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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025072154
(43)【公開日】2025-05-09
(54)【発明の名称】消音装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/18 20100101AFI20250430BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20250430BHJP
   F01N 1/06 20060101ALI20250430BHJP
   F01N 1/02 20060101ALI20250430BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20250430BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
F01N13/18
F01N13/08 G
F01N1/06 G
F01N1/02 G
F01N13/00 A
F01N3/24 K
F01N3/24 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182716
(22)【出願日】2023-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅史
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
【Fターム(参考)】
3G004AA02
3G004CA04
3G004CA12
3G004DA07
3G091AA03
3G091BA26
3G091HA08
3G091HA35
(57)【要約】
【課題】消音装置内部の機器配置の自由度を高めることができる消音装置を提供する。
【解決手段】本開示の消音装置20は、エンジンEの排ガスGが流入する消音空間SPを有する。消音装置20は、内部に消音空間SPが形成されるケース体28と、下流端が消音空間SPに連通する入口通路44と、上流端が消音空間SPに連通する出口通路67とを備えている。入口通路44は、その周壁の一部がケース体28の外壁36c,38cにより形成された開放通路44である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排ガスが流入する消音空間を有する消音装置であって、
内部に前記消音空間が形成されるケース体と、
下流端が前記消音空間に連通する入口通路と、
上流端が前記消音空間に連通する出口通路と、
を備え、
前記入口通路および前記出口通路の少なくとも一方の通路が、その周壁の一部が前記ケース体の外壁により形成された開放通路である消音装置。
【請求項2】
請求項1に記載の消音装置において、さらに、前記ケース体の内部に収容される収容物と、前記収容物に接続されて前記ケース体の外部に延長されるハーネスと、を備え、
前記収容物が、前記開放通路の周壁を構成する前記ケース体の前記外壁に取り付けられている消音装置。
【請求項3】
請求項2に記載の消音装置において、前記収容物が、前記排ガスの状態を検知する排ガスセンサであり、
前記排ガスセンサが、前記開放通路の周壁を構成する前記ケース体の前記外壁に取り付けられている消音装置。
【請求項4】
請求項3に記載の消音装置において、前記開放通路は、前記入口通路に設けられ、
前記排ガスセンサの上流側に触媒が配置され、
開放通路の前記消音空間への開口端は、前記排ガスセンサの取付位置から排ガス流れ方向の下流側に間隔をあけて配置されている消音装置。
【請求項5】
請求項3に記載の消音装置において、前記排ガスセンサの上流側に触媒が配置され、
前記触媒が収容される通路の径よりも、前記排ガスセンサが配置される通路の径が小さく設定されている消音装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の消音装置において、前記開放通路の内側部分を形成する部分にリブが形成されている消音装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の消音装置において、前記開放通路における前記ケース体の内側に隣接する領域が、隣接消音空間を構成している消音装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の消音装置において、前記入口通路と前記出口通路の一部が径方向に隣接している消音装置。
【請求項9】
乗物に搭載された請求項1または2に記載の消音装置であって、
前記開放通路の周壁を構成する前記ケース体の前記外壁が、乗物本体側に向いている消音装置。
【請求項10】
請求項1または2に記載の消音装置を備える鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンの排ガスが流入する消音空間を有する消音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動二輪車のような乗物の駆動源として、エンジンが用いられたものがある(特許文献1)。このようなエンジンにおいて、その排ガスが流入する消音空間を有する消音装置が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-110616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消音装置の内部には、入口通路および出口通路を構成する配管を含め、様々な部品が配置されている。消音装置の機能や、内部に配置される部品の機能を確保しつつ、消音装置の内部の消音空間に各種部品を配置するのが困難なことがある。
【0005】
本出願の開示は、消音装置内部の機器配置の自由度を高めることができる消音装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の消音装置は、エンジンの排ガスが流入する消音空間を有する消音装置であって、内部に前記消音空間が形成されるケース体と、下流端が前記消音空間に連通する入口通路と、上流端が前記消音空間に連通する出口通路とを備え、前記入口通路および前記出口通路の少なくとも一方の通路が、その周壁の一部が前記ケース体の外壁により形成された開放通路である。本開示の消音装置は、例えば、鞍乗型車両に搭載される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の消音装置によれば、消音空間と外部空間とを接続する通路をケース体に寄せて配置することができる。これにより、消音装置のレイアウトの選択肢を増やしたり、消音室内の機器の配置の自由度を高めたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1実施形態に係る消音装置の一種である排気マフラを備えた自動二輪車を示す側面図である。
図2】同排気マフラを示す側面図である。
図3】同排気マフラを斜め前方から見た斜視図である。
図4】同排気マフラを示す平面図である。
図5図4のV-V線に沿った断面図である。
図6図2からマフラケーシングの一部を取り外した状態を示す側面図である。
図7】同排気マフラの第1パイプ部材を示す斜視図である。
図8】同第1パイプ部材を示す別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「前方」および「後方」とは、乗物の進行方向から見た「前方」および「後方」をいう。つまり、前後方向は乗物の長手方向に一致する。「左」および「右」とは、乗物に乗った状態の運転者から見た「左」および「右」をいう。つまり、「左右方向」は乗物の幅方向と一致する。また、幅方向において、前後方向に延びる乗物中心線に向かう側を幅方向内側といい、乗物中心線から離れる側を幅方向外側という。
【0010】
図1は、本開示の第1実施形態に係る消音装置の一種である排気マフラを備えた自動二輪車を示す側面図である。図1の自動二輪車は、オフロード走行用の車両である。ただし、自動二輪車はオフロード走行用の車両に限定されない。また、本開示の消音装置は、自動二輪車以外の乗物、例えば、三輪車、四輪バギー、小型滑走艇等の鞍乗型乗物のエンジンにも適用可能である。また、本開示の消音装置は、鞍乗型乗物以外の乗物のエンジンにも適用可能で、乗物以外のエンジンにも適用可能である。
【0011】
この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を形成するメインフレーム1と、後半部を形成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1は、前端のヘッドパイプ4から後方斜め下方に延びている。メインフレーム1は、後端部1aで下方に湾曲し、ほぼ下方に延びている。
【0012】
リヤフレーム2は、上側リヤフレーム片2aと、下側リヤフレーム片2bとを有している。上側リヤフレーム片2aは、その前端がメインフレーム1の後端部1aの前方上方に連結されて、メインフレーム1から後方に延びている。下側リヤフレーム片2bは、その前端がメインフレーム1の後端部1aの若干下方に連結されている。下側リヤフレーム片2bは、メインフレーム1から後方斜め上方に延びて、その後端が上側リヤフレーム片2aの後部に連結されている。
【0013】
ヘッドパイプ4にステアリングシャフト(図示せず)を介してフロントフォーク8が回動自在に軸支されている。フロントフォーク8の上端部に操向用のハンドル7が固定されている。フロントフォーク8の下端部に前輪10が取り付けられている。
【0014】
メインフレーム1の後端部1aの下方に、スイングアームブラケット9が設けられている。このスイングアームブラケット9に取り付けたピボット軸11の回りに、スイングアーム12が上下揺動自在に軸支されている。このスイングアーム12の後端部に、後輪14が支持されている。
【0015】
自動二輪車の駆動源であるエンジンEが、メインフレーム1の下方前方に配置され、メインフレーム1に取り付けられている。エンジンEは、ドライブチェーンのような動力伝達部材(図示せず)を介して後輪14を駆動する。本実施形態のエンジンEは、単気筒4サイクルエンジンであるが、これに限定されない。
【0016】
エンジンEの後面に吸気ポート16が形成され、前面に排気ポート18が形成されている。吸気ポート16から導入された空気と燃料の混合気が燃焼室で燃焼され、排気ポート18から排出される。吸気ポート16に、吸気装置IDが接続されている。吸気装置IDは、取り込まれた外気を燃料と混合して混合気を生成し、吸気としてエンジンEの吸気ポート16に供給する。
【0017】
排気ポート18に、排気管22が接続されている。排気管22が、エンジンEの右側方を後方に延びて、後輪14の右側方上方に配置された排気マフラ20に接続されている。排気マフラ20は、自動二輪車のエンジンEの排気音を低減すると共に、エンジン特性を調整する装置である。排気マフラ20の上半部は、マフラカバー24により外側方から覆われている。マフラカバー24は、例えば、板金からなり、排気マフラ20に着脱自在に取り付けられている。ただし、排気管22および排気マフラ20の配置は、これに限定されない。排気マフラ20の詳細は後述する。
【0018】
排気マフラ20は、接続管27を介して排気管22に接続される。接続管27は、その上流端部(前端部)が排気管22に着脱自在に接続され、下流端部(後端部)が溶接により排気マフラ20に接合されている。接続管27に、接続管27を流れる排ガスGの状態を検知する上流側排ガスセンサ35(図2)が取り付けられている。本実施形態では、上流側排ガスセンサ35は、排ガスG中の酸素の量を検出する酸素センサである。
【0019】
詳細には、図4に示すように、接続管27は、パイプからなる上流側部分27aと、二分割構造の下流側部分27bとを有している。上流側部分27aの前端部が排気管22に着脱自在に接続され、上流側部分27aの後端部が下流側部分27bの前端部に溶接により接合されている。下流側部分27bは、上流側部分27aに接続される上流端部からマフラ20に接続される下流端部に向かって徐々に拡径している。下流側部分27bの下流端部がマフラ20の前端部に接続され、マフラ20内部の消音空間SPの前端を閉塞している。上流側排ガスセンサ35は、接続管27の下流側部分27bに取り付けられている。
【0020】
図1に示すメインフレーム1に、燃料タンク25が支持されている。燃料タンク25には、エンジンEの燃料が貯留される。燃料タンク25は、エンジンEの上方に配置されている。燃料タンク25の後方で、上側リヤフレーム片2aに、運転者が着座するシート26が支持されている。
【0021】
[排気マフラ]
以下に、本開示の排気マフラ20について説明する。図2は排気マフラ20の側面図で、図3は排気マフラ20を斜め前方から見た斜視図で、図4は排気マフラ20の平面図で、図5図4のV-V線に沿った断面図で、図6はマフラケーシングの一部を取り外した状態を示す側面図である。以下の説明において、「上流」および「下流」とはそれぞれ、排ガスGの流れ方向の「上流」および「下流」をいう。
【0022】
本実施形態の排気マフラ20は、内部に消音空間SPが形成される筒状のマフラケーシング28を有している。すなわち、本実施形態の排気マフラ20は、エンジンEの排ガスGが流入する消音空間SPを有する消音装置を構成している。また、マフラケーシング28が、内部に消音空間SPが形成されるケース体を構成している。
【0023】
図3に示すように、マフラケーシング28の外周面に、マフラカバー24(図1)が締結される取付部28aが設けられている。本実施形態の取付部28aは、ボルトのような締結部材が挿通される挿通孔28aaを有している。また、本実施形態では、取付部28aは前後方向の中間部に1つ設けられている。ただし、取付部28aの構造、配置、数は実施形態のものに限定されない。なお、図2図6~8では、取付部28aが省略されている。
【0024】
図4に示すように、マフラケーシング28は、左右二つ割り構造であり、幅方向内側の第1ケース半体30と、幅方向外側の第2ケース半体32とを有している。第1および第2ケース半体30,32は、横断面が半円筒形状で、その周方向の両端縁部で溶接により接合されている。
【0025】
図5に示すように、本実施形態の第2ケース半体32は、外郭を構成する外側部材32oと、内部に消音空間SPが形成される内側部材32iとを有する二重構造である。本実施形態では、内側部材32iと外側部材32oとの間に充填剤34が介装されている。充填剤34は、例えば、グラスウールである。内側部材32iの周壁にはパンチング孔が形成されており、消音空間SPの排ガスGはパンチング孔を介して充填剤34に接触する。充填剤34を設けることにより、排ガスGの音や熱が低減される。
【0026】
図4に示すように、第1ケース半体30は、前端部から後端部に向かって第1部分36、第2部分38および第3部分40を有している。前述の取付部28aは、第2部分38に接合されている。
【0027】
図3に示すように、第1部分36は、第2ケース半体32の周方向の両端縁部に滑らかに連なる曲面部36aと、曲面部36aからほぼ上下方向に延びる平坦部36bと、平坦部36bから外側に膨出する半円筒の入口管第1形成部36cとを有している。
【0028】
第2部分38も、第2ケース半体32の周方向の両端縁部に滑らかに連なる曲面部38aと、曲面部38aからほぼ上下方向に延びる平坦部38bと、平坦部38bから外側に膨出する半円筒の入口管第2形成部38cとを有している。
【0029】
入口管第2形成部38cは、入口管第1形成部36cよりも小径であり、入口管第2形成部38cの前端が入口管第1形成部36cの後端に接合されている。つまり、入口管第1形成部36cの中空部と、入口管第2形成部38cの中空部は連なっており、後述の入口通路44の周壁の一部を構成している。
【0030】
第3部分38は、第2ケース半体32の周方向の両端縁部に滑らかに連なる。つまり、第3部分38は、第2ケース半体32とほぼ同径の半円筒形状である。第3部分38は、前方を向く段差部40aを介して第2部分38の平坦部38bに連なっており、入口管第2形成部38cが段差部40aを貫通している。
【0031】
排気マフラ20の消音空間SPは、複数の消音室に分割されていてもよい。本実施形態では、消音空間SPは、図2に示すように、3つの第1~3消音室46,48,50に分割されている。詳細には、消音空間SPの後端が蓋部材52で閉塞され、前側の第1隔壁54と後側の第2隔壁56とにより消音空間SPが区画されている。蓋部材52はマフラケーシング28の後端部の内周面に溶接で接合され、第1および第2隔壁54,56はマフラケーシング28の内周面に溶接で接合されている。
【0032】
消音室46,48,50は、前方から第2消音室48、第3消音室50、第1消音室46の順に並んでいる。詳細には、蓋部材52と第2隔壁56との間に第1消音室46が形成され、第1隔壁54と接続管27の下流側部分27bとの間に第2消音室48が形成され、第1隔壁54と第2隔壁56とより第3消音室50が形成されている。
【0033】
排気マフラ20の消音空間SP内に、内部を排ガスGが流れるパイプ部材61~65が配置されている。図6に示すように、本実施形態の排気マフラ20は、5つの第1~第5パイプ部材61~65を備えている。図6は、図2からマフラケーシング28の第2ケース半体32を取り外した状態を示す。
【0034】
第1パイプ部材61は、上流端61aが接続管27の下流端に連通している。第1パイプ部材61は、上流端61aから後方に延び、第1および第2隔壁54,56を貫通して、下流端61bが第1消音室46に開口している。つまり、第1パイプ部材61は、上流端61aが排気マフラ20の外部に開口し、下流端61bが消音空間SPに連通する入口通路44を構成する。第1パイプ部材61の詳細は後述する。
【0035】
第2パイプ部材62は、上流端62aが第1消音室46に開口している。第2パイプ部材62は、上流端62aから前方に延び、第2隔壁56および第1隔壁54を貫通して、下流端62bが第2消音室48に開口している。
【0036】
第3パイプ部材63は、上流端63aが第2消音室48に開口している。第3パイプ部材63は、上流端63aから後方に延び、第1隔壁54を貫通して、下流端63bが第3消音室50に開口している。また、第1隔壁54には、第2消音室48と第3消音室50とを連通する貫通孔66が設けられている。
【0037】
第4パイプ部材64は、導入部64aが第3消音室50に開口している。本実施形態では、第4パイプ部材64の前端部は閉塞され、導入部64aは第4パイプ部材64の外周面に形成されている。第4パイプ部材64は、第2隔壁56を貫通して後方に延び、下流端64bが排気マフラ20の外部に開口している。つまり、第4パイプ部材64は、上流端部64aが消音空間SPに連通し、下流端64bが排気マフラ20の外部に開口する出口通路67を構成する。本実施形態では、出口通路67の一部が、入口通路44と排気マフラ20の径方向に隣接している。また、本実施形態では、蓋部材52を貫通する出口パイプ68に、第4パイプ部材64の下流端64bが連通している。
【0038】
第5パイプ部材65は、上流端65aが第1消音室46に開口している。第5パイプ部材65は、上流端62aから前方に延び、第2隔壁56を貫通して、下流端65bが第3消音室50に開口している。第3消音室50において、第3パイプ部材65の下流端63bと、第5パイプ部材65の下流端65bは、排ガスGの流れ方向、すなわち前後方向に対向している。
【0039】
本実施形態では、第4パイプ部材64にフレームアレスタ69が設けられている。フレームアレスタ69は、火炎を遮断し、気体のみを通過させるもので、本実施形態では、第4パイプ部材64の導入部64aに取り付けられた金網69である。ただし、第4パイプ部材64にフレームアレスタ69を設けなくてもよい。
【0040】
図2に示す接続管27から排気マフラ20の第1パイプ部材61に流入した排ガスGは、第1パイプ部材61内を流れて、第1消音室46に導出されて膨張する。第1消音室46の排ガスGは、第2パイプ部材62内を流れて、第2消音室48に導出されて膨張する。また、第1消音室46の排ガスGの一部は、第5パイプ部材65内を流れて、第3消音室50に導出されて膨張する。
【0041】
第2消音室48の排ガスGは、貫通孔66を通って第3消音室50に流入して膨張する。また、第2消音室48の排ガスGの一部は、第3パイプ部材63を通って第3消音室50に流入して膨張する。このとき、第5パイプ部材65から第3消音室50に導出される排ガスGと、第3パイプ部材63から第3消音室50に流入される排ガスGが衝突し、排気干渉を起こす。第3消音室43の排ガスGは、第4パイプ部材64および出口パイプ68を介してマフラ外部に排出される。このように、排気マフラ20内で膨張・収縮が繰り返されることで、排ガスGが消音される。
【0042】
[第1パイプ部材]
以下に、本開示の第1パイプ部材61の詳細を説明する。図7および図8は、排気マフラ20の内部における第1パイプ部材61のみを示した斜視図である。上述のように、第1パイプ部材61は、上流端61aが排気マフラ20の外部に開口して下流端61bが消音空間SPに連通する入口通路44を構成する。本実施形態の入口通路44は、上流側の大径通路部分44aと、下流側の小径通路部分44bとを有している。
【0043】
図7に示すように、第1パイプ部材61は、触媒70が収納された触媒管72と、第1パイプ部材61の外壁を構成する外壁部分74と、第1パイプ部材61の内壁を構成する内壁部分76を有している。ここで、「第1パイプ部材61の外壁」とは、第1パイプ部材61における消音空間SPと接しない部分の壁をいう。一方、「第1パイプ部材61の内壁」とは、第1パイプ部材61における消音空間SPと接する部分の壁をいう。
【0044】
触媒管72の上流端72aが接続管27の下流端に連通している。つまり、触媒管72の上流端72aが、第1パイプ部材61の上流端61aを構成し、排気マフラ20の入口部を構成している。
【0045】
触媒管72は、真直なパイプ部材からなり、その内部に触媒70が配置されている。内部に触媒70が収納された触媒管72は、大径であり、入口通路44の大径通路部分44aを構成する。
【0046】
触媒70は、排ガスGに含まれる有害な排気成分を浄化する。触媒70は、白金、パラジウム、ロジウム等の希少貴金属からなり、排ガスGに含まれる有害な排ガスを無害なガスに変えて分解する。触媒70は、触媒担体に担持されている。本実施形態では、触媒70は、排ガスGの流れ方向に離間して2つ設けられている。ただし、触媒70の数はこれに限定されない。
【0047】
第1パイプ部材61の外壁部分74は、図3に示す半円筒の入口管第1形成部36cと、半円筒の入口管第2形成部38cとを有している。つまり、第1パイプ部材61の外壁部分74は、マフラケーシング28の外壁により構成されている。本実施形態では、入口通路44が、その周壁の一部がマフラケーシング28の外壁36c,38cにより形成された開放通路を構成している。また、本実施形態では、開放通路44の周壁を構成するマフラケーシング28の外壁36c,38cが、乗物本体側、すなわち幅方向内側に向いている。
【0048】
図3に示す大径の入口管第1形成部36cが入口通路44の大径通路部分44aを構成し、小径の入口管第2形成部38cが入口通路44の小径通路部分44bを構成している。マフラケーシング28の入口管第1形成部36cは、図7に示す触媒管72を外側から覆っている。つまり、入口通路44の大径通路部分44aの外側部分、すなわち消音空間SPに接しない部分は、触媒管72と入口管第1形成部36cの二重壁になっている。
【0049】
図8に示す第1パイプ部材61の内壁部分76は、半円筒の第1内壁部76aと、その下流側の半円筒の第2内壁部76bとを有している。第1内壁部76aは、第2内壁部76bよりも大径である。本実施形態の内壁部分76は、板金をプレス加工することで形成されている。ただし、内壁部分76の加工方法はこれに限定されない。
【0050】
内壁部分76の周方向両端部に、径方向に延在するフランジ状のリブ76cが形成されている。第1パイプ部材61の内壁部分76は、このリブ76cを介してマフラケーシング28の第1ケース半体30の内周面に溶接により接合されている。
【0051】
内壁部分76の大径の第1内壁部76aは、触媒管72の下流側部分を覆っている。詳細には、第1内壁部76aは、触媒管72における下流側の触媒70が収納される部分を覆っている。つまり、触媒管72における上流側の触媒70が収納される上流側部分は消音空間SPに直接的に接触している。一方、触媒管72における下流側の触媒70が収納される下流側部分は、内壁部分76の第1内壁部76aを介して消音空間SPに間接的に接触している。
【0052】
内壁部分76の小径の第2内壁部76bと、マフラケーシング28の小径の入口管第2形成部38cとにより、入口通路44の小径通路部分44bが構成されている。つまり、内壁部分76の第2内壁部76bが小径通路部分44bの内壁を構成し、入口管第2形成部38cが小径通路部分44bの外壁を構成している。
【0053】
入口通路44の小径通路部分44bは、通路面積一定に真直に後方に延びている。換言すれば、第1パイプ部材61における触媒管72よりも下流側に、真直に延びるストレート部分が形成されている。触媒70の下流側には、ある程度の長さのストレート部分が必要であり、本実施形態では、小径通路部分44bによりストレート部分が確保されている。
【0054】
[センサ]
図5に示すように、排気マフラ20に下流側排ガスセンサ80が取り付けられている。下流側排ガスセンサ80は、第1パイプ部材61を流れる排ガスGの状態を検知する。本実施形態では、下流側排ガスセンサ88は、排ガスG中の酸素の量を検出する酸素センサである。下流側排ガスセンサ80には、電流または電圧を送受信するハーネス80aが接続されている。つまり、本実施形態では、下流側排ガスセンサ88が、マフラケーシング28内に収容されて、マフラケーシング28の外側に延びるハーネス80aが接続される収容物を構成している。
【0055】
本実施形態では、図4に示すように、触媒70の上流側に上流側排ガスセンサ35が配置され、触媒70の下流側に下流側排ガスセンサ80が配置されている。上流側排ガスセンサ35は、例えば、燃料噴射制御(空燃比制御)に用いられる。下流側排ガスセンサ80は、例えば、触媒70の故障診断に用いられる。排ガスセンサ35,80の用途はこれに限定されない。
【0056】
下流側排ガスセンサ80は、マフラケーシング28に着脱自在に取り付けられている。詳細には、マフラケーシング28に円環形状の取付座82が溶接で固着され、取付座82の内周面の雌ねじ部82aに下流側排ガスセンサ80締結されている。図3に示すように、取付座82は、マフラケーシング28の入口管第2形成部38cに設けられている。
【0057】
つまり、下流側排ガスセンサ80は、入口通路(開放通路)44の周壁を構成するマフラケーシング28の外壁38cに取り付けられている。また、開放通路44における触媒70が収容される通路部分の径よりも、下流側排ガスセンサ80が配置される通路部分の径が小さい。さらに、図8に示すように、入口通路44の消音空間SPへの開口端40cは、入口通路における下流側排ガスセンサ80の取付位置から下流側に間隔をあけて配置されている。
【0058】
上記構成によれば、入口通路44を開放通路とすることで、入口通路44をマフラケーシング28に寄せて配置することができる。これにより、排気マフラ20のレイアウトの選択肢を増やしたり、消音空間SP内の機器の配置の自由度を高めたりすることができる。
【0059】
本実施形態において、図5に示すように、収容物を構成する下流側排ガスセンサ80が、開放通路44の周壁を構成するマフラケーシング28の外壁38cに取り付けられている。マフラケーシング28の内部のパイプ部材に下流側排ガスセンサ80を取り付ける場合、下流側排ガスセンサ80は、マフラケーシング28とパイプ部材の両方を貫通して配置される。この場合、マフラケーシング28にパイプ部材を組み付ける際の組立誤差を考慮する必要がある。また、センサ80に接続されるハーネス80aも長くなる。上記構成によれば、下流側排ガスセンサ80がマフラケーシング28に取り付けられているので、排気マフラ20に下流側排ガスセンサ80を容易に取り付けることができる。また、ハーネス80aの長さも短くできる。
【0060】
本実施形態において、図8に示すように、開放通路である入口通路44における消音空間SPへの開口端44aが、センサ取付位置(取付座82)から排気流れ方向の下流側に間隔をあけて配置されている。この構成によれば、排ガスGが開放通路44に向けて逆流しても、下流側排ガスセンサ80に与える影響を抑えることができる。
【0061】
本実施形態において、触媒70の下流側に下流側排ガスセンサ80が配置され、触媒70が収容される入口通路44の径よりも、下流側排ガスセンサ80が配置される入口通路44の径が小さく設定されている。マフラケーシング28の内部のパイプ部材に下流側排ガスセンサ80を取り付ける場合、パイプ部材の小径部分に下流側排ガスセンサ80を取り付けるには、下流側排ガスセンサ80をマフラケーシング28のより内側に配置する必要があり、センサの取付けが難しく、また、センサ80に接続されるハーネス80aも長くなる。上記構成によれば、下流側排ガスセンサ80がマフラケーシング28に取り付けられているので、排気マフラ20に下流側排ガスセンサ80を容易に取り付けることができる。また、ハーネス80aの長さも短くできる。
【0062】
本実施形態において、開放通路44の内側部分を形成する第2内壁部76bにフランジ状のリブ76cが形成されている。この構成によれば、リブ76cを介してマフラケーシング28の内面に第2内壁部76bを接合することで、開放通路44を容易に形成することができる。
【0063】
本実施形態において、図5に示すように、開放通路44におけるマフラケーシング28の内側に隣接する領域に消音空間SPが形成されている。消音空間SPにおける開放通路44に隣接する領域を「隣接消音空間」と呼ぶ。この構成によれば、入口通路(開放通路)44が消音空間SPからオフセット配置される、すなわち、入口通路44の全周が消音空間SPに囲まれていない。したがって、入口通路44を取り囲んだドーナツ状の消音空間SPに比べて、第2~第5パイプ部材62~65の形状や配置の自由度が向上する。
【0064】
本実施形態において、図6に示すように、入口通路44と出口通路67の一部が径方向に隣接している。この構成によれば、開放通路である入口通路44が、排気マフラ20の中心軸から径方向にオフセットして配置されているので、入口通路44と出口通路67を径方向に並べて配置しやすい。その結果、出口通路67を構成する第4パイプ部材64の形状や配置の自由度が向上する。特に、本実施形態では、第4パイプ部材64にフレームアレスタ69が設けられているので、第4パイプ部材64の形状や配置の自由度が向上する効果が大きい。
【0065】
本実施形態において、図3に示すように、開放通路44の周壁を構成するマフラケーシング28の外壁36c,38cが乗物本体側、すなわち幅方向内側に向いている。この構成によれば、開放通路44の周壁36c,38cが外側に露出しないので、乗物の美観への影響を抑えることができる。
【0066】
上記実施形態では、排気マフラ20が消音装置を構成しているが、消音装置は排気マフラ20に限定されず、例えば、排気マフラ20の上流側に配置される排気チャンバであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、入口通路44が開放通路を構成しているが、出口通路67が開放通路を構成してもよい。つまり、出口通路67の周壁の一部がケース体28の外壁により形成されてもよい。
【0068】
さらに、触媒70の数、位置は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、触媒70は1つのみで、排気マフラ20の内部に配置されていたが、触媒70は2つ以上であってもよく、そのうちの少なくとも一つがマフラの外部に設けられてもよい。また、触媒70は排気マフラ20の内部に配置されていなくてもよい。
【0069】
本開示は、以下の態様1~9の消音装置と、態様10の鞍乗型車両を含む。
[態様1]
エンジンの排ガスが流入する消音空間を有する消音装置であって、
内部に前記消音空間が形成されるケース体と、
下流端が前記消音空間に連通する入口通路と、
上流端が前記消音空間に連通する出口通路と、
を備え、
前記入口通路および前記出口通路の少なくとも一方の通路が、その周壁の一部が前記ケース体の外壁により形成された開放通路である消音装置。
[態様2]
態様1に記載の消音装置において、さらに、前記ケース体の内部に収容される収容物と、前記収容物に接続されて前記ケース体の外部に延長されるハーネスと、を備え、
前記収容物が、前記開放通路の周壁を構成する前記ケース体の前記外壁に取り付けられている消音装置。
[態様3]
態様2に記載の消音装置において、前記収容物が、前記排ガスの状態を検知する排ガスセンサであり、
前記排ガスセンサが、前記開放通路の周壁を構成する前記ケース体の前記外壁に取り付けられている鞍乗型乗物の消音装置。
[態様4]
態様3に記載の消音装置において、前記開放通路は、前記入口通路に設けられ、
前記排ガスセンサの上流側に触媒が配置され、
開放通路の前記消音空間への開口端は、前記排ガスセンサの取付位置から排ガス流れ方向の下流側に間隔をあけて配置されている消音装置。
[態様5]
態様3または4に記載の消音装置において、前記排ガスセンサの上流側に触媒が配置され、
前記触媒が収容される通路の径よりも、前記排ガスセンサが配置される通路の径が小さく設定されている消音装置。
[態様6]
態様1から5のいずれか一態様に記載の消音装置において、前記開放通路の内側部分を形成する部分にリブが形成されている消音装置。
[態様7]
態様1から6のいずれか一態様に記載の消音装置において、前記開放通路における前記ケース体の内側に隣接する領域が、隣接消音空間を構成している消音装置。
[態様8]
態様1から7のいずれか一態様に記載の消音装置において、前記入口通路と前記出口通路の一部が径方向に隣接している消音装置。
[態様9]
乗物に搭載された態様1から8のいずれか一態様に記載の消音装置であって、
前記開放通路の周壁を構成する前記ケース体の前記外壁が、乗物本体側に向いている消音装置。
[態様10]
態様1から9のいずれか一態様に記載の消音装置を備える鞍乗型車両。
【0070】
本開示は、以上の形態に限定されるものでなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、排ガスセンサ80として、排ガス中の酸素の量を検出する酸素センサが用いられていたが、これに限定されず、例えば、排ガスの温度を検出する温度センサであってもよい。また、収容物80は、排ガスセンサ以外であってもよい。したがって、そのようなものも本開示の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
20 排気マフラ(消音装置)
28 マフラケーシング(ケース体)
36c 入口管第1形成部(開放通路の周壁の一部)
38c 入口管第2形成部(開放通路の周壁の一部)
44 入口通路(開放通路)
67 出口通路
70 触媒
76c リブ
80 下流側排ガスセンサ(収容物)
E エンジン
G 排ガス
SP 消音空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8