(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007201
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】長期保存可能なパン様食品組成物
(51)【国際特許分類】
A21D 2/18 20060101AFI20250109BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20250109BHJP
A21D 15/00 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D13/00
A21D15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108443
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 聖也
(72)【発明者】
【氏名】北中 進介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潔
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DB40
4B032DK02
4B032DK05
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK16
4B032DK17
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK22
4B032DK32
4B032DK35
4B032DK54
4B032DP01
(57)【要約】
【課題】長期保存が可能で、パン様の外観及び食感を有するパン様食品組成物を提供すること。
【解決手段】二糖以下の糖質及び不溶性食物繊維を主体とし、外皮層及び含気ゲル状中心層とで構成され、テクスチャーアナライザーでの反復圧縮試験における凝集性が0.4~1.0であり、水分活性が0.80未満である、長期保存可能なパン様食品組成物。前記パン様食品組成物の外皮層及び含気ゲル状中心層は、パン様食品組成物の生地が焼成されて形成されたものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二糖以下の糖質及び不溶性食物繊維を主体とするパン様食品組成物であって、
外皮層及び含気ゲル状中心層とで構成され、
テクスチャーアナライザーでの反復圧縮試験における凝集性が0.4~1.0であり、
水分活性が0.80未満である、長期保存可能なパン様食品組成物。
【請求項2】
固形分中の二糖以下の糖質の含有量が25~65重量%かつ不溶性食物繊維の含有量が5~50重量%である、請求項1に記載のパン様食品組成物。
【請求項3】
テクスチャーアナライザーでの反復圧縮試験における弾力性が0.6~1.0である、請求項1又は2に記載のパン様食品組成物。
【請求項4】
レジスタントスターチを含有する、請求項1又は2に記載のパン様食品組成物。
【請求項5】
前記外皮層及び含気ゲル状中心層が、パン様食品組成物の生地が焼成されて形成されたものである、請求項1又は2に記載のパン様食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存可能なパン様食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パンは世界中の人々にとって、食事の選択肢の一つとして定着している。一方で、パンには様々な問題点があり、例えば、保存性の低さが挙げられる。パンは製造直後においてはソフトで適度な弾力があるが、製造後数日で澱粉が老化してパンが硬くなり、商品価値が急速に低下する。したがって、パンの保存性を高める技術がこれまでに鋭意開発されてきた。例えば、しっとり感があり、ソフトでフワフワした食感を呈し、膨化も良好で保湿性がありきめの細くするために、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤をパン生地に添加してする方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、本発明者らか調べたところ、乳化剤によるパンの老化防止効果は一週間程度であり、それ以上の長期保存には適していない。
また、乳化剤及び多糖類を添加したパン生地の厚みを精密に制御し、水分活性が0.80~0.87になるように焼成することで、老化することなく常温で約6ケ月に亘って長期保存することができるパンが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、好塩細菌の繁殖を防ぐことのできる水分活性0.80以下にすると弾力性がなく硬い食感になるという問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-96032号公報
【特許文献2】特開平5-137495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、長期保存が可能で、パン様の外観及び食感を有するパン様食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、二糖以下の糖質及び不溶性食物繊維を主体とする食品組成物において外皮層及び含気ゲル状中心層で構成される食品組成物において、テクスチャーアナライザーでの反復圧縮試験における凝集性を0.4~1.0の範囲に調整し、かつ、水分活性を0.80未満とすることにより、パン様の外観と、ソフトで弾力のある食感とを有し、しかも、長期保存後もパン様の食感が維持されるパン様食品組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の要旨は、
[1]二糖以下の糖質及び不溶性食物繊維を主体とするパン様食品組成物であって、
外皮層及び含気ゲル状中心層とで構成され、
テクスチャーアナライザーでの反復圧縮試験における凝集性が0.4~1.0であり、
水分活性が0.80未満である、長期保存可能なパン様食品組成物、
[2]固形分中の二糖以下の糖質の含有量が25~65重量%かつ不溶性食物繊維の含有量が5~50重量%である、前記[1]に記載のパン様食品組成物、
[3]テクスチャーアナライザーでの反復圧縮試験における弾力性が0.6~1.0である、前記[1]又は[2]に記載のパン様食品組成物、
[4]レジスタントスターチを含有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載のパン様食品組成物、
[5]前記外皮層及び含気ゲル状中心層が、パン様食品組成物の生地が焼成されて形成されたものである、前記[1]~[4]のいずれかに記載のパン様食品組成物
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパン様食品組成物は、二糖以下の糖質及び不溶性食物繊維を主体とするパン様の外観及び食感を有する食品組成物であり、1か月以上の長期間、常温で保存した場合でも、パン様の食感を維持することができる。したがって、本発明のパン様食品組成物は、パンの代替品となることに加え、長期常温流通商品として適したものであり、しかも、パンとは異なりグルテンフリーの食品としても適したものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0009】
本発明のパン様食品組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、二糖以下の糖質及び不溶性食物繊維を主体とし、外皮層及び含気ゲル状中心層とで構成されており、前記含気ゲル状中心層の周囲が、前記外皮層で覆われていることで、パンに似た外観及び内部を有する食品組成物である。
そして、前記のような構造に加えて本発明の組成物の凝集性が0.4~1.0、水分活性が0.80未満に調整されていることで、パンのような食感(パン様の食感)を奏し、しかも常温で1か月以上の長期間保存しても前記パン様の食感を維持することができる。
即ち、本発明の組成物は、(a)二糖以下の糖質及び不溶性食物繊維を主体とすること、(b)外皮層及び含気ゲル状中心層を有すること、(c)特定の凝集性及び(d)特定の水分活性を有することに特徴を有する。
【0010】
(a)二糖以下の糖質及び不溶性食物繊維
本発明の組成物は、二糖以下の糖質及び不溶性食物繊維を主体とする食品組成物であるが、主体とは、固形分中の50重量%以上を占めることを言う。具体的には、二糖以下の糖質及び不溶性食物繊維の総和が、組成物の全固形分中50重量%以上であることを言う。
【0011】
本発明の組成物は、二糖以下の糖質を一定の割合で含有することにより、本発明の組成物中の自由水の割合が減少し水分活性が低下するとともに、保水性が向上し食感の劣化が抑制され長期保存が可能となる。
前記二糖以下の糖質としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、スクロース(砂糖)、ラクトース、マルトース、トレハロース、イソマルツロース、セロビオース等の二糖類、また、アルドースやケトースの還元体である糖アルコール(キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等)等が挙げられる。
【0012】
本発明の組成物では、水分活性を0.80未満に調整し易く、長期常温保存性の観点から、前記二糖以下の糖質を合計して、本発明の組成物の全固形分中、好ましくは25~65重量%、より好ましくは30~60重量%含有する。
【0013】
本発明の組成物では、不溶性食物繊維を含有すると、前記含気ゲル状中心層における骨格となることで、一般的なパンに含まれるグルテンが不足していてもボリュームがある外観となりやすい。本発明の組成物においては、不溶性食物繊維が相互作用して、密なネットワークが生じ、これが生地中の水分の蒸発により生じる気泡を効果的に保持することで膨化が可能になると考えられる。但し、本発明はこのメカニズムのみに限定されるものではない。
また、一般的なパンに用いられる小麦粉や米粉等はその大部分を澱粉が占めるため、経時的に硬い食感となり長期保存することができないが、本発明の組成物では小麦粉や米粉由来の澱粉を主体としないため、経時的な食感の劣化が起こりにくく長期保存が可能となる。
【0014】
不溶性食物繊維は、水に不溶性の食物繊維を指し、具体的にはセルロース、ヘミセルロース、リグニン、レジスタントスターチ(難消化性澱粉)等を指す。不溶性食物繊維の定量法としては、プロスキー変法等が知られている。
【0015】
本発明の組成物においては、生地物性が優れ作業性が良いことと凝集性を高めてパン様の食感に調整し易い観点から、不溶性食物繊維の中でもレジスタントスターチを含有することが好ましい。
【0016】
レジスタントスターチとは、アミラーゼに対して作用を受けにくいアミラーゼ非消化性澱粉のことをいう。レジスタントスターチは、食物繊維の定量法として公認されているプロスキー法(L.PROS KYら、J.ASSOC. OFF. ANAL. CHEM.、第71巻、第5号、p.1017-1023 、1988年参照)によって食物繊維として定量されるものであり、レジスタントスターチを食することによって、日常の食生活で不足しがちな食物繊維を補給することができる。
【0017】
本発明の組成物に含有されるレジスタントスターチについて、由来や製法等は特に限定はない。レジスタントスターチの由来原料としては、例えば、コメ、小麦、タピオカ、コーン、ポテト、黄エンドウ豆等が挙げられる。中でも、生地の成型性に優れ、小麦粉に近い食感と風味を有するという観点から、黄エンドウ豆由来のレジスタントスターチ、タピオカ由来レジスタントスターチを用いることが好ましい。本発明では、由来、製法等が同じ1種類のレジスタントスターチを用いてもよいし、由来、製法等が異なる2種以上のレジスタントスターチを混合して用いてもよい。
【0018】
本発明の組成物では、生地の成形性及び前記骨格の形成性を高め、パン様の食感や外観を得やすくする観点から、不溶性食物繊維を合計して、本発明の組成物の全固形分中、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~40重量%含有する。
【0019】
(b)外皮層及び含気ゲル状中心層
[外皮層]
本発明の組成物における外皮層は、通常のパンのクラストのような硬い食感を有する皮膜の層であり、原料を混合した生地を焼成することによって形成される。本発明において、焼成とは、原料の混合物をオーブン等の焼成器を用いて、高温(120~300℃)で焼くことを言う。焼成で形成された前記外皮層は、通常のパンのクラストと同様に、薄茶色~茶色の外観を呈する。
【0020】
前記外皮層は、前記外皮層の内側にある前記含気ゲル状中心層と見た目や食感が異なるため、例えば、パン様食品組成物の断面を目視することや指触すること等の官能によって確認できる。
食パンやロールパンのような通常のパンにはクラストと呼ばれる外皮層が存在し、その食感や外観はパンの特徴の一つとなっている。本発明の組成物においても、焼成により表面を加熱乾燥して、外皮層が形成されていることで、食感や外観がパンに近しくなる。また、外皮層の形成によって前記含気ゲル状中心層の水分を保持することができる。
【0021】
[含気ゲル状中心層]
本発明の組成物における含気ゲル状中心層は、ゲル状で、通常のパンにおけるクラムのような気泡を保持した構造であり、前記外皮層よりも軟らかくふんわりとした食感を有する。
【0022】
本発明において、ゲル状とは、高分子が三次元網目構造を形成し、流動性を失って力学的に固体に近い性質を示す状態をいい、具体的には、ゼラチン、増粘多糖類、寒天、卵白、グルテン等のゲル化剤によって固化した状態をいい、軟らかく弾力のある食感を有する。
本発明の組成物は、低水分活性で弾力性を付与できるゼラチンを含有することが好ましい。また、本発明の組成物は、成形時の作業性、骨格の補強及び食感の観点から、増粘多糖類を含有することも好ましい。
【0023】
本発明の組成物に含有されるゼラチンについて、由来や製法等は特に限定はない。例えば、コラーゲンを含む物質(動物の皮・骨・結合組織等)から抽出・精製されたものであればよく、その由来生物に関しては特に制限されない。例えば、牛・豚・鶏等の獣の皮や骨由来ゼラチンに加えて、水生生物(淡水・海水)由来のゼラチン等が挙げられる。また、酸処理、アルカリ処理等の処理を施されたものでもよい。本発明では、由来、製法等が同じ1種類のゼラチンを用いてもよいし、由来、製法等が異なる2種以上のゼラチンを混合して用いてもよい。
また、本発明の組成物が所望の食感を出しやすい観点から、ゲル強度が100~330Bloomのゼラチンを使用することが好ましく、150~300Bloomのゼラチンを使用することがより好ましい。
【0024】
増粘多糖類としては、例えば、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ペクチン、タマリンドシードガム、ジェランガム、プルラン、カードラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、サイリウムシードガム、グルコマンナン(こんにゃく粉)、シトラスファイバー等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、本発明の組成物においては、サイリウムシードガム、グルコマンナン(こんにゃく粉)を用いることが好ましい。
【0025】
寒天、卵白、グルテンについては、食品材料として使用できるものであればよく、特に限定はない。
【0026】
本発明の組成物におけるゲル化剤の含有量は、パン様の食感を得るために、本発明の組成物の全固形分中1~25重量%であればよく、好ましくは5~20重量%である。
【0027】
(c)凝集性
凝集性とは、食品に連続2回の負荷を加え、1度目と2度目に食品を潰すのに要するエネルギーの比で、食品の潰れにくさや口中でのまとまりやすさを表すテクスチャー特性である。パンにおいて、凝集性はグルテンや澱粉、副材料など、パン生地を構成する成分間の内部的結合力を表している。凝集性の数値が高いパンはもちもち、ふんわりして、飲み込みやすい食感となり、凝集性の数値が低いパンは、つぶれやすく飲み込みにくい食感となる。
【0028】
本発明においては、後述の実施例に記載するが、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製「Texture Analyzer TA.XT.plus」)による反復圧縮試験により、凝集性を測定する。
【0029】
本発明の組成物は、前記凝集性が0.4~1.0に調整されているものである。
凝集性が0.4未満であると、弾力や口の中でのまとまりの良さが得られず、パン様の食感を感じにくい傾向がある。また、前記凝集性の最大値は、1.0であるが、本発明の組成物の凝集性の上限値は1.0以下の範囲に調整されていればよい。
【0030】
本発明者らは後述の実施例に記載の測定方法で、食パン、ロールパン、フランスパン、スナックパン、ベーグル等のパン類の凝集性を測定したところ、測定値は0.4~1.0の範囲であった。
一方、外皮層を有するパン類以外の小麦粉焼成食品としてドーナツ、ケーキ類が知られている。常温で1ヶ月以上の賞味期限を有する前記小麦粉焼成食品は知られているが、それらはいずれもパン様のもちもちした弾力はなく、しっとりした食感であり、凝集性を測定したところ、測定値は0.2~0.3の範囲であった。
これらの結果から、パン様食品組成物の凝集性が0.4~1.0の範囲内に調整されている場合、通常のパン様の弾力のあるもちもちとした食感を有すると考えられる。
【0031】
(d)水分活性
水分活性は、食品中の「自由水」の割合を示す指標であり、公知の測定方法、例えば、重量平衡法や蒸気圧法で測定することができる。
【0032】
本発明の組成物では、水分活性が0.80未満になるように調整される。
前記水分活性が0.80を超えると、大部分の酵母やカビ、黄色ブドウ球菌等が増殖し腐敗の原因になり得るため好ましくない。
さらに、カビが増殖しにくいという点で0.70未満であることが好ましい。
【0033】
前記水分活性を0.80未満に調整するには、例えば、組成物中の糖質の種類、その含有量又は水分値を調整することで行うことができる。
糖質について、前記二糖以下の糖質を2種類以上選択すればよい。選択した糖質について、含有量及び水分値を調整することで、水分活性を0.80未満にすればよい。
【0034】
(e)弾力性
本発明の組成物は、さらに、テクスチャーアナライザーでの反復圧縮試験における弾力性が0.6~1.0に調整されていることでパン様のソフトで弾力のある食感を有したものとなる。
【0035】
前記弾力性とは、食品に連続2回の負荷を加え、1度目と2度目の「くぼみ、変位」の比で、外力による変形が、力を取り去った時に戻る割合のことを指す。
前記弾力性は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0036】
本発明者らは後述する実施例に記載の測定方法で、食パン、ロールパン、フランスパン、スナックパン、ベーグル等のパン類の弾力性を測定したところ、測定値は0.6~1.0の範囲であった。
これらの結果から、パン様食品組成物の弾力性が0.6~1.0の範囲内に調整されている場合、ロールパン、フランスパン、スナックパン、ベーグル等のようなソフトで弾力のある食感を有すると考えられる。
【0037】
(f)他の成分
本発明の組成物には、その他任意成分として、食塩、醤油、味噌、ドライイースト、膨張剤(ベーキングパウダー)、酸味料、pH調整剤、アミノ酸等の調味料、香料、着色料、油脂、乳化剤、増粘剤、肉・魚介・野菜のエキスや粉末、ビタミン類、ミネラル類等を含有してもよい。
例えば、本発明の組成物は、膨張剤を含有することで、焼成時にパンのように膨らんだ構造となり易いため、好ましい。
また、本発明の組成物は、従来のパンに含まれるグルテンがなくても、パン様の外観と食感とを有していることから、グルテンフリー用の食品として好適に使用できる。
【0038】
前記任意成分は、前記凝集性、水分活性値等に影響を与えない範囲で使用さればよく、含有量については特に限定はないが、本発明の組成物の全固形分中、50重量%以下であればよく、30重量%以下が好ましい。
【0039】
本発明の組成物の水分値としては、8~25重量%に調整されていればよい。尚、前記水分値の測定手段としては、減圧乾燥法を用いればよい。
【0040】
本発明の組成物は、例えば、水等の液体原料を粉体原料と混合して得られた生地を所望の形状に成型後、焼成することで、製造することができる。
必要であれば、作業性を高めるために、生地に使用している粉体原料等を用いて打ち粉をしてもよい。
焼成方法としては、例えば、上面及び/又は下面から加熱するオーブン、又は、前もって加熱された炉面などに直接接触させて加熱するなどの方法を用いることができる。
【0041】
本発明の組成物の表面には、光沢剤、油、チョコレート、砂糖等の粉体原料等が塗布されていてもよい。
【0042】
本発明の組成物の形状は、特に限定はない。例えば、略半球状であってもよいし、棒状、略球状、略角柱状等でもよく、一般的なパンに見られる形状と同様の形状であればよい。
【0043】
以上のようにして得られた本発明の組成物は、長期常温保存が可能であり、長期保存後もパン様のソフトで弾力のある食感を維持することができる。
【0044】
本発明の組成物は、パン様の外観と内部構造を有するものであるため、通常のパンと同様の調理を施して喫食することができる。
例えば、本発明の組成物の表面に具材を乗せたり、内部に具材を充填したりすることもできる。前記具材としては、フルーツ類、ナッツ類、餡、クリーム類(ホイップクリーム、カスタードクリーム、バタークリーム)、ジャム類、チョコレート、砂糖類等が挙げられる。
また、サンドイッチ、コロッケパン、焼きそばパン、ハンバーガー等の調理パンのように、惣菜等の調理済みの加工食品を、本発明の組成物に挟んだり、包み込んだりしてもよい。
本発明の組成物は、焼成前の生地の状態で通常のパン生地同様の成形性を有するため、生地の状態で上記具材や加工食品と組み合わせて、その後焼成することもできる。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0046】
(実施例1)
増粘多糖類(サイリウムシードガム(商品名:フードメイドP-100、シキボウ株式会社製))を糖質であるグリセリンに分散させ、そこに、水を添加し、混合した。その後、ゼラチン(商品名:SRC、新田ゼラチン株式会社製)、他の糖質、不溶性食物繊維、乾燥卵白、膨張剤、植物油脂等を添加し、混捏した。得られた生地を10gずつ略半球状に成型し、オーブン中で170℃、15分間焼成した。
最終的なパン様食品組成物中の各原料の配合割合は表1に示したとおりとなる。なお、表1中、各成分の含有量は、組成物の固形分中の含有量を示す。
また、水分活性については、蒸気圧法に基づいて調べた。
このようにして得られたパン様食品組成物は、パンのクラストのような茶色で硬い外皮層及びその内側にクラムのような白色で多数の穴のあいた中心層を有するものであった。また、水分活性が0.80未満であることから、長期保存に適していることが考えられた。
【0047】
(実施例2~8)
表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様にパン様食品組成物を作製した。
得られたパン様食品組成物は、パンのクラストのような茶色の硬い外皮層及びその内側にクラムのような白色で多数の穴のあいた中心層を有するものであった。また、水分活性が0.80未満であることから、長期保存に適していることが考えられた。
【0048】
(比較例1)
ゼラチン等のゲル化剤を使用せず、表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様にパン様食品組成物を作製した。
比較例1で得られたパン様食品組成物は、実施例1と同様に、パンのような外観を有していた。
【0049】
(比較例2)
小麦粉を使用し、表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様にパン様食品組成物を作製した。
比較例2で得られたパン様食品組成物は、実施例1と同様に、パンのような外観を有していた。
【0050】
<試験例1>テクスチャーアナライザーを用いた反復圧縮試験による凝集性の測定
実施例1~8及び比較例1~2で得られた各パン様食品組成物について、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製「Texture Analyzer TA.XT.plus」)を用い、下記条件で測定した。
【0051】
[試験条件]
プローブ:直径10mmの円柱形
測定速度:2mm/秒
測定温度:20℃
方法:得られたパン様食品組成物を15mmの厚さにスライスし、連続2回、厚さ10mm圧縮し、元の位置まで戻す。
得られた凝集性の結果を表1に示す。
【0052】
表1の結果から、実施例1~8のパン様食品組成物は、いずれも凝集性の数値が0.4~1.0の範囲に調整されており、パンのようなもちもち、ふんわりした食感が奏されると考えられた。
また、通常のパンは焼成後、時間の経過とともに凝集性が低下し、テクスチャーが悪化するが、実施例1~8のパン様食品組成物はその水分活性が0.80未満に調整されており、実際に食品用の包装をして常温で3ヶ月以上経過しても凝集性が低下することはなく、前記食感が長期間維持されることがわかった。
これに対して、比較例1及び比較例2のパン様食品組成物は、いずれも凝集性の数値が0.4未満であり、パン様の弾力のある食感に乏しいと考えられた。
【0053】
<試験例2>テクスチャーアナライザーを用いた反復圧縮試験による弾力性の測定
実施例1~8及び比較例1~2で得られた各パン様食品組成物について、試験例1と同様の試験条件で弾力性を測定した。
得られた弾力性の結果を表1に示す。
【0054】
表1の結果から、実施例1~8のパン様食品組成物は、いずれも弾力性の数値が0.6~1.0の範囲内に調整されており、パン様のソフトで弾力のある食感を有すると考えられた。
一方、比較例1のパン様食品組成物は、弾力性の数値が0.6未満であり、パン様の弾力のある食感に乏しいと考えれられた。
【0055】
<試験例3>官能評価試験
実施例1~8及び比較例1~2で得られたパン様食品組成物を実際に食べたときの食感について、下記の評価基準に基づいて官能評価を行った。官能評価方法としては、3名のパネリストによる合議制とした。
【0056】
〇:パンのようなふんわりとしてもちもちと弾力のある食感と感じるものを「〇」とした。
×:パン様の食感を感じないものを「×」とした。
得られた結果を表1に示す。
【0057】
表1の結果から、実施例1~8で得られたパン様食品組成物を食べた場合、いずれもパンのようなふんわりとしてもちもちと弾力のある食感を感じるものであった。
【0058】
<試験例4>長期保存性試験
実施例1~8で得られたパン様食品組成物をアルミパウチに封入し、6か月の室温保存試験を行った。保存期間終了後のサンプルを実際に食べて確認したところいずれも味や食感に問題はなく、菌の増殖も確認されず、長期常温保存可能な食品組成物であることがわかった。
【0059】