(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007305
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】補正装置、補正プログラム、及び補正方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/84 20230101AFI20250109BHJP
【FI】
H04N23/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108603
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 知行
【テーマコード(参考)】
5C066
【Fターム(参考)】
5C066AA02
5C066CA09
5C066DC01
5C066EA03
5C066JA01
(57)【要約】
【課題】輝度成分の変化量に関係なく色差成分を強調する補正を行う場合に比較して色にじみを改善できる補正装置、補正プログラム、及び補正方法を提供することを目的とする。
【解決手段】補正装置10は、変調された映像信号を受け付ける受付部110と、映像信号を色差信号及び輝度信号に分離する分離部120と、輝度信号から復調された復調輝度信号のうち、既定の周波数帯の輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合は、当該変化量が既定の閾値未満である場合に比較して、色差信号から復調された復調色差信号のうち、輝度成分に対応する色差成分を強調するように補正する補正部150と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調された映像信号を受け付ける受付部と、
前記映像信号を色差信号及び輝度信号に分離する分離部と、
前記輝度信号から復調された復調輝度信号のうち、既定の周波数帯の輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合は、当該変化量が前記既定の閾値未満である場合に比較して、前記色差信号から復調された復調色差信号のうち、前記輝度成分に対応する色差成分を強調するように補正する補正部と、
を含む、補正装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記輝度成分の変化量が前記既定の閾値未満である場合は、前記色差成分の補正をキャンセルする、請求項1に記載の補正装置。
【請求項3】
前記復調輝度信号の周波数帯域は、前記復調色差信号の周波数帯域より狭い、請求項1に記載の補正装置。
【請求項4】
前記色差成分が補正された前記復調色差信号及び前記復調輝度信号を組み合わせたYUVデータから変換されたRGBデータを出力する出力部を更に備える、請求項1に記載の補正装置。
【請求項5】
変調された映像信号を受け付け、
前記映像信号を色差信号及び輝度信号に分離し、
前記輝度信号から復調された復調輝度信号のうち、既定の周波数帯の輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合は、当該変化量が前記既定の閾値未満である場合に比較して、前記色差信号から復調された復調色差信号のうち、前記輝度成分に対応する色差成分を強調するように補正する、
処理をコンピュータに実行させる、
補正プログラム。
【請求項6】
変調された映像信号を受け付け、
前記映像信号を色差信号及び輝度信号に分離し、
前記輝度信号から復調された復調輝度信号のうち、既定の周波数帯の輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合は、当該変化量が前記既定の閾値未満である場合に比較して、前記色差信号から復調された復調色差信号のうち、前記輝度成分に対応する色差成分を強調するように補正する、
処理をコンピュータが実行する、
補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、補正装置、補正プログラム、及び補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ変調方式で映像信号を伝送すると、色と色との境界がにじむ場合がある。特に、隣り合う2つのピクセルを1セットとして一部の情報を共有するYUV422形式等、輝度より色差の周波数帯域が狭いほど色にじみが大きくなる。デジタル映像は色と色との境界が明確であり色の変化が大きい。したがって、アナログ変調方式及びアナログ復調方式を用いてデジタルの映像信号を伝送すると色にじみが目立つ場合がある。
【0003】
特許文献1には、映像信号処理装置が開示されている。この映像信号処理装置は、入力デジタル映像信号のプレーン領域の階調差をパラメータに応じて低減するスムージングブロックを有する。また、この映像信号処理装置は、入力デジタル映像信号の周波数状態を判定するとき、第1のケースとして予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分がこれより高域側の周波数成分より少ないケースの判定結果を得る周波数状態判定ブロックを有する。なお、この周波数状態判定ブロックは、第2のケースとして予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分が高域側の周波数成分より多いケースの判定結果も得る。そして、この映像信号処理装置は、判定結果が、第2のケースの場合は、スムージングブロックのスムージング処理を第1のケースのときよりも強化する補正パラメータを出力する補正パラメータ出力ブロックを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
色差信号から復調された復調色差信号のうち、既定の周波数帯の色差成分を強調する補正を行うことで色にじみを改善させる方法がある。しかし、本来色にじみが目立たない、輝度成分の変化量が相対的に小さい場合においても同様に色差成分を強調する補正を行うと、不自然な色にじみが目立ってしまうという課題があった。
【0006】
本開示は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、輝度成分の変化量に関係なく色差成分を強調する補正を行う場合に比較して色にじみを改善できる補正装置、補正プログラム、及び補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る補正装置は、変調された映像信号を受け付ける受付部と、前記映像信号を色差信号及び輝度信号に分離する分離部と、前記輝度信号から復調された復調輝度信号のうち、既定の周波数帯の輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合は、当該変化量が前記既定の閾値未満である場合に比較して、前記色差信号から復調された復調色差信号のうち、前記輝度成分に対応する色差成分を強調するように補正する補正部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、輝度成分の変化量に関係なく色差成分を強調する補正を行う場合に比較して色にじみを改善できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る補正装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る補正装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合の色差成分の一例を示す模式図である。
【
図4】輝度成分の変化量が既定の閾値未満である場合の色差成分の一例を示す模式図である。
【
図5】本実施形態に係る補正装置における補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1に本実施形態に係る補正装置10の概略構成を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る補正装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、及び通信部17の各構成を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。CPU11は本実施形態に係るコンピュータの一例である。
【0012】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12に補正プログラム12Aが格納されている。なお、補正プログラム12Aはストレージ14に格納されていてもよい。
【0013】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0014】
通信部17は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0015】
次に、本実施形態に係る補正装置10の機能構成を説明する。
【0016】
図2は、補正装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、補正装置10は、機能構成として、受付部110、分離部120、復調部130、抽出部140、補正部150、変換部160、及び出力部170を有する。各機能構成は、CPU11がROM12に記憶された補正プログラム12Aを読み出し、実行することにより実現される。
【0018】
受付部110は、変調された映像信号を受け付ける。そして、受付部110は、受け付けた映像信号を分離部120に出力する。
【0019】
分離部120は、映像信号を輝度信号及び色差信号に分離する。そして、分離部120は、輝度信号及び色差信号を復調部130に出力する。
【0020】
復調部130は、輝度信号を復調輝度信号に復調する。そして、復調部130は、復調輝度信号を抽出部140及び変換部160に出力する。また、復調部130は、色差信号を復調色差信号に復調する。そして、復調部130は、復調色差信号を抽出部140及び補正部150に出力する。なお、本実施形態では、輝度信号及び色差信号を単一の復調部130が復調している。しかし、この例に限られない。輝度信号及び色差信号を別々の復調部が復調してもよい。
【0021】
抽出部140は、復調輝度信号のうち、既定の周波数帯の輝度成分を抽出する。例えば、抽出部140は、復調輝度信号をバンドパスフィルタに入力して、輝度成分を抽出する。本実施形態では、既定の周波数帯は補正装置10の管理人等によって予め定められている。しかし、この例に限られない。例えば、既定の周波数帯は、復調輝度信号の周波数に基づいて定められてもよい。
【0022】
また、抽出部140は、復調色差信号のうち、輝度成分に対応する色差成分を抽出する。そして、抽出部140は輝度成分及び色差成分を補正部150に出力する。
【0023】
補正部150は、輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合は、当該変化量が既定の閾値未満である場合に比較して、色差成分を強調するように補正する。そして、補正部150は、補正された色差成分を復調色差信号に加算する。そして、補正部150は、補正された色差成分が加算された復調色差信号を変換部160に出力する。
【0024】
本実施形態では、既定の閾値は、補正装置10の管理人等によって予め定められている。しかし、この例に限られない。例えば、既定の閾値は、輝度成分の最大値及び最小値のうち少なくとも一方に基づいて定められてもよい。例えば、既定の閾値として、輝度成分の最大値の半分の値等を適用してもよい。
【0025】
本実施形態では、補正部150は、輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合は、既定の正の数を色差成分に乗じる。しかし、この例に限られない。輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合、補正部150は、既定の正の数を色差成分に加算してもよいし、色差成分から既定の負の数を除算若しくは減算してもよい。この場合、既定の正の数及び既定の負の数は、補正装置10の管理人等によって予め定められている。しかし、この例に限られない。例えば、既定の正の数及び既定の負の数は、輝度成分の最大値及び最小値のうち少なくとも一方に基づいて定められてもよい。
【0026】
また、補正部150は、輝度成分の変化量が既定の閾値未満である場合は、色差成分の補正をキャンセルする。そして、補正部150は、色差成分が補正されていない復調色差信号を変換部160に出力する。しかし、この例に限られない。輝度成分の変化量が既定の閾値未満である場合、補正部150は、色差成分から既定の正の数を減算若しくは除算してもよいし、色差成分に既定の負の数を加算若しくは乗算してもよい。
【0027】
図3に、輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合の色差成分の一例を示す。
図3の上図は復調輝度信号を示し、
図3の下図は復調輝度信号を示す。
図3に示すように、復調輝度信号の周波数帯域は、復調色差信号の周波数帯域より狭い。そして、
図3に示すように、輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合、補正部150は、既定の正の数を色差成分に乗じる。そして、補正部150は、既定の正の数を乗じた色差成分を復調色差信号に加算する。
【0028】
図4に、輝度成分の変化量が既定の閾値未満である場合の色差成分の一例を示す。
図4の上図は復調輝度信号を示し、
図4の下図は復調輝度信号を示す。そして、
図4に示すように、輝度成分の変化量が既定の閾値未満である場合、補正部150は、色差成分の補正をキャンセルする。
【0029】
変換部160は、色差成分が補正された復調色差信号及び復調輝度信号を組み合わせたYUVデータをRGBデータに変換する。なお、変換部160は、色差成分の補正がキャンセルされた復調色差信号についても、当該復調色差信号及び復調輝度信号を組み合わせたYUVデータをRGBデータに変換する。具体的に、変換部160は、YUVデータを公知の式に入力することでRGBデータを取得する。そして、変換部160はRGBデータを出力部170に出力する。
【0030】
出力部170は、RGBデータを、通信部17を介して、補正装置10の外部に備えられた表示装置に出力する。しかし、この例に限られない。例えば、補正装置10が表示部を備えている場合は、補正装置10が備える表示部にRGBデータを出力してもよい。
【0031】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る補正装置10における補正処理の流れについて説明する。補正処理は、補正プログラム12AがコンピュータとしてのCPU11に実行させる処理の一例である。
【0032】
図5のステップS101において、CPU11は、変調された映像信号を受け付ける。
【0033】
ステップS103において、CPU11は、映像信号を輝度信号及び色差信号に分離する。
【0034】
ステップS105において、CPU11は、輝度信号及び色差信号を復調する。
【0035】
ステップS107において、CPU11は、復調輝度信号から輝度成分を抽出する。
【0036】
ステップS109において、CPU11は、復調色差信号から色差成分を抽出する。
【0037】
ステップS111において、CPU11は、輝度成分の変化量が既定の閾値以上であるか否かを判定する。CPU11は、輝度成分の変化量が既定の閾値以上である場合(ステップS111:YES)、ステップS113に移行する。一方、CPU11は、輝度成分の変化量が既定の閾値未満である場合(ステップS111:NO)、ステップS117に移行する。
【0038】
ステップS113において、CPU11は、色差成分を強調するように補正する。具体的に、CPU11は、既定の正の数を色差成分に乗じる。
【0039】
ステップS115において、CPU11は、補正された色差成分を復調色差信号に加算する。
【0040】
ステップS117において、CPU11は、色差成分の補正をキャンセルする。
【0041】
ステップS119において、CPU11は、復調色差信号及び復調輝度信号を組み合わせたYUVデータをRGBデータに変換する。
【0042】
ステップS121において、CPU11は、RGBデータを出力する。具体的に、CPU11は、RGBデータを、通信部17を介して表示装置に出力する。そして、補正処理は終了する。
【0043】
なお、本実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0044】
また、本実施形態では、プログラムがROMに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、通信部17を介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0045】
本実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0046】
その他、本実施形態で説明した補正装置10の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 補正装置
11 CPU
12 ROM
12A 補正プログラム
13 RAM
14 ストレージ
17 通信部
19 バス
110 受付部
120 分離部
130 復調部
140 抽出部
150 補正部
160 変換部
170 出力部