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  • 特開-疼痛改善用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007339
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】疼痛改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20250109BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 31/145 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20250109BHJP
   C07H 5/10 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P25/04
A61P25/20
A61K36/185
A61K31/7028
A61K31/145
A61K9/08
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/10
C07H5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108658
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】安部 綾
(72)【発明者】
【氏名】小関 誠
【テーマコード(参考)】
4B018
4C057
4C076
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD18
4B018MD42
4B018MD48
4B018MD52
4B018MD53
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF04
4B018MF05
4B018MF06
4B018MF07
4C057CC05
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076FF01
4C076FF11
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA02
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA08
4C088AB12
4C088AC01
4C088BA08
4C088BA11
4C088BA13
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA16
4C088MA23
4C088MA35
4C088MA41
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA05
4C088ZA08
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA70
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA28
4C206MA36
4C206MA43
4C206MA55
4C206MA61
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA05
4C206ZA08
(57)【要約】
【課題】 新規な疼痛改善用組成物を提供すること。
【解決手段】 有効成分としてモリンガおよび/またはモリンガエキスを含有し、グルコモリンギンの含有量に対するモリンギンの含有量の質量比(モリンギン/グルコモリンギン)が0.00005~0.30であり、ミロシナーゼが失活または実質的にミロシナーゼを含まない疼痛改善用組成物によって達成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてモリンガおよび/またはモリンガエキスを含有し、グルコモリンギンの含有量に対するモリンギンの含有量の質量比(モリンギン/グルコモリンギン)が0.00005~0.30であり、ミロシナーゼが失活または実質的にミロシナーゼを含まない疼痛改善用組成物。
【請求項2】
前記疼痛が、頸部痛、肩痛、頭痛、膝関節痛、眼精疲労、ドライアイ及び筋肉痛からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1に記載の疼痛改善用組成物。
【請求項3】
有効成分としてモリンガおよび/またはモリンガエキスを含有し、グルコモリンギンの含有量に対するモリンギンの含有量の質量比(モリンギン/グルコモリンギン)が0.00005~0.30であり、ミロシナーゼが失活または実質的にミロシナーゼを含まない睡眠改善用組成物。
【請求項4】
前記睡眠改善が、寝つき、睡眠時の中途覚醒の有無、起床時の疲労感の改善、目覚めのスッキリ感、日中の眠気及び仕事や勉強に対するやる気の改善からなる群から選択される少なくとも一つである請求項3に記載の睡眠改善用組成物。
【請求項5】
前記疼痛改善による効果の結果として、睡眠改善効果が得られることを特徴とする請求項1及び3に記載の疼痛改善用及び/または睡眠改善用組成物。
【請求項6】
有効成分としてモリンガおよび/またはモリンガエキスを含有し、グルコモリンギンの含有量に対するモリンギンの含有量の質量比(モリンギン/グルコモリンギン)が0.00005~0.30であり、ミロシナーゼが失活または実質的にミロシナーゼを含まない健常女性に対する疼痛改善用及び/または睡眠改善用のものであって、疲労感の改善、頚部痛、肩痛、寝つき、起床時の疲労感の改善及び目覚めのスッキリ感からなる群から選択される少なくとも一つの改善効果を示す疼痛改善用及び/または睡眠改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛改善用組成物、特に疲労時における疼痛改善用組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの体に損傷が起こったり、損傷が起こった可能性があると、痛み(疼痛)の感覚が発せられる。痛みには、鋭い痛み、鈍い痛み、間欠的な痛み、持続的な痛み、拍動性の痛み、一定の痛みなど様々な種類や、説明が難しいものが認められる。痛みは一箇所に限定して感じられることもあれば、広い範囲で感じられることもある。また、痛みの強さは、軽いものから耐え難いものまで広い範囲のものがある。痛みに対して、どの程度まで耐えられるかには、大きな個人差がある。
痛みが続くと、様々な活動が行い難くなったり、眠れなって疲弊してしまうことがある。また、痛みのために、他者との交流や外出が少なくなる結果、孤立し、抑うつ状態になることがある。
このため、痛みの改善効果がある物質を見出す研究開発が行われている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-170637号公報
【特許文献2】特開2023-039899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ヒハツ抽出物と紅参抽出物の混合による古くなったような、鼻をつくような煙たい味、苦味と土の匂いのような異味のおぞましい味、舌のひりひりまたは痛みのような嗅覚、味覚、痛覚的刺激が著しく減少または緩和され、風味が改善されることで、ユーザーの嗜好度が高く、疲労回復効果が優れた組成物が開示されている。
また、特許文献2には、水素ガス含有気体を有効成分として含む、痛風患者において痛風を原因とする患部の痛み、患部の発赤、患部の発熱、痛風結節、結石と結石に伴う痛み、およびこれらの症状に伴う活動レベルの低下を含む症状を改善するための組成物が開示されている。
しかしながら、疼痛の種類は幅広く、従来の疼痛改善用組成物では改善効果が認められないことから、新たな疼痛改善用組成物が求められていた。特に、ストレスが高まりやすい現代生活においては、疼痛の作用メカニズムも異なることが考えられ得ることから、そのような状態でも効果的な疼痛改善用組成物の提供が求められている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規な疼痛改善用組成物などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、モリンガおよび/またはモリンガエキスを含有する組成物の効果を確認したところ、疼痛改善効果および/または睡眠改善効果があることを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。
こうして、本願発明に係る疼痛改善用組成物は、有効成分としてモリンガおよび/またはモリンガエキスを含有し、グルコモリンギンの含有量に対するモリンギンの含有量の質量比(モリンギン/グルコモリンギン)が0.00005~0.30であり、ミロシナーゼが失活または実質的にミロシナーゼを含まないことを特徴とする。
本発明において、前記疼痛が、頸部痛、肩痛、頭痛、膝関節痛、眼精疲労、ドライアイ及び筋肉痛からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0006】
また、他の発明に係る睡眠改善用組成物は、有効成分としてモリンガおよび/またはモリンガエキスを含有し、グルコモリンギンの含有量に対するモリンギンの含有量の質量比(モリンギン/グルコモリンギン)が0.00005~0.30であり、ミロシナーゼが失活または実質的にミロシナーゼを含まないことを特徴とする。
モリンガについては、ベンジルグルコシノレートの一種であるグルコモリンギンの含有量に対するベンジルイソチオシアネートの一種であるモリンギンの含有量の質量比を特定範囲に調整した組成物が、血中濃度-時間曲線下面積(AUC)に優れている。ベンジルグルコシノレートには、グルコモリンギンの他に複数の類縁体が存在し、ベンジルグルコシノレートは、それらを総称したものである。本発明では、ベンジルグルコシノレートに代えて、主たる有効成分であるグルコモリンギン(4-(α-L-ラムノシロキシ)ベンジルグルコシノレート)、及びその誘導体であるモリンギン(4-(α-L-ラムノシロキシ)ベンジルイソチオシアネート)を指標としている。また、ミロシナーゼを失活・除去することで、グルコモリンギンの保存安定性に優れたものが得られる。
【0007】
上記発明において、前記睡眠改善が、寝つき、睡眠時の中途覚醒の有無、起床時の疲労感の改善、目覚めのスッキリ感、日中の眠気及び仕事や勉強に対するやる気の改善からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
また、本願発明に係る疼痛改善用組成物は、睡眠改善用組成物であることが好ましい。
また、別の発明に係る疼痛改善用及び/または睡眠改善用組成物は、有効成分としてモリンガおよび/またはモリンガエキスを含有し、グルコモリンギンの含有量に対するモリンギンの含有量の質量比(モリンギン/グルコモリンギン)が0.00005~0.30であり、ミロシナーゼが失活または実質的にミロシナーゼを含まない健常女性に対する疼痛改善用及び/または睡眠改善用のものであって、疲労感の改善、頚部痛、肩痛、寝つき、起床時の疲労感の改善及び目覚めのスッキリ感からなる群から選択される少なくとも一つの改善効果を示すことを特徴とする。
本発明においては、疼痛改善用組成物または睡眠改善用組成物として、当該組成物を含む飲食品または医薬品を提供できる。飲食品は、食品と飲料を含むものであり、例えば、栄養補助食品、健康食品、特定保健用食品、機能性表示食品、食事療法用食品、総合健康食品、サプリメント、茶飲料、コーヒー飲料、ジュース、清涼飲料、ドリンク剤、米飯、パン、麺類、乳製品、卵加工品、水産・畜産加工食品、菓子、油脂及び油脂加工食品、調味料、惣菜などが例示される。医薬品は、医薬品又は医薬部外品を含むものであり、経口製剤、又は経腸製剤であることが好ましく、液剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、シロップ剤などの形態とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規な疼痛改善用組成物および/または睡眠改善用組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】VASアンケートスコアの結果をまとめたグラフである。データは平均値±標準誤差で示した(n=67)。VASスケールは0-100(最良-最悪)のアナログスケールで示した。グラフ中、(a)は首・肩の痛み(Stiff shoulder/Neck pain)、(b)は頭痛(Head Ache)、(c)は膝の痛(Knee pain)、(d)は関節痛(Joint pain)、(e)は日常動作に伴う筋肉の痛み(Muscle pain)、(f)は眼精疲労(Eye strain)、(g)はドライアイの結果を、それぞれ示す。図中、「**」はベースライン(0w)との比較において危険率1%(P<0.01)で有意差が認められたことを示す。
図2】VASアンケートスコアの結果をまとめたグラフである。データは平均値±標準誤差で示した(n=67)。VASスケールは0-100(最良-最悪)のアナログスケールで示した。グラフ中、(a)は寝付き(Sleep initiation)、(b)は睡眠時の中途覚醒(Waking during sleep)、(c)は起床時の疲労感(Fatigue on waking)、(d)は目覚めのスッキリ感(Refreshment of waking up)、(e)は日中の眠気(Daytime sleepiness)、(f)は仕事や勉強に対するやる気(Motivation toward work and study)の結果を、それぞれ示す。図中、「**」はベースライン(0w)との比較において危険率1%(P<0.01)で有意差が認められたことを示す。
図3】健常女性の不定愁訴および睡眠、意欲に関するVASアンケートスコアの結果をまとめたグラフである。データは平均値±標準誤差で示した。VASスケールは0-100(最良-最悪)のアナログスケールで示した。グラフ中、(a)は疲労感(Fatigue)、(b)は首・肩の痛み(Stiff shoulder/Neck pain)、(c)は寝つき(Sleep initiation)、(d)は起床時の疲労感(Fatigue on waking up)、(e)は目覚めのスッキリ感(Refreshment on waking up)の結果を、それぞれ示す。各棒グラフは、白抜きがプラセボ群のデータ(n=35)を、灰色がモリンガ群のデータ(n=33)を、それぞれ示す。図中、「*」はプラセボ群とモリンガ群の群間比較において危険率5%(P<0.05)で有意差が認められたことを、「#」は群内ベースラインとの比較において危険率5%(P<0.05)で有意差が認められたことを、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
<モリンガおよび/またはモリンガエキス>
モリンガ(Moringa)の正式名称は、ワサビノキ(学名:Moringa oleifera Lam.)である。モリンガはワサビノキ科唯一の属であるワサビノキ属の1種である。食材として扱われるときには、「モリンガ」と称されることが多い。英語では「モリンガ」の他、果実の形態から「ドラムスティックツリー」、根の味から「ホースラディッシュツリー」、種子からとれる油に注目して「ベンオイルツリー(ベンゾイルツリー)」などの名称がある。モリンガは木本であり、生長が速く旱魃に強い。モリンガはインド北西部のヒマラヤ山脈南麓を原産とし、熱帯・亜熱帯地域で広く栽培されている。栽培地域を中心に若い果実や葉が野菜として食される他、浄水や手洗いに用いられ、時に薬用植物とされる。
【0011】
インドでは、モリンガは食材として食べられている他、伝統医学「アーユルヴェーダ」にて300の薬効があるとされ、“shigru”と呼ばれて、紀元前から幅広く利用されている。モリンガの食用例としては、(1)種子を含む実(鞘)はそのままカレーの具材やピクルスとして食され、(2)葉から調製されたお茶、(3)粉末化した種や根の皮・葉は、そのまま治療用組成物として利用される。本発明における組成物は、経口摂取を目的とするため、根については風味の点で除外することが望ましい。
本実施形態のモリンガエキスは、溶媒を使用して、モリンガから抽出して得られる。抽出に供されるモリンガは、特に限定されるものではなく、例えばモリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera)、モリンガ・コンカネンシス(Moringa concanensis)、モリンガ・ドロウハルディ(Moringa drouhardii)等が挙げられる。
【0012】
このうち、広く栽培されており、容易に採取できる観点から、モリンガ・オレイフェラを用いることが好ましい。エキスを得るためのモリンガの部位としては、葉、茎、鞘(果肉)、根、種子のいずれも用いることができる。これらの部位は生のまま使用しても、乾燥後に使用しても良い。但し、原料としての保存安定性や、エキス製造時の収率の観点から、乾燥後に使用するのが好ましい。モリンガの種子からはモリンガオイルが得られるため、その搾油残渣から抽出することもできる。
モリンガエキス中の有効成分の含有量を多くする観点から、抽出前に前処理することができる。前処理の一態様としては、乾燥モリンガ粉状体などを、80℃以上(好ましくは80℃~170℃、更に好ましくは80℃~95℃)の液体中にて、1分間~10分間(好ましくは3分間~5分間)処理する方法が挙げられる。90℃にて5分間の前処理を行うことにより、ミロシナーゼが失活または実質的にミロシナーゼを含まないことが分かった。
【0013】
前処理の方法は、特に限定されないが、湯煮・油ちょう・焙煎などが挙げられる。媒体を使用する場合には、水・エタノール・動植物性油脂あるいはこれらの混合物などが例示される。熱水抽出については、十分なエキス抽出には10分を超える長時間の抽出が必要となる。
抽出に使用される溶媒としては、水・水と混和できる有機溶媒またはその含水有機溶媒が使用される。有機溶媒としては、水と混和できる低級アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の炭素数1~4の1価若しくは多価アルコール)、エーテル、アセトンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でも、水と混和した後に使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。但し、安全性の観点から、水のみで抽出することが好ましい。本発明における有機溶媒の水との混和割合については特に限定されるものではないが、例えば抽出溶媒における有機溶媒の体積比が0~99.5%であり、好ましくは抽出溶媒における有機溶媒の体積比が0~50%である。
【0014】
抽出に使用される溶媒量としては、特に限定されるものではないが、例えば抽出に供されるモリンガ100質量部に対して、200~3000質量部を用いることができる。抽出時の溶媒の温度は、製造効率の観点から、10℃~50℃が好ましく、20℃~40℃が更に好ましい。
抽出時間は、特に限定されるものではないが、例えば製造効率の観点から、30分間~150分間とできる。
抽出は、攪拌または静止状態で行うことができる。抽出に使用される溶媒を用いて前処理を行う場合には、前処理と抽出を連続して行うこともできる。例えば、モリンガを、80℃以上にて1分間~10分間処理した後に、10℃~50℃となるように温度を調整し、エキスを抽出するなどの方法が有り得る。抽出の後、残渣を除去するためにろ過や遠心分離等の処理を施し、この後に減圧等により抽出溶媒を除去できる。また、抽出エキスを粉末とする場合など、必要に応じて、抽出エキスをスプレードライヤーなどで乾燥させることができる。
【0015】
本実施形態のモリンガエキスは、有用物質を多く含むため、有用な生理機能を発揮し得る。モリンガエキスは、液体、固体のいずれでもよいが、輸送を簡易とする観点から、粉末などの固体状とすることが好ましい。粉末の場合、製品としてそのまま市場流通させてもよいし、賦形剤を配合し、モリンガエキス含有組成物としてもよい。モリンガエキスと賦形剤とを含むモリンガエキス含有組成物とすると、モリンガエキスの固化を防ぐ観点及び有効成分の分解を抑制して品質を安定なものとする観点から好ましい。
モリンガエキスの安定化方法として、賦形剤を配合することが好ましい。賦形剤として、乳糖、でんぷん、サイクロデキストリン、ガラクトマンナン、ガラクトマンナン分解物、グアーガム、グアーガム分解物、デキストリン、マルトデキストリンなどが例示され、このうち好ましくはサイクロデキストリン、デキストリン、マルトデキストリン、ガラクトマンナン、ガラクトマンナン分解物、グアーガム、グアーガム分解物であり、より好ましくはデキストリンマルトデキストリン、ガラクトマンナン、グアーガム分解物である。これらは粉末または固体状に加工する目的に好適である。液状とするためには、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、液糖、果糖ブドウ糖液糖、水あめ、還元水あめ等を活用できる。
【0016】
また、本実施形態の組成物の高付加価値化のため、他の機能性素材を添加することも可能である。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンといった乳化剤、アスコルビン酸、トコフェロール、フラボノイド類、ポリフェノール類といった抗酸化剤、香料、着色料、甘味料が例示できる。
本実施形態のモリンガエキス含有組成物中の賦形剤の含有量は、特に限定するものではない。全く添加しなくても差し支えないが、モリンガエキスの乾燥固形分100質量部に対して、安定性の観点から、好ましくは65質量部以上であり、より好ましくは100質量部以上である。また、賦形剤を少なくしコストを抑える観点から、1000質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましい。賦形剤の添加時期は、特に限定するものではないが、抽出時、エキス製造時の不溶性残渣分除去後、粉末化前などが挙げられ、ろ過性の向上の観点から、不溶性残渣分除去後または粉末化前の添加が好ましく、不溶性残渣分除去後の添加がより好ましい。
モリンガエキスの一日摂取量は、特に限定されないが、例えば10mg~1000mgの範囲(好ましくは50mg~600mgの範囲、更に好ましくは、100mg~300mgの範囲)で安全性に問題はないと考えられる。但し、一般に食品の摂取しすぎによって起こり得る症状として、まれに腹痛、便秘、軟便、下痢などの腹部症状が有り得る。
【0017】
本実施形態のモリンガまたはモリンガエキス含有組成物は、様々な飲食品に配合できる。例えば清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料などの飲料や、これらの飲料の濃縮原液や調整用粉末などであってもよい。また、モリンガエキスは、アイスクリーム、シャーベット、かき氷などの冷菓や、そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺などの麺類に添加できる。更に、モリンガエキスは、飴、キャンディ、ガム、チョコレート、錠菓、グミキャンディー、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、プリン、ジャム、クリーム、焼き菓子などの菓子類に添加できる。なお、飲料用途においては製品中での固型分の沈殿を防ぐ意味でもモリンガエキス含有組成物を使用するほうが好適である。
モリンガまたはモリンガエキス含有組成物は、かまぼこ、ハム、ソーセージなどの水産・畜産加工食品や、加工乳、発酵乳などの乳製品に添加したり、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリームおよびドレッシングなどの油脂および油脂加工食品、ソース、たれなどの調味料や、スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物などに添加できる。
【0018】
モリンガまたはモリンガエキス含有組成物は、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤など種々の形態の健康・栄養補助食品、口中清涼剤・口臭防止剤などの口腔内で使用する口腔清涼剤、歯磨剤、洗口液などの医薬部外品、エモリエントクリーム、エモリエントローションなどに添加して用いることができる。
モリンガまたはモリンガエキス含有組成物の配合量は、特に限定するものではないが、飲食品中に、エキス乾燥固形分換算で0.01~80質量%となるように配合できる。
モリンガまたはモリンガエキス含有組成物を含む飲食品は、有効成分を多く含むため、生理機能を発揮し得る。
次に、本実施形態の実施例について説明することで、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
<モリンガおよび/またはモリンガエキス含有組成物の調製>
モリンガ種子をミルにて粉砕し、種子粉砕物を得た。種子粉砕物100gに対して、500gの脱イオン水(90℃)を加え、5分間攪拌(前処理)した後に、脱イオン水(10℃)を1500g加えて35℃とし、2時間攪拌した。その後ろ紙にてろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにより減圧濃縮した。得られた濃縮液を凍結乾燥機にて乾燥し、調製例1のモリンガエキスを10g得た。
乾燥モリンガ葉をミルにて粉砕し、得られた葉粉砕物を用いた以外は調製例1と同様にして、調製例2のモリンガエキスを15g得た。
モリンガ茎をハンマーミルにて粉砕し、得られた茎粉砕物を用いた以外は調製例1と同様にして、調製例3のモリンガエキスを10g得た。
モリンガ鞘を1センチ程度に切り分け、凍結乾燥させ、ミルにて粉砕し、得られた鞘乾燥粉砕物を用いた以外は調製例1と同様にして、調製例4のモリンガエキスを10g得た。
調製例1~4のモリンガエキスは、90℃の前処理によりミロシナーゼが失活しており、モリンギンが存在しないものであった。
【0020】
モリンガ種子をミルにて粉砕し、種子粉砕物を得た。種子粉砕物100gに対して、2000gの脱イオン水(90℃)を加え、2時間攪拌した。その後ろ紙にてろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにより減圧濃縮した。得られた濃縮液を凍結乾燥機にて乾燥し、調製例5のモリンガエキスを15g得た。
乾燥モリンガ葉をミルにて粉砕し、得られた葉粉砕物を用いた以外は調製例5と同様にして、調製例6のモリンガエキスを20g得た。
モリンガ茎をハンマーミルにて粉砕し、得られた茎粉砕物を用いた以外は調製例5と同様にして、調製例7のモリンガエキスを20g得た。
モリンガ鞘を1センチ程度に切り分け、凍結乾燥させ、ミルにて粉砕し、得られた鞘乾燥粉砕物を用いた以外は調製例5と同様にして、調製例8のモリンガエキスを18g得た。
調製例5~8のモリンガエキスは、90℃での抽出処理によりミロシナーゼが失活しており、モリンギンが存在しないものであった。また、酵素分解により若干のモリンギンが産生されたとしても熱分解によりモリンギンは存在しなくなった。
【0021】
モリンガ種子をミルにて粉砕し、種子粉砕物を得た。種子粉砕物100gに対して、2000gの90%(v/v)エタノール水溶液(35℃)を加え、2時間攪拌した。その後ろ紙にてろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにより減圧濃縮した。得られた濃縮液を凍結乾燥機にて乾燥し、調製例9のモリンガエキスを10g得た。
乾燥モリンガ葉をミルにて粉砕し、得られた葉粉砕物を用いた以外は調製例9と同様にして、調製例10のモリンガエキスを20g得た。
モリンガ茎をハンマーミルにて粉砕し、得られた茎粉砕物を用いた以外は調製例9と同様にして、調製例11のモリンガエキスを20g得た。
モリンガ鞘を1センチ程度に切り分け、凍結乾燥させ、ミルにて粉砕し、得られた鞘乾燥粉砕物を用いた以外は調製例9と同様にして、調製例12のモリンガエキスを18g得た。
調製例9~12のモリンガエキスは、90%エタノールでの抽出処理により、ミロシナーゼが失活したか、あるいはミロシナーゼが溶液中で析出し、グルコモリンギンとの接触が阻害されたため、モリンギンが存在しないものであった。
【0022】
モリンガ種子をミルにて粉砕し、種子粉砕物を得た。種子粉砕物100gを121℃、20分間オートクレーブ処理し、調製例13のモリンガ粉砕物を100g得た。
乾燥モリンガ葉をミルにて粉砕し、得られた葉粉砕物を用いた以外は調製例13と同様にして、調製例14のモリンガ粉砕物を100g得た。
モリンガ茎をハンマーミルにて粉砕し、得られた茎粉砕物を用いた以外は調製例13と同様にして、調製例15のモリンガ粉砕物を100g得た。
モリンガ鞘を1センチ程度に切り分け、凍結乾燥させ、ミルにて粉砕し、得られた鞘乾燥粉砕物を用いた以外は調製例13と同様にして、調製例16のモリンガ粉砕物を100g得た。
調製例13~16のモリンガ粉砕物は、121℃でのオートクレーブ処理によりミロシナーゼが失活しており、また、モリンギンも熱分解により存在しないものであった。
【0023】
モリンガ種子をミルにて粉砕し、種子粉砕物を得た。種子粉砕物100gに対して、2000gの脱イオン水(55℃)を加え、1時間攪拌した。その後ろ紙にてろ過し、ろ液を限外ろ過膜処理することで内在するミロシナーゼを除去した後、ロータリーエバポレーターにより減圧濃縮した。得られた濃縮液を凍結乾燥機にて乾燥し、調製例17のモリンガエキスを15g得た。
乾燥モリンガ葉をミルにて粉砕し、得られた葉粉砕物を用いた以外は調製例17と同様にして、調製例18のモリンガエキスを20g得た。
モリンガ茎をハンマーミルにて粉砕し、得られた茎粉砕物を用いた以外は調製例17と同様にして、調製例19のモリンガエキスを20g得た。
モリンガ鞘を1センチ程度に切り分け、凍結乾燥させ、ミルにて粉砕し、得られた鞘乾燥粉砕物を用いた以外は調製例17と同様にして、調製例20のモリンガエキスを18g得た。
調製例17~20のモリンガエキスは、抽出処理時にミロシナーゼ活性があることから、モリンギンが産生されていた。
【0024】
調製例1~20のモリンガエキス又はモリンガ粉砕物におけるグルコモリンギン含量、およびモリンギン含量を表1に示した。なお、調製例33~44のモリンガエキス又はモリンガ粉砕物のグルコモリンギン含量およびモリンギン含量については、調製例21~32と同じであった。
【0025】
グルコモリンギンおよびモリンギン含有量
各調製例のモリンガ抽出物又はモリンガ粉砕物のグルコモリンギン含有量(乾燥固形分換算)、およびモリンギン含有量(乾燥固形分換算)について、以下の条件に基づき分析した。結果を表1に示した。なお、本発明の組成物におけるグルコモリンギンおよびモリンギン含有量についても同様に、HPLCを用いて測定することができる。サンプル溶液の調製については、特に限定されるものではなく、グルコモリンギンおよびモリンギンの分析に適した濃度となるよう、要すれば、適宜、水、有機溶媒、または水と有機溶媒の混合溶媒を添加して溶液画分を回収し、サンプル溶液とすることができる。水との混合溶媒とした場合における、有機溶媒の混合割合は、0%超~100%未満まで使用可能である。
各調製例のモリンガ抽出物又はモリンガ粉砕物の水溶液(固形分濃度:5.0%(w/v))を調製した。これらのサンプル溶液100μLにアセトニトリル300μLを加えて混和し、フィルトレーションを行った後、以下の条件で逆相高速液体クロマトグラフィーにて定量分析した。
【0026】
HPLC(SHIMADZU)分析(HPLC条件;カラム:Inertsil HILIC SIZE 4.6mm×250mm(GLサイエンス)、溶離液A:アセトニトリル(93%)、溶離液B:10mMギ酸アンモニウム(7%)、流速:1.0mL/min、カラム温℃:30℃、波長:220nmによるピーク面積と、標準試薬(試薬グルコモリンギン:EXTRASYNTHESE)の検量線を比較しグルコモリンギン濃度を算出し、各調製例におけるグルコモリンギン含有量を算出した。
また、モリンギンについては、標準試薬(試薬モリンギン:Chem Faces)およびLC-MSによる分子量測定からモリンギンのピークを同定した後、グルコモリンギンの検量線を使用してモリンギンの含有量を換算値として表示した。具体的には、以下のように算出した。
【0027】
モリンギン:HPLC分析(グルコモリンギン濃度分析と同条件)によるピーク面積と、試薬グルコモリンギンの検量線のピーク面積比較により以下に示すようにモリンギン換算値を算出した。
グルコモリンギンピークエリアへの換算式:A/0.738
A:モリンギンのピークエリア
なお、試薬グルコモリンギンを市販のミロシナーゼにより完全分解させてモリンギンに変換した際、各成分のピークエリアの換算には0.738を除した値が使用できることが分かったことから上記の計算式を用いた。
B:上記から求めた換算グルコモリンギン含有量(乾燥固形分換算)
モリンギン含有量(乾燥固形分換算):B×311/570
311:モリンギンの分子量
570:グルコモリンギンの分子量
上記のように一度グルコモリンギンとして算出した値へ分子量比を乗することで、モリンギンの含有量を換算した。
【0028】
【表1】
【0029】
ミロシナーゼの失活あるいは除去確認方法
各調製例のモリンガ抽出物又はモリンガ粉砕物の水溶液(固形分濃度:5.0%(w/v))を調製した。これらのサンプル溶液を55℃のウォーターバスで加温し、0時間後と20時間後にサンプル採取してグルコモリンギンおよびモリンギン含有量を算出した。確認方法としては、0時間後と20時間後を比較した場合にグルコモリンギン含量の減少が無く、かつモリンギン含量の増加が無い場合にミロシナーゼが失活あるいは除去されているものとした。「グルコモリンギン含量の減少が無い」とは、0時間後のサンプル溶液中のグルコモリンギン含量を100%とした場合に20時間後のサンプル溶液中のグルコモリンギン含量が80%以上であり、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であることをいい、「モリンギン含量の増加が無い」とは、0時間後のサンプル溶液中のモリンギン含量を100%とした場合に20時間後のサンプル溶液中のモリンギン含量が120%以下であり、好ましくは110%以下であり、より好ましくは105%以下であることをいう。なお、グルコモリンギンを含有しない調製例12、21~44においては、グルコモリンギンを適当量添加して、その増減の有無を調べた。結果、調製例1~32についてはミロシナーゼが失活・除去されており、調製例33~44については、ミロシナーゼ活性があることを確認した。本発明の組成物におけるミロシナーゼ活性についても同様に、グルコモリンギンおよびモリンギン含有量の増減により確認することができる。サンプル溶液の調製については、特に限定されるものではなく、グルコモリンギンおよびモリンギンの分析に適した濃度となるよう、要すれば、適宜、水、有機溶媒、または水と有機溶媒の混合溶媒を添加して溶液画分を回収し、サンプル溶液とすることができる。水との混合溶媒とした場合における、有機溶媒の混合割合は、0%超~100%未満まで使用可能である。
【0030】
【表2】
【0031】
<モリンガ含有食品の効果確認試験>
A.試験方法
1.被験者
260名の試験ボランティア対象者(健常であるものの、疲労感がある男女(30歳~65歳))について、事前検査と摂取前検査を行い、選択基準に該当し、除外基準に抵触せず、医師の判断により試験参加が妥当であると判断された者のなかから140名を選抜して被験者とした。なお、「疲労感がある」については、疲労感に関するVASアンケートにより、スコアが高い被験者を選抜した。具体的には、試験開始前の疲労感スコアは、0-100 (最良-最悪)としたときに、疲労感が無い場合には、50以下の数値を示すところ、60以上の数値を示す者から選択した。具体的には、プラセボ群68.6±1.1、モリンガ群68.8±1.1であった。
140名を無作為で70名ずつ2群に分け、被験食品投与群またはプラセボ食品投与群とした。
2.被験食品とプラセボ食品の製造
被験食品:上記調製例1で得たモリンガ種子エキス(4mg/錠)、デキストリン、結晶セルロース、α化デンプン、微粒酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウムを含有する成分を7mmΦの錠剤とした。
プラセボ食品:上記被験食品において、モリンガ種子エキスに代えてデキストリンを使用した以外は、同じ成分を用いて7mmΦの錠剤とした。
各食品の栄養成分(1日摂取量3粒あたり)を表3に示した。
【0032】
【表3】
【0033】
3.被験食品の摂取
被験食品またはプラセボ食品を1日あたり3粒ずつ、水またはぬるま湯とともに空腹時を避けて朝食後から昼食前までの間に摂取した。
4.試験デザイン
被験者について、無作為化ダブルブラインド法に基づいて、2群(被験食品投与群、プラセボ食品投与群)に分け、試験デザインを行った。
被験者について、体感VAS(Visual Analogue Scale)アンケートを行った。調査項目として、首痛・肩痛・頭痛・膝の痛み・関節痛・筋肉痛・疲労感・眼精疲労・ドライアイ・寝付き・睡眠時の中途覚醒・起床時の疲労感の改善・目覚めのスッキリ感・仕事や勉強に対するやる気の改善などを含むものとした。
各投与群について、摂取開始前、摂取開始4週間後に、VASアンケートと聞き取り調査を行った。また、摂取開始1週間後、2週間後および3週間後には、各被験者の自宅において、VASアンケートの記入を行った。
また、2回の聞き取り調査時には安全性評価として、採尿、血圧/脈拍測定・体重/体脂肪率/BMI測定・医師による問診等を行った。
【0034】
5.統計解析
(1)検査結果数値はMicrosoft Office Excel 2016(Microsoft Corp.)を用いて累計表に集計し、基本統計量として平均値、標準偏差、標準誤差、最大値、最小値を算出した。解析に用いる数値は実測値ならびに摂取前よりの変化量とした。カテゴリーデータとして得られる各検査項目は検査時点ごとの集計を行った。統計解析は、SAS(SAS 9.4)またはSPSS(Statistics26)など適切な統計解析ソフトを用いて実施し、すべての検定について有意水準は両側5%とし、10%を傾向とした。p値は、小数点第5位を四捨五入し、小数点第4位まで表示した。なお、算出したデータの表への記載ならびにグラフ化の場合は平均値±標準誤差で示した。
(2)統計解析は、以下の手法を第1選択とした。ただし、以下手法が妥当でないと判断した場合は、別手法を検討し統計手法を変更した。
(i)群間比較
解析データは、各検査時の被験食品摂取群とプラセボ食品摂取群の比較を対応のないt検定(両側検定)で統計解析を行った。対応のないt検定については、すべて等分散性ありと仮定したP値を採用した。体感VASアンケート以外から得られるスコアは、ノンパラメトリックとして取り扱い、群間での比較にはMann-WhitneyのU検定を行った。
(ii)群内比較
解析データは、摂取前と摂取後の各観察期との比較を対応のあるt検定で統計解析を行った。体感VASアンケート以外より得られるスコアは、ノンパラメトリックとして取り扱い、群内での比較にはWilcoxonの符号付順位検定を行った。
(iii)層別解析
作用機序の考察や副次効果の説明の観点から、相関関係の解析や層別解析等、様々な統計解析を行った。
【0035】
(3)試験終了後に、中止例、有害事象の有無、被験者日誌記録などを基にコンプライアンス違反などの確認を行い、試験責任医師、試験担当者、統計解析責任者が協議の上、解析対象集団(FASおよびPPS)の決定および各試験対象者のデータについて集計・解析上の取り扱いを決定し、データ固定を行った。
(i)Intention to Treat(ITT)
ランダム化が行われたすべての被験者
(ii)Full Analysis Set(FAS)
ランダム化が行われ一度でも試験食品を摂取した被験者
(iii)Per Protocol Set(PPS)
FAS集団から、予め設定された除外基準に該当した者を除いた被験者
6.試験終了状態
140名の被験者のうち、1名の脱落者により139名の最終人員を確保した。ここから、コロナ陽性患者・体調不良・発熱などの理由により4名の試験中止者が発生した。
【0036】
B.試験結果
表4,5および図1図3には、VASアンケートスコアの結果を示した。
表中のデータは、平均値±標準誤差で示した。VASスケールは、0-100 (最良-最悪)のアナログスケールとした。
表4、図1及び図2には、健常男女の不定愁訴および睡眠、意欲に関するモリンガ群のデータをまとめたものを示した(n=67)。図表中、「**」はベースライン(0w)との比較において危険率1%(P<0.01)で有意差が認められたことを示す。
図表に示すように、健常男女については、モリンガの投与により、首・肩の痛み、頭痛、膝の痛み、関節痛、日常動作に伴う筋肉の痛み、眼精疲労、ドライアイ、寝付き、睡眠時の中途覚醒、起床時の疲労感、目覚めのスッキリ感、日中の眠気、仕事や勉強に対するやる気の項目について、有意に改善することが分かった。
【0037】
【表4】
【0038】
表5及び図3には、健常女性の不定愁訴及び睡眠、意欲に関するデータをまとめたものを示した。Plaは「プラセボ群」(n=33)を、MSEはモリンガ群(n=35)を、それぞれ意味する。図表中の「*」はPla群とMSE群との間の群間比較において危険率5%(P<0.05)にて有意であったことを、「#」は群内ベースラインとの比較において有意差5%(P<0.05)で有意であったことを、「#」、「##」は群内ベースラインとの比較において危険率5%(P<0.05)及び危険率1%(P<0.01)で有意であったことを、それぞれ示す。
図表に示すように、健常女性においては、モリンガの投与により、疲労感、首・肩の痛み、寝付き、起床時の疲労感、目覚めのスッキリ感の項目について、有意に改善することが分かった。
【0039】
【表5】
【0040】
上記の通り、疲労感のある健常男女については、モリンガの投与により、首・肩の痛み、頭痛、膝の痛み、関節痛、日常動作に伴う筋肉の痛み、眼精疲労、ドライアイ、寝付き、睡眠時の中途覚醒、起床時の疲労感、目覚めのスッキリ感、日中の眠気、仕事や勉強に対するやる気の項目について、また疲労感のある健常女性については、疲労感、首・肩の痛み、寝付き、起床時の疲労感、目覚めのスッキリ感の項目について、それぞれ有意に改善する効果があることが分かった。
このように本実施形態によれば、モリンガおよび/またはモリンガエキスを含有する新規な疼痛改善用組成物などを提供できた。
図1
図2
図3