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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007342
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108665
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(71)【出願人】
【識別番号】390014856
【氏名又は名称】日本乳化剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】金子 知正
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 良祐
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 健太
(72)【発明者】
【氏名】今井 朋美
(72)【発明者】
【氏名】坂戸 絢子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雄太
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA111
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD161
4J127BE331
4J127BE33Y
4J127BG101
4J127BG121
4J127BG161
4J127BG231
4J127BG241
4J127CB151
4J127CB152
4J127CC131
4J127CC392
4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】耐水性と親水性を有する硬化物を形成できる新たな組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1):
[化1]
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表す。)
で表される2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオン、親水性陽イオン、及び、耐水性向上成分を含み、該耐水性向上成分は、耐水性のある多価金属イオン、親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物、多官能性のラジカル重合性化合物、低粘度のラジカル重合性化合物、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物、及び、親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表す。)
で表される2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオン、親水性陽イオン、及び、耐水性向上成分を含み、
該耐水性向上成分は、耐水性のある多価金属イオン、親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物、多官能性のラジカル重合性化合物、低粘度のラジカル重合性化合物、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物、及び、親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む
ことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記硬化性組成物は、更に界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物の硬化物であって、
下記指標(I)又は指標(II)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする非水溶性硬化物。
指標(I)呼気に対して防曇性を示す
指標(II)水接触角が50°以下である
【請求項5】
請求項3に記載の硬化物を表面に有することを特徴とする物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性の表面を形成する硬化性組成物、それを硬化させた硬化物、及び硬化物を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の表面に一定以上の耐水・耐湿性を有する親水層を形成することによって、防曇、防汚、帯電防止、抗菌等の機能が発揮されることが知られている。そのような親水層の形成は、眼鏡、ヘルメット、浴室用鏡、自動車用ランプ、エアコンディショナー用熱交換器、カメラレンズ、内視鏡等日用品、建材、輸送機器、家電、精密電子機器から医療用機器に至る様々な分野で利用されている。
【0003】
上記親水層を物品の表面に形成する方法としては、親水化剤を練り込んだ熱可塑性樹脂を熱可塑成型する方法、アルカリ処理等の化学処理を樹脂表面に施し親水化する方法、親水性の硬化物を生成する硬化性組成物を表面に塗布・硬化する方法、ナノインプリント等の方法で表面に微細な立体構造や凹凸を形成する方法等が知られている。なかでも、親水性の硬化物を生成する硬化性組成物を表面に塗布・硬化する方法は、比較的簡易な装置で種々の物品の表面に親水層を形成できることから汎用されている方法である。
【0004】
親水性の硬化物を生成する硬化性組成物は、一定以上の耐水・耐湿性を発現させるために、ほとんどの場合、共有結合性の架橋体を形成するような反応性化合物を含んだり、さらに反応性化合物自体が親水構造を有したり、親水性の非反応性物質を含んだり、界面活性剤を含んだりする等の組成設計となっている。親水性の無機物質としては、シリカやアルミナ等の無機酸化物微粒子がよく用いられている。
【0005】
また、親水性の有機物質が有する親水構造として、例えば、スルホン酸塩構造(例えば特許文献1)、多価アルコール構造(例えば特許文献2)、ベタイン構造(例えば特許文献3)、ポリエチレングリコール構造(例えば特許文献4)、ポリアクリルアミド構造(例えば特許文献5)等の種々の構造が提案されており、そのような親水構造を有する様々な有機の低分子、オリゴマー、高分子化合物が用いられている。カルボン酸塩構造も親水構造として提案・利用されており、カルボン酸塩ポリマーを架橋剤で架橋する形態(例えば特許文献6)、カルボン酸塩ポリマーを吸水性物質として添加する(例えば特許文献7)等、カルボン酸塩構造を有する高分子化合物を硬化性組成物の成分として利用する形態が多く提案されている。
【0006】
一方、高重合性のカルボン酸塩として、(メタ)アクリル酸の塩が種々の用途で汎用されているが、水溶性で高極性の有機物にしか溶解せず、また無溶媒状態では粉末状で製膜性がない物質であり、物品表面に塗布・硬化する硬化性組成物の硬化成分としては適用しにくい。その点を解消できる高重合性のカルボン酸塩として、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸の塩が提案されている。この塩は、種々の有機物と相溶し、無溶媒状態でも製膜性があることから、多様な用途への適用可能性が示されている(例えば特許文献8~10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2013/054877号
【特許文献2】特開2011-213904号公報
【特許文献3】国際公開第2017/018146号
【特許文献4】特開2007-063325号公報
【特許文献5】特開2012-007033号公報
【特許文献6】特開2021-066785号公報
【特許文献7】国際公開第2016/021458号
【特許文献8】特開2012-107208号公報
【特許文献9】特開2013-216737号公報
【特許文献10】特開2013-231164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、親水性と耐水性とを有する硬化物は様々な用途に用いられ、各種用途に求められる特性に優れた硬化物を形成できる新たな材料が求められている。
本発明は、上記現状に鑑みて、耐水性と親水性を有する硬化物を形成できる新たな組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために種々検討を行ったところ、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオンと親水性陽イオンと特定の耐水性向上成分を含む硬化性組成物とすることにより、耐水性と親水性に優れた硬化物を与えることができることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、下記[1]~[4]に記載のものである。
[1]下記式(1):
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表す。)
で表される2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオン、親水性陽イオン、及び、耐水性向上成分を含み、該耐水性向上成分は、耐水性のある多価金属イオン、親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物、多官能性のラジカル重合性化合物、低粘度のラジカル重合性化合物、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物、及び、親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする硬化性組成物。
[2]上記硬化性組成物は、更に界面活性剤を含むことを特徴とする上記[1]に記載の硬化性組成物。
[3]上記[1]又は[2]に記載の硬化性組成物の硬化物。
[4]上記[1]又は[2]に記載の硬化性組成物の硬化物であって、
下記指標(I)又は指標(II)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする非水溶性硬化物。
指標(I)呼気に対して防曇性を示す
指標(II)水接触角が50°以下である
[5]上記[3]に記載の硬化物、又は、上記[4]に記載の非水溶性硬化物を表面に有することを特徴とする物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化性組成物は、耐水性と親水性に優れた硬化物を与える。本発明の硬化性組成物を用いて物品の表面に硬化物を形成することにより、物品の表面に親水性を付与することができる。本発明の硬化性組成物は、日用品、建材、輸送機器、家電、精密電子機器から医療用機器に至る様々な分野に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。また、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味する。(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイルは、アクリロイルまたはメタクリロイルを意味する。(メタ)アリルは、アリルまたはメタリルを意味する。
【0014】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、下記式(1):
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表す。)
で表される2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオン、親水性陽イオン、及び、耐水性向上成分を含み、上記耐水性向上成分は、耐水性のある多価金属イオン、親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物、多官能性のラジカル重合性化合物、低粘度のラジカル重合性化合物、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物、及び、親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする硬化性組成物である。
【0017】
本発明の硬化性組成物は、親水性に優れた硬化物を与えることができる。その理由は以下のとおりと推測している。すなわち、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオンは、重合前は疎水性エーテル基((メタ)アリルエーテル基)を有する線状の分子構造だが、ラジカル重合すると環化して環状エーテル(アリルエーテル基の場合はテトラヒドロフラン環、メタリルエーテル基の場合はテトラヒドロピラン環)を形成し、重合前より極性が増す。さらに親水性の陽イオンを含んでいるため優れた親水性を有する。一方で、重合すると環状エーテルが主鎖中に含まれる構造となるため、各種の液媒体に対する溶解性は低下する。更に、耐水性のある多価金属イオン、親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物、多官能性のラジカル重合性化合物、低粘度のラジカル重合性化合物、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物、親水性の官能基あるいは構造を有する耐水性向上成分の1種又は2種以上を含むことで、耐水性が向上する。
【0018】
[2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオン]
本発明の硬化性組成物は、上記式(1)で表される2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオンを含む。上記2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオンは、環化重合性カルボン酸イオンであり、ラジカル重合条件下で環化重合する。重合前は疎水性エーテル基((メタ)アリルエーテル基)を有する線状の分子構造だが、ラジカル重合すると環化して環状エーテル(アリルエーテル基の場合はテトラヒドロフラン環、メタリルエーテル基の場合はテトラヒドロピラン環)を形成し、重合前より極性が増す。一方で、重合すると環状エーテルが主鎖中に含まれる構造となるため、各種の液媒体に対する溶解性は低下する。
【0019】
[他の陰イオン]
上記硬化性組成物は、陰イオンとして、上記2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオンのみを含むものであってもよいが、上記2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオン以外の他の陰イオンを含んでいてもよい。
上記他の陰イオンとしては、無機の陰イオン、有機の陰イオンのいずれであってもよいが、有機物に対する溶解性の観点から有機の陰イオンが好ましく、ラジカル重合性の観点からカルボキシ基と共役した二重結合を有するカルボン酸イオンであることが好ましい。
【0020】
上記カルボキシ基と共役した二重結合を有するカルボン酸イオンとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イオン、末端がカルボキシ化された(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸2-カルボキシエチル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、(メタ)アクリル酸3-カルボキシプロピル)等のカルボン酸イオンが挙げられる。これらは、目的や用途に応じて1種又は2種以上を適宜選択すればよい。
【0021】
[親水性陽イオン]
上記硬化性組成物に含まれる親水性陽イオンとしては、周期表第1族元素の陽イオン、周期表第2族元素の陽イオン、及び、周期表第15族元素の非金属元素を含む陽イオンからなる群より選択される少なくとも一種の陽イオンが好ましく挙げられる。
【0022】
上記周期表第1族元素の陽イオン、及び、周期表第2族元素の陽イオンとしては、好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンが挙げられる。
【0023】
上記周期表第15族の非金属元素を含む陽イオンとしては、窒素原子が陽イオン化されたイオン(アンモニウムイオン、プロトン化されたアミン、4級アンモニウムイオン)、リン原子が陽イオン化されたイオン(ホスホニウムイオン、プロトン化されたホスフィン、4級ホスホニウムイオン)が挙げられる。なかでも、生体安全性や入手性の観点から、窒素原子が陽イオン化されたイオンがより好ましい。
【0024】
上記プロトン化されたアミンとしては、アミンにプロトン(H+)が付加され陽イオン化したものが挙げられる。
上記アミンは、1~3級のいずれのアミンであってもよく、親水性を強くする観点からは1級または2級が好ましく、低極性の化合物との相溶性を向上する観点からは3級が好ましい。
上記アミンの価数は特に限定されず、硬化性組成物の粘度を下げる観点からは価数が小さい方が好ましく、耐水性を向上する観点からは価数が大きい方が好ましい。
上記アミンの炭素数は、硬化性組成物中の他の成分との相溶性や硬化性組成物の粘度を良好とする点で、3~200が好ましく、4~150がより好ましく、5~100が更に好ましい。
【0025】
上記アミンの具体例としては、プロトン化される前のアミン名で示すと、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3,6,9,12-テトラオキサ-テトラデカン-1,14ジアミン、エチレンジアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、3-アミノメチル-3,5,6-トリメチルシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、2,5(又は2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6(又は2,7)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[3,2,1]オクタン、2,5(又は2,6)-ビス(アミノメチル)-7-ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)アダマンタン、m-キシリレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、1,4(又は2,6又は2,7)-ビス(アミノメチル)ナフタレン、ジアリルアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、ビスアミノプロピルピペラジン、2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロオクタン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ポリエチレンイミン、ジアリルアミン重合体等が挙げられる。
【0026】
上記4級アンモニウムイオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0027】
[他の陽イオン]
上記硬化性組成物は、陽イオンとして、上述した親水性陽イオンのみを含むものであってもよいが、それ以外の1種又は2種以上の他の陽イオンを含んでいてもよい。
上記他の陽イオンとしては、例えば、周期表第3族元素~第15族元素に属する金属イオン又は金属酸化物イオンが挙げられる。具体的には、例えば、ランタン、酸化ジルコニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅等の遷移金属元素の金属イオン又は金属酸化物イオン;亜鉛、アルミニウム、錫、鉛、ビスマス等の周期表第12~15族の典型金属元素の金属イオン又は金属酸化物イオン;等が挙げられ、これらの2種以上の組み合わせでもよい。
本発明の硬化物を無色のものにできる観点や耐水性を向上させる観点から、典型金属元素、周期表第3族元素、周期表第4族元素に属する金属又は金属酸化物のイオンが好ましく、入手性、生体安全性の観点も加味すると、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、亜鉛、アルミニウムの金属又は金属酸化物イオンがより好ましく、亜鉛イオンが更に好ましい。
【0028】
上述した陰イオン及び陽イオンの含有量を分析する方法としては、イオンとして直接検出できる観点からは、イオンクロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動が好ましく、測定を短時間で行える観点からはH-NMRが好ましい。中でも、感度、測定の簡便性、装置のメンテナンス性の観点からキャピラリー電気泳動が好ましい。
【0029】
上記硬化性組成物に含まれる上記2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオンの含有量は、硬化性組成物100質量%中、3~90質量%であることが好ましく、5~85質量%であることがより好ましく、10~80質量%であることが更に好ましい。
【0030】
上記硬化性組成物に含まれる上記親水性陽イオンの含有量は、硬化性組成物100質量%中、0.5~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、2~30質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
上記硬化性組成物は、上述した陰イオン成分と陽イオン成分を含むものであるが、これらの成分として、これらのイオンから形成される塩化合物として含んでいてもよい。すなわち、上記硬化性組成物は、上記2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオンを少なくとも含む陰イオン成分と、上記親水性陽イオンを少なくとも含む陽イオン成分とから形成される塩化合物を含んでいてもよい。
上記塩化合物を形成する陰イオン成分や陽イオン成分は、上述した他の陰イオンや陽イオンを更に含んでいてもよい。
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上の上記塩化合物を含んでいてもよい。
【0032】
上記硬化性組成物に含まれる陰イオン及び陽イオンを生成する方法としては、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸を少なくとも含む1種又は2種以上のプロトン酸と、1種又は2種以上の塩基とを中和する方法が好ましく挙げられる。プロトン酸は全てが中和されてもよく、部分的に中和されてもよく、部分的に中和される場合、塩化合物とプロトン酸の混合物が生成される。
【0033】
上記塩基としては例えば、周期表第1~15族に属する金属元素の水酸化物や酸化物等の無機塩基、アンモニア、アミン、アンモニウムヒドロキシド等の周期表第15族の非金属元素を含む有機塩基が挙げられる。
上記中和は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。
【0034】
[耐水性向上成分]
上記硬化性組成物は、上記耐水性向上成分として、耐水性のある多価金属イオン、親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物、多官能性のラジカル重合性化合物、低粘度のラジカル重合性化合物、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物、親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂の1種又は2種以上を含む。
上記硬化性組成物は、これらの成分の2種以上を含むことが好ましく、3種以上を含むことがより好ましい。
2種以上を含む場合の組み合わせは、硬化性組成物の用途や目的に応じて適宜選択すればよい。また、化合物としては1種ではあるが、親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物、多官能性のラジカル重合性化合物、低粘度のラジカル重合性化合物、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物、親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂の分類において、2種以上の分類に該当する化合物があり、そのような化合物を1種または2種以上含むことも好ましい。
【0035】
(耐水性のある多価金属イオン)
上記硬化性組成物が耐水性のある多価金属イオンを含むことにより、硬化性組成物中に含まれる陰イオンと多配位状態を形成したり、親水性陽イオンと分子間相互作用したり、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物を用いる場合にその反応を促進したりして、硬化物の耐水性をより一層向上させることができる。
【0036】
上記耐水性のある多価金属イオンとしては、典型金属元素、周期表第3族元素、及び、周期表第4族元素に属する金属又は金属酸化物のイオンが好ましく挙げられ、入手性、生体安全性の観点も加味すると、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、亜鉛、アルミニウムの金属又は金属酸化物イオンが好ましく、亜鉛イオンがより好ましい。
【0037】
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上の上記耐水性のある多価金属イオンを含んでいてもよい。
上記硬化性組成物が上記耐水性のある多価金属イオンを含む場合、その含有量は、硬化性組成物100質量%中、1~35質量%であることが好ましく、1.5~30質量%であることがより好ましく、2~25質量%であることがさらに好ましい。
【0038】
(親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物)
上記硬化性組成物が親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物を含むことにより、硬化性組成物中に含まれる陽イオンと分子間相互作用したり、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物を用いる場合にその反応を促進したりして、硬化物の耐水性や親水性を更に向上させることができる。
【0039】
上記親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物は、親水性の官能基あるいは構造を有し、かつ、ラジカル重合性基を有する。
上記ラジカル重合性化合物は、親水性の官能基あるいは構造を同一分子内に1種だけ有していてもよく、2種以上有していてもよい。また同一分子内に1つだけ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。ラジカル重合性基に関しても同様に、同一分子内に1種だけ有していてもよく、2種以上有していてもよい。また同一分子内に1つだけ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
【0040】
親水性の官能基あるいは構造としては、水酸基、ポリオキシエチレン構造、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、4級アンモニウム塩構造、ベタイン構造が好ましく挙げられる。
【0041】
ラジカル重合性基としては、炭素-炭素二重結合を活性化する官能基が隣接している炭素-炭素二重結合が好ましく、炭素-炭素二重結合を活性化する官能基としては、カルボニル基、アミド基、シアノ基、芳香環、アルコキシ基、アシルオキシ基、炭素-炭素二重結合、ハロゲン等が好ましく挙げられ、炭素-炭素二重結合に対して1つだけ隣接していてもよく、2種以上が2個以上隣接していてもよい。そのようなラジカル重合性基を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、N-ビニルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類が好ましく挙げられる。
【0042】
水酸基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性基を同一分子内に1つだけ有する単官能型(メタ)アクリレート;グリセロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの多官能型(メタ)アクリレート;エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られるエポキシ(メタ)アクリレート類;等が挙げられる。
【0043】
ポリオキシエチレン構造を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等の、繰返し単位としてオキシエチレン構造を有するポリアルキレングリコールのモノあるいはジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ポリグリセリンやビスフェノールA等の多価アルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物に(メタ)アクリル酸を付加した、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0044】
アミノ基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル塩酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド等が挙げられる。なおアミノ基は上記の例示のように無機あるいは有機の酸とのアミン塩構造となっていてもよい。
【0045】
アミド基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、1,3,5-トリ(メタ)アクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0046】
カルボキシ基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、末端がカルボキシ化された(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸2-カルボキシエチル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸等)、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。なお、カルボキシ基は、アクリル酸ナトリウムのように無機又は有機の塩基とのカルボン酸塩構造となっていてもよく、無水マレイン酸のようにカルボン酸無水物構造となっていてもよい。
【0047】
スルホン酸基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸3-スルホプロピルカリウム等が挙げられる。なお、スルホン酸基は無機あるいは有機の塩基とのスルホン酸塩構造となっていてもよい。
【0048】
リン酸基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ビニルホスホン酸等が挙げられる。なお、リン酸基は無機あるいは有機の塩基とのリン酸塩構造となっていてもよい。
【0049】
4級アンモニウム塩構造を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0050】
ベタイン構造を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、2-[[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]酢酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-[[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸、3-[(3-(メタ)アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](メチル)アンモニオ]プロパン-1-スルホン酸等が挙げられる。
【0051】
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上の上記親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。
【0052】
上記硬化性組成物が上記親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物を含む場合、その含有量は、硬化性組成物100質量%中、1~50質量%であることが好ましく、3~45質量%であることがより好ましく、5~40質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
(多官能性のラジカル重合性化合物)
上記硬化性組成物は、多官能性のラジカル重合性化合物を更に含むことにより、共有結合性の架橋を硬化物に導入することができ、硬化物の耐水性をより一層向上させたり、硬度等の機械特性を向上させたりすることができる。
【0054】
上記多官能性のラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を同一分子内に2つ以上有していればよく、同一分子内に1種だけ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0055】
上記ラジカル重合性基の構造としては炭素-炭素二重結合を活性化する官能基が隣接している炭素-炭素二重結合が好ましい。
【0056】
上記炭素-炭素二重結合を活性化する官能基としては、カルボニル基、アミド基、シアノ基、芳香環、アルコキシ基、アシルオキシ基、炭素-炭素二重結合、ハロゲン等が好ましく挙げられ、炭素-炭素二重結合に対して1つだけ隣接していてもよく、2種以上が2個以上隣接していてもよい。
【0057】
上記ラジカル重合性基を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、N-ビニルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類が好ましく挙げられる。
【0058】
上記多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、多官能(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル、アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル系化合物;多官能2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸エステル;多官能マレイミド系化合物;多官能ビニルエーテル;多官能アリル系化合物;多官能芳香族ビニル等が挙げられる。
【0059】
多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の特開2014-40585号公報に記載の多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0060】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル等の特開2014-40585号公報に記載のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0061】
アリル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル等が挙げられる。
【0062】
多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレートとしては、例えば、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0063】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
多官能2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸エステルとしては、例えば、特許第5689628号公報に記載の多官能2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0065】
多官能マレイミド系化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、フェニルメタンマレイミドオリゴマー等が挙げられる。
【0066】
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等の特開2014-40585号公報に記載の多官能ビニルエーテルが挙げられる。
【0067】
多官能アリル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル等の特開2014-40585号公報に記載の多官能アリル系化合物が挙げられる。
【0068】
多官能芳香族ビニルとしては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0069】
多官能ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基以外の骨格部分が単量体に基づく繰り返し単位を有するオリゴマーまたはポリマーであってもよい。一般的に、多官能ラジカル重合性化合物の分子量が1000未満である場合にはオリゴマーに分類し、分子量が1000以上である場合にはポリマーに分類することができる。
【0070】
多官能ラジカル重合性化合物のオリゴマー又はポリマーの骨格としては、例えば、ポリエステル系骨格、ポリエーテル系骨格、ポリウレタン系骨格、ポリブタジエンやポリイソプレン等の共役ジエン系ポリマー骨格、ポリ(メタ)アクリレート系骨格、フェノール樹脂骨格、アニリン樹脂骨格、ポリオレフィン系骨格、ポリアミド系骨格、シクロオレフィン系ポリマー骨格、ポリシロキサン系骨格等が挙げられる。これらの骨格のなかでは、ポリエステル系骨格、ポリエーテル系骨格、ポリウレタン系骨格、共役ジエン系ポリマー骨格、ポリ(メタ)アクリレート系骨格、フェノール樹脂骨格及びアニリン樹脂骨格が好ましい。骨格部分とラジカル重合性基とは、共有結合で結合していればよいが、エステル結合及び/又はウレタン結合を介して結合していることが好ましい。
【0071】
多官能ラジカル重合性化合物のオリゴマー又はポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基が骨格部分とウレタン結合を介して結合しているウレタン(メタ)アクリレート系重合性オリゴマー、(メタ)アクリロイル基が骨格部分とウレタン結合を介して結合しているウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー、エポキシ樹脂(エポキシ基を有するオリゴマーまたはポリマー)に(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート系重合性オリゴマー、エポキシ樹脂(エポキシ基を有するオリゴマーまたはポリマー)に(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリロイル基がポリエステル系骨格とエステル結合を介して結合しているポリエステル(メタ)アクリレート系重合性オリゴマー、(メタ)アクリロイル基がフェノール樹脂骨格とエステル結合を介して結合しているフェニルメタン(メタ)アクリレート系重合性オリゴマー、(メタ)アクリロイル基がフェノール樹脂骨格とエステル結合を介して結合しているフェニルメタン(メタ)アクリレート系ポリマー、アニリン樹脂骨格にマレイミド基が直接結合しているフェニルメタンマレイミド系重合性オリゴマー、アニリン樹脂骨格にマレイミド基が直接結合しているフェニルメタンマレイミド系ポリマー等が挙げられる。
【0072】
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上の上記多官能性ラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。
上記硬化性組成物が上記多官能性ラジカル重合性化合物を含む場合、その含有量は、硬化性組成物100質量%中、3~50質量%であることが好ましく、5~45質量%であることがより好ましく、7~40質量%であることが更に好ましい。
【0073】
(低粘度のラジカル重合性化合物)
上記硬化性組成物は、低粘度のラジカル重合性化合物を含むことにより、硬化性組成物の粘度を下げて反応効率を向上させたり、高粘度物質の含有量を調整して耐水性を向上させたりすることができる。
【0074】
上記低粘度のラジカル重合性化合物は、23℃における粘度が180mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは140mPa・s以下、さらに好ましくは100mPa・s以下である。
【0075】
上記低粘度のラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を同一分子内に1種だけ有していてもよく、2種以上有していてもよい。また同一分子内に1つだけ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
【0076】
ラジカル重合性基としては、上述した親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性基と同様のものが挙げられる。上記低粘度のラジカル重合性化合物としては、入手性、ラジカル重合性、希釈性等の観点から、単官能型の(メタ)アクリル酸エステル類、単官能型の2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸エステルが特に好ましく挙げられる。
【0077】
単官能型の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸sec-アミル、(メタ)アクリル酸tert-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル等が挙げられる。
【0078】
単官能型の2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸エステルとしては、例えば、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸メチル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸エチル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸n-プロピル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸n-ブチル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸sec-ブチル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸tert-ブチル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸n-アミル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸sec-アミル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸tert-アミル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘキシル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸2-エチルヘキシル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルメチル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸オクチル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸トリシクロデカニル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸2-メトキシエチル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸2-エトキシエチル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル、2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸(2ーメチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル等が挙げられる。
【0079】
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上の上記低粘度のラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。
上記硬化性組成物が上記低粘度のラジカル重合性化合物を含む場合、その含有量は、硬化性組成物100質量%中、3~40質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましく、7~30質量%であることが更に好ましい。
【0080】
(活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物)
上記硬化性組成物は、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物を更に含むことにより、共有結合性の架橋を硬化物に導入して、硬化物の耐水性や硬度等の機械特性を向上させることができる。
【0081】
上記活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物が有する官能基は、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす官能基であればよく、同一分子内に1種だけ有していてもよく、2種以上有していてもよい。また同一分子内に1つだけ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
【0082】
活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす官能基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、窒素原子に結合しているヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基等が挙げられる。
また活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす官能基を有する化合物は、低分子化合物でもよく、オリゴマーでもよく、高分子化合物でもよい。
【0083】
エポキシ基を有する化合物の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、N-グリシジルフタルイミド、メトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ラウリルオキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ラウリロキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型ポリグリシジルエーテル、o-クレゾールノボラック型ポリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ラジカル重合性基とグリシジル基とを有する化合物(グリシジル(メタ)アクリレート等)のラジカル(共)重合体等の、グリシジル基を有する化合物;(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2-エポキシ-4-ビニル-1-シクロヘキセン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ラジカル重合性基と脂環式エポキシ基とを有する化合物((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等)のラジカル(共)重合体等の、脂環式エポキシ基を有する化合物;等が挙げられる。なかでも、反応性の観点から、グリシジル基を有する化合物が好ましい。
【0084】
オキセタニル基を有する化合物としては、例えば、(3-エチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、3-アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、2-エチルヘキシルメチル-3-エチルオキセタン、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]イソフタレート、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等の低分子化合物;(3-エチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性基とオキセタニル基とを有する化合物のラジカル(共)重合体;等が挙げられる。
【0085】
カルボジイミド基を有する化合物としては、例えば、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-ジ-tert-ブチルカルボジイミド、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、カルボジスタ(製品名、帝人(株))等が挙げられる。
【0086】
オキサゾリン基を有する化合物としては、例えば、エポクロスWS-300(製品名、(株)日本触媒)、エポクロスWS-500(製品名、(株)日本触媒)、エポクロスWS-700(製品名、(株)日本触媒)、エポクロスRPS-1005(製品名、(株)日本触媒)等が挙げられる。
【0087】
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI)等の低分子化合物;ポリメリックMDI、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性基とイソシアネート基とを有する化合物のラジカル(共)重合体、ポリオールと過剰のポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー等の高分子化合物;が挙げられる。なお、イソシアネート基は、フェノール、ε-カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、ジメチルピラゾール等のブロック剤でマスクされたイソシアネート基であってもよい。
【0088】
アルコキシシリル基を有する化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランの加水分解・重縮合オリゴマー、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合オリゴマー、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等の低分子化合物;末端アルコキシシリル型ポリジメチルシロキサン、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートや3-(トリエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性基とアルコキシシリル基とを有する化合物のラジカル(共)重合体等の高分子化合物;が挙げられる。
【0089】
窒素原子に結合しているヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する化合物としては、例えば、N-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミドやN-(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミドのラジカル(共)重合体等のヒドロキシメチル化(メタ)アクリルアミド系化合物;ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンの部分あるいは完全メチルエーテル化物、部分メチロール化メラミン、部分メチロール化メラミンのメチルエーテル化物等のメラミン樹脂類;テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラメチロールベンゾグアナミンのメチルエーテル化物等のベンゾグアナミン樹脂類;1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素のメチルエーテル化物等の尿素樹脂類;等が挙げられる。
【0090】
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上の上記活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物を含んでいてもよい。
上記活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物の中では、耐水性向上、熱変色耐性、貯蔵安定性の観点から、エポキシ基を有する化合物、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましく、エポキシ基を有する化合物及びアルコキシシリル基を有する化合物の両方を含むことがより好ましい。また、エポキシ基及びアルコキシシリル基を有する化合物を含むことも好ましい。
【0091】
上記硬化性組成物が上記活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物を含む場合、その含有量は、硬化性組成物100質量%中、3~70質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、7~35質量%であることが更に好ましく、7~30質量%であることがより更に好ましい。
【0092】
(親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂)
上記硬化性組成物は、親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂を更に含むことにより、硬化性組成物中に含まれるイオンと分子間相互作用したり、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物を用いる場合にそのような化合物と反応したりすることで、硬化物の耐水性をより一層向上させることができる。
【0093】
親水性の官能基あるいは構造としては例えば、水酸基、ポリオキシエチレン構造、アミノ基(無機あるいは有機の酸とのアミン塩構造となっていてもよい)、アミド基、カルボキシ基(無機あるいは有機の塩基とのカルボン酸塩構造になっていてもよい)、スルホン酸基(無機あるいは有機の塩基とのスルホン酸塩構造となっていてもよい)、リン酸基(無機あるいは有機の塩基とのリン酸塩構造となっていてもよい)、4級アンモニウム塩構造、ベタイン構造が好ましく挙げられる。これらの官能基及び構造としては、上述した親水性の官能基あるいは構造を有するラジカル重合性化合物に記載のものと同様のものが挙げられる。
【0094】
上記親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共)重合体、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)共重合体、ポリエチレンイオン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0095】
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上の上記親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂を含んでいてもよい。
上記硬化性組成物が上記親水性の官能基あるいは構造を有する樹脂を含む場合、その含有量は、硬化性組成物100質量%中、3~30質量%であることが好ましく、4~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることが更に好ましい。
【0096】
[界面活性剤]
上記硬化性組成物は、更に、界面活性剤を含むことが好ましい。上記硬化性組成物が1種又は2種以上の界面活性剤を含むことにより、硬化物の親水性や硬化性組成物のレベリング性を向上させることができる。
【0097】
界面活性剤としては、同一分子内に親水部と親油部とを有する化合物であって、界面活性剤として一般的の公知の化合物であれば特に限定されず、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0098】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸アルカリ金属塩等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンサルフェート塩;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のフッ素含有アニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0099】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノ蟻酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩; ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウム塩;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルケニルトリメチルアンモニウム塩等のフッ素含有カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0100】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル類;シュガーエステル類、セルロースエーテル類;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルケニルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルケニルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルケニル基及び親水性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルケニル基及び親油性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親水性基および親油性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルケニル基と親水性基及び親油性基を有するオリゴマー等のフッ素含有非イオン性界面活性剤;ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等の変性シリコーン系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0101】
両性界面活性剤の具体例としては、ジメチルアルキルラウリルベタイン、ジメチルアルキルステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の脂肪酸型両性イオン系界面活性剤;ジメチルアルキルスルホベタインのようなスルホン酸型両性イオン系界面活性剤;アルキルグリシン等が挙げられる。
【0102】
また上記界面活性剤は、ラジカル重合性基を有していてもよく、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす官能基を有していてもよい。ラジカル重合性基の種類としては重合性の観点からは前述の炭素-炭素二重結合を活性化する官能基が隣接している炭素-炭素二重結合が好ましいが、界面活性剤としての入手性を考慮すると、(メタ)アクリロイル基を有する界面活性剤、アリルオキシ構造を有する界面活性剤、芳香族ビニル構造を有する界面活性剤が好ましい。活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす官能基の種類としては上述したエポキシ基、オキセタニル基、カルボジイミド基、アジリジン基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、窒素原子に結合しているヒドロキシメチル基あるいはアルコキシメチル基等が挙げられるが、界面活性剤としての入手性を考慮すると、エポキシ基を有する界面活性剤、アルコキシシリル基を有する界面活性剤が好ましい。
【0103】
界面活性剤の含有量は、用途や目的に応じて調整すればよく、含まなくともよいが、使用する場合には、硬化性組成物100質量%中、0.001~20質量%であることが好ましく、0.003~15質量%であることがより好ましく、0.005~10質量%であることが更に好ましい。
【0104】
[他の成分]
上記硬化性組成物は、上述した成分以外に、更に、無機微粒子、ラジカル重合開始剤、ラジカル重合抑制剤、溶媒等を含んでいてもよい。
【0105】
(無機微粒子)
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上の無機微粒子を含むことにより、硬化物の親水性や硬度を向上させることができる。
【0106】
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化チタン、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化セリウム、酸化アンチモン、インジウムドープ酸化錫等の微粒子が挙げられる。これらの無機微粒子の中でも、透明性を高く保つ観点から、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウムがより好ましい。
【0107】
無機微粒子は、表面修飾されていてもよく、例えば、表面に親油性のアルキル基や、ラジカル重合性基を有していても良い。
無機微粒子の粒子径は、透明性の観点から、1~100nmが好ましく、1~50nmがより好ましく、1~30nmが更に好ましい。
【0108】
無機微粒子の含有量は、用途や目的に応じて調整すればよく、含まなくともよいが、使用する場合には、硬化性組成物100質量%中、0.1~90質量%であることが好ましく、0.5~70質量%であることがより好ましく、1~60質量%であることが更に好ましい。
【0109】
(ラジカル重合開始剤)
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上のラジカル重合開始剤を含むことにより、ラジカル重合性を向上させることができる。
【0110】
ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤と、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル開始剤とに分類でき、用途や目的に応じて選択すればよく、光ラジカル開始剤と熱ラジカル開始剤を併用してもよい。
【0111】
光ラジカル開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ケタール系化合物、アントラキノン系化合物、ホスフィンオキシド系化合物、チオキサントン系化合物、ハロメチル化トリアジン系化合物、ハロメチル化オキサジアゾール系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシムエステル系化合物、チタノセン系化合物、安息香酸エステル系化合物、アクリジン系化合物等が挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光ラジカル開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0112】
具体的には例えば、アセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-〔(4-メチルフェニル)メチル〕-1-〔4-(4-モルホリニル)フェニル〕-1-ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド系化合物;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、[3-(3,4-ジメチル-9-オキソチオキサンテン-2-イル)オキシ-2-ヒドロキシプロピル]-トリメチルアザニウムクロリド等のチオキサントン系化合物;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-sec-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-sec-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-sec-トリアジン、2-(4-エトキシカルボキニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-sec-トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2-トリクロロメチル-5-〔β-(2’-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2’-(6’’-ベンゾフリル)ビニル)〕-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1-〔4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)〕-1,2-オクタンジオン、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)エタノン等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9-フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等が挙げられる。
【0113】
熱ラジカル開始剤としては、有機過酸化物系開始剤やアゾ系開始剤が好適であり、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤や、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等、特開2020-122053号公報に記載の有機過酸化物系開始剤やアゾ系開始剤が挙げられる。
【0114】
ラジカル重合開始剤の含有量は、用途や目的に応じて調整すればよく、含まなくともよいが、使用する場合には、本発明の硬化性組成物100質量%中、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.05~8質量%であり、更に好ましくは0.01~7質量%である。
【0115】
(ラジカル重合抑制剤)
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上のラジカル重合抑制剤を含むことにより、貯蔵、運搬、組成物調製や処理における種々の操作等における望まないラジカル重合を抑制することができる。
【0116】
ラジカル重合抑制剤としては、ラジカル連鎖防止性を有する1次酸化防止剤及び/又は過酸化物分解性を有する2次酸化防止剤を用いることができる。
【0117】
1次酸化防止剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ベンゾキノン類、フェノール類、芳香族アミン類、フェノチアジン類、ジチオカルバミン酸金属塩類、ニトロソ化合物等が挙げられる。
2次酸化防止剤としては、例えば、ホスフィン、ホスファイト等のリン系化合物、チオエーテルやメルカプトベンズイミダゾール、チオウレア等のイオウ系化合物等が挙げられる。
1次酸化防止剤、2次酸化防止剤は、それぞれ単独で用いてもよいが、併用することがより好ましい。
1次酸化防止剤のなかでは着色抑制の観点からフェノール類が好ましく、2次酸化防止剤のなかでは耐酸・耐加水分解性の観点からチオエーテルが好ましい。
【0118】
フェノール類としては、例えば、モノエーテル化ヒドロキノン類、ヒンダードフェノール類及びその多量化物(二量化物を含む)又は多量化物の誘導体、セミヒンダードフェノール類及びその多量化物(二量化物を含む)又は多量化物の誘導体等が挙げられる。
【0119】
モノエーテル化ヒドロキノン類としては、例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキノンモノn-ブチルエーテル等、特開2014-40585号公報に記載のモノエーテル化ヒドロキノン類が挙げられる。
【0120】
ヒンダードフェノール類としては、例えば、2,6-ビス(tert-ブチル)-4-メチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル-3-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等、特開2014-40585号公報に記載のヒンダードフェノール類が挙げられる。
ヒンダードフェノール類の多量化物または多量化物の誘導体としては、特開2014-40585号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0121】
セミヒンダードフェノール類としては、例えば、6-tert-ブチル-o-クレゾール、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール等、特開2014-40585号公報に記載のセミヒンダードフェノール類が挙げられる。
セミヒンダードフェノール類の多量化物または多量化物の誘導体としては、特開2014-40585号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0122】
また、ホスフィンとしては、例えば、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン等、特開2014-40585号公報に記載のホスフィンが挙げられる。
【0123】
ホスファイトとしては、例えば、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト等、特開2014-40585号公報に記載のホスファイトが挙げられる。
【0124】
チオエーテルとしては、例えば、2,2’-チオジグリコール酸、(エチレンジチオ)二酢酸、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタノール、3,3’-チオジプロピオン酸、3,3’-チオジプロピオン酸ジメチル、3-ラウリルチオプロピオン酸等、特開2014-40585号公報に記載のチオエーテルが挙げられる。
【0125】
ラジカル重合抑制剤の含有量は、用途や目的に応じて調整すればよく、含まなくともよいが、使用する場合には、本発明の硬化性組成物100質量%中、0.0005~10質量%であることが好ましく、0.001~5質量%であることがより好ましく、0.002~3質量%であることが更に好ましい。
【0126】
(溶媒)
上記硬化性組成物は、1種又は2種以上の溶媒を含むことにより、粘度調整、塗膜の厚さの調整が容易になる。
【0127】
溶媒としては、上述した2-(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸イオン、親水性陽イオン、耐水性を向上する成分との相溶性の観点から、水、又は、水酸基、エーテル構造、エステル構造、ケトン構造、もしくはアミド構造の少なくとも1つの構造を含む極性有機溶媒が好ましい。
【0128】
上記極性溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド等が挙げられる。
【0129】
溶媒の含有量は、用途や目的に応じて調整すればよく、含まなくともよいが、使用する場合には本発明の硬化性組成物の不揮発分総量100質量部に対して、1~500質量部であることが好ましく、2~400質量部であることがより好ましく、3~300質量部であることがさらに好ましい。なお、「不揮発分総量」とは、上記硬化性組成物において、硬化物を形成する成分(硬化物の形成時に揮発する溶媒等を除く)の総量を意味する。
【0130】
上記硬化性組成物は、その使用目的、用途等に応じて、さらに上記した以外の成分を含んでいてもよく、そのような成分としては例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤、チクソ剤、有機微粒子、染料、顔料、分散剤、艶消し剤、沈降防止剤、泡消剤、難燃剤、離型剤等が挙げられる。これらは公知のものから適宜選択して用いればよい。これらの含有量も公知の方法から適宜選択すればよい。
【0131】
<硬化物>
本発明の硬化物は、上述した硬化性組成物を硬化させてなる。本発明の硬化物は、上記硬化性組成物の硬化物であり、親水性と耐水性に優れる。
硬化物が親水性であっても水溶性であると水や湿気との接触で容易に除去されてしまい実用性がないため、硬化物は非水溶性であることが必要である。ここで非水溶性に関しては、硬化物を23℃の純水に1時間浸漬した時に、硬化物が水に溶解あるいは分散することなく原形を保っているか否かで判定する。原形を保っているか否かの判定は、目視で行う。
【0132】
親水性を判断する指標は種々あり、例えば呼気防曇性、温水あるいは熱水蒸気防曇性、水接触角、表面張力、表面自由エネルギー等が挙げられるが、簡便さと再現性の観点から呼気防曇性、水接触角が好ましい。本発明の硬化物は、親水性の指標として少なくとも次のいずれかを満たすことが好ましい。
指標(I)呼気に対して防曇性を示す
指標(II)水接触角が50°以下である
【0133】
指標(I)
呼気に対して防曇性を示すか否かの判定は、次の方法により行う。すなわち、温度23℃、湿度50%の環境下において、硬化物の表面に対して垂直方向に5cm離れた位置から、3秒間息を吹きかけた際の硬化物の表面を目視にて観察し、曇りが生じなかった合に防曇性を示すとし、曇りが生じた場合は防曇性を示さないと判断する。
曇りが生じたか否かは、目視により判断する。
【0134】
指標(II)
硬化物の水接触角の測定方法は、水滴(2μL)を硬化物表面に着滴させてから3分以内に接触角が50°以下になるか否かで判定する。防汚性等が必要な用途では、水接触角は40°以下であることが好ましく、30°以下であることがより好ましく、特に超親水に分類される用途では、20°以下であることが更に好ましい。水接触角は、液滴法で測定できる接触角計を用い、温度23℃、湿度50%の環境下、2μLの水を滴下し、着滴後の液滴画像を元にθ/2法により静的接触角を算出する。
【0135】
曇りが生じるか否かを容易に視認できる場合は指標(I)で判定するのが好ましく、着色や艶消しを施した硬化物とした場合等、曇りを視認しにくい場合は指標(II)で判定するのが好ましい。上記硬化物は、用途に応じて指標(I)又は指標(II)のどちらかのみを満たすようにしてもよく、いずれをも満たすようにしてもよい。
このような、上述した硬化性組成物の硬化物であって、上記指標(I)又は指標(II)の少なくとも一方を満たす非水溶性硬化物もまた本発明の一つである。
【0136】
上記硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、ラジカルを発生させてラジカル重合する方法が好ましく挙げられる。
【0137】
ラジカル発生方法としては、上記硬化性組成物を加熱する方法、及び/又は、上記硬化性組成物に活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。加熱又は活性エネルギー線の照射は、1段階で行ってもよく、2段階以上に分けて行ってもよい。
加熱と活性エネルギー線の照射の両方を行う場合、これらは同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
加熱又は活性エネルギー線の照射を行う場合、上記硬化性組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
【0138】
ラジカル重合の加熱温度は、ラジカル重合開始剤の有無や種類、含有量、用途に応じて適宜選択すればよいが、熱ラジカル開始剤を用いる場合は、好ましくは40~160℃であり、より好ましくは50~150℃であり、更に好ましくは60~140℃である。
【0139】
上記活性エネルギー線としては、通常用いられるものを使用することができ、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線等の電磁波や、電子線、中性子線、陽子線等の粒子線等が挙げられる。これらの中では、エネルギーの強さ、エネルギー線の発生装置等の点から、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、電子線が好ましく、紫外線、可視光線、電子線がより好ましく、紫外線が最も好ましい。光ラジカル開始剤を用いない場合は、ガンマ線、X線、電子線等のエネルギーの強い活性エネルギー線を用いるのが好ましく、光ラジカル開始剤を用いる場合には、紫外線、可視光線等の、エネルギーは比較的弱いが発生が容易で経済的な活性エネルギー線を好ましく用いることができる。
【0140】
上記硬化性組成物のラジカル重合は、酸素によるラジカル重合阻害を抑制する観点から、低酸素濃度下で行うことが好ましい。低酸素濃度下とするには、硬化性組成物表面に窒素やアルゴン等の不活性ガスを吹き流す、不活性ガスを充填した密閉容器中に硬化性組成物を設置する、硬化性組成物を減圧可能な密閉容器中に設置して減圧する、硬化性組成物表面に硬化後に離型可能なカバーフィルムを密着させる等の方法が挙げられる。
【0141】
本発明の硬化物を得るための反応は、少なくとも上記硬化性組成物中にラジカルを発生させラジカル重合させることを含むが、それ以外の反応を含んでいてもよく、そのような反応としては活性水素基との熱付加反応、活性水素基との熱縮合反応が好ましく挙げられる。これらの反応を行う場合、上記硬化性組成物は、上記活性水素基との熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物を含むことが好ましい。これらの反応はラジカル重合の前に行ってもよく、同時でもよく、後で行ってもよい。
【0142】
上記活性水素基との熱付加反応あるいは熱縮合反応における加熱温度は、活性水素基と熱付加反応あるいは熱縮合反応を起こす化合物の種類、含有量、用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは40~170℃、より好ましくは70~160℃、更に好ましくは90~150℃である。
【0143】
<硬化物を有する物品>
本発明はまた、上述した硬化物を表面に有する物品でもある。上述した硬化物を得るための硬化性組成物を、基材の表面に塗布して、上述した方法で硬化物を得ることにより、親水性及び耐水性に優れた硬化膜を有する物品が得られる。
【0144】
上記基材の種類や形状としては特に制限されず、用途や目的に応じて適宜選択すればよい。基材の種類としては具体的には例えば、ガラス、鉄、ステンレス、アルミニウム等の無機基材;シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン-アクリル樹脂、セルロース系樹脂、天然ゴム等のイソプレン系樹脂、カゼイン等のタンパク質系樹脂等の有機基材;が挙げられる。
【0145】
なお上記硬化性組成物を塗布する基材の表面上には、密着性向上プライマー、着色塗料、反射防止層、ガスバリア層、透明導電層等の機能層が設けられていたり、コロナ放電処理やフレーム処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0146】
上記硬化性組成物を塗布する方法としては基材の種類や形状に応じて適宜選択すればよく特に制限はないが、具体的には例えば、スプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、及びフレキソ印刷法等が挙げられる。
【0147】
上記硬化性組成物を塗布した後、必要に応じて、乾燥等を行い、上述した硬化方法を行うことにより、基材上に親水性の硬化膜を良好に形成することができる。
【0148】
上記物品における硬化物の膜厚は、特に限定されず、目的又は用途に応じて適宜選択すればよいが、汎用装置を用い平滑で均一な塗膜を形成するためには、好ましくは0.5~30μmであり、より好ましくは1~20μmであり、更に好ましくは2~15μmである。
【0149】
<用途>
本発明の硬化物は、優れた親水性と耐水性を有するため、本発明の硬化性組成物、硬化物及び物品は、親水性や耐水性が必要とされる用途に幅広く用いることができる。
本発明の硬化性組成物、硬化物及び物品は、例えば、眼鏡、ヘルメット、浴室用鏡、自動車用ランプ、エアコンディショナー用熱交換器、カメラレンズ、内視鏡等の日用品、建材、輸送機器、家電、精密電子機器から医療用機器に至る様々な用途に用いることができる。
【実施例0150】
以下に実施例を掲げて本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0151】
本実施例における測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
<2-アリルオキシメチルアクリル酸の定量>
ラジカル重合抑制剤としてヒドロキノンモノメチルエーテルを0.04%(液全量に対して)および2,2’-(エチレンジチオ)ジエタノールを0.06%(液全量に対して)含む、純度が96.5%の2-アリルオキシメチルアクリル酸を用意した。なお、純度は下記キャピラリー電気泳動システムで測定した。
-測定装置-
キャピラリー電気泳動システム Agilent 7100 (アジレント・テクノロジー(株))
-測定条件-
バックグランド吸収剤によるインダイレクト吸収法で測定した。
キャピラリー:バブルセルフューズドシリカキャピラリー(内径75μm×全長80.5cm)
泳動液:陰イオン分析用泳動液(pH=8.2)
印加電圧:-20kV
-定量方法-
面積比を元にした内部標準法(内部標準物質:プロピオン酸ナトリウム)で定量した。
標準試料の作成:プロピオン酸ナトリウム及び定量対象物質(カルボン酸イオンのナトリウム塩)を重水に溶解してH-NMRでモル比を定量した後、更に超純水で希釈したものを検量線作成用の標準試料とした。
測定用試料の作成:プロピオン酸ナトリウム水溶液及び被験試料を秤量し、0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液および超純水で希釈したものを、測定用試料とした。
【0152】
<耐水性>
-積層体の作製-
実施例1~11及び比較例1~6については、まず、バーコーターNo.4を用いて、硬化性組成物を100μm厚のPETフィルム(ルミラーフィルムT60、東レ(株))上に塗布し、70℃に加熱したホットプレート上で1分間乾燥して、乾燥膜厚が約5μmの未硬化塗膜を得た。次いで、ベルトコンベア式UV照射装置(高圧水銀ランプ、照度150mW/cm、窒素雰囲気下)を用いて、塗布面に積算光量1000mJ/cmとなるようUV照射し、PETフィルム上に硬化層が形成された積層体を得た。
実施例12~20については、まず、バーコーターNo.4を用いて、硬化性組成物を100μm厚のPETフィルム(ルミラーフィルムT60、東レ(株))上に塗布し、乾燥膜厚が8~9μmの未硬化塗膜を得た。次いで、ベルトコンベア式UV照射装置(高圧水銀ランプ、照度150mW/cm、窒素雰囲気下)を用いて、塗布面に積算光量1000mJ/cmとなるようUV照射した。フィルムをガラス板上にクリップで固定し、130℃のオーブンに入れ30分間加熱した後、オーブンから出してクリップをはずし、PETフィルム上に硬化層が形成された積層体を得た。
実施例21、22については、バーコーターNo.3を用いて硬化性組成物を塗布し、乾燥膜厚が5~6μmの未硬化塗膜としたこと以外は、実施例12~20と同様にして積層体を得た。
【0153】
-耐水試験-
上記で得られた積層体を被験物品として用いた。被験物品を23℃のイオン交換水に24時間浸漬した後、被験物品を水中から取り出した。イオン交換水を入れた洗瓶を用いて表面に純水をかけ流した後、室温で風乾した。風乾した後の表面を目視で観察し、表面(硬化物)の外観において、全く変化がないものを「○」、溶解して消失している、部分的に膨潤や剥がれが見られる等、原形を維持できていないものや、原形を保ってはいるが白化しているものを「×」とした。
実施例12~22においては、風乾後の外観に全く変化が無かったため、耐水試験を行った被験物品について、呼気防曇性、水接触角、鉛筆硬度を測定した。
【0154】
<耐水試験後の呼気防曇性>
上記耐水試験を行った被験物品について、温度23℃、湿度50%の環境下で、被験物品の表面から5cm離れた位置から、呼気を被験物品の表面に3秒吹きかけ、曇りが生じなかったものを○、生じたものを×とした。
【0155】
<耐水試験後の水接触角>
耐水試験を行った被験物品について、接触角計としてMSA Flex(KRUESS製)を用い、被験物品の表面に水滴が着滴してから30秒後及び3分後の接触角を下記条件で測定した。
測定温度:23℃、湿度50%
純水の滴下量:2μL
測定値の算出:被験物品表面の任意の3か所について、θ/2法で静的接触角を測定し、その平均値を水接触角とした。
【0156】
<耐水試験後の鉛筆硬度>
耐水試験を行った被験物品について、電動式鉛筆硬度試験機を用い、荷重750gで鉛筆硬度を測定した。
【0157】
(実施例1)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、超純水1.4g、2-アリルオキシメチルアクリル酸1.03g、アクリル酸0.50g、酸化亜鉛0.38gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、水酸化カルシウム0.17gを加え透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.057gを加え、粉末が溶解するまで攪拌してから、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の塗布液(硬化性組成物)を得た。なお表1に示した略号が表す物質は、表2のとおりである。
調製した硬化性組成物を用いて被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0158】
(実施例2)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、超純水1.45g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.62g、アクリル酸0.91g、酸化亜鉛0.48gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、水酸化ナトリウム0.20gを加え攪拌した。最後に2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.060gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0159】
(実施例3)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、超純水1.65g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.62g、アクリル酸0.91g、酸化亜鉛0.48gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、トリス(2-アミノエチル)アミン0.25gを加え攪拌した。最後に2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.064gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0160】
(実施例4)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、超純水1.65g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.62g、アクリル酸0.91g、酸化亜鉛0.48gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、ポリエチレンイミン(エポミンSP-300、(株)日本触媒)0.24gを加え攪拌した。最後に2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.064gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0161】
(実施例5)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.005g、超純水1.95g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.44g、アクリル酸1.08g、酸化亜鉛0.36gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.66gを加え攪拌した。最後に2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.074gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0162】
(実施例6)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、超純水1.65g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.44g、アクリル酸1.08g、酸化亜鉛0.49gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、水酸化マグネシウム0.17gを加え透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、ポリビニルピロリドン(K-85、(株)日本触媒)0.22g、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.065gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0163】
(実施例7)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.006g、超純水2.6g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.44g、アクリル酸1.08g、酸化亜鉛0.36gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.66gを加え攪拌し、次にグリセロールモノメタクリレート0.54gを加え攪拌した。最後に2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.090gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0164】
(実施例8)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.007g、超純水2.4g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.44g、アクリル酸1.08g、酸化亜鉛0.36gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.66gを加え攪拌し、次にグリセロールモノメタクリレート0.56g、アクリル酸3-スルホプロピルカリウム0.26gを加え攪拌した。最後に2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.098gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0165】
(実施例9)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.007g、超純水0.4g、2-プロパノール2.2g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.44g、アクリル酸1.08g、酸化亜鉛0.36gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌し、さらにN,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.66gを加え透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、グリセロールモノメタクリレート0.56g、ポリエステルアクリレート(EBECRYL 810、ダイセル・オルネクス(株))0.26gを加え攪拌した。最後に2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.098gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水/2-プロパノール混合溶媒)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0166】
(実施例10)
攪拌子を入れたスクリュー管に、超純水2.0g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.44g、アクリル酸1.08g、酸化亜鉛0.36gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、エチレンジアミン0.27g、グリセロールモノメタクリレート0.55g、ラジカル重合性界面活性剤(アントックス LMA-20、日本乳化剤(株))0.06gを加え攪拌した。最後に2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.078gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0167】
(実施例11)
攪拌子を入れたスクリュー管に、超純水1.7g、2-プロパノール1.7g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.51g、アクリル酸1.28g、酸化亜鉛0.61gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌し、さらにN,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.66gを加え透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、グリセロールモノメタクリレート0.60g、アクリル酸3-スルホプロピルカリウム0.30g、テトラエチレングリコールジアクリレート0.30g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.18g、ポリグリセリン系アクリレート(SA-TE6、阪本薬品工業(株))0.18g、ラジカル重合性界面活性剤(アミノイオンRE1000L、日本乳化剤(株))0.06gを加え攪拌した。最後に2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.125gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水/2-プロパノール混合溶媒)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0168】
(比較例1)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、超純水1.5g、2-アリルオキシメチルアクリル酸1.03g、アクリル酸0.50g、酸化亜鉛0.57gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.064gを加え、粉末が溶解するまで攪拌してから孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0169】
(比較例2)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、超純水1.55g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.62g、アクリル酸0.91g、酸化亜鉛0.69gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.061gを加え、粉末が溶解するまで攪拌してから孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0170】
(比較例3)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.003g、超純水1.1g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.62g、アクリル酸0.91g、水酸化マグネシウム0.49gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.051gを加え、粉末が溶解するまで攪拌してから孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0171】
(比較例4)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.005g、超純水1.9g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.62g、アクリル酸0.91g、ポリエチレンイミン(K-85、(株)日本触媒)を秤量し、室温で透明になるまで攪拌した。その後、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.058gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0172】
(比較例5)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.005g、超純水2.0g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.44g、アクリル酸1.08g、酸化亜鉛0.73gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した。室温に戻した後、グリセロールモノメタクリレート0.52g、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Omnirad 2959、IGM Resins社)0.078gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表1に示す質量比となるように各成分を配合して、溶媒(水)の含有量が約45質量%の硬化性組成物を得た。
実施例1と同様にして被験物品を作製し、耐水性、呼気防曇性、水接触角を評価した。結果を表1に示した。
【0173】
(実施例12)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.009g、メタノール0.2g、2-アリルオキシメチルアクリル酸1.04g、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.52gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(NKエステル AM-230G、新中村化学(株))1.38gを加え均一になるまで攪拌した。室温に戻してから、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート0.85g、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が2のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-850、ナガセケムテックス(株))0.85gを加え攪拌し均一化した。最後に1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.15gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表3に示す質量比となるように各有効成分を配合して、有効成分の含有量が90質量%超の硬化性組成物を得た。なお表3に示した略号が表す物質は、表4のとおりである。
調製した硬化性組成物を用いて上述のように被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、耐水試験後の水接触角、耐水試験後の鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0174】
(実施例13)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.007g、メタノール0.2g、2-アリルオキシメチルアクリル酸1.04g、酸化亜鉛0.10gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.34gを加え均一になるまで攪拌した。室温に戻してから、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート0.82g、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が9のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-830、ナガセケムテックス(株))1.32gを加え攪拌し均一化した。最後に1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.09gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表3に示す質量比となるように各有効成分を配合して、有効成分の含有量が90質量%超の硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を用いて、実施例12と同様にして被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、水接触角、鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0175】
(実施例14)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.007g、メタノール0.2g、2-アリルオキシメチルアクリル酸1.04g、酸化亜鉛0.10gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、
、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.34gを加え均一になるまで攪拌した。室温に戻してから、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート0.82g、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が2のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-850、ナガセケムテックス(株))0.60g、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が13のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-841、(ナガセケムテックス(株))0.71gを加え攪拌し均一化した。最後に1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.09gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表3に示す質量比となるように各有効成分を配合して、有効成分の含有量が90質量%超の硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を用いて、実施例12と同様にして被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、水接触角、鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0176】
(実施例15)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.007g、メタノール0.2g、2-アリルオキシメチルアクリル酸1.04g、酸化亜鉛0.11gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、
、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.31gを加え均一になるまで攪拌した。室温に戻してから、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート0.82g、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン0.33g、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル0.26g(デナコール EX-321、ナガセケムテックス(株))、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が9のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-830、ナガセケムテックス(株))0.33g、ラウリロキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル(デナコール EX-171、ナガセケムテックス(株))0.13gを加え攪拌し均一化した。最後に1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.09gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表3に示す質量比となるように各有効成分を配合して、有効成分の含有量が90質量%超の硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を用いて、実施例12と同様にして被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、水接触角、鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0177】
(実施例16)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.007g、メタノール0.2g、2-アリルオキシメチルアクリル酸1.04g、酸化亜鉛0.11gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、
、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.31gを加え均一になるまで攪拌した。室温に戻してから、2-エチルヘキシルアクリレート0.14g、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート0.77g、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン0.35g、グリセロールポリグリシジルエーテル0.18g(デナコール EX-313、ナガセケムテックス(株))、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER YX8000、三菱ケミカル(株))0.18g、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が9のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-830、ナガセケムテックス(株))0.35g、ラウリロキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル(デナコール EX-171、ナガセケムテックス(株))0.14gを加え攪拌し均一化した。最後に1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.09gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表3に示す質量比となるように各有効成分を配合して、有効成分の含有量が90質量%超の硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を用いて、実施例12と同様にして被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、水接触角、鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0178】
(実施例17)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、メタノール0.2g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.85g、アクリル酸0.18g、酸化亜鉛0.13gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、氷浴で冷却しながらジアリルアミン0.48gを添加し攪拌した。室温に戻してから、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.40g、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート0.79g、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン0.32g、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER YX8000、三菱ケミカル(株))0.32g、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が9のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-830、ナガセケムテックス(株))0.40g、ラウリロキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル(デナコール EX-171、ナガセケムテックス(株))0.16gを加え攪拌し均一化した。最後に1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.11gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表3に示す質量比となるように各有効成分を配合して、有効成分の含有量が90質量%超の硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を用いて、実施例12と同様にして被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、水接触角、鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0179】
(実施例18)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、メタノール0.2g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.85g、アクリル酸0.18g、酸化亜鉛0.13gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、氷浴で冷却しながらジアリルアミン0.48gを添加し攪拌した。室温に戻してから、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.40g、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート0.79g、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン0.32g、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER YX8000、三菱ケミカル(株))0.32g、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が9のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-830、ナガセケムテックス(株))0.40g、ラウリロキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル(デナコール EX-171、ナガセケムテックス(株))0.16gを加え攪拌し均一化した。最後に1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.11gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表3に示す質量比となるように各有効成分を配合して、有効成分の含有量が90質量%超の硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を用いて、実施例12と同様にして被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、水接触角、鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0180】
(実施例19)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、メタノール0.2g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.69g、アクリル酸0.34g、酸化亜鉛0.19gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、氷浴で冷却しながらジアリルアミン0.46gを添加し攪拌した。室温に戻してから、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.37g、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート0.64g、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン0.30g、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER YX8000、三菱ケミカル(株))0.30g、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が9のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-830、ナガセケムテックス(株))0.37g、ラウリロキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル(デナコール EX-171、ナガセケムテックス(株))0.15gを加え攪拌し均一化した。最後に1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.10gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表3に示す質量比となるように各有効成分を配合して、有効成分の含有量が90質量%超の硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を用いて、実施例12と同様にして被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、水接触角、鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0181】
(実施例20)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.004g、メタノール0.2g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.69g、アクリル酸0.34g、酸化亜鉛0.19gを秤量し、50℃に加温しながら透明になるまで攪拌した後、氷浴で冷却しながらジアリルアミン0.46gを添加し攪拌した。室温に戻してから、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.37g、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート0.64g、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン0.30g、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER YX8000、三菱ケミカル(株))0.30g、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が9のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-830、ナガセケムテックス(株))0.37g、ラウリロキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル(デナコール EX-171、ナガセケムテックス(株))0.15gを加え攪拌し均一化した。最後に1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.10gを加え、粉末が溶解するまで攪拌した後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、表3に示す質量比となるように各有効成分を配合して、有効成分の含有量が90質量%超の硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を用いて、実施例12と同様にして被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、水接触角、鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0182】
(実施例21)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.003g、トリスヒドロキシメチルアミノメタン0.20g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.49g、メタノール0.6gを秤量し、50℃に加温しながら固体が完全に溶解するまで攪拌した後、室温に戻してから、3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.30gを加え攪拌した。次に、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.81g、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン0.65g、テトラメトキシシランの加水分解・重縮合オリゴマー0.65g(MKCシリケート MS51、三菱ケミカル(株))、ラウリロキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル(デナコール EX-171、ナガセケムテックス(株))0.16g、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.06gを加え、攪拌し均一化した。別途、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.20g、ジアザビシクロウンデセン0.21g、酢酸エチル0.40gをスクリュー管に秤量し、振り混ぜて均一化した後、0.38gを採取し、先に調製した硬化性組成物が入っているスクリュー管に添加し、攪拌した。孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、有効成分が表3に示したような重量比で、有効成分の含有量が約80質量%の硬化性組成物を得た。
調製した硬化性組成物を用いて上述のように被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、耐水試験後の水接触角、耐水試験後の鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0183】
(実施例22)
攪拌子を入れたスクリュー管に、フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス)0.003g、トリスヒドロキシメチルアミノメタン0.37g、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.45g、メタノール0.6gを秤量し、50℃に加温しながら固体が完全に溶解するまで攪拌した後、室温に戻した。次に、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.48g、グリセロールモノメタクリレート0.32g、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン0.58g、テトラメトキシシランの加水分解・重縮合オリゴマー0.77g(MKCシリケート MS51、三菱ケミカル(株))、ポリエチレングリコール鎖の平均繰返数が13のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX-841、(ナガセケムテックス(株))0.13g、ラウリロキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル(デナコール EX-171、ナガセケムテックス(株))0.13g、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社)0.06gを加え、攪拌し均一化した。別途、2-アリルオキシメチルアクリル酸0.20g、ジアザビシクロウンデセン0.21g、酢酸エチル0.40gをスクリュー管に秤量し、振り混ぜて均一化した後、0.38gを採取し、先に調製した硬化性組成物が入っているスクリュー管に添加し、攪拌した。孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、有効成分が表3に示したような重量比で、有効成分の含有量が約80質量%の硬化性組成物を得た。
調製した硬化性組成物を用いて上述のように被験物品を作製し、耐水試験後の呼気防曇性、耐水試験後の水接触角、耐水試験後の鉛筆硬度を評価した。結果を表3に示した。
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【0186】
【表3】
【0187】
【表4】
【0188】
表1~4より、実施例の硬化物は、耐水性と親水性(呼気防曇性、水接触角)を両立できることが示された。さらに実施例12~22の結果より、エポキシ基及び/又はアルコキシシリル基を有する化合物を併用することで、耐水性の高い硬化物が得られることが示された。