(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007232
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】霧箱
(51)【国際特許分類】
G01T 5/04 20060101AFI20250109BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01T5/04
G01T7/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108500
(22)【出願日】2023-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】596013224
【氏名又は名称】株式会社関東技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋伸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋
(72)【発明者】
【氏名】東石 良治
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB05
2G188BB06
2G188BB18
2G188DD13
(57)【要約】
【課題】霧箱の容積を増やし、過飽和蒸気層を厚くして自然放射線の飛跡を観測しやすくした可搬型の霧箱を提供する。
【解決手段】エタノールの過飽和蒸気層を通過する放射線の飛跡を観察するための霧箱であって、上面を観察窓のある蓋で塞いだ観察箱と、前記観察箱内に入れたエタノールを蒸発させて過飽和蒸気層を形成するための蒸気発生手段と、前記観察箱内の上部を温めるために前記観察窓に設けた発熱ガラスと、前記観察箱内の下部を冷やして温度勾配を作るために配置した冷却プレートと、前記冷却プレートの下面に吸熱部を当接させた冷凍機と、を有し、前記冷凍機の吸熱部を被覆するように前記冷却プレートの中央を下方に突出させた、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールの過飽和蒸気層を通過する放射線の飛跡を観察するための霧箱であって、
上面を観察窓のある蓋で塞いだ観察箱と、
前記観察箱内に入れたエタノールを蒸発させて過飽和蒸気層を形成するための蒸気発生手段と、
前記観察箱内の上部を温めるために前記観察窓に設けた発熱ガラスと、
前記観察箱内の下部を冷やして温度勾配を作るために配置した冷却プレートと、
前記冷却プレートの下面に吸熱部を当接させた冷凍機と、を有し、
前記冷凍機の吸熱部を被覆するように前記冷却プレートの中央を下方に突出させた、
ことを特徴とする霧箱。
【請求項2】
エタノールの過飽和蒸気層を通過する放射線の飛跡を観察するための霧箱であって、
上面を観察窓のある蓋で塞いだ観察箱と、
前記観察箱内に入れたエタノールを蒸発させて過飽和蒸気層を形成するための蒸気発生手段と、
前記観察箱内の上部を温めるために前記観察窓に設けた発熱ガラスと、
前記観察箱内の下部を冷やして温度勾配を作るために配置した冷却プレートと、
前記冷却プレートの下面に吸熱部を当接させた冷凍機と、を有し、
前記冷凍機の吸熱部を被覆するように前記冷却プレートの中央を陥没させた、
ことを特徴とする霧箱。
【請求項3】
前記冷却プレート全体を一律に冷却するために、前記観察箱の回収口に前記冷却プレートの上面に溜まったエタノールが排出されるように、前記冷却プレートに溝を形成した、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の霧箱。
【請求項4】
前記観察箱の回収口から排出されたエタノールを前記蒸気発生手段に供給する循環用ポンプを設ける、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の霧箱。
【請求項5】
前記観察箱の回収口から排出されたエタノールを、毛細管現象を利用したポンプにより前記蒸気発生手段のトレイに供給する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の霧箱。
【請求項6】
エタノール蒸気の凝縮により過飽和蒸気層の蒸気量が減少するのを抑制して過飽和蒸気層が拡がるように、前記蒸気発生手段のトレイに高電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の霧箱。
【請求項7】
外部から前記観察箱内に放射線源を投入する線源挿抜装置を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の霧箱。
【請求項8】
前記冷凍機は、スターリングサイクル冷凍機であり、前記冷却プレートを-50~-30℃に冷却する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の霧箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霧箱の容積を増やし、過飽和蒸気層を厚くして自然放射線の飛跡を観測しやすくした可搬型の霧箱に関する。
【背景技術】
【0002】
霧箱は、蒸気の凝結作用を用いて荷電粒子の飛跡を可視化するための装置である。霧箱の上部でアルコール等の液体を温めて蒸発させ、霧箱の下部を冷却して温度勾配を作ることにより過飽和蒸気層を発生させる。そこに放射線が入射すると気体がイオン化して液滴が生成されるので、光を当てて放射線の飛跡を観測することができる。
【0003】
霧箱は、例えば、科学博物館や教育施設などに教材として設置される。霧箱で観測しようとする放射線は、主に空気中のラドンガスが自然崩壊する際に発生するアルファ線とベータ線であるが、霧箱の容積を大きくすることでラドンガスの量も多くなり観測できる放射線も多くなる。
【0004】
また、霧箱の観測窓が小さいと、霧箱の壁で外部からのアルファ線が遮断されて観測量が少なくなる。観測窓を大きくしようとすると、その面積に応じて冷却能力を上げる必要となり、冷媒ガス循環式の冷凍機では霧箱全体が大型化してしまい、教育施設を回れるように可搬型にするのは困難となる。
【0005】
特許文献1に記載されているように、装置の低温化を図って観察者が接触しても火傷等をおうことがなく容器内部での荷電粒子の飛跡を見やすくした霧箱の発明も開示されている。さらに、特許文献2に記載されているように、観察槽内を冷却する電子冷却素子によって観察槽の上下面間の温度差を最適値に保ち多くの自然放射線飛跡を容易に観察でき軽量コンパクトにした低温拡散型霧箱の発明も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09-184887号公報
【特許文献2】特許第4537332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2のように、ペルティエ(ペルチェ)素子を用いれば小型軽量化することができるが、大きな観測窓に対して十分な冷却能力を得るのが困難である。観測窓が小さい場合は、内包するラドンガスの量も少なくなり放射線も観測されづらくなるため、霧箱内に人為的にラドンガスを注入して飛跡を発生させることもあるが、それでは自然に発生している放射線を観測していると言うには無理がある。
【0008】
そこで、本発明は、霧箱の容積を増やし、過飽和蒸気層を厚くして自然放射線の飛跡を観測しやすくした可搬型の霧箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、エタノールの過飽和蒸気層を通過する放射線の飛跡を観察するための霧箱であって、上面を観察窓のある蓋で塞いだ観察箱と、前記観察箱内に入れたエタノールを蒸発させて過飽和蒸気層を形成するための蒸気発生手段と、前記観察箱内の上部を温めるために前記観察窓に設けた発熱ガラスと、前記観察箱内の下部を冷やして温度勾配を作るために配置した冷却プレートと、前記冷却プレートの下面に吸熱部を当接させた冷凍機と、を有し、前記冷凍機の吸熱部を被覆するように前記冷却プレートの中央を下方に突出させた、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、エタノールの過飽和蒸気層を通過する放射線の飛跡を観察するための霧箱であって、上面を観察窓のある蓋で塞いだ観察箱と、前記観察箱内に入れたエタノールを蒸発させて過飽和蒸気層を形成するための蒸気発生手段と、前記観察箱内の上部を温めるために前記観察窓に設けた発熱ガラスと、前記観察箱内の下部を冷やして温度勾配を作るために配置した冷却プレートと、前記冷却プレートの下面に吸熱部を当接させた冷凍機と、を有し、前記冷凍機の吸熱部を被覆するように前記冷却プレートの中央を陥没させた、ことを特徴とする。
【0011】
前記霧箱において、前記冷却プレート全体を一律に冷却するために、前記観察箱の回収口に前記冷却プレートの上面に溜まったエタノールが排出されるように、前記冷却プレートに溝を形成した、ことを特徴とする。
【0012】
前記霧箱において、前記観察箱の回収口から排出されたエタノールを前記蒸気発生手段に供給する循環用ポンプを設ける、ことを特徴とする。
【0013】
前記霧箱において、前記観察箱の回収口から排出されたエタノールを、毛細管現象を利用したポンプにより前記蒸気発生手段のトレイに供給する、ことを特徴とする。
【0014】
前記霧箱において、エタノール蒸気の凝縮により過飽和蒸気層の蒸気量が減少するのを抑制して過飽和蒸気層が拡がるように、前記蒸気発生手段のトレイに高電圧を印加する、
ことを特徴とする。
【0015】
前記霧箱において、外部から前記観察箱内に放射線源を投入する線源挿抜装置を有する、ことを特徴とする。
【0016】
前記霧箱において、前記冷凍機は、スターリングサイクル冷凍機であり、前記冷却プレートを-50~-30℃に冷却する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、教育施設等を回れるように筐体を小型化しても、霧箱の容積を増やし、ペルチェ素子以上の冷却能力によって観察箱内の過飽和蒸気層を厚くすることで、人工的に放射線源を投入しなくても十分に自然放射線の飛跡を観測することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明である霧箱の概要を示す断面図である。
【
図2】本発明である霧箱において線源を投入する場合を示す図である。
【
図3】本発明である霧箱においてエタノール液を循環させる場合を示す図である。
【
図4】本発明である霧箱において毛細管現象を利用したポンプを利用して循環させる場合を示す図である。
【
図6】本発明である霧箱の冷却温度変化を示すグラフ及び観測した自然放射線の飛跡を示す写真である。
【
図7】本発明である霧箱の冷凍機の効率を上げる冷却プレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例0020】
まず、本発明である霧箱について説明する。
図1は、霧箱の概要を示す断面図である。
図2は、霧箱において線源を投入する場合を示す図である。
図3は、霧箱においてエタノール液を循環させる場合を示す図である。
図4は、霧箱において毛細管現象を利用したポンプを利用して循環させる場合を示す図である。
【0021】
図1に示すように、霧箱100は、エタノールの過飽和蒸気層310を通過する放射線の飛跡を観察するためのものであり、筐体110の中に、周りが断熱材210で覆われた観察箱200、冷凍機120、ヒータ制御器130、電源装置140、及び高圧電源装置150などが収容される。
【0022】
観察箱200は、内部が中空の矩形状の容器で、上方から視認可能に上面が透明な観察窓のある蓋で塞がれる。観察箱200は、内部に入れたエタノールを蒸発させて過飽和蒸気層310を形成するための蒸気発生手段、観察箱200内の上部を温めるために観察窓に設けた発熱ガラス220、観察箱200内の下部を冷やして温度勾配を作るために配置した冷却プレート230、放射線の通過によって生成された液滴に光を当てるための照明灯260等を有する。
【0023】
蒸気発生手段は、観察箱200の上部内壁に沿って一周するようにトレイ240を配設し、その下側にヒータ250を配置する。トレイ240は、雨樋のように上面が空いて液体を入れることが可能である。液体としては、揮発性のあるエタノールを使用するが、エチレングリコールなど気化温度の低いアルコール類を使用しても良い。蒸発面積を広げるためにトレイ240の中にスポンジや繊維状の蒸発シートを敷いても良い。ヒータ250は、ヒータ制御器130によって約30~40℃で発熱し、トレイ240内の液体を加熱することでエタノール蒸気300を発生させる。
【0024】
発熱ガラス220は、ヒータ制御器130によって発熱し、観察箱200内の上部に拡散したエタノール蒸気300の温度が、観察窓に結露しない程度の約30~40℃となるように加温する。なお、観察者が接触しても火傷等を負わないように、温度を上げ過ぎないようにする。
【0025】
冷却プレート230は、冷凍機120によって冷却され、観察箱200内の下部に拡散したエタノール蒸気300の温度が、約-50~-30℃となるように冷却する。なお、冷却プレート230の下面中央に冷凍機120の吸熱部を当接させれば良い。冷凍機120を含め観察箱200を断熱材210で囲むことで外部からの温度への影響を抑える。観察箱200の下部の温度を下げることでエタノール蒸気300の飽和蒸気量が減少するが、蒸気量を増やして凝縮を抑制することで過飽和蒸気層310が形成される。
【0026】
過飽和蒸気層310に外部から放射線が入り込むと、放射線の周りがイオン化され液滴が生成される。エタノール蒸気300の凝縮によって過飽和蒸気層310の蒸気量が減少するのを抑制すれば過飽和蒸気層310が拡がるので、上部にあるトレイ240に高圧電線160を繋いで高圧電源装置150を用いて上下に高電圧を印加することで凝縮の核となる雑イオンを電極に移動させて除去しても良い。
【0027】
凝縮により液化して観察箱200の底に溜まったエタノール液320は、回収口270から排出する。冷却プレート230全体を一律に冷却するために、冷却プレート230の上面に溜まったエタノール液320が観察箱200の回収口270から排出されるように、冷却プレート230に回収口270へ導く溝などを形成しても良い。冷却プレート230上の液厚さを最小限にすることで、冷却プレート230全体の冷却効率が向上する。
【0028】
照明灯260は、LED等の発光手段であり、観察箱200の内壁から過飽和蒸気層310に向けて光を照射する。放射線の動きに沿って生成された液滴に光を当てることで、放射線の飛跡を観察窓から視認させる。熱の発生が少ないので、観察箱200内の温度への影響が抑えられる。なお、電源装置140は、冷凍機120、ヒータ制御器130、照明灯260などに直流又は交流の電源を供給する。
【0029】
図2に示すように、外部から観察箱200内に放射線源を投入する線源挿抜装置400を設けても良い。線源と投入するために蓋を開けると手間が掛かる上に、開けたときに周囲の空気が混入して一時的に過飽和蒸気層310が乱れて観察できない場合がある。
【0030】
線源挿抜装置400は、挿入管410の一端が線源取付部420で、他端が封止部430である。線源取付部420に放射線の線源を取り付けた上で挿入管410内に通して線源を投入すれば良い。
【0031】
その他に、観察箱200の外部から日常的な自然放射線の線源である北投石、カリウムを多く含む食塩、根昆布、アルコールランプの芯(マントル)、ラジウムを多く含む湯の華などを投入しても良い。
【0032】
図3に示すように、観察箱200の回収口270から排出されたエタノール液320を蒸気発生手段のトレイ240に供給するための循環用ポンプ500を設けても良い。エタノールを人為的に補充しなくても長時間の運用が可能となる。
【0033】
また、
図4に示すように、観察箱200の回収口270から排出されたエタノール液320を毛細管ポンプ510により蒸気発生手段のトレイ240に供給しても良い。電力などを用いなくてもエタノール液320を吸い上げることが可能となる。
【0034】
図5は、霧箱を示す写真である。
図6(a)は、霧箱の冷却温度変化を示すグラフを示す写真である。
図6(b)は、霧箱で観測した自然放射線の飛跡を示す写真である。
【0035】
図5に示すように、霧箱100は、発熱ガラス220入り観察窓から確認可能な観察箱200内の体積は、例えば、縦が約22cm、横が約22cm、高さが約10cmであり、持ち運び可能なサイズである。このとき、過飽和蒸気層310の高さは、約1~3cm程度になる。
【0036】
断熱材210で被覆された観察箱200の内の温度は、例えば、上部が約30~40℃、下部が約-50~-30℃のように、温度勾配が形成される。蓋を外してトレイ240にエタノールを200mL注入することで約8時間観察可能である。
【0037】
観察箱200内に上下温度差を設けることで上下の飽和蒸気量が変わり過飽和蒸気層310が形成されるが、過飽和蒸気層310の体積はエタノール蒸気300の拡散による蒸気量に比例する。同じ温度差を維持するためには、蒸気量に応じた冷却能力が必要となる。
【0038】
過飽和蒸気層310における蒸気圧が、例えば飽和蒸気圧の4倍以上のイオンリミット過飽和度になると、放射線の通過で生じたイオンを核として液滴が成長するので、照明灯260から光を当てることで放射線の飛跡が目視可能となる。なお、過飽和度が低いと、核の半径が大きくなるにつれて液滴が蒸発しやすくなる。
【0039】
冷凍機120は、スターリングサイクル冷凍機であり、冷却プレート230を-50~-30℃に冷却する。観察箱200内の上部温度を高くせずに、下部温度を低くして温度差を大きくすることで、過飽和蒸気層310の高さを拡げることが可能となる。
【0040】
スターリングサイクルは、冷媒であるヘリウムガスを膨張させると冷えるという気体の性質を利用した冷却システムである。内部のピストンをリニアモーターで連続的に駆動し、ピストン内部の冷媒ガスの断熱膨張により、ピストンの一端側の吸熱部を低温に冷却するもので、冷却能力に優れるとともに、小型軽量化され、搭載方向を問わず使用できるほか、移動等による振動の影響を受けにくい。
【0041】
スターリングサイクルを利用した冷凍機120は、冷却プレート230を約-80℃まで冷却可能であるが、-50℃以下になると過飽和蒸気層310の高さを拡げる効果が小さくなるので、約-50℃が好ましい。自然放射線を可視化できる過飽和蒸気層310の高さを厚くすることで、より観測容積が大きくとれ、放射線をより多く立体的に可視化することができる。
【0042】
図6(a)に示すように、霧箱100の電源装置140を起動してから、冷凍機120によって冷却プレート230の端まで約-40℃に冷却するのに約75分であり、冷却プレート230の中央においては約-80℃まで冷却される。
【0043】
図6(b)に示すように、霧箱100で観測される自然放射線は、霧箱100内部の空気中のラドンガスが自然崩壊する際に発生するアルファ線とベータ線が多く、観察窓の寸法を大きくし、霧箱100内部の容積を大きくすることにより、ラドンガスの量も多くなり観測される放射線も多くなる。なお、霧箱100におけるアルファ線の発生頻度としては、30秒あたり7個の自然放射線の飛跡が可視化された。
【0044】
図7は、霧箱の冷凍機の効率を上げる冷却プレートを示す図である。観察箱200内の過飽和蒸気層310の大きさを広くするために、下部に配置した冷却プレート230を約-50~-30℃に冷却する。
【0045】
図7(a)に示すように、例えば、霧箱100aにおいては、冷凍機120の吸熱部120aを被覆するように、冷却プレート230の中央を下方に突出させて被覆部230aを形成する。吸熱部120aが円筒状の場合は、冷却プレート230の中央から円筒状の被覆部230aを延ばして吸熱部120a囲んだ上で、断熱材210で包み込めば良い。
【0046】
また、
図7(b)に示すように、霧箱100bにおいては、冷凍機120の吸熱部120bを被覆するように、冷却プレート230の中央を陥没させて被覆部230bを形成する。吸熱部120bが円盤状の場合は、冷却プレート230の中央に埋め込むように被覆部230bで吸熱部120bを囲んだ上で、断熱材210で包み込めば良い。冷却プレート230を冷凍機120の吸熱効果が向上する構造にすることで、冷却プレート230を効率良く冷却することができる。
【0047】
スターリングサイクル冷凍機120は、一端側が吸熱部120aで他端側が排熱部の筒体の内部をピストンが往復する構造であり、冷却プレート230全体に吸熱部120aを当接させることは困難であるため、冷却プレート230の中央に吸熱部120aを当接させ、四隅の冷却度合いに差が出ないようにする。
【0048】
本発明によれば、教育施設等を回れるように筐体を小型化しても、霧箱の容積を増やし、ペルチェ素子以上の冷却能力によって観察箱内の過飽和蒸気層を厚くすることで、人工的に放射線源を投入しなくても十分に自然放射線の飛跡を観測することができるようになる。
【0049】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、霧箱の内部の空間を構成する壁面と発熱ガラスの構成を縦に積めるユニット構造としておき、二段重ね等にして発熱ガラスと冷却プレートの間を離し、過飽和蒸気層の厚さを増やすようにしても良い。
前記冷却プレート全体を一律に冷却するために、前記観察箱の回収口に前記冷却プレートの上面に溜まったエタノールが排出されるように、前記冷却プレートに溝を形成した、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の霧箱。