(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007266
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】掘削制御装置、掘削機械及び掘削機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E21B 44/00 20060101AFI20250109BHJP
E21B 44/08 20060101ALI20250109BHJP
E21B 11/00 20060101ALI20250109BHJP
E02F 3/47 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E21B44/00
E21B44/08
E21B11/00 Z
E02F3/47 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108546
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】沢村 俊明
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直紀
(72)【発明者】
【氏名】細井 英彰
(72)【発明者】
【氏名】寺田 稜
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB16
2D129BA03
2D129BA08
2D129BB03
2D129CA04
2D129CB08
2D129CB13
2D129JA01
(57)【要約】
【課題】掘削作業においてケーシング内における水を考慮する必要がある場合及びケーシング内における水を考慮する必要がない場合の何れにおいてもハンマグラブの着地を適切に判定する。
【解決手段】掘削制御装置は、ハンマグラブ10の高さに相関する高さ情報を取得するための高さ検出器と、ハンマグラブ10の重さに相関する荷重値を取得するための荷重値検出器と、ハンマグラブ10の着地判定を行うコントローラ101と、を備える。コントローラ101は、着地判定においてケーシング11内における水を考慮する場合には、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記高さ情報を用いて判定し、着地判定においてケーシング11内における水を考慮しない場合には、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記荷重値を用いて判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンマグラブを吊り下げるワイヤロープがウインチドラムから繰り出されることにより筒状のケーシング内において前記ハンマグラブを底部に落下させる掘削作業を行う掘削機械のための掘削制御装置であって、
前記ハンマグラブの高さに相関する高さ情報を取得するための高さ検出器と、
前記ハンマグラブの重さに相関する荷重値を取得するための荷重値検出器と、
前記ハンマグラブの着地判定を行うコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮する場合には、前記ハンマグラブが着地したか否かを前記高さ情報を用いて判定し、
前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮しない場合には、前記ハンマグラブが着地したか否かを前記荷重値を用いて判定する、掘削制御装置。
【請求項2】
前記ケーシング内における水に関する情報である水情報を前記コントローラに提供する水情報提供器をさらに備え、
前記コントローラは、前記水情報に基づいて、前記着地判定のモードを、前記ケーシング内における水を考慮するモード又は前記ケーシング内における水を考慮しないモードに設定する、請求項1に記載の掘削制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮しない場合には、前記ハンマグラブが着地したか否かを前記荷重値及び前記高さ情報の両方を用いて判定する、請求項1に記載の掘削制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記ハンマグラブが着地したと判定すると、前記ウインチドラムの回転を停止させるためのブレーキ制御を行う、請求項1に記載の掘削制御装置。
【請求項5】
前記高さ検出器は、前記ウインチドラムの回転量を検出するためのドラム回転検出器を含み、
前記コントローラは、前記回転量を用いて前記ハンマグラブの高さを演算する、請求項1に記載の掘削制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮する場合には、前記ハンマグラブが水中を落下するときに前記ワイヤロープの弛みが生じることが抑制されるように前記ウインチドラムに対するブレーキ力を調節する制御を行う、請求項5に記載の掘削制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記ハンマグラブが前記底部に接地している状態から前記ワイヤロープが前記ウインチドラムに巻き取られることにより前記荷重値が増加する荷重値変化に基づいて、前記ハンマグラブが前記底部から離れるときの高さ位置である地離れ高さを決定し、
前記地離れ高さ及び前記回転量を用いて前記ハンマグラブの高さを演算する、請求項5に記載の掘削制御装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮しない場合には、前記ハンマグラブの落下速度が所定の速度許容範囲に含まれるように前記ウインチドラムに対するブレーキ力を調節する制御を行う、請求項1に記載の掘削制御装置。
【請求項9】
オペレータによる入力を受ける重さ設定入力器をさらに備え、
前記コントローラは、前記重さ設定入力器が前記入力を受けたときの前記荷重値を用いて前記ハンマグラブの重さを設定する、請求項1に記載の掘削制御装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記ハンマグラブの着地のタイミング、及び、前記ハンマグラブが前記底部から離れる地離れのタイミングを、前記荷重値検出器が取得する前記荷重値を用いてそれぞれ決定し、前記着地のタイミングにおける前記ハンマグラブの高さ位置の基準高さ位置に対する相対位置と、前記地離れのタイミングにおける前記ハンマグラブの高さ位置の前記基準高さ位置に対する相対位置と、前記ハンマグラブの高さの変化速度と、を用いて、前記ハンマグラブの高さの初期値と、前記荷重値検出器の遅れに関する特性と、を取得する、請求項1に記載の掘削制御装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記ハンマグラブの着地のタイミング、及び、前記ハンマグラブが前記底部から離れる地離れのタイミングを、前記荷重値検出器が取得する前記荷重値を用いてそれぞれ決定し、前記着地のタイミングにおける前記ハンマグラブの高さ位置の基準高さ位置に対する相対位置と、前記地離れのタイミングにおける前記ハンマグラブの高さ位置の前記基準高さ位置に対する相対位置と、前記ハンマグラブの高さの変化速度と、を用いて、ワイヤロープ長に起因する誤差と、前記荷重値検出器の遅れに関する特性と、を取得する、請求項1に記載の掘削制御装置。
【請求項12】
下部体と、
前記下部体に旋回可能に支持される上部旋回体と、
前記上部旋回体に起伏可能に支持される起伏部材と、
前記ワイヤロープと、
前記ウインチドラムと、
前記ハンマグラブと、
請求項1~11の何れか1項に記載の掘削制御装置と、を備える掘削機械。
【請求項13】
前記掘削制御装置は、
前記下部体に対する前記上部旋回体の旋回角度を取得するための旋回角度検出器と、
前記上部旋回体に対する前記起伏部材の角度である起伏角度を取得するための起伏角度検出器と、を備え、
前記コントローラは、前記旋回角度及び前記起伏角度が前記掘削作業において許容される作業許容範囲に含まれるか否かを判定する、請求項12に記載の掘削機械。
【請求項14】
前記コントローラは、前記旋回角度及び前記起伏角度が前記作業許容範囲に含まれる場合には、前記掘削作業の少なくとも一部の自動制御を許容し、前記旋回角度及び前記起伏角度が前記作業許容範囲に含まれない場合には、前記自動制御の実行を保留する、請求項13に記載の掘削機械。
【請求項15】
ハンマグラブを吊り下げるワイヤロープがウインチドラムから繰り出されることにより筒状のケーシング内において前記ハンマグラブを底部に落下させる掘削作業を行う掘削機械の制御方法であって、
前記ハンマグラブの着地判定において前記ケーシング内における水を考慮する場合には、前記ハンマグラブの高さに相関する高さ情報を用いて前記ハンマグラブが着地したか否かを判定することと、
前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮しない場合には、前記ハンマグラブの重さに相関する荷重値を用いて前記ハンマグラブが着地したか否かを判定することと、を備える、掘削機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハンマグラブを用いた掘削作業において掘削機械を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンマグラブを備えた掘削機械が知られている(例えば特許文献1)。ハンマグラブは、オールケーシング工法を用いたハンマグラブ作業に用いられるアタッチメントである。このハンマグラブ作業は、地中に押し込まれたケーシング(筒状の部材)内の土砂を掘削する掘削作業と、この掘削作業において掘削された土砂をケーシングの外に排出する排土作業と、を含む。掘削作業では、ハンマグラブを吊り下げるワイヤロープがウインチドラムから繰り出されることによりケーシング内においてハンマグラブを底部に落下させ、これにより、ケーシング内の土砂が掘削される。この掘削作業では、例えば、ケーシング内においてハンマグラブを自由落下させることによって、掘削作業のサイクルタイムを短縮するとともにハンマグラブが着地するときの衝撃力を利用して底部の掘削を効率よく行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、高い落下速度でハンマグラブが底部に着地すると、ハンマグラブは底部において急停止する一方でウインチドラムは慣性で回り続けるため、ワイヤロープがウインチドラムから過剰に繰り出される状態である過繰り出しが生じる。オペレータは、このような過繰り出しが生じることを抑制するために、ハンマグラブの着地後にブレーキ操作(ブレーキペダル操作)を行ってウインチドラムの回転を停止させる必要がある。しかし、掘削作業は、オペレータがケーシング内のハンマグラブを目視することができない状況で行われるので、ハンマグラブの着地に応じてブレーキ操作を適切に行うことは、オペレータにとって難易度が高い。従って、ハンマグラブの着地を適切に判定することが可能な制御装置の開発が望まれる。
【0005】
また、掘削作業が行われる地中の状態は作業現場ごとに異なる。具体的には、地中に押し込まれたケーシング内には、地下水などの水が溜まっていることもあれば、水が溜まっていないこともある。しかしながら、特許文献1に記載の制御装置は、ケーシング内における水については何ら考慮していないので、ハンマグラブの着地を適切に判定することができない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、掘削作業においてケーシング内における水を考慮する必要がある場合及びケーシング内における水を考慮する必要がない場合の何れにおいてもハンマグラブの着地を適切に判定することができる掘削制御装置、掘削機械、及び掘削機械の制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
第1の態様に係る掘削制御装置は、ハンマグラブを吊り下げるワイヤロープがウインチドラムから繰り出されることにより筒状のケーシング内において前記ハンマグラブを底部に落下させる掘削作業を行う掘削機械のための掘削制御装置であって、前記ハンマグラブの高さに相関する高さ情報を取得するための高さ検出器と、前記ハンマグラブの重さに相関する荷重値を取得するための荷重値検出器と、前記ハンマグラブの着地判定を行うコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮する場合には、前記ハンマグラブが着地したか否かを前記高さ情報を用いて判定し、前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮しない場合には、前記ハンマグラブが着地したか否かを前記荷重値を用いて判定する。
【0008】
第1の態様に係る掘削制御装置では、コントローラは、ケーシング内における水を考慮する場合及びケーシング内における水を考慮しない場合のそれぞれに適した着地判定を行うので、これらの何れの場合においても、ハンマグラブの着地判定を適切に行うことができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る掘削制御装置において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第2の態様に係る掘削制御装置は、前記ケーシング内における水に関する情報である水情報を前記コントローラに提供する水情報提供器をさらに備え、前記コントローラは、前記水情報に基づいて、前記着地判定のモードを、前記ケーシング内における水を考慮するモード(水考慮モード)又は前記ケーシング内における水を考慮しないモード(非考慮モード)に設定することが好ましい。この第2の態様では、コントローラは、水情報提供器から提供される水情報に基づいて、着地判定のモードを水考慮モード及び非考慮モードの何れかに設定することができる。そして、前記コントローラは、前記着地判定のモードが前記水考慮モードに設定されている場合には、前記ハンマグラブが着地したか否かを前記高さ情報を用いて判定し、前記着地判定のモードが前記非考慮モードに設定されている場合には、前記ハンマグラブが着地したか否かを前記荷重値を用いて判定する。
【0010】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る掘削制御装置において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第3の態様に係る掘削制御装置では、前記コントローラは、前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮しない場合には、前記ハンマグラブが着地したか否かを前記荷重値及び前記高さ情報の両方を用いて判定することが好ましい。この第3の態様では、コントローラは、荷重値のみを用いてハンマグラブの着地を判定する場合に比べて、ハンマグラブの着地をより適切に判定することができる。具体的には、掘削作業においてハンマグラブが落下を開始する時点からハンマグラブが着地する時点までの時間帯のうち、落下開始直後の時間帯には、荷重値検出器により検出される荷重値が一時的に減少する場合がある。この落下開始直後の時間帯は、ハンマグラブが比較的高い位置にある時間帯であるので、落下開始直後の時間帯において荷重値の一時的な減少が生じた場合であっても、コントローラは、その一時的な荷重値の減少と、ハンマグラブの着地に起因する荷重値の減少と、を前記高さ情報を用いて区別することができる。従って、コントローラは、着地判定においてケーシング内における水を考慮しない場合には、着地判定の主たる指標として荷重値を用いるとともに着地判定の補助的な指標として高さ情報を用いることで、ハンマグラブの着地をより適切に判定することができる。
【0011】
コントローラは、ハンマグラブが着地したと判定すると、その判定結果をオペレータに報知してもよく、オペレータは、判定結果が報知されると、ブレーキ操作(ブレーキペダル操作)を行ってウインチドラムの回転を停止させてもよい。ただし、下記の第4の態様のように、ウインチドラムにブレーキをかけてウインチドラムの回転を停止させるための制御がコントローラによって自動で行われることが好ましい。第4の態様は、第1~第3の何れか1つに係る掘削制御装置において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、前記コントローラは、前記ハンマグラブが着地したと判定すると、前記ウインチドラムの回転を停止させるためのブレーキ制御(着地時ブレーキ制御)を行うことが好ましい。この第4の態様では、コントローラがハンマグラブの着地判定だけでなく着地時ブレーキ制御も行うので、ハンマグラブの着地後にワイヤロープがウインチドラムから過剰に繰り出される状態である過繰り出しが生じることを抑制しつつ、オペレータの負担をさらに軽減することができる。
【0012】
第5の態様は、第1~第4の態様の何れか1つに係る掘削制御装置において、さらに次の特徴を備えていてもよい。すなわち、第5の態様に係る掘削制御装置では、前記高さ検出器は、前記ウインチドラムの回転量を検出するためのドラム回転検出器を含み、前記コントローラは、前記回転量を用いて前記ハンマグラブの高さを演算してもよい。この第5の態様では、コントローラは、ハンマグラブの高さに相関するウインチドラムの回転量(高さ情報の一例)を用いてハンマグラブの高さを演算することができる。
【0013】
第6の態様は、第5の態様に係る掘削制御装置において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第6の態様に係る掘削制御装置では、前記コントローラは、前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮する場合には、前記ハンマグラブが水中を落下するときに前記ワイヤロープの弛みが生じることが抑制されるように前記ウインチドラムに対するブレーキ力を調節する制御を行うことが好ましい。この第6の態様では、コントローラは、前記回転量を用いてハンマグラブの高さを演算する場合において、ワイヤロープの弛みに起因する演算値の誤差が大きくなることを抑制できるので、ハンマグラブが着地したか否かをより適切に判定することができる。具体的には例えば、前記コントローラは、前記ハンマグラブが水中を落下するときに前記ワイヤロープの弛みの状態が所定の弛み許容範囲に含まれるように前記ウインチドラムに対するブレーキ力を調節する制御を行ってもよい。また、前記コントローラは、前記ハンマグラブが水中を落下するときに、予め決められたブレーキ力で前記ウインチドラムに対してブレーキをかける制御を行ってもよく、予め決められた周期で前記ウインチドラムに対してブレーキをかける制御を行ってもよい。
【0014】
第7の態様は、第5又は第6の態様に係る掘削制御装置において、さらに次の特徴を備えていてもよい。すなわち、第7の態様に係る掘削制御装置では、前記コントローラは、前記ハンマグラブが前記底部に接地している状態から前記ワイヤロープが前記ウインチドラムに巻き取られることにより前記荷重値が増加する荷重値変化に基づいて、前記ハンマグラブが前記底部から離れるときの高さ位置である地離れ高さを決定し、前記地離れ高さ及び前記回転量を用いて前記ハンマグラブの高さを演算することが好ましい。掘削作業が繰り返し行われる場合には、地表に対する底部の相対位置は、掘削作業の度に次第に下方にずれる。このような場合であっても、第7の態様では、コントローラは、ハンマグラブが底部から離れるときの高さ位置である地離れ高さを、次回の掘削作業の前に、前記荷重値変化に基づいて更新することができるので、次回の掘削作業におけるハンマグラブの高さ位置をより正確に取得することができる。
【0015】
第8の態様は、第1~第7の態様の何れか1つに係る掘削制御装置において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第8の態様に係る掘削制御装置では、前記コントローラは、前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮しない場合には、前記ハンマグラブの落下速度が所定の速度許容範囲に含まれるように前記ウインチドラムに対するブレーキ力を調節する制御(衝撃力調整制御)を行うことが好ましい。この第8の態様では、例えば、掘削作業においてハンマグラブの落下距離(落下開始高さ位置から底部までの距離)が長く落下速度が大きくなりやすい場合であっても、ハンマグラブの落下速度が過度に大きくなることを抑制できるので、ハンマグラブが着地するときの衝撃に起因するハンマグラブの破損を抑制できる。
【0016】
第9の態様は、第1~第8の態様の何れか1つに係る掘削制御装置において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第9の態様に係る掘削制御装置は、オペレータによる入力を受ける重さ設定入力器をさらに備え、前記コントローラは、前記重さ設定入力器が前記入力を受けたときの前記荷重値を用いて前記ハンマグラブの重さを設定することが好ましい。この第9の態様では、オペレータは、ハンマグラブの重さを設定(更新)したいときには、重さ設定入力器に所定の入力を行うことでコントローラにおいてハンマグラブの重さを設定することができる。
【0017】
第10の態様は、第1~第9の態様の何れか1つに係る掘削制御装置において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第10の態様に係る掘削制御装置では、前記コントローラは、前記ハンマグラブの着地のタイミング、及び、前記ハンマグラブが前記底部から離れる地離れのタイミングを、前記荷重値検出器が取得する前記荷重値を用いてそれぞれ決定し、前記着地のタイミングにおける前記ハンマグラブの高さ位置の基準高さ位置に対する相対位置と、前記地離れのタイミングにおける前記ハンマグラブの高さ位置の前記基準高さ位置に対する相対位置と、前記ハンマグラブの高さの変化速度と、を用いて、前記ハンマグラブの高さの初期値と、前記荷重値検出器の遅れに関する特性と、を取得することが好ましい。この第10の態様では、コントローラは、ハンマグラブの高さの初期値及び荷重値検出器の遅れに関する特性を取得することができる。また、コントローラは、荷重値検出器の遅れに関する特性を考慮してハンマグラブの高さをより正確に演算することができる。
【0018】
第11の態様は、第1~第9の態様の何れか一つに係る掘削制御装置において、さらに次の特徴を備えていてもよい。すなわち、第11の態様に係る掘削制御装置では、前記コントローラは、前記ハンマグラブの着地のタイミング、及び、前記ハンマグラブが前記底部から離れる地離れのタイミングを、前記荷重値検出器が取得する前記荷重値を用いてそれぞれ決定し、前記着地のタイミングにおける前記ハンマグラブの高さ位置の基準高さ位置に対する相対位置と、前記地離れのタイミングにおける前記ハンマグラブの高さ位置の前記基準高さ位置に対する相対位置と、前記ハンマグラブの高さの変化速度と、を用いて、ワイヤロープ長に起因する誤差と、前記荷重値検出器の遅れに関する特性と、を取得してもよい。
【0019】
第12の態様に係る掘削機械は、下部体と、前記下部体に旋回可能に支持される上部旋回体と、前記上部旋回体に起伏可能に支持される起伏部材と、前記ワイヤロープと、前記ウインチドラムと、前記ハンマグラブと、第1~第11の態様の何れか1つに係る掘削制御装置と、を備える。この第12の態様に係る掘削機械では、コントローラは、ケーシング内における水を考慮する場合及びケーシング内における水を考慮しない場合のそれぞれに適した着地判定を行うので、これらの何れの場合においても、ハンマグラブの着地判定を適切に行うことができる。
【0020】
第13の態様は、第12の態様に係る掘削機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第13の態様に係る掘削機械では、前記掘削制御装置は、前記下部体に対する前記上部旋回体の旋回角度を取得するための旋回角度検出器と、前記上部旋回体に対する前記起伏部材の角度である起伏角度を取得するための起伏角度検出器と、を備え、前記コントローラは、前記旋回角度及び前記起伏角度が前記掘削作業において許容される作業許容範囲に含まれるか否かを判定することが好ましい。ハンマグラブはワイヤロープを介して起伏部材に支持されるので、旋回角度及び起伏角度は、ハンマグラブの位置に相関する。従って、この第13の態様では、コントローラは、ハンマグラブが掘削作業に適した位置、すなわち、ハンマグラブがケーシングに対応する位置に配置されているか否かを、旋回角度と起伏角度を用いて間接的に判定することができる。
【0021】
第14の態様は、第13の態様に係る掘削機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第14の態様に係る掘削機械では、前記コントローラは、前記旋回角度及び前記起伏角度が前記作業許容範囲に含まれる場合には、前記掘削作業の少なくとも一部の自動制御を許容し、前記旋回角度及び前記起伏角度が前記作業許容範囲に含まれない場合には、前記自動制御の実行を保留することが好ましい。この第14の態様では、コントローラは、旋回角度及び起伏角度が作業許容範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、前記自動制御を許容するか保留するかを決めることができる。
【0022】
第15の態様は、ハンマグラブを吊り下げるワイヤロープがウインチドラムから繰り出されることにより筒状のケーシング内において前記ハンマグラブを底部に落下させる掘削作業を行う掘削機械の制御方法であって、前記ハンマグラブの着地判定において前記ケーシング内における水を考慮する場合には、前記ハンマグラブの高さに相関する高さ情報を用いて前記ハンマグラブが着地したか否かを判定することと、前記着地判定において前記ケーシング内における水を考慮しない場合には、前記ハンマグラブの重さに相関する荷重値を用いて前記ハンマグラブが着地したか否かを判定することと、を備える。この第15の態様に係る掘削機械の制御方法では、ケーシング内における水を考慮する場合及びケーシング内における水を考慮しない場合のそれぞれに適した着地判定が実行されるので、これらの何れの場合においても、ハンマグラブの着地判定を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本開示によれば、掘削作業においてケーシング内における水を考慮する必要がある場合及びケーシング内における水を考慮する必要がない場合の何れにおいてもハンマグラブの着地を適切に判定することができる掘削制御装置、掘削機械、及び掘削機械の制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の実施形態に係る掘削制御装置を備えた掘削機械を示す側面図である。
【
図3】前記掘削制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】前記掘削制御装置のコントローラが行う演算制御動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】ケーシング内における水を考慮する必要がない場合の掘削作業におけるハンマグラブの高さ及び荷重値の経時変化の一例を示す図である。
【
図6】ケーシング内における水を考慮する必要がある場合の掘削作業におけるハンマグラブの高さ及び荷重値の経時変化の一例を示す図である。
【
図7】前記掘削制御装置のコントローラが行う演算制御動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図8】ハンマグラブの高さの初期値と、荷重値検出器の遅れに関する特性と、を取得する手法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る掘削機械200を示す。
図2は、掘削機械200が備える油圧回路の一例を示す図である。
図3は、実施形態に係る掘削制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
本実施形態に係る掘削機械200は、クレーンである。掘削機械200は、オールケーシング工法を用いたハンマグラブ作業を行うことができる。このハンマグラブ作業は、
図1に示すように作業対象である地盤(地中)に押し込まれた筒状の部材であるケーシング11内においてハンマグラブ10を底部12に落下させることでケーシング11内の土砂を掘削する掘削作業と、掘削された土砂を保持するハンマグラブ10を上昇させてケーシング11の外に土砂を排出する排出作業と、を含む。掘削機械200は、当該掘削機械200の動作を制御する掘削制御装置100(
図3参照)を備える。
【0027】
図3に示すように、本実施形態に係る掘削制御装置100は、コントローラ101と、ハンマグラブ10の高さに相関するウインチドラムの回転量を検出するドラム回転検出器102と、ハンマグラブ10の重さに相関する荷重値を取得するための荷重値検出器108と、を備える。ドラム回転検出器102は、高さ検出器の一例であり、ウインチドラムの回転量は、ハンマグラブ10の高さに相関する高さ情報の一例である。
【0028】
コントローラ101は、ケーシング11内を落下するハンマグラブ10の着地判定を行う。コントローラ101は、前記着地判定においてケーシング11内における水を考慮する場合には、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記回転量(前記高さ情報)を用いて判定し、前記着地判定においてケーシング11内における水を考慮しない場合には、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記荷重値を用いて判定する制御である着地判定制御を行う。この掘削制御装置100では、コントローラ101は、ケーシング11内における水を考慮する場合及びケーシング11内における水を考慮しない場合のそれぞれに適した着地判定を行うので、これらの何れの場合においても、ハンマグラブ10の着地判定を適切に行うことができる。
【0029】
具体的には、着地判定においてケーシング11内における水を考慮する必要がない場合、例えば、ケーシング11内に水が溜まっていない場合又はケーシング11内に水が溜まっていてもその水位が低い場合には、掘削作業においてケーシング11内を落下するハンマグラブ10は底部12に着地するまでの間に水の抵抗をほとんど受けないので、底部12に着地する直前のハンマグラブ10の落下速度は比較的大きくなる。この場合、ハンマグラブ10が着地する直前とハンマグラブ10が着地した直後の荷重値の変化量は大きくなるので、荷重値検出器108が検出する荷重値はハンマグラブ10の着地を判定するための主たる指標として有用であり、従って、コントローラ101は、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記荷重値を用いて適切に判定することができる。
【0030】
一方、着地判定においてケーシング11内における水を考慮する必要がある場合、例えば、ケーシング11内に水が溜まっていてその水位が比較的高い場合には、掘削作業においてケーシング11内を落下するハンマグラブ10は、底部12に着地する前に着水して水中を降下し、底部12に着地するまでの間に水の抵抗を受け続けるので、底部12に着地する直前のハンマグラブ10の落下速度は、ケーシング内に水が溜まっていない場合に比べて小さくなる。この場合、ハンマグラブ10が着地する直前とハンマグラブ10が着地した直後の荷重値の変化量も小さくなるので、ハンマグラブ10の着地を判定するための主たる指標として、荷重値検出器が検出する荷重値を用いることは好ましくない。一方、ハンマグラブ10の主要部を構成する部材は、一般に、比重(水を基準とする比重)が1よりもかなり大きな金属などの材料を用いて形成されているので、ハンマグラブ10が水の抵抗を受けながら水中を降下する場合でも、ハンマグラブ10の高さはハンマグラブ10が着地するまで確実に減少する。従って、ケーシング11内に水が溜まっていてその水位が比較的高い場合には、ハンマグラブ10の高さに相関する高さ情報はハンマグラブ10の着地を判定するための主たる指標として有用であり、従って、コントローラ101は、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記高さ情報を用いて適切に判定することができる。
【0031】
本実施形態に係る掘削制御装置100は、ケーシング11内における水に関する情報である水情報をコントローラ101に提供する水情報提供器91(
図2参照)をさらに備える。
【0032】
コントローラ101は、水情報提供器91から入力される水情報に基づいて、前記着地判定のモードを、ケーシング11内における水を考慮するモード(水考慮モード)又はケーシング11内における水を考慮しないモード(非考慮モード)に設定する。そして、コントローラ101は、前記着地判定のモードが前記水考慮モードに設定されている場合には、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記高さ情報を用いて判定し、前記着地判定のモードが前記非考慮モードに設定されている場合には、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記荷重値を用いて判定する。
【0033】
水情報提供器91としては、以下のような具体例を挙げることができる。水情報提供器91は、オペレータによる入力を受けることが可能な水情報入力器を含んでいてもよい。この場合、オペレータによる入力は、着地判定においてケーシング11内における水を考慮する必要があることを特定するための入力と、着地判定においてケーシング11内における水を考慮する必要がないことを特定するための入力と、を含んでいてもよい。オペレータは、ケーシング11内における水位を、例えば、掘削作業の前に行われるボーリング調査などの事前調査に基づいて把握することができる。オペレータは、例えば、ケーシング11内における水位がゼロ又は比較的小さな値である場合には、ケーシング11内における水を考慮しない着地判定をコントローラ101に実行させるための入力を水情報入力器に対して行い、ケーシング11内における水位が比較的大きな値である場合には、ケーシング11内における水を考慮する着地判定をコントローラ101に実行させるための入力を水情報入力器に対して行ってもよい。前記入力は、例えば、ケーシング11内における水を考慮すること及び考慮しないことの何れかを選択するような入力であってもよく、水の有無の入力であってもよく、水位の入力であってもよい。そして、水情報入力器は、オペレータによる入力に関する情報である水情報をコントローラ101に出力し、コントローラ101は、水情報入力器から入力される水情報に基づいて、着地判定のモードを水考慮モード又は非考慮モードに設定することができる。
【0034】
また、水情報提供器91は、ケーシング11内における水位を検出することが可能な水位センサを含んでいてもよい。この場合、水位センサは、水位に関する情報である水情報をコントローラ101に出力し、コントローラ101は、水位センサから入力される水情報に基づいて、着地判定のモードを水考慮モード又は非考慮モードに設定することができる。
【0035】
本実施形態に係る掘削制御装置100、掘削機械200、及び、掘削機械200の制御方法の主な特徴は以上のとおりである。
【0036】
以下では、掘削制御装置100、掘削機械200、及び、掘削機械200の制御方法について具体例を挙げてさらに詳細に説明するが、本開示における掘削制御装置、掘削機械、及び、掘削機械の制御方法は、以下の具体例に限定されない。
【0037】
図1に示すように、掘削機械200は、下部体201と、この下部体201の上に旋回可能に支持される上部旋回体202と、この上部旋回体202に起伏可能に支持される起伏部材204と、複数のウインチと、ハンマグラブ10と、を備える。
【0038】
下部体201は、例えばクローラ走行装置などの走行装置を備え、自走可能なように構成される。ただし、下部体は、上部旋回体202を旋回可能に支持するものであればよく、自走可能ではない支持台のような構造体により構成されていてもよい。
【0039】
上部旋回体202は、下部体201に旋回可能に取り付けられた旋回フレーム203と、旋回フレーム203の前部に支持されたキャビンと、旋回フレーム203の後部に支持されたカウンタウエイトと、を備える。
【0040】
本実施形態では、起伏部材204は、旋回フレーム203に起伏可能に支持されたブームにより構成される。ただし、起伏部材は、ブームと、このブームの先端部に回動可能に支持された図略のジブと、を含んでいてもよい。旋回フレーム203の上にはガントリ207が立設されている。ガントリ207の上端部には下部スプレッダ210が配置されている。起伏部材204の先端部にはガイライン208の一端が接続されており、ガイライン208の他端には上部スプレッダ209が接続されている。下部スプレッダ210と上部スプレッダ209とは互いに離間して配置されている。下部スプレッダ210及び上部スプレッダ209には、起伏ワイヤロープ211が掛け回されている。
【0041】
複数のウインチは、主巻ウインチWC1、補巻ウインチWC2及び起伏ウインチWC3を含む。本実施形態では、複数のウインチは上部旋回体202に支持されているが、複数のウインチの少なくとも一つが例えば起伏部材204に支持されていてもよい。
【0042】
起伏ウインチWC3は、起伏ワイヤロープ211が巻き付けられた起伏ウインチドラムDR3を有する。起伏ウインチWC3は、起伏ワイヤロープ211の巻き取り又は繰り出しを行うことにより下部スプレッダ210に対する上部スプレッダ209の離間距離を縮小又は拡大させる。当該離間距離の縮小又は拡大に伴って、起伏部材204が起伏される。
【0043】
主巻ウインチWC1は、主巻ワイヤロープR1の巻き取り及び繰り出しを行うための装置である。補巻ウインチWC2は、補巻ワイヤロープR2の巻き取り及び繰り出しを行うための装置である。
【0044】
図1及び
図2に示すように、主巻ウインチWC1は、主巻ワイヤロープR1が巻き付けられたウインチドラムである主巻ドラムDR1と、この主巻ドラムDR1を駆動する主巻モータ34と、主巻クラッチブレーキ48と、減速機47と、を有する。主巻ドラムDR1は、本開示におけるウインチドラムの一例であり、主巻ワイヤロープR1は、本開示におけるワイヤロープの一例である。
【0045】
補巻ウインチWC2の構成は、主巻ウインチWC1の構成と実質的に同じである。従って、
図2の油圧回路では、主巻ウインチWC1の構成が代表して描かれており、補巻ウインチWC2の構成の図示は省略されている。補巻ウインチWC2は、補巻ワイヤロープR2が巻き付けられた補巻ドラムDR2と、この補巻ドラムDR2を駆動する補巻モータ35と、補巻クラッチブレーキ49と、減速機47と、を有する。
【0046】
図1に示すように、ハンマグラブ10は、胴体10Aと、グラブ10Bと、クラウン10Cと、を備える。グラブ10Bは、胴体10Aの下部に開閉可能に取り付けられている。クラウン10Cは、グラブ10Bの開状態と閉状態を切り換えるための部材である。
図1の具体例では、クラウン10Cは胴体10Aよりも上方に配置されている。
【0047】
起伏部材204の先端部には、主巻ポイントシーブ205及び補巻ポイントシーブ206が取り付けられている。主巻ワイヤロープR1は、主巻ポイントシーブ205に巻き掛けられた状態で当該主巻ポイントシーブ205から垂れ下がっている。補巻ワイヤロープR2は、補巻ポイントシーブ206に巻き掛けられた状態で当該補巻ポイントシーブ206から垂れ下がっている。主巻ワイヤロープR1は、ハンマグラブ10の胴体10A及びグラブ10Bを吊り下げるためのワイヤロープであり、補巻ワイヤロープR2は、クラウン10Cを吊り下げるためのワイヤロープである。
【0048】
ハンマグラブ10は、例えば次のように動作する。まず、主巻ドラムDR1から主巻ワイヤロープR1が繰り出されることによってハンマグラブ10がケーシング11内において作業対象(掘削対象)である地盤の底部12に落下する。ハンマグラブ10は、落下に伴うエネルギーを利用して底部12の土砂を掘削する。その後、主巻ウインチWC1により主巻ワイヤロープR1が巻き取られてグラブ10Bが閉じることにより、グラブ10Bに土砂が保持される。そして、主巻ウインチWC1により主巻ワイヤロープR1がさらに巻き取られてハンマグラブ10が上昇してケーシング11外に出され、上部旋回体202が旋回することでハンマグラブ10が所定位置の上に移動した後、補巻ウインチWC2の補巻ドラムDR2から補巻ワイヤロープR2が繰り出される。そうすると、クラウン10Cがハンマグラブ10の胴体10Aに嵌合する。これにより、補巻ワイヤロープR2に胴体10A及びクラウン10Cが吊下げられ、かつ、グラブ10Bは開放可能な状態となる。この状態で主巻ウインチWC1の主巻ドラムDR1から主巻ワイヤロープR1が繰り出されることによりグラブ10Bが開いてハンマグラブ10から土砂が前記所定位置に排土される。
【0049】
主巻モータ34及び補巻モータ35のそれぞれは、油圧モータであり、油圧ポンプ31に接続されている。主巻モータ34は、油圧ポンプ31から吐出される作動油の供給を受けることにより主巻ドラムDR1を繰出方向及び巻取方向の何れかに回転させるように作動する。同様に、補巻モータ35は、油圧ポンプ31から吐出される作動油の供給を受けることにより補巻ドラムDR2を繰出方向及び巻取方向の何れかに回転させるように作動する。油圧ポンプ31は、図示されないエンジン、電動モータなどの駆動源によって駆動される。
【0050】
主巻ウインチWC1の減速機47は、主巻モータ34の回転を減速し、主巻モータ34から主巻ドラムDR1に動力(回転力)を伝える。補巻ウインチWC2の減速機47は、補巻モータ35の回転を減速し、補巻モータ35から補巻ドラムDR2に動力(回転力)を伝える。これらの減速機47のそれぞれは、例えば遊星歯車機構を有する。
【0051】
主巻クラッチブレーキ48は、接続状態とフリー状態との間で切り換わることが可能である。主巻クラッチブレーキ48は、前記接続状態と前記フリー状態との間で主巻モータ34と主巻ドラムDR1との連結の度合いを調節することが可能である。
【0052】
前記接続状態は、主巻モータ34の動力を主巻ドラムDR1に伝えることが可能な状態である。すなわち、前記接続状態は、主巻モータ34の動力により主巻ワイヤロープR1の繰り出し及び巻き取りが可能な状態である。従って、前記接続状態で主巻モータ34が作動すると、主巻モータ34の動力が減速機47を介して主巻ドラムDR1に伝わり、主巻ドラムDR1が回転する。主巻ドラムDR1が回転すると、主巻ワイヤロープR1の繰り出し又は巻き取りが行われる。
【0053】
前記フリー状態は、主巻ワイヤロープR1を主巻ドラムDR1からハンマグラブ10の重量によって繰り出すことが可能な状態である。すなわち、前記フリー状態は、主巻ワイヤロープR1の張力によって主巻ドラムDR1から主巻ワイヤロープR1を繰り出すことが可能な状態、つまりハンマグラブ10が自由落下することが可能な状態、である。従って、前記フリー状態では、主巻ワイヤロープR1を繰り出す繰出方向に主巻モータ34を作動させなくても、主巻ドラムDR1から主巻ワイヤロープR1を繰り出すことができる。
【0054】
同様に、補巻クラッチブレーキ49は、接続状態とフリー状態との間で切り換わることが可能である。補巻クラッチブレーキ49は、前記接続状態と前記フリー状態との間で補巻モータ35と補巻ドラムDR2との連結の度合いを調節することが可能である。
【0055】
前記接続状態は、補巻モータ35の動力を補巻ドラムDR2に伝えることが可能な状態である。すなわち、前記接続状態は、補巻モータ35の動力により補巻ワイヤロープR2の繰り出し及び巻き取りが可能な状態である。従って、前記接続状態で補巻モータ35が作動すると、補巻モータ35の動力が減速機47を介して補巻ドラムDR2に伝わり、補巻ドラムDR2が回転する。補巻ドラムDR2が回転すると、補巻ワイヤロープR2の繰り出し又は巻き取りが行われる。
【0056】
前記フリー状態は、補巻ワイヤロープR2を補巻ドラムDR2からハンマグラブ10の重量によって繰り出すことが可能な状態である。すなわち、前記フリー状態は、補巻ワイヤロープR2の張力によって補巻ドラムDR2から補巻ワイヤロープR2を繰り出すことが可能な状態である。従って、前記フリー状態では、補巻ワイヤロープR2を繰り出す繰出方向に補巻モータ35を作動させなくても、補巻ドラムDR2から補巻ワイヤロープR2を繰り出すことができる。
【0057】
主巻クラッチブレーキ48は、主巻ドラムDR1に対してブレーキ力を与えること、つまり主巻ドラムDR1にブレーキをかけること、が可能である。主巻クラッチブレーキ48は、主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節することが可能である。
【0058】
同様に、補巻クラッチブレーキ49は、補巻ドラムDR2に対してブレーキ力を与えること、つまり補巻ドラムDR2にブレーキをかけることが可能である。補巻クラッチブレーキ49は、補巻ドラムDR2に対するブレーキ力を調節することが可能である。
【0059】
本実施形態では、主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれは、いわゆる湿式ブレーキであり、ケース40と、パイロットポンプ36から加えられる油圧によりケース40に対して変位するピストン42と、複数のブレーキディスク41(複数のクラッチプレート)と、を備える。複数のブレーキディスク41のそれぞれは、例えば作動油に浸された摩擦板である。
【0060】
複数のブレーキディスク41は、ピストン42の作動により、複数のブレーキディスク41が互いに接触した状態と、複数のブレーキディスク41が互いに離れた状態と、の間で切り換わることが可能である。主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれは、複数のブレーキディスク41が互いに離れた状態であるときには前記フリー状態となる。主巻クラッチブレーキ48の状態が前記フリー状態であるときには、ハンマグラブ10は自重により下降(自由落下)することが可能になる。また、主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれは、複数のブレーキディスク41が互いに接触した状態になることにより、前記接続状態となる。
【0061】
より具体的には、主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれは、バネ46を備える。主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれのケース40内には一対の油室43,44が形成されている。ピストン42は、一対の油室43,44を仕切る仕切り45を有する。バネ46は、複数のブレーキディスク41が互いに近づく方向にピストン42を付勢する。
【0062】
例えばパイロットポンプ36から一対の油室43,44に加えられる油圧が同じである場合には、バネ46の付勢力を受けるピストン42が複数のブレーキディスク41を押すことで複数のブレーキディスク41は、互いに接触した状態となる。パイロットポンプ36から一方の油室44に加えられる油圧が他方の油室43に加えられる油圧よりも所定の大きさ以上に大きくなると、複数のブレーキディスク41は、互いに離れた状態となる。すなわち、主巻クラッチブレーキ48及び補巻クラッチブレーキ49のそれぞれでは、油室44に加えられる油圧と油室43に加えられる油圧との差に応じて複数のブレーキディスク41の接触の度合いが変化する。従って、主巻クラッチブレーキ48は、油室43と油室44の差に応じて主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節することができ、補巻クラッチブレーキ49は、油室43と油室44との差に応じて補巻ドラムDR2に対するブレーキ力を調節することができる。
【0063】
図2及び
図3に示すように、掘削制御装置100は、複数の操作器と、複数のバルブと、コントローラ101と、ドラム回転検出器102と、レバー入力検出器103と、旋回角度検出器104と、起伏角度検出器105と、ペダル入力検出器106と、モニタスイッチ107と、荷重値検出器108と、モニタ115と、を備える。
【0064】
複数の操作器は、主巻ウインチ操作器51と、補巻ウインチ操作器53と、主巻ブレーキ操作器52と、補巻ブレーキ操作器54と、を含む。
【0065】
主巻ウインチ操作器51は、オペレータによる主巻ウインチ操作が入力される主巻レバー51Aを備える。レバー入力検出器103は、主巻レバー51Aに入力された主巻ウインチ操作の方向及び操作量を検出し、検出結果をコントローラ101に入力する。主巻ウインチ操作は、主巻ワイヤロープR1を巻き上げる巻き上げ操作と、主巻ワイヤロープR1を繰り出す繰り出し操作と、を含む。
【0066】
補巻ウインチ操作器53は、オペレータによる補巻ウインチ操作が入力される補巻レバー53Aを備える。レバー入力検出器103は、補巻レバー53Aに入力された補巻ウインチ操作の方向及び操作量を検出し、検出結果をコントローラ101に入力する。
【0067】
主巻ブレーキ操作器52は、オペレータによる主巻ブレーキ操作が入力される主巻ペダル52Aを備える。ペダル入力検出器106は、主巻ペダル52Aに入力された主巻ブレーキ操作の操作量を検出し、検出結果をコントローラ101に入力する。
【0068】
補巻ブレーキ操作器54は、オペレータによる補巻ブレーキ操作が入力される補巻ペダル54Aを備える。ペダル入力検出器106は、補巻ペダル54Aに入力された補巻ブレーキ操作の操作量を検出し、検出結果をコントローラ101に入力する。
【0069】
複数のバルブは、主巻ドラムDR1の動作を制御するための主巻バルブ群と、補巻ドラムDR2の動作を制御するための補巻バルブ群と、を含む。
図2に示すように、主巻バルブ群は、主巻制御弁32と、繰出比例弁61Aと、巻取比例弁61Bと、主巻ブレーキ制御比例弁62と、主巻ペダル比例弁67と、ブレーキ系統切換弁65と、モード切換弁66と、緊急ブレーキ切換弁69と、を含む。補巻バルブ群の構成は、主巻バルブ群の構成と実質的に同じである。従って、
図2の油圧回路では、主巻バルブ群が代表して描かれており、補巻バルブ群の図示は省略されている。補巻バルブ群は、補巻制御弁33と、繰出比例弁63Aと、巻取比例弁63Bと、補巻ブレーキ制御比例弁64と、補巻ペダル比例弁68と、ブレーキ系統切換弁65と、モード切換弁66と、緊急ブレーキ切換弁69と、を含む。
【0070】
主巻制御弁32は、油圧ポンプ31と主巻モータ34との間に介在し、補巻制御弁33は、油圧ポンプ31と補巻モータ35との間に介在する。主巻制御弁32及び補巻制御弁33のそれぞれは、繰出パイロットポートと巻取パイロットポートを有する。
【0071】
主巻制御弁32は、両パイロットポートにパイロット圧が加えられていないときには、中立位置に保持されて主巻モータ34を油圧ポンプ31から遮断する。主巻制御弁32は、繰出パイロットポートにパイロット圧が加えられたときには、主巻モータ34を繰出方向に回転させるための油路を形成するように開弁する。主巻制御弁32は、巻取パイロットポートにパイロット圧が加えられたときには、主巻モータ34を巻取方向に回転させるための油路を形成するように開弁する。
【0072】
同様に、補巻制御弁33は、両パイロットポートにパイロット圧が加えられていないときには、中立位置に保持されて補巻モータ35を油圧ポンプ31から遮断する。補巻制御弁33は、繰出パイロットポートにパイロット圧が加えられたときには、補巻モータ35を繰出方向に回転させるための油路を形成するように開弁する。補巻制御弁33は、巻取パイロットポートにパイロット圧が加えられたときには、補巻モータ35を巻取方向に回転させるための油路を形成するように開弁する。
【0073】
繰出比例弁61Aは、図示されない油圧源と主巻制御弁32の繰出パイロットポートとの間に介在する。繰出比例弁61Aは、例えば電磁比例弁である。繰出比例弁61Aは、コントローラ101から入力される主巻繰出指令に応じた2次圧であるパイロット圧を生成し、当該パイロット圧を主巻制御弁32の繰出パイロットポートに入力する。これにより、主巻制御弁32の開度は主巻繰出指令に応じた大きさに調節され、主巻モータ34がパイロット圧に応じた速度で繰出方向に回転する。
【0074】
巻取比例弁61Bは、前記油圧源と主巻制御弁32の巻取パイロットポートとの間に介在する。巻取比例弁61Bは、例えば電磁比例弁である。巻取比例弁61Bは、コントローラ101から入力される主巻巻取指令に応じた2次圧であるパイロット圧を生成し、当該パイロット圧を主巻制御弁32の巻取パイロットポートに入力する。これにより、主巻制御弁32の開度は主巻巻取指令に応じた大きさに調節され、主巻モータ34がパイロット圧に応じた速度で巻取方向に回転する。
【0075】
同様に、繰出比例弁63Aは、前記油圧源と補巻制御弁33の繰出パイロットポートとの間に介在する。繰出比例弁63Aは、例えば電磁比例弁である。繰出比例弁63Aは、コントローラ101から入力される補巻繰出指令に応じた2次圧であるパイロット圧を生成し、当該パイロット圧を補巻制御弁33の繰出パイロットポートに入力する。これにより、補巻制御弁33の開度は補巻繰出指令に応じた大きさに調節され、補巻モータ35がパイロット圧に応じた速度で繰出方向に回転する。
【0076】
巻取比例弁63Bは、前記油圧源と補巻制御弁33の巻取パイロットポートとの間に介在する。巻取比例弁63Bは、例えば電磁比例弁である。巻取比例弁63Bは、コントローラ101から入力される補巻巻取指令に応じた2次圧であるパイロット圧を生成し、当該パイロット圧を補巻制御弁33の巻取パイロットポートに入力する。これにより、補巻制御弁33の開度は補巻巻取指令に応じた大きさに調節され、補巻モータ35がパイロット圧に応じた速度で巻取方向に回転する。なお、前記油圧源は、パイロットポンプ36であってもよく、パイロットポンプ36とは別のポンプであってもよい。
【0077】
主巻ブレーキ制御比例弁62は、パイロットポンプ36と主巻クラッチブレーキ48との間に介在する。主巻ブレーキ制御比例弁62は、例えば電磁比例弁である。主巻ブレーキ制御比例弁62は、コントローラ101から入力される主巻ブレーキ指令に応じた2次圧(主巻パイロット圧)を生成し、この2次圧は、主巻クラッチブレーキ48の油室43に入力される。すなわち、主巻ブレーキ制御比例弁62は、コントローラ101から入力される主巻ブレーキ指令に応じたブレーキ力を、主巻クラッチブレーキ48において発生させることができる。
【0078】
同様に、補巻ブレーキ制御比例弁64は、パイロットポンプ36と補巻クラッチブレーキ49との間に介在する。補巻ブレーキ制御比例弁64は、例えば電磁比例弁である。補巻ブレーキ制御比例弁64は、コントローラ101から入力される補巻ブレーキ指令に応じた2次圧(補巻パイロット圧)を生成し、この2次圧は、補巻クラッチブレーキ49の油室43に入力される。すなわち、補巻ブレーキ制御比例弁64は、コントローラ101から入力される補巻ブレーキ指令に応じたブレーキ力を、補巻クラッチブレーキ49において発生させることができる。
【0079】
主巻ペダル比例弁67は、パイロットポンプ36と主巻クラッチブレーキ48との間に介在する。主巻ペダル比例弁67は、オペレータによって主巻ペダル52Aに入力される主巻ブレーキ操作の操作量に応じた2次圧(主巻パイロット圧)を生成し、この2次圧は、主巻クラッチブレーキ48の油室43に入力される。すなわち、主巻ペダル比例弁67は、オペレータによる主巻ブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力を、主巻クラッチブレーキ48において発生させることができる。
【0080】
同様に、補巻ペダル比例弁68は、パイロットポンプ36と補巻クラッチブレーキ49との間に介在する。補巻ペダル比例弁68は、オペレータによって補巻ペダル54Aに入力される補巻ブレーキ操作の操作量に応じた2次圧(補巻パイロット圧)を生成し、この2次圧は、補巻クラッチブレーキ49の油室43に入力される。すなわち、補巻ペダル比例弁68は、オペレータによる補巻ブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力を、補巻クラッチブレーキ49において発生させることができる。
【0081】
モード切換弁66は、迂回油路が形成される状態と、比例弁油路が形成される状態と、を切り換えるための切換弁である。モード切換弁66は、ブレーキ系統切換弁65と主巻クラッチブレーキ48との間に介在する。
【0082】
迂回油路は、パイロットポンプ36が主巻ブレーキ制御比例弁62及び主巻ペダル比例弁67を迂回して主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される油路である。すなわち、迂回油路は、パイロットポンプ36がこれらの比例弁62,67を介さずに主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される油路である。
【0083】
比例弁油路は、パイロットポンプ36が主巻ブレーキ制御比例弁62及び主巻ペダル比例弁67の何れか一方を介して主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される油路である。比例弁油路は、ブレーキ制御比例弁油路と、ペダル比例弁油路と、を含む。ブレーキ制御比例弁油路は、パイロットポンプ36が主巻ブレーキ制御比例弁62を介して主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される油路である。ペダル比例弁油路は、パイロットポンプ36が主巻ペダル比例弁67を介して主巻クラッチブレーキ48の油室43に接続される油路である。
【0084】
具体的には、例えば、モード切換弁66は、コントローラ101から入力される指令に応じて、迂回油路を形成する位置である迂回油路形成位置(
図2の右側位置)と、比例弁油路を形成する位置である比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)と、の間で切り換わることが可能なスプールを有する2位置型の電磁切換弁であってもよい。
図2に示す具体例では、モード切換弁66のソレノイドが非励磁状態であるときには、モード切換弁66のスプールは迂回油路形成位置に配置され、モード切換弁66のソレノイドが励磁状態であるときには、モード切換弁66のスプールは比例弁油路形成位置に配置される。ただし、モード切換弁66の構造はこの具体例に限られない。モード切換弁66は、ソレノイドが励磁状態であるときにスプールが迂回油路形成位置に配置され、ソレノイドが非励磁状態であるときにスプールが比例弁油路形成位置に配置されるように構成されていてもよい。
【0085】
ブレーキ系統切換弁65は、前記ブレーキ制御比例弁油路が形成される状態と、前記ペダル比例弁油路が形成される状態と、を切り換えるための切換弁である。ブレーキ系統切換弁65は、比例弁62,67とモード切換弁66との間に介在する。
【0086】
具体的には、例えば、ブレーキ系統切換弁65は、コントローラ101から入力される指令に応じて、ブレーキ制御比例弁油路を形成する位置であるブレーキ制御比例弁油路形成位置(
図2の下側位置)と、ペダル比例弁油路を形成する位置であるペダル比例弁油路形成位置(
図2の上側位置)と、の間で切り換わることが可能なスプールを有する2位置型の電磁切換弁であってもよい。
図2に示す具体例では、ブレーキ系統切換弁65のソレノイドが非励磁状態であるときには、ブレーキ系統切換弁65のスプールはペダル比例弁油路形成位置に配置され、ブレーキ系統切換弁65のソレノイドが励磁状態であるときには、ブレーキ系統切換弁65のスプールはブレーキ制御比例弁油路形成位置に配置される。ただし、ブレーキ系統切換弁65の構造はこの具体例に限られない。ブレーキ系統切換弁65は、ソレノイドが励磁状態であるときにスプールがペダル比例弁油路形成位置に配置され、ソレノイドが非励磁状態であるときにスプールがブレーキ制御比例弁油路形成位置に配置されるように構成されていてもよい。
【0087】
補巻バルブ群のモード切換弁66は、迂回油路が形成される状態と、比例弁油路が形成される状態と、を切り換えるための切換弁である。補巻バルブ群のブレーキ系統切換弁65は、前記ブレーキ制御比例弁油路が形成される状態と、前記ペダル比例弁油路が形成される状態と、を切り換えるための切換弁である。補巻バルブ群のブレーキ系統切換弁65及びモード切換弁66の構成は、上述した主巻バルブ群のブレーキ系統切換弁65及びモード切換弁66の構成と実質的に同じであるので、これらについての詳細な説明は省略する。
【0088】
緊急ブレーキ切換弁69は、主巻クラッチブレーキ48の油室44がパイロットポンプ36に接続されるポンプ接続状態と、油室44がタンクに接続されるタンク接続状態と、を切り換えるための切換弁である。具体的には、例えば、緊急ブレーキ切換弁69は、パイロットポンプ36からの作動油が油室44に供給されることを許容する供給位置(
図2の左側位置)と、油室44内の作動油が油室44からタンクに排出されることを許容する排出位置(
図2の右側位置)と、の間で切り換わることが可能なスプールを有する2位置型の電磁切換弁であってもよい。
【0089】
通常時には、コントローラ101は、
図2に示すように、緊急ブレーキ切換弁69のスプールを供給位置にセットし、緊急ブレーキ切換弁69の状態をポンプ接続状態とする。一方、緊急時には、コントローラ101は、緊急ブレーキ切換弁69のスプールを供給位置から排出位置に切り換える。すなわち、緊急ブレーキ切換弁69の状態は、ポンプ接続状態からタンク接続状態に切り換わり、油室44はタンクに接続される。これにより、主巻ドラムDR1に対するブレーキ力が発生した状態、すなわち主巻ドラムDR1に対するブレーキがかかった状態となるので、主巻ドラムDR1の回転が減速して停止する。補巻バルブ群の緊急ブレーキ切換弁69の構成は、上述した主巻バルブ群の緊急ブレーキ切換弁69の構成と実質的に同じであるので、それについての詳細な説明は省略する。
【0090】
図3に示すドラム回転検出器102は、例えば
図2に示す主巻回転センサ102Aと補巻回転センサ102Bとを含んでいてもよい。主巻回転センサ102Aは、主巻ドラムDR1の回転量である主巻回転量ωmを検出し、主巻回転量ωmの検出結果をコントローラ101に入力する。補巻回転センサ102Bは、補巻ドラムDR2の回転量である補巻回転量ωaを検出し、補巻回転量ωaの検出結果をコントローラ101に入力する。なお、主巻回転センサ102Aは、主巻ドラムDR1の回転量に対応する他の部材の動き(例えば、主巻ポイントシーブ205の回転量)を検出するセンサであってもよい。同様に、補巻回転センサ102Bは、補巻ドラムDR2の回転量に対応する他の部材の動き(例えば、補巻ポイントシーブ206の回転量)を検出するセンサであってもよい。
【0091】
モニタスイッチ107は、ハンマグラブ10の重さであるハンマグラブ重さを設定するために用いられる重さ設定入力器の一例である。オペレータがハンマグラブ重さを設定したいときにオペレータがモニタスイッチ107を押すことでハンマグラブ重さがコントローラ101に記憶される。モニタスイッチ107は、例えば、上部旋回体202のキャビン内に配置された図略のモニタに設けられていてもよく、上部旋回体202の外においてオペレータが操作可能な携帯情報端末に設けられていてもよい。
【0092】
具体的には例えば、オペレータは、ハンマグラブ10の状態が所定の条件を満たしているか否かを確認し、当該所定の条件を満たしているときに重さ設定入力器に対して入力を行い、重さ設定入力器は、当該入力に係る信号をコントローラ101に入力し、コントローラ101は、当該信号の入力を受けると、その時点において荷重値検出器108が検出する荷重値と予め記憶された関係式とを用いて演算した値をハンマグラブ10の重さとして設定してもよい。この場合、前記所定の条件は、例えば、ハンマグラブ10が接地していないことを含んでいてもよい。また、前記所定の条件は、例えば、ハンマグラブ10が接地していないこと、及び、ハンマグラブ10内に土砂が保持されていないこと、を含んでいてもよい。
【0093】
荷重値検出器108は、ハンマグラブ重さに相関する荷重値を検出することができるセンサである。本実施形態では、荷重値検出器108は、下部スプレッダ210に取り付けられたロードセルを含んでいてもよい。この場合、ロードセルは、下部スプレッダ210に掛け回された起伏ワイヤロープ211に作用する荷重を検出可能なように構成されていてもよい。ただし、荷重値検出器108は、ハンマグラブ重さに相関する荷重値を検出することが可能な位置に配置されたセンサであればよく、下部スプレッダ210に取り付けられたロードセルに限られない。荷重値検出器108は、荷重値の検出結果をコントローラ101に入力する。コントローラ101は、荷重値検出器108から入力される検出結果に基づいてハンマグラブ重さに相関する荷重値を取得することができる。
【0094】
一般に、クレーンは、モーメントリミッタ(過負荷防止装置)を備えている。このモーメントリミッタは、ブームを含む起伏部材の長さ、起伏部材の角度(姿勢)、ロープの張力などの情報を用いて、クレーンに作用するモーメントを演算し、演算されたモーメントが許容範囲を超えると、クレーンの動作を停止させたり、警報を発する動作を行ったりする。このモーメントリミッタは、ロードセルなどの荷重値検出器により検出されるワイヤロープの張力を用いて前記モーメントを演算する。本実施形態に係る掘削機械200の荷重値検出器108は、前記モーメントを演算するための検出器としても用いられてもよい。
【0095】
掘削制御装置100は、図略の一時キャンセルスイッチを備えていてもよい。一時キャンセルスイッチは、オペレータが掘削制御装置による自動制御を一時的に解除したいときにオペレータが入力する入力器である。
【0096】
旋回角度検出器104は、下部体201に対する上部旋回体202の旋回角度を検出する。起伏角度検出器105は、上部旋回体202に対する起伏部材204の起伏角度を検出する。旋回角度検出器104は、旋回角度の検出結果をコントローラ101に入力し、起伏角度検出器105は、起伏角度の検出結果をコントローラ101に入力する。本実施形態では、起伏角度は、上部旋回体202に対するブームの起伏角度である。
【0097】
コントローラ101(メカトロコントローラ)は、掘削機械200の動作を制御する。コントローラ101は、コンピュータを含み、コンピュータは、CPU、MPUなどの演算処理装置と、メモリと、を含む。
【0098】
図3に示すように、コントローラ101は、条件設定部111と、ハンマグラブ状態演算部112と、画面表示演算部113と、指令電流値演算部114と、を備える。
【0099】
条件設定部111は、掘削作業を行う上で必要な種々の設定を行う。条件設定部111は、例えば、初期設定、初期設定以外の条件設定、などを行う。具体的には、条件設定部111は、例えば、ハンマグラブ重さを設定する。条件設定部111は、例えば、荷重値検出器108が検出する荷重値を用いてハンマグラブ重さを演算してもよい。具体的には、条件設定部111は、オペレータによりモニタスイッチ107が押された時点において荷重値検出器108が検出する荷重値を用いて演算した値をハンマグラブ重さとして設定し、設定されたハンマグラブ重さをメモリに記憶するように構成されていてもよい。また、条件設定部111は、前記重さ設定入力器に対してオペレータが入力する入力値(例えば数値)をハンマグラブ重さとして設定してもよい。
【0100】
ハンマグラブ状態演算部112は、ハンマグラブ10の高さ、ハンマグラブ10の落下速度、などのハンマグラブ10の動作に関係する種々の状態量を演算する。
【0101】
ハンマグラブ状態演算部112は、ドラム回転検出器102の主巻回転センサ102Aが検出する主巻回転量ωmを用いて主巻ドラムDR1に巻かれている主巻ワイヤロープR1の巻き層を演算する。巻き層は、主巻ドラムDR1に巻かれている主巻ワイヤロープR1の層数のことである。主巻ドラムDR1の直径及び軸方向の長さを含む主巻ドラムDR1のサイズ、主巻ワイヤロープR1の直径などの情報は、コントローラ101に予め記憶されている。従って、ハンマグラブ状態演算部112は、主巻ドラムDR1の基準位置からの回転数を主巻回転量ωmを用いて得ることができ、その時点における主巻ワイヤロープR1の層数(巻き層)を演算することもできる。
【0102】
ハンマグラブ状態演算部112は、ドラム回転検出器102の補巻回転センサ102Bが検出する補巻回転量ωaを用いて補巻ドラムDR2に巻かれている補巻ワイヤロープR2の巻き層を演算する。巻き層は、補巻ドラムDR2に巻かれている補巻ワイヤロープR2の層数のことである。補巻ドラムDR2の直径及び軸方向の長さを含む補巻ドラムDR2のサイズ、補巻ワイヤロープR2の直径などの情報は、コントローラ101に予め記憶されている。従って、ハンマグラブ状態演算部112は、補巻ドラムDR2の基準位置からの回転数を補巻回転量ωaを用いて得ることができ、その時点における補巻ワイヤロープR2の層数(巻き層)を演算することもできる。
【0103】
ハンマグラブ状態演算部112は、作業対象(掘削対象)においてその時点における穴の底部12を原点として、その時点におけるハンマグラブ10の高さを演算する。ハンマグラブ10の高さは、ハンマグラブ10が底部12よりも上にあるときに正の値となる。ハンマグラブ状態演算部112は、ハンマグラブ作業中にハンマグラブ10の高さを周期的に繰り返し演算することで、ハンマグラブ作業中におけるハンマグラブ10の高さをリアルタイムで取得する。
【0104】
ハンマグラブ状態演算部112は、ドラム回転検出器102の主巻回転センサ102Aからコントローラ101に入力される主巻回転量ωmの検出結果を用いてハンマグラブ10の高さ(ハンマグラブ高さ)を演算することができる。
【0105】
具体的には例えば、ハンマグラブ状態演算部112は、主巻回転センサ102Aからコントローラ101に入力される主巻回転量ωmの検出結果と、主巻ワイヤロープR1の層数(巻き層)と、を用いてハンマグラブ高さを演算することで、層数が考慮されたより正確なハンマグラブ高さを取得することができる。ただし、ハンマグラブ状態演算部112は、層数を考慮せずに、主巻回転量ωmの検出結果を用いてハンマグラブ高さを演算してもよい。
【0106】
ハンマグラブ状態演算部112は、ハンマグラブ高さの基準である前記原点、すなわち穴の底部12の位置を、例えば次のように取得することができる。ハンマグラブ状態演算部112は、ハンマグラブ10が穴の底部12に接地している状態から主巻ワイヤロープR1が主巻ドラムDR1によって巻き取られる過程において、荷重値検出器108により検出される荷重値が増加する荷重値変化に基づいてハンマグラブ10が底部12から離れるときの高さ位置である地離れ高さを判定することができる。ハンマグラブ状態演算部112は、この地離れ高さをその時点における原点に設定する。
【0107】
ハンマグラブ状態演算部112は、上記のように演算されるハンマグラブ高さを用いて、単位時間あたりのハンマグラブ高さの減少量、すなわち、ハンマグラブ10の落下速度を演算する。
【0108】
画面表示演算部113は、ハンマグラブ状態演算部112が演算するハンマグラブ高さ、後述する指令電流値演算部114が決める制御状態、などを取得し、オペレータにとって有用な情報をモニタ115に表示する。
【0109】
指令電流値演算部114は、ハンマグラブ10の状態、各種センサから入力される検出結果、オペレータ設定、などに基づいて制御指令を演算し、当該制御指令を、比例弁61A,61B,62,63A,63B,64,67,68、切換弁65,66,69、などの制御対象に出力する。
【0110】
具体的には例えば、指令電流値演算部114は、ハンマグラブ10の状態、各種センサから入力される検出結果、オペレータ設定、などに基づいて、掘削機械200の制御状態を決定し、決定された制御状態に応じた制御指令を演算し、当該制御指令を制御対象に出力してもよい。制御状態としては、制御なし状態、衝撃力調整状態、着地時ブレーキ制御状態、ほぐし制御状態、巻上制御状態、着水速度制御状態、水中速度制御状態、アシスト機能一時無効状態、などを例示できる。
【0111】
制御なし状態は、切換弁によって油圧回路上で比例弁電流指令値による制御が行われる状態でありながら、比例弁電流指令値がゼロとなっている状態である。衝撃力調整状態は、ハンマグラブ10を自由落下させているときに適宜ブレーキを作動させて落下速度を調整する状態、及び/又は、ハンマグラブ10を一定の高さで一時停止させることによって着地時の衝撃力を調整する状態である。着地時ブレーキ制御状態は、ハンマグラブ10が着地したと判定されたときに、ウインチドラムの回転を停止させるためのブレーキ制御を行うための状態である。
【0112】
指令電流値演算部114は、制御状態が衝撃力調整状態である場合には、衝撃力調整制御を実行する。指令電流値演算部114は、制御状態が着地時ブレーキ制御状態である場合には、着地時ブレーキ制御を実行する。指令電流値演算部114は、制御状態が着水速度制御状態である場合には、着水速度制御を実行する。指令電流値演算部114は、制御状態が水中速度制御状態である場合には、水中速度制御を実行する。指令電流値演算部114は、制御状態がアシスト機能一時無効状態である場合には、アシスト機能を一時的に無効にするアシスト機能無効制御を実行する。
【0113】
また、本実施形態に係るコントローラ101は、上述した着地判定制御を行う。すなわち、コントローラ101は、前記着地判定においてケーシング11内における水を考慮する場合には、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記回転量(前記高さ情報)を用いて判定し、前記着地判定においてケーシング11内における水を考慮しない場合には、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記荷重値を用いて判定する。
【0114】
図4は、掘削制御装置100のコントローラ101が行う着地判定制御における演算制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0115】
図4のステップS11において、コントローラ101は、ケーシング11内における水に関する情報である水情報を前記水情報提供器91から取得する。具体的には、水情報提供器91がオペレータによる入力を受けることが可能な水情報入力器を含む場合、オペレータは、事前調査で予め把握しているケーシング11内の水位を考慮して、水情報入力器に対して水情報を入力する。水情報は、水の有無に関する情報であってもよく、水位(数値)であってもよく、水の考慮の要否に関する情報であってもよい。水情報入力器は、当該水情報入力器に入力された水情報をコントローラ101に出力し、これにより、コントローラ101は、水情報を取得することができる。
【0116】
ステップS12において、コントローラ101は、取得した水情報に基づいて、着地判定のモードを、ケーシング11内における水を考慮するモードである水考慮モード又はケーシング11内における水を考慮しないモードである非考慮モードに設定する。具体的には例えば、オペレータがケーシング11内に水がないことを示す水情報を入力した場合、コントローラ101は、着地判定のモードを非考慮モードに設定し、オペレータがケーシング11内に水があることを示す水情報を入力した場合、コントローラ101は、着地判定のモードを水考慮モードに設定してもよい。また、オペレータが水情報入力器にケーシング11内の水位を水情報として入力した場合、又は、水位センサがケーシング11内の水位に関する水情報をコントローラ101に入力した場合、コントローラ101は、前記水位と所定の水位閾値との比較結果に基づいて着地判定のモードを設定してもよい。すなわち、コントローラ101は、前記水位が水位閾値未満である場合、着地判定のモードを非考慮モードに設定し、前記水位が水位閾値以上である場合、着地判定のモードを水考慮モードに設定してもよい。
【0117】
ステップS13において、コントローラ101は、着地判定のモードが水考慮モードであるか否かを判定する。コントローラ101は、着地判定のモードが水考慮モードである場合(ステップS13においてYES)、ステップS14以降の処理を行い、着地判定のモードが非考慮モードである場合(ステップS13においてNO),ステップS16以降の処理を行う。
【0118】
[水考慮モード]
着地判定のモードが水考慮モードである場合、コントローラ101は、水考慮モードの着地判定指標を取得し(ステップS14)、取得した着地判定指標を用いて、水考慮モードの着地判定条件が満たされたか否かを判定する(ステップS15)。水考慮モードの着地判定指標は、少なくともハンマグラブ高さを含んでいればよいが、本実施形態では、ハンマグラブ高さと荷重値の両方を含む。着地判定のモードが水考慮モードである場合、コントローラ101は、ハンマグラブ高さ、すなわち高さ情報を着地判定の主たる指標として用いるので、ハンマグラブ10の着地を適切に判定することができる。また、本実施形態では、着地判定のモードが水考慮モードである場合、コントローラ101は、高さ情報を着地判定の主たる指標として用いるとともに荷重値を着地判定の補助的な指標として用いるので、ハンマグラブ10の着地をより適切に判定することができる。
【0119】
水考慮モードの着地判定条件は、例えば、次の式(1)で示される条件であってもよい。
【0120】
【0121】
ここで、Hhammerは、ハンマグラブ高さであり、HOpenCloseは、ハンマグラブ10の開閉に必要なワイヤロープ長であり、Wsensingは、ステップS14において取得される荷重値(現在の荷重値)であり、Whammerは、ハンマグラブ10の重さである。αは、浮力を考慮するための補正定数であり、β1は、1未満の正の数であって水考慮モードにおいてハンマグラブ10の着地を適切に判定するために設定された定数である。
【0122】
ハンマグラブ10の開閉に必要なワイヤロープ長(HOpenClose)は、ハンマグラブ10のグラブ10Bが閉じた状態から開いた状態に切り換わるために主巻ドラムDR1から繰り出される必要があるワイヤロープ長である。このワイヤロープ長(HOpenClose)がハンマグラブ10の種類ごとに異なる場合には、掘削作業を行う前に、オペレータが図略の入力器にワイヤロープ長(HOpenClose)に関する情報を入力することによりコントローラ101がワイヤロープ長(HOpenClose)の設定を行ってもよい。また、コントローラ101は、ハンマグラブ10の種類を自動で検出可能な場合には、その検出結果に基づいてワイヤロープ長(HOpenClose)の設定を行ってもよい。
【0123】
水考慮モードの着地判定条件が式(1)で示される条件である場合、着地判定のための高さ閾値(第1の高さ閾値)は、「-HOpenClose」である。すなわち、第1の高さ閾値は、ハンマグラブ10の開閉に必要なワイヤロープ長(HOpenClose)にマイナスの符号をつけた値である。また、着地判定のための荷重閾値(第1の荷重閾値)は、「αβ1Whammer」である。すなわち、第1の荷重閾値は、ハンマグラブ10の重さ(Whammer)に定数α及び定数β1をかけた値である。
【0124】
ステップS15において、コントローラ101は、ハンマグラブ高さ(H
hammer)が第1の高さ閾値よりも小さいという条件である第1の高さ条件が満たされるか否かを判定するとともに、現在の荷重値(W
sensing)が第1の荷重閾値よりも小さいという条件である第1の荷重条件が満たされるか否かを判定する。コントローラ101は、第1の高さ条件が満たされ、かつ、第1の荷重条件が満たされた場合(ステップS15においてYES)、ハンマグラブ10が着地したと判定し、ステップS18の処理(後述のブレーキ制御)を行う。一方、コントローラ101は、第1の高さ条件及び第1の荷重条件の少なくとも一方が満たされない場合(ステップS15においてNO)、ステップS18の処理(ブレーキ制御)を行わない。コントローラ101は、第1の高さ条件及び第1の荷重条件の少なくとも一方が満たされない場合(ステップS15においてNO)、
図4に示すフローチャートの処理(例えばステップS13以降の処理)を制御周期ごとに呼び出して実行する。
【0125】
[非考慮モード]
着地判定のモードが非考慮モードである場合、コントローラ101は、非考慮モードの着地判定指標を取得し(ステップS16)、取得した着地判定指標を用いて、非考慮モードの着地判定条件が満たされたか否かを判定する(ステップS17)。非考慮モードの着地判定指標は、少なくとも荷重値を含んでいればよいが、本実施形態では、荷重値とハンマグラブ高さ(高さ情報)の両方を含む。着地判定のモードが非考慮モードである場合、コントローラ101は、荷重値を着地判定の主たる指標として用い、ハンマグラブ高さを着地判定の補助的な指標として用いるので、ハンマグラブ10の着地をより適切に判定することができる。
【0126】
非考慮モードの着地判定条件は、例えば、次の式(2)で示される条件であってもよい。
【0127】
【0128】
ここで、Hhammerは、ハンマグラブ高さであり、HOpenCloseは、ハンマグラブ10の開閉に必要なワイヤロープ長であり、Wsensingは、ステップS16において取得される荷重値(現在の荷重値)であり、Whammerは、ハンマグラブ10の重さである。Hconstは、0以上の定数であり、β2は、1未満の正の定数であって非考慮モードにおいてハンマグラブ10の着地を適切に判定するために設定された定数である。なお、Hconstは、0より大きい定数であってもよい。
【0129】
非考慮モードの着地判定条件が式(2)で示される条件である場合、着地判定のための高さ閾値(第2の高さ閾値)は、「-HOpenClose+Hconst」である。すなわち、第2の高さ閾値は、ハンマグラブ10の開閉に必要なワイヤロープ長(HOpenClose)にマイナスの符号をつけた値に定数「Hconst」を足した値である。また、着地判定のための荷重閾値(第2の荷重閾値)は、「β2Whammer」である。すなわち、第2の荷重閾値は、ハンマグラブ10の重さ(Whammer)に定数β2をかけた値である。なお、定数β2は、定数β1と異なる値であってもよく、同じ値であってもよい。
【0130】
ステップS17において、コントローラ101は、ハンマグラブ高さ(H
hammer)が第2の高さ閾値よりも小さいという条件である第2の高さ条件が満たされるか否かを判定するとともに、現在の荷重値(W
sensing)が第2の荷重閾値よりも小さいという条件である第2の荷重条件が満たされるか否かを判定する。コントローラ101は、第2の高さ条件が満たされ、かつ、第2の荷重条件が満たされた場合(ステップS17においてYES)、ハンマグラブ10が着地したと判定し、ステップS18の処理(後述のブレーキ制御)を行う。一方、コントローラ101は、第2の高さ条件及び第2の荷重条件の少なくとも一方が満たされない場合(ステップS17においてNO)、ステップS18の処理(ブレーキ制御)を行わない。コントローラ101は、第2の高さ条件及び第2の荷重条件の少なくとも一方が満たされない場合(ステップS17においてNO)、
図4に示すフローチャートの処理(例えばステップS13以降の処理)を制御周期ごとに呼び出して実行する。
【0131】
着地判定条件が満たされた場合(ステップS15においてYES又はステップS17においてYES)、コントローラ101は、ブレーキ制御を行う(ステップS18)。すなわち、コントローラ101は、ハンマグラブ10が着地したと判定すると、主巻ドラムDR1の回転を停止させるためのブレーキ制御を行う。本実施形態では、コントローラ101がハンマグラブ10の着地判定だけでなく主巻ドラムDR1の回転を停止させるためのブレーキ制御も行うので、ハンマグラブ10の着地後にワイヤロープが主巻ドラムDR1から過剰に繰り出される状態である過繰り出しが生じることを抑制しつつ、オペレータの負担をさらに軽減することができる。
【0132】
具体的には、コントローラ101は、モード切換弁66のスプールを比例弁油路形成位置(
図2の左側位置)に配置するための指令をモード切換弁66に出力し、ブレーキ系統切換弁65のスプールをブレーキ制御比例弁油路形成位置(
図2の下側位置)に配置するための指令をブレーキ系統切換弁65に出力する。そして、コントローラ101は、主巻ドラムDR1の回転に対してフルブレーキがかかるような主巻ブレーキ指令(指令電流値)を主巻ブレーキ制御比例弁62に入力する。これにより、ハンマグラブ10が底部12に着地した直後に主巻クラッチブレーキ48において大きなブレーキ力が発生し、主巻ワイヤロープR1が主巻ドラムDR1から余分に繰り出されることが抑制される。
【0133】
次に、水考慮モードの着地判定及び非考慮モードの着地判定について、
図5及び
図6を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0134】
図5は、ケーシング11内における水を考慮する必要がない場合、すなわち、着地判定のモードが非考慮モードに設定されている場合の掘削作業におけるハンマグラブ高さ及び荷重値の経時変化の一例を示す図である。
図5の(a)~(e)に示す具体例では、ケーシング11内には水が溜まっていない。
【0135】
図5において、時間t0の時点では、ハンマグラブ10は、ケーシング11内において底部に接地しており、荷重値検出器108により検出される荷重値は、ゼロ又はそれに近い値である。この時間t0の時点から主巻ワイヤロープR1が主巻ドラムDR1に巻き取られることによって主巻ワイヤロープR1が巻き上げられると、コントローラ101は、荷重値が増加する荷重値変化に基づいて地離れ高さを決定する。本実施形態では、コントローラ101は、前記荷重値変化に基づいて決定される地離れ高さを原点(ゼロ点)に設定する。本実施形態では、コントローラ101は、次回の掘削作業を行う前に、前記荷重値変化に基づいて原点を更新する。
図5の上側のグラフにおいてハンマグラブ高さの原点は、グラフの縦軸と横軸の交点に対応する高さ位置である。
【0136】
具体的には、掘削作業において、ハンマグラブ10は、グラブ10Bが開いた状態(開状態)でケーシング11内を落下するので、掘削作業が完了してハンマグラブ10が底部12に接地しているとき(例えば
図5における時間t0)には、グラブ10Bは
図5の(a)に示すように開いた状態(開状態)である。また、この時間t0の時点では、ハンマグラブ10を吊り下げる主巻ワイヤロープR1には多少の弛みがある。この時間t0の時点から、主巻ワイヤロープR1の巻き上げが開始されると、主巻ワイヤロープR1の弛み量が次第に少なくなる。主巻ワイヤロープR1の弛みがなくなった状態で主巻ワイヤロープR1がさらに巻き上げられると、
図5の(b)に示すようにハンマグラブ10が接地した状態が維持されながらグラブ10Bが閉じる。これにより、グラブ10Bに土砂が保持される。そして、主巻ワイヤロープR1がさらに巻き上げられると、ハンマグラブ10が
図5の(c)に示すように地離れすることにより、時間t1において荷重値が増加する又は急増する。本実施形態では、コントローラ101は、この時間t1の時点においてハンマグラブ10が地離れしたと判定する。
【0137】
コントローラ101は、地離れ高さ(原点)を基準とし、ドラム回転検出器102により検出される回転量を用いてハンマグラブ高さを逐次演算する。ハンマグラブ10が地離れ高さ(原点)よりも上方に配置されているときには、ハンマグラブ高さはゼロより大きな正の値となる。本実施形態では、コントローラ101は、ドラム回転検出器102により検出される主巻ドラムDR1の回転量を用いてハンマグラブ高さを演算するので、ハンマグラブ高さは、負の値を取り得る。ハンマグラブ10が底部12に接地しているときにハンマグラブ高さが負の値である場合には、ワイヤロープが前記負の値の絶対値の大きさに相当する分だけ弛んでいることを意味する。
【0138】
ハンマグラブ10が時間t1の時点で地離れした後、主巻ワイヤロープR1がさらに巻き上げられ、時間t2の時点において、ハンマグラブ10は、ケーシング11から取り出される。ハンマグラブ10が土砂を保持している場合には、次回の掘削作業の前に、排土作業が行われる。この排土作業は、ハンマグラブ10が保持する土砂を、ケーシング11の外の所定の場所にハンマグラブ10から排出する作業である。この排土作業では、上部旋回体202の旋回動作が行われるので、排土作業における旋回角度(下部体201に対する上部旋回体202の旋回角度)は、掘削作業における旋回角度とは異なる。また、排土作業では、上部旋回体202の旋回動作と起伏部材204の起伏動作とが行われる場合もあり、この場合、排土作業における旋回角度及び起伏角度(上部旋回体202に対する起伏部材204の起伏角度)は、掘削作業における旋回角度及び起伏角度とは異なる。
【0139】
排土作業が完了すると、次回の掘削作業のために、ハンマグラブ10がケーシング11に対応する位置に再び配置されるように起伏部材204の起伏角度及び上部旋回体202の旋回角度が調節される。次回の掘削作業の開始時点では、ハンマグラブ10の少なくとも一部は、ケーシング11の内部に配置されていることが好ましい。次回の掘削作業は、
図5の具体例では、時間t3の時点で開始される。
【0140】
この掘削作業において、ハンマグラブ10は、時間t3の時点で落下(例えば自由落下)を開始し、
図5の(d)に示すようにケーシング11内を落下しながら底部12に接近し、時間t5の時点で
図5の(e)に示すように底部12に着地する。
【0141】
着地判定のモードが非考慮モードに設定されている場合、掘削作業においてケーシング11内を落下するハンマグラブ10は底部12に着地するまでの間に水の抵抗を受けない又はほとんど受けないので、底部12に着地する直前のハンマグラブ10の落下速度は、比較的大きくなる。この場合、
図5の下側のグラフの時間t5から時間t6までの時間帯における荷重値変化に示されているように、ハンマグラブ10が着地する直前とハンマグラブ10が着地した直後の荷重値の変化量は大きくなるので、荷重値検出器108が検出する荷重値はハンマグラブ10の着地を判定するための主たる指標として有用であり、従って、コントローラ101は、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記荷重値を用いて適切に判定することができる。
【0142】
コントローラ101は、ハンマグラブ10が着地したと判定すると、主巻ドラムDR1の回転を停止させるためのブレーキ制御、具体的には、主巻ドラムDR1に対してフルブレーキをかけて主巻ドラムDR1の回転が停止するようなブレーキ制御を行う。その結果、時間t6の時点で主巻ドラムDR1の回転が停止し、掘削作業が完了する。これにより、ハンマグラブ10が着地した後に主巻ドラムDR1から主巻ワイヤロープR1が繰り出される時間は、時間t5から時間t6までの短時間に抑えられるので、ハンマグラブ10の着地後に主巻ワイヤロープR1が主巻ドラムDR1から過剰に繰り出される状態である過繰り出しが生じることを抑制することができる。しかも、オペレータは、ハンマグラブ10の着地後にブレーキ操作を行う必要がないので、オペレータの負担が軽減される。
【0143】
掘削作業においてハンマグラブ10が落下を開始する時間t3の時点からハンマグラブ10が着地する時間t5の時点までの時間帯のうち、落下開始直後の時間帯には、
図5の下側のグラフに示すように、荷重値検出器108により検出される荷重値が一時的に減少する場合がある。
図5の具体例では、荷重値検出器108により検出される荷重値は、落下開始までは、ハンマグラブ10の重さに対応する値であるが、落下開始直後に一時的に減少した後、着地の前に再びハンマグラブ10の重さに対応する値又はそれに近い値まで増加し、その後、時間t5の時点でハンマグラブ10が底部12に着地することでゼロ又はそれに近い値まで減少している。
【0144】
従って、本実施形態では、コントローラ101は、着地判定においてケーシング11内における水を考慮しない場合には、着地判定の主たる指標として荷重値を用いるとともに着地判定の補助的な指標として高さ情報を用いてハンマグラブ10が着地したか否かを判定する。
【0145】
図5の上側のグラフに示すように、落下開始直後の時間帯は、ハンマグラブ10が比較的高い位置にある時間帯であり、言い換えると、ハンマグラブ高さと地離れ高さ(原点)との上下の距離が大きい時間帯である。従って、落下開始直後の時間帯において荷重値の一時的な減少が生じた場合であっても、コントローラ101は、その一時的な荷重値の減少と、ハンマグラブ10の着地に起因する荷重値の減少と、を前記高さ情報を用いて区別することができる。すなわち、補助的な指標としての高さ情報は、一時的な荷重値の減少を、着地判定の判断材料から排除することを目的とする。
【0146】
本実施形態では、第2の高さ閾値は、上述したように「-HOpenClose+Hconst」に設定されている。その理由は、次のとおりである。
【0147】
地離れ高さ(原点)の更新は、
図5の(b)及び(c)に示すようにハンマグラブ10のグラブ10Bが閉じた状態で行われる一方で、掘削作業においてハンマグラブ10が落下しているとき(
図5の(d))及びハンマグラブ10が着地するとき(
図5の(e))には、ハンマグラブ10のグラブ10Bは開いた状態である。本実施形態に係るハンマグラブ10は、グラブ10Bが閉じた状態から開いた状態に切り換わるためには、主巻ワイヤロープR1が所定の長さだけ主巻ドラムDR1から繰り出される必要がある。この所定の長さは、上述したハンマグラブ10の開閉に必要なワイヤロープ長(H
OpenClose)である。
図5の上側のグラフの縦軸の変数であるハンマグラブ高さは、ドラム回転検出器102により検出される主巻ドラムDR1の回転量を用いて演算される換算値である。従って、掘削作業においてハンマグラブ10が実際に着地するとき、すなわち、掘削作業においてハンマグラブ10が地離れ高さ(原点)に到達するときの主巻ドラムDR1の回転量は、掘削作業前における原点の更新時にハンマグラブ10が配置されていたときの主巻ドラムDR1の回転量よりも、ハンマグラブ10の開閉に必要なワイヤロープ長(H
OpenClose)の分だけ大きくなっている。従って、
図5の上側のグラフに示すように、グラブ10Bが開状態であるときに前記回転量を用いて演算されるハンマグラブ高さ(換算値)は、ハンマグラブ10の実際の高さ位置よりもワイヤロープ長(H
OpenClose)の分だけ小さい値になる。このため、
図5の上側のグラフに示すように、地離れ高さ(原点)からワイヤロープ長(H
OpenClose)を引いた高さ位置に前記換算値が対応するような時間t5の時点においてハンマグラブ10が着地する。
【0148】
上述したように、着地判定のモードが非考慮モードである場合、前記高さ情報は、ハンマグラブ10が実際に着地することを判定することを目的とするのではなく、落下開始直後の一時的な荷重値の減少を着地判定の判断材料から排除することを目的とする情報である。従って、着地判定のモードが非考慮モードである場合の第2の高さ閾値は、ハンマグラブ10が実際に底部12に着地するときの高さ位置である「-HOpenClose」ではなく、それよりも上方の位置「-HOpenClose+Hconst」に設定されている。すなわち、第2の高さ閾値は、第1の高さ閾値(-HOpenClose)よりも大きな値に設定されている。言い換えると、第2の高さ閾値に相当する高さ位置は、第1の高さ閾値に相当する高さ位置よりも上方に設定されており、底部12に対応する位置ではなく、底部12よりも上方の位置である。
【0149】
図5に示す具体例では、前記回転量を用いて換算されるハンマグラブ高さ「H
hammer」は、時間t4の時点において第2の高さ閾値「-H
OpenClose+H
const」未満になるが、落下開始直後の一次的な荷重値の減少は、時間t4よりも前の時間帯、すなわち、ハンマグラブ高さが第2の高さ閾値以上である時間帯で生じており、その後、荷重値は、ハンマグラブ高さが第2の高さ閾値未満になる前に、再びハンマグラブ10の重さに対応する値又はそれに近い値まで増加している。従って、コントローラ101は、ハンマグラブ高さが第2の高さ閾値よりも小さいという条件(第2の高さ条件)が満たされるか否かを判定するとともに、現在の荷重値(W
sensing)が第2の荷重閾値よりも小さいという条件(第2の荷重条件)が満たされるか否かを判定することで、落下開始直後の一時的な荷重値の減少を着地判定の判断材料から排除しつつ、ハンマグラブ10の着地を適切に判定することができる。
【0150】
図6は、ケーシング11内における水を考慮する必要がある場合、すなわち、着地判定のモードが水考慮モードに設定されている場合の掘削作業におけるハンマグラブ高さ及び荷重値の経時変化の一例を示す図である。
図6の(a)~(e)に示す具体例では、ケーシング11内には比較的多くの水が溜まっている。
【0151】
図6に示す水考慮モードにおいて次回の掘削作業の前に行われる地離れ高さ(原点)の更新手順は、
図5を参照しつつ説明した非考慮モードにおける更新手順と同様である。具体的には、
図6における時間t0の時点から主巻ワイヤロープR1が主巻ドラムDR1に巻き取られることによって主巻ワイヤロープR1が巻き上げられると、時間t11の時点で荷重値が増加する又は急増する。コントローラ101は、時間t11の時点においてハンマグラブ10が地離れしたと判定する。コントローラ101は、前記荷重値変化に基づいて決定される地離れ高さを原点(ゼロ点)に設定する。
図6の上側のグラフにおいてハンマグラブ高さの原点は、グラフの縦軸と横軸の交点に対応する高さ位置である。
【0152】
ハンマグラブ10が時間t11の時点で地離れした後、主巻ワイヤロープR1がさらに巻き上げられ、時間t12の時点において、ハンマグラブ10は、ケーシング11から取り出される。ハンマグラブ10が土砂を保持している場合には、次回の掘削作業の前に、排土作業が行われる。なお、時間t11から時間t12までの時間帯の前半において、荷重値検出器108により検出される荷重値がハンマグラブ10の重さに対応する荷重値よりも大きい理由は、ハンマグラブ10が水中を上昇しているときに水から抵抗を受けるからである。従って、時間t11から時間t12までの時間帯の後半においてハンマグラブ10が水中から空気中に出ると、荷重値検出器108により検出される荷重値は、ハンマグラブ10の重さに対応する荷重値まで低下する。次回の掘削作業は、
図6の具体例では、時間t13の時点で開始される。
【0153】
この掘削作業において、ハンマグラブ10は、時間t13の時点で落下(例えば自由落下)を開始し、時間t14の時点で着水し、時間t14以降の時間帯では、
図6の(d)に示すようにケーシング11内において水中を落下しながら底部12に接近し、時間t15の時点で
図6の(e)に示すように底部12に着地する。
【0154】
コントローラ101は、ハンマグラブ10が着地したと判定すると、主巻ドラムDR1の回転を停止させるためのブレーキ制御、具体的には例えば、主巻ドラムDR1に対してフルブレーキをかけて主巻ドラムDR1の回転が停止するようなブレーキ制御を行い、その結果、時間t16の時点で主巻ドラムDR1の回転が停止し、掘削作業が完了する。これにより、ハンマグラブ10が着地した後に主巻ドラムDR1から主巻ワイヤロープR1が繰り出される時間は、時間t15から時間t16までの短時間に抑えられるので、ハンマグラブ10の着地後に主巻ワイヤロープR1が主巻ドラムDR1から過剰に繰り出される状態である過繰り出しが生じることを抑制することができる。しかも、オペレータは、ハンマグラブ10の着地後にブレーキ操作を行う必要がないので、オペレータの負担が軽減される。
【0155】
着地判定のモードが水考慮モードに設定されている場合には、掘削作業においてケーシング11内を落下するハンマグラブ10は、底部12に着地する前に着水して水中を降下し、底部12に着地するまでの間に水の抵抗を受け続けるので、底部12に着地する直前のハンマグラブ10の落下速度は、ケーシング11内に水がない場合又は水位が比較的低い場合に比べて、小さくなる。また、ハンマグラブ10が水中を落下するときにハンマグラブ10が水の抵抗を受けることで、荷重値検出器108により検出される荷重値は、ケーシング11内に水がない場合又は水位が比較的低い場合に比べて、小さくなる。この場合、
図6の下側のグラフにおける時間t14から時間t16までの時間帯の荷重値の変化に示されているように、ハンマグラブ10が着地する直前とハンマグラブ10が着地した直後の荷重値の変化量も小さくなるので、ハンマグラブ10の着地を判定するための主たる指標として、荷重値検出器108が検出する荷重値を用いることは好ましくない。
【0156】
一方、ハンマグラブ10の主要部を構成する部材は、通常、比重(水を基準とする比重)が1よりもかなり大きな金属などの材料を用いて形成されているので、ハンマグラブ10が水の抵抗を受けながら水中を降下する場合でも、ハンマグラブ高さは、
図6の上側のグラフに示すようにハンマグラブ10が着地するまで確実に減少する。従って、ケーシング11内に水が溜まっていてその水位が比較的高い場合には、ハンマグラブ高さに相関する高さ情報はハンマグラブ10の着地を判定するための主たる指標として有用であり、従って、コントローラ101は、ハンマグラブ10が着地したか否かを前記高さ情報を用いて適切に判定することができる。
【0157】
本実施形態では、第1の高さ閾値は、上述したように「-HOpenClose」に設定されている。第1の高さ閾値(-HOpenClose)は、第2の高さ閾値(-HOpenClose+Hconst)よりも小さな値に設定されている。第1の高さ閾値に相当する高さ位置は、第2の高さ閾値に相当する高さ位置よりも下方に設定されており、底部12に対応する位置である。その理由は、着地判定のモードが水考慮モードに設定されている場合には、ハンマグラブ高さ、すなわち、高さ情報が着地判定の主たる指標として用いられるからである。
【0158】
着地判定のモードが水考慮モードに設定されている場合も同様に、ハンマグラブ10のグラブ10Bが開状態であるときに前記回転量を用いて演算されるハンマグラブ高さ(換算値)は、ハンマグラブ10の実際の高さ位置よりもワイヤロープ長(H
OpenClose)の分だけ小さい値になる。このため、コントローラ101は、
図6の上側のグラフに示すように、地離れ高さ(原点)からワイヤロープ長(H
OpenClose)を引いた高さ位置(又は当該高さ位置未満)に前記換算値がなる時間t15の時点においてハンマグラブ10が着地したと判定する。
【0159】
なお、
図3におけるオペレータ設定109及び前回設定記憶値110の概要は次のとおりである。
【0160】
オペレータ設定109(オペレータ設定器)は、種々の設定を行い、設定された情報をコントローラ101に入力するように構成されていてもよい。種々の設定は、例えば、ハンマグラブ10が主巻ワイヤロープ及び補巻ワイヤロープの何れに接続されているかについての設定、ケーシング11の位置の設定(ケーシング11のトップ位置の高さ、旋回角度、起伏角度の設定など)、ハンマグラブ重さの設定、ワイヤロープ長(HOpenClose)の設定、水の有無の設定、水面の高さの設定、衝撃力調整機能設定(ハンマグラブが降下中にブレーキを作動させる機能の設定)、各機能のON・OFF設定(例えば、着地時ブレーキ制御などのアシスト制御をON・OFFするための設定)、ブザーレバー振動設定(音やレバー振動でオペレータに警告などをするための設定)のうちの一部又は全部を含んでいてもよい。コントローラ101は、オペレータ設定器から入力される情報に基づいて種々の制御を行ってもよい。
【0161】
前回設定記憶値110(前回設定記憶器)は、作業機械のキーオフ時にも上記の種々の設定を記憶しておくための記憶器であってもよい。コントローラ101は、キーオフがされたときに前回設定記憶器(例えば不揮発性のメモリー)に前記種々の設定を書き込み、次回のキーオン時に前回設定記憶器から前記種々の設定を読み込んで、種々の制御を行ってもよい。
【0162】
[変形例1]
次に、本実施形態の変形例1に係る掘削制御装置100について説明する。この変形例1では、コントローラ101は、前記旋回角度及び前記起伏角度が掘削作業において許容される作業許容範囲に含まれるか否かを判定する。ハンマグラブ10はワイヤロープ(主巻ワイヤロープR1)を介して起伏部材204に支持されるので、旋回角度及び起伏角度は、ハンマグラブ10の位置に相関する。従って、この変形例1では、コントローラ101は、ハンマグラブ10が掘削作業に適した位置、すなわち、ハンマグラブ10がケーシング11に対応する位置に配置されているか否かを、旋回角度と起伏角度を用いて間接的に判定することができる。
【0163】
具体的には、掘削制御装置100は、オペレータによる入力を受ける基準入力器92(
図2参照)をさらに備えていてもよい。基準入力器92は、オペレータによる入力(例えばスイッチ操作)を受けると、当該入力に対応する信号をコントローラ101に入力する。コントローラ101は、基準入力器92から信号が入力されると、その時点における旋回角度を基準旋回角度として記憶するとともに、その時点における起伏角度を基準起伏角度として記憶する。具体的には例えば、オペレータは、ハンマグラブ10が掘削作業に適した位置に配置されているときに、基準入力器92に対する入力を行う。掘削作業に適したハンマグラブ10の位置としては、例えば、ハンマグラブ10の少なくとも一部がケーシング11内に配置されるような位置であってもよい。
【0164】
図7は、変形例1に係る掘削制御装置100のコントローラ101が行う演算制御動作の一例を示すフローチャートである。この
図7に示すフローチャートは、ステップS21~S24の処理をさらに含む点で、
図4に示すフローチャートと異なる。
図7に示すフローチャートのステップS11~S18の処理は、
図4に示すフローチャートのステップS11~S18の処理と同じである。従って、以下では、主にステップS21~S24の処理について説明する。
【0165】
この変形例1では、ステップS21において、コントローラ101は、旋回角度及び起伏角度が作業許容範囲に含まれるか否かを判定する。具体的には、コントローラ101は、下記の式(3)に示すように、旋回角度検出器104から入力される実際の旋回角度(θsenkai)と基準旋回角度(θcasing)との差である旋回角度差が所定の旋回角度閾値(εθ)未満であるか否かを判定する。また、コントローラ101は、下記の式(4)に示すように、起伏角度検出器105から入力される実際の起伏角度(γboom)と基準起伏角度(γcasing)との差である起伏角度差が所定の起伏角度閾値(εγ)未満であるか否かを判定する。これにより、コントローラ101は、ケーシング11に対するハンマグラブ10の相対位置を、旋回角度及び起伏角度を用いて間接的に判定することができる。
【0166】
【0167】
【0168】
旋回角度差が旋回角度閾値未満であること、及び、起伏角度差が起伏角度閾値未満であることの両方が満たされる場合(ステップS21においてYES)、コントローラ101は、アシスト機能可能フラグを「ON」に設定する(ステップS22)。一方、旋回角度差が旋回角度閾値未満であること、及び、起伏角度差が起伏角度閾値未満であることの少なくとも一方が満たされない場合(ステップS21においてNO)、コントローラ101は、アシスト機能可能フラグを「OFF」に設定する(ステップS23)。
【0169】
ステップS24において、コントローラ101は、アシスト機能可能フラグがONであるか否かを判定する。アシスト機能可能フラグがONに設定されている場合(ステップS24においてYES)、コントローラ101は、ステップS13以降の処理を実行する。すなわち、コントローラ101は、旋回角度及び起伏角度が前記作業許容範囲に含まれる場合には、ステップS13-S18の処理(掘削作業の少なくとも一部の自動制御)を許容し、これらの処理を実行する。
【0170】
一方、アシスト機能可能フラグがOFFに設定されている場合(ステップS24においてNO)、コントローラ101は、ステップS13以降の処理を実行しない。すなわち、コントローラ101は、旋回角度及び起伏角度が前記作業許容範囲に含まれない場合には、ステップS13-S18の処理(前記自動制御)の実行を保留する制御(アシスト機能無効制御)を行う。
【0171】
[変形例2]
次に、本実施形態の変形例2に係る掘削制御装置100について説明する。この変形例2では、コントローラ101は、ハンマグラブ高さの初期値を算出するとともに、荷重値検出器108の遅れに関する特性(遅れ特性)を取得する。
【0172】
コントローラ101は、ハンマグラブ10の着地のタイミング、及び、ハンマグラブ10が底部12から離れる地離れのタイミングを、荷重値検出器108が取得する荷重値を用いてそれぞれ決定し、前記着地のタイミングにおけるハンマグラブ10の高さ位置の基準高さ位置に対する相対位置と、前記地離れのタイミングにおけるハンマグラブ10の高さ位置の基準高さ位置に対する相対位置と、ハンマグラブ10の高さの変化速度(ハンマグラブ10の移動速度)と、を用いて、ハンマグラブ10の高さの初期値と、荷重値検出器108の遅れに関する特性と、を取得する。具体的には以下のとおりである。
【0173】
図8は、ハンマグラブ高さの初期値及び荷重値検出器108の遅れ特性を取得する手法を説明するための模式図である。この手法では、ハンマグラブ10の着地とハンマグラブ10の地離れが繰り返し行われ、着地のタイミングと地離れのタイミングが荷重値検出器108で読み取られ、コントローラ101は、各タイミングにおける揚程値を演算し、演算された複数の揚程値を用いて、ハンマグラブ高さの初期値及び荷重値検出器108の遅れ特性を推定する。ハンマグラブ10の着地と地離れは、コントローラ101によって自動で行われてもよく、オペレータのレバー操作によって手動で行われてもよい。前記揚程値は、所定の基準高さ位置に対するハンマグラブ10の高さ位置の相対位置を表す値(例えば、基準高さ位置とハンマグラブ10の高さ位置との差)である。前記基準高さ位置は、当該手法が実行される前に予め決められる基準であり、例えば地面の高さ位置(グラウンドレベル)であってもよく、他の高さ位置であってもよい。具体的には例えば、前記基準高さ位置は、例えば、起伏部材の起伏角度(ブームの起伏角度)が特定の角度で、かつ、上部旋回体の旋回角度が特定の角度であるときの特定部位の位置であってもよい。特定部位は、例えば、起伏部材の先端部(ブームの先端部)であってもよく、起伏部材の他の部位であってもよい。
【0174】
なお、当該手法では、着地と地離れが同じ高さ位置で発生し、荷重値検出器108の遅れがハンマグラブ10の速さ変化に比べて小さくばらつきも小さい、という仮定のもとで、コントローラ101は、一例として最小二乗法を用いてハンマグラブ高さの初期値及び荷重値検出器108の遅れ特性を演算する。
【0175】
ここで、後述する数式に含まれる「x*」は、真の着地のタイミングにおける揚程値又は真の地離れのタイミングにおける揚程値であり、「x」は、コントローラ101がハンマグラブ10の着地又は地離れを認識した時点における揚程値であり、「v」は、コントローラ101が着地又は地離れを認識した時点におけるハンマグラブ10の速さであり、「Δt」は、荷重値検出器108の遅れである。荷重値検出器108の遅れΔtの単位は時間である。荷重値検出器108の遅れに起因して、
図8において破線で示される真の着地又は地離れのタイミングに対して、コントローラ101が着地又は地離れを認識するタイミング(
図8において実線で示されるタイミング)が後にずれる。
【0176】
以上のことを前提とすると、次の式(5)が成り立つ。ここでは、上方向を座標系の正の方向とするが、下方向を座標系の正の方向としても同じ式が成り立つ。
【0177】
【0178】
また、着地と地離れの2つのパターンがあり、繰り返し回数をN回とすると、次の式(6)が成り立つ。なお、「x」及び「v」のそれぞれに付された添え字のうち、「i=1」が地離れを意味し、「i=2」が着地を意味し、「j」は、繰り返し回数がj回目であることを示す(「i=1,2」、「J=1,2,・・・,N」)。
【0179】
【0180】
従って、「x*」、「Δt」を定めたときの誤差の二乗和Seは、次の式(7)により表される。
【0181】
【0182】
最小二乗解は、次の式(8)から求められる。
【0183】
【0184】
「x*」は、次の式(9)により表されれ、「Δt」は、次の式(10)により表される。
【0185】
【0186】
【0187】
なお、式(9)及び式(10)における「D」は、次の式(11)で表される値である。
【0188】
【0189】
この変形例2では、コントローラ101は、ハンマグラブ10の高さの初期値及び荷重値検出器108の遅れに関する特性を取得することができる。また、コントローラ101は、荷重値検出器108の遅れに関する特性を考慮してハンマグラブ10の高さをより正確に演算することができる。なお、この変形例2においてハンマグラブ高さの初期値は、1回目の掘削作業における原点として使用される。また、この変形例2において取得される荷重値検出器108の遅れは、その後の掘削作業において、当該遅れの分だけ検出のタイミングを補正するために使用される。
【0190】
[変形例3]
上記の変形例2では、コントローラ101は、上記の式(5)~式(11)を用いて、ハンマグラブ高さの初期値「x*」(すなわち、真の着地のタイミングにおける揚程値及び/又は真の地離れのタイミングにおける揚程値)を算出するとともに、荷重値検出器108の遅れに関する特性「Δt」を取得するが、以下に説明する変形例3のように、コントローラ101は、変形例2と同様の手法を用いて、ワイヤロープ長に起因する誤差(ΔH)と、荷重値検出器108の遅れ(Δt)と、を取得することもできる。具体的には以下のとおりである。
【0191】
この変形例3では、コントローラ101は、ハンマグラブ10の着地のタイミング、及び、ハンマグラブ10が底部12から離れる地離れのタイミングを、荷重値検出器108が取得する荷重値を用いてそれぞれ決定し、前記着地のタイミングにおける前記ハンマグラブ10の高さ位置の基準高さ位置に対する相対位置と、前記地離れのタイミングにおける前記ハンマグラブの高さ位置の前記基準高さ位置に対する相対位置と、ハンマグラブ10の高さの変化速度と、を用いて、ワイヤロープ長に起因する誤差ΔHと、荷重値検出器108の遅れΔtと、を取得する。誤差ΔHは、例えば、ハンマグラブ10の開閉に必要なワイヤロープ長(HOpenClose)に起因する誤差であってもよい。
【0192】
ワイヤロープ長に起因する誤差ΔHと荷重値検出器108の遅れΔtとを考慮した場合、真の着地又は地離れのタイミングと、コントローラ101がハンマグラブ10の着地又は地離れを認識したタイミングと、の誤差Δxは、ΔHとΔtを用いて下記の式(12)のように表される。
【0193】
Δx=ΔH+vΔt ・・・(12)
ここで、「v」は、コントローラ101が着地又は地離れを認識した時点におけるハンマグラブ10の速さである。
【0194】
この式(12)は、次の式(13)のように書き換えることが可能である。
ΔH=Δx-vΔt ・・・(13)
【0195】
式(13)は、変形例2において説明した式(5)及び式(6)と同じ形をしている。従って、コントローラ101は、変形例2において一例として挙げた最小二乗法を用いて(具体的には式(7)~式(11)を用いて)、ワイヤロープ長に起因する誤差(ΔH)と、荷重値検出器108の遅れ(Δt)と、を取得することができる。すなわち、この変形例3では、変形例2における式(7)~式(11)において、「x*」が「ΔH」に置き換えられるとともに、「x」が「Δx」に置き換えられて、変形例2と同様の演算が行われる。
【0196】
この変形例3では、コントローラ101は、毎回の掘削作業の中で、上記の式(5)~式(11)の演算を行うことでワイヤロープ長に起因する誤差(ΔH)と、荷重値検出器108の遅れ(Δt)と、を取得し、取得された誤差(ΔH)と荷重値検出器108の遅れ(Δt)とを用いて、荷重値検出器108による検出の誤差を補正してもよい。
【0197】
なお、上記の変形例2及び変形例3では、最小二乗法を用いた演算手法を例に挙げて説明したが、この最小二乗法に代えて、又は、最小二乗法とともに、適応信号処理アルゴリズムの手法が用いられてもよい。
【0198】
[変形例4]
次に、本実施形態の変形例4に係る掘削制御装置100について説明する。この変形例4では、コントローラ101は、前記着地判定においてケーシング11内における水を考慮する場合には、ハンマグラブ10が水中を落下するときに主巻ワイヤロープR1の弛みが生じることが抑制されるように主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節する制御(水中速度制御)を行う。具体的には例えば、コントローラ101は、ハンマグラブ10の落下中におけるワイヤロープの弛みの状態が所定の弛み許容範囲内に含まれるように前記主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節する制御を行ってもよい。コントローラ101は、ハンマグラブ10の落下中における主巻ワイヤロープR1の弛みの状態を、荷重値検出器108から入力される荷重値を用いて判定してもよい。この場合、シミュレーション、実験などが行われることにより取得された荷重値と弛みの状態との関係を用いて、コントローラ101は、ハンマグラブ10の落下中における主巻ワイヤロープR1の弛みの状態を判定してもよい。
【0199】
着地判定においてケーシング11内における水を考慮する必要がある場合、例えば、ケーシング11内に水が溜まっていてその水位が比較的高い場合には、掘削作業においてケーシング11内を落下するハンマグラブ10は、底部12に着地する前に着水して水中を降下し、底部12に着地するまでの間に水の抵抗を受ける。従って、主巻ドラムDR1から繰り出される主巻ワイヤロープR1の繰り出し速度よりもハンマグラブ10の落下速度が小さくなると、ハンマグラブ10の落下中にワイヤロープに弛みが生じる場合がある。一方、ワイヤロープの弛みの状態が所定の弛み許容範囲内に含まれるように主巻ドラムDR1に対するブレーキ力をコントローラ101が調節する場合には、コントローラ101は、前記回転量を用いてハンマグラブ10の高さをより正確に演算することができ、これにより、ハンマグラブ10が着地したか否かをより適切に判定することができる。
【0200】
この変形例4では、制御状態が水中速度制御状態である場合、コントローラ101は、ワイヤロープの弛みの状態が所定の弛み許容範囲内に含まれるように主巻ブレーキ指令を主巻ブレーキ制御比例弁62に入力する。これにより、主巻ドラムDR1から繰り出される主巻ワイヤロープR1の繰り出し速度とハンマグラブ10の落下速度とのバランスが適度に調節される。
【0201】
[変形例5]
次に、本実施形態の変形例5に係る掘削制御装置100について説明する。この変形例5では、コントローラ101は、前記着地判定においてケーシング11内における水を考慮しない場合には、ハンマグラブ10の落下速度が所定の速度許容範囲内に含まれるように主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節する制御(衝撃力調整制御)を行う。この変形例5では、例えば、掘削作業においてハンマグラブ10の落下距離が長く落下速度が大きくなりやすい場合であっても、ハンマグラブ10の落下速度が過度に大きくなることを抑制できるので、ハンマグラブ10が着地するときの衝撃に起因するハンマグラブ10の破損を抑制できる。
【0202】
この変形例5では、制御状態が衝撃力調整状態である場合、コントローラ101は、ハンマグラブ10の落下速度が所定の速度許容範囲内に含まれるように主巻ブレーキ指令を主巻ブレーキ制御比例弁62に入力する。これにより、ハンマグラブ10の落下速度が過度に大きくなることが抑制される。
【0203】
[他の変形例]
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような形態を含む。
【0204】
(A)着地判定指標について
ケーシング内における水を考慮する必要がある場合(着地判定のモードが水考慮モードに設定されている場合)、コントローラは、ハンマグラブが着地したか否かを、荷重値を用いずに高さ情報を用いて判定してもよい。また、ケーシング内における水を考慮する必要がない場合(着地判定のモードが非考慮モードに設定されている場合)、コントローラは、ハンマグラブが着地したか否かを、高さ情報を用いずに荷重値を用いて判定してもよい。
【0205】
(B)高さ検出器について
前記実施形態では、高さ検出器は、ハンマグラブ10の高さに相関するウインチドラムの回転量を検出するドラム回転検出器102を含む。ただし、高さ検出器は、ハンマグラブの高さに相関する高さ情報を取得することができるものであればよく、ドラム回転検出器102に限られない。
【0206】
(C)掘削機械(クレーン)の仕様について
図1に示す前記実施形態に係る掘削機械は、ジブ及びストラットを備えていないが、掘削機械の仕様は、
図1に示すものに限定されない。本開示に係る掘削機械は、ジブ、フロントストラット及びリヤストラットを備えるラッフィングクレーンであってもよく、ジブ及び1つのストラットを備える固定ジブ仕様のクレーンであってもよい。また、本開示に係る掘削機械は、ガントリではなくマストを備えるクレーン(例えば大型のクレーン)であってもよい。また、本開示に係る掘削機械は、伸縮式ブームを備えたクレーンであってもよい。伸縮式ブームを備えたクレーンとしては、例えば、タイヤを備えたラフテレーンクレーン、クローラを備えたテレスコピックブームクローラクレーンなどを挙げることができる。
【0207】
(D)操作器について
本開示に係る操作器は、主巻ウインチ及び補巻ウインチの種類及びその駆動装置によって適宜選定すればよい。例えば、
図2及び
図3に示される主巻ウインチ操作器51の主巻レバー入力検出器51B、及び補巻ウインチ操作器53の補巻レバー入力検出器53Bのそれぞれが、レバー操作に応じたパイロット圧を出力するリモコン弁と、このリモコン弁の2次圧を検出する圧力センサと、により構成されていてもよい。
【0208】
(E)ウインチについて
本開示に係る主巻ウインチ及び補巻ウインチは、例えば電動ウインチであってもよい。この場合、
図1に示す油圧回路は、当該電動ウインチを駆動する電気回路(例えばインバータを含む回路)に置換されることが可能である。
【0209】
(F)主巻と補巻について
前記実施形態では、ハンマグラブ10の胴体10A及びグラブ10Bは、主巻ドラムDR1から繰り出される主巻ワイヤロープR1に吊り下げされているが、補巻ドラムDR2から繰り出される補巻ワイヤロープR2に吊り下げられてもよい。この場合、ハンマグラブ10のクラウン10Cは、主巻ワイヤロープR1に吊り下げられる。すなわち、本開示に係る掘削制御装置は、前記実施形態において「主巻」に関する構成要素が担う機能を「補巻」に関する構成要素が担うような変形例も含む。
【0210】
(G)着水速度制御
コントローラ101は、着水時の衝撃を緩和するための着水速度制御をさらに行ってもよい。具体的には例えば、コントローラ101は、着地判定のモードが水考慮モードである場合、ハンマグラブ10の落下速度が所定の着水速度許容範囲内に含まれるように主巻ドラムDR1に対するブレーキ力を調節する制御(衝撃力調整制御)を行う。
【符号の説明】
【0211】
10 :ハンマグラブ
10B :グラブ
11 :ケーシング
12 :底部
100 :掘削制御装置
101 :コントローラ
102 :ドラム回転検出器
102A :主巻回転センサ
104 :旋回角度検出器
105 :起伏角度検出器
107 :モニタスイッチ
108 :荷重値検出器
200 :掘削機械
201 :下部体
202 :上部旋回体
204 :起伏部材
DR1 :主巻ドラム(本開示におけるウインチドラム)
R1 :主巻ワイヤロープ(本開示におけるワイヤロープ)