(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007356
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】内燃機関システム及び圧縮機
(51)【国際特許分類】
F02M 41/12 20060101AFI20250109BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20250109BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F02M41/12 360
F02D19/02 D
F02M21/02 F
F02M21/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108691
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 恭平
(72)【発明者】
【氏名】清瀬 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊
(72)【発明者】
【氏名】服部 智秀
(72)【発明者】
【氏名】二宮 誠
【テーマコード(参考)】
3G066
3G092
【Fターム(参考)】
3G066AA01
3G066AB05
3G066CA07
3G066CE02
3G092AA08
3G092AB09
3G092BB06
3G092BB08
3G092DE09S
3G092DE11S
3G092DE12S
3G092DG08
3G092FA22
3G092HB01X
3G092HB03X
(57)【要約】
【課題】システムの大型化を防ぎながらも内燃機関に供給できる燃料ガスを増やす。
【解決手段】内燃機関システムは、燃料ガスを圧縮状態で貯留する燃料貯留源を内燃機関に接続する燃料ガス流路と、前記燃料ガス流路の前記燃料ガスを加圧する圧縮機と、を備える。前記圧縮機は、吸込口及び吐出口を有するシリンダと、前記シリンダに収容され且つ前記吸込口及び前記吐出口に面した圧縮室を画定するピストンと、前記ピストンから突出したロッドと、前記ロッドを往復動させるカムと、を含む少なくとも1つのレシプロ構造を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを圧縮状態で貯留する燃料貯留源を内燃機関に接続する燃料ガス流路と、
前記燃料ガス流路の前記燃料ガスを加圧する圧縮機と、を備え、
前記圧縮機は、吸込口及び吐出口を有するシリンダと、前記シリンダに収容され且つ前記吸込口及び前記吐出口に面した圧縮室を画定するピストンと、前記ピストンから突出したロッドと、前記ロッドを往復動させるカムと、を含む少なくとも1つのレシプロ構造を有する、内燃機関システム。
【請求項2】
前記レシプロ構造は、
前記ロッドの外周面と前記シリンダの内周面との間に介在する第1ロッドシールと、
前記シリンダの軸線方向における前記ピストンと前記第1ロッドシールとの間に配置された再圧縮室と、を更に含み、
前記再圧縮室は、前記ロッドの前記外周面と前記シリンダの前記内周面とで画定され、前記ピストンの後退によって容積が減少し、
前記シリンダは、前記再圧縮室に流体的に連通した流出口を有する、請求項1に記載の内燃機関システム。
【請求項3】
前記レシプロ構造は、前記再圧縮室から前記流出口を介して前記再圧縮室の外部に向かう流れを許容し且つ前記再圧縮室の外部から前記流出口を介して前記再圧縮室に向かう流れを阻害する逆止弁を更に含み、
前記流出口は、前記逆止弁を介して前記内燃機関に流体的に接続された流路に流体的に接続されている、請求項2に記載の内燃機関システム。
【請求項4】
前記シリンダの前記内周面は、前記ピストンが収容される空間を画定する第1内周面と、前記ロッドが収容される空間を画定する第2内周面と、を有し、
前記第2内周面の内径は、前記第1内周面の内径よりも小さく、
前記シリンダは、径方向に延びて前記第1内周面を前記第2内周面に接続し且つ前記軸線方向において前記ピストンに対向する対向面を更に有し、
前記再圧縮室は、前記ピストンと前記シリンダの前記対向面との間に画定されている、請求項2に記載の内燃機関システム。
【請求項5】
前記圧縮機は、前記カムが収容されるカム室を画定するカムケースを更に備え、
前記レシプロ構造は、
前記シリンダの前記軸線方向における前記第1ロッドシールと前記カム室との間において、前記ロッドの前記外周面と前記シリンダの前記内周面との間に介在する第2ロッドシールと、
前記シリンダの前記軸線方向における前記第1ロッドシールと前記第2ロッドシールとの間に配置された再リーク室と、を更に含み、
前記再リーク室は、前記ロッドの前記外周面と前記シリンダの前記内周面とで画定され、前記ロッドの後退によって容積が減少し、
前記シリンダは、前記再リーク室に流体的に連通した排出口を有する、請求項2に記載の内燃機関システム。
【請求項6】
前記再圧縮室に連通した前記流出口は、前記内燃機関の燃料噴射装置に燃料ガスを供給する流路に流体的に接続されており、
前記再リーク室の前記排出口は、前記内燃機関に流体的に接続された吸気通路に流体的に接続されている、請求項5に記載の内燃機関システム。
【請求項7】
前記圧縮機は、前記カムが収容されるカム室を更に有し、
前記ピストンが上死点から下死点に移動する行程において、前記カム室の内圧は、前記圧縮室の内圧よりも低く設定されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項8】
前記圧縮機は、前記カムを回転させるカム軸を更に備え、
前記レシプロ構造は、前記カムの外周面を覆って前記カムに対して相対回転可能なリングを更に含み、
前記カムの前記外周面は、真円形状を有し、
前記カム軸は、前記カムに偏心して接続され、
前記カムは、前記リングを介して前記ロッドを押圧する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項9】
前記レシプロ構造は、
前記チャージ流路から前記吸込口を介して前記圧縮室に向かう流れを許容し且つ前記圧縮室から前記吸込口を介して前記チャージ流路に向かう流れを阻害する逆止弁と、
前記圧縮室から前記吐出口を介して前記チャージ流路に向かう流れを許容し且つ前記チャージ流路から前記吐出口を介して前記圧縮室に向かう流れを阻害する逆止弁と、を更に含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのレシプロ構造は、複数のレシプロ構造を含み、
前記複数のレシプロ構造の前記カムは、互いに等間隔にずれた位相を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項11】
前記圧縮機の前記吐出口から吐出される燃料ガスを冷却するクーラを更に備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【請求項12】
吸込口及び吐出口を有するシリンダと、
前記シリンダに収容され且つ前記吸込口及び前記吐出口に面した圧縮室を画定するピストンと、
前記ピストンから突出したロッドと、
前記ロッドを往復動するカムと、
前記カムを回転させるカム軸と、
前記カムの外周面を覆って前記カムに対して相対回転可能なリングと、を備え、
前記カムの前記外周面は、真円形状を有し、
前記カム軸は、前記カムに偏心して接続され、
前記カムは、前記リングを介して前記ロッドを押圧する、圧縮機。
【請求項13】
吸込口及び吐出口を有するシリンダと、
前記シリンダに収容され且つ前記吸込口及び前記吐出口に面した圧縮室を画定するピストンと、
前記ピストンから突出したロッドと、
前記ロッドの外周面と前記シリンダの内周面との間に介在する第1ロッドシールと、
前記シリンダの軸線方向における前記ピストンと前記第1ロッドシールとの間に配置された再圧縮室と、を備え、
前記再圧縮室は、前記ロッドの前記外周面と前記シリンダの前記内周面とで画定され、前記ピストンの後退によって容積が減少し、
前記シリンダは、前記再圧縮室に流体的に連通した流出口を有する、圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関システム及び圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高圧の水素ガスタンクから減圧弁を介して供給される水素ガスを燃料として内燃機関で燃焼させて駆動力を発生する内燃機関システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の運転により燃料タンク内の燃料ガスが消費され続けると、最終的には燃料タンクの内圧が所定値未満にまで下がることになる。その状態になると、燃料タンク内の燃料ガスを適切に内燃機関に供給できず、燃料タンクは燃料ガスが残存しているにもかかわらずエンプティ状態として扱われる。
【0005】
そこで本開示の一態様は、システムの大型化を防ぎながらも内燃機関に供給できる燃料ガスを増やすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る内燃機関システムは、燃料ガスを圧縮状態で貯留する燃料貯留源を内燃機関に接続する燃料ガス流路と、前記燃料ガス流路の前記燃料ガスを加圧する圧縮機と、を備える。前記圧縮機は、吸込口及び吐出口を有するシリンダと、前記シリンダに収容され且つ前記吸込口及び前記吐出口に面した圧縮室を画定するピストンと、前記ピストンから突出したロッドと、前記ロッドを往復動させるカムと、を含む少なくとも1つのレシプロ構造を有する。
【0007】
本開示の一態様に係る圧縮機は、吸込口及び吐出口を有するシリンダと、前記シリンダに収容され且つ前記吸込口及び前記吐出口に面した圧縮室を画定するピストンと、前記ピストンから突出したロッドと、前記ロッドを往復動するカムと、前記カムを回転させるカム軸と、前記カムの外周面を覆って前記カムに対して相対回転可能なリングと、を備える。前記カムの前記外周面は、真円形状を有し、前記カム軸は、前記カムに偏心して接続され、前記カムは、前記リングを介して前記ロッドを押圧する。
【0008】
本開示の他態様に係る圧縮機は、吸込口及び吐出口を有するシリンダと、前記シリンダに収容され且つ前記吸込口及び前記吐出口に面した圧縮室を画定するピストンと、前記ピストンから突出したロッドと、前記ロッドの外周面と前記シリンダの内周面との間に介在する第1ロッドシールと、前記シリンダの軸線方向における前記ピストンと前記第1ロッドシールとの間に配置された再圧縮室と、を備える。前記再圧縮室は、前記ロッドの前記外周面と前記シリンダの前記内周面とで画定され、前記ピストンの後退によって容積が減少し、前記シリンダは、前記再圧縮室に流体的に連通した流出口を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る内燃機関システムによれば、システムの大型化を防ぎながらも内燃機関に供給できる燃料ガスを増やすことができる。本開示の一態様に係る圧縮機によれば、クランク軸及びコンロッドによってピストンを往復動させるレシプロ圧縮機に比べてコンパクト化できる。本開示の他態様に係る圧縮機によれば、リークした燃料ガスがシリンダ内に溜まることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る内燃機関システムを搭載した移動体の概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の圧縮機アッセンブリを拡大した模式図である。
【
図6】
図6は、
図5の圧縮機の再圧縮室及び再リーク室の水平断面図である。
【
図7】
図7は、減速機及び電気モータの配置例のブロック図である。
【
図8】
図8は、減速機及び電気モータの他の配置例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る内燃機関システムを搭載した移動体の概略図である。
図1に示すように、内燃機関システム1は、本実施形態では移動体Vに搭載されている。移動体Vは、有人ビークルでもよいし、無人ビークルでもよい。移動体Vは、例えば、駆動輪Wを備えた車両である。移動体Vでは、内燃機関システム1の内燃機関Eで発生した駆動力が変速機Tを介して駆動輪Wに伝達される。移動体Vは、例えば、二輪車、三輪車、四輪車、鉄道車両等とし得る。駆動輪Wは、内燃機関システム1の内燃機関Eで発生した駆動力によって推進力を発生する推進力生成器の一例である。移動体Vは、船舶、航空機等としてもよい。その場合、前記推進力生成器は、プロペラ又はファンとし得る。
【0013】
内燃機関システム1は、燃料貯留源2を備える。燃料貯留源2は、燃料ガスを圧縮状態で貯留する。燃料貯留源2は、複数の燃料タンクを含む。一例として、燃料貯留源2は、第1燃料タンク11、第2燃料タンク12、第3燃料タンク13及び第4燃料タンク14を含む。これら燃料タンク11~14は、燃料ガスを圧縮状態で貯留する。満タン状態の燃料タンク11~14の内圧は、標準気圧(0.1MPa)よりも高く、具体的には内燃機関Eで必要とされる燃料噴射圧よりも十分に高い。満タン状態の燃料タンク11~14の内圧は、例えば、70MPaである。燃料ガスは、例えば、水素ガスである。水素ガスは、炭素系燃料に比べ、内燃機関Eで同じ出力を得るために必要な燃料量が大きく、各燃料タンク11~14の燃料ガスの残量が早く減りやすい。なお、燃料ガスは、タンク貯留状態で気化した燃料が含まれていればよく、炭化水素系燃料のような他の種類の燃料ガスであってもよい。
【0014】
内燃機関システム1は、内燃機関Eを備える。内燃機関Eは、燃料貯留源2から供給される燃料ガスを燃焼し、その燃焼エネルギーを回転エネルギーに変換して駆動力として出力する。内燃機関Eは、例えば、直噴エンジンである。本実施形態では、内燃機関Eは、レシプロエンジンである。この場合、内燃機関Eは、シリンダ内で燃料ガスを爆発させて、シリンダ内の気体の膨張によってピストンの往復運動を生じさせる。このピストンの往復運動は、内燃機関Eのクランク軸の回転運動に変換して出力される。
【0015】
内燃機関Eは、燃料噴射装置45を備える。内燃機関Eには、標準気圧(0.1MPa)よりも高圧となる所定の燃料噴射圧の燃料ガスが供給される必要がある。直噴エンジンに供給される燃料ガスの必要圧力は、非直噴エンジンに供給される燃料ガスの必要圧力よりも高い。直噴エンジンでは、ピストンによってシリンダの燃焼室の気体が圧縮状態となったときに、燃料ガスが燃焼室に直接供給される。直噴エンジンが内燃機関Eとして用いられる場合、内燃機関Eには、例えば10MPa以上の圧力を有する燃料ガスが燃料貯留源2から供給される必要がある。
【0016】
そのため、燃料貯留源から内燃機関の燃料噴射装置までの流路が単純な構成であれば、燃料貯留源の燃料ガスの圧力が10MPa未満になると、内燃機関において燃料噴射装置から燃料ガスを噴射することができず、燃料貯留源はエンプティ状態とみなされる。即ち、燃料貯留源から内燃機関の燃料噴射装置までの流路が単純な構成であれば、燃料貯留源がエンプティ状態とみなされるときに燃料貯留源に残存する燃料ガスが多くなる。しかし、本実施形態の内燃機関システム1によれば、後述するように、燃料貯留源2の燃料ガスが内燃機関Eへの供給のために極力利用される。そのため、燃料貯留源2がエンプティ状態とみなされるときに燃料貯留源2に残存する燃料ガスが少なくなり、燃料貯留源2の燃料ガスが効率的に利用される。
【0017】
内燃機関Eの吸気ポートには、吸気通路47が接続されている。吸気通路47には、スロットル弁48が設けられている。エアクリーナ46で清浄化された外気は、吸気通路47を流れて内燃機関Eの吸気ポートに供給されて燃焼に使われる。内燃機関Eに供給される吸気量は、スロットル弁48によって調節される。
【0018】
内燃機関システム1は、燃料貯留源2を内燃機関Eに接続する主流路3を備える。具体的には、主流路3は、第1主流路15、第2主流路16、第3主流路17及び第4主流路18を含む。第1主流路15は、第1燃料タンク11を内燃機関Eに接続する。第2主流路16は、第2燃料タンク12を内燃機関Eに接続する。第3主流路17は、第3燃料タンク13を内燃機関Eに接続する。第4主流路18は、第4燃料タンク14を内燃機関Eに接続する。本実施形態では、第1~第4主流路15~18は、内燃機関Eに向かう途中で互いに合流している。即ち、主流路3は、第1~第4主流路15~18の下流部を共通化させ且つ内燃機関Eに接続される共通流路部3aを有する。
【0019】
内燃機関システム1は、チャージタンク4を備える。チャージタンク4の容積は、特に限定されないが、本実施形態では燃料タンク11~14の各々の容積よりも小さい。チャージタンク4の最大許容内圧は、燃料タンク11~14の最大許容内圧よりも小さい。なお、チャージタンク4の最大許容内圧は、燃料タンク11~14の各々の最大許容内圧と同じかそれよりも大きくてもよい。
【0020】
内燃機関システム1は、チャージ流路5を備える。チャージ流路5は、第1チャージ流路41、第2チャージ流路42及び第3チャージ流路43を含む。第1チャージ流路41は、第1燃料タンク11をチャージタンク4に接続する。第2チャージ流路42は、第2燃料タンク12をチャージタンク4に接続する。第3チャージ流路43は、第3燃料タンク13をチャージタンク4に接続する。第4燃料タンク14は、チャージタンク4に接続されていない。
【0021】
本実施形態では、第1~第3チャージ流路41~43の下流部は、共通化されている。第1~第3チャージ流路41~43は、チャージタンク4に向かう途中で互いに合流している。即ち、チャージ流路5は、第1~第3チャージ流路41~43の下流部を共通化させ且つチャージタンク4に接続される共通流路部5aを有する。チャージ流路5の共通流路部5aには、圧縮機アッセンブリ6が設けられている。圧縮機アッセンブリ6は、第1~第3燃料タンク11~13からチャージ流路5に流れる燃料ガスをチャージタンク4に向けて加圧する。圧縮機アッセンブリ6によって加圧された燃料ガスは、チャージタンク4に一時的に貯められる。
【0022】
圧縮機アッセンブリ6は、入口ポート6a、出口ポート6b及びリークポート6cを有する。入口ポート6aは、チャージ流路5の共通流路部5aの上流部から燃料ガスが流入するポートである。出口ポート6bは、圧縮機アッセンブリ6で加圧された燃料ガスをチャージ流路5の共通流路部5aの下流部に吐出するポートである。リークポート6cは、圧縮機アッセンブリ6の後述する圧縮機60(
図2参照)で生じたブローバイガスが排出されるポートである。リークポート6cは、ブローバイガス流路49を介して吸気通路47に接続されている。
【0023】
チャージ流路5の共通流路部5aには、クーラ28が設けられている。クーラ28は、圧縮機アッセンブリ6の出口ポート6bから吐出される燃料ガスを冷却する。即ち、圧縮機アッセンブリ6の出口ポート6bから吐出される燃料ガスは、クーラ28によって冷却されることで減容され、チャージタンク4に供給される。
【0024】
内燃機関システム1は、副流路7を備える。副流路7は、チャージタンク4を内燃機関Eに接続する。具体的には、副流路7は、チャージ流路5の共通流路部5aを主流路3の共通流路部3aに接続するブリッジ流路7aを含む。チャージ流路5の共通流路部5aのうち、ブリッジ流路7aとチャージ流路5の共通流路部5aとの合流点P1よりも下流の部分は、副流路7の一部を兼ねる。主流路3の共通流路部3aのうち、ブリッジ流路7aと主流路3の共通流路部3aとの合流点P2よりも下流部分は、副流路7の一部を兼ねる。チャージタンク4の燃料ガスは、チャージ流路5の共通流路部5aのうち合流点P1よりも下流の部分と、ブリッジ流路7aと、主流路3の共通流路部3aのうち合流点P2よりも下流の部分と、を介して内燃機関Eに供給され得る。
【0025】
主流路3、チャージ流路5及び副流路7は、燃料貯留源2を内燃機関Eに接続する燃料ガス流路である。内燃機関システム1は、その燃料ガス流路に設けられた弁システム8を備える。弁システム8は、主流路3、チャージ流路5及び副流路7をそれぞれ開閉する。弁システム8の構成は、特定の形態に限定されることはない。即ち、弁システム8は、主流路3、チャージ流路5及び副流路7をそれぞれ開閉できるものであれば種々の形態を採り得る。
【0026】
例えば、弁システム8は、第1燃料タンク弁21、第2燃料タンク弁22、第3燃料タンク弁23、第4燃料タンク弁24、チャージタンク弁25、逆止弁26,27、遮断弁29,31、減圧弁30、及び、リリーフ弁32を有する。第1~第4燃料タンク弁21~24、チャージタンク弁25、及び、遮断弁29,31は、例えば、電気的に制御可能な電磁弁である。
【0027】
第1燃料タンク弁21は、第1燃料タンク11のポートを閉じる閉状態と、第1燃料タンク11のポートを第1主流路15に連通させ且つ第1燃料タンク11のポートを第1チャージ流路41に連通させない第1開状態と、第1燃料タンク11のポートを第1チャージ流路41に連通させ且つ第1燃料タンク11のポートを第1主流路15に連通させない第2開状態と、の間で動作する。
【0028】
第2燃料タンク弁22は、第2燃料タンク12のポートを閉じる閉状態と、第2燃料タンク12のポートを第2主流路16に連通させ且つ第2燃料タンク12のポートを第2チャージ流路42に連通させない第1開状態と、第2燃料タンク12のポートを第2チャージ流路42に連通させ且つ第2燃料タンク12のポートを第2主流路16に連通させない第2開状態と、の間で動作する。
【0029】
第3燃料タンク弁23は、第3燃料タンク13のポートを閉じる閉状態と、第3燃料タンク13のポートを第3主流路17に連通させ且つ第3燃料タンク13のポートを第3チャージ流路43に連通させない第1開状態と、第3燃料タンク13のポートを第3チャージ流路43に連通させ且つ第3燃料タンク13のポートを第3主流路17に連通させない第2開状態と、の間で動作する。
【0030】
第1~第3燃料タンク弁21~23は、例えば、三方弁とし得る。なお、第1燃料タンク弁21は、第1燃料タンク11のポートを第1主流路15に連通させ得る開閉弁と、第1燃料タンク11のポートを第1チャージ流路41に連通させ得る開閉弁と、を有するものでもよい。第2~第3燃料タンク弁22~23についても、同様に2個の開閉弁を有するものでもよい。
【0031】
第4燃料タンク弁24は、第4燃料タンク14のポートを閉じる閉状態と、第4燃料タンク14のポートを第4主流路18に連通させる開状態と、の間で動作する。チャージタンク弁25は、チャージタンク4のポートを閉じる閉状態と、チャージタンク4のポートをチャージ流路5に連通させる開状態と、の間で動作する。
【0032】
逆止弁26,27は、主流路3における内燃機関Eに向けた流れを許容し、かつ、その逆の流れを阻止する。具体的には、逆止弁26は、主流路3における第1燃料タンク11及び第2燃料タンク12から内燃機関Eに向けた流れを許容し、かつ、主流路3における第1燃料タンク11及び第2燃料タンク12に向けた流れを阻止する。逆止弁27は、主流路3における第3燃料タンク13及び第4燃料タンク14から内燃機関Eに向けた流れを許容し、かつ、主流路3における第3燃料タンク13及び第4燃料タンク14に向けた流れを阻止する。
【0033】
遮断弁29は、副流路7のブリッジ流路7aを開閉する。即ち、遮断弁29が開くと、チャージタンク4の燃料ガスが副流路7を介して主流路3の共通流路部3aに供給され得る。
【0034】
減圧弁30は、主流路3の共通流路部3aに設けられている。具体的には、減圧弁30は、副流路7のブリッジ流路7aと主流路3の共通流路部3aとの合流点P2の下流の部分に設けられている。減圧弁30は、主流路3の燃料ガスの圧力を内燃機関Eに適した所定圧力まで減圧させる。減圧弁30は、主流路3のうち減圧弁30の下流側の圧力を内燃機関Eの所定の燃料噴射圧(例えば、10MPa)に維持する。減圧弁30は、その内部流路の下流側の圧力が当該燃料噴射圧よりも低くなると、上流側と下流側とを連通するバイパス通路を開く弁である。減圧弁30は、当該燃料噴射圧を超えると前記バイパス通路を閉じる。このようにして主流路3から内燃機関Eに供給される燃料ガスの圧力を所定の燃料噴射圧に維持するように、減圧弁30の下流側を流れる燃料ガスを減圧弁30の上流側を流れる燃料ガスに比べて減圧する。
【0035】
遮断弁31は、主流路3の共通流路部3aにおける減圧弁30の下流の部分を開閉する。遮断弁31は、緊急時などに主流路3から内燃機関Eへの燃料ガスの供給を遮断可能であり、主流路3のうち減圧弁30の下流側の部分に配置されている。リリーフ弁32は、主流路3の共通流路部3aにおける減圧弁30と遮断弁31との間の部分の圧力が所定のリリーフ圧を超えると、主流路3の共通流路部3aの燃料ガスを排出する。
【0036】
第1燃料タンク圧力センサ35は、第1燃料タンク11が貯留する燃料ガスの圧力を検出する。第2燃料タンク圧力センサ36は、第2燃料タンク12が貯留する燃料ガスの圧力を検出する。第3燃料タンク圧力センサ37は、第3燃料タンク13が貯留する燃料ガスの圧力を検出する。第4燃料タンク圧力センサ38は、第4燃料タンク14が貯留する燃料ガスの圧力を検出する。チャージタンク圧力センサ39は、チャージタンク4が貯留する燃料ガスの圧力を検出する。
【0037】
内燃機関システム1は、第1~第4燃料タンク11~14に燃料ガスを補給するための構成を備える。具体的には、第1主流路15及び第2主流路16の共通化された部分における逆止弁26よりも上流の部分には、第1補給流路51が接続されている。第1補給流路51の端部には、補給口52が設けられている。第1補給流路51には、補給口52から第1燃料タンク11及び第2燃料タンク12に向けた流れを許容し、かつ、その逆の流れを阻止する逆止弁53が設けられている。
【0038】
第3主流路17及び第4主流路18の共通化された部分における逆止弁27よりも上流の部分には、第2補給流路54が接続されている。第2補給流路54の端部には、補給口55が設けられている。第2補給流路54には、補給口55から第3燃料タンク13及び第4燃料タンク14に向けた流れを許容し、かつ、その逆の流れを阻止する逆止弁56が設けられている。なお、1つの補給口から第1~第4燃料タンク11~14に燃料ガスを供給可能な構成としてもよいし、燃料タンク11~14の各々ごとに対応して補給口が設けられてもよい。
【0039】
内燃機関システム1は、コントローラ9を備える。コントローラ9は、各センサ35~39の検出信号に基づいて、弁システム8及び後述する電気モータ61を制御する。コントローラ9は、処理回路19を有する。コントローラ9は、例えば、プロセッサ、システムメモリ及びストレージメモリを備える。プロセッサは、例えば、中央演算処理装置(CPU)を含む。システムメモリは、例えば、RAMである。ストレージメモリは、ROMを含み得る。ストレージメモリは、ハードディスク、フラッシュメモリ又はそれらの組合せを含み得る。ストレージメモリは、プログラムを記憶している。システムメモリに読み出されたプログラムをプロセッサが実行する構成は、処理回路19の一例である。
【0040】
処理回路19は、燃料タンク11~14の少なくとも1つの燃料ガスを内燃機関Eに供給するように弁システム8を制御する。処理回路19は、燃料タンク11~13の少なくとも1つの燃料ガスを圧縮機アッセンブリ6によって加圧するように後述する電気モータ61を制御する。処理回路19は、チャージタンク4の燃料ガスを内燃機関Eに供給するように弁システム8を制御する。
【0041】
このようにして、燃料貯留源2の燃料ガスの圧力が低下しても、その燃料ガスを圧縮機アッセンブリ6により加圧し、その加圧された燃料ガスを内燃機関Eに供給できる。そのため、燃料貯留源2を大型化せずとも、内燃機関Eに供給できる燃料ガスを増やすことができる。
【0042】
図2は、
図1の圧縮機アッセンブリ6を拡大した模式図である。
図2に示すように、圧縮機アッセンブリ6は、圧縮機60、電気モータ61及び流路群62を備える。圧縮機60は、
図3~5を参照して後述する。電気モータ61は、圧縮機60を駆動する。流路群62は、
図3~5を参照して圧縮機60の詳細を説明した後に説明する。なお、本実施形態では、圧縮機60は、電気モータ61の駆動力によって駆動されるが、内燃機関Eが発生したエネルギーを利用して駆動されてもよい。
【0043】
図3は、
図2の圧縮機60の斜視図である。
図3に示すように、圧縮機60は、レシプロポンプ式の圧縮機である。圧縮機60の気筒数は、特に限定されないが、本実施形態では2気筒である。圧縮機60は、シリンダヘッド64、シリンダブロック65及びカムケース66を備える。シリンダヘッド64、シリンダブロック65及びカムケース66は、それぞれ互いに異なるピースであり、互いに複数の通しボルトBで締結されている。複数の通しボルトBの各々は、シリンダヘッド64、シリンダブロック65及びカムケース66を順番に挿通している。
【0044】
シリンダヘッド64及びシリンダブロック65は、カムケース66とは異なる材料で形成されている。シリンダヘッド64及びシリンダブロック65は、燃料ガスによる脆化がカムケース66よりも少なくなる金属材料で形成されている。例えば、燃料ガスが水素ガスである場合には、シリンダヘッド64及びシリンダブロック65はステンレス鋼で形成される。カムケース66はアルミニウム合金で形成されている。言い換えると、高圧水素に晒されるシリンダブロック65及びシリンダヘッド64は、カムケース66に比べて、耐水素脆性の高い材料で形成される。これにより、燃料ガスが水素の場合に、水素による圧縮機60の強度低下が防がれるとともに、カムケース66の材料選択の自由度が高くなる。例えば、カムケース66の材料としてアルミニウム合金が用いられることで、圧縮機60全体として軽量化及び製造コスト低減が図られる。なお、シリンダブロック65及びシリンダヘッド64は、カムケース66と同じ材料であってもよい。
【0045】
シリンダブロック65には、複数の放熱フィンがヒートシンク67として一体に設けられている。カムケース66は、軸通孔66aを有する。カムケース66に収容されたカム軸70は、軸通孔66aを通って外部に突出している。カムケース66から外部に突出したカム軸70の端部には、電気モータ61(
図2参照)の駆動力が入力される。
【0046】
図4は、
図3の圧縮機60の鉛直断面図である。
図5は、
図4のV-V線断面図である。
図4及び5に示すように、圧縮機60は、2気筒を有するレシプロポンプである。即ち、圧縮機60は、2つのレシプロ構造72を有する。2つのレシプロ構造72の各々は、シリンダ80、ピストン81、ロッド82、リニアブッシュ83、カム84、カムベアリング85、スプリング86、ライダーリング87、ピストンシール88、第1ロッドシール89、第2ロッドシール90、圧縮室91、再圧縮室92、及び、再リーク室93を含む。
【0047】
シリンダ80は、圧縮機アッセンブリ6の入口ポート6a(
図2参照)に接続された吸込口80aと、圧縮機アッセンブリ6の出口ポート6b(
図2参照)に接続された吐出口80bと、を有する。シリンダ80には、吸込口80aに連通する逆止弁97が取り付けられている。シリンダ80には、吐出口80bに連通する逆止弁98が取り付けられている。
【0048】
逆止弁97は、圧縮機アッセンブリ6の入口ポート6a(
図2参照)から吸込口80aを介して圧縮室91に向かう流れを許容し、かつ、圧縮室91から吸込口80aを介して圧縮機アッセンブリ6の入口ポート6a(
図2参照)に向かう流れを阻害する。逆止弁98は、圧縮室91から吐出口80bを介して圧縮機アッセンブリ6の出口ポート6b(
図2参照)に向かう流れを許容し、かつ、圧縮機アッセンブリ6の出口ポート6b(
図2参照)から吐出口80bを介して圧縮室91に向かう流れを阻害する。
【0049】
シリンダ80は、第1内周面80c、第2内周面80d及び第3内周面80eを有する。即ち、シリンダ80の内周面は、ピストン81の往復方向に並んだ複数の段差を有する。第1内周面80c、第2内周面80d及び第3内周面80eは、この順にピストン81からカム84に向けてシリンダ80の軸線方向Xに並んでいる。第1内周面80cは、ピストン81が収容される空間を画定する。第2内周面80d及び第3内周面80eは、ロッド82が収容される空間を画定する。第2内周面80dの内径は、第1内周面80cの内径よりも小さい。第3内周面80eの内径は、第2内周面80dの内径よりも小さい。
【0050】
シリンダ80は、第1内周面80cを第2内周面80dに段差状に接続する第1対向面80fを有する。第1対向面80fは、シリンダ80の軸線方向Xに直交する径方向Rに延び、軸線方向Xにおいてピストン81の背面に対向している。シリンダ80は、第2内周面80dを第3内周面80eに段差状に接続する第2対向面80gを有する。第2対向面80gは、シリンダ80の軸線方向Xに直交する径方向Rに延びている。
【0051】
ピストン81は、第1内周面80cが画定する空間においてシリンダ80に収容されている。ピストン81は、吸込口80a及び吐出口80bに面した圧縮室91をシリンダ80とともに画定する。ピストン81の外周面には、ライダーリング87及びピストンシール88が外嵌している。ライダーリング87は、ピストン81の軸ブレを防止する摺動部材である。ピストンシール88は、シリンダ80の第1内周面80cとピストン81の外周面との間の隙間を封止する役割を果たす。
【0052】
ロッド82は、ピストン81の背面から突出している。ピストン81の背面は、軸線方向Xにおいて圧縮室91から離れる側を向いた面である。ロッド82は、第1ロッド部82a及び第2ロッド部82bを有する。第1ロッド部82aは、ピストン81の背面から突出し、ピストン81よりも小径である。第1ロッド部82aは、シリンダ80の第2内周面80dに対して摺動する第1外周面82cを有する。第1ロッド部82aの外径は、シリンダ80の第2内周面80dの内径と実質的に同じである。第2ロッド部82bは、第1ロッド部82aの背面から突出し、第1ロッド部82aよりも小径である。即ち、ロッド82の外周面は、ピストン81の往復方向に並んだ段差を有する。第1ロッド部82aの背面は、軸線方向Xにおいて圧縮室91から離れる側を向いた面である。シリンダ80の第2対向面80gは、軸線方向Xにおいて第2ロッド部82bの背面に対向している。
【0053】
第1ロッド部82aは、シリンダ80の第2内周面80dが画定する空間を通っている。第1ロッド部82aの外周面には、第1ロッドシール89が外嵌している。即ち、第1ロッドシール89は、第1ロッド部82aの外周面とシリンダ80の第2内周面80dとの間に介在している。第1ロッドシール89は、シリンダ80の第2内周面80dと第1ロッド部82aの外周面との間の隙間を封止する役割を果たす。第1ロッド部82aの外周面は、ロッド82の第1外周面82cに相当する。
【0054】
第2ロッド部82bは、シリンダ80の第3内周面80eが画定する空間を通っている。第2ロッド部82bの外周面には、第2ロッドシール90が外嵌している。即ち、第2ロッドシール90は、軸線方向Xにおける第1ロッドシール89と後述のカム室66bとの間において、第2ロッド部82bの外周面とシリンダ80の第3内周面80eとの間に介在している。第2ロッドシール90は、シリンダ80の第3内周面80eと第2ロッド部82bの外周面との間の隙間を封止する役割を果たす。第2ロッド部82bの外周面は、ロッド82の第2外周面82dに相当する。
【0055】
リニアブッシュ83は、軸線方向Xにおける第2ロッドシール90とカム84との間においてシリンダ80に支持されている。リニアブッシュ83には、第2ロッド部82bを軸線方向Xに摺動自在に支持している。
【0056】
カム84及びカム軸70は、カムケース66の内部空間であるカム室66bに収容されている。カム84は、ロッド82の端面を軸線方向Xに押圧し、ロッド82を軸線方向Xに往復動させる。カム軸70は、2つのレシプロ構造72の各カム84に偏心して接続されている。カム軸70が回転すると、カム84がカム軸70の軸線周りにカム軸70と一体回転する。カム軸70は、軸ベアリング71を介してカムケース66に回転自在に支持されている。
【0057】
カムベアリング85は、例えば、転がり軸受である。本実施形態では、カムベアリング85は、ボール軸受である。カム84の外周面は、真円形状を有する。カムベアリング85は、カム84の外周面を覆うようにカム84に外嵌している。カムベアリング85は、内輪94、外輪95及び複数のボール96を有する。内輪94及び外輪95は、真円形状を有する。内輪94は、カム84の外周面に嵌合している。複数のボール96は、内輪94と外輪95との間に介在している。複数のボール96は、保持器によって所定の位置に保持されているが、当該保持器の図示は省略している。
【0058】
外輪95は、ボール96を介して内輪94に対して相対回転可能である。即ち、外輪95は、カム84の外周面を覆ってカム84に対して相対回転可能なリングである。外輪95は、ロッド82の端面82eに対して軸線方向Xに当接している。ロッド82の端面82eは、軸線方向Xにおいて圧縮室91から離れる側を向いた面である。カム84は、カムベアリング85を介してロッド82の端面82eを軸線方向Xに押圧する。スプリング86は、ロッド82がカム84に向かう方向にロッド82を付勢している。
【0059】
このようにカム84に対して外輪95が相対回転することで、ロッド82からカム84が受ける摺動抵抗が低減される。また、カム84からロッド82に与えられる径方向Rの力が低減され、ピストン81とシリンダ80との間の摺動抵抗も低減される。
【0060】
圧縮室91は燃料タンク11~14に接続されているため、カム室66bは、ピストン81が下死点に移動した状態であっても、圧縮室91の内圧よりも小さい圧力に設定される。本実施形態では、カムケース66は、カムケース6の外部の空間と連通する連通孔を有する。即ち、カム室66bは、大気開放されている。そのため、圧縮室91とカム室66bとの圧力差によって、ピストン81をカム84に向けて押圧する力を生じさせることができる。よって、弾性係数の小さいスプリング86を用いることができる。
【0061】
2つのレシプロ構造72の各カム84は、互いに等間隔にずれた位相を有する。即ち、一方のレシプロ構造72のピストン81が上死点にあるとき、他方のレシプロ構造72のピストン81は下死点にある。一方のレシプロ構造72において圧縮室91の燃料ガスを圧縮する力を発揮するようにカム84を回転させる必要があるときに、他方のレシプロ構造72の圧縮室91に流入した燃料ガスの圧力がピストン81を後退させて対応するカム84を回転させる。即ち、一方のレシプロ構造72の動作は、他方のレシプロ構造72の動作によってアシストされる。そのため、カム軸70を回転させる電気モータ61(
図2参照)に必要な駆動力を低減できるとともに、スプリング86を軽量かつ小型化できる。
【0062】
シリンダヘッド64とシリンダブロック65との間には、2つのレシプロ構造72のシリンダ80の内部空間をそれぞれ囲むように2つのガスケットGが挟まれている。同様に、シリンダブロック65とカムケース66との間には、2つのレシプロ構造72のシリンダ80の内部空間をそれぞれ囲むように2つのガスケットGが挟まれている。なお、カムケース66のカム室66bには、潤滑オイルが貯留され得る。これにより、軸ベアリング71及びカムベアリング85は、オイル潤滑される。
【0063】
再圧縮室92は、軸線方向Xにおけるピストン81と第1ロッドシール89との間に配置されている。再圧縮室92は、ロッド82の第1ロッド部82aの外周面と、シリンダ80の第1内周面80cと、ピストン81の背面と、シリンダ80の第1対向面80fと、によって画定されている。再圧縮室92は、軸線方向Xから見て円環形状を有する。ピストン81がカム室66bに近づくように後退すると、ピストン81と背面とシリンダ80の第1対向面80fとの間の距離が縮まる。そのため、再圧縮室92の容積は、ピストン81が後退することによって減少する。
【0064】
シリンダ80は、再圧縮室92に流体的に連通した流出口80hを有する。シリンダ80には、流出口80hに連通する逆止弁99が取り付けられている。逆止弁99は、シリンダ80から外部に突出している。ヒートシンク67は、少なくとも逆止弁99が突出する方向に突出することが好ましい。これによって、圧縮機60の外形において、ヒートシンク67を含むシリンダ80から逆止弁99が突出する突出量が抑えられる。
【0065】
逆止弁99は、再圧縮室92から流出口80hを介して再圧縮室92の外部に向かう流れを許容し、かつ、再圧縮室92の外部から流出口80hを介して再圧縮室92に向かう流れを阻害する。
【0066】
圧縮室91の燃料ガスがピストンシール88を越えて再圧縮室92にリークした場合には、そのリークした燃料ガスはピストン81の後退によって再圧縮室92で再圧縮される。この再圧縮されたリークガスは、逆止弁99を介してシリンダ80の流出口80hから外部に吐出される。流出口80hから吐出された燃料ガスは、戻り流路62c(
図2参照)及び入口流路62a(
図2参照)を通じて吸込口80aに再び供給される。
【0067】
流出口80hは、シリンダ80の径方向Rにおいて圧縮室91の中心から吸込口80aがずれる方向に再圧縮室92からずれた位置に配置されている。これによって、吸込口80aに設けられた逆止弁97と流出口80hに設けられた逆止弁99とを互いに近くすることができ、戻り流路62cが入口流路62aに合流するまでの流路長さを短くすることができる。
【0068】
再リーク室93は、軸線方向Xにおける第1ロッドシール89と第2ロッドシール90との間に配置されている。再リーク室93は、ロッド82の第2ロッド部82bの外周面と、シリンダ80の第2内周面80dと、ロッド82の第1ロッド部82aの背面と、シリンダ80の第2対向面80gと、によって画定されている。再リーク室93は、軸線方向Xから見て円環形状を有する。ロッド82がカム室66bに近づくように後退すると、第1ロッド部82aの背面とシリンダ80の第2対向面80gとの間の距離が縮まる。そのため、再リーク室93の容積は、ロッド82が後退することによって減少する。即ち、第1ロッド部82aは、再リーク室93の容積を減少させるピストンの役目を果たす。
【0069】
シリンダ80は、再リーク室93に流体的に連通した排出口80iを有する。排出口80iは、圧縮機アッセンブリ6のリークポート6c(
図2参照)に接続されている。再圧縮室92の燃料ガスが第1ロッドシール89を越えて再リーク室93にリークした場合には、そのリークした燃料ガスはロッド82の後退によって再リーク室93から排出口80iを介して外部に排出される。そのため、リークした燃料ガスがカム室66bに向かうことが防がれる。排出口80iから排出された燃料ガスは、排出流路62d(
図2参照)及びブローバイガス流路49(
図1参照)を流れて吸気通路47に供給される。これによって、リークした燃料ガスを、空気と混合して、内燃機関Eでの燃焼に寄与させることができる。
【0070】
再リーク室93は吸気通路47に連通しているため、ピストン81が上死点から下死点に移動する行程においても、再リーク室93の内圧は、圧縮室91の内圧よりも小さい圧力に設定される。これによって、ロッド82をカム84に押し付ける力を更に大きくでき、弾性係数の小さいスプリング86を用いることができる。
【0071】
内燃機関Eの吸気行程で負圧が生じる吸気通路47に再リーク室93が連通しているため、内燃機関Eの吸気行程において、再リーク室93の内圧は、カム室66bの内圧よりも低く設定される。これによって、再リーク室93からカム室66bへの燃料ガスのリークが好適に防がれる。
【0072】
図6に示すように、再圧縮室92におけるシリンダ80の第1内周面80cから第1ロッド部82aの第1外周面82cまでの径方向Rの距離は、再リーク室93におけるシリンダ80の第2内周面80dから第2ロッド部82bの第2周面82dまでの径方向Rの距離よりも小さい。本実施形態では、圧縮機60を径方向Rに切断した断面に関し、再圧縮室92の断面積は、再リーク室93の断面積と同程度であるが、それに限定されない。
【0073】
図2に戻って、圧縮機アッセンブリ6の流路群62は、入口流路62a、出口流路62b、戻り流路62c及び排出流路62dを含む。入口流路62aは、圧縮機アッセンブリ6の入口ポート6aを圧縮機60の吸込口80aに逆止弁97を介して接続している。出口流路62bは、圧縮機60の吐出口80bを圧縮機アッセンブリ6の出口ポート6bに逆止弁98を介して接続している。戻り流路62cは、圧縮機60の再圧縮室92の流出口80hを入口流路62aに接続している。
【0074】
圧縮機60の再圧縮室92で再圧縮された燃料ガスは、逆止弁99及び戻り流路62cを通じて圧縮機60の吸込口80aに再び供給し直される。よって、圧縮室91からリークして再圧縮室92で再圧縮された燃料ガスは、内燃機関Eの燃料噴射装置45に供給される。排出流路62dは、圧縮機60の再リーク室93の排出口80iを圧縮機アッセンブリ6のリークポート6cに接続している。よって、圧縮室91及び再圧縮室92からリークして再リーク室93に到達した燃料ガスは、内燃機関Eの吸気として燃焼に利用される。
【0075】
図3乃至5に示すように、本実施形態では、シリンダ80の軸線方向Xから見て、複数の通しボルトBがレシプロ構造72の周囲に配置されている。これにより、圧縮機60において圧縮力に対する抵抗力が生じても、通しボルトBがシリンダヘッド64、シリンダブロック65及びカムケース66の締結が強固に維持される。具体的には、複数の通しボルトBは、カム軸70の軸線方向に並んで配置されている。複数の通しボルトBは、カム軸70の軸線方向及びシリンダ80の軸線方向Xの両方に直交する方向にも並んで配置されている。
【0076】
また、複数の通しボルトBが逆止弁97,98の並ぶ方向に並んで配置されているため、逆止弁97,98との干渉を避けて通しボルトBを配置することができる。また、通しボルトBは、吸込口80a、吐出口80b及び排出口80iに対してカム軸70の軸線方向にずれているため、吸込口80a,吐出口80b及び排出口80iとの干渉を防ぐことができる。言い換えると、注目する1つのレシプロ構造72における吸込口80a、吐出口80b及び排出口80iは、カム軸70に直交する仮想平面に沿って配置されることが好ましい。
【0077】
図7は、減速機100及び電気モータ61の配置例のブロック図である。
図7に示すように、電気モータ61の駆動力は、減速機100を介して圧縮機60のカム軸70に入力されてもよい。そうすれば、電気モータ61を小型化することができる。電気モータ61は、圧縮機60のカム軸70が延びる方向において圧縮機60と並んでいてもよい。具体的には、圧縮機60のカム軸70と電気モータ61の駆動軸61aとは、互いに同軸上に配置されてもよい。減速機100は、特に限定されず、例えば、遊星歯車機構とし得る。
【0078】
図8は、減速機200及び電気モータ61の他の配置例のブロック図である。
図8に示すように、電気モータ61の駆動力は、減速機200を介して圧縮機60のカム軸70に入力されてもよい。電気モータ61は、圧縮機60のカム軸70が延びる方向に直交する方向において圧縮機60と並んでいてもよい。具体的には、圧縮機60のカム軸70と電気モータ61の駆動軸61aとは、互いに平行に配置されてもよい。減速機200は、特に限定されず、例えば、プーリー・ベルト機構又はチェーン・スプロケット機構とし得る。
【0079】
以上に説明した構成によれば、圧縮機60は、カム84によってピストン81を往復動させるため、クランク軸及びコンロッドによってピストンを往復動させるレシプロ圧縮機に比べてコンパクト化できる。例えば、コンロッドは、ピストンが上死点及び下死点ではない位置にあるときは、ピストン往復方向に対して傾斜することでピストン往復方向に直交する方向に突出し、圧縮機のケースが大型化する。これに対して、本実施形態では、ロッド82の延在方向がピストン81の往復方向に保たれるため、圧縮機50のケースを小型化できる。よって、圧縮機60の小型化に起因して、システム1の大型化を防ぎながらも内燃機関Eに供給できる燃料ガスを増やすことができる。
【0080】
なお、本開示の技術は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本システムは、小型化が要求されるような移動体に好適に適用することができるが、これに限らず、非移動体に搭載されてもよい。例えば、搬送可能な発電装置の駆動源として内燃機関システム1が用いられてもよい。この場合、内燃機関システム1は、発電用ジェネレータを回転させる駆動源となる。固定設備などの固定物に本システムが適用されてもよい。前記実施形態では、燃料タンク11~14の数が複数であるが、燃料タンクの数が1つのみであってもよい。燃料タンクが着脱式の場合、販売等される内燃機関システム1は、燃料タンクを備えていなくてもよい。
【0081】
複数のシリンダ80は、並列型でなくてもよく、水平対向型又はV型などでもよい。シリンダ80の向きは鉛直でなくてよく、例えば水平でもよい。実施形態の流路及び弁システムの構成は、一例に過ぎない。スプリング86は、省略されてもよい。圧縮機アッセンブリ6の気筒数は、1つでもよいし3つ以上でもよい。再圧縮室92の流出口80hの接続先は、吸込口80aでなくてもよく、吐出口80bの下流側におけるチャージ流路5又は副流路7でもよい。第1対向面80f及び第2対向面80gは、径方向Rに対して傾斜してもよい。
【0082】
カム84を覆う外輪95は、ボール96を介してカム84に対して回転可能であるとしたが、ボール96に代えて円筒状のローラや円錐を介して回転可能としてもよい。このように転がり軸受が用いられることが好ましい。カムベアリング85は、転がり軸受ではなく滑り軸受又は流体軸受でもよい。カムベアリング85が滑り軸受又は流体軸受である場合には、カム84に外嵌される円筒体が、カム84の外周面を覆ってカム84に対して相対回転可能なリングである。
【0083】
再圧縮室92が複数設けられてもよい。圧縮機60の径方向Rに切断した断面に関し、再圧縮室92の断面積は、再リーク室93の断面積より小さいとしたがこれに限らない。再圧縮室92の断面積は、再リーク室93の断面積と同じであってもよいし、再リーク室93の断面積よりも大きくてもよい。再圧縮室92及び再リーク室93の一方又は両方は、設けられなくてもよい。
【0084】
圧縮機60が複数のレシプロ構造72を有する場合は、各レシプロ構造72がカム軸70の軸線に沿って並んでもよいし、各レシプロ構造72がカム軸70の軸線まわりに並んでもよい。各レシプロ構造72がカム軸70に沿って又はカム軸70周りに並ぶことで、各レシプロ構造72に対してカム軸70を共通化でき、圧縮機をコンパクト化しやすい。
【0085】
圧縮機が複数のレシプロ構造72を有する場合、各レシプロ構造72にそれぞれ対応する各カム84は、それぞれ偏心の向きを互いに異ならせていることが好ましい。例えば、レシプロ構造72の数がN個の場合、各カム84の位相は、360°をNで除した角度(360°/N)ごとにカム70軸の軸線まわりにずれていることが好ましい。これによって、カム軸70の回転角の変化によるカム軸70の回転抵抗の変動を抑えることができる。
【0086】
圧縮機60は、カム室66bの圧力が大気圧よりも高い状態を維持したうえで圧縮室91の内圧に近づくことを防ぐリリーフ弁を有してもよい。カム室66bの圧力を高めることで、カム室66bへの燃料ガスのリークを防ぎやすくなる。
【0087】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0088】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0089】
[項目1]
燃料ガスを圧縮状態で貯留する少なくとも1つの燃料タンクを含む燃料貯留源と、
前記燃料貯留源を内燃機関に接続する燃料ガス流路と、
前記燃料ガス流路の前記燃料ガスを加圧する圧縮機と、を備え、
前記圧縮機は、吸込口及び吐出口を有するシリンダと、前記シリンダに収容され且つ前記吸込口及び前記吐出口に面した圧縮室を画定するピストンと、前記ピストンから突出したロッドと、前記ロッドを往復動させるカムと、を含む少なくとも1つのレシプロ構造を有する、内燃機関システム。
【0090】
この構成によれば、燃料貯留源の燃料ガスの圧力が低下しても、その燃料ガスを圧縮機により加圧し、その加圧された燃料ガスを内燃機関に供給できる。そのため、燃料貯留源を大型化せずとも、内燃機関に供給できる燃料ガスを増やすことができる。更に、圧縮機は、カムによってピストンを往復動させるため、カム軸及びコンロッドによってピストンを往復動させるレシプロ圧縮機に比べてコンパクト化できる。よって、圧縮機の小型化に起因して、システムの大型化を防ぎながらも内燃機関に供給できる燃料ガスを増やすことができる。
【0091】
[項目2]
前記レシプロ構造は、
前記ロッドの外周面と前記シリンダの内周面との間に介在する第1ロッドシールと、
前記シリンダの軸線方向における前記ピストンと前記第1ロッドシールとの間に配置された再圧縮室と、を更に含み、
前記再圧縮室は、前記ロッドの前記外周面と前記シリンダの前記内周面とで画定され、前記ピストンの後退によって容積が減少し、
前記シリンダは、前記再圧縮室に流体的に連通した流出口を有する、項目1に記載の内燃機関システム。
【0092】
この構成によれば、圧縮室の燃料ガスがピストンを越えてロッドのある空間にリークした場合に、そのリークした燃料ガスはピストンの後退によって再圧縮室で再圧縮される。この再圧縮されたリークガスがシリンダの流出口から外部に排出される。よって、リークした燃料ガスがシリンダ内に溜まることを防ぐことができる。
【0093】
[項目3]
前記レシプロ構造は、前記再圧縮室から前記流出口を介して前記再圧縮室の外部に向かう流れを許容し且つ前記再圧縮室の外部から前記流出口を介して前記再圧縮室に向かう流れを阻害する逆止弁を更に含み、
前記流出口は、前記逆止弁を介して前記内燃機関に流体的に接続された流路に流体的に接続されている、項目2に記載の内燃機関システム。
【0094】
この構成によれば、再圧縮室で再圧縮されたリーク燃料ガスを内燃機関に供給するために利用できる。
【0095】
[項目4]
前記シリンダの前記内周面は、前記ピストンが収容される空間を画定する第1内周面と、前記ロッドが収容される空間を画定する第2内周面と、を有し、
前記第2内周面の内径は、前記第1内周面の内径よりも小さく、
前記シリンダは、径方向に延びて前記第1内周面を前記第2内周面に接続し且つ前記軸線方向において前記ピストンに対向する対向面を更に有し、
前記再圧縮室は、前記ピストンと前記シリンダの前記対向面との間に画定されている、項目2又は3に記載の内燃機関システム。
【0096】
この構成によれば、シリンダの吸込口から圧縮室に燃料ガスが入り込んでピストンが後退するときに、シリンダの軸線方向におけるピストンとシリンダの対向面との間の距離が縮まる。よって、ピストンを越えて再圧縮室に入ったリーク燃料ガスをピストンの後退によって好適に圧縮できる。
【0097】
[項目5]
前記圧縮機は、前記カムが収容されるカム室を画定するカムケースを更に備え、
前記レシプロ構造は、
前記シリンダの前記軸線方向における前記第1ロッドシールと前記カム室との間において、前記ロッドの前記外周面と前記シリンダの前記内周面との間に介在する第2ロッドシールと、
前記シリンダの前記軸線方向における前記第1ロッドシールと前記第2ロッドシールとの間に配置された再リーク室と、を更に含み、
前記再リーク室は、前記ロッドの前記外周面と前記シリンダの前記内周面とで画定され、前記ロッドの後退によって容積が減少し、
前記シリンダは、前記再リーク室に流体的に連通した排出口を有する、項目2乃至4のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【0098】
この構成によれば、圧縮室からピストンを越えて再圧縮室にリークした燃料ガスが第1ロッドシールを越えて更にリークした場合に、そのリークした燃料ガスはロッドの後退によって再リーク室で加圧されて排出口から排出させることができる。よって、リークした燃料がカム室に向かうことを更に好適に防止できる。
【0099】
[項目6]
前記再圧縮室に連通した前記流出口は、前記内燃機関の燃料噴射装置に燃料ガスを供給する流路に流体的に接続されており、
前記再リーク室の前記排出口は、前記内燃機関に流体的に接続された吸気通路に流体的に接続されている、項目5に記載の内燃機関システム。
【0100】
この構成によれば、リークした燃料ガスを内燃機関の燃焼に利用しやすい。
【0101】
[項目7]
前記圧縮機は、前記カムが収容されるカム室を更に有し、前記ピストンが上死点から下死点に移動する行程において、前記カム室の内圧は、の前記圧縮室の内圧よりも低く設定されている、項目1乃至6のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【0102】
この構成によれば、ロッドには、圧力差によってカムに向かう力が生じることになり、カムとロッドとの接触状態が維持されやすい。
【0103】
[項目8]
前記圧縮機は、前記カムを回転させるカム軸を更に備え、
前記レシプロ構造は、前記カムの外周面を覆って前記カムに対して相対回転可能なリングを更に含み、
前記カムの前記外周面は、真円形状を有し、
前記カム軸は、前記カムに偏心して接続され、
前記カムは、前記リングを介して前記ロッドを押圧する、項目1乃至7のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【0104】
この構成によれば、カムに対してリングが相対回転することで、ロッドからカムが受ける摺動抵抗が低減される。これによって、圧縮機の駆動に要するエネルギーを低減できる。また、カムからロッドに与えられる、シリンダの軸線方向に直交する径方向の力を低減できる。これによって、ピストンからシリンダに伝わる径方向の力が減り、ピストンとシリンダとの間の摺動抵抗を低減できる。
【0105】
[項目9]
前記レシプロ構造は、
前記チャージ流路から前記吸込口を介して前記圧縮室に向かう流れを許容し且つ前記圧縮室から前記吸込口を介して前記チャージ流路に向かう流れを阻害する逆止弁と、
前記圧縮室から前記吐出口を介して前記チャージ流路に向かう流れを許容し且つ前記チャージ流路から前記吐出口を介して前記圧縮室に向かう流れを阻害する逆止弁と、を更に含む、項目1乃至8のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【0106】
この構成によれば、圧縮室への燃料ガスの吸込と圧縮室からの燃料ガスの吐出とを特別な制御なしに円滑に行うことができる。
【0107】
[項目10]
前記少なくとも1つのレシプロ構造は、複数のレシプロ構造を含み、
前記複数のレシプロ構造の前記カムは、互いに等間隔にずれた位相を有する、項目1乃至9のいずれか1項に記載の内燃機関システム。
【0108】
この構成によれば、1つのレシプロ構造において圧縮室の燃料ガスを圧縮する力を発揮するようにカムを回転させる必要があるときに、別のレシプロ構造の圧縮室に流入した燃料ガスの圧力がピストンを後退させて対応するカムを回転させる。即ち、1つのレシプロ構造の動作は、別のレシプロ構造の動作によってアシストされる。よって、カム軸を駆動するために必要な駆動力の最大値が大きくなることを防止できる。
【0109】
[項目11]
前記圧縮機の前記吐出口から吐出される燃料ガスを冷却するクーラを更に備える、項目1乃至10のいずれか1項に記載の燃料機関システム。
【0110】
この構成によれば、冷却することで燃料ガスの容積を減らすことができ、内燃機関に供給される燃料ガスの充填量、即ち、密度を高めることができる。
【0111】
[項目12]
吸込口及び吐出口を有するシリンダと、
前記シリンダに収容され且つ前記吸込口及び前記吐出口に面した圧縮室を画定するピストンと、
前記ピストンから突出したロッドと、
前記ロッドを往復動するカムと、
前記カムを回転させるカム軸と、
前記カムの外周面を覆って前記カムに対して相対回転可能なリングと、を備え、
前記カムの前記外周面は、真円形状を有し、
前記カム軸は、前記カムに偏心して接続され、
前記カムは、前記リングを介して前記ロッドを押圧する、圧縮機。
【0112】
この構成によれば、圧縮機は、カムによってピストンを往復動させるため、カム軸及びコンロッドによってピストンを往復動させるレシプロ圧縮機に比べてコンパクト化できる。
【0113】
[項目13]
吸込口及び吐出口を有するシリンダと、
前記シリンダに収容され且つ前記吸込口及び前記吐出口に面した圧縮室を画定するピストンと、
前記ピストンから突出したロッドと、
前記ロッドの外周面と前記シリンダの内周面との間に介在する第1ロッドシールと、
前記シリンダの軸線方向における前記ピストンと前記第1ロッドシールとの間に配置された再圧縮室と、を備え、
前記再圧縮室は、前記ロッドの前記外周面と前記シリンダの前記内周面とで画定され、前記ピストンの後退によって容積が減少し、
前記シリンダは、前記再圧縮室に流体的に連通した流出口を有する、圧縮機。
【0114】
この構成によれば、圧縮室の燃料ガスがピストンを越えてロッドのある空間にリークした場合に、そのリークした燃料ガスはピストンの後退によって再圧縮室で再圧縮される。この再圧縮されたリークガスがシリンダの流出口から外部に排出される。よって、リークした燃料ガスがシリンダ内に溜まることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0115】
1 内燃機関システム
2 燃料貯留源
11~14 燃料タンク
28 クーラ
45 燃料噴射装置
47 吸気通路
60 圧縮機
66 カムケース
66b カム室
70 カム軸
72 レシプロ構造
80 シリンダ
80a 吸込口
80b 吐出口
80c 第1内周面
80d 第2内周面
80e 第3内周面
80f 第1対向面
80h 流出口
80i 排出口
81 ピストン
82 ロッド
82a 第1ロッド部
82c 第1外周面
82b 第2ロッド部
82d 第2外周面
84 カム
89 第1ロッドシール
91 圧縮室
92 再圧縮室
93 再リーク室
95 外輪(リング)
97~99 逆止弁
E 内燃機関
R 径方向
X 軸線方向