IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東急建設株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社計測リサーチコンサルタントの特許一覧

<>
  • 特開-コンクリート打設管理支援装置 図1
  • 特開-コンクリート打設管理支援装置 図2
  • 特開-コンクリート打設管理支援装置 図3
  • 特開-コンクリート打設管理支援装置 図4
  • 特開-コンクリート打設管理支援装置 図5
  • 特開-コンクリート打設管理支援装置 図6
  • 特開-コンクリート打設管理支援装置 図7
  • 特開-コンクリート打設管理支援装置 図8
  • 特開-コンクリート打設管理支援装置 図9
  • 特開-コンクリート打設管理支援装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007267
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】コンクリート打設管理支援装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20250109BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20250109BHJP
   G16Y 10/30 20200101ALI20250109BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20250109BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20250109BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E04G21/02 ESW
G06Q50/08
G16Y10/30
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108548
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591248223
【氏名又は名称】株式会社計測リサーチコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 欣昌
(72)【発明者】
【氏名】作田 大幸
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 美佳
(72)【発明者】
【氏名】金子 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】梅本 秀二
(72)【発明者】
【氏名】大町 正和
【テーマコード(参考)】
2E172
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172DD00
2E172FA12
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】施工中のコンクリートの締固め状況をリアルタイムで容易に視認することが可能になるコンクリート打設管理支援装置を提供する。
【解決手段】場所打ちコンクリートの打設管理を行うためのコンクリート打設管理支援装置1である。
そして、バイブレータBの位置特定をするためのマーカ22の3次元座標を時刻とともに計測する基準点計測部と、コンクリートの上面高さを時刻とともに計測するコンクリート計測部と、バイブレータの締固め時間取得部と、基準点計測部、コンクリート計測部及び締固め時間取得部の計測結果に基づいて締固め範囲を特定する締固め範囲特定部と、コンクリートの上面高さに基づいて打重ね時間を管理する打重ね管理部と、締固め範囲及び打重ね時間に関する表示をする表示端末4とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ちコンクリートの打設管理を行うためのコンクリート打設管理支援装置であって、
打設されたコンクリートの締固めに使用されるバイブレータの位置特定をするための基準点の3次元座標を時刻とともに計測する基準点計測部と、
前記基準点との位置関係が特定可能な位置から前記コンクリートの上面高さを時刻とともに計測するコンクリート計測部と、
前記バイブレータによる締固めとして管理される開始時刻及び終了時刻を取得する締固め時間取得部と、
前記基準点計測部、前記コンクリート計測部及び前記締固め時間取得部の計測結果に基づいて前記コンクリートの締固め範囲を特定する締固め範囲特定部と、
前記コンクリート計測部によって計測される前記上面高さに基づいて打重ね時間を管理する打重ね管理部と、
前記締固め範囲及び前記打重ね時間に関する表示をする表示部とを備え、
前記表示部によって、上下に打重ねられた前記コンクリートの前記締固め範囲の重なる領域が視認可能となるとともに、前記打重ね時間を反映させた表示が可能であることを特徴とするコンクリート打設管理支援装置。
【請求項2】
前記表示部では、前記コンクリートの打設後の経過時間の長さに応じて表示形態を変化させるとともに、前記打重ね時間の特定によって前記表示形態の変化が停止することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打設管理支援装置。
【請求項3】
前記表示部では、上層と下層のうちの少なくとも1つの層の前記コンクリートの前記締固め範囲が透過される表示形態によって前記締固め範囲の重なる領域が表示されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート打設管理支援装置。
【請求項4】
前記基準点は、前記バイブレータのケーブルに対して取り付けられたマーカであって、前記基準点計測部では、前記マーカを複数のビデオカメラで撮影することによって前記3次元座標の計測を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート打設管理支援装置。
【請求項5】
前記コンクリート計測部は、前記基準点より所定の距離だけ下方に取り付けられたレーザー距離計であることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート打設管理支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちコンクリートの打設管理を行うためのコンクリート打設管理支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を構築するに際して、鉛直方向に複数回に分けてコンクリートを打設することがある。型枠などで囲まれたコンクリートの打設範囲に打ち込まれたコンクリートは、バイブレータによって所定の時間の締固めを行わなければならないうえに、打設後から所定の時間(以下、「許容打重ね時間」という。)内に、上方にコンクリートを打重ねていかなければならない。
【0003】
バイブレータによる締固めが不充分な場合、コンクリートの打設の際に巻き込まれた気泡などが内部に残って、コンクリートの密実性を低下させたりジャンカを発生させたりする原因になる。
【0004】
また、上下にコンクリートを打重ねる際には、下層のコンクリートが硬化する前に上層のコンクリートを打重ねる必要があり、上層のコンクリート打設時刻と下層のコンクリート打設時刻との差であるコンクリートの打重ね時間間隔(以下、「打重ね時間」という。)が所定時間より長くなると、コールドジョイントを発生させることにもなる。
【0005】
そこで、コンクリートの打設管理を支援するために、様々な技術が開発されている。例えば特許文献1には、適正な締固めを行うことで高品質のコンクリートを得ることができるようにするためのコンクリート打設管理システムが開示されている。また、特許文献2,3には、打重ねまでの打重ね時間を正確に管理するためのコンクリートの打設管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-124110号公報
【特許文献2】特開2018-35628号公報
【特許文献3】特開2011-202383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コンクリートの締固めと打重ねの管理は、いずれも重要な管理項目であり、一つのシステムで管理できることが望ましい。また、コンクリートの打設作業を行う作業員や管理者が、容易に確認できる表示が望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、施工中のコンクリートの状態をリアルタイムで容易に視認することが可能になるコンクリート打設管理支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のコンクリート打設管理支援装置は、場所打ちコンクリートの打設管理を行うためのコンクリート打設管理支援装置であって、打設されたコンクリートの締固めに使用されるバイブレータの位置特定をするための基準点の3次元座標を時刻とともに計測する基準点計測部と、前記基準点との位置関係が特定可能な位置から前記コンクリートの上面高さを時刻とともに計測するコンクリート計測部と、前記バイブレータによる締固めとして管理される開始時刻及び終了時刻を取得する締固め時間取得部と、前記基準点計測部、前記コンクリート計測部及び前記締固め時間取得部の計測結果に基づいて前記コンクリートの締固め範囲を特定する締固め範囲特定部と、前記コンクリート計測部によって計測される前記上面高さに基づいて打重ね時間を管理する打重ね管理部と、前記締固め範囲及び前記打重ね時間に関する表示をする表示部とを備え、前記表示部によって、上下に打重ねられた前記コンクリートの前記締固め範囲の重なる領域が視認可能となるとともに、前記打重ね時間を反映させた表示が可能であることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記表示部では、前記コンクリートの打設後の経過時間の長さに応じて表示形態を変化させるとともに、前記打重ね時間の特定によって前記表示形態の変化が停止する構成にすることができる。また、前記表示部では、上層と下層のうちの少なくとも1つの層の前記コンクリートの前記締固め範囲が透過される表示形態によって前記締固め範囲の重なる領域が表示される構成にすることもできる。
【0011】
また、前記基準点は、前記バイブレータのケーブルに対して取り付けられたマーカであって、前記基準点計測部では、前記マーカを複数のビデオカメラで撮影することによって前記3次元座標の計測を行う構成にすることができる。さらに、前記コンクリート計測部は、前記基準点より所定の距離だけ下方に取り付けられたレーザー距離計であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明のコンクリート打設管理支援装置は、コンクリートの上面高さを時刻とともに計測するコンクリート計測部と、バイブレータによる締固めの開始時刻及び終了時刻を取得する締固め時間取得部とを備えており、これらの計測結果に基づいてコンクリートの締固め範囲を特定することができる。また、打重ね管理部によって打重ね時間が管理される。
【0013】
そして、締固め範囲及び打重ね時間に関する表示をする表示部では、上下に打重ねられたコンクリートの締固め範囲の重なる領域が視認可能となるとともに、打重ね時間を反映させた表示ができる。このため、コンクリートの打設作業を行う作業員や管理者は、施工中のコンクリートの状態を、リアルタイムで容易に視覚によって確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態のコンクリート打設管理支援装置の構成を模式的に示した説明図である。
図2】コンクリートの上面高さの計測に関する説明図である。
図3】基準点の3次元座標の計測に関する説明図である。
図4】上下に打重ねられたコンクリートの締固め範囲の重なる領域を例示した説明図である。
図5】コンクリートの締固め範囲の説明図である。
図6図4の状態を側方から見た場合を例示した説明図である。
図7】打重ね時間を反映させた表示を例示した説明図である。
図8図7の状態を別の方向から見た場合の例示であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図9】コンクリートの締固め範囲の表示の例示であって、(a)は鳥観図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
図10】打重ね時間を反映させた表示の例示であって、(a)は鳥観図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態のコンクリート打設管理支援装置1の構成を模式的に示した説明図である。
【0016】
本実施の形態のコンクリート打設管理支援装置1は、型枠などによって囲まれた打設範囲Kにコンクリートを打設する際の施工管理に使用される。打設範囲Kには、鉛直方向(高さ方向)に複数回に分けて、生コンクリートが打ち込まれる。
【0017】
打設範囲Kに生コンクリートが1層分の高さまで打ち込まれると、バイブレータBによる締固めが行われる。締固めは、水平方向に締固め範囲の隙間ができないように実施される。そして、コンクリートの打設後から設定された時間が経過する前に、上層となる生コンクリートが打ち込まれる。そして、下層のコンクリートの打設後から上層のコンクリートが打設されるまでの時間が、打重ね時間となる。
【0018】
上層のコンクリートが打ち込まれた後は、下層のコンクリートのときと同様に締固めが行われることになるが、この際は、上下に打重ねられたコンクリートの締固め範囲の重なる領域(以下、「締固めラップ領域」とも言う。)ができるように締固めが行われる。
【0019】
本実施の形態のコンクリート打設管理支援装置1では、締固め範囲、締固めラップ領域及び打重ね時間が管理され、コンクリートの打設作業を行う作業員Mや施工管理者が、表示端末4などによって容易に確認することができるようになる。
【0020】
このような場所打ちコンクリートの打設管理を行うためのコンクリート打設管理支援装置1は、図1に示すように、基準点(22)の3次元座標を時刻とともに計測する基準点計測部(21)と、コンクリートの上面高さを時刻とともに計測するコンクリート計測部(3)と、各種演算制御を行う演算処理部11と、各種計測結果に基づく各種表示を行う表示部(4)とを備えている。
【0021】
基準点計測部は、打設されたコンクリートを締固めに使用されるバイブレータBの位置特定をするための基準点の3次元座標を計測することができる手段であれば、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System)のGNSSアンテナを使用した測位システム、あるいは超広帯域(UWB:Ultra-Wide Band)の無線通信技術を用いた測位システムなど、どのような構成であってもよい。
【0022】
本実施の形態では、GNSSアンテナを利用した測位システムに適した見通しのよい場所でなくても、精度よく基準点の座標を取得することができる基準点計測部について説明する。本実施の形態の基準点計測部では、基準点とするマーカ22を、複数のビデオカメラ21で撮影するモーションキャプチャによって得られたデジタルデータを使って測位を行う。
【0023】
マーカ22は、図2に示すように、バイブレータBに接続されるケーブルB1などに取り付けられる。この図では、バイブレータBの上方に鉛直に延びるケーブルB1の途中に固定金具32が取り付けられ、その固定金具32に固定された計測器31の上にマーカ22が取り付けられた状態を例示している。この固定金具32は、ケーブルB1の任意の位置に取り付けることができる。
【0024】
マーカ22には、再帰反射塗料が塗布された例えば球体を使用することができる。また、打設範囲Kの状況や、昼間や夜間といった計測時間に応じて、塗料が塗布されただけの球体マーカと自発光マーカとを使い分けることもできる。球体マーカの場合は、モーションキャプチャを行うカメラから赤外線を照射して、マーカが反射することで検知させる。自発光マーカの場合は、マーカ自体から赤外線が照射されるので、カメラからの赤外線照射の必要がなくなり、その分ノイズを減らすことができる。また、マーカ22とビデオカメラ21との距離が遠い場合は、大きな球体のマーカ22を使用することができる。自発光マーカの場合は、高出力のマーカにすることで検知しやすくできる。
【0025】
図3は、基準点となるマーカ22の3次元座標の計測に関する説明図である。バイブレータBの直上に配置されるマーカ22は、適宜、打設範囲K内で移動することになるため、基準点計測部を構成する複数のビデオカメラ21によって、打設範囲K内のすべてが死角なく撮影できるようにする。
【0026】
1つのマーカ22を三次元データ化するためには、異なる位置に設置された2台以上のビデオカメラ21があればよいが、コンクリートの施工現場では、作業員Mや資機材など、マーカ22の撮影に支障となるものが多く存在する。このため、例えば常に3台のビデオカメラ21からマーカ22を捕捉できるように、打設範囲Kの中心から円周方向にほぼ等間隔に6台、少なくとも4台のビデオカメラ21を設置する。
【0027】
また、ビデオカメラ21の位置は、マーカ22の移動範囲及び打設範囲Kを区切る型枠や作業員Mよりも高い位置とする。ビデオカメラ21には、例えばPrimeX13(商品名、130万画素、30-240fps、レンズ視野角56°)などが使用できる。
【0028】
マーカ22は、バイブレータBによって最下層のコンクリートの締固めを行っている際にもビデオカメラ21による撮影ができるように、バイブレータBに接続されるケーブルB1の途中に取り付けられる。
【0029】
図2に示すように、バイブレータBによってコンクリートの締固めを行う際には、ケーブルB1は真っすぐに立てられるので、バイブレータBの平面視(2次元)の位置は、マーカ22の平面視(2次元)の位置によって特定することができる。
【0030】
マーカ22は、施工中に移動を繰り返すバイブレータBとの位置関係が常に特定できるのであれば、どこに取り付けられていてもよいが、本実施の形態では、ケーブルB1に固定金具32を介して取り付けられた計測器31の上面にマーカ22を固定する。
【0031】
計測器31には、コンクリート上面Cの高さを計測するためのコンクリート計測部を構成するレーザー距離計3が搭載されている。レーザー距離計3は、下向きに照射されるレーザー光をコンクリート上面Cで反射させることによって、計測器31の下面とコンクリート上面Cとの距離D2(図2参照)を計測する。
【0032】
箱型の計測器31の内部には、レーザー距離計3の他に、データ処理部(図示省略)やバッテリーなどが格納されている。さらに、箱型の計測器31の表面には、締固めの管理の開始と終了の指示を行うためのスイッチ33を設けることができる。
【0033】
レーザー距離計3で距離D2が計測されると、計測された時刻とともにデータ処理部に一時的に保存され、その後、計測値及び時刻は、アンテナ311を介して外部に送信される。ここで、レーザー距離計3の基点となる計測器31の下面とマーカ22の中心との距離D3と、マーカ22の中心からバイブレータBの下端までの距離D1については、予めメジャーなどを使って測定しておく。
【0034】
そして、ビデオカメラ21を使ったモーションキャプチャによってマーカ22の鉛直座標(Z座標)が特定されると、コンクリート上面CのZ座標は、マーカ22のZ座標に距離(D3+D2)を減じることによって求めることができる。
【0035】
一方、バイブレータBの下端の鉛直座標(Z座標)は、マーカ22のZ座標に距離D1を減じることによって求めることができる。バイブレータBによるコンクリートの締固め範囲の高さ方向の領域(挿入深さ)は、バイブレータBの下端のZ座標とコンクリート上面CのZ座標とによって特定することができる。
【0036】
また、バイブレータBによるコンクリートの締固め範囲の横方向の領域は、バイブレータBを中心にした円柱形又は多角柱形の外縁によって特定することができる。例えば、バイブレータBの直径のn倍(例えば約10倍)の直径の円柱を、締固め範囲R1(図5参照)とすることができる。
【0037】
計測器31のアンテナ311から送信された計測値等の信号は、図1に示すように、演算処理部11に接続された通信部12で受信され、ノートパソコンなどのコンピュータ端末である演算処理部11で処理されることになる。演算処理部11は、ハードディスクやSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)などの記憶媒体を記憶部として備えている。
【0038】
演算処理部11では、コンクリート打設管理支援装置1において行われる演算の少なくとも一部が実行される。要するに、基準点計測部、コンクリート計測部、締固め時間取得部、締固め範囲特定部、打重ね管理部及び表示部において必要な演算処理については、計測器31や表示端末4などの各種機器内で行わせることもできるが、演算処理部11のコンピュータで実行させることもできる。
【0039】
基準点計測部では、基準点となるマーカ22の3次元座標をビデオカメラ21によって撮影された動画データを解析することによって取得し、その3次元座標が計測された時刻とともに演算処理部11の記憶部に保存される。
【0040】
コンクリート計測部では、マーカ22との位置関係が距離D3(図2参照)によって特定可能な位置に設けられたレーザー距離計3からコンクリート上面Cの高さを時刻とともに計測し、計測器31のアンテナ311によって送られたデータを、演算処理部11の記憶部に保存させる。例えば、打設範囲Kの平面を辺長2mm-10mm程度に細分化したグリッドを形成し、そのグリッドごとにコンクリート上面Cの高さが変化した時刻を、コンクリートの打設時刻として保存させる。
【0041】
締固め時間取得部では、バイブレータBによる締固めとして管理される開始時刻及び終了時刻を取得する。例えば、バイブレータBのスイッチを入れてコンクリートの締固めを行う位置に配置及び姿勢とした後に、計測器31のスイッチ33を入れた信号が演算処理部11に送られると、その時刻又はその時刻に所定の時間を加減した時刻が締固めの開始時刻として記憶部に保存される。また、計測器31のスイッチ33を切った時刻に基づいて、その時刻又はその時刻に所定の時間を加減した時刻が締固めの終了時刻として演算処理部11の記憶部に保存される。
【0042】
このため、締固め時間については、演算処理部11において締固め開始時刻と締固め終了時刻とから算出することができる。必要締固め時間は、一般的に5秒から15秒程度で、例えば10秒に設定することができる。
【0043】
演算処理部11の締固め範囲特定部では、基準点計測部によって計測されたある時刻のマーカ22の3次元座標から、その時刻のバイブレータBの平面座標及び鉛直座標を特定することができる。そして、その時刻が、締固め時間取得部で管理されているバイブレータBによる締固め時間に該当していれば、そこからコンクリートの締固め範囲を特定することができるようになる。例えば、バイブレータBによる締固め時間が必要締固め時間に達したときに、締固め開始時刻から現在時刻までの間のバイブレータBの最大移動量が、締固め時の許容誤差である水平方向15cm以内かつ鉛直方向10cm以内に該当していれば、締固め開始時刻のバイブレータBの平面座標及び鉛直座標を基準点として、そこからコンクリートの締固め範囲を特定することができる。
【0044】
打重ね管理部では、コンクリート計測部によって計測されるコンクリート上面Cの高さに基づいて打重ね時間を管理する。例えば、ある時刻に計測されたコンクリート上面Cの高さについて、その上方に新たなコンクリート上面Cの高さが計測された場合は、それまでの時間を打重ね時間として演算処理部11の記憶部に保存させる。
【0045】
そして、表示部では、コンクリートの締固め範囲及び打重ね時間に関する表示を行う。表示部となる表示端末4には、作業員Mが作業中に携行するタブレット端末などが使用できる。また、表示端末4に表示させるデータなどの演算は、タブレット端末側で行うこともできるし、演算処理部11で実行した演算結果をタブレット端末に送信して表示させる構成であってもよい。
【0046】
表示端末4では、上下に打重ねられたコンクリートの締固め範囲の重なる領域が視認可能となるとともに、打重ね時間を反映させた表示ができる。図4は、上下に打重ねられたコンクリートの締固め範囲の重なる領域を例示した説明図である。
【0047】
ここで、コンクリートの締固め範囲R1(R2)については、図5に示すように、バイブレータBを中心にバイブレータBの直径の約10倍の直径の円柱形が、バイブレータBによる影響範囲である有効締固め範囲として設定できる。バイブレータBは、1台を移動させながら使用することができるが、打設範囲Kの平面広さに応じて、複数のバイブレータBを使用することもできる。
【0048】
そして表示端末4には、図4に示すように、先に打設された下層のコンクリートの締固め範囲R1に対して、後から打重ねられた上層のコンクリートの締固め範囲R2を重ねて表示させることができる。この表示は、複数のバイブレータBによる締固め範囲R1,R2を統合して、1画面に表示させたものである。ここでは、締固め完了範囲を層(リフト)毎にグルーピングして、リフト別に異なる色相の表示にしている。
【0049】
この締固め範囲の表示では、下層と上層とで締固め範囲R1,R2の色相が異なっているだけでなく、下層と上層の締固め範囲R1,R2が透過性の表示(半透明)となっているため、下層の締固め範囲R1の上に上層の締固め範囲R2が透けてみえる。すなわち、上下に打重ねられたコンクリートの締固め範囲R1,R2の重なる領域である締固めラップ領域Wが視認可能となり、上下の打重ね部の締固め範囲の連続性を、1表示で確認することができるようになる。なお、締固めラップ領域Wが視認可能となるのであれば、透過性表示は、上層と下層のいずれか1つの層であってもよい。
【0050】
図6は、鳥観表示である図4の状態を、側方から見た場合を例示した説明図である。表示端末4では、このように締固め範囲を見る方向を、簡単に切り替えることができる。こうした側面表示であれば、下層となる1層目の上端の位置と、上層となる2層目の下端の位置と、締固めラップ領域Wの長さとを、しっかりと確認することができる。
【0051】
表示端末4では、締固め範囲の表示だけでなく、打重ね時間を反映させた表示も行うことができる。図7は、打重ね時間を反映させた表示を例示した説明図である。この図には、各層のコンクリート上面Cの高さが、少し斜めから見た状態で表示されている。詳細には、1層目を打重ね管理したときのコンクリート上面Cの高さの表示領域C1と、2層目を打重ね管理したときのコンクリート上面Cの高さの表示領域C2と、3層目を打重ね管理したときのコンクリート上面Cの高さの表示領域C3とが、少し斜めから見た状態で表示されている。これらの表示領域C1-C3は、例えば、バイブレータBの平面方向の有効締固め範囲を表す円で表示することができる。
【0052】
一方、図8は、図7の状態を別の方向から見た場合の例示である。図8(a)は、表示を側面表示に切り替えた場合の例示で、図8(b)は、表示を平面表示に切り替えた場合の例示である。これらの表示は、見やすくするために、真横や真上からは少しずらした斜めの表示にしている。
【0053】
コンクリートは、打設後からの経過時間が打重ね管理部によって管理されていて、1層目C1の表示形態Haが、最も打設後からの経過時間が長くなっている状態を示している。コンクリートは、許容打重ね時間(例えば2時間)内に打重ねなければコールドジョイントなどの品質不良が生じてしまうので、利用者の注意を惹きやすいように、コンクリート上面Cの表示形態について経過時間が長くなるほど濃色系や暖色系の表示形態Haになるように設定するのが好ましい。作業員Mは、表示端末4で濃色系(暖色系)の表示形態Ha,Hbを確認したときには、その箇所を優先してコンクリートの打重ねを行うことで、打重ね時間の超過を防ぐことができる。
【0054】
また、1層目C1であっても、後から打設された箇所は、表示形態Haよりも淡い色の表示形態Hbの表示となっている。さらに、2層目C2や3層目C3の表示形態Hc,Hdは、打設後の経過時間が短いため、淡色系や寒色系の着色になっている。
【0055】
こうした表示形態Ha-Hdの変化は、上層にコンクリートが打重ねられた時点で停止する。図8(b)を参照しながら説明すると、左端の濃色の表示形態Haは、1層目C1より上方にコンクリートが打重ねられなかったため、最も濃い表示形態Haで表示されている。
【0056】
同じ1層目C1の締固め範囲であっても、2層目C2が打重ねられた場合には、例えば表示形態Hbで変化が停止して、その後、時間が経過しても濃い表示形態Haに変化することはない。
【0057】
このように打重ね時間を反映させた表示を表示端末4で行えるようにすることで、作業員Mは、許容される打重ね時間内に上層のコンクリートが打重ねられたことを、容易に確認することができるようになる。
【0058】
次に、本実施の形態のコンクリート打設管理支援装置1を使用した場所打ちコンクリートの打設管理について説明する。
以下では、図1に示すように、型枠で囲まれた直方体の打設範囲Kに、高さ方向に複数回に分けて生コンクリートを打設する場合を例に説明する。
【0059】
まず準備工として、コンクリート打設管理支援装置1のセッティングを行う。基準点計測部となる複数のビデオカメラ21を配置した後は、モーションキャプチャによる測位の対象となる打設範囲Kの認識を行わせる。具体的には、マーカ22が3つ取り付けられた定規をビデオカメラ21の撮影範囲内で多方向から振り、ビデオカメラ21の相対位置を定義する。その後、マーカ22が3つ取り付けられた直角三角形の定規を区画する型枠の隅角部などに設置し、直角三角形の定規が設置された型枠をビデオカメラ21で撮影して空間の原点と軸方向を定義する。その情報を、事前に入力しておいた打設範囲Kと照合することで、測位を行う打設範囲Kを相対座標で認識させる。
【0060】
また、施工現場に合わせて、必要締固め時間、許容打重ね時間、バイブレータBの有効締固め範囲(半径方向、高さ方向)、締固め時のバイブレータBの許容移動量(半径方向、高さ方向)、コンクリート上面高さの特定半径、同一リフトにグルーピングする判定許容値、リフト別の打設予定高さ等の設定値などの入力を行う。
【0061】
締固めを行うすべてのバイブレータBに対しては、計測器31の取り付けを行う。具体的には、上面にマーカ22が固定された計測器31を、各バイブレータBのケーブルB1に対して固定金具32を使って取り付ける。固定金具32のケーブルB1への取付位置は、バイブレータBごとに異なっていてもよく、それぞれについて、マーカ22の中心とバイブレータBの下端との距離D1(図2参照)を測定しておく。
【0062】
打設範囲K内へのコンクリートの打ち込みが始まると、作業員MによってバイブレータBが任意の位置に配置され、ケーブルB1を立てることでバイブレータBが鉛直状態になる。この状態でマーカ22をビデオカメラ21によって撮影すると、モーションキャプチャの解析が行われて、マーカ22の3次元座標が特定される。すなわち、バイブレータBの平面位置を特定することができる。
【0063】
さらに、計測器31が起動していれば、レーザー距離計3によって打設中のコンクリート上面Cまでの距離D2(図2参照)が、所定時間間隔で計測される。この計測された距離D2と、レーザー距離計3からマーカ22までの距離D3と、マーカ22の鉛直座標とによって、この時刻のコンクリートの上面高さを求めることができる。
【0064】
新しく取得されたコンクリートの上面高さは、有効締固め半径の範囲又はそれに外接する正方形に適用し、その範囲の直下にあるバイブレータBを中心とした既に打設されているコンクリート上面高さの表示円に対して、打重ねが完了したとして演算処理部11の記憶部に記憶させる。すなわち、打重ね時間を確定させる。
【0065】
打重ね時間が確定すると、その後いくら時間が経過しても、その領域のコンクリート上面高さについては、打設後経過時間が更新されない。他方、打重ね時間が確定していない領域については、打設後経過時間が時間の経過に伴って更新されることになる。
【0066】
バイブレータBによる締固めの記録は、例えば計測器31のスイッチ33を入れたときに始まるようにする。具体的には、バイブレータBのスイッチを入れてコンクリートの締固めを行う位置に配置及び姿勢とした後に、計測器31のスイッチ33を入れた時刻を締固めの開始時刻とし、計測器31のスイッチ33を切った時刻を締固めの終了時刻として、締固め時間を算出する。この締固め時間が、必要締固め時間(例えば10秒)を超えていれば、バイブレータBの下端位置とコンクリートの上面高さとによって挿入深さ及び有効締固め範囲が特定される領域を、締固め範囲R1として記憶部に記憶させる。ここで、締固めの開始時刻から必要締固め時間が経過した際に、表示端末4や計測器31のランプなどによって作業員Mに締固め完了を通知する構成にすることもできる。
【0067】
作業員Mが携帯する表示端末4では、打設の1層目から、締固め範囲R1やコンクリートの打設後の経過時間を反映させたコンクリートの上面高さの表示(表示形態Ha-Hd)を行うことができる(図4図7など参照)。
【0068】
一方、図9は、高さ方向に複数のリフト(コンクリート層)を打重ねた後に、表示端末4に表示させた締固め範囲の例示である。表示端末4に表示させる締固め管理画面では、図9(a)のような鳥観表示、図9(b)のような平面表示、図9(c)のような側面表示など利用者が見やすい表示に切り替えて、各リフトの締固め範囲及び上下の打重ね部の締固めの連続性(締固めラップ領域)の確認を行うことができる。
【0069】
図10も、高さ方向に打重ねが行われた後に、表示端末4に表示させた打重ね時間を反映させた表示例である。表示端末4に表示させる打重ね管理画面では、図10(a)のような鳥観表示、図10(b)のような平面表示、図10(c)のような側面表示など利用者の見やすい表示に切り替えて、打重ね時間が許容される時間内に収まっているかや、早急に打重ねを行った方がよい箇所はどこかなどの確認を行うことができる。
【0070】
次に、本実施の形態のコンクリート打設管理支援装置1の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態のコンクリート打設管理支援装置1は、コンクリートの上面高さを時刻とともに計測するコンクリート計測部と、バイブレータBによる締固めの開始時刻及び終了時刻を取得する締固め時間取得部とを備えており、これらの計測結果に基づいてコンクリートの締固め範囲R1,R2を特定することができる。また、打重ね管理部によって打重ね時間が管理される。
【0071】
そして、締固め範囲及び打重ね時間に関する表示をする表示端末4では、上下に打重ねられたコンクリートの締固め範囲の重なる領域(締固めラップ領域W)が視認可能となり、上下の打重ね部の締固め範囲の連続性を、容易に確認することができるようになる。
【0072】
詳細には、表示端末4の締固め管理画面では、下層となるコンクリートの締固め範囲R1の上端周辺に、半透明で表示される上層のコンクリートの締固め範囲R2の下端周辺が重なるように表示される。締固め管理画面の表示は、鳥観表示や側面表示や平面表示など、様々な視点に切り替えることができ、コンクリートの打設作業を行う作業員Mや管理者は、リアルタイムで容易に視覚によって、締固めラップ領域Wの連続性や長さを確認することができる。
【0073】
また、表示端末4の打重ね管理画面では、打重ね時間を反映させた表示ができる。詳細には、打重ね管理画面では、コンクリートの打設後の経過時間の長さに応じて表示形態を変化させるとともに、打重ね時間が特定されると、その時点で表示形態の変化が停止する。そして、打重ね管理画面においても鳥観表示や側面表示や平面表示など、様々な視点に切り替えることができる。
【0074】
このため、コンクリートの打設作業を行う作業員Mや管理者は、リアルタイムで容易に視覚によって、打重ねまでに許容される時間が経過していないことや、残り時間が少なくなっている箇所の確認を行うことができる。そして、打重ねの許容時間が近づいている箇所に対しては、優先して打重ね作業を行うことができる。
【0075】
また、基準点がバイブレータBのケーブルB1に対して取り付けられたマーカ22であって、基準点計測部でマーカ22を複数のビデオカメラ21で撮影してモーションキャプチャをする測位システムを採用するのであれば、上空が開放されているなどの制限なく、精度の高い3次元座標の取得を行うことができる。
【0076】
さらに、コンクリート計測部によるコンクリート上面Cの計測にレーザー距離計3を用いるのであれば、光量の少ない型枠内において変動するコンクリート上面Cを、精度よく計測することができる。
【0077】
また、締固めの開始時刻を、バイブレータBによる締固めができる状態にした後の計測器31のスイッチ33を入れた時刻にし、終了時刻を計測器31のスイッチ33を切った時刻にするのであれば、実際にバイブレータBによって有効に締固められた時間を、正確に記録させることができる。
【0078】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0079】
例えば、前記実施の形態では、計測器31のスイッチ33のオン・オフで締固め時間を決める場合について説明したが、これに限定されるものではなく、バイブレータBのスイッチと連動させて締固め時間を管理する構成であってもよい。また、傾斜計などのセンサによって締固め時間を自動検知させることもできる。例えば計測器31に傾斜計を搭載しておき、バイブレータBの稼働中に傾斜角度が5°以下になった連続する時間の長さが必要締固め時間に達していれば、締固め完了と判定させることもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 :コンクリート打設管理支援装置
21 :ビデオカメラ(基準点計測部)
22 :マーカ
3 :レーザー距離計(コンクリート計測部)
4 :表示端末(表示部)
B :バイブレータ
B1 :ケーブル
C :コンクリート上面
R1,R2 :締固め範囲
W :締固めラップ領域
Ha-Hd :表示形態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10