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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007196
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】覆工板
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/08 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
E01C9/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108437
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】393022506
【氏名又は名称】丸紅建材リース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 義英
(72)【発明者】
【氏名】竹内 滋
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AF12
2D051DA12
(57)【要約】
【課題】形鋼のウェブを目視観察することにより、保守点検を容易に行うことができる覆工板を提供する。
【解決手段】覆工板10は、相互に平行な表側のフランジ13および裏側のフランジ14と、フランジ13、14に一体のウェブ15とをそれぞれ備えた複数の形鋼11を並列に配置して形成される長方形の覆工板本体12を有し、覆工板本体12の両側面には側板17が取り付けられ、覆工板本体12の両端面に取り付けられる覆板18には、ウェブ15の端部を外部に露出させる点検窓28が形成され、点検窓28を介してウェブ15が外部から目視観察することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に平行な表側および裏側のフランジと、表側および裏側の前記フランジに一体のウェブとをそれぞれ備えた複数の形鋼を並列に配置して形成される長方形の覆工板本体と、
前記覆工板本体の両側面に取り付けられる側板と、
前記ウェブの端部を外部に露出させる点検窓が形成され、前記覆工板本体の両端面に取り付けられる覆板と、を有し、
前記点検窓を介して前記ウェブを目視観察し得ることを特徴とする覆工板。
【請求項2】
前記点検窓を前記ウェブの端面を跨ぐように前記覆板に形成することを特徴とする請求項1記載の覆工板。
【請求項3】
それぞれの前記形鋼は表側および裏側の前記フランジの幅方向中央部で前記フランジが一体となったH形鋼であり、
1つの前記ウェブの両側面と、当該ウェブに隣り合う他の前記ウェブのうち1つの前記ウェブの側面に対向する側面とを外部に露出させる前記点検窓を前記覆板に形成することを特徴とする請求項1記載の覆工板。
【請求項4】
奇数の前記形鋼により前記覆工板本体を形成し、前記覆工板本体の一方側から他方側に向けて1つ置きの前記ウェブに対応させて前記点検窓を前記覆板に形成したことを特徴とする請求項3記載の覆工板。
【請求項5】
前記形鋼は、少なくとも表側の前記フランジの外面に凹凸部が設けられた縞H形鋼であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の覆工板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に配置される複数の形鋼を備え、土木建築工事に用いられる覆工板に関する。
【背景技術】
【0002】
土木建築工事においては、地表部に形成された開口部を覆うために覆工板が使用される。例えば、地下鉄工事や地下埋設管工事等の地下構築物の工事を行う際には、地表部から地中に掘削工事が行われて地下空間が形成される。地下構築物の工事が行われているときには、地下空間の開口部は覆工板により覆われ、覆工板により仮設の路面ないし通路が形成され。これにより、地下空間工事中であっても、車両や歩行者は覆工板の上を通行することができる。
【0003】
覆工板は、特許文献1に記載のように、開口部に相互に平行となって敷設された覆工桁つまり桁材に向けてクレーンにより吊り上げ搬送され、覆工板の両端部は桁材に固定される。
【0004】
覆工板には、特許文献2に記載のように、それぞれ上フランジつまり表側フランジと下フランジつまり裏側フランジとウェブとを備えた複数の形鋼を並列に配置して長方形に形成される形態がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-174066号公報
【特許文献2】特開2012-193614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
覆工板の上には車両や歩行者が通行するので、車両や歩行者の安全通行を確保するために、覆工板は定期的に保守点検される。
【0007】
上述のように、複数の形鋼からなる覆工板においては、覆工板の両側面にはサイドプレートつまり側板が設けられ、両端面にはエンドプレートつまり覆板が設けられており、形鋼のウェブは側板および覆板により覆われる。このため、覆工板の保守点検時に覆工板の内部に組み込まれるウェブの状況を目視観察することが容易ではない。
【0008】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、形鋼のウェブを目視観察することにより、保守点検を容易に行うことができる覆工板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の覆工板は、相互に平行な表側および裏側のフランジと、表側および裏側の前記フランジに一体のウェブとをそれぞれ備えた複数の形鋼を並列に配置して形成される長方形の覆工板本体と、前記覆工板本体の両側面に取り付けられる側板と、前記ウェブの端部を外部に露出させる点検窓が形成され、前記覆工板本体の両端面に取り付けられる覆板と、を有し、前記点検窓を介して前記ウェブを目視観察し得ることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の覆工板は、請求項1記載の発明において、前記点検窓を前記ウェブの端面を跨ぐように前記覆板に形成することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の覆工板は、請求項1記載の発明において、それぞれの前記形鋼は表側および裏側の前記フランジの幅方向中央部で前記フランジが一体となったH形鋼であり、1つの前記ウェブの両側面と、当該ウェブに隣り合う他の前記ウェブのうち1つの前記ウェブの側面に対向する側面とを外部に露出させる前記点検窓を前記覆板に形成することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の覆工板は、請求項3記載の発明において、奇数の前記形鋼により前記覆工板本体を形成し、前記覆工板本体の一方側から他方側に向けて1つ置きの前記ウェブに対応させて前記点検窓を前記覆板に形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の覆工板は、請求項1~4のいずれか1項に記載の発明において、前記形鋼は、少なくとも表側の前記フランジの外面に凹凸部が設けられた縞H形鋼であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、覆工板本体の両端面に取り付けられた覆板には、点検窓が形成されているので、覆工板の保守点検時においては覆工板の内部を外部から容易に目視観察することができる。しかも、目視観察により内部に汚れや錆が発生している場合には、これらを容易に除去して形鋼の劣化を確実に防止して覆工板の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施の形態である覆工板の表面側を示す斜視図である。
図2】覆板を取り除いた状態における覆工板の表面側を示す斜視図である。
図3図1の正面図である。
図4図1のA-A線に沿う断面図である。
図5図1の側面図である。
図6図1の底面図である。
図7図4におけるB部拡大断面図である。
図8図5におけるC部拡大正面図である。
図9】他の実施の形態である覆工板の表面側を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
図1および図2に示す覆工板10は、5本の形鋼11を並列に配置して接合することにより形成される長方形の覆工板本体12を有している。それぞれの形鋼11は、図7に示すように、表側のフランジ13と裏側のフランジ14とを有し、両方のフランジ13、14は相互に並行に延在し、ウェブ15を介して一体となっている。
【0018】
形鋼11は、フランジ13、14と、これらの幅方向中央部で一体となったウェブ15とからなり、横断面形状がH字形状のH形鋼である。覆工板本体12は、隣り合う形鋼11をフランジ13の側面を付き当てるとともに、フランジ14の側面を付き当てた状態で溶接することにより組み立てられる。複数の上側のフランジ13により覆工板10の天板13aが形成され、複数の下側のフランジ14により覆工板10の底板14aが形成される。
【0019】
さらに、図1および図2に示すように、形鋼11の表側のフランジ13の外面には、四辺形の凹部16が一定の間隔を隔てて格子状に形成されており、天板13aを構成するフランジ13の外面全体には凹凸部が形成されている。これにより、作業者が覆工板10の上を移動するときに滑ることなく、移動の安全が図られている。図7に示すように、形鋼11としては、裏側のフランジ14の外面にも凹部16が形成されたH形鋼つまり縞H形鋼が使用されており、複数本の形鋼11を組み合わせて覆工板10を製造する際には、何れかのフランジを表側のフランジ13とすることができる。ただし、フランジ13、14のうち少なくとも表側のフランジ13の外面にのみ凹凸部が設けられた形鋼により覆工板10を製造するようにしてもよい。
【0020】
覆工板本体12の両方の側面には、図1および図2に示すように、側板17が取り付けられており、覆工板本体12の両側面側のウェブ15はそれぞれ側板17により覆われる。覆工板本体12の両方の端面には、覆板18が取り付けられており、覆工板本体12の両端面はそれぞれ覆板18により覆われる。なお、側板17はサイドプレートとも言われ、覆板18はエンドプレートとも言われる。
【0021】
覆工板10をクレーン等の吊り下げ機械により吊り下げるときに、吊り下げ機械のフックを係合させるための係合孔19が天板13aの四隅に設けられている。それぞれの係合孔19に対応させて、側板17の両端部には連通孔21が形成されており、係合孔19等から内部に入り込んだゴミ等の異物を連通孔21から外部に排出させることができる。図2に示すように、側板17は覆工板本体12の両方の側面に取り付けられており、図2において反対側の側面に取り付けられた側板17にも連通孔21が形成されている。
【0022】
図3図1の正面図であり、図4図2のA-A線に沿う断面図である。図5図1の側面図であり、図6図1の底面図である。
【0023】
図6に示すように、覆工板10の底板14aの四隅には、ゴムパッド22が取り付けられており、図5に示すように、覆工板10が地下空間の開口部に敷設された桁材23に据え付けられると、ゴムパッド22は桁材23の表面に接触する。これにより、覆工板10の上に車両や建築機械が走行するときに、騒音が発生することが抑制される。ゴムパッド22は、図7に示すように、底板14aに形成された貫通孔24を貫通する弾性変形自在の係合頭部22aを有しており、ゴムパッド22は底板14aに対して着脱自在に装着されている。
【0024】
底板14aの四隅には、図6に示すように、ストッパ25が取り付けられている。覆工板10が桁材23に据え付けられた状態のもとで、覆工板10が長手方向にずれることを防止するために、桁材23に当接するデッキピース26がストッパ25に取り付けられており、ストッパ25には、図7に示すように、デッキピース26を取り付けるための取付孔25aが形成されている。なお、図3図4および図7においては、デッキピース26は図示省略されている。また、図6においては、裏側のフランジ14の外面に形成された凹部16が図示省略されている。
【0025】
図1および図3に示すように、覆板18にはウェブ15の端部を外部に露出させる点検窓28が3つ形成されている。それぞれの点検窓28は幅Wがウェブ15のほぼ2分の1であり、高さHが覆板18の幅のほぼ3分の2である。点検窓28の下端部は下方に開口した開放端であり、上端部は半円形の円弧形状の閉塞端となっている。つまり点検窓28は逆U字形状となっている。図示する覆工板10は、5つの形鋼11により形成され、点検窓28は3つ形成されている。
【0026】
図3および図4においては、5つの形鋼11のウェブ15を左側から右側に向けて、15a~15eをカッコ書きで示し、3つの点検窓28を左側から右側に向けて28a、28b、28cをカッコ書きで示すと、3つの点検窓28a~28cは、覆工板10の幅方向一方側から他方側に向けて1つ置きのウェブ15a、15c、15eに対応させて覆板18に形成されている。図3において覆板18により覆われたウェブ15b、15dは、隣り合う他のウェブに対応する位置の点検窓28を介して外部から目視観察することができる。
【0027】
上述のように、逆U字形状の点検窓28のうち円弧形状の閉塞端の部分を、覆工板10が使用されるときには上端部となる位置に設けたので、覆板18の上側部は覆板18が連なった状態となり、荷重が加えられる天板13a側における覆工板10の強度を高めることができる。一方、点検窓28の下端部は開口しているので、内部に入り込んだ汚れ等をフランジ14の端部側から外部に容易に排出することができる。
【0028】
覆工板10の両側に位置する2つのウェブ15a、15eは、覆板18の両端部に形成された点検窓28a、28cの幅方向中央部に位置し、覆工板10の中央部に位置するウェブ15cは覆板18の中央部に形成された点検窓28bの幅方向中央部に位置している。他の2つのウェブ15b、15dは、覆工板10の幅方向の両側に隣り合う他の2つの点検窓28から目視観察することができる。
【0029】
このように、点検窓28aは、1つのウェブ15aの両側面と、このウェブ15aに隣り合う他のウェブ15bのうちウェブ15aの側面に対向する側面とを外部に露出させる。同様に、点検窓28bは、1つのウェブ15cの両側面と、このウェブ15cに隣り合う他のウェブ15bおよびウェブ15dの側面のうちウェブ15cに対向する側面とを外部に露出させる。さらに、点検窓28cは、1つのウェブ15eの両側面と、このウェブ15eに隣り合う他のウェブ15dのうちウェブ15eの側面に対向する側面とを外部に露出させる。
【0030】
図3は覆工板本体12の一方の端面に取り付けられる覆板18を示しているが、他方の端面に取り付けられる覆板18も同様の構造である。覆工板本体12の両側面に側板17を取り付けるとともに、両端面に覆板18を取り付けることにより、覆工板10の強度が高められている。
【0031】
上述のように、ウェブ15の端部を外部に露出させる点検窓28が覆板18に設けられているので、定期的な覆工板10の保守点検時においては、覆板18および側板17により覆われた覆工板10の内部、つまりウェブ15を外部から目視観察することができる。これにより、覆工板10を整備する際における「けれん作業」を容易に行うことができる。けれん作業においては、覆工板10の外面における汚れや錆の発生の点検に加えて、ウェブ15の側面に汚れやサビが発生しているか否かを点検し、汚れや錆が発生している場合には、これらを除去して形鋼11の劣化を補修することができる。けれん作業においては、さらに、表側と裏側のフランジ13、14の内面の劣化補修をも行うことができる。
【0032】
このように、覆工板10の外面のみならず、内部のけれん作業を容易に行うことができるので、覆工板10の品質管理を確実に行うことができ、覆工板10の耐久性を向上させることができる。
【0033】
図9は他の実施の形態である覆工板の表面側を示す斜視図である。この覆工板10においては、5つの形鋼11のそれぞれのウェブ15に対応させて点検窓28が覆板18に形成されている。このように、全ての点検窓28の幅方向中央部にウェブ15の端部を位置させるようにしてもよい。この場合には、全てのウェブ15の点検作業とけれん作業とを容易に行うことができる。
【0034】
一方、図示するように、覆工板10を奇数の形鋼11により形成すると、図1に示した覆工板10のように、覆工板本体12の一方側から他方側に向けて1つ置きのウェブ15に対応させて点検窓28を形成することにより、覆工板10の強度を高めつつ容易に覆工板10の保守点検を行うことができる。
【0035】
上記実施の形態においては、形鋼11を縞H形鋼により構成したが、表フランジ、裏フランジおよびウェブを有する形鋼であれば、例えば、コの字形断面の形鋼により覆工板10を構成するようにしてもよい。
【0036】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものではなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0037】
例えば、点検窓28の形状としては、逆U字形状に限られず、円形や角形の貫通孔としてもよく、点検窓28を覆板18の幅方向に貫通したスリットにより形成してもよい。さらに、点検窓28の閉塞端の形状としては、半円形状となることなく、直線形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の覆工板は、地下鉄、上下水道等の地下工事に伴う道路掘削の際に、仮設道路として使用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 覆工板
11 形鋼
12 覆工板本体
13 フランジ
13a 天板
14 フランジ
14a 底板
15 ウェブ
16 凹部
17 側板
18 覆板
19 係合孔
21 連通孔
22 ゴムパッド
23 桁材
24 貫通孔
25 ストッパ
26 デッキピース
28 点検窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9