(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007257
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】金型装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/37 20060101AFI20250109BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B29C45/37
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108534
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 勇志
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ08
4F202AR07
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK18
4F202CK42
4F202CK53
4F202CK90
(57)【要約】
【課題】成形品を精度よく成形することができる金型装置を提供する。
【解決手段】金型装置10は、固定金型20と可動金型40の間に成形材料が充填されるキャビティ11を有する。金型装置10は、成形材料を充填する充填工程の前に、固定金型20と可動金型40とを位置決めする第1位置決め機構13と、成形材料を圧縮する圧縮工程において固定金型20と可動金型40を位置決めする第2位置決め機構14と、を備える。固定金型20および可動金型40のうち一方の金型に設けられるリング部材51は、キャビティ11の一部を構成する壁面516を有し、かつキャビティ11の流動末端に向かう成形材料の流動方向に対して平行な方向で前記可動金型に対して移動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と、前記固定金型に対して相対的に進退する可動金型と、を備え、前記固定金型と前記可動金型の間に成形材料が充填されるキャビティを有する金型装置であって、
前記成形材料を充填する充填工程の前に、前記固定金型と前記可動金型とを位置決めする第1位置決め機構と、
前記第1位置決め機構と異なる位置に設けられ、前記充填工程の後に前記固定金型に対して前記可動金型を前進させて前記成形材料を圧縮する圧縮工程において、前記固定金型と前記可動金型を位置決めする第2位置決め機構と、
前記固定金型および前記可動金型のうち一方の金型に設けられる移動体と、を備え、
前記キャビティは、前記固定金型と前記可動金型との分割面に、ゲートから射出された前記成形材料が到達する流動末端を有し、
前記移動体は、前記一方の金型に対して相対移動可能であるか、または前記一方の金型に固定されて当該一方の金型の一部を相対移動可能としており、
当該移動体は、前記キャビティの一部を構成する壁面を有し、かつ前記可動金型、または前記一方の金型の一部が前記固定金型に近接および離間する際に、前記流動末端に向かう前記成形材料の流動方向に対して平行な方向で前記可動金型に対して移動する、
金型装置。
【請求項2】
前記壁面は、前記移動体の相対移動の移動方向に対して傾斜している、
請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記移動体は、環状に形成され、内周面に前記壁面を有する、
請求項1に記載の金型装置。
【請求項4】
前記移動体は、前記一方の金型に対して相対移動可能なものであり、
前記固定金型および前記可動金型のうち前記移動体が設けられる金型は、前記移動体を収容する収容空間を有し、
前記収容空間の側面および当該側面に対向する前記移動体の摺接面は、前記移動体の移動方向に対して平行に設けられている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金型装置。
【請求項5】
前記摺接面は、前記固定金型および前記可動金型のうち前記移動体が設けられる金型の中心に対して、前記壁面よりも近位側に位置している、
請求項4に記載の金型装置。
【請求項6】
前記移動体は、前記摺接面と前記壁面との間に前記キャビティの一部を構成する段差面を有し、
前記段差面は、
前記充填工程において、隣接する前記キャビティを構成する面とずれた位置にあり、
前記圧縮工程において、隣接する前記キャビティを構成する面に面一に並ぶ、
請求項4に記載の金型装置。
【請求項7】
固定金型と、前記固定金型に対して相対的に進退する可動金型と、を備え、前記固定金型と前記可動金型の間に成形材料が充填されるキャビティを有する金型装置であって、
前記成形材料を充填する充填工程の前に、前記固定金型と前記可動金型とを位置決めする第1位置決め機構と、
前記第1位置決め機構と異なる位置に設けられ、前記充填工程の後に前記固定金型に対して前記可動金型を前進させて前記成形材料を圧縮する圧縮工程において、前記固定金型と前記可動金型を位置決めする第2位置決め機構と、
前記固定金型および前記可動金型のうち一方の金型に設けられる移動体と、を備え、
前記移動体は、前記一方の金型に対して相対移動可能であるか、または前記一方の金型に固定されて当該一方の金型の一部を相対移動可能としており、
当該移動体は、前記キャビティにより成形される成形品の最外側面を形成する壁面を有し、前記充填工程の前に前記可動金型または前記一方の金型の一部が前記固定金型に近接する際に、前記可動金型の進退方向と平行な方向に移動する、
金型装置。
【請求項8】
前記壁面は、前記移動体の移動方向に対して傾斜している、
請求項7に記載の金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形において成形品を形成する場合に、成形材料を充填する充填工程と、充填した成形材料を圧縮する圧縮工程と、をこの順に行う圧縮成形方法が知られている。具体的には、射出成形機は、充填工程前に金型装置の可動金型を型締位置から若干後退した位置に配置して金型装置のキャビティを拡大させた状態とし、充填工程で成形材料を射出する。その後の圧縮工程において、射出成形機は、可動金型を型締位置に前進させることで、先に充填された成形材料を圧縮して成形材料を流動させて成形品を成形する。
【0003】
上記の圧縮成形方法は、例えば、薄肉の成形品を製造する場合に適用される。ただし、薄肉の成形品の成形では、固定金型と可動金型の芯ずれ等の原因により、キャビティの流動末端に成形材料の圧力が届き難くなる問題が発生し易い。この結果、成形材料が途中で固化して、成形品に肉厚の偏り(偏肉)が生じる場合がある。
【0004】
特許文献1には、固定金型と可動金型の芯ずれを抑制するために、充填工程前から固定金型と可動金型との位置決めを行う位置決め機構(インサートリング、インサートリング収納溝)を備えた金型装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の位置決め機構は、充填工程と圧縮工程の両方における固定金型と可動金型の位置決めを兼ねることになる。この場合、金型装置は、位置決めにおいてインサートリングのかじりが生じる、または位置決め精度が低い等の問題があった。
【0007】
例えば、固定金型と可動金型の位置決め機構においてテーパ部を適用した場合には、充填工程における位置決め精度を保証するようにすると、圧縮工程では金型間の距離がさらに縮むことにより、かじりが発生してしまう。逆に、圧縮工程における位置決め精度を保証するようにすると、充填工程では位置決め機構の位置決め精度が低くなることにより偏肉が発生し、成形品の形状寸法精度が低くなってしまう。
【0008】
本開示は、成形品を精度よく成形することができる金型装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によれば、固定金型と、前記固定金型に対して相対的に進退する可動金型と、を備え、前記固定金型と前記可動金型の間に成形材料が充填されるキャビティを有する金型装置であって、前記成形材料を充填する充填工程の前に、前記固定金型と前記可動金型とを位置決めする第1位置決め機構と、前記第1位置決め機構と異なる位置に設けられ、前記充填工程の後に前記固定金型に対して前記可動金型を前進させて前記成形材料を圧縮する圧縮工程において、前記固定金型と前記可動金型を位置決めする第2位置決め機構と、前記固定金型および前記可動金型のうち一方の金型に設けられる移動体と、を備え、前記キャビティは、前記固定金型と前記可動金型との分割面に、ゲートから射出された前記成形材料が到達する流動末端を有し、前記移動体は、前記一方の金型に対して相対移動可能であるか、または前記一方の金型に固定されて当該一方の金型の一部を相対移動可能としており、当該移動体は、前記キャビティの一部を構成する壁面を有し、かつ前記可動金型、または前記一方の金型の一部が前記固定金型に近接および離間する際に、前記流動末端に向かう前記成形材料の流動方向に対して平行な方向で前記可動金型に対して移動する、金型装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
一態様によれば、金型装置は、成形品を精度よく成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る金型装置を示す断面図である。
【
図2】
図2(A)は、金型装置により成形される成形品である蓋の斜視図である。
図2(B)は、
図2(A)のIIB‐IIB線断面図である。
図2(C)は、金型装置により成形される別例の成形品である容器の部分断面図である。
【
図3】遮断機構のリング部材を拡大して示す断面図である。
【
図4】実施形態に係る圧縮成形方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5(A)は、金型装置の待機状態を示す断面図である。
図5(B)は、型閉工程における可動金型の動作を示す断面図である。
【
図6】
図6(A)は、充填工程における金型装置の状態を示す断面図である。
図6(B)は、充填工程における第1位置決め機構を拡大して示す部分断面図である。
図6(C)は、充填工程における第2位置決め機構を拡大して示す部分断面図である。
【
図7】
図7(A)は、充填工程における充填空間の一部を拡大して示す部分断面図である。
図7(B)は、圧縮工程におけるキャビティの一部を拡大して示す部分断面図である。
【
図8】
図8(A)は、圧縮工程における金型装置の状態を示す断面図である。
図8(B)は、圧縮工程における第1位置決め機構を拡大して示す部分断面図である。
図8(C)は、圧縮工程における第2位置決め機構を拡大して示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
図1は、実施形態に係る金型装置10を示す断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る金型装置10は、成形品を成形する固定金型20および可動金型40を備える。金型装置10は、射出成形機1に設置され、固定金型20と可動金型40の型閉状態でキャビティ11に成形材料を充填することにより、成形品を成形する。以下の説明では、必要に応じて
図1中のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に基づき方向を説明する。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。
【0014】
金型装置10の可動金型40は、射出成形機1に設けられた制御装置9の制御下に、固定金型20に対して相対移動する。制御装置9は、射出成形機1の型締装置2の駆動源や伝達機構等を動作させて、可動金型40を進退させる。可動金型40の進退方向は、
図1のZ軸方向である。より詳細には、制御装置9は、可動金型40をZ軸負方向(固定金型20に近接する方向)に前進させて、固定金型20との間で型閉状態(型閉、型締)を形成する。また、制御装置9は、可動金型40をZ軸正方向(固定金型20から離間する方向)に後退させて、固定金型20との間で型開を行う。
【0015】
そして、実施形態に係る射出成形機1は、圧縮成形方法として、成形材料を充填する充填工程と、充填した成形材料を圧縮する圧縮工程と、を順に行う。すなわち、射出成形機1は、型締位置よりも前の充填位置に可動金型40を一旦配置して、キャビティ11を拡大した状態として射出装置3により成形材料を充填する充填工程を行う。充填工程の後(または充填工程時)、射出成形機1は、可動金型40を前進させてキャビティ11内の成形材料を圧縮する圧縮工程を行うことで、最終的な成形品を成形する。
【0016】
図2(A)は、金型装置10により成形される成形品である蓋100の斜視図である。
図2(B)は、
図2(A)のIIB‐IIB線断面図である。
図2(C)は、金型装置10により成形される別例の成形品である容器200の部分断面図である。圧縮成形方法により成形される成形品としては、例えば、
図2(A)に示す樹脂成形品である食品用カップ容器(ゼリーやアイス等の容器)の蓋100等があげられる。この種の蓋100は、薄肉かつ平面部分が多い。具体的には、蓋100は、円板状に形成された平坦部101と、この平坦部101の外縁から屈曲して短く突出する円筒状の側部102と、を有している。
【0017】
図2(B)に示すように、蓋100は、平坦部101および側部102の内側に空間100sを有する。さらに、側部102は、平坦部101に直交する方向に対して若干傾斜して、当該平坦部101の外縁に連なっている。なお、成形品は、蓋100に限定されるものではなく、容器であってもよい。また、成形品の形状は、円板状や円筒状に限らず種々の形状を採ることができ、例えば、角部を有する多角形状に形成されてもよい。
【0018】
図1に戻り、金型装置10の固定金型20は、側面断面視で凸状に形成され、凹状の可動金型40に進入可能となっている。実施形態に係る固定金型20は、型締装置2の固定プラテン(不図示)に固定される固定側基部21と、固定側基部21の突出部分の周囲に設けられて可動金型40に接触する固定側受部22と、を有する。固定側基部21と固定側受部22は、別部材に構成される。なお、固定プラテンと固定側基部21は、互いに直接固定せずに、つなぎ合わせるためのブラケット(不図示)や互いを固定するための固定具を介して固定してもよい。
【0019】
固定側基部21は、Z軸負方向に位置する基端ブロック部位211と、この基端ブロック部位211の中心部において突出する突出ブロック部位212と、を含む。基端ブロック部位211および突出ブロック部位212は、相互に一体成形されている。また、固定側基部21は、基端ブロック部位211および突出ブロック部位212の内部をZ軸方向に延びるランナ21rを有すると共に、突出ブロック部位212の突出端面212a(Z軸正方向側の端面)の近傍でランナ21rに連通するゲート21gを有する。
【0020】
突出ブロック部位212の突出部分の一部(先端部)は、可動金型40の移動に伴って、可動金型40に進入する。突出ブロック部位212の突出端面212aは、上記した蓋100の平坦部101を形成するために平坦状に形成され、キャビティ11の一部を構成している。突出ブロック部位212の突出端面212aの外縁に連なる突出側面212bは、上記した蓋100の側部102を形成するためにキャビティ11の一部を構成している。ただし、突出端面212aおよび突出側面212bは、成形予定の成形品に応じて適切な形状をとればよい。また、ゲート21gは、突出端面212aの中心に設けられ、ランナ21rを通して流通する成形材料(例えば、樹脂材料)をキャビティ11に吐出する。
【0021】
固定側受部22は、基端ブロック部位211の一方面および突出ブロック部位212の周囲に固定され、基端ブロック部位211を周回する環状体を呈している。この固定側受部22は、可動金型40(後記のリング部材51を含む)の型締力を受ける部品である。固定側受部22は、充分な厚みを持っており、Z軸正方向の端面は可動金型40と接触する第1固定側分割面221を形成している。
【0022】
基端ブロック部位211と固定側受部22とがZ軸方向に重なる位置には、充填工程前および充填工程時に、固定金型20と可動金型40の位置決めを行う第1位置決め機構13の一方が形成される。第1位置決め機構13は、基端ブロック部位211および固定側受部22を厚み方向に貫通する複数の貫通孔23(第1凹部)を備える。各貫通孔23の数は、特に限定されないが、固定金型20と可動金型40のX軸‐Y軸方向の芯ずれを抑制するために、例えば3つ以上設けられるとよい。
図1では、説明の便宜のため2つの貫通孔23を図示している。
【0023】
各貫通孔23を構成する基端ブロック部位211の内周面には、貫通孔23の他の部位の内寸(内径)より小さいブッシュ24が設けられている。ブッシュ24は、各貫通孔23のZ軸負方向から基端ブロック部位211に圧入される。ブッシュ24は、貫通孔23における最も狭い内径を規定する。このブッシュ24の内径は、可動金型40の位置決めピン43の外径よりも僅かに大きく設定され、位置決めピン43の進入を許容しつつ、固定金型20と可動金型40の芯ずれを抑制する。
【0024】
また、固定側受部22は、各貫通孔23よりも外側の位置(中心から離れた位置)に、第1固定側分割面221に対してZ軸方向負方向側に凹んだ第2固定側分割面222を有している。第1固定側分割面221と第2固定側分割面222との間には、固定側傾斜面223が形成されている。
【0025】
固定側傾斜面223は、固定金型20と可動金型40の位置決めを行う第2位置決め機構14の一方を構成する。固定側傾斜面223は、各貫通孔23の外側隣接位置に配置され、固定側受部22の周方向全周にわたって円環状に形成されている。この固定側傾斜面223は、Z軸正方向に向かって内側に窄まるように傾斜している。例えば、固定側傾斜面223の傾斜角度θfは、第2固定側分割面222に対して45°~85°程度の範囲で傾斜している。
【0026】
一方、可動金型40は、型締装置2の可動プラテン(不図示)に固定される。なお、可動プラテンと可動金型40も、互いに直接固定せずに、つなぎ合わせるためのブラケット(不図示)や互いを固定するための固定具を介して固定してもよい。可動金型40のZ軸負方向側の面は、側方部位42に対して中央部位41が凹んでいる。中央部位41は、平坦状に形成され、固定金型20の突出端面212aに対向している。
【0027】
側方部位42は、Z軸方向の位置が異なる分割面(第1可動側分割面421、第2可動側分割面422)を有している。第2可動側分割面422は、第1可動側分割面421に対してZ軸負方向側に突出している。第1可動側分割面421は、第1固定側分割面221に対向しており、型締状態で当該第1固定側分割面221に面接触する。第2可動側分割面422は、第2固定側分割面222に対向しており、型締状態で当該第2固定側分割面222に面接触する。
【0028】
また、第1可動側分割面421に対応する可動金型40の内部には、当該第1可動側分割面421から突出するように複数の位置決めピン43が設けられている。各位置決めピン43は、各貫通孔23に対応する位置に設けられて、第1位置決め機構13の他方を構成している。つまり、各位置決めピン43は、環状に周回する第1可動側分割面421の周方向に沿って貫通孔23と同数で設けられている。
【0029】
可動金型40は、各位置決めピン43を挿入および保持する複数の保持穴45と、各保持穴45に連通してZ軸正方向側に貫通する複数のネジ挿入孔46を有する。各ネジ挿入孔46には、各位置決めピン43を固定するための固定ボルト47がそれぞれ挿入される。
【0030】
各位置決めピン43は、Z軸正方向の端部に雌ネジ部43aを有し、保持穴45内でこの雌ネジ部43aが固定ボルト47に螺合される。これにより、各位置決めピン43は、第1可動側分割面421からZ軸負方向に向かって突出した状態で、可動金型40に強固に固定される。
【0031】
各位置決めピン43は、Z軸方向(可動金型40の進退方向)に沿って一定の外径を有する円柱状に形成され、またZ軸負方向側の突出端部は、丸角に形成されている。各位置決めピン43は、固定金型20のブッシュ24の内径よりも僅かに小さな外寸(外径)を有し、固定金型20に対する可動金型40の前進時に各貫通孔23に挿入される。第1位置決め機構13は、充填工程前の前進時に、固定金型20の各貫通孔23に対する可動金型40の各位置決めピン43の挿入により、固定金型20と可動金型40とを安定的に位置決めできる。
【0032】
さらに、可動金型40は、第1可動側分割面421と第2可動側分割面422との間の内周面に、第2位置決め機構14の他方を構成する可動側傾斜面423を備える。可動側傾斜面423は、各位置決めピン43の外側隣接位置に配置され、側方部位42の周方向全周にわたって円環状に形成されている。この可動側傾斜面423は、Z軸負方向に向かって可動金型40の外側に広がるように傾斜している。
【0033】
例えば、可動側傾斜面423の傾斜角度θmは、固定側傾斜面223の傾斜角度θf(一例として、45°~85°程度の範囲)に一致するように形成されることで、固定側傾斜面223に面接触可能となっている。なお、固定側傾斜面223の傾斜角度θfと、可動側傾斜面423の傾斜角度θmとは、相互に異なっていてもよく、例えば、傾斜角度θmが傾斜角度θfよりも大きく設定されてもよい。
【0034】
また、可動金型40は、キャビティ11において最も外側の面(成形品の最外側面)を構成する箇所に、キャビティ11に充填された成形材料を遮断する遮断機構50を備える。なお、成形品の「最外側面」とは、ゲート21gにより射出成形される成形品の中心から最も離れた位置にあって、成形品の肉厚により形成される端部(端面)とは、異なる位置で一定の長さの面を構成する部分を言う。したがって、
図2(B)に示す蓋100の場合、最外側面は、側部102の外周面102aを指しており、側部102の突出端部の面102bを含まない。側部102の突出端部の面102bは、充填工程や圧縮工程で成形材料が最後に到達するキャビティ11の流動末端により成形される部位である。
【0035】
あるいは、成形品が、
図2(C)に示すように折り返したフランジ201を持つ容器200の場合、最外側面とは、フランジ201の折り返した部位の外周面201aを指しており、フランジ201の突出端部の面201bを含まない。フランジ201の突出端部の面201bは、充填工程や圧縮工程で成形材料が最後に到達するキャビティの流動末端により成形される部位である。
【0036】
具体的には、遮断機構50は、中央部位41を囲うリング状の収容空間48を、中央部位41と側方部位42の間に有する。さらに、遮断機構50は、この収容空間48に、可動金型40と相対的に移動する環状のリング部材51(移動体)と、このリング部材51を相対移動可能に保持する複数の弾性部材53と、を備える。
【0037】
各弾性部材53は、収容空間48の底部から離れる方向(Z軸負方向側)にリング部材51を押し出す付勢を付与する。各弾性部材53は、収容空間48の周方向に沿って間隔を開けて配置され、その一端部が収容空間48の底部に連結されると共に、反対側の他端部がリング部材51に接触している。各弾性部材53は、
図1ではコイルバネを適用しているが、特に限定されず、ゴムやウレタン等の熱硬化性エラストマ、あるいはシリンダ機構、ダンパ機構等を採用してよい。
【0038】
一方、リング部材51は、収容空間48内において各弾性部材53に連結されていることで、可動金型40の進退方向と平行に移動可能になっている。言い換えれば、リング部材51は、固定金型20に対して可動金型40が近接および離間する際に、流動末端に向かう成形材料の流動方向に対して平行な方向に移動する。そして、リング部材51は、キャビティ11の一部を覆うように構成され、キャビティ11を流通する成形材料の流動末端の近くに配置される。以下、このリング部材51の構成について
図3を参照しながらさらに具体的に説明する。
図3は、遮断機構50のリング部材51を拡大して示す断面図である。
【0039】
リング部材51は、固定金型20の第1固定側分割面221に対向するリング部材側分割面511を有する。リング部材側分割面511は、第1固定側分割面221に対して平行かつ平坦状に形成され、当該第1固定側分割面221に面接触することが可能となっている。
【0040】
可動金型40の収容空間48は、リング部材51を収容した状態で、リング部材51の基端面(リング部材側分割面511と反対側の面)を受ける段差受面48aを有している。リング部材51は、その基端面が段差受面48aに接触してZ軸正方向の後退が規制された状態で、第1可動側分割面421に対してリング部材側分割面511が面一に並ぶ大きさに設定されている。
【0041】
リング部材51の内周面は、収容空間48を構成する可動金型40の第1側面481に対して、摺動可能に接する内側摺接面512を有する。同様に、リング部材51の外周面は、収容空間48を構成する可動金型40の第2側面482に対して、摺動可能に接する外側摺接面513を有する。第1側面481と内側摺接面512との隙間の間隔は、充分に(第2側面482と外側摺接面513との隙間の間隔よりも)小さく設定されている。これにより、組み立て工程や公差の関係で、隙間が生じるような寸法関係とすることが求められることがあり、そのような場合においても、充填工程や圧縮工程において、第1側面481と内側摺接面512との間の隙間に、成形材料が進入することを規制できる。
【0042】
内側摺接面512は、後述するリング部材51の壁面516よりも内側に位置している。可動金型40とリング部材51の相対移動において、リング部材51の内側摺接面512は、第1側面481によりガイドされる。特に、第1側面481および内側摺接面512は、可動金型40の移動方向(Z軸方向)に対して平行に延在している。これにより、リング部材51は、収容空間48内において可動金型40の移動とは独立して、Z軸方向に良好に進退できる。
【0043】
また、リング部材51の内周面は、内側摺接面512のZ軸負方向側の隣接位置に、キャビティ11の一部を構成するキャビティ形成面部514を有する。キャビティ形成面部514は、蓋100(成形品)の角部および最外側面を形成する。具体的には、キャビティ形成面部514は、内側摺接面512に対して直交する段差面515と、段差面515からリング部材側分割面511に向かって延在する壁面516と、を含む。
【0044】
リング部材51は、可動金型40の中心に対して、壁面516よりも近位側に内側摺接面512が位置することで、内側摺接面512と壁面516の間に段差面515を有している。これにより、リング部材51は、キャビティ11の一部を構成する部位として、段差面515を使用できる。
【0045】
段差面515は、平面視で円環状に形成され、突出端面212aに平行にかつ短く延在して、固定金型20の突出端面212aの外周部に対向する。この段差面515は、圧縮工程においてリング部材側分割面511が第1固定側分割面221に接触した状態で、可動金型40の中央部位41に面一に連なるZ軸方向の位置に配置される。これにより、リング部材51は、蓋100の平坦部101の外縁を精度よく形成できる。
【0046】
壁面516は、内側摺接面512よりも外側の(中央部位41の中心から離れた)位置に配置される。壁面516は、射出成形機1の射出成形において、固定金型20の突出側面212bと協働して蓋100の側部102を形成する。すなわち、壁面516は、リング部材51においてキャビティ11の一部を構成する部位である。壁面516は、リング部材51の内周面を環状に周回することで、蓋100の外周面(最外側面)を安定して形成することができる。
【0047】
また、実施形態に係る突出側面212bおよび壁面516は、テーパ状の側部102を形成するために、リング部材51の移動方向(Z軸方向)に対して傾斜している。具体的には、突出側面212bおよび壁面516は、Z軸負方向に向かって外側に広がるように同角度で傾斜し、平行に延在している。壁面516が移動方向に対して傾斜していることで、固定金型20に対する可動金型40(リング部材51を含む)の後退をスムーズに実施させることができる。
【0048】
なお、金型装置10は、成形する蓋100の形状に応じて、突出側面212bおよび壁面516の形状を任意に設計できる。例えば、突出側面212bおよび壁面516は、蓋100の側部102の突出端部に向かって厚みを変化させる空間を形成してもよい。
【0049】
本実施形態に係る金型装置10は、基本的には以上のように構成され、以下その動作および効果について、
図4~
図8(C)を参照しながら説明する。
図4は、実施形態に係る圧縮成形方法を示すフローチャートである。
図5(A)は、金型装置10の待機状態を示す断面図である。
図5(B)は、型閉工程における可動金型40の動作を示す断面図である。
図6(A)は、充填工程における金型装置10の状態を示す断面図である。
図6(B)は、充填工程における第1位置決め機構13を拡大して示す部分断面図である。
図6(C)は、充填工程における第2位置決め機構14を拡大して示す部分断面図である。
図7(A)は、充填工程における充填空間12の一部を拡大して示す部分断面図である。
図7(B)は、圧縮工程におけるキャビティ11の一部を拡大して示す部分断面図である。
図8(A)は、圧縮工程における金型装置10の状態を示す断面図である。
図8(B)は、圧縮工程における第1位置決め機構13を拡大して示す部分断面図である。
図8(C)は、圧縮工程における第2位置決め機構14を拡大して示す部分断面図である。
【0050】
図4に示すように、金型装置10の圧縮成形方法では、射出成形機1の制御装置9の制御下に、型閉工程(ステップS1)、充填工程(ステップS2)、圧縮工程(ステップS3)および型開工程(ステップS4)を順に行う。なお、圧縮工程は、充填工程の実施後に開始することに限定されず、充填工程の間に開始してもよい。
【0051】
圧縮成形方法の実施前は、
図5(A)のように、可動金型40が固定金型20から離れた(各位置決めピン43が各貫通孔23から離れた)待機位置に配置されている。射出成形機1の制御装置9は、型閉工程の開始後に型締装置2を動作させ、可動金型40をZ軸負方向に前進させる。この型閉工程において、射出成形機1は、可動金型40の位置や移動速度をエンコーダ等により検出し、その検出結果に基づき可動金型40を移動させる。
【0052】
型閉工程における可動金型40の前進に伴い、各位置決めピン43が各貫通孔23に挿入されることで、固定金型20と可動金型40はX軸‐Y軸方向の位置決めを行う。これにより型閉工程において、可動金型40は、固定金型20に対してX軸‐Y軸方向に大きく芯ずれせずにガイドされながら、固定金型20に近づいていく。
【0053】
具体的には
図6(B)に示すように、位置決めピン43の外径は、ブッシュ24の内径よりも僅かに小さい。このため、各位置決めピン43が各貫通孔23に挿入された状態で、各貫通孔23を構成するブッシュ24の内周面と各位置決めピン43の外周面との間には、第1隙間13cが形成される。第1隙間13cは、固定金型20に対する各位置決めピン43の進退方向の移動を許容しつつ、固定金型20と可動金型40をある程度位置決め可能な適宜の間隔D1(および断面積)に予め設計されるとよい。
【0054】
その一方で、
図6(C)に示すように、第2位置決め機構14を構成する固定金型20の固定側傾斜面223と、可動金型40の可動側傾斜面423との間には、圧縮前第2隙間14c1が形成される。圧縮前位置において、圧縮前第2隙間14c1の間隔D2aは、第1隙間13cの間隔D1よりも大きい。これにより、金型装置10は、充填工程の前においては第2位置決め機構14を使用せずに、第1位置決め機構13により固定金型20と可動金型40を位置決めできる。
【0055】
図5(B)に戻り、可動金型40の前進を継続すると、可動金型40の遮断機構50(リング部材51)が固定金型20に先に接触する。この際、固定金型20の第1固定側分割面221に対してリング部材側分割面511が接触することで、可動金型40の前進に従動するリング部材51の移動が停止する。その後、リング部材51は、可動金型40の前進に伴い、弾性部材53を収縮させながら収容空間48の奥側に変位するようになる。
【0056】
さらに、制御装置9は、可動金型40の前進を継続して、
図6(A)に示すように可動金型40を充填位置に配置すると、前進を停止する。充填位置では、固定金型20と可動金型40は、成形品を成形するキャビティ11よりも拡大した充填空間12を形成する(
図7(A)も参照)。なお、射出成形機1は、可動金型40を充填位置よりも固定金型20に近接または接触させた後に、当該可動金型40を後退させる動作を行って、可動金型40を充填位置に配置してもよい。
【0057】
図7(A)に示すように、可動金型40が充填位置に位置した状態で、充填空間12の流動末端は、固定金型20の突出側面212bおよび第1固定側分割面221、リング部材51の壁面516に囲われて閉塞されている。これにより、充填工程では、充填空間12の流動末端からの成形材料の漏れを遮断して、成形品のバリの発生を防ぐことが可能となる。
【0058】
充填工程では、制御装置9は、固定金型20に射出装置3(
図1参照)を移動させ、射出装置3からランナ21rおよびゲート21gを介して、充填空間12に成形材料を充填する。この際、キャビティ11よりも大きな体積である充填空間12は、その内部において成形材料を円滑に流動させることができる。充填空間12に充填される成形材料は、射出装置3内において加熱されていることで、充填工程では液体または半固体の状態を維持している。
【0059】
成形材料は、成形予定の蓋100の平坦部101に対応する充填空間12においてX軸‐Y軸方向に広がって径方向外側に移動する。この充填工程において、リング部材51の段差面515は、隣接する中央部位41(可動金型40のキャビティ11を構成する面)からZ軸正方向にずれた位置にある。言い換えれば、中央部位41が段差面515から後退しており、これにより成形材料をスムーズに充満させることができる。
【0060】
そして、平坦部101の外縁に達した成形材料は、成形予定の蓋100の側部102に対応する充填空間12において、Z軸負方向に移動する。すなわち、側部102における成形材料の流動方向は、可動金型40およびリング部材51の前進方向に一致する。言い換えれば、リング部材51の進退方向は、充填空間12(キャビティ11)の流動末端における成形材料の移動方向に対して平行である。
【0061】
なお、上記したように側部102は傾斜しており(
図2(B)参照)、突出側面212bおよび壁面516の間を通る成形材料の流動方向も、Z軸方向に対して傾斜する。ただし、突出側面212bおよび壁面516の傾斜は僅かであり、成形材料の流動方向は実質的にZ軸負方向に移動すると見なすことができる。つまり、本説明において、リング部材51の移動方向が成形材料の流動末端の流動方向に対して平行とは、突出側面212bおよび壁面516が僅かに傾斜する(例えば、Z軸方向に対して0°~5°程度で傾く)形態を含む概念である。
【0062】
そして
図7(B)および
図8(A)に示すように、制御装置9は、充填工程時あるいは充填工程後に、可動金型40をZ軸負方向にさらに前進させて、充填した成形材料を圧縮する圧縮工程を行う(
図4も参照)。この際、可動金型40が型締位置まで移動することで、固定金型20と可動金型40との間に、成形品を成形するキャビティ11が形成される。充填空間12に充填されていた成形材料は、圧縮にともなって蓋100の側部102に対応するキャビティ11の流動末端に対してより多く移動するようになる。
【0063】
リング部材51は、圧縮工程の可動金型40の前進において弾性部材53によりZ軸負方向により強く押圧される。これにより、リング部材51のリング部材側分割面511と固定金型20の第1固定側分割面221とが強固に接触して、成形品の横バリを防止することが可能となる。
【0064】
また充填工程によって、可動金型40の中央部位41と、リング部材51の段差面515とが面一に並ぶ位置に配置される。この際、リング部材51の内側摺接面512と、可動金型40の第1側面481とは、相互にZ軸方向に延在することで、リング部材51を円滑に摺動させつつ、キャビティ11の成形材料を安定的に遮蔽することができる。可動金型40が型締位置に位置した型締完了状態で、金型装置10は、平坦部101および側部102が一体化した蓋100を成形することができる。
【0065】
蓋100の成形において、リング部材51の壁面516は、キャビティ11により成形される蓋100の最外側面(外周面102a)を形成する。壁面516は、固定金型20の第1固定側分割面221に略直交して、またリング部材51が弾性部材53により第1固定側分割面221に押し付けられることで、側部102の突出端部にバリが生じることを防ぐことができる。その結果、金型装置10は、綺麗な最外側面(成形材料の流動末端)を有する成形品(蓋100)を精度よく成形することが可能となる。
【0066】
そして圧縮工程において、金型装置10は、第2位置決め機構14によって固定金型20と可動金型40の位置決めを行う。具体的には、固定金型20に対する可動金型40の前進に伴って、固定金型20の固定側傾斜面223と可動金型40の可動側傾斜面423とが接触し、固定側傾斜面223と可動側傾斜面423が摺接しながら可動金型40を前進させる。これにより、固定金型20と可動金型40とがX軸‐Y軸方向に高精度に位置決めされるようになる。
【0067】
可動金型40が型締位置に移動した段階において、
図8(A)~
図8(C)に示すように、固定側傾斜面223と可動側傾斜面423は、相互にテーパ状に面接触した状態となる。すなわち、第2位置決め機構14の固定側傾斜面223と、可動側傾斜面423との間の圧縮後第2隙間14c2の間隔D2b(および断面積)は、充填工程時の圧縮前第2隙間14c1よりも小さくなる(具体的にはゼロとなる)。金型装置10は、この圧縮後第2隙間14c2の間隔D2bが、第1位置決め機構13の第1隙間13cの間隔D1よりも小さいことで、圧縮工程における固定金型20と可動金型40の位置決めを精度よく行うことができる。
【0068】
また、固定金型20の固定側傾斜面223と、可動金型40の可動側傾斜面423とがそれぞれ無端状に周回していることで、第2位置決め機構14は、キャビティ11の周方向全周にわたって金型同士の位置決めを行う。これにより、第2位置決め機構14は、圧縮工程におけるX軸‐Y軸方向(進退方向に直交する方向)の位置決めにかかる応力を分散しつつ可動金型40を前進させる。その結果、固定金型20の芯と、可動金型40の芯とがスムーズに一致するようになる。
【0069】
その一方で、第1位置決め機構13を構成する各貫通孔23のブッシュ24の内周面と各位置決めピン43の外周面との間は、圧縮工程でも充填工程の第1隙間13c(間隔D1)を維持する。つまり、第1位置決め機構13は、圧縮工程時の位置決めとしての影響が第2位置決め機構14の影響よりも小さくなる。以上の金型装置10の動作時における、第1隙間13cの間隔D1、圧縮前第2隙間14c1の間隔D2aおよび圧縮後第2隙間14c2の間隔D2bの関係は、以下の式(1)のようになる。
【0070】
D2a>D1>D2b …(1)
【0071】
このように、金型装置10は、充填工程の前において第1位置決め機構13により固定金型20と可動金型40を位置決めし、充填工程の後の圧縮工程において第2位置決め機構14により固定金型20と可動金型40を位置決めする。これにより、金型装置10は、固定金型20と可動金型40間の位置決め時に生じる負荷(例えば、位置決め機構のかじり)を抑制しつつ、固定金型20と可動金型40の位置決めを高精度に行うことができ、固定金型20と可動金型40の芯ずれがなくなる。すなわち、金型装置10は、圧縮工程で成形する成形品の偏肉を防いで、偏肉に伴う各種不良を回避し、薄肉の成形品を良好に成形することができる。
【0072】
そして、圧縮工程後の型開工程において、制御装置9は、型締装置2を動作させて可動金型40を型締位置からZ軸方向正方向に移動させることにより、固定金型20から可動金型40を離間させる。その後、射出成形機1は、図示しないエジェクタ装置により可動金型40から蓋100を突き出すことで、今回の圧縮成形方法を完了する。なお、圧縮成形方法は、型開工程の前に、可動金型40を型締位置から若干後退させてキャビティ11の圧力を低下させる脱圧工程を行い、その後に型開工程を行う構成でもよい。
【0073】
以上のように、実施形態に係る金型装置10は、キャビティ11の一部を構成する壁面516を有し、かつ流動末端に向かう成形材料の流動方向に対して平行な方向に移動するリング部材51を有することで、圧縮工程時に形品の最外側面を良好に成形できる。その結果、金型装置10は、成形品を精度よく成形することが可能となる。また、壁面516がリング部材51の移動方向に対して傾斜していることで、キャビティ11の寸法公差を保障して、リング部材51と固定金型20との離脱をスムーズに行うことができる。
【0074】
さらに、リング部材51が環状に形成され、内周面に内側摺接面512を有することで、可動金型40に対するリング部材51の相対位置を安定化でき、成形品の成形精度を高めることができる。またさらに、リング部材51の内側摺接面512が壁面516よりも可動金型40の中心の近位側に位置していることで、壁面516のみで成形品の最外側面を形成できるので、成形精度を一層高めることが可能となる。段差面515が圧縮工程において中央部位41に面一に並ぶことで、金型装置10は、充填工程において成形材料の流動の円滑化を図りつつ、圧縮工程において成形材料を流動末端によりスムーズに誘導させることができる。
【0075】
なお、金型装置10は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、遮断機構50の移動体(リング部材51)が設けられる金型は可動金型40に限定されず、固定金型20であってもよい。また、移動体は、平面視で、円環状に限らず、成形品の形状に応じて自由に設計可能であり、方環状、円弧状、直線状等であってもよい。
【0076】
また、上記の金型装置10は、第1位置決め機構13(各貫通孔23、位置決めピン43)の外側に、第2位置決め機構14(固定側傾斜面223、可動側傾斜面423)を備える構成とした。しかしながら、金型装置10は、この構成に限定されず、第2位置決め機構14の外側に第1位置決め機構13を備えてもよい。
【0077】
また、変形例として、金型装置10は、移動体である
図1のリング部材51を可動金型40に一体成形している一方で、
図1の中央部位41の先端部(可動金型40の一部)を相対移動可能としてもよい。ここで、移動体と呼称しているが、自らが移動するものに限るものではなく、一方の金型の移動体を除く他の一部が移動するものも含む。つまり、移動体とは、一方の金型の移動体を除く他の一部に対して相対的に移動するものという意味で用いている。すなわち、圧縮工程において可動金型40(リング部材51)に対して中央部位41の先端部を相対移動させて固定金型20の突出端面212aに近接させる。
【0078】
なお、上記の実施形態においても、変形例においても、移動体(例えば、リング部材51)と移動体に対して相対的に移動する部材にとの間に摺接面を備えず、互いに相対移動させ、かつ相対的に位置決め可能な機構を有するようにしてもよい。摺接面を備えない場合には、移動体と移動体に対して相対的に移動する部材とは、キャビティ11の境界において略全面で接触および摺動するように構成され、樹脂がこの境界から漏れないように構成される。この場合でも、中央部位41の先端部に押された成形材料がキャビティ11の流動末端に流動し、可動金型40に固定されたリング部材51により成形品の最外側面を精度よく形成することができる。
【0079】
今回開示された実施形態に係る金型装置10は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0080】
10 金型装置
11 キャビティ
13 第1位置決め機構
14 第2位置決め機構
20 固定金型
21g ゲート
40 可動金型
48 収容空間
481 第1側面
482 第2側面
51 リング部材
512 内側摺接面
513 外側摺接面
515 段差面
516 壁面