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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025072729
(43)【公開日】2025-05-12
(54)【発明の名称】乗物の排気マフラ
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/00 20100101AFI20250501BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20250501BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20250501BHJP
   F01N 1/08 20060101ALI20250501BHJP
   F01N 1/02 20060101ALI20250501BHJP
【FI】
F01N13/00 A
F01N13/08 G
F01N3/24 J
F01N3/24 K
F01N13/08 A
F01N1/08 B
F01N1/02 G
F01N1/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182994
(22)【出願日】2023-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅史
(72)【発明者】
【氏名】有馬 久豊
(72)【発明者】
【氏名】山本 日出彦
(72)【発明者】
【氏名】深見 尚司
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
【Fターム(参考)】
3G004AA02
3G004CA01
3G004DA07
3G004DA09
3G004DA15
3G004DA25
3G091AA03
3G091AB03
3G091BA26
3G091HA05
3G091HA08
3G091HA36
3G091HA37
(57)【要約】
【課題】組立て誤差の影響を抑えて排ガスセンサを取り付けることができる乗物の排気マフラを提供する。
【解決手段】本開示の乗物の排気マフラ20は、内部に消音空間SPが形成される内筒32と、マフラ20の外殻を構成する外筒34と、消音空間SP内に配置されて内部を排ガスGが流れるパイプ部材51と、パイプ部材51を流れる排ガスGの状態を検知するセンサ84と、センサ84の周囲に配置されて消音空間SP内の気体の外方への流出を塞ぐ閉塞体88とを備えている。閉塞体88は、パイプ部材51に接続されるパイプ側接続部分100と、外筒34に接続される外筒側接続部分102とを有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に消音空間が形成される内筒と、
マフラの外殻を構成する外筒と、
前記消音空間内に配置されて内部を排ガスが流れるパイプ部材と、
前記パイプ部材を流れる排ガスの状態を検知するセンサと、
前記センサの周囲に配置されて、消音空間内の気体の外方への流出を塞ぐ閉塞体と、
を備え、
前記閉塞体は、前記パイプ部材に接続されるパイプ側接続部分と、前記外筒に接続される外筒側接続部分とを有している乗物の排気マフラ。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記センサが挿入される挿入部分の軸心が、前記外筒の軸心よりも径方向外側に位置する乗物の排気マフラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記閉塞体は、
前記外筒の開口に隣接する部分に対して周方向に重なって接続される第1部材と、
前記パイプ部材の開口に隣接する部分に対して径方向に重なって接続される第2部材とを有し、
前記第1部材と前記第2部材とは、軸方向に重なる部分で互いに接続されている乗物の排気マフラ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記センサが挿入される挿入部分よりも上流側の部分は、その軸心が前記挿入部分に向かって径方向に外筒の開口に近づく方向に傾斜している乗物の排気マフラ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記センサが挿入される挿入部分は、前記パイプ部材の入口に比べて縮径している乗物の排気マフラ。
【請求項6】
請求項1または2に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記センサが挿入される挿入部分よりも下流側に延長して延びる延長部分が形成されている乗物の排気マフラ。
【請求項7】
請求項1または2に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記センサが挿入される挿入部分よりも上流側に触媒コンバータが配置されている乗物の排気マフラ。
【請求項8】
請求項7に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記触媒コンバータの上流側に、排ガスの流れを径方向に向ける偏向部分が設けられている乗物の排気マフラ。
【請求項9】
請求項1または2に記載の乗物の排気マフラにおいて、乗物に取り付けられた状態で、前記閉塞体は、前記外筒からの凹み量が乗物の幅方向一方側に向かって小さくなっている乗物の排気マフラ。
【請求項10】
請求項1または2に記載の乗物の排気マフラにおいて、さらに、前記外筒の少なくとも一部を外側から覆うマフラカバーを備え、
前記センサが、前記マフラカバーにより外側から覆われている乗物の排気マフラ。
【請求項11】
請求項1または2に記載の乗物の排気マフラにおいて、さらに、
前記内筒と前記外筒との間に充填される充填材と、
前記センサの取付部付近に設けられて、前記充填剤の移動を規制する規制壁と、
を備えた乗物の排気マフラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガスを検知するセンサが取り付けられた乗物の排気マフラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車において、排ガスを浄化する触媒コンバータを排気通路に設けたものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1の自動二輪車には、触媒コンバータの上流側および下流側に排ガスセンサを設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-110616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部に消音空間が形成される内筒と、マフラの外殻を構成する外筒とを有する排気マフラに排ガスセンサを設ける場合、内外筒の組立誤差により排ガスセンサの取付けが困難問なる場合がある。
【0005】
本出願の開示は、組立て誤差の影響を抑えて排ガスセンサを取り付けることができる乗物の排気マフラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の乗物の排気マフラは、内部に消音空間が形成される内筒と、マフラの外殻を構成する外筒と、前記消音空間内に配置されて内部を排ガスが流れるパイプ部材と、前記パイプ部材を流れる排ガスの状態を検知するセンサと、前記センサの周囲に配置されて消音空間内の気体の外方への流出を塞ぐ閉塞体とを備えている。前記閉塞体は、前記パイプ部材に接続されるパイプ側接続部分と、前記外筒に接続される外筒側接続部分とを有している。センサは、排ガスの成分、温度、流速等を検出するセンサであり、例えば、排ガス中の酸素の量を検出する酸素センサである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の鞍乗型乗物の排気マフラによれば、閉塞体が、内筒を介さずに、パイプ部材と外筒に接続されるので、内筒と外筒との間のマフラの組立誤差の影響を受けずに、排ガスセンサを取り付けることができる。また、パイプ部材と外筒とを閉塞体を介して接続することで、パイプ部材に比べて大形となる内筒に閉塞体を接続するための構造を不要とすることができ、内筒の構造を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1実施形態に係る排気マフラを備えた鞍乗型乗物の一種である自動二輪車を示す側面図である。
図2】同排気マフラを示す側面図である。
図3図2からマフラカバーを取り外した状態を示す側面図である。
図4】同排気マフラを示す縦断面図である。
図5】同排気マフラを示す水平断面図である。
図6図4のVI-VI線に沿った断面図である。
図7】同排気マフラの下流側センサの取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「前方」および「後方」とは、乗物の進行方向から見た「前方」および「後方」をいう。つまり、前後方向は乗物の長手方向に一致する。「左」および「右」とは、乗物に乗った状態の運転者から見た「左」および「右」をいう。つまり、「左右方向」は乗物の幅方向と一致する。
【0010】
図1は、本開示の第1実施形態に係る排気マフラを備えた鞍乗型乗物の一種である自動二輪車を示す側面図である。図1の自動二輪車は、オフロード走行用の車両である。ただし、自動二輪車はオフロード走行用の車両に限定されない。また、本開示の排気マフラは、自動二輪車以外の鞍乗型乗物、例えば、三輪車、四輪バギー、小型滑走艇等にも適用可能である。
【0011】
この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を形成するメインフレーム1と、後半部を形成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1は、前端のヘッドパイプ4から後方斜め下方に延びている。メインフレーム1は、後端部1aで下方に湾曲し、ほぼ下方に延びている。
【0012】
リヤフレーム2は、上側リヤフレーム片2aと、下側リヤフレーム片2bとを有している。上側リヤフレーム片2aは、その前端がメインフレーム1の後端部1aの前方上方に連結されて、メインフレーム1から後方に延びている。下側リヤフレーム片2bは、その前端がメインフレーム1の後端部1aの若干下方に連結されている。下側リヤフレーム片2bは、メインフレーム1から後方斜め上方に延びて、その後端が上側リヤフレーム片2aの後部に連結されている。
【0013】
ヘッドパイプ4にステアリングシャフト(図示せず)を介してフロントフォーク8が回動自在に軸支されている。フロントフォーク8の上端部に操向用のハンドル7が固定されている。フロントフォーク8の下端部に前輪10が取り付けられている。
【0014】
メインフレーム1の後端部1aの下方に、スイングアームブラケット9が設けられている。このスイングアームブラケット9に取り付けたピボット軸11の回りに、スイングアーム12が上下揺動自在に軸支されている。このスイングアーム12の後端部に、後輪14が支持されている。
【0015】
自動二輪車の駆動源であるエンジンEが、メインフレーム1の下方前方に配置され、メインフレーム1に取り付けられている。エンジンEは、ドライブチェーンのような動力伝達部材(図示せず)を介して後輪14を駆動する。本実施形態のエンジンEは、単気筒4サイクルエンジンEであるが、これに限定されない。
【0016】
エンジンEの後面に吸気ポート16が形成され、前面に排気ポート18が形成されている。吸気ポート16から導入された空気と燃料の混合気が燃焼室で燃焼され、排気ポート18から排出される。吸気ポート16に、吸気装置IDが接続されている。吸気装置IDは、取り込まれた外気を燃料と混合して混合気を生成し、吸気としてエンジンEの吸気ポート16に供給する。
【0017】
排気ポート18に、排気管22が接続されている。排気管22が、エンジンEの右側方を後方に延びて、後輪14の右側方上方に配置された排気マフラ20に接続されている。排気マフラ20の一部、具体的には上半部は、マフラカバー24により外側方から覆われている。マフラカバー24は、排気マフラ20に対して、径方向に隙間をあけて配置される。排気マフラ20がマフラカバー24で覆われることで、乗車姿勢の運転者が排気マフラ20に直接接触することが防がれる。マフラカバー24は、例えば、板金からなり、排気マフラ20に着脱自在に取り付けられている。ただし、排気管22および排気マフラ20の配置は、これに限定されない。排気マフラ20の詳細は後述する。
【0018】
メインフレーム1に、燃料タンク25が支持されている。燃料タンク25には、エンジンEの燃料が貯留される。燃料タンク25は、エンジンEの上方に配置されている。燃料タンク25の後方で、上側リヤフレーム片2aに、運転者が着座するシート26が支持されている。
【0019】
[排気マフラ]
以下に、本開示の排気マフラ20について説明する。図2は排気マフラ20の側面図で、図3はマフラカバー24を取り外した状態を示す側面図で、図4は排気マフラ20の縦断面図で、図5は排気マフラ20の水平断面図で、図6図4のVI-VI線に沿った断面図である。以下の説明において、「上流」および「下流」とはそれぞれ、排ガスGの流れ方向の「上流」および「下流」をいう。
【0020】
本開示の排気マフラ20は、排気音を低減する消音機能を有する。また、排気マフラ20は、排ガス中に含まれる有害物質の大気排出を抑制、いわゆる浄化機能を有する。ここで、「消音機能」とは、膨張、収縮を繰り返すように複数室を形成したり、共鳴構造としたりすることで、排気の圧力エネルギーを抑制することをいう。また、「浄化機能」には、例えば、希少貴金属である白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の白金族元素(触媒材料)が用いられ、白金族元素と排ガスとの酸化還元反応によって排ガス中に含まれる有害物質が無害物質に変換される。具体的には、排ガスを白金系元素に晒すことで、排ガス中に含まれる有害物質である窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(CH)を、無害物質であるN、CO、HOにそれぞれ変換する。
【0021】
排気マフラ20は、自動二輪車のエンジンEの排気音を低減すると共に、エンジン特性を調整する装置である。図2に示すように、排気マフラ20は、接続管27を介して排気管22に接続される。接続管27は、内部に排ガスGが流れるパイプであり、上流端部(前端部)がバンド等により排気管22に着脱自在に接続され、下流端部(後端部)が溶接により排気マフラ20に接合されている。接続管27の下流端部に、接続管27を流れる排ガスGの状態を検知する上流側センサ35が取り付けられている。本実施形態では、上流側センサ35は、排ガスG中の酸素の量を検出する酸素センサである。
【0022】
排気マフラ20は、筒状のマフラ本体部28と、上流端部(前端部)で接続管27に接続され下流端部(後端部)でマフラ本体部28に連なるマフラ入口部30とを有している。図3に示すように、マフラ本体部28の外周面に、マフラカバー24(図2)が締結される取付部28aが設けられている。本実施形態の取付部28aは、後述する下流側センサを挟んで配置される。具体的には、取付部28aは、ボルトのような締結部材が螺合する溶接ナットを有している。また、本実施形態では、取付部28aは前後方向に離間して2つ設けられている。ただし、取付部28aの構造、配置、数は実施形態のものに限定されない。本実施形態では、マフラ本体部28は、横断面が楕円形の筒状である。なお、マフラ本体部の横断面形状は、楕円形に限らず、真円形でも、略多角形形状でもよい。
【0023】
マフラ20の外殻を構成する外筒34とを有している。つまり、マフラ本体部28は、内筒32と、内筒32の径方向外側を覆う外筒34とを有する二重構造である。本実施形態では、内筒32と外筒34との間に吸音材36が介装されている。吸音材36は、微細な孔や隙間が多数形成される多孔質材料によって実現される。吸音材36として、例えば、グラスウールが用いられる。内筒32の周壁にはパンチング孔が形成されており、消音空間SPの排ガスGはパンチング孔を介して吸音材36に接触する。排気マフラ20に吸音材36が設けられることにより、排ガスGの外筒34から放射する放射音を低減することができる。また、吸音材36によって空気層が形成されることで、排気マフラ20の外筒34の表面温度が上昇するのを抑制できる。
【0024】
マフラ入口部30は、接続管27に接続される上流端部からマフラ本体部28に接続される下流端部に向かって徐々に拡径するコーン状の部材である。詳細には、マフラ入口部30の上流端部の内周面に接続管27の下流端部が挿入され、溶接で接合されている。マフラ入口部30の下流端部は、マフラ本体部28の上流端部の内周面に挿入され、溶接で接合されている。本実施形態では、マフラ入口部30の内部も、排気マフラ20の消音空間SPの一部を構成している。つまり、マフラ入口部30の前端壁30aにより消音空間SPの前端が閉塞されている。
【0025】
マフラ入口部30は、その下流端部が、外筒34の上流端部に接続される。マフラ入口部30は、その内部空間に、パイプ部材の上流側部分を収容する。マフラ入口部30は、内部空間にパイプ部材が設けられて、パイプ部材とで2重構造に形成される。これによって、排ガスGが、接続管27から直接マフラ入口部30に流れることが阻止される。マフラ入口部30の内部空間は、その下流端部で、内筒32の内部空間と連通する。これによって、マフラ入口部30の内部空間が、消音空間として機能する。
【0026】
排気マフラ20の消音空間SPは、複数の消音室に分割されていてもよい。本実施形態では、消音空間SPは、3つの第1~3消音室41,42,43に分割されている。詳細には、消音空間SPの後端が蓋部材38で閉塞され、消音空間SPの前端がマフラ入口部30で閉塞される。前側の第1隔壁44と後側の第2隔壁46とにより消音空間SPが区画されている。蓋部材38は外筒34の後部の内周面に溶接で接合され、第1および第2隔壁44,46は内筒32の内周面に溶接で接合されている。
【0027】
消音室41,42,43は、前方から第2消音室42、第3消音室43、第1消音室41の順に並んでいる。詳細には、内筒32の内側空間であって蓋部材38と第2隔壁46との間に第1消音室41が形成され、内筒32およびマフラ入口部30の内側空間であって第1隔壁44とマフラ入口部30の前端壁30aとより第2消音室42が形成され、内筒32の内側空間であって第1隔壁44と第2隔壁46とより第3消音室43が形成されている。
【0028】
排気マフラ20の消音空間SP内に、内部を排ガスGが流れるパイプ部材51~53が配置されている。本実施形態の排気マフラ20は、3つの第1~第3パイプ部材51~53を備えている。
【0029】
第1パイプ部材51は、上流端51aが接続管27の下流端に連通している。第1パイプ部材51は、上流端51aから流れ方向下流側に延び、第1および第2隔壁44,46を貫通して、下流端51bが第1消音室41に開口している。第1パイプ部材51の詳細は後述する。
【0030】
図5に示す第2パイプ部材52は、上流端52aが第1消音室41に開口している。第2パイプ部材52は、上流端52aから前方に延び、第2隔壁46および第1隔壁44を貫通して、下流端52bが第2消音室42に開口している。また、第1隔壁44には、第2消音室42と第3消音室43とを連通する貫通孔54(図4)が設けられている。
【0031】
第3パイプ部材53は、導入部53aが第3消音室43に開口している。本実施形態では、第3パイプ部材53の前端部は閉塞され、導入部53aは第3パイプ部材53の外周面に形成されている。第3パイプ部材53は、第2隔壁46を貫通して後方に延び、下流端53bが排気マフラ50の外部に開口している。本実施形態では、蓋部材38を貫通する出口パイプ56に、第3パイプ部材53の下流端53bが連通している。出口パイプ56は、蓋部材38に着脱自在に取り付けられた出口カバー58により外周が覆われている。
【0032】
接続管27から排気マフラ20の第1パイプ部材51に流入した排ガスGは、第1パイプ部材51内を流れて、第1消音室41に導出されて膨張する。第1消音室41の排ガスGは、第2パイプ部材52内を流れる際に収縮して、第2消音室42に導出されて膨張する。第2消音室42の排ガスGは、貫通孔54を通過する際に収縮して第3消音室43に流入して膨張する。第3消音室43の排ガスGは、第3パイプ部材53および出口パイプ56を介してマフラ外部に排出される。
【0033】
このように、排気マフラ20内で膨張・収縮が繰り返されることで、排ガスGの圧力エネルギーが消耗される。これによって、排気マフラ20の外部に排出される際の排ガスGが消音される。また、第2隔壁46に、第1消音室41と第3消音室43とを連通する貫通孔を設けて、第2消音室42から第3消音室43に流入する排ガスGとの間で排気干渉(共鳴)させることで、排ガスGを消音してもよい。
【0034】
[フレームアレスタ]
本実施形態では、第3パイプ部材53にフレームアレスタ60が設けられている。フレームアレスタ60は、火炎を遮断し、気体のみを通過させるもので、本実施形態では、第3パイプ部材53の導入部53aに取り付けられた金網60である。
【0035】
本実施形態では、フレームアレスタ60のメンテナンスができるように、第3パイプ部材53は着脱可能に設けられている。詳細には、第3パイプ部材53と出口パイプ56とを連結する連結部材64に、後方に向かって拡径するフランジ部材66が接合されている。このフランジ部材66と蓋部材38が、蓋部材38を前にして前後方向に重ねられた状態で後方からボルト70により連結されている。
【0036】
また、第3パイプ部材53よりも大径の挿通管62が、第2隔壁46を貫通するように設けられている。小径の第3パイプ部材53は、ボルト70を緩めることで挿通管62の内部に前後方向に移動自在に挿通されている。第3パイプ部材53の外周面に、挿通管62の内周面に近接するシール部材69が取り付けられている。シール部材69により、第3パイプ部材53の外周面と挿通管62の内周面との隙間を通って第1消音室41から第3消音室43に排ガスGが流入するのを阻止できる。
【0037】
ただし、第3パイプ部材53にフレームアレスタ60を設けなくてもよい。この場合、挿通管62は省略され、第3パイプ部材53および出口パイプ56は、第2隔壁46および蓋部材38にそれぞれ溶接で接合できる。
【0038】
[触媒コンバータ]
第1パイプ部材51に触媒コンバータ72が配置されている。触媒コンバータ72は、排ガスGに含まれる有害な排気成分を浄化する。詳細には、第1パイプ部材51は、触媒コンバータ72を収納する大径の触媒収納部74を有している。触媒収納部74は、第1パイプ部材51で最も大径の部分である。第1パイプ部材51は、触媒収納部74よりも上流側に上流部76を有している。また、第1パイプ部材51は、触媒収納部74よりも下流側に下流部80を有している。
【0039】
第1パイプ部材51における触媒収納部74よりも上流側の上流部76は、上流端で接続管27に連通している。つまり、上流部76の上流端が、第1パイプ部材51の上流端51aを構成している。上流部76は、上流端51aから触媒収納部74に向かって徐々に拡径している。
【0040】
上流部76および触媒収納部74の軸線は、外筒34に対して、後方に進むにつれて径方向外側に傾斜している。また、上流部76は、上下分割体が合わさって形成される「もなか構造」に形成されることで、上下で非対称の形状に形成される。上流部76の下側部分が、上流部76の上側部分に比べて、下流に進むにつれての径の拡大量が小さく形成される。このように上流部76のうちで、下側部分の傾斜が緩やかに形成されることで、流れ方向における断面積変化を抑えることができ、排ガスGの乱れを抑えることができる。
【0041】
上流部76の内部に入口管75が配置されている。入口管75は、上流部76の内周面に溶接で接合されている。入口管75の前端部75aは接続管27に臨んでいる。つまり、接続管27からの排ガスGは、入口管75に導入される。入口管75の後端部75bは閉塞され、入口管75の周壁に複数のパンチング孔75cが形成されている。したがって、入口管75に導入された排ガスGは、パンチング孔75cから径方向に導出される。つまり、入口管75は、触媒コンバータ72の上流側で、排ガスGの流れを径方向に向ける偏向部分を構成している。
【0042】
第1パイプ部材51における触媒収納部74よりも下流側の下流部78は、下流側に向かって縮径している縮径部分80と、縮径部分80の下流端に連なる延長部分82とを有する。縮径部分80は、上下分割体が合わさって形成される「もなか構造」に形成されることで、上下で非対称の形状に形成される。縮径部分80の上側部分が、縮径部分80の下側部分に比べて、下流に進むにつれての径の拡大量が小さく形成される。このように縮径部分80のうちで、上側部分の傾斜が緩やかに形成されることで、流れ方向における断面積変化を抑えることができ、排ガスGの乱れを抑えることができる。また、縮径部分80のうちで上側部分の傾斜が緩やか、言い換えると平坦に形成されることで、後述する閉塞体との接続を行いやすくすることができる。
【0043】
詳細には、下流部78は、上流部76に比べて外筒34の内壁に近接して配置されている。より詳細には、縮径部分80は、外筒34の内壁に近い側の部分は外筒32に沿って延び、外筒34の内壁から離れた側の部分が下流に向かって径方向に外筒32に近づく方向に傾斜している。したがって、縮径部分80全体としても、その軸心は、下流に向かって径方向に外筒の内壁に近づく方向に傾斜している。
【0044】
下流部78は、縮径部分80の上流端で径が最も大きくなる。縮径部分80の下流端および下流端に接続される延長部分82は、同じ通路面積となる。延長部分82は、縮径部分80から通路面積一定に下流に延びている。換言すれば、第1パイプ部材51における縮径部分80よりも下流側に、外筒34に沿って延びる延長部分82が形成されている。延長部分82の下流端は第2消音室42に開口している。つまり、下流部78の下流端が、第1パイプ部材51の下流端51bを構成している。触媒コンバータ72の下流側には、ある程度の長さのストレート部分が必要であり、本実施形態では、延長部分82によりストレート部分が確保されている。例えば、延長部分82は、その容積が1つの気筒の燃焼容積よりも大きく形成されてもよい。また、延長部分82の長さは、触媒コンバータ72の直径よりも長く形成されてもよい。
【0045】
[センサ]
図4に示すように、排気マフラ20に下流側センサ84が取り付けられている。下流側センサ84は、第1パイプ部材51を流れる排ガスGの状態を検知する。本実施形態では、下流側センサ84は、排ガスG中の酸素の量を検出する酸素センサである。図2に示すように、下流側センサ84は、マフラカバー24により外側から覆われている。これにより、下流側センサ84と障害物が衝突するのを防ぐことができる。マフラカバー24で下流側センサ84を覆うことで、下流側センサ84を覆うための専用の部品を不要とすることができる。また、本実施形態のようなオフロード車では泥、水等をかぶりやすいが、本実施形態では、下流側センサ84はマフラカバー24で覆われているので、泥や水から保護される。
【0046】
本実施形態では、図4に示すように、触媒コンバータ72の上流側に上流側センサ35が配置され、触媒コンバータ72の下流側に下流側センサ84が配置されている。上流側センサ35は、例えば、燃料噴射制御(空燃比制御)に用いられる。下流側センサ84は、例えば、触媒コンバータ72の故障診断に用いられる。
【0047】
下流側センサ84は、第1パイプ部材51の縮径部分80に挿入されている。より具体的には、下流側センサ84は、触媒収容部74の下流端よりも下流側であって触媒収容部74よりも縮径したパイプ部分に挿入されている。本実施形態では、第1パイプ部材51における下流側センサ84が挿入される挿入部分86は、第1パイプ部材51における内筒32および外筒34に最も近接する部分で、かつ、触媒収容部74よりも小径となっている。換言すれば、触媒コンバータ72の下流側で通路面積を狭めた位置に下流側センサ84が配置されている。このように、触媒コンバータ72の下流側で排ガスGが集約される領域に下流側センサ84を配置することで、径方向に集合した排ガスGをセンサに接触させることができ、検出ばらつきを抑えることができる。
【0048】
また、通路面積を狭めるのは、下流側センサ84が挿通される側に寄せて狭められる。詳細には、下流部78の軸線X1は、排気マフラ22の軸心AXに対して、下流側に向かって下流側センサ84に近づくように傾斜している。また、挿入部分86の中心点O1は、外筒34の中心点(排気マフラ22の軸心AX)よりも径方向外側に位置する。
【0049】
[下流側センサの取付構造]
つぎに、図7を用いて下流側センサ84の取付構造を説明する。下流側センサ84は、軸状に形成される。下流側センサ84の軸線方向一端部に検出部分が設けられる。下流側センサ84の検出部分は、排気マフラ20の外筒34および内筒32を貫通して、第1パイプ部材51の縮径部分80内に配置される。下流側センサ84は、検出部分が縮径部分80の内部空間に配置された状態で、縮径部分80に取り付けられている。詳細には、下流側センサ84の検出部分は、排気マフラ20の外筒34に形成されたマフラ開口90を通過し、第1パイプ部材51の挿入部分86に形成されたパイプ開口92に取り付けられている。より詳細には、下流側センサ84は、パイプ開口92に溶接で接合された円筒形状のボス部94に螺合されている。
【0050】
延長部分82と内筒32との間には、径方向の隙間が形成される。隙間を通過して排ガスGが、内筒32に形成されたセンサ挿通用の開口に向かうことがある。本実施形態では、内筒32の開口から排ガスGが内筒32の外部に流出したとしても、外筒34と閉塞体88(後述)とで塞がれることで、排ガスGがセンサ84付近から流出することが防がれる。
【0051】
内筒32にも下流側センサ84の検出部分が挿通する開口が形成される。内筒32は、閉塞体88(後述)も含めて配置される程度の開口が形成される。言い換えると、閉塞体88(後述)のうちで第1パイプ部材51との溶接領域よりも大きな開口が形成される。
【0052】
排気マフラ20は、外筒34のマフラ開口90を塞ぐ閉塞体88を備えている。図3に示すように、閉塞体88は、下流側センサ84の周囲に配置され、消音空間SP内の排ガスGが外方へ流出するのを塞いでいる。本実施形態の閉塞体88は、板金を折り曲げ加工して成形したもので、下流側センサ84の軸心X2方向から見て、排気マフラ20の長手方向D1に長軸を有する楕円形状である。本実施形態では、閉塞体88は、金属材料で構成されているが、センサ挿入のために形成した開口を塞ぐ構造であればよく、材料や形状は本実施形態に限定されない。
【0053】
閉塞体88は、その中心部に消音空間SPに向かって凹入する凹部96を有している。詳細には、閉塞体88は、その外縁から中心に向かって徐々に凹む傾斜面98を有し、傾斜面98が凹部96に連なっている。閉塞体88における外筒34からの凹み量は、一定ではなく、その周方向位置により異なっている。本実施形態では、乗物に取り付けられた状態で、閉塞体88における外筒34からの凹み量は、車幅方向の外側(本実施形態では右側)に向かって小さくなっている。これにより、サイドスタンドで起立した状態で、凹部96に水が溜まるのを抑制できる。
【0054】
図6に示すように、閉塞体88は、第1パイプ部材51に接続されるパイプ側接続部分100と、外筒34に接続される外筒側接続部分102とを有している。つまり、閉塞体88は、最も径方向内側の第1パイプ部材51と、最も径方向外側の外筒34に接続されているが、その中間の内筒32には接続されていない。
【0055】
パイプ側接続部分100は、第1パイプ部材51のパイプ開口92に隣接する部分に対して径方向に重なって接続されている。一方、外筒側接続部分102は、外筒34のマフラ開口90に隣接する部分に対して径方向に重なって接続されている。つまり、外筒側接続部分102が、マフラ開口90に隣接する部分に対して径方向に重なって接続される第1部材102を構成し、パイプ側接続部分100が、パイプ開口92に隣接する部分に対して径方向に重なって接続される第2部材を構成している。
【0056】
本実施形態では、閉塞体88は、一枚の板金を折り曲げて加工されているが、外筒側接続部分(第1部材)102とパイプ側接続部分(第2部材)100とを別体で構成し、軸方向に重なる部分で両者を接続してもよい。
【0057】
第1パイプ部材51の挿入部分86、すなわち、パイプ開口92が形成される部分は、下流側センサ84の軸心X2に直交する平担面を有している。パイプ側接続部分100は、この平坦面に沿った平面を有し、第1パイプ部材51の平坦面とパイプ側接続部分100の平面が径方向に重ねられた状態で溶接により接合されている。このとき、第1パイプ部材51と閉塞体88のパイプ側接続部分100が、平坦面および平面に沿う方向に相対移動可能であるから、軸方向(図6の紙面に直交する方向)のずれが吸収される。つまり、パイプ側接続部分100が、接合時の軸方向の接合代として機能する。
【0058】
外筒側接続部分102は、閉塞体88の外端部を径方向内側に折り曲げて、消音空間SPに向かって延びることで形成されている。本実施形態では、外筒側接続部分102は、接続部材104を介して外筒34に接続されている。接続部材104は、板金を断面形状がV字となるように折り曲げることで成形されている。
【0059】
接続部材104のV字形に折り曲げられた一方側部分104aが、溶接により外筒34の外周面に接合されている。詳細には、一方側部分104aは外筒34の外周面に沿って周方向に延びており、この一方側部分104aと外筒34の外周面が、径方向に重ねられた状態で溶接により接合されている。このとき、接続部材104の一方側部分104aと外筒34が、周方向に相対移動可能であるから、周方向のずれが吸収される。つまり、接続部材104の一方側部分104aが、接合時の周方向の接合代として機能する。
【0060】
接続部材104のV字形に折り曲げられた他方側部分104bは、溶接により閉塞体88の外筒側接続部分102に接合されている。詳細には、他方側部分104bは消音空間SPに向かって径方向に延びており、互いに径方向に延びる他方側部分104bと外筒側接続部分102が、周方向に重ねられた状態で溶接により接合されている。このとき、接続部材104の他方側部分104bと閉塞体88の外筒側接続部分102が、径方向に相対移動可能であるから、径方向のずれが吸収される。つまり、外筒側接続部分102の他方側部分104bが、接合時の径方向の接合代として機能する。
【0061】
閉塞体88は、外筒34と第1パイプ部材51の径方向、周方向および軸方向のずれを吸収できるように構成されていればよく、本実施形態の構造に限定されない。
【0062】
図4に示すように、内筒32と外筒34との間における下流側センサ84が取り付けられる部分付近に、規制壁106が設けられている。規制壁106は、断面形状がL字形の部材で、充填剤36がマフラ開口90側に移動するのを規制する。規制壁106は、下流側センサ84に沿って、すなわち、マフラ開口90に沿って設けられ、内筒32と外筒34との間の充填剤36がマフラ開口90側にずれるのを防止している。
【0063】
図7に示すように、閉塞体88は、溶接部W1で第1パイプ部材51に溶接される。また、閉塞体88は、溶接部W2で外筒34に溶接される。閉塞体88を介して、第1パイプ部材51と外筒34との間で全周溶接されて塞がれることで、消音空間SP内の気体の外方への流出が防がれる。内筒32は、閉塞体88とは溶接されておらず、両者32,88の間には隙間があってもよい。このような隙間があると、組立誤差が吸収される。触媒コンバータ74と第1パイプ部材51とは、スライド構造としてもよい。
【0064】
上記構成によれば、閉塞体88が、内筒32を介さずに、第1パイプ部材51と外筒34に接続されているので、排気マフラ20のうちの内筒32と外筒34との組立誤差や、内筒32と外筒34との熱膨張差を吸収して下流側センサ84を取り付けることができる。詳細には、内筒32と外筒34とを接合する際に組立誤差が生じても、閉塞体88に設けた接合代により、第1パイプ部材51と外筒34との相対位置が調整できる。その結果、二重構造の排気マフラ22に、下流側センサ84を安定して取り付けることができる。
【0065】
また、第1パイプ部材51と外筒34とを閉塞体88で接続することで、第1パイプ部材51に比べて大形となる内筒32に閉塞体88を接続するための構造を不要とすることができ、内筒32の構造を簡易化することができる。さらに、下流側センサ84を第1パイプ部材51に取り付けて、第1パイプ部材51を流れる排ガスGの状態を検出することで、内筒32に下流側センサ84を設ける場合に比べて、排ガスGの流れが乱れることを防いで検出精度を向上することができる。
【0066】
本実施形態において、図4に示すように、第1パイプ部材51における下流側センサ84が挿入される挿入部分86の軸心AX2が、外筒34の軸心AXよりも径方向外側に位置する。この構成によれば、第1パイプ部材51を外筒34の周面に近づけて配置でき、外筒からの下流側センサ84の挿入量を小さくすることができる。
【0067】
本実施形態において、図6に示すように、閉塞体88は、外筒32のマフラ開口90に隣接する部分に対して周方向に重なって接続される第1部材(外筒側接続部分)102と、第1パイプ部材51のパイプ開口92に隣接する部分に対して径方向に重なって接続される第2部材(パイプ側接続部分)100とを有している。この構成によれば、外筒側接続部分102が径方向の接合代として機能し、パイプ側接続部分100が軸方向の接合代として機能する。
【0068】
また、本実施形態では、第1パイプ部材51および外筒34の周面に閉塞体88を径方向に重ねる構造に形成されている。これに代えて、例えば、第1パイプ部材51および外筒34に軸方向に突出するリブを形成し、突出リブに対して閉塞体88を軸方向に重ねる構造とすることもできる。しかしながら、本実施形態のように、閉塞体88を径方向に重ねる構造とすることで、外筒34および第1パイプ部材51に径方向に突出するリブ部分を形成する必要がなく、外筒34と第1パイプ部材51の構造を簡単化しやすい。
【0069】
本実施形態において、図4に示すように、第1パイプ部材51における下流側センサ84が挿入される挿入部分86よりも上流側の部分は、その軸心X1が挿入部分86に向かって径方向に外筒32の開口102に近づく方向に傾斜している。この構成によれば、第1パイプ部材51を外筒34の近くに配置でき、外筒34からの下流側センサ84の挿入量を小さくすることができる。
【0070】
本実施形態において、第1パイプ部材51における下流側センサ84が挿入される挿入部分86は、第1パイプ部材51の入口部76に比べて縮径している。この構成によれば、第1パイプ部材51内の排ガスGを下流側センサ84付近に集約させることができ、検出精度を高めることができる。
【0071】
本実施形態において、第1パイプ部材51における下流側センサ84が挿入される挿入部分86よりも下流側に、排気マフラの20の軸心AX方向に延長して延びる延長部分82が形成されている。この構成によれば、第1パイプ部材51の出口51bと挿入部分86とを離間することができ、排気脈動に起因して、出口51bから逆流した排ガスGが下流側センサ84に達することを防ぐことができ、検出精度を高めることができる。
【0072】
本実施形態において、第1パイプ部材51における下流側センサ84が挿入される挿入部分86よりも上流側に、触媒コンバータ72が配置されている。この構成によれば、共通の第1パイプ部材51に、触媒コンバータ72と下流側センサ84を支持することができる。
【0073】
本実施形態において、第1パイプ部材51における触媒コンバータ72の上流側に、排ガスGの流れを径方向に向ける偏向部分75が設けられている。この構成によれば、排ガスGが触媒コンバータ72に直接衝突するのを防いで、触媒コンバータ72が保護される。
【0074】
本実施形態では、触媒コンバータ72の分だけ消音空間SPが小さくなるが、マフラ本体部28よりも上流側のマフラ入口部30の内部も消音空間SPとし、触媒コンバータ72の一部がマフラ入口部30に配置されている。さらに、マフラ入口部30の内部における触媒コンバータ72の上流側に、パンチング孔75cを有する入口管75が配置されて排ガスGが径方向に拡散されている。これにより、消音空間SPが確保されるとともに、排ガスGが拡散されて均等に触媒コンバータ72に流れる。
【0075】
本実施形態において、図3に示す車体に取り付けられた状態で、閉塞体88は、外筒34からの凹み量が車幅方向一方側に向かって小さくなっている。この構成によれば、サイドスタンドで起立した状態で、凹部96に水が溜まるのを抑制できる。
【0076】
本実施形態において、外筒34の少なくとも一部を外側から覆うマフラカバー24が設けられ、下流側センサ84がマフラカバー24により外側から覆われている。この構成によれば、下流側センサ84はマフラカバー24で覆われているので、下流側センサ84を保護する専用の部品を設ける必要なく、下流側センサ84を保護でき、部品点数を削減することができる。
【0077】
本実施形態において、図4に示すように、内筒32と外筒34との間に吸音材36が充填され、吸音剤36の移動を規制する規制壁106が下流側センサ84の取付部付近に設けられている。この構成によれば、内筒32に開口を形成したことに起因して吸音材36がずれやすくなることを、規制壁106によって防ぐことができる。
【0078】
触媒コンバータ72の数、位置は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、触媒コンバータ72は1つのみで、排気マフラ20の内部に配置されていたが、触媒コンバータ72は2つ以上であってもよく、そのうちの少なくとも一つがマフラの外部に設けられてもよい。また、触媒コンバータ72は排気マフラ20の内部に配置されていなくてもよい。
【0079】
変形例として、閉塞体88は非円形、例えば、四角形状であってもよい。また、閉塞体88が第1パイプ部材51の内側に侵入してもよい。さらに、第1パイプ部材51も上下割の「もなか構造」であってもよい。また、第1パイプ部材51にセンサ固定用のボスが固定されるのではなく、閉塞体88A側にセンサ固定用のボスが形成されてもよい。この場合でも、閉塞体88Aと第1パイプ部材51が全周溶接されることで、排ガスGの流出を防ぐ。
【0080】
本開示の乗物の排気マフラは、以下の態様1から11を含む。
[態様1]
内部に消音空間が形成される内筒と、
マフラの外殻を構成する外筒と、
前記消音空間内に配置されて内部を排ガスが流れるパイプ部材と、
前記パイプ部材を流れる排ガスの状態を検知するセンサと、
前記センサの周囲に配置されて、消音空間内の気体の外方への流出を塞ぐ閉塞体と、
を備え、
前記閉塞体は、前記パイプ部材に接続されるパイプ側接続部分と、前記外筒に接続される外筒側接続部分とを有している鞍乗型乗物の排気マフラ。
[態様2]
態様1に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記センサが挿入される挿入部分の軸心が、前記外筒の軸心よりも径方向外側に位置する乗物の排気マフラ。
[態様3]
態様1または2に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記閉塞体は、
前記外筒の開口に隣接する部分に対して周方向に重なって接続される第1部材と、
前記パイプ部材の開口に隣接する部分に対して径方向に重なって接続される第2部材とを有し、
前記第1部材と前記第2部材とは、軸方向に重なる部分で互いに接続されている乗物の排気マフラ。
[態様4]
態様1から3のいずれか一態様に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記センサが挿入される挿入部分よりも上流側の部分は、その軸心が前記挿入部分に向かって径方向に外筒の開口に近づく方向に傾斜している乗物の排気マフラ。
[態様5]
態様1から4のいずれか一態様に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記センサが挿入される挿入部分は、前記パイプ部材の入口に比べて縮径している乗物の排気マフラ。
[態様6]
態様1から5のいずれか一態様に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記センサが挿入される挿入部分よりも下流側に延長して延びる延長部分が形成されている乗物の排気マフラ。
[態様7]
態様1から6のいずれか一態様に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記センサが挿入される挿入部分よりも上流側に触媒コンバータが配置されている乗物の排気マフラ。
[態様8]
態様7に記載の乗物の排気マフラにおいて、前記パイプ部材における前記触媒コンバータの上流側に、排ガスの流れを径方向に向ける偏向部分が設けられている乗物の排気マフラ。
[態様9]
態様1から8のいずれか一態様に記載の乗物の排気マフラにおいて、乗物に取り付けられた状態で、前記閉塞体は、前記外筒からの凹み量が乗物の幅方向一方側に向かって小さくなっている乗物の排気マフラ。
[態様10]
態様1から9のいずれか一態様に記載の乗物の排気マフラにおいて、さらに、前記外筒の少なくとも一部を外側から覆うマフラカバーを備え、
前記センサが、前記マフラカバーにより外側から覆われている乗物の排気マフラ。
[態様11]
態様1から10のいずれか一態様に記載の乗物の排気マフラにおいて、さらに、
前記内筒と前記外筒との間に充填される吸音材と、
前記センサの取付部付近に設けられて、前記吸音剤の移動を規制する規制壁と、
を備えた乗物の排気マフラ。
【0081】
本開示は、以上の形態に限定されるものでなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、排ガスセンサとして、排ガス中の酸素の量を検出する酸素センサが用いられていたが、これに限定されず、例えば、排ガスの温度を検出する温度センサ、排ガスの流速を検出する流速センサ、排ガスの圧力を検出する圧力センサ等であってもよい。
【0082】
上記実施形態では、下流側センサ84が排気マフラ22内に配置される例を説明したが、上流側センサ35が排気マフラ22内に配置される場合、上流側センサ35の固定構造として上述の構造を適用することができる。そのほか、排気ガスセンサ以外のセンサ、たとえば構造であっても同様に適用することが可能。
【0083】
本開示の排気マフラが搭載される乗物は、比較的小型である運転者がシートに跨る鞍乗型乗物であってもよいが、これに限らない。例えば、乗物は、幅方向に横並びで搭乗者が乗車する四輪車両に適用されてもよい。また、本開示の排気マフラは、内燃機関と電動モータとを有するハイブリッド乗物に適用されてもよい。本開示の排気マフラは、好ましくは、マフラのうちで、外筒の少なくとも一部が、外方に露出する乗物に好適に適用することができる。
【0084】
本開示の排気マフラは、内筒と外筒とを有する2重構造の排気マフラに適用できる。言い換えると、本開示の排気マフラは、パイプ部材、内筒、外筒とを有する3重構造の排気マフラに適用できる。このため、乗物に対するマフラレイアウトは、限定されない。排気マフラは、後輪の車幅方向外側の一方に配置されてもよいし、後輪の車幅方向外側の両方に配置されてもよい。また、排気マフラは、後輪の直上に配置されてもよいし、排気チャンバとして後輪とエンジンとの間に配置されてもよい。消音室内で区画される構造についても、上記実施形態は一例であって、外筒、内筒、パイプ部材の三重構造を有していればよく、既存の他の構造を用いてもよい。したがって、そのようなものも本開示の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
20 排気マフラ
24 マフラカバー
32 内筒
34 外筒
36 充填材
51 第1パイプ部材
72 触媒コンバータ
75 入口管(偏向部分)
82 延長部分
84 下流側センサ(センサ)
86 挿入部分
88 閉塞体
90 マフラ開口(外筒の開口)
92 パイプ開口(パイプ部材の開口)
100 パイプ側接続部分(第2部材)
102 外筒側接続部分(第1部材)
106 規制壁
G 排ガス
SP 消音空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7