(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007214
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】木粉の熱圧縮成形方法
(51)【国際特許分類】
B27N 3/08 20060101AFI20250109BHJP
B27N 3/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B27N3/08
B27N3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108474
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】茂木 兼一
【テーマコード(参考)】
2B260
【Fターム(参考)】
2B260AA20
2B260BA02
2B260BA18
2B260CB03
2B260EA05
2B260EB02
2B260EB06
2B260EB21
2B260EC08
(57)【要約】
【課題】低コストで木材の熱圧縮成形を行う熱圧縮成形方法を提供する。
【解決手段】充填された素材に対して加熱、加圧及び減圧保持が可能である金型に、素材を充填する充填工程と、前記充填工程後に、素材が充填された金型において、12.8MPa~179.5MPaで素材を加圧する前加圧工程と、前記前加圧工程後に減圧し、前記素材が充填された前記金型において、12.8MPa~38.5MPaで素材を減圧状態で保持する減圧工程と、前記減圧工程後に、前記素材が充填された前記金型を加熱する加熱工程と、前記加熱工程後に、前記素材が充填された前記金型において、12.8MPa~179.5MPaで加圧する本加圧工程と、前記本加圧工程後に離型する離型工程と、を行う、木粉の熱圧縮成形方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填された素材に対して加熱、加圧及び減圧保持が可能である金型に、素材を充填する充填工程と、
前記充填工程後に、素材が充填された金型において、12.8MPa~179.5MPaで素材を加圧する前加圧工程と、
前記前加圧工程後に減圧し、前記素材が充填された前記金型において、12.8MPa~38.5MPaで素材を減圧状態で保持する減圧工程と、
前記減圧工程後に、前記素材が充填された前記金型を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後に、前記素材が充填された前記金型において、12.8MPa~179.5MPaで加圧する本加圧工程と、
前記本加圧工程後に離型する離型工程と、を行う、
木粉の熱圧縮成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、木粉の熱圧縮成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、おがくずのみならず、木材を圧縮成形する技術が広く研究されている。例えば、木材の成形方法として、木材に水蒸気処理することにより成形しやすくした状態にして、変形や固定を実行する方法がある。より具体的には、木材に対して事前に水蒸気処理する方法や、金型構造内に木材が充填された状態で水蒸気処理を行う方法がある。
【0003】
特許文献1には、木質系材料を細かく粉砕して微粉末とし、水蒸気で処理して軟化させて流動性を持たせ、金型内に流し込んで熱圧するか、あるいは微粉末を金型に入れ、水蒸気処理を行いながら圧締し、成形した後、冷却して固めることにより、任意の三次元形状を付与した成形材料を製造する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、木材に対して水蒸気処理を行う場合には、水蒸気処理を行う設備をプレス設備とは別に準備する必要がある。そのため、設備投資やランニングコストが増加するという問題がある。
【0006】
本開示は、低コストで木材の熱圧縮成形を行う熱圧縮成形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる木粉の熱圧縮成形方法は、充填された素材に対して加熱、加圧及び減圧保持が可能である金型に、素材を充填する充填工程と、前記充填工程後に、素材が充填された金型において、12.8MPa~179.5MPaで素材を加圧する前加圧工程と、前記前加圧工程後に減圧し、前記素材が充填された前記金型において、12.8MPa~38.5MPaで素材を減圧状態で保持する減圧工程と、前記減圧工程後に、前記素材が充填された前記金型を加熱する加熱工程と、前記加熱工程後に、前記素材が充填された前記金型において、12.8MPa~179.5MPaで加圧する本加圧工程と、前記本加圧工程後に離型する離型工程と、を行う。
これにより、木材自身が有する水分を利用して予加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示よれば、低コストで木材の熱圧縮成形を行う熱圧縮成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】熱圧縮成形システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】熱圧縮成形システムの動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
以下、図面を参照して本実施の形態に係る熱圧縮成形システムについて説明する。
図1は、熱圧縮成形システム1の構成の一例を示した図である。熱圧縮成形システム1では、材料の熱圧縮成形を行う。ここでは材料とは木材であって、具体的には木粉やおがくずであるがこれらに限られない。
【0011】
熱圧縮成形システム1は、素材充填手段11と、前加圧手段12と、減圧保持手段13と、加熱手段14と、本加圧手段15と、を備える。
【0012】
素材充填手段11は、内部に素材を充填可能である金型に対して、素材を充填する手段である。ここで金型は、素材が充填される空間を有している金型であって、充填された素材への加熱、加圧及び減圧保持が可能である。
【0013】
前加圧手段12は、本加圧手段15を用いて加圧する前に、金型に充填されている素材に対して加圧を行う1回目の加圧手段である。
【0014】
減圧保持手段13は、型に充填されている素材に対して減圧した状態を維持する手段である。例えば、減圧保持手段13は、減圧を行う装置を利用して型内を減圧した後に、動力を用いずに型内の減圧状態が維持されるように、型の保持を行う。
【0015】
加熱手段14は、減圧保持手段13により減圧状態で保持されている型の加熱を行う。これにより、加熱手段14では、型に充填されている素材を加熱する。
【0016】
本加圧手段15は、型に充填されている素材に対して加圧を行う、2回目の加圧手段である。なお、本加圧手段15は、前加圧手段12と同一の手段とすることができる。すなわち、熱圧縮成形システム1では、設けられている加圧手段を1つとすることができる。
【0017】
次に、熱圧縮成形システム1を用いた成形方法の詳細について説明する。
図2は、成形方法のフローの一例を示した図である。
【0018】
最初に、素材充填手段11は、素材を、加熱、加圧及び減圧保持が可能である金型に充填する(ステップS1)。なお、この工程を充填工程とする。
【0019】
前加圧手段12は、金型の内部への1回目の加圧を行う(ステップS2)。言い換えると、前加圧手段12は、金型の内部に充填された素材に対する前加圧を行う。なお、この工程を前加圧工程とする。なお、前加圧手段12の動作により金型の内部において素材にかかる圧力は、12.8MPa~179.5MPaとする。
【0020】
その後、前加圧手段12には加圧を停止させて、圧力を解放する。これにより、素材の内部に閉じ込められた空気を抜くことができる。
【0021】
減圧保持手段13は、型内の減圧された状態を保持する(ステップS3)。言い換えると、減圧保持手段13は、型内の素材にかかる圧力が減圧された状態を保持する。なお、この工程を減圧工程とする。より具体的には、減圧保持手段13は、前加圧手段12によって素材に掛けられた圧力に比べて、型内の圧力が減圧された状態を維持するように金型を保持する。なお、減圧保持手段13により保持された減圧状態における圧力は、12.8MPa~38.5MPaとする。
【0022】
加熱手段14は、減圧保持手段13により低圧力が掛けられた状態の金型ごと、素材の加熱を行う(ステップS4)。なお、この工程を加圧工程とする。ここで、加熱手段14が、金型を加熱することによって、金型内に充填されている素材の内部にある水分が蒸発する。
【0023】
ここで、加熱手段14により加熱される金型は、型内が減圧されていることから、外に水分が逃げにくい状態となる。したがって、型内に充填されている素材は、素材自身の水分により水蒸気処理される状態となる。なお典型的には、加熱手段14は、金型を180~315℃の間で加熱することができるが、特に、金型温度を270℃前後とすることで、成形体の曲げ強度を最大化することができる。
【0024】
本加圧手段15は、加熱手段14による加熱の停止後に、金型の内部の2回目の加圧を行う。言い換えると、本加圧手段15は、金型内の素材に対する本加圧を行う(ステップS5)。なお、この工程を本加圧工程とする。この本加圧手段15の動作により金型の内部において素材にかかる圧力は、ステップS2と同様に、12.8MPa~179.5MPaとする。
【0025】
その後、型内において成形されている熱圧縮成形品を、離型して取りだす(ステップS6)。なお、この工程を離型工程とする。
【0026】
なお一例として、熱圧縮成形システム1では、前加圧の圧力を140MPa、減圧時の圧力を0MPa、加熱時の圧力を30MPaかつ加熱温度を250℃、本加圧の圧力を140MPaとすることにより、木質素材自身が有する水分を生かして水蒸気処理を行った成形品を形成することができる。
【0027】
このようにして、熱圧縮成形システム1では、減圧保持手段13により型内が減圧された状態で加熱することにより、木材自身が有する水分を利用して水蒸気処理を行うことができる。すなわち、熱圧縮成形システム1では、1回目の加圧である前加圧による予加工を行うことで、素材の内部に閉じ込められた空気を抜くとともに木質の素材自身が有する水分を生かして、予加圧工程を行うことができる。
【0028】
そのため、熱圧縮成形システム1では、別に水蒸気処理を行うためだけの設備を準備する必要が無いことから、設備投資にかかるコストとランニングコストを低減させることができ、また、より強固な木質成型品を成形することができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。すなわち上記の記載は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされており、当業者であれば、実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【0030】
例えば、上述した各工程における圧力や温度については例示であって、適宜変更することができる。
【0031】
例えば、熱圧縮成形システム1では、前加圧及び本加圧を100MPa以上とし、減圧の工程では十分に低圧とすることで、強固な木質成型品を成形することが可能である。
【0032】
特に、熱圧縮成形システム1では、ステップS4の加熱工程における加熱温度を上昇させると、成形品の色が黒っぽくなり、光沢が増し、手感では温度が高い方が固い感触となる。また、加熱時の温度が200℃~270℃での成形品の変色が特に激しいため、用途にあわせて、適宜、加熱時の温度を変更することができる。
【0033】
また例えば、熱圧縮成形システム1では、前加圧や本加圧でかける圧力を変更することができる。例えば、熱圧縮成形システム1では、前加圧にかかる圧力を15Mpaあるいは30MPaとし、減圧の工程においてもほぼ減圧させずに、本加圧で140MPaまで加圧するという処理とすることも可能である。この場合、前加圧力が低いほど、成形品には元の素材感が残り、変色が弱まるが、ムラが目立つものになりやすくなる。
【0034】
ここで、熱圧縮成形システム1では、前加圧及び本加圧を行う際に圧力を発生させるが、この圧力を発生させるためにもエネルギーが必要であるため、なるべく低圧力で成形を行いたいという要望もある。
【0035】
そのため、熱圧縮成形システム1では、前加圧にかかる圧力を12.8MPaとして、減圧の工程において若干の減圧を行い、本加圧にかかる圧力も12.8MPaとするような処理も可能である。この場合には、熱圧縮成形システム1では、手感が柔らかい成形品が形成される。
【0036】
言い換えると、熱圧縮成形システム1では、成形品が柔らかくても良い場合には、前圧力及び本圧力をかける際の圧力を低圧とすることができるため、エネルギーコストを削減することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 熱圧縮成形システム
11 素材充填手段
12 前加圧手段
13 減圧保持手段
14 加熱手段
15 本加圧手段