(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007286
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】洗浄方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/42 20060101AFI20250109BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G03F7/42
H01L21/92 604Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108574
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃平
【テーマコード(参考)】
2H196
【Fターム(参考)】
2H196AA26
2H196AA27
2H196LA03
(57)【要約】
【課題】一態様において、樹脂マスク除去性及び安定性に優れる洗浄方法を提供する。
【解決手段】本開示は、洗浄剤組成物を用いて、樹脂マスクが付着した被洗浄物から樹脂マスクを剥離する工程を含む洗浄方法に関する。前記洗浄剤組成物は、アルカノールアミン(成分A)、第四級アンモニウム水酸化物(成分B)、グリコールエーテル(成分C)及び水(成分D)を含有する。前記洗浄剤組成物中の成分Aの含有量は3質量%以上18質量%以下、成分Bの含有量は1質量%以上15質量%以下、成分Cの含有量は、2質量%以上10質量%以下、成分Dの含有量は60質量%以上90.5質量%以下であり、質量比A/Cは0.9以上1.9以下、質量比B/Cは0.35以上2.0以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄剤組成物を用いて、樹脂マスクが付着した被洗浄物から樹脂マスクを剥離する工程を含み、
前記洗浄剤組成物は、アルカノールアミン(成分A)、第4級アンモニウム水酸化物(成分B)、グリコールエーテル(成分C)及び水(成分D)を含有し、
前記洗浄剤組成物中の成分Aの含有量は3質量%以上18質量%以下であり、
前記洗浄剤組成物中の成分Bの含有量は1質量%以上15質量%以下であり、
前記洗浄剤組成物中の成分Cの含有量は2質量%以上10質量%以下であり、
前記洗浄剤組成物中の成分Dの含有量は60質量%以上90.5質量%以下であり、
前記洗浄剤組成物中の成分Aと成分Cとの質量比A/Cは0.9以上1.9以下であり、
前記洗浄剤組成物中の成分Bと成分Cとの質量比B/Cは0.35以上2.0以下である、洗浄方法。
【請求項2】
成分Aは、モノエタノールアミンである、請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
成分Bは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドである、請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
成分Cは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである、請求項1から3のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄剤組成物中の成分Aと成分Cとの質量比A/Cは1.2以上1.7以下である、請求項1から4のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄剤組成物中の成分Bと成分Cとの質量比B/Cは0.45以上0.7以下である、請求項1から5のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記洗浄剤組成物は、トリアゾール類を含まない、請求項1から6のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄剤組成物は、非水溶性溶剤を含まない、請求項1から7のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記洗浄剤組成物は、有機リン化合物又はその塩を含まない、請求項1から8のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記樹脂マスクが付着した被洗浄物は、表面に金属層及び樹脂マスクを有する基板である、請求項1から9のいずれかに記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗浄方法及びこれを用いる電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや各種電子デバイスにおいては、低消費電力化、処理速度の高速化、小型化が進み、これらに搭載されるパッケージ基板などの配線は年々微細化が進んでいる。このような微細配線並びにピラーやバンプといった接続端子形成にはこれまでメタルマスク法が主に用いられてきたが、汎用性が低いことや配線等の微細化への対応が困難になってきたことから、他の新たな方法へと変わりつつある。
【0003】
新たな方法の一つとして、ドライフィルムレジストをメタルマスクに代えて厚膜樹脂マスクとして使用する方法が知られている。この樹脂マスクは最終的に剥離・除去されるが、その際にアルカリ性の剥離用洗浄剤が使用される。
【0004】
例えば、特許文献1には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の強アルカリ性水溶液(剥離液)で水溶性レジストを剥離する方法が提案されている。同文献の0013段落には、強アルカリ性水溶液の添加剤として、亜硫酸塩等が挙げられている。
特許文献2には、アルカリ剤(成分A)、有機溶剤(成分B)、キレート剤(成分C)及び水を含有し、成分Bがグリコールエーテル及び芳香族ケトンから選ばれる少なくとも1種の溶剤であり、成分Cがカルボキシ基及びホスホン酸基から選ばれる少なくとも1種の酸基を2以上有する化合物であり、使用時における成分Bの含有量が1質量%以上12質量%以下、使用時における成分Dの含有量が65質量%以上95質量%以下である、樹脂マスク剥離用洗浄剤組成物が提案されている。
特許文献3には、特定のアミノアルコール(成分A)、特定の水酸化テトラアルキルアンモニウム(成分B)、炭素数1以上5以下のカルボン酸又はその塩(成分C)、特定のグリコールエーテル(成分D)、特定のイミダゾール系化合物(成分E)及び水(成分F)を含有する樹脂マスク剥離用洗浄剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-250401号公報
【特許文献2】特開2021-006904号公報
【特許文献3】特開2017-116871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリント基板等に微細配線を形成する上で、樹脂マスクの残存はもちろんのこと、微細配線やバンプ形成に用いられるはんだやめっき液等に含まれる助剤等の残存を低減するため、洗浄剤組成物には高い洗浄性が要求される。
しかしながら、配線が微細化するにつれて、微細な隙間にある樹脂マスクを除去することが困難になってきており、洗浄剤組成物には、高い樹脂マスク除去性が要求される。
また、近年では、様々なパターンを有する基板が提案されている。例えば、
図1に示すように、基板表面に形成された金属層2(例えば、銅めっき層)と、金属層2にパーフォレーション状に存在する樹脂マスク層1とを有する基板(すなわち、樹脂マスク層の周囲(側面)が金属層で囲まれた構造を有する基板)の場合、従来の洗浄剤組成物では、樹脂マスクと金属層の界面に洗浄剤組成物が侵入しにくく、樹脂マスクの剥離が難しい。
一方、安定生産の為には洗浄剤自体の安定性が求められる。沈降物が発生したり、不均一な状態になることで品質の安定した基板の洗浄ができなくなるという問題がある。これまでは、樹脂の除去性の高い洗浄剤の検討を行ってきたが、往々にしてその様な洗浄剤は安定性(成分の分離抑制)に欠ける場合があった。
【0007】
そこで、本開示は、樹脂マスク除去性及び安定性に優れる洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一態様において、洗浄剤組成物を用いて樹脂マスクが付着した被洗浄物から樹脂マスクを剥離する工程を含み、前記洗浄剤組成物は、アルカノールアミン(成分A)、第4級アンモニウム水酸化物(成分B)、グリコールエーテル(成分C)及び水(成分D)を含有し、前記洗浄剤組成物中の成分Aの含有量は3質量%以上18質量%以下であり、前記洗浄剤組成物中の成分Bの含有量は1質量%以上15質量%以下であり、前記洗浄剤組成物中の成分Cの含有量は2質量%以上10質量%以下であり、前記洗浄剤組成物中の成分Dの含有量は60質量%以上90.5質量%以下であり、前記洗浄剤組成物中の成分Aと成分Cとの質量比A/Cは0.9以上1.9以下であり、前記洗浄剤組成物中の成分Bと成分Cとの質量比B/Cは0.35以上2.0以下である、洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、樹脂マスク除去性及び安定性に優れる洗浄方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、被洗浄基板の基板表面の外観の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、アルカノールアミン(成分A)、第4級アンモニウム水酸化物(成分B)、グリコールエーテル(成分C)を特定の質量比で含む洗浄剤組成物を用いることで、基板表面から樹脂マスクを効率よく除去でき、安定性(成分の分離抑制)に優れた状態を維持できるという知見に基づく。
【0012】
本開示は、一態様において、洗浄剤組成物(以下、「本開示の洗浄剤組成物」ともいう)を用いて樹脂マスクが付着した被洗浄物から樹脂マスクを剥離する工程を含み、前記洗浄剤組成物は、アルカノールアミン(成分A)、第4級アンモニウム水酸化物(成分B)、グリコールエーテル(成分C)及び水(成分D)を含有し、前記洗浄剤組成物中の成分Aの含有量は3質量%以上18質量%以下であり、前記洗浄剤組成物中の成分Bの含有量は1質量%以上15質量%以下であり、前記洗浄剤組成物中の成分Cの含有量は2質量%以上10質量%以下であり、前記洗浄剤組成物中の成分Dの含有量は60質量%以上90.5質量%以下であり、前記洗浄剤組成物中の成分Aと成分Cとの質量比A/Cは0.9以上1.9以下であり、前記洗浄剤組成物中の成分Bと成分Cとの質量比B/Cは0.35以上2.0以下である、洗浄方法(以下、「本開示の洗浄方法」ともいう)に関する。
【0013】
本開示によれば、樹脂マスク除去性及び安定性に優れる洗浄方法を提供できる。そして、本開示の洗浄方法を樹脂マスクが付着した電子回路基板等の電子部品の洗浄に用いることで、生産効率よく、且つ、高い収率で高品質の電子部品を得ることができる。
【0014】
本開示の効果発現の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。
本開示では、アルカノールアミン(成分A)及び第4級アンモニウム水酸化物(成分B)が、樹脂マスク内に浸透して樹脂マスクに配合されているアルカリ可溶性樹脂の解離を促進し、更に解離によって生じる電荷の反発を起こすことによって樹脂マスクの膨潤を促進すると考えられる。
一方で、被洗浄基板が、
図1に示すように、パーフォレーション状に存在する樹脂マスク1の周囲を金属層2に囲まれた界面比率(=樹脂マスクと金属層との界面線長/樹脂マスクの面積)の高い構造である場合、樹脂マスクへの膨潤のみでは剥離は進行しにくいと考えられる。しかし、本開示では、アルカノールアミン(成分A)、第4級アンモニウム水酸化物(成分B)及びグリコールエーテル(成分C)を特定の比率で併用することで、樹脂マスクと金属層の界面に洗浄剤組成物が侵入しやすくなり、樹脂マスクがローリングアップされるように剥離が進行すると考えられる。さらに、樹脂マスクと金属層の界面に洗浄剤組成物が侵入しやすくなっていることで、実使用時の劣化や成分濃度減少が生じても高い剥離性と成分の安定性(成分の分離抑制)を維持できると考えられる。
但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0015】
本開示において樹脂マスクとは、エッチング、めっき、加熱等の処理から物質表面を保護するためのマスク、すなわち、保護膜として機能するマスクである。
樹脂マスクとしては、一又は複数の実施形態において、露光及び現像工程後のレジスト層、露光及び現像の少なくとも一方の処理が施された(以下、「露光及び/又は現像処理された」ともいう)レジスト層、あるいは、硬化したレジスト層が挙げられる。
また、樹脂マスクは、一又は複数の実施形態において、光や電子線等によって現像液に対する溶解性等の物性が変化するレジストを用いて形成されるものである。レジストは、光や電子線との反応方法から、ネガ型とポジ型に大きく分けられている。ネガ型レジストは、露光されると現像液に対する溶解性が低下する特性を有し、ネガ型レジストを含む層(以下、「ネガ型レジスト層」ともいう)は、露光及び現像処理後に露光部が樹脂マスクとして使用される。ポジ型レジストは、露光されると現像液に対する溶解性が増大する特性を有し、ポジ型レジストを含む層(以下、「ポジ型レジスト層」ともいう)は、露光及び現像処理後に露光部が除去され、未露光部が樹脂マスクとして使用される。このような特性を有する樹脂マスクを使用することで、金属配線、金属ピラーやハンダバンプといった回路基板の微細な接続部を形成することができる。
樹脂マスクを形成する樹脂材料としては、一又は複数の実施形態において、フィルム状の感光性樹脂、レジストフィルム、又はフォトレジストが挙げられる。レジストフィルムは汎用のものを使用できる。
【0016】
[剥離工程]
本開示の洗浄方法は、本開示の洗浄剤組成物を用いて、樹脂マスクが付着した被洗浄物から樹脂マスクを剥離する工程(以下、単に「剥離工程」ともいう)を含む。前記剥離工程は、一又は複数の実施形態において、樹脂マスクが付着した被洗浄物を本開示の洗浄剤組成物に接触させることを含む。本開示の洗浄方法によれば、安定性(成分の分離抑制)に優れ、樹脂マスクを効率よく除去できる。
【0017】
本開示の洗浄剤組成物を用いて被洗浄物から樹脂マスクを剥離する方法、又は、被洗浄物に本開示の洗浄剤組成物を接触させる方法としては、例えば、洗浄剤組成物を入れた洗浄浴槽内へ浸漬することで接触させる方法、洗浄剤組成物をスプレー状に射出して接触させる方法(シャワー方式)、浸漬中に超音波照射する超音波洗浄方法等が挙げられる。本開示の洗浄剤組成物は、希釈することなくそのまま洗浄に使用できる。被洗浄物としては、上述した被洗浄物を挙げることができる。浸漬時間としては、例えば、1分以上10分以下、更には3分以上6分以下が挙げられる。スプレー時間としては、例えば、1分以上10分以下、更には3分以上6分以下が挙げられる。
【0018】
本開示の洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、洗浄剤組成物に被洗浄物を接触させた後、水でリンスし、乾燥する工程を含むことができる。リンス方法としては、例えば、流水リンスが挙げられる。乾燥方法としては、例えば、エアブロー乾燥が挙げられる。
本開示の洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、洗浄剤組成物に被洗浄物を接触させた後、水ですすぐ工程を含むことができる。
【0019】
本開示の洗浄方法は、本開示の洗浄剤組成物の洗浄力が発揮されやすい点から、本開示の洗浄剤組成物と被洗浄物との接触時に超音波を照射することが好ましく、その超音波は比較的高周波数であることがより好ましい。前記超音波の照射条件は、同様の観点から、例えば、26~72kHz、80~1500Wが好ましく、36~72kHz、80~1500Wがより好ましい。
【0020】
本開示の洗浄方法において、本開示の洗浄剤組成物の洗浄力が発揮されやすい点から、洗浄剤組成物の温度は40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、そして、有機樹脂含有基板に対する影響低減の観点から、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
【0021】
[被洗浄物]
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、樹脂マスクが付着した被洗浄物の洗浄に使用できる。
樹脂マスクが付着した被洗浄物としては、一又は複数の実施形態において、表面に金属層及び樹脂マスクを有する基板が挙げられる。
前記基板としては、例えば、ガラスエポキシ多層基板が挙げられる。
前記金属層は、一又は複数の実施形態において、銅めっき層である。銅めっき層は、例えば、無電解銅めっき法により形成することができる。前記金属層の厚さとしては、例えば、3μm以上30μm以下が挙げられる。
【0022】
前記樹脂マスクとしては、一又は複数の実施形態において、金属層にパーフォレーション状に存在する樹脂マスク(樹脂マスク層)が挙げられる(
図1参照)。前記樹脂マスクは、一又は複数の実施形態において、側面が金属層に囲まれている。前記樹脂マスク層の形状としては、一又は複数の実施形態において、多角(四角、六角、八角など)柱状、円柱状、略円柱状等が挙げられる。前記樹脂マスク層の直径(多角形の場合その外接円の直径)としては、例えば、20μm以上200μm以下が挙げられる。前記樹脂マスク層の厚さとしては、例えば、5μm以上50μm以下が挙げられる。
パーフォレーション状に存在する樹脂マスクの界面比率(=樹脂マスクと金属層との界面線長/樹脂マスクの面積)としては、0.01以上0.5以下、又は、0.02以上0.2以下が挙げられる。ここで、樹脂マスクと金属層との界面線長とは、例えば、樹脂マスクが上面から見て円の場合、その円周の長さとなる。
このような構造の樹脂マスクを有する被洗浄物の樹脂マスクは、従来の剥離剤では剥離性が低下するという新たな問題が見出された。本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、このような構造の樹脂マスクを好適に剥離することができる。
本開示における被洗浄物としては、一又は複数の実施形態において、上述のような、金属層にパーフォレーション状に存在する樹脂マスクが少なくとも1つ付着した被洗浄物が挙げられる。
【0023】
樹脂マスクが付着した被洗浄物は、その他の一又は複数の実施形態において、例えば、表面に金属層及び樹脂マスクを有する電子部品及びその製造中間物が挙げられる。電子部品としては、例えば、プリント基板、ウエハ、銅板及びアルミニウム板等の金属板から選ばれる少なくとも1つの部品が挙げられる。前記製造中間物は、電子部品の製造工程における中間製造物であって、樹脂マスク処理後の中間製造物を含む。
樹脂マスクが付着した被洗浄物の具体例としては、例えば、樹脂マスクを使用したはんだ付け及びめっき処理(銅めっき、アルミニウムめっき、ニッケルめっき、錫めっき等)の少なくとも一方の処理を行う工程を経ることにより、配線や接続端子等が基板表面に形成された電子部品等が挙げられる。本開示において、はんだ付けとは、基板上の樹脂マスク非存在部にはんだを存在させ、加熱によりはんだバンプ形成することをいう。本開示において、めっき処理とは、基板上の樹脂マスク非存在部に銅めっき、アルミニウムめっき、ニッケルめっき及び錫めっきから選ばれる少なくとも一種のめっき処理を行うことをいう。樹脂マスク非存在部とは、基板にラミネートされた樹脂マスクを現象処理することにより形成されたレジストパターン(パターン形状の樹脂マスク)において、現象処理により樹脂マスクが除去された部分のことである。したがって、本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物の、電子部品の製造における洗浄剤としての使用に関する。
【0024】
本開示の洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、洗浄効果の点から、樹脂マスク、あるいは、更にメッキ処理及び/又は加熱処理された樹脂マスクが付着した被洗浄物の洗浄に好適に用いられうる。樹脂マスクとしては、例えば、ネガ型樹脂マスクでもよいし、ポジ型樹脂マスクでもよく、本開示の効果が発揮されやすい点からは、ネガ型樹脂マスクが好ましい。ネガ型樹脂マスクとしては、例えば、露光及び/又は現像処理されたネガ型ドライフィルムレジストが挙げられる。本開示においてネガ型樹脂マスクとは、ネガ型レジストを用いて形成されるものであり、例えば、露光及び/又は現像処理されたネガ型レジスト層が挙げられる。本開示においてポジ型樹脂マスクとは、ポジ型レジストを用いて形成されるものであり、例えば、露光及び/又は現像処理されたポジ型レジスト層が挙げられる。
【0025】
[洗浄剤組成物]
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、下記成分A、下記成分B、下記成分C及び下記成分Dを含有する洗浄剤組成物である。本開示の洗浄剤組成物を樹脂マスクが付着した被洗浄物の洗浄に用いることで、樹脂マスクを効率よく除去できる。そして、本開示の洗浄剤組成物を、樹脂マスクを有する電子回路基板等の電子部品の洗浄に用いることで、高い収率で高品質の電子部品を得ることができる。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、樹脂マスクが付着した被洗浄物の洗浄に使用されうる。本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、樹脂マスクが付着した被洗浄物から樹脂マスクを剥離するために使用することができる。すなわち、本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物の、樹脂マスクが付着した被洗浄物から樹脂マスクを剥離するための使用に関する。
【0026】
(成分A:アルカノールアミン)
本開示の洗浄剤組成物に含まれるアルカノールアミン(アミノアルコール)(以下、「成分A」ともいう)としては、例えば、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。成分Aは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【化1】
【0027】
上記式(I)において、R1は、水素原子、メチル基、エチル基又はアミノエチル基を示し、R2は、水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メチル基又はエチル基を示し、R3は、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基を示す。
【0028】
成分Aとしては、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、モノイソプロパノールアミン、N-メチルモノエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン、N-エチルモノエタノールアミン、N-エチルイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-ジメチルモノエタノールアミン、N-ジメチルモノイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルジイソプロパノールアミン、N-ジエチルモノエタノールアミン、N-ジエチルモノイソプロパノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-エチルジイソプロパノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-(β-アミノエチル)イソプロパノールアミン、N-(β-アミノエチル)ジエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)ジイソプロパノールアミンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、樹脂マスク除去性向上の観点から、モノエタノールアミン(MEA)が好ましい。
【0029】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Aの含有量は、樹脂マスク除去性向上の観点から、3質量%以上であって、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、そして、同様の観点から、18質量%以下であって、12質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。同様の観点から、本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Aの含有量は、3質量%以上18質量%以下であって、5質量%以上12質量%以下が好ましく、8質量%以上10質量%以下がより好ましい。成分Aが2種以上の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0030】
本開示において「洗浄剤組成物の使用時における各成分の含有量」とは、洗浄時、すなわち、洗浄剤組成物の洗浄への使用を開始する時点での各成分の含有量をいう。
本開示の洗浄剤組成物中の各成分の含有量は、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物中の各成分の配合量とみなすことができる。
【0031】
(成分B:第4級アンモニウム水酸化物)
本開示の洗浄剤組成物に含まれる第4級アンモニウム水酸化物(以下、「成分B」ともいう)としては、例えば、下記式(II)で表される第4級アンモニウム水酸化物が挙げられる。成分Bは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【化2】
【0032】
上記式(II)において、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選ばれる少なくとも1種である。
【0033】
式(II)で表される第4級アンモニウム水酸化物は、第4級アンモニウムカチオンとヒドロキシドとからなる塩であり、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、2-ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ジエチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ジプロピルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)エチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、及びテトラキス(2-ヒドロキシプロピル)アンモニウムヒドロキシドから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、樹脂マスク除去性向上の観点から、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)が好ましい。
【0034】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Bの含有量は、樹脂マスク除去性向上の観点から、1質量%以上であって、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、そして、同様の観点から、15質量%以下であって、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。同様の観点から、本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Bの含有量は、1質量%以上15質量%以下であって、2質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上5質量%以下がより好ましい。成分Bが2種以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0035】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Aと成分Bの合計の含有量は、樹脂マスク除去性向上の観点から、6質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、12質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、16質量%以下が更に好ましく、14質量%以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示の洗浄剤組成物の使用時における分Aと成分Bの合計の含有量は、6質量%以上20質量%以下が好ましく、8質量%以上18質量%以下がより好ましく、10質量%以上16質量%以下が更に好ましく、12質量%以上14質量%以下が更に好ましい。
【0036】
(成分C:グリコールエーテル)
本開示の洗浄剤組成物に含まれるグリコールエーテル(以下、「成分C」ともいう)としては、樹脂マスク除去性向上の観点から、炭素数1以上8以下のアルコールにエチレングリコールが1以上3モル以下付加した構造を有する化合物が挙げられる。グリコールエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、及びジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのなかでも、樹脂マスク除去性向上の観点から、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)が好ましい。成分Cは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0037】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Cの含有量は、樹脂マスク除去性向上の観点から、2質量%以上であって、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、そして、同様の観点から、10質量%以下であって、8質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。同様の観点から、本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Cの含有量は、2質量%以上10質量%以下であって、3質量%以上8質量%以下が好ましく、5質量%以上6質量%以下がより好ましい。成分Cが2種以上の組合せである場合、成分Cの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0038】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Aと成分Cとの質量比A/Cは、安定性(成分の分離抑制)、樹脂マスク除去性向上及び基板樹脂のダメージ抑制の観点から、0.9以上であって、1.0以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、1.9以下であって、1.8以下が好ましく、1.7以下がより好ましい。同様の観点から、本開示の洗浄剤組成物における質量比A/Cは、一又は複数の実施形態において、0.9以上1.9以下であって、1.0以上1.8以下が好ましく、1.1以上1.7以下がより好ましく、1.2以上1.7以下が更に好ましい。
【0039】
本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Bと成分Cとの質量比B/Cは、安定性(成分の分離抑制)、樹脂マスク除去性向上及び基板樹脂のダメージ抑制の観点から、0.35以上であって、0.4以上が好ましく、0.45以上がより好ましく、そして、同様の観点から、2.0以下であって、1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.7以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示の洗浄剤組成物における質量比B/Cは、一又は複数の実施形態において、0.35以上2.0以下であって、0.4以上1.5以下が好ましく、0.45以上1.0以下がより好ましく、0.45以上0.7以下が更に好ましい。
【0040】
(成分D:水)
本開示の洗浄剤組成物に含まれる水(以下、「成分D」ともいう)としては、一又は複数の実施形態において、イオン交換水、RO水、蒸留水、純水、超純水等が挙げられる。
【0041】
本開示の洗浄剤組成物中の成分Dの含有量は、成分A、成分B、成分C及び後述する任意成分を除いた残余とすることができる。具体的には、本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Dの含有量は、樹脂マスク除去性向上、排水処理負荷低減、及び基板樹脂のダメージ抑制の観点から、60質量%以上であって、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、そして、樹脂マスク除去性向上の観点から、90.5質量%以下であって、88質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。同様の観点から、本開示の洗浄剤組成物の使用時における成分Dの含有量は、60質量%以上90.5質量%以下であって、70質量%以上88質量%以下が好ましく、80質量%以上85質量%以下がより好ましい。
【0042】
(その他の成分)
本開示の洗浄剤組成物は、前記成分A~D以外に、必要に応じてその他の成分をさらに含有することができる。その他の成分としては、通常の洗浄剤に用いられうる成分を挙げることができ、例えば、成分A及び成分B以外のアルカリ剤、成分A以外のアミン、成分C以外の有機溶剤、界面活性剤、キレート剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、高分子化合物、可溶化剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0043】
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、トリアゾール類を実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時におけるトリアゾール類の含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、非水溶性溶剤を実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時における非水溶性溶剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、有機リン化合物又はその塩を実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時における有機リン化合物又はその塩の含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、炭素数1以上5以下のカルボン酸又はその塩を実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時における炭素数1以上5以下のカルボン酸又はその塩の含有量は、好ましくは0.05質量%未満、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、イミダゾール系化合物を実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時におけるイミダゾール系化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%未満、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、キレート剤を実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時におけるキレート剤の含有量は、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、チオグリコール酸を実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時におけるチオグリコール酸の含有量は、好ましくは0.4質量%未満、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、N-オキシド化合物を実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時におけるN-オキシド化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%未満、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、尿素を実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時における尿素の含有量は、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、芳香族アルコールを実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時における芳香族アルコールの含有量は、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、亜硫酸系還元剤を実質的に含まないものとすることができる。本開示の洗浄剤組成物の使用時における亜硫酸系還元剤の含有量は、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0質量%(すなわち、含まないこと)である。
【0044】
(洗浄剤組成物の製造方法)
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、前記成分A~D及び必要に応じて上述の任意成分(その他の成分)を公知の方法で配合することにより製造できる。例えば、本開示の洗浄剤組成物は、少なくとも前記成分A~Dを配合してなるものとすることができる。したがって、本開示は、少なくとも前記成分A~Dを配合する工程を含む洗浄剤組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A~D及び必要に応じて上述した任意成分を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示の洗浄剤組成物の製造方法において、各成分の好ましい配合量は、上述した本開示の洗浄剤組成物の各成分の好ましい含有量と同じとすることができる。
【0045】
本開示の洗浄剤組成物は、分離や析出等を起こして保管安定性を損なわない範囲で水(成分D)の量を減らした濃縮物として調製してもよい。洗浄剤組成物の濃縮物は、輸送及び貯蔵の観点から、希釈倍率3倍以上の濃縮物とすることが好ましく、保管安定性の観点から、希釈倍率30倍以下の濃縮物とすることが好ましい。洗浄剤組成物の濃縮物は、使用時に成分A~D及び任意成分が上述した含有量(すなわち、洗浄時の含有量)になるよう水(成分D)で希釈して使用することができる。更に洗浄剤組成物の濃縮物は、使用時に各成分を別々に添加して使用することもできる。本開示において濃縮液の洗浄剤組成物の「使用時」又は「洗浄時」とは、洗浄剤組成物の濃縮物が希釈された状態をいう。
【0046】
[電子部品の製造方法]
本開示は、一態様において、本開示の洗浄方法を用いて、樹脂マスクが付着した被洗浄物から樹脂マスクを剥離する工程(剥離工程)を含む、電子部品の製造方法に関する。被洗浄物としては、上述した被洗浄物を挙げることができる。
本開示は、その他の態様において、本開示の洗浄剤組成物を用いて、樹脂マスクを有する電子回路基板を洗浄する工程(以下、「洗浄工程」ともいう)を含む、電子部品の製造方法に関する。前記洗浄工程における洗浄方法としては、上述した本開示の洗浄方法と同様の方法が挙げられる。
本開示の電子部品の製造方法によれば、電子部品に付着した樹脂マスクを効果的に除去できるため、信頼性の高い電子部品の製造が可能になる。更に、本開示の洗浄方法を行うことにより、電子部品に付着した樹脂マスクの剥離が容易になることから、洗浄時間が短縮化でき、電子部品の製造効率を向上できる。
【0047】
[キット]
本開示は、一態様において、本開示の洗浄方法及び本開示の電子部品の製造方法のいずれかに使用するためのキット(以下、「本開示のキット」ともいう)に関する。本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物を製造するためのキットである。本開示のキットによれば、樹脂マスク除去性及び安定性(成分の分離抑制)に優れる洗浄剤組成物を得ることができる。
【0048】
本開示のキットの一実施形態としては、成分Aを含有する溶液(第1液)と、成分Bを含有する溶液(第2液)と、成分Cを含有する溶液(第3液)とを、相互に混合されない状態で含み、第1液、第2液及び第3液から選ばれる少なくとも1つは成分D(水)の一部又は全部を更に含有し、第1液と第2液と第3液は使用時に混合されるキット(3液型洗浄剤組成物)が挙げられる。第1液と第2液と第3液が混合された後、必要に応じて成分D(水)で希釈されてもよい。第1液、第2液及び第3液の各々には、必要に応じて上述した任意成分が含まれていてもよい。
本開示のキットのその他の実施形態としては、成分A及び成分Bを含有する溶液(第1液)と、成分Cを含有する溶液(第2液)とを、相互に混合されない状態で含み、第1液及び第2液の少なくとも一方は、成分D(水)の一部又は全部を更に含有し、第1液と第2液とは使用時に混合される、キット(2液型洗浄剤組成物)が挙げられる。第1液と第2液とが混合された後、必要に応じて成分D(水)で希釈されてもよい。第1液及び第2液の各々には、必要に応じて上述した任意成分が含まれていてもよい。
【実施例0049】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0050】
1.実施例1~5及び比較例1~7の洗浄剤組成物の調製
表1に示す各成分を表1に記載の配合量(質量%、有効分)で配合し、それを攪拌して混合することにより、実施例1~5及び比較例1~7の洗浄剤組成物を調製した。
【0051】
実施例1~5及び比較例1~7の洗浄剤組成物の調製には、下記のものを使用した。
(成分A)
MEA:モノエタノールアミン[株式会社日本触媒製]
(成分B)
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド[株式会社レゾナック製、25%水溶液]
(成分C)
BDG:ブチルジグリコール[日本乳化剤株式会社製]
(成分D)
水[オルガノ株式会社製純水装置G-10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水]
【0052】
2.実施例1~5及び比較例1~7の洗浄剤組成物の評価
調製した実施例1~5及び比較例1~7の洗浄剤組成物について下記評価を行った。
【0053】
[テストピース]
テストピースは、120mm×120mmのサイズで、
図1に示すように、ガラスエポキシ多層基板の表面に銅めっきで形成した厚さ15μmの金属層2と、金属層2にパーフォレーション状に存在する直径75μmの円形部に厚さ25μmのネガ型ドライフィルムレジストである樹脂マスク層1とを有し、樹脂マスクの厚さ25μmの内15μmは金属層に埋まった構造である。
【0054】
[安定性(成分の分離抑制)、樹脂マスク除去性(剥離性)の評価]
5Lステンレスビーカーに各洗浄剤組成物を3kg添加した後、成分A、成分B、成分Cの量が調整直後から0.8%少ない量になるように成分D(水)を加えて希釈しながら二酸化炭素をバブリングし、洗浄剤組成物に0.9mol/Lの炭酸を蓄積させ、外観を目視で観察し、安定性(成分の分離抑制)を下記基準で評価した。
次に、これを60℃に加温し、1流体ノズル(充円錐形)J020(株式会社いけうち製)をスプレーノズルとして取り付けたボックス型スプレー洗浄機にて循環しながら、テストピースを90秒間スプレー(圧力:0.2MPa、スプレー距離:8cm)した。そして、水を30秒間かけ流してリンスを行った後、窒素ブローにて乾燥した。光学顕微鏡「デジタルマイクロスコープVHX-6000」(株式会社キーエンス製)を用いて、前記のスプレー処理を行った後のテストピースに残存する樹脂マスク残渣の有無を100倍に拡大して目視確認した。炭酸蓄積時の洗浄剤組成物の外観、スプレー処理後の樹脂マスク残渣の有無に基づき、樹脂マスク除去性(剥離性)を下記基準で評価した。結果を表1に示した。
<安定性(成分の分離抑制)判定基準>
A:60℃でわずかに濁る程度で分離しない
B:60℃で濁るものの分離しない
C:60℃で激しく濁るが、分離しない
D:60℃で激しく濁り、分離も生じるために取り扱い困難
<樹脂マスク除去性(剥離性)判定基準>
A:樹脂マスク残渣がない
B:3%以下の樹脂マスク残渣がある
C:3%を超え、10%以下の樹脂マスク残渣がある
D:10%を超える樹脂マスク残渣がある
【0055】
【0056】
表1に示すとおり、質量比A/Cが0.9~1.9の範囲内でかつ質量比B/Cが0.35~2.0の範囲内である実施例1~5の洗浄剤組成物は、比較例1~7に比べて、樹脂マスク除去性及び安定性に優れていることがわかった。更に、比較例5~7の様に質量比A/Cと質量比B/Cのいずれかが所定範囲を満たす場合でも、樹脂マスク除去性と安定性を満たすことができていないことがわかった。
本開示によれば、樹脂マスク除去性及び安定性に優れる洗浄方法を提供できる。そして、本開示の洗浄方法を用いることで、製造される電子部品の性能・信頼性の向上が可能となり、半導体装置の生産性を向上できる。