(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007190
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ショベル、及びショベルの遠隔操作システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20250109BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/24 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108421
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平手 奨二
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕介
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA07
2D003BB05
2D003BB10
2D003DA04
2D003DB08
2D003FA02
2D015GA03
2D015GB02
(57)【要約】
【課題】安全性の向上を実現する。
【解決手段】実施形態の一態様に係るショベルは、上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回可能に支持する下部走行体と、傾斜センサと、前記傾斜センサの検出結果によって前記下部走行体の接地面が第1の角度より傾斜していると判定された場合、当該接地面が当該第1の角度より傾斜していないと判定された場合と比べて、前記下部走行体が走行する速度を低くする制御を行うように構成されている制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体と、
前記上部旋回体を旋回可能に支持する下部走行体と、
傾斜センサと、
前記傾斜センサの検出結果によって前記下部走行体の接地面が第1の角度より傾斜していると判定された場合、当該接地面が当該第1の角度より傾斜していないと判定された場合と比べて、前記下部走行体が走行する速度を低くする制御を行うように構成されている制御部と、
を備えるショベル。
【請求項2】
前記制御部は、操作装置からの受け付けた操作量に応じて前記下部走行体が走行する速度を制御し、
前記操作装置から第1の操作量を受け付けた際、前記第1の角度より傾斜していると判定された場合、前記第1の角度より傾斜していないと判定された場合と比べて、前記下部走行体が走行する速度を低くする制御を行うように構成されている、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記操作装置は、電気式操作レバーであり、
前記制御部は、前記電気式操作レバーが受け付けた操作量を示した信号に応じて、前記下部走行体が走行する速度の制御を行うように構成されている、
請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記下部走行体に設けられる左のクローラの駆動させる左走行モータと、
前記下部走行体に設けられる右のクローラの駆動させる右走行モータと、を備え、
前記操作装置は、前記左走行モータに対応した左操作レバーと、前記右走行モータに対応した右操作レバーと、を含み、
前記制御部は、前記左操作レバーから第1の操作量を受け付けた際、前記第1の角度より傾斜していると判定された場合、前記第1の角度より傾斜していないと判定された場合と比べて、前記左走行モータの回転数を低くする制御を行い、前記右操作レバーから第1の操作量を受け付けた際、前記第1の角度より傾斜していると判定された場合、前記第1の角度より傾斜していないと判定された場合と比べて、前記右走行モータの回転数を低くする制御を行うように構成されている、
請求項2又は3に記載のショベル。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1の角度より傾斜していると判定された場合、前記第1の角度より傾斜していないと判定された場合と比べて、
前記左操作レバー又は前記右操作レバーが受け付けた操作量に対する、前記左走行モータ又は前記右走行モータを駆動させるための指令値の比率を低くする制御を行うように構成されている、又は、前記指令値を、所定値以下に抑制するように構成されている、
請求項4に記載のショベル。
【請求項6】
前記制御部は、前記傾斜センサの検出結果によって前記下部走行体の前記接地面が前記第1の角度より傾斜していると判定された場合、前記接地面が前記第1の角度より傾斜していないと判定された場合と比べて、前記下部走行体を駆動させる駆動源の回転数を低くする制御を行うように構成されている、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項7】
前記制御部は、所定の操作を受け付けた後、前記第1の角度より傾斜していると判定された場合に、前記接地面が前記第1の角度より傾斜していないと判定された場合と比べて、前記下部走行体が走行する速度を低くする制御を停止するように構成されている、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項8】
前記制御部は、前記傾斜センサの検出結果によって前記下部走行体の前記接地面が前記第1の角度より傾斜していると判定された後、前記第1の角度よりも小さい第2の角度より傾斜していないと判定された場合に、前記下部走行体が走行する速度を低くする制御を停止するように構成されている、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項9】
前記制御部は、
前記ショベルを自律走行させる経路を示された経路情報を取得した場合に、
前記経路情報で示された前記経路のうち、前記下部走行体の前記接地面が前記第1の角度より傾斜している経路に対して、前記接地面が当該第1の角度より傾斜していない経路と比べて、前記下部走行体の速度を低くする設定を行うように構成されている、
請求項1に記載のショベル。
【請求項10】
上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回可能に支持する下部走行体と、傾斜センサと、を備えるショベルと、
前記ショベルを遠隔から操作するための遠隔操作装置と、を備え、
前記遠隔操作装置から第1の操作量を受け付けた際、第1の角度より傾斜していると判定された場合、当該第1の角度より傾斜していないと判定された場合と比べて、前記下部走行体が走行する速度を低くする制御を行うように構成されている、
ショベルの遠隔操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル、及びショベルの遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からショベルは、様々な環境下で利用される。例えばショベルは、作業現場において移動する際に、傾斜地を移動することもある。傾斜地では、アタッチメント等の姿勢状態や動作状態によっては、ショベルは不安定な姿勢状態となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、例えば、特許文献1に記載された技術では、傾斜地の場合に警告を出力することで、安全な操作を促すことを可能としている。しかしながら、特許文献1では、警告を出力するに留まっており、ショベルに対して、具体的にはどのような制御を行えばよいか認識されていない場合もある。
【0005】
上述に鑑み、ショベルが、傾斜地を走行する場合に、走行する速度を低くする制御を行うことで、安全性の向上を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るショベルは、上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回可能に支持する下部走行体と、傾斜センサと、前記傾斜センサの検出結果によって前記下部走行体の接地面が第1の角度より傾斜していると判定された場合、当該接地面が当該第1の角度より傾斜していないと判定された場合と比べて、前記下部走行体が走行する速度を低くする制御を行うように構成されている制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、走行する速度を低くする制御を行うことで、安全性の向上を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るショベルの側面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る左走行油圧モータの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るショベルの接地面の走行状態を例示した図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る操作装置に対する操作量と指令電流との関係の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、変形例に係る操作装置に対する操作量と指令電流との関係の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係るショベルコントローラによる走行する速度の調整手順を示したフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係るショベルの自律制御システムの一例を示す概要図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る自律制御システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係る自律制御システムにおける、ショベルの自律制御による移動手順を示したシーケンス図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態に係る遠隔操作システムの一例を示す概要図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態に係る遠隔操作システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態に係るショベル及び遠隔操作室による遠隔操作を示したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、
図1を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る作業機械としてのショベル100の側面図である。ショベル100の下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載される。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられる。エンドアタッチメントは、法面用バケット又は浚渫用バケット等であってもよい。
【0011】
ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントATを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0012】
ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられる。掘削アタッチメントには、バケットチルト機構が設けられていてもよい。
【0013】
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度であるブーム角度を検出できる。ブーム角度は、例えば、ブーム4を最も下げたときに最小角度となり、ブーム4を上げるにつれて大きくなる。
【0014】
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出する。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度であるアーム角度を検出できる。アーム角度は、例えば、アーム5を最も閉じたときに最小角度となり、アーム5を開くにつれて大きくなる。
【0015】
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出する。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度であるバケット角度を検出できる。バケット角度は、例えば、バケット6を最も閉じたときに最小角度となり、バケット6を開くにつれて大きくなる。
【0016】
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、又は、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ等であってもよい。ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3は、掘削アタッチメントの姿勢を検出する姿勢センサを構成する。
【0017】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の駆動源が搭載されている。また、上部旋回体3には、旋回用油圧モータ、ショベルコントローラ30、撮像装置S6等が取り付けられている。旋回用油圧モータは旋回用電動発電機であってもよい。
【0018】
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、ディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14(
図2参照)及びパイロットポンプ15(
図2参照)のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0019】
駆動源はエンジン11に限定されず、モータでもよい。ショベル100は、駆動源として、エンジン及びモータを備えていてもよい。ショベル100は、エンジンのみで駆動されるものでもよく、エンジン及びモータにより駆動されるハイブリッドタイプのものでもよく、モータのみにより駆動される電気ショベル(電気式の作業機械)でもよい。
【0020】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、撮像装置S6、測位装置S10、及び通信装置T1等が搭載されている。
【0021】
機体傾斜センサS4は、所定の平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出するように構成されている。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、水平面に関する上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角及び左右軸回りの傾斜角を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交してショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。
【0022】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出するように構成されている。本実施形態では、旋回角速度センサS5は、ジャイロセンサである。旋回角速度センサS5は、レゾルバ又はロータリエンコーダ等であってもよい。旋回角速度センサS5は、旋回速度を検出してもよい。旋回速度は、旋回角速度から算出されてもよい。
【0023】
撮像装置S6は、ショベル100の周囲を撮像するように構成されている。撮像装置S6は、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、距離画像カメラ、赤外線カメラ、LiDAR等である。撮像装置S6は、上部旋回体3の上面の後端に取り付けられた後方カメラS6B、上部旋回体3の上面の左端に取り付けられた左カメラS6L、及び上部旋回体3の上面の右端に取り付けられた右カメラS6Rを含む。
【0024】
後方カメラS6B、左カメラS6L及び右カメラS6Rはいずれも、光軸が斜め下方を向くように、且つ、上部旋回体3の一部が撮像範囲に含まれるように上部旋回体3に取り付けられている。後方カメラS6B、左カメラS6L、及び右カメラS6Rのそれぞれの撮像範囲は、例えば、平面視で約180度の視野角を有する。
【0025】
測位装置S10は、ショベル100の位置に関する情報を取得するように構成されている。本実施形態では、測位装置S10は、基準座標系におけるショベル100の位置及び向きを測定するように構成されている。具体的には、測位装置S10は、電子コンパスを組み込んだGNSS受信機であり、ショベル100の現在位置の緯度、経度、及び高度を測定し、且つ、ショベル100の向きを測定する。本実施形態に係る基準座標系とは、例えば、世界測地系である。世界測地系は、地球の重心に原点をおき、X軸をグリニッジ子午線と赤道との交点の方向に、Y軸を東経90度の方向に、そして、Z軸を北極の方向にとる三次元直交XYZ座標系である。
【0026】
キャビン10内には、ショベルコントローラ30が設置される。また、キャビン10内には、運転席、表示装置DI、及び操作装置26等が設置されている。
【0027】
ショベルコントローラ30は、各種演算を実行する演算装置である。ショベルコントローラ30は、例えば、キャビン10内に設けられ、ショベル100の駆動制御を行う。ショベルコントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、その組み合わせにより実現されてよい。例えば、ショベルコントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置、及び各種入出力用のインターフェース装置等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。ショベルコントローラ30は、例えば、不揮発性の補助記憶装置にインストールされる各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0028】
通信装置T1は、ショベル100の外部にある機器との通信を制御するように構成されている。本実施形態では、通信装置T1は、(無線通信網を含む)通信回線を介し、通信装置T1とショベル100の外部にある機器との間の通信を制御するように構成されている。通信装置T1は、例えば、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュールや衛星通信網に接続するための衛星通信モジュール等を含む。
【0029】
また、通信装置T1は、例えば、外部のGNSS(Global Navigation Satellite System)測量システムとショベル100との間の無線通信を制御する。
【0030】
[ショベルの油圧システム]
次に、
図2を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。
図2は、本実施形態に係るショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
図2は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御系を、それぞれ、二重線、実線、破線及び点線で示している。
【0031】
ショベル100の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブユニット17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作センサ29、及びショベルコントローラ30等を含む。
【0032】
図2において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させることができるように構成されている。
【0033】
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0034】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給できるように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0035】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、ショベルコントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0036】
パイロットポンプ15は、パイロット圧生成装置の一例であり、パイロットラインを介して油圧制御機器に作動油を供給できるように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロット圧生成装置は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給する機能に加え、パイロットラインを介して各種油圧制御機器に作動油を供給する機能を備えていてもよい。この場合、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。
【0037】
コントロールバルブユニット17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を含む。制御弁175は制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁176Rを含む。コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できるように構成されている。制御弁171~176は、例えば、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行油圧モータ2ML、右走行油圧モータ2MR及び旋回油圧モータ2Aを含む。
【0038】
操作装置26は、操作者がアクチュエータを操作できるように構成されている。本実施形態では、操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータを操作できるように構成された油圧アクチュエータ操作装置を含む。具体的には、油圧アクチュエータ操作装置は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、ショベルコントローラ30によって制御される比例弁31を介してコントロールバルブユニット17内の対応する制御弁171~176のパイロットポートに供給できるように構成されている。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0039】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出できるように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。
【0040】
操作センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出できるように構成されている。本実施形態では、操作センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を検出し、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。
【0041】
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0042】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
【0043】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0044】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0045】
左走行油圧モータ2MLは、下部走行体1に設けられる左クローラの駆動させるために用いられる。右走行油圧モータ2MRは、下部走行体1に設けられる右クローラの駆動させるために用いられる。
【0046】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0047】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0048】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0049】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0050】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0051】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、及び175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、及び175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0052】
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収パワー(吸収馬力)がエンジン11の出力パワー(出力馬力)を超えないようにするためである。
【0053】
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
【0054】
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
【0055】
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左側パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0056】
図2に示す例では、左操作レバー26Lは、前後方向に操作されたときにアーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときに旋回操作レバーとして機能する。
【0057】
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
【0058】
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右側パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0059】
図2に示す例では、右操作レバー26Rは、前後方向に操作されたときにブーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときにバケット操作レバーとして機能する。
【0060】
走行レバー26Dは、クローラの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
【0061】
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0062】
操作センサ29は、操作センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。操作の内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0063】
同様に、操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。
【0064】
ショベルコントローラ30は、操作センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また、ショベルコントローラ30は、絞り18の上流に設けられた制御圧センサ19の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
【0065】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。ショベルコントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。ショベルコントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0066】
具体的には、
図2で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、ショベルコントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、ショベルコントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、ショベルコントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
【0067】
上述のような構成により、
図2の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、
図2の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
【0068】
即ち、ショベルコントローラ30は、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収パワー(吸収馬力)がエンジン11の出力パワー(出力馬力)を超えないように算出された第1の吐出量と、制御圧センサ19で検出された制御圧に基づいて算出された第2の吐出量と、のうち、小さい方の吐出量となるようにレギュレータ13を制御する。
【0069】
また、ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。また、旋回油圧モータ2Aには左旋回圧センサS10L及び右旋回圧センサS10Rが取り付けられている。
【0070】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。左旋回圧センサS10Lは、旋回油圧モータ2Aの左側ポートにおける作動油の圧力を検出する。右旋回圧センサS10Rは、旋回油圧モータ2Aの右側ポートにおける作動油の圧力を検出する。各センサで検出された値は、ショベルコントローラ30に送信される。
【0071】
次に、
図3を参照し、ショベルコントローラ30がアクチュエータを動作させるための構成について説明する。
図3は、油圧システムの一部を抜き出した図である。具体的には、
図3は、左走行油圧モータ2MLの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【0072】
図3に示すように、油圧システムは、比例弁31を含む。比例弁31は、左走行油圧モータ2MLを制御するために、比例弁31DL及び比例弁31DRを含む。
【0073】
比例弁31は、マシンコントロール用制御弁として機能する。比例弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートとを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、ショベルコントローラ30が出力する制御指令(指令電流)に応じて動作する。そのため、ショベルコントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31を介し、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。そして、ショベルコントローラ30は、比例弁31が生成するパイロット圧を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
【0074】
この構成により、ショベルコントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。また、ショベルコントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させることができる。
【0075】
例えば、
図3に示すように、左走行レバー26DLは、電気式操作レバーであって、左クローラを操作するためにも用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁171のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左走行レバー26DLは、後方向に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁171の左側パイロットポートに作用させる。また、左走行レバー26DLは、前方向に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁171の右側パイロットポートに作用させる。
【0076】
操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をショベルコントローラ30に対して出力する。
【0077】
比例弁31DLは、ショベルコントローラ30が出力する制御指令(指令電流)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DLを介して制御弁171の左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DRは、ショベルコントローラ30が出力する制御指令(指令電流)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31DRを介して制御弁171の右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31DLは、制御弁171を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。同様に、比例弁31DRは、制御弁171を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0078】
また、比例弁31DLと制御弁171の一方のポート(制御弁171の左側ポート)とを接続するパイロットラインには、パイロット圧を検出するパイロット圧センサ32DLが設けられている。また、比例弁31DRと制御弁171の他方のポート(制御弁171の右側ポート)とを接続するパイロットラインには、パイロット圧を検出するパイロット圧センサ32DRが設けられている。各パイロット圧センサ32DL,32DRで検出された値は、ショベルコントローラ30に送信される。
【0079】
この構成により、ショベルコントローラ30は、操作者による後退操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DLを介し、制御弁171の左側パイロットポートに供給できる。また、ショベルコントローラ30は、操作者による後退操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DLを介し、制御弁171の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、ショベルコントローラ30は、操作者による後退操作に応じ、或いは、操作者による後退操作とは無関係に、ショベル100を左クローラで後退させることができる。
【0080】
また、ショベルコントローラ30は、操作者による前進操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DRを介し、制御弁171の右側パイロットポートに供給できる。また、ショベルコントローラ30は、操作者による前進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31DRを介し、制御弁171の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、ショベルコントローラ30は、操作者による前進操作に応じ、或いは、操作者による前進操作とは無関係に、ショベル100を左クローラで前進させることができる。
【0081】
右走行レバー26DRで右クローラを操作するための構成は、
図3で示した、左走行レバー26DLで左クローラを操作するための構成と略同様として説明を省略する。
【0082】
また、操作装置26の形態として電気式操作レバーに関する説明を記載したが、電気式操作レバーではなく油圧式操作レバーが採用されてもよい。この場合、油圧式操作レバーのレバー操作量は、圧力センサによって圧力の形で検出されてショベルコントローラ30へ入力されてもよい。また、油圧式操作レバーとしての操作装置26と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置されてもよい。電磁弁は、ショベルコントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、油圧式操作レバーとしての操作装置26を用いた手動操作が行われると、操作装置26は、レバー操作量に応じてパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。また、各制御弁は電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式操作レバーのレバー操作量に対応するショベルコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
【0083】
[ショベルの傾斜地の走行]
次に、ショベル100が傾いた接地面を走行する場合について説明する。
図4は、本実施形態に係るショベル100の接地面の走行状態を例示した図である。
図4に示されるように、ショベル100が、接地面が平坦な地点1401に存在する場合、ショベルコントローラ30は通常通りの制御を行う。
【0084】
そして、ショベル100が前進して地点1402に到着した時に、ショベル100は傾き始める。これにより、上部旋回体3に設けられた機体傾斜センサS4が、ショベル100の接地面が傾斜したことを検知する。
図4に示される接地面の傾斜角θは、例えば10度以上の角度であればよい。
【0085】
その後、ショベル100は、傾斜した接地面に沿って走行する。そして、ショベル100が、傾斜した接地面を走行する場合に、ショベル100に係る重力等によって滑ったり、走行している速度が速くなったりする可能性がある。
【0086】
特に、ショベル100が走行する作業現場では、接地面が適切に整備されてない可能性もある。この場合、例えば、ショベル100が地点1403等に来た段階で、ショベル100の右クローラ又は左クローラが滑る可能性がある。さらには、左走行レバー26DLと右走行レバー26DRとの傾きが同じであっても、均当に作動油が流れないため右クローラと左クローラとの速度が異なる場合もある。このように、いくつかの要因によってショベル100の機体が傾く可能性がある。この場合、ショベル100に搭乗している操作者は、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRのうちいずれか一つ以上を操作して、ショベル100の機体の傾きを解消するように制御する必要がある。
【0087】
このようなショベル100が滑るのは、ショベル100の走行している速度が速い場合に生じやすい。
【0088】
そこで、本実施形態に係るショベルコントローラ30は、機体傾斜センサS4(傾斜センサの一例)の検出結果によって下部走行体1の接地面が10度より傾斜していると判定した場合、当該接地面が当該10度より傾斜していない、例えば平坦であると判定した場合と比べて、下部走行体1が走行する速度を低くする制御を行う。
【0089】
図4に示される例では、傾斜角θの接地面をショベル100が下る場合について説明した。つまり、ショベル100が下る場合には、ショベル100が重力で引かれるので、操作者が予想している以上に速度がでる可能性があるためである。特に、平地から下り坂に遷移する際には、ショベル100に急に重力による加速等が生じる可能性がある。そこで、本実施形態においてはショベル100が下りを開始した際に速度を低くする制御を可能としている。これにより安全性の向上を実現できる。しかしながら、本実施形態に係るショベルコントローラ30の制御は、傾斜角θ以上の接地面をショベル100が下る場合に制限するものではなく、傾斜角θ以上の接地面をショベル100が上る場合に適用してもよい。
【0090】
<<ショベルの機能ブロック>>
図2に戻り、ショベル100のショベルコントローラ30内の各機能ブロックについて説明する。なお、ショベルコントローラ内の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにより実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。
【0091】
ショベルコントローラ30は、プログラムを実現することで、取得部301と、走行制御部302と、判定部303と、調整部304と、を備える。
【0092】
取得部301は、ショベル100に設けられた各種検出装置からの信号を取得する。例えば、取得部301は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3の検出結果を取得する。また、取得部301は、画像情報、傾斜角情報、及び位置情報を取得する。
【0093】
画像情報は、撮像装置S6により撮像された情報とする。傾斜角情報は、機体傾斜センサS4によりショベル100の傾きを示した情報とする。位置情報は、測位装置S10により測定された基準座標系におけるショベル100の位置及び向きを示した情報とする。
【0094】
また、取得部301は、操作センサ29から、操作者による操作装置26の操作内容を取得する。これにより、ショベルコントローラ30は、操作装置26に対して行われた操作方向及び操作量を認識できる。
【0095】
走行制御部302は、操作装置26に対して行われた操作方向及び操作量に従って、比例弁31に対する制御指令(指令電流)を出力する。例えば、走行制御部302は、左走行レバー26DL又は右走行レバー26DRが受け付けた操作方向及び操作量に基づいて、流路面積を変更するための制御指令を比例弁31に出力する。これにより、制御弁171又は制御弁172のパイロットポートに供給される作動油を調整できる。
【0096】
これにより、制御弁171が、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行油圧モータ2MLへの供給を制御し、制御弁172が、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行油圧モータ2MRへの供給を制御する。
【0097】
左走行油圧モータ2ML及び右走行油圧モータ2MRの各々に流れる作動油の流量を制御することで、左クローラ及び右クローラのいずれか一つ以上を動作させて、下部走行体1が走行する速度を制御できる。
【0098】
つまり、走行制御部302は、操作装置26に対して行われた操作方向及び操作量に従って、下部走行体1が走行する速度を制御できる。
【0099】
判定部303は、傾斜角情報に基づいて、下部走行体1の接地面が10度(第1の角度の一例)より傾斜しているか否かを判定する。なお、本実施形態は、判定する基準となる角度が10度の場合について説明するが、判定する基準となる角度を10度に制限するものではない。ショベル100の実施態様に応じて適切な角度を設定すればよい。
【0100】
調整部304は、判定部303により下部走行体1の接地面が10度より傾斜していると判定された場合に、10度より傾斜していないと判定された場合と比べて、下部走行体1が走行する速度を低くなるように、比例弁31に出力される制御指令を調整する制御を行う。本実施形態に係る調整部304は、左走行レバー26DL又は右走行レバー26DRの操作量に対応する指令電流の関係を調整する。
【0101】
図5は、本実施形態に係る操作装置26に対する操作量と指令電流との関係の一例を示すグラフである。横軸は、操作センサ29DLで検出された左走行レバー26DLの操作量である。縦軸は、比例弁31へ出力される指令電流である。判定部303により下部走行体1の接地面が10度より傾斜していないと判定された場合、走行制御部302は、左走行レバー26DLの操作量に応じた指令電流1501を比例弁31に出力する。左走行レバー26DLの中立位置付近は、不感帯となっており、操作量に対し指令電流は出力されない(指令電流はゼロである)。そして、左走行レバー26DLの不感帯を超えて操作されると、操作量に応じた指令電流1501が出力される。
【0102】
なお、左走行レバー26DLが一の方向(例えば、
図5において右方向)への操作を受け付けた場合、走行制御部302は、一方の比例弁31DLに指令電流1501Aを出力する。また、左走行レバー26DLを一の方向とは逆向きの他の方向(例えば、
図5において左方向)への操作を受け付けた場合、走行制御部302は、他方の比例弁31DRに指令電流1501Bを出力する。
【0103】
そして、調整部304は、判定部303により下部走行体1の接地面が10度より傾斜していると判定された場合に、10度より傾斜していないと判定された場合と比べて、操作量に対応して指令電流を小さくする調整を行う。
【0104】
具体的には、判定部303により下部走行体1の接地面が10度より傾斜していると判定された場合には、左走行レバー26DLを一の方向(例えば、
図5において右方向)に操作された場合、走行制御部302は、一方の比例弁31DLに指令電流1502Aを出力し、左走行レバー26DLを一の方向とは逆向きの他の方向(例えば、
図5において左方向)に操作された場合、走行制御部302は、他方の比例弁31DRに指令電流1502Bを出力する。
【0105】
このように、判定部303により下部走行体1の接地面の傾斜角が10度より大きいと判定された場合には、操作量に対応して指令電流1502が出力される。
図5に示されるように操作量m1より大きくなった場合に、指令電流1502Aで示されるように操作量に対応して出力される指令電流の変化が緩やかになると共に、操作量-m1より小さくなった場合に、指令電流1501Bで示されるように操作量に対応して出力される指令電流の変化が緩やかになる。
【0106】
つまり、操作量に対する指令電流が低くなるので、下部走行体1が走行する速度を低くすることができる。これにより、ショベル100の最高速度が抑制される。例えば、ショベル100は通常5.6km/hで走行している場合に、傾斜角が10度より大きいと判定された場合に、ショベル100の速度が3.4km/hを超えないように抑制される。本実施形態では、接地面の傾斜角が10度より大きい場合、接地面が平坦な場合と比べて、操作量に対応する指令電流を低くしているので、操作者は特別な操作を行うことなく、走行している速度を低減できるので、操作性の向上を実現できる。
【0107】
本実施形態では、操作装置26が電気式操作レバーのため、ショベル100の速度を低減させるために、操作量に対応する指令電流を低減させることで実現できる。したがって、油圧式操作レバーを用いた場合と比べて、当該機能を実現するための作業負担を軽減できる。
【0108】
換言すれば、左走行レバー26DL(左操作レバーの一例)から、絶対値がm1以上の操作量(第1の操作量の一例)を受け付けた際、ショベルコントローラ30は、接地面が10度より傾斜している場合、接地面が10度より傾斜していない場合と比べて、左走行油圧モータ2MLの回転数を低くする制御を行い、右走行レバー26DRから、絶対値がm1以上の操作量(第1の操作量の一例)を受け付けた際、接地面が10度より傾斜している場合、接地面が10度より傾斜していない場合と比べて、右走行油圧モータ2MRの回転数を低くする制御を行うように構成されている。本実施形態では、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRの各々で走行油圧モータ2Mの調整が可能となるので、ショベル100が傾いた場合の調整が容易になる。
【0109】
さらには、ショベルコントローラ30は、操作量に対応する指令電流(指令値の一例)の変化を緩やかにするので、左走行レバー26DL又は右走行レバー26DRの操作量に対応する、左走行油圧モータ2ML又は右走行油圧モータ2MRを駆動させるための回転数(出力値の一例)の比率を低くするよう制御する。つまり、本実施形態では、走行レバーの操作量に対応するクローラの速度の変化量を緩やかにするので、ショベル100が傾斜地を走行している時に傾いた場合に、当該傾きを修正するための速度の微調整が容易になる。
【0110】
なお、本実施形態は、指令電流の調整手法を、
図5に示される手法に制限するものではなく、指令電流の上限を制御する手法を用いてもよい。
【0111】
図6は、変形例に係る操作装置26に対する操作量と指令電流との関係の一例を示すグラフである。横軸は、操作センサ29DLで検出された左走行レバー26DLの操作量である。縦軸は、比例弁31へ出力される指令電流である。変形例に係るショベルコントローラ30は、判定部303により下部走行体1の接地面が10度より傾斜していないと判定された場合、左走行レバー26DLの操作量に応じた比例弁31の指令電流1501を制御して出力する。
【0112】
そして、調整部304は、判定部303により下部走行体1の接地面が10度より傾斜していると判定された場合に、指令電流(指令値の一例)の絶対値が、上限値It(所定値の一例)を超えないよう(所定値以下に抑制するよう)に調整される。なお、本実施形態に係る指令電流の上限値Itは一例を示したものであり、実施態様に応じて定められる。
【0113】
具体的には、判定部303により下部走行体1の接地面が10度より傾斜していると判定された場合に、左走行レバー26DLを一の方向(例えば、
図6において右方向)に操作を受け付けた際、走行制御部302は、比例弁31DLに、操作量m2までは指令電流1501Aを出力し、操作量m2以上では(上限値Itである)指令電流1602Aを出力する。一方、左走行レバー26DLを一の方向とは逆向きの他の方向(例えば、
図6において左方向)に操作を受け付けた際、走行制御部302は、他方の比例弁31DRに、操作量-m2までは指令電流1501Bを出力し、操作量-m2以下では(下限値-Itである)指令電流1602Bを出力する。これにより、指令電流が、絶対値"It"以上になることが抑制される。当該制御によって、指令電流が高くならないように制御されるので、ショベル100が走行している速度が制限される。したがって、ショベル100が傾斜地で滑ること等が抑制されるので、安全性の向上を実現する。
【0114】
また、調整部304は、機体傾斜センサS4の検出結果によって下部走行体1の接地面が10度より傾斜していると判定された後、5度(第2の角度の一例)より傾斜していないと判定された場合に、下部走行体1が走行する速度を低くする制御を停止、換言すれば、操作量に対応して指令電流1501が出力されるように調整する。これにより、ショベル100は、傾斜地から平坦な地を走行する場合に、操作量に対応する指令電流が元に戻るので、操作者は通常通りの操作が可能になる。したがって、操作者が操作する際の違和感等が生じるのを抑制し、操作性の向上を実現できる。なお、制御を元に戻すための傾斜角5度は、実施態様に応じて定められる角度であって、速度の低減を開始する角度(本実施形態では10度)より低い角度であればよい。
【0115】
上述した指令電流の調整は、操作者によっては不要な場合がある。そこで、本実施形態においては、指令電流を調整するか否かを切り替え可能とした。このために本実施形態においては、キャビン10内に傾斜切替ボタン52(
図2参照)が設けられている。傾斜切替ボタン52は、操作者の押下によって、指令電流の調整のオンとオフとが切り替えられる。傾斜切替ボタン52がオンの場合に上述した制御を行うものして説明を省略する。
【0116】
そして、調整部304は、傾斜切替ボタン52をオフにする操作を受け付けた後、傾斜角θが10度より傾斜していると判定された場合に、10度より傾斜していないと判定された場合と比べて、下部走行体1が走行する速度を低くする制御を停止させる。これにより、操作者は、傾斜角θが10度より傾斜しているか否かにかかわらず、通常通りの操作が可能となるので、違和感等が生じるのを抑制して、操作性の向上を実現できる。
【0117】
次に、本実施形態に係るショベルコントローラ30による走行する速度の調整手順について説明する。
図7は、本実施形態に係るショベルコントローラ30による走行する速度の調整手順を示したフローチャートである。
【0118】
まず、取得部301が、機体傾斜センサS4から、傾斜角θを取得する(S1701)。そして、判定部303が、取得した傾斜角θが10度より大きいか否かを判定する(S1702)。取得した傾斜角θが10度以下であると判定した場合(S1701)。再びS1701から処理を繰り返す。
【0119】
一方、判定部303が、取得した傾斜角θが10度より大きいと判定した場合(S1702:YES)、判定部303は、傾斜切替ボタンがオンであるか否かを判定する(S1703)。オンではない、換言すればオフであると判定した場合(S1703:NO)、特に制御を行うことなく、再びS1701から処理を繰り返す。
【0120】
一方、判定部303は、傾斜切替ボタンがオンであると判定した場合(S1703:YES)、調整部304が、操作量に対応する指令電流を小さくする調整を行う(S1704)。これにより、ショベル100が走行する速度が低減される。
【0121】
その後、取得部301が、機体傾斜センサS4から、傾斜角θを取得する(S1705)。そして、判定部303が、取得した傾斜角θが5度より小さくなったか否かを判定する(S1706)。判定部303が、取得した傾斜角θが5度以上と判定した場合(S1706:YES)、再びS1705から処理を行う。
【0122】
一方、判定部303が、取得した傾斜角θが5度より小さいと判定した場合(S1706:YES)、操作量に対応する指令電流を元に戻す調整を行う(S1707)。その後、再びS1701から処理を行う。
【0123】
本実施形態では、ショベルコントローラ30が上述した制御を行うことで、ショベル100の接地面の傾斜角に応じて、操作量に対応する指令電流を調整できる。したがって、ショベル100が走行する速度が高くなるのを抑制できるので、ショベル100が滑ったりすることを抑制できる。
【0124】
(第1の実施形態の変形例)
上述した実施形態では、設置面の傾斜角が10度より大きい場合に、ショベル100の速度を低減させる手法として、指令電流を調整する例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、指令電流を調整する態様に制限するものではない。そこで変形例では、エンジン11の回転数を調整する例について説明する。
【0125】
本変形例では、判定部303が、機体傾斜センサS4の検出結果によって下部走行体1の接地面の傾斜角が10度より大きいと判定した場合、調整部304が、傾斜角が10度より傾斜していないと判定された場合と比べて、下部走行体1を駆動させるエンジン11の回転数を低くする調整を行う。
【0126】
例えば、傾斜角が10度より大きいと判定された場合に、調整部304は、エンジン11の回転数を、1800rpmから900rpmに調整する。これにより、例えば傾斜角θが10度より大きくなる前は、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRの操作量が100%の場合に、ショベル100が速度5.6km/hで走行していた場合に、傾斜角θが10度より大きくなった後、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRの操作量が100%の場合、ショベル100が速度2.8km/hで走行する。
【0127】
したがって、傾斜角θが10度より大きくなった場合に、ショベル100の速度が低減されるので、上述した実施形態と同様の効果を得られる。また、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRの操作量に対応する速度の変化が緩やかになるので、速度の微調整が可能となる。したがって、本変形例は、操作性の向上を実現できる。
【0128】
(第2の実施形態)
上述した実施形態及び変形例では、操作者がショベルを操作する場合について説明した。しかしながら、実施形態及び変形例は、操作者がショベルを操作する場合に制限するものではない。そこで第2の実施形態では、ショベルで自律制御を行う場合について説明する。
【0129】
まず、
図8を参照して、自律制御システムSYSの概要を説明する。
図8は、第2の実施形態に係るショベルの自律制御システムSYSの一例を示す概要図である。
【0130】
<ショベル管理システムを構成する機器>
図8に示すように、第2の実施形態に係るショベルの自律制御システムSYSは、ショベル100Aと、管理装置200と、を含んでいる。ショベル100Aと、管理装置200と、は、通信回線NWを通じて、相互に通信することができる。
【0131】
ショベル100Aは、自律制御可能なショベルである。ショベル100Aは、第1の実施形態のショベル100と比べて、ショベルコントローラ30と実行する処理が異なる、ショベルコントローラ30Aが搭載されている。
【0132】
ショベル100Aのハードウェア構成は、第1の実施形態のショベル100と同様の構成を備える他に、前カメラS6Fと、空間認識装置S11と、を備えている。
【0133】
前カメラS6Fは、ショベル100Aの前方の空間を撮像する。前カメラS6Fは、例えば、キャビン10の屋根に取り付けられている。
【0134】
ショベル100Aは、後方カメラS6B、左カメラS6L及び右カメラS6Rに加えて、前カメラS6Fを備えていることで、ショベルコントローラ30Aは、ショベル100Aの周囲を認識できる。
【0135】
空間認識装置S11は、ショベル100Aの周囲の空間の形状を認識するように構成されている。空間認識装置S11は、ショベル100Aの後方の空間の検知を行う後方空間認識装置S11B、ショベル100Aの左方の空間の検知を行う左方空間認識装置S11L、ショベル100Aの右方の空間の検知を行う右方空間認識装置S11R、及びショベル100Aの前方の空間の検知を行う前方空間認識装置S11Fを含む。
【0136】
空間認識装置S11は、ショベル100Aの周辺に存在する物体を検出するためにLIDARを用いてもよい。LIDARは、例えば、監視範囲内にある100万点以上の点とLIDARとの間の距離を測定する。なお、本実施形態は、LIDARを用いる手法に制限するものではなく、物体との間の距離を計測可能な空間認識装置であればよい。例えば、ステレオカメラを用いてもよいし、距離画像カメラ、又はミリ波レーダなどの測距装置を用いてもよい。空間認識装置S11としてミリ波レーダ等が利用される場合には、空間認識装置S11から多数の信号(レーザ光等)を物体に向けて発信し、その反射信号を受信することで、反射信号から物体の距離及び方向を導き出してもよい。
【0137】
後方空間認識装置S11Bは、上部旋回体3の上面の後端に取り付けられる。左方空間認識装置S11Lは、上部旋回体3の上面の左端に取り付けられる。右方空間認識装置S11Rは、上部旋回体3の上面の右端に取り付けられる。前方空間認識装置S11Fは、キャビン10の上面の前端に取り付けられる。また、ショベル100Aに設けられる空間認識装置の数は、4個に制限するものではなく、3個以下でもよいし、5個以上でもよい。空間認識装置S11は、さらにアーム5の上方側面に取り付けられてもよい。
【0138】
空間認識装置S11は、ショベル100Aの周囲に設定された所定領域内の所定物体を検知するように構成されていてもよい。例えば、空間認識装置S11は、人と人以外の物体とを区別しながら人を検知できるように構成された人検知機能を有していてもよい。
【0139】
管理装置200は、ショベル100Aの自律制御を管理する。
【0140】
自律制御システムSYSに含まれるショベル100Aは、一台であってもよいし、複数台であってもよい。これにより、自律制御システムSYSは、複数のショベル100Aを対象として、データ収集、ショベル100Aの自律制御に関する設定等を行うことができる。
【0141】
また、自律制御システムSYSに含まれる管理装置200は、一台であってもよいし、複数台であってもよい。
【0142】
また、自律制御システムSYSは、例えば、管理装置200において、ユーザからの入力に応じて、又は、自動で、ショベル100Aの自律制御に関する各種設定を行い、ショベル100Aに送信してよい。これにより、管理装置200からショベル100Aの各種動作を制御したり、監視したりできる。
【0143】
<自律制御システムのブロック構成>
図9は、本実施形態に係る自律制御システムSYSの構成例を示す機能ブロック図である。
図9に示される例では、自律制御システムSYSに含まれる、管理装置200、及び、ショベル100Aの各々のブロック構成を示している。なお、ショベル100Aのハードウェア構成は、上述した通りなので、説明を省略する。
【0144】
<管理装置200の構成>
管理装置200は、制御装置230と、通信装置T2と、入力装置210と、記憶装置220と、を含む。
【0145】
通信装置T2は、ショベル100Aに取り付けられた通信装置T1との間で通信を制御するように構成されている。入力装置210は、管理者による入力操作を受け付ける。記憶装置220は、読み書き可能な不揮発性の記憶媒体とする。
【0146】
制御装置230は、各種演算を実行する演算装置である。本実施形態では、制御装置230は、CPU及びメモリを含むマイクロコンピュータで構成されている。そして、制御装置230の各種機能は、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0147】
次に、ショベル100Aのショベルコントローラ30A、及び管理装置200の制御装置230の各々の機能ブロックについて説明する。
【0148】
<<管理装置の機能ブロック>>
管理装置200の制御装置230内の各機能ブロックについて説明する。制御装置230内の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにより実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。制御装置230は、プログラムを実現することで、通信制御部231と、施工情報生成部232と、を備える。また、記憶装置220は、施工情報記憶部221を備えている。
【0149】
通信制御部231は、通信装置T2を介して、ショベル100Aとの間で様々な情報の送信及び受信するための制御を行う。
【0150】
施工情報生成部232は、ショベル100Aの自律制御に用いる施工情報を生成する。施工情報生成部232は、作業現場の作業計画に従って、ショベル100Aによる自律制御で施工後の土砂形状を示した情報を生成する。施工情報は、管理装置200が自動的に生成してもよいし、管理者が入力装置210を介した入力に従って生成してもよい。
【0151】
また、施工情報生成部232は、ショベル100Aの作業現場を自律走行させる目標経路を示された経路情報を含んだ施工情報を生成する。施工情報生成部232は、地図情報を考慮して、目標経路をショベル100Aが走行する際の目標速度を設定する。具体的には、施工情報生成部232は、ショベル100Aの目標経路のうち、傾斜角が10度以上の経路については、傾斜角が10度より小さい経路と比べて、目標速度を小さく設定する。例えば、施工情報生成部232は、傾斜角が10度より小さい経路について目標速度5.6km/hを設定し、傾斜角が10度より大きい経路について目標速度2.8km/hを設定する。
【0152】
施工情報生成部232は、生成した施工情報を、記憶装置220の施工情報記憶部221に記憶する。
【0153】
通信制御部231は、施工情報記憶部221に記憶される施工情報を、ショベル100Aに送信する。
【0154】
<<ショベルの機能ブロック>>
ショベル100Aのショベルコントローラ30A内の各機能ブロックについて説明する。ショベルコントローラ30A内の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにより実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。ショベルコントローラ30Aは、プログラムを実現することで、取得部311と、通信制御部312と、ショベル状態特定部313と、目標軌跡生成部314と、自律制御部315と、判定部316と、調整部317と、を備える。また、記憶装置33は、施工情報記憶部331を備えている。
【0155】
施工情報記憶部331は、施工情報が記憶されている。施工情報は、ショベル100Aが自律制御で施工を行うために用いられる情報であって、施工後の作業対象(例えば土砂)の形状を含んでいる。さらに、本実施形態に係る施工情報には、ショベル100Aの作業現場における移動経路と、当該移動経路を走行する時の移動速度と、が含まれている。
【0156】
本実施形態に係るショベルコントローラ30Aは、ショベル100Aにおける自律制御を実現する。
【0157】
取得部311は、ショベル100Aに設けられた各種検出装置からの信号を取得する。例えば、取得部311は、上述した実施形態で示した情報に加えて、測定情報を取得する。測定情報は、空間認識装置S11により測定された情報とする。
【0158】
通信制御部312は、通信装置T1を介して、管理装置200との間で様々な情報の送信及び受信するための制御を行う。
【0159】
例えば、通信制御部312は、管理装置200から施工情報を受信(取得)し、受信した施工情報を、記憶装置33の施工情報記憶部331に記憶する。
【0160】
ショベル状態特定部313は、取得部311が取得した信号に基づいて、ショベル100の状態を特定するように構成されている。本実施形態では、ショベル100Aの状態は、ショベル100Aの位置と向き、及びショベル100Aのアタッチメントの状態(例えば、ブーム4、アーム5、及びバケット6の位置)を含む。ショベル100Aの位置は、例えば、ショベル100Aの基準座標系における位置(ショベル100Aの緯度、経度、及び高度)である。ショベル状態特定部313は、測位装置S10の出力に基づいてショベル100Aの位置及び向きを特定する。
【0161】
アタッチメントの状態(例えば、ブーム4、アーム5、及びバケット6の位置)は、角度センサ(ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3)の検出結果、並びに、ブーム4、アーム5、及びバケット6の各々のサイズから特定できる。
【0162】
目標軌跡生成部314は、施工情報記憶部331に記憶された施工情報に従って、ショベル100Aの目標軌跡を生成する。目標軌跡には、施工情報に従って土砂形状を成形するためのショベル100Aのバケット6の目標軌跡に加えて、ショベル100Aが作業現場を移動するための目標軌跡も含まれている。
【0163】
また、目標軌跡生成部314は、施工情報に従って、ショベル100Aが移動するための目標経路のうち、下部走行体1の接地面が10度より傾斜している目標経路に対して、接地面が10度より傾斜していない軌跡と比べて、目標速度を低くする設定を行う。
【0164】
自律制御部315は、目標軌跡生成部314により生成された目標軌跡に沿って移動させるために、動作要素(油圧アクチュエータ)の動作内容を決定し、決定された動作内容に応じた操作信号を生成して、ショベル100Aの自律運転機能を実現する。
【0165】
自律制御部315は、目標軌跡に沿って移動する際に、施工情報記憶部331を記憶した施工情報に設定された目標速度に従って移動制御する。これにより、自律制御部315は、傾斜角が10度より大きい経路については、速度を低減するよう制御する。
【0166】
しかしながら、作業現場は状況に応じて地形等が変化する。このため地図情報に記載されていなくとも、傾斜角が10度より大きくなる経路が存在する可能性がある。
【0167】
そこで、判定部316が、機体傾斜センサS4の検出結果によって下部走行体1の接地面の傾斜角が10度より大きいか否かを判定する。
【0168】
調整部317は、機体傾斜センサS4の検出結果によって下部走行体1の接地面の傾斜角が10度より大きいと判定された場合に、ショベル100Aの目標速度を低減させる調整を行う。例えば、調整部317は、現在の目標速度を5.6km/hから、2.8km/hに低減させる調整を行う。その後、自律制御部315は、調整された目標速度に従うように自律制御を行う。
【0169】
本実施形態においては、ショベル100Aが、上述した制御を行うことで、傾斜している設置面であっても滑ることなく移動できる。
【0170】
次に、自律制御システムSYSにおける、ショベル100Aの自律制御による移動手順について説明する。
図10は、本実施形態に係る自律制御システムSYSにおける、ショベル100Aの自律制御による移動手順を示したシーケンス図である。
【0171】
管理装置200の施工情報生成部232は、施工情報の生成を開始する(S2001)。施工情報生成部232は、作業現場の地図情報を取得する(S2002)。本実施形態では、施工情報生成部232は、予め記憶されている地図情報を取得してもよいし、通信回線NWを介して接続されている外部装置で提供されている地図情報を取得してもよい。
【0172】
施工情報生成部232は、ショベル100Aの目標経路を生成する(S2003)。
【0173】
施工情報生成部232は、地図情報で示された傾斜角に基づいて、目標経路に対して目標速度を設定する(S2004)。これにより、施工情報生成部232は、ショベル100Aが傾斜角10度より大きい目標経路を移動する場合に、傾斜角10度以下の目標経路を移動する場合と比べて、目標速度を低く設定する。
【0174】
その後、施工情報生成部232は、ショベル100Aに対する施工情報の生成を終了する(S2005)。施工情報生成部232は、生成した施工情報を、施工情報記憶部221に格納する。
【0175】
そして、通信制御部231が、施工情報記憶部221に格納されている施工情報を、ショベル100Aに送信する(S2006)。
【0176】
ショベル100Aの通信制御部312は、受信した施工情報を、施工情報記憶部331に格納する(S2011)。
【0177】
そして、目標軌跡生成部314が、ショベル状態特定部313で特定されたショベル100Aの状態から、施工情報記憶部331で示された施工を行うための目標軌跡を生成する(S2012)。当該目標軌跡には、アタッチメントを移動させるための軌跡に加えて、ショベル100Aが移動するための軌跡も含まれている。
【0178】
さらに、目標軌跡生成部314が、ショベル100Aが移動するための目標軌跡に対して、施工情報に従って目標速度を設定する(S2013)。これにより傾斜角が10度より大きい目標経路については、他の目標経路と比べて、目標速度が低く設定される。
【0179】
そして、自律制御部315は、生成された目標軌跡に従って自律制御を開始する(S2014)。そして、自律制御部315が自律制御を行っている間、S2015~S2017の繰り返し処理(LOOP処理)が行われる。当該処理は、施工情報に基づいた目標軌跡に基づいた制御が終了するまで行われる。
【0180】
判定部316が、機体傾斜センサS4の検出結果から、ショベル100Aの接地面の傾斜角の判定を行う(S2015)。
【0181】
そして、判定部316による判定で、接地面の傾斜角が10度より大きいと判定された場合に、調整部317は、ショベル100Aの目標速度を低減させる調整を行う(S2016)。
【0182】
そして、接地面の傾斜角が10度より大きいと判定された後、判定部316による判定で、接地面の傾斜角が5度より小さいと判定された後、目標速度を元に戻す調整を行う(S2017)。
【0183】
そして、自律制御部315は、施工情報に従って生成された目標軌跡に従った自律制御を終了する(S2018)。
【0184】
本実施形態においては、上述した制御を行うことで、ショベル100Aが自律制御の場合でも、傾斜角が10度より大きい経路を移動する場合には、目標速度を低下させることで、ショベル100Aが滑ること等を抑制して、安全性の向上を実現できる。
【0185】
本実施形態においては、施工情報において予め目標速度を設定することで、機体傾斜センサS4が傾斜角が10度より大きいことを検出する前に、目標速度を低減できるので、急に傾斜角が切り替わる場合でも、ショベル100Aを安全に移動させることができる。
【0186】
(第3の実施形態)
上述した実施形態及び変形例では、操作者がショベルを操作する場合、又は、ショベルが自律制御を行う場合について説明した。しかしながら、上述した実施形態及び変形例は、操作者がショベルを操作する場合、又は、ショベルが自律制御を行う場合に制限するものではない。そこで第3の実施形態では、ショベルを遠隔操作する場合について説明する。
【0187】
操作者が操作する点では、第1の実施形態と共通しているが、第1の実施形態では実際にショベルに操作者が搭乗している。このため、操作者は、平衡感覚によってショベルがどの程度の斜面を走行しているのか認識しやすい。さらには、操作者は、ショベルの接地面を滑る音、ショベルから伝わる振動によって、ショベルの動作状況を把握している。このため、ショベルが接地面で滑りそうな状況であるか否かを把握しやすい状況である。
【0188】
これに対して、操作者が遠隔操作を行っている場合には、操作者は、ショベルの動作状況を、画面に表示された内容で把握する必要がある。この場合、操作者は、どの程度の傾斜をショベルが走行しているのか、またはショベルが接地面で滑りそうか否かを把握するのは難しい。
【0189】
そこで、本実施形態に係る遠隔操作システムでは、以下に示す構成を備えるようにした。
【0190】
図11は、第3の実施形態に係る遠隔操作システムSYS1の一例を示す概要図である。
図11に示すように、第3の実施形態に係る遠隔操作システムSYS1は、ショベル100Bと、遠隔操作室RCと、を含んでいる。
【0191】
ショベル100B、及び遠隔操作室RCは、通信回線NWを介してデータの送受信を可能に接続されている。
【0192】
ショベル100Bの無線通信が可能とする。そして、ショベル100Bは、通信回線NWに接続された機器(例えば、遠隔操作室RC)との間でデータの送受信を可能とする。
【0193】
そして、ショベル100Bは、作業現場に関する情報を、遠隔操作室RCに送信できる。これにより、遠隔操作室RCは、ショベル100Bからの情報に応じて、作業現場を確認できる。なお、本実施形態は、作業現場の測定を行う装置を、ショベル100Bに制限するものではなく、作業現場上を飛行するドローン、定点カメラ、又はユーザが所持可能な撮像装置など、他の態様の装置であってもよい。
【0194】
本実施形態においては、ショベル100Bは、遠隔操作室RCから遠隔操作される。
【0195】
ショベル100Bは、第2の実施形態のショベル100Aと同様に、4個の撮像装置S6及び4個の空間認識装置S11が設けられている。
【0196】
このため、遠隔操作室RCが、ショベル100Bの遠隔制御を行う際に、ショベル100Aの空間認識装置S11により計測された物体形状を参照できるように構成した。
【0197】
遠隔操作システムSYS1に含まれるショベル100Bは、2台以上であってもよい。これにより、遠隔操作システムSYS1は、複数台のショベル100Bを通じて、遠隔操作室RCに作業現場に関する情報提供を行うことができる。
【0198】
<遠隔操作室の構成例>
遠隔操作室RCには、通信装置T3、遠隔コントローラR30、操作装置R26、操作センサR29、及び表示装置D1を備えている。また、遠隔操作室RCには、ショベル100Bを遠隔操作する操作者OPが座る操作席DSが設置されている。
【0199】
通信装置T3は、ショベル100Bに取り付けられた通信装置T1との間で通信を制御するように構成されている。
【0200】
遠隔コントローラR30は、各種演算を実行する演算装置である。本実施形態では、遠隔コントローラR30は、CPU及びメモリを含むマイクロコンピュータで構成されている。そして、遠隔コントローラR30の各種機能は、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0201】
操作装置R26(操作部の一例)には、操作装置R26の操作内容を検出するための操作センサR29が設置されている。操作センサR29は、例えば、操作レバーの傾斜角度を検出する傾斜センサ、又は、操作レバーの揺動軸回りの揺動角度を検出する角度センサ等である。操作センサR29は、圧力センサ、電流センサ、電圧センサ、又は距離センサ等の他のセンサで構成されていてもよい。操作センサR29は、検出した操作装置R26の操作内容に関する情報を遠隔コントローラR30に対して出力する。遠隔コントローラR30は、受信した情報に基づいて操作信号を生成し、生成した操作信号をショベル100Bに向けて送信する。操作センサR29は、操作信号を生成するように構成されていてもよい。この場合、操作センサR29は、遠隔コントローラR30を経由せずに、操作信号を通信装置T3に出力してもよい。これにより、遠隔操作室RCから、ショベル100Bの遠隔操作を実現できる。
【0202】
表示装置D1は、遠隔操作室RCにいる操作者OPがショベル100Bの周囲を視認するために、ショベル100Bから送信された情報に基づいた画面を表示する。表示装置D1は、操作者が遠隔操作室RCにいるにもかかわらず、ショベル100Bの周囲を含む作業現場の状況を確認できる。
【0203】
通信装置T3は、ショベル100Bから様々な情報を受信する。受信する情報には、例えば、撮像装置S6で撮像された画像情報、及び空間認識装置S11で測定された測定情報が含まれている。
【0204】
そして、表示装置D1は、ショベル100Bから受信した画像情報に基づいた画面を表示する。これにより、ショベル100Bの周囲の状況を確認できる。さらに、表示装置D1は、ショベル100Bから受信した測定情報で示されるショベル100Bの周辺の物体形状を表した画面も併せて表示する。物体形状を表した画面と、画像情報に基づいた画面と、の表示は、どのような手法を用いてもよい。例えば、表示装置D1が複数の表示装置で構成されている場合に、物体形状を表した画面と、画像情報に基づいた画面と、を別々の表示装置に表示してもよい。
【0205】
<遠隔操作システムのブロック構成>
図12は、本実施形態に係る遠隔操作システムSYS1の構成例を示す機能ブロック図である。
図12に示される例では、遠隔操作システムSYS1に含まれる、遠隔操作室RC、及び、ショベル100Bの各々のブロック構成を示している。なお、ショベル100Bのハードウェア構成は、上述した実施形態の100Aと同様として説明を省略する。また、ショベル100Bは、ショベル100Aと比べて、ショベルコントローラ30Aに代わりに、実行する処理が異なるショベルコントローラ30Bが設けられている。
【0206】
<遠隔操作室RCの構成>
遠隔操作室RCは、遠隔コントローラR30と、通信装置T3と、操作センサR29と、表示装置D1と、を含む。通信装置T3、及び操作センサR29は、上述したので説明を省略する。
【0207】
<遠隔操作室の機能ブロック>
遠隔操作室RCの遠隔コントローラ(遠隔操作装置の一例)R30内の各機能ブロックについて説明する。遠隔コントローラR30内の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにより実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。遠隔コントローラR30は、プログラムを実現することで、受信制御部401と、表示制御部402と、信号生成部403と、送信制御部404と、を備える。
【0208】
受信制御部401は、通信装置T3を介して、様々な情報を、ショベル100Bから受信するための制御を行う。
【0209】
他の例としては、受信制御部401は、ショベル100Bから、画像情報、位置情報、状態情報、及び、測定情報を受信(取得)する。画像情報は、撮像装置S6により撮像された情報とする。位置情報は、測位装置S10により測定された基準座標系におけるショベル100Bの位置及び向きを示した情報とする。状態情報は、アタッチメントの状態(例えば、ブーム4、アーム5、及びバケット6の位置)を示した情報とする。測定情報は、空間認識装置S11により測定された物体形状を示した情報とする。
【0210】
表示制御部402は、測定情報で示された物体形状と、ショベル100Bの周辺を表した画像情報と、を表示装置D1に表示する。その際に、表示制御部402は、ショベル100Bの現在の状況(例えばアタッチメントの状態等)を示す情報を表示装置D1に表示する。さらに、表示制御部402は、ショベル100の接地面の傾斜角等を表示してもよい。しかしながら、操作者は、傾斜角が表示されても、当該傾斜角がどの程度なのか直観的に認識するのは難しい。そこで、後述するショベルコントローラ30Bにて速度を調整する制御を行う。
【0211】
信号生成部403は、操作センサR29が受け付けた操作に従って、ショベル100Bの動作を制御するための操作信号を生成する。
【0212】
送信制御部404は、生成した操作信号を、ショベル100Bに送信する。
【0213】
<ショベルの機能ブロック>
ショベル100Bのショベルコントローラ30B内の各機能ブロックについて説明する。ショベルコントローラ30B内の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにより実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。ショベルコントローラ30Bは、プログラムを実現することで、取得部321と、ショベル状態特定部322と、送信制御部323と、受信制御部324と、アクチュエータ駆動部325と、判定部326と、調整部327と、を備える。
【0214】
取得部321は、ショベル100Bに設けられた各種検出装置からの信号を取得する。例えば、取得部321は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3)の検出結果を取得する。また、取得部321は、測位装置S10から、ショベル100の位置及び向き等の測定結果を取得する。また、取得部321は、撮像装置S6からの画像情報を取得する。また、取得部321は、空間認識装置S11からの測定情報を取得する。
【0215】
ショベル状態特定部322は、取得部321が取得した信号に基づいて、ショベル100Bの状態を特定するように構成されている。本実施形態では、ショベル100Bの状態は、ショベル100Bの位置と向き、及びショベル100Bのアタッチメントの状態(例えば、ブーム4、アーム5、及びバケット6の位置)を含む。ショベル100Bの位置は、例えば、ショベル100Bの基準座標系における位置(ショベル100Bの基準点の緯度、経度、及び高度)である。ショベル状態特定部322は、測位装置S10の出力に基づいてショベル100Bの位置及び向きを特定する。
【0216】
アタッチメントの状態(例えば、ブーム4、アーム5、及びバケット6の位置)は、角度センサ(ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3)の検出結果、及びブーム4、アーム5及びバケット6の各々のサイズから特定できる。
【0217】
送信制御部323は、通信装置T1を介して、取得部321の取得結果に基づいた様々な情報を、遠隔操作室RCに送信するための制御を行う。例えば、送信制御部323は、撮像装置S6が撮像した画像情報、ショベル100Bの位置及び向きを示した位置情報、アタッチメントの状態を示す状態情報、及び、空間認識装置S11が測定した測定情報を、遠隔操作室RCに送信する制御を行う。送信制御部323による送信は、所定時間毎に行われる。所定時間は、任意の時間でよいが、ショベル100Bの作業によって変化した状況を認識できる時間間隔とする。例えば、送信制御部323は、上記の情報を、1秒間隔で送信してもよい。
【0218】
受信制御部324は、通信装置T1を介して、様々な情報を、遠隔操作室RCから受信するための制御を行う。例えば、受信制御部324は、遠隔操作室RCから、ショベル100Bの動作を制御するための操作信号を受信する。
【0219】
アクチュエータ駆動部325は、ショベル100Bに搭載されているアクチュエータを駆動するように構成されている。本実施形態では、アクチュエータ駆動部325は、遠隔操作室RCから送信されてくる操作信号に基づき、比例弁31に含まれる複数の電磁弁のそれぞれに対する指令電流を生成して出力する。
【0220】
指令電流を受けた各電磁弁は、コントロールバルブユニット17における対応する制御弁のパイロットポートに作用するパイロット圧を増減させる。その結果、各制御弁に対応する油圧アクチュエータは、制御弁のストローク量に応じた速度で動作する。
【0221】
判定部326は、傾斜角情報に基づいて、下部走行体1の接地面が10度(第1の角度の一例)より傾斜しているか否かを判定する。
【0222】
調整部327は、判定部326により下部走行体1の接地面が10度より傾斜していると判定された場合に、10度より傾斜していないと判定された場合と比べて、下部走行体1が走行する速度を低くなるように、アクチュエータ駆動部325が出力する指令電流を低くする調整を行う。調整手法は、受信した操作信号に対応する指令電流を低くする等、上述した実施形態と同様とする。
【0223】
図13は、本実施形態に係るショベル100B及び遠隔操作室RCによる遠隔操作を示したシーケンス図である。
図13に示されるシーケンス図では、遠隔操作室RCによる遠隔操作が行われている間、S2201~S2207の繰り返し処理(LOOP処理)が行われる。
【0224】
ショベル100Bの取得部321は、ショベル100に設けられた各種検出装置からの情報(信号)を取得する(S2201)。
【0225】
ショベル状態特定部322は、取得部321が取得した情報(信号)に基づいて、ショベル100Bの状態を特定する(S2202)。
【0226】
送信制御部323は、通信装置T1を介して、取得部321の取得結果に基づいた様々な情報を、遠隔操作室RCに送信する(S2203)。
【0227】
遠隔操作室RCの表示制御部402は、受信した情報に含まれていた、測定情報で示された物体形状と、ショベル100Bの周辺を表した画像情報と、を表示装置D1に表示する(S2211)。
【0228】
信号生成部403は、操作センサR29を介して操作装置R26から受け付けた操作に従って、操作信号を生成する(S2212)。
【0229】
送信制御部404は、生成した操作信号を、ショベル100Bを送信する(S2213)。
【0230】
ショベル100Bの判定部326は、機体傾斜センサS4の傾斜角を判定する(S2204)。
【0231】
そして、判定部326による判定で、接地面の傾斜角が10度より大きいと判定された場合に、アクチュエータ駆動部325に対して、操作信号で示される操作量に対応する、指令電流を低減させる調整を行う(S2205)。
【0232】
そして、接地面の傾斜角が10度より大きいと判定された後、判定部326による判定で、接地面の傾斜角が5度より小さいと判定された後、アクチュエータ駆動部325に対して、操作信号で示される操作量に対応する、指令電流を元に戻す調整を行う(S2206)。
【0233】
アクチュエータ駆動部325は、受信した操作信号に基づき、比例弁31に含まれる複数の電磁弁のそれぞれに対する指令電流を生成して出力する(S2207)。その際、操作信号で示される操作量と、指令電流と、の関係は、第1の実施形態と同様として説明を省略する。
【0234】
本実施形態では、上述した処理手順に従って制御を行うことで、ショベル100Bが傾斜角が10度より大きい接地面では、ショベル100Bの速度が低減する制御が行われる。
【0235】
なお、本実施形態では、ショベル100Bの速度を低減させるために、ショベルコントローラ30Bが、操作量に対応する指令電流を調整する例について説明した。しかしながら、ショベル100Bの速度を低減させるための調整を、ショベルコントローラ30Bが行う手法に制限するものではない。例えば、遠隔コントローラR30が、受信した傾斜角に基づいて、送信する操作信号で示される操作量を調整してもよい。また、ショベルコントローラ30Bが、エンジン11の回転数を調整してもよい。
【0236】
操作者がショベル100Bの遠隔操作を行う場合には、キャビン10に実際に搭乗する場合と比べて、ショベル100Bが走行している接地面の傾斜角などの状況を認識しにくいという問題がある。本実施形態では、遠隔操作システムSYS1において、上述した制御を行うことで、傾斜地をショベル100Bが走行する場合に速度を低減できるので、ショベル100Bが滑ったりすることを抑制できる。
【0237】
<作用>
上述した実施形態では、接地面の傾斜角が10度よりも大きい場合に、ショベルの走行している速度を低減させる例について説明した。つまり、ショベルコントローラは、接地面の傾斜角が10度よりも大きい場合でも、旋回及びアタッチメントの動作する速度の低減を行わない。これにより、ショベルが行う作業の効率が低減することを抑制できる。
【0238】
上述した実施形態においては、ショベルが、機体傾斜センサS4の検出結果によって下部走行体1の接地面が10度より傾斜していると判定された場合、当該接地面が当該10度より傾斜していないと判定された場合と比べて、下部走行体1が走行する速度を低くする制御を行う。したがって、傾斜角が10度より傾斜している接地面でショベルが走行する場合で滑り等が生じることを抑制できる。したがって、安全性の向上を実現できる。
【0239】
上述した実施形態及び変形例においては、作業機械の一例としてショベルを用いた場合について説明した。しかしながら、実施形態及び変形例で示した構成は、作業機械としてショベルに適用させる例に制限するものではなく、例えば、クレーン、フォークリフト等に適用してもよい。
【0240】
以上、ショベル、及びショベルの遠隔操作システムの一例を示した実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0241】
100、100A、100B ショベル
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
S6 撮像装置
S10 測位装置
S11 空間認識装置
T1 通信装置
30、30A、30B ショベルコントローラ
301、311、321 取得部
302 走行制御部
303、316、326 判定部
304、317、327 調整部
312 通信制御部
313、322 ショベル状態特定部
314 目標軌跡生成部
315 自律制御部
323 送信制御部
324 受信制御部
325 アクチュエータ駆動部
33 記憶装置
331 施工情報記憶部
200 管理装置
210 入力装置
220 記憶装置
221 施工情報記憶部
230 制御装置
231 通信制御部
232 施工情報生成部
T2 通信装置
RC 遠隔操作室
T3 通信装置
D1 表示装置
R30 遠隔コントローラ
401 受信制御部
402 表示制御部
403 信号生成部
404 送信制御部
R26 操作装置
R29 操作センサ