噴霧器、噴霧ノズル、又は加湿器を用いて第2溶液を噴霧することで、空間105を加湿する。噴霧器として、例えば、消毒剤の噴霧に用いられる電動噴霧器等が挙げられる。加湿器として、例えば、超音波式の加湿器等が挙げられる。
【0026】
空間除染装置101は、例えば、混合ガス供給ユニット1及び加湿ユニット103のうちの少なくとも一方を制御するように構成された制御ユニット107をさらに備える。制御ユニット107は、CPU107Aと、例えば、RAM又はROM等の半導体メモリ(以下、メモリ107Bとする)と、を有するマイクロコンピュータを備える。
【0027】
制御ユニット107の各機能は、CPU107Aが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ107Bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、制御ユニット107は、1つのマイクロコンピュータを備えてもよいし、複数のマイクロコンピュータを備えてもよい。
【0028】
空間除染装置101は、例えば、情報取得ユニット109をさらに備える。情報取得ユニット109は、空間105の湿度、空間105の温度、空間105における酢酸の濃度、及び、空間105における過酸化水素の濃度から成る群から選択される1以上を表す情報(以下では空間情報とする)を取得するように構成されている。情報取得ユニット109は、例えば、空間情報を検出可能なセンサを備える。
【0029】
制御ユニット107は、例えば、情報取得ユニット109が取得した空間情報に基づき、混合ガス供給ユニット1及び加湿ユニット103のうちの少なくとも一方を制御する。
制御ユニット107は、例えば、情報取得ユニット109が取得した空間情報に基づき、加湿ユニット103を制御することで、空間105の湿度を、60%RH以上80%RH以下とする。空間105の湿度が60%RH以上である場合、空間105を除染する効果が一層高い。空間105の湿度が80%RH以下である場合、結露を一層抑制することができ、空間105の湿度が75%RH以下である場合、結露を特に抑制することができる。
【0030】
制御ユニット107は、例えば、情報取得ユニット109が取得した空間情報に基づき、混合ガス供給ユニット1を制御することで、空間105における酢酸の濃度を、10ppm以上100ppm以下とする。空間105における酢酸の濃度が10ppm以上である場合、空間105を除染する効果が一層高い。空間105における酢酸の濃度が100ppm以下である場合、除染後のガス処理が簡便になる。制御ユニット107は、例えば、空間105における酢酸の濃度を、10ppm以上70ppm以下とする。空間105における酢酸の濃度が70ppm以下である場合、除染後のガス処理がさらに簡便になる。
【0031】
制御ユニット107は、例えば、情報取得ユニット109が取得した空間情報に基づき、加湿ユニット103を制御することで、空間105における過酸化水素の濃度を、10ppm以上100ppm以下とする。空間105における過酸化水素の濃度が10ppm以上である場合、空間105を除染する効果が一層高い。空間105における過酸化水素の濃度が100ppm以下である場合、空間除染方法を行うときの安全性が一層高い。制御ユニット107は、例えば、空間105における過酸化水素の濃度を、10ppm以上70ppm以下とする。空間105における過酸化水素の濃度が70ppm以下である場合、空間除染方法を行うときの安全性が特に高い。
【0032】
本開示の空間除染装置101は、例えば、混合ガスを空間105に供給すると同時に、第2溶液を用いて空間105を加湿する。この場合、空間105を除染する効果が一層高い。
本開示の空間除染装置101は、例えば、除湿ユニットをさらに備える。除湿ユニットは、空間105の湿度を低下させる。例えば、除湿ユニットにより空間105の湿度を下げながら、加湿ユニット103で加湿することで、空間105における湿度を抑制しつつ、空間105における過酸化水素の濃度を高めることができる。例えば、制御ユニット107は、空間105における湿度及び過酸化水素の濃度が好適な範囲となるように、空間情報に基づき、除湿ユニットを制御することができる。
【0033】
例えば、除湿ユニットを用いて空間105を除湿した後に、空間除染方法を実施することができる。また、例えば、除湿ユニットを用いて空間105を除湿しながら、空間除染方法を実施することができる。除湿ユニットの稼動の態様は、間欠的であってもよいし、連続的であってもよい。
3.空間除染方法及び空間除染装置101が奏する効果
(1A)本開示の空間除染方法及び空間除染装置101は、除染の効果が高い。
【0034】
(1B)本開示の空間除染方法及び空間除染装置101を用いれば、空間105の湿度を抑制しつつ、空間105を効果的に除染することができる。その理由は以下のとおりである。混合ガス25は、酢酸を多く含むが、水蒸気の含有量は少ない。そのため、混合ガス25を空間105に供給することで、空間105の湿度を抑制しつつ、空間105における酢酸の濃度を高くすることができる。また、第2溶液を用いて空間105を加湿することで、空間105の湿度を適度に高めるとともに、空間105における過酸化水素の濃度を高めることができる。第2溶液を用いる加湿を抑制すると、空間105における酢酸の濃度を低下させることなく、空間105の湿度を抑制できる。その結果、空間105の湿度を抑制しつつ、酢酸と過酸化水素との相乗効果により、空間105を効果的に除染することができる。
【0035】
(1C)本開示の空間除染方法は、過酢酸やホルムアルデヒドを使用する除染方法に比べて、安全性が一層高い。また、本開示の空間除染方法では、除染の効果を維持しつつ、空間105における過酸化水素の濃度を抑制することができる。そのため、除染後のガス処理が簡便である。
【0036】
(1D)酢酸及び過酸化水素は短時間で分解する。そのため、酢酸及び過酸化水素を含むガスが空間105の外に漏洩した場合でも、安全性が高い。
(1E)酢酸及び過酸化水素を含むガスは浸透性が高い。そのため、空間105の中に、空気が循環し難い部分がある場合でも、その部分を除染することができる。
【0037】
4.実施例
(4-1)実施例1
図3に示す小型ブース111を用意した。小型ブース111の容積は1m
3であった。小型ブース111の内部は空間105に対応する。小型ブース111の内部に、混合ガス供給ユニット1と、サーキュレータファン225と、 加湿ユニット103と、情報取得ユニット109と、除湿機307とを設置した。
【0038】
混合ガス供給ユニット1はエアーポンプ223を備えていた。エアーポンプ223は、小型ブース111の内部から空気18を取り入れ、取り入れた空気18を流量計11に供給する。空気18の流量は5L/minであった。第1溶液23は、濃度が6w/v%の酢酸の水溶液であった。第1溶液23の量は40mlであった。
【0039】
混合ガス供給ユニット1が混合ガス25を供給する位置は、サーキュレータファン225の前方であった。混合ガス供給ユニット1により供給された混合ガス25は、サーキュレータファン225が発生させる風により拡散された。
【0040】
加湿ユニット103は加湿器であった。加湿ユニット103により、小型ブース111の内部を加湿した。第2溶液は、濃度が2w/v%である過酸化水素の水溶液であった。
本実施例では、情報取得ユニット109は温湿度センサであった。情報取得ユニット109は、小型ブース111の内部における空気の温度と湿度とを検出し、検出結果を制御ユニット107に送った。制御ユニット107は、温度と湿度との測定結果に基づき、加湿ユニット103を制御した。制御ユニット107は、小型ブース111の内部の湿度を75%RH程度に制御した。
【0041】
図3に示すP1の場所にBIを設置した。P1は、小型ブース111の中央付近の場所であった。BIは、Mesa Labs社製の品番HMV-091の指標菌(Geobacillus stearothermophilus (ATCC#12980))であった。BIの菌数は、1×10
6以上であった。BIは過酸化水素用のものであった。
【0042】
混合ガス供給ユニット1により混合ガス25を供給し、加湿ユニット103により加湿することで、空間除染方法を実施した。空間除染方法を実施しているときの、小型ブース111の内部における、過酸化水素の濃度、酢酸の濃度、温度、及び湿度の推移を
図4に示す。
図4の横軸は、加湿と、混合ガス25の供給とを開始した時刻からの経過時間である。
空間除染方法を実施しているとき、除湿機307を連続運転した。除湿機307が連続的に動作している状態で、湿度を75%RH程度に制御しようとすると、除湿機307が動作していない場合に比べて、加湿ユニット103の噴霧量が増える。過酸化水素の気中寿命は短いが、加湿ユニット103の噴霧量が増えることにより、小型ブース111における過酸化水素の濃度を高くすることができる。
【0043】
除染時間が70分のとき、80分のとき、90分のときに、それぞれ、BIをP1の位置から取り出した。除染時間とは、小型ブース111の内部の湿度が75%RHに達した時刻からの経過時間である。次に、専用培地にて適正温度の下で、取り出したBIを7日間培養し、陰性であるか陽性であるかを確認した。陰性とはBIが死滅していることである。陽性とは、BIが死滅していないことである。確認の結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
除染時間が90分のときに取り出したBIは陰性であった。この結果から、90分間の除染により、6log以上の除染レベルを達成できることが確認できた。除染時間が50~90分の期間において、小型ブース111の内部における酢酸の平均濃度は17ppmであり、過酸化水素の平均濃度は31ppmであった。
【0046】
なお、空間除染方法を実施しているとき、小型ブース111の内部における過酢酸の濃度を測定した。過酢酸の濃度の測定方法は、インピンジャで試料を採取し、採取した試料に対し、MTS酸化GC-FID分析法で過酢酸の濃度を測定する方法であった。過酢酸の濃度は、検出下限である0.04ppm以下であった。よって、過酢酸は、除染に寄与していないことが確認できた。後述する実施例においても、過酢酸の濃度は検出下限以下であった。
【0047】
(4-2)比較例1
基本的には実施例1と同様に除染を行った。ただし、比較例1では、第2溶液は、過酸化水素の水溶液ではなく、純水であった。よって、比較例1では、小型ブース111の内部に過酸化水素を供給しなかった。また、比較例1では、第1溶液23は、濃度が12w/v%の酢酸の水溶液であった。
【0048】
空間除染方法を実施しているときの、小型ブース111の内部における、酢酸の濃度、温度、及び湿度の推移を
図5に示す。
図5の横軸は、加湿と、混合ガス25の供給とを開始した時刻からの経過時間である。除染時間が90分のとき、180分のときに、それぞれ、BIをP1の位置から取り出した。除染時間とは、小型ブース111の内部の湿度が75%RHに達した時刻からの経過時間である。次に、専用培地にて適正温度の下で、取り出したBIを7日間培養し、陰性であるか陽性であるかを確認した。確認の結果を表2に示す。
【0049】
【0050】
表2に示すように、いずれのBIも陽性であり、BIは死滅していなかった。除染時間が60~180分の期間において、小型ブース111の内部における酢酸の平均濃度は64ppmであり、実施例1における平均濃度より顕著に高かったが、除染の効果は低かった。この結果は、酢酸のみを空間105に供給しても除染が困難であることを示している。
【0051】
(4-3)実施例2
図6、
図7に示す安全キャビネット201を用意した。安全キャビネット201は、例えば、感染性の高い微生物を取り扱うバイオハザード施設で用いられる。また、安全キャビネット201は、例えば、再生医療等の技術分野において、無菌性を求められる細胞加工等で用いられる。
【0052】
安全キャビネット201は、例えば、6log以上の高い除染レベルが要求される装置である。安全キャビネット201の内部は空間105に対応する。安全キャビネット201の開口部間口は1.3mであった。安全キャビネット201は、バイオハザード対策用クラスIIキャビネットであった。
【0053】
安全キャビネット201は、作業台203を備える。作業台203の上方に作業空間205が存在する。安全キャビネット201は、正面側開口部207を備える。作業空間205は、正面側から見て、正面側開口部207の奥側にある。安全キャビネット201は、ファンルーム209と、天井部排気口211と、HEPA213と、を備える。
【0054】
図6、
図7に示すように、安全キャビネット201の外に設置した循環ファン215と、正面側開口部207とをダクト217で接続した。また、天井部排気口211と循環ファン215とをダクト219で接続した。正面側開口部207のうち、ダクト217を接続した部分以外を、養生テープ及び塩ビパネルで密封した。また、天井部排気口211のうち、ダクト219を接続した部分以外を、を養生テープ及び塩ビパネルで密封した。また、安全キャビネット201におけるその他の隙間も養生テープで密封した。
【0055】
循環ファン215を動作させたとき、
図7において矢印で示す経路に沿った空気の循環が生じる。作業空間205内の空気は、正面側開口部207から、ダクト217、循環ファン215、ダクト219、及び天井部排気口211を順次通り、ファンルーム209に入る。ファンルーム209内の空気の一部は、HEPA213を通り、作業空間205に入る。ファンルーム209内の空気の一部は、奥側通路221を通り、作業台203の奥側から作業空間205に入る。
【0056】
図6に示すように、混合ガス供給ユニット1で生成した混合ガス25を、作業空間205に供給した。混合ガス供給ユニット1はエアーポンプ223を備えていた。エアーポンプ223は、作業空間205から空気18を取り入れ、取り入れた空気18を流量計11に供給する。空気18の流量は5L/minであった。第1溶液23は、濃度が40w/v%である酢酸の水溶液であった。第1溶液23の量は40mlであった。
【0057】
図6に示すように、作業台203の上にサーキュレータファン225を設置した。混合ガス25を供給する位置は、サーキュレータファン225の前方であった。混合ガス供給ユニット1により供給された混合ガス25は、サーキュレータファン225が発生させる風により拡散され、ダクト217に送られた。
【0058】
図6に示すように、加湿ユニット103を作業台203の上に置き、加湿ユニット103により作業空間205を加湿した。第2溶液は、濃度が3w/v%である過酸化水素の水溶液であった。本実施例では、情報取得ユニット109は温湿度センサであった。情報取得ユニット109は、天井部排気口211における空気の温度と湿度とを検出し、検出結果を制御ユニット107に送った。制御ユニット107は、温度と湿度との測定結果に基づき、加湿ユニット103を制御した。制御ユニット107は、安全キャビネット201内の湿度を75%RH程度に制御した。
【0059】
図7に示すP1~P4の場所にBIを設置した。P1は、作業空間205のうち、HEPA213の側の位置であった。P2は、奥側通路221の内部のうち、下側の位置であった。P3は、天井部排気口211に設けられたパンチングメタルの位置であった。P4は、作業台203の下部であった。
【0060】
BIは、Geobacillus stearothermophilus(ATCC#12980)であった。BIの菌数は1×10
6以上であった。安全キャビネット201において
図7に示す空気の循環が生じている状態で、除染を開始した。除染とは、混合ガス供給ユニット1により混合ガス25を供給し、加湿ユニット103により加湿することである。除染中の、安全キャビネット201内の酢酸の濃度と、過酸化水素の濃度と、温度と、湿度との推移を
図8に示す。
図8の横軸は、加湿と、混合ガス25の供給とを開始した時刻からの経過時間である。
【0061】
除染時間が120分のとき、P1、P2、P3から、それぞれ、BIを取り出した。除染時間とは、安全キャビネット201内の湿度が75%RHに達した時刻からの経過時間である。また、除染時間が60分、75分、90分、105分、120分のとき、それぞれ、P4からBIを取り出した。次に、専用培地にて適正温度の下で、取り出したBIを7日間培養し、陰性であるか陽性であるかを確認した。確認の結果を表3に示す。なお、1つの条件で取り出したBIの数は3個であった。条件とは、BIの場所と、BIを取り出したときの除染時間との組み合わせである。3個のうち2個以上のBIが陰性であれば、その条件での除染は成功したと判断した。
【0062】
【0063】
表3に示すように、P1~P4の全ての場所、及び全ての除染時間において除染が成功した。
(4-4)比較例2
基本的には実施例2と同様に除染を行った。ただし、比較例2では、混合ガス25を作業空間205に供給しなかった。すなわち、比較例2では、酢酸を作業空間205に供給しなかった。P4の場所にBIを設置した。
【0064】
除染中の、安全キャビネット201内の過酸化水素の濃度と、温度と、湿度との推移を
図9に示す。
図9の横軸は、加湿を開始した時刻からの経過時間である。
【0065】
除染時間が150分のとき、P1、P2、P3から、それぞれ、BIを取り出した。除染時間とは、安全キャビネット201内の湿度が75%RHに達した時刻からの経過時間である。また、除染時間が80分、90分、100分、110分、120分、130分、140分、150分のとき、それぞれ、P4からBIを取り出した。次に、専用培地にて適正温度の下で、取り出したBIを7日間培養し、陰性であるか陽性であるかを確認した。確認の結果を表4に示す。なお、1つの条件で取り出したBIの数は1個であった。
【0066】
【0067】
表4に示すように、P1~P4の全ての場所、及び全ての除染時間においてBIは陽性であった。この結果は、過酸化水素のみを作業空間205に供給しても除染が困難であることを示している。
【0068】
(4-5)実施例3
図10に示すクリーンルーム301と、前室303とを、空間除染方法の対象とした。クリーンルーム301と前室303との間には扉305があった。扉305は常に開放している状態とした。クリーンルーム301と、前室303との合計の容積は約34m
3であった。クリーンルーム301の内部には、除湿機307と、安全キャビネット201と、除湿機端子ボックス309とが設置されていた。安全キャビネット201は、室内循環型のバイオハザード対策用クラスIIキャビネットであった。
【0069】
クリーンルーム301内に、混合ガス供給ユニット1と、加湿ユニット103と、情報取得ユニット109と、サーキュレータファン225とを設置した。混合ガス供給ユニット1の位置は、クリーンルーム301の中央であった。
【0070】
第1溶液23は、濃度が40w/v%の酢酸の水溶液であった。第1溶液23の量は150mlであった。空気18の流量は10L/minであった。第2溶液は、濃度が2w/v%である過酸化水素の水溶液であった。
【0071】
図10に示すP1~P7の場所にBIを設置した。P1は、安全キャビネット201の作業空間205の吹き出し部の位置であり、HEPA213の下流側の位置であった。P2は、安全キャビネット201の排気側の位置であった。P3は、安全キャビネット201と、その背面の壁との間の位置であった。P4は、除湿機端子ボックス309の中であった。なお、除湿機端子ボックス309の中と外との間で空気は循環し難い。P5は、クリーンルーム301の壁の表面にある位置である。P6は、前室303の壁の表面にある位置であった。P7は、クリーンルーム301の中にある位置であった。
【0072】
まず、除湿機307を用いて、クリーンルーム301及び前室303の湿度を50~60%RHまで下げた。次に、混合ガス供給ユニット1により混合ガス25を供給し、加湿ユニット103により加湿することで、空間除染方法を実施した。空間除染方法を実施しているとき、安全キャビネット201を稼動させた。安全キャビネット201を稼動させることで、除染ガスは、安全キャビネット201の中を循環した。除染ガスとは、酢酸及び過酸化水素を含むガスである。
【0073】
空間除染方法を実施しているとき、加湿ユニット103を制御することで、クリーンルーム301及び前室303の内部の湿度を75%RH程度に制御した。空間除染方法を実施しているとき、除湿機307は、間欠的に動作した。なお、除湿機307は、連続的に動作してもよい。除湿機307が間欠的又は連続的に動作している状態で、湿度を75%RH程度に制御しようとすると、除湿機307が動作していない場合に比べて、加湿ユニット103の噴霧量が増える。過酸化水素の気中寿命は短いが、加湿ユニット103の噴霧量が増えることにより、クリーンルーム301及び前室303における過酸化水素の濃度を高くすることができる。
【0074】
空間除染方法を実施しているとき、サーキュレータファン225により、クリーンルーム301の内部の空気を攪拌した。サーキュレータファン225が送出す風の経路に、加湿ユニット103と、混合ガス供給ユニット1とが存在した。
【0075】
空間除染方法を実施しているときの、クリーンルーム301の内部における、過酸化水素の濃度、酢酸の濃度、温度、及び湿度の推移を
図11に示す。
図11の横軸は、除染時間である。除染時間とは、クリーンルーム301の内部の湿度が75%RHに達した時刻からの経過時間である。除染時間が30~90分の区間において、クリーンルーム301の内部における過酸化水素の平均濃度は42ppmであり、酢酸の平均濃度は67ppmであった。
【0076】
除染時間が180分のとき、P1、P2、P3、P4から、それぞれ、BIを取り出した。また、除染時間が60分、90分、120分、150分、180分のとき、それぞれ、P7からBIを取り出した。次に、専用培地にて適正温度の下で、取り出したBIを7日間培養し、陰性であるか陽性であるかを確認した。確認の結果を表5に示す。なお、1つの条件で取り出したBIの数は3個であった。
【0077】
【0078】
表5に示すように、P1~P4の全ての場所において陰性であった。また、P7において、除染時間が90~180分の場合に陰性であった。クリーンルーム301内の除染ガスは、安全キャビネット20の前面の作業面下部から流入し、排気口と、作業面のHEPA吹き出し部とに分かれて到達する。P1とP2とのBIが陰性であることは、除染ガスが通過する安全キャビネット201内部及びフィルタ部も除染が成功していることを意味する。このことから、除染ガスは浸透性が高く、フィルタ部の中にも浸透できることが確認できた。
【0079】
空気が循環し難い場所であるP4にあったBIも陰性であった。このことは、除染ガスの浸透性が高いことを示している。
(4-6)比較例3
基本的には実施例3と同様に空間除染方法を実施した。ただし、比較例3では、混合ガス25をクリーンルーム301の内部に供給しなかった。すなわち、比較例3では、酢酸をクリーンルーム301の内部に供給しなかった。
【0080】
空間除染方法を実施しているときの、クリーンルーム301の内部における、過酸化水素の濃度、酢酸の濃度、温度、及び湿度の推移を
図12に示す。
図12の横軸は、除染時間である。除染時間とは、クリーンルーム301の内部の湿度が75%RHに達した時刻からの経過時間である。除染時間が0~480分の区間において、クリーンルーム301の内部における過酸化水素の平均濃度は22ppmであった。
【0081】
除染時間が480分のとき、P1、P2、P3、P4、P5、P6から、それぞれ、BIを取り出した。次に、専用培地にて適正温度の下で、取り出したBIを7日間培養し、陰性であるか陽性であるかを確認した。確認の結果を表6に示す。なお、1つの条件で取り出したBIの数は1個であった。
【0082】
【0083】
表6に示すように、P1、P2、P4において、BIは陽性であった。
(4-7)実施例4
図13に示す微生物検査室401を、空間除染方法の対象とした。微生物検査室401の出入り口及び窓は全て閉じた状態とした。微生物検査室401には、実験台403、405、流し407、安全キャビネット201、及び除湿機307が設置されていた。
【0084】
微生物検査室401内に、混合ガス供給ユニット1と、2台の加湿ユニット103と、情報取得ユニット109と、サーキュレータファン225とを設置した。加湿ユニット103は噴霧器であった。第1溶液23は、濃度が40w/v%の酢酸の水溶液であった。第1溶液23の量は150mlであった。空気18の流量は15L/minであった。第2溶液は、濃度が2w/v%である過酸化水素の水溶液であった。
【0085】
図13に示すP1~P5の場所にBIを設置した。B1は、実施例1と同様のものであった。P1は、安全キャビネット201の作業空間205の吹き出し部の位置であり、HEPA213の下流側の位置であった。P2は、安全キャビネット201の排気側の位置であった。
【0086】
P3、P5は床の上の位置であった。P4は、図示しない恒温槽の内部のうち、奥側にある位置であった。恒温槽は、実験台405の上に置かれていた。恒温槽の扉は、2cm程度開けておいた。恒温槽の内部と外部との間では空気の循環が生じ難かった。
【0087】
混合ガス供給ユニット1により混合ガス25を供給し、加湿ユニット103により加湿することで、空間除染方法を実施した。空間除染方法を実施しているとき、安全キャビネット201を稼動させた。安全キャビネット201を稼動させることで、除染ガスは、安全キャビネット201の中を循環した。
【0088】
空間除染方法を実施しているとき、加湿ユニット103を制御することで、微生物検査室401の内部の湿度を75%RH程度に制御した。空間除染方法を実施しているとき、サーキュレータファン225により、微生物検査室401の内部の空気を攪拌した。サーキュレータファン225が送出す風の経路に、混合ガス供給ユニット1が存在した。
【0089】
空間除染方法を実施しているときの、微生物検査室401の内部における、過酸化水素の濃度、酢酸の濃度、温度、及び湿度の推移を
図14に示す。
図14の横軸は、加湿と、混合ガス25の供給とを開始した時刻からの経過時間である。除染時間が30~210分の区間において、微生物検査室401の内部における過酸化水素の平均濃度は30ppmであり、酢酸の平均濃度は35ppmであった。除染時間とは、微生物検査室401の内部の湿度が75%RHに達した時刻からの経過時間である。
【0090】
除染時間が210分のとき、P1、P2、P3、P4から、それぞれ、BIを取り出した。また、除染時間が90分、120分、150分、180分、210分のとき、それぞれ、P5からBIを取り出した。次に、専用培地にて適正温度の下で、取り出したBIを7日間培養し、陰性であるか陽性であるかを確認した。確認の結果を表7に示す。なお、1つの条件で取り出したBIの数は3個であった。
【0091】
【0092】
表5に示すように、除染時間が120分以上の場合、どの場所でも、過半数のBIが陰性であり、除染が成功していた。クリーンルーム301内の除染ガスは、安全キャビネット20の前面の作業面下部から流入し、排気口と、作業面のHEPA吹き出し部とに分かれて到達する。P1とP2とのBIが陰性であることは、除染ガスが通過する安全キャビネット201内部及びフィルタ部も除染が成功していることを意味する。このことから、除染ガスは浸透性が高く、フィルタ部の中にも浸透できることが確認できた。
【0093】
空気が循環し難い場所であるP4にあったBIも陰性であった。このことは、除染ガスの浸透性が高いことを示している。
5.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0094】
(1)上記実施例2では、安全キャビネット内の空間を除染したが、これに限定されるものではない。例えば、アイソレータ、アクセス制限バリアシステム等の内部の空間を除染してもよい。
(2)本開示に記載の制御ユニット107及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御ユニット107及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御ユニット107及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御ユニット107に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0095】
(3)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0096】
(4)上述した空間除染装置101の他、当該空間除染装置101を構成要素とするシステム、制御ユニット107としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、空間除染装置の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
空気及び酢酸を含む混合ガスを空間に供給し、
過酸化水素を含む水溶液を用いて前記空間を加湿する、
空間除染方法。
[項目2]
項目1に記載の空間除染方法であって、
酢酸を含む溶液の中に空気を送気してバブリングすることで、前記混合ガスを生成する、
空間除染方法。
[項目3]
項目1又は2に記載の空間除染方法であって、
空間除染方法を行っているとき、前記空間の湿度が60%RH以上80%RH以下である、
空間除染方法。
[項目4]
項目1~3のいずれか1つの項目に記載の空間除染方法であって、
空間除染方法を行っているとき、前記空間における酢酸の濃度が10ppm以上100ppm以下であり、前記空間における過酸化水素の濃度が10ppm以上100ppm以下である、
空間除染方法。
[項目5]
空気及び酢酸を含む混合ガスを空間に供給するように構成された混合ガス供給ユニットと、
過酸化水素を含む水溶液を用いて前記空間を加湿するように構成された加湿ユニットと、
を備える空間除染装置。
[項目6]
項目5に記載の空間除染装置であって、
前記混合ガス供給ユニットは、酢酸溶液の中に空気を送気してバブリングすることで、前記混合ガスを生成するように構成された、
空間除染装置。
【符号の説明】
【0097】
1…混合ガス供給ユニット、13…容器、15…トラップ、17、19、21…配管、17A…先端、18…空気、20…安全キャビネット、23…第1溶液、25…混合ガス、101…空間除染装置、103…加湿ユニット、105…空間、107…制御ユニット、107A…CPU、107B…メモリ、109…情報取得ユニット、111…小型ブース、201…安全キャビネット、203…作業台、205…作業空間、207…正面側開口部、209…ファンルーム、211…天井部排気口、215…循環ファン、217、219…ダクト、221…奥側通路、223…エアーポンプ、225…サーキュレータファン、301…クリーンルーム、303…前室、305…扉、307…除湿機、309…除湿機端子ボックス、401…微生物検査室、403、405…実験台、407…流し
【手続補正書】
【提出日】2023-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸を含む溶液(ただし、過酢酸及び過酸化水素を含む場合を除く)を用いて、空気及び酢酸を含む混合ガスを生成し、
前記混合ガスを空間に供給し、
過酸化水素を含む水溶液を用いて前記空間を加湿する、
空間除染方法。
【請求項2】
請求項1に記載の空間除染方法であって、
前記酢酸を含む溶液の中に空気を送気してバブリングすることで、前記混合ガスを生成する、
空間除染方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空間除染方法であって、
空間除染方法を行っているとき、前記空間の湿度が60%RH以上80%RH以下である、
空間除染方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の空間除染方法であって、
空間除染方法を行っているとき、前記空間における酢酸の濃度が10ppm以上100ppm以下であり、前記空間における過酸化水素の濃度が10ppm以上100ppm以下である、
空間除染方法。
【請求項5】
空気及び酢酸を含む混合ガスを空間に供給するように構成された混合ガス供給ユニットと、
過酸化水素を含む水溶液を用いて前記空間を加湿するように構成された加湿ユニットと、
を備え、
前記混合ガス供給ユニットは、酢酸溶液(ただし、過酢酸及び過酸化水素を含む場合を除く)を用いて前記混合ガスを生成するように構成された、
空間除染装置。
【請求項6】
請求項5に記載の空間除染装置であって、
前記混合ガス供給ユニットは、前記酢酸溶液の中に空気を送気してバブリングすることで、前記混合ガスを生成するように構成された、
空間除染装置。