(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025073962
(43)【公開日】2025-05-13
(54)【発明の名称】積層セラミックキャパシタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250502BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 311Z
H01G4/30 311F
H01G4/30 517
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031317
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】10-2023-0145383
(32)【優先日】2023-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】李 丞▲ヨン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 勇和
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲ミン▼洙
(72)【発明者】
【氏名】朴 相珍
(72)【発明者】
【氏名】全 忠燮
(72)【発明者】
【氏名】申 眞福
(72)【発明者】
【氏名】沈 大振
(72)【発明者】
【氏名】蔡 現植
(72)【発明者】
【氏名】金 孝珍
(72)【発明者】
【氏名】安 重▲ヒョン▼
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC10
5E001AD04
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AJ02
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FG03
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】積層セラミックキャパシタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】誘電体層と内部電極層とを含むキャパシタボディと、前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極とを含み、前記キャパシタボディは、前記誘電体層と前記内部電極層とが互いに交互に配置されたアクティブ部と、前記アクティブ部の互いに対向する両側端部に配置されたサイドマージン部と、前記アクティブ部と前記サイドマージン部との間に配置された接合部とを含み、前記アクティブ部および前記サイドマージン部の少なくとも1つは、バリウム(Ba)およびTi(チタン)を含むチタン酸バリウム系の主成分、そしてガリウム(Ga)を含む積層セラミックキャパシタおよびその製造方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と内部電極層とを含むキャパシタボディと、
前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極とを含み、
前記キャパシタボディは、
前記誘電体層と前記内部電極層とが互いに交互に配置されたアクティブ部と、
前記アクティブ部の互いに対向する両側端部に配置されたサイドマージン部と、
前記アクティブ部と前記サイドマージン部との間に配置された接合部とを含み、
前記アクティブ部および前記サイドマージン部の少なくとも1つは、バリウム(Ba)およびTi(チタン)を含むチタン酸バリウム系の主成分、そしてガリウム(Ga)を含む積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記チタン酸バリウム系の主成分および前記ガリウム(Ga)は、前記サイドマージン部に含まれる、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記サイドマージン部を幅方向に2等分して前記接合部とより近く隣接する領域を第1サイドマージン部とし、残りの領域を第2サイドマージン部とする時、
前記ガリウム(Ga)は、前記第1サイドマージン部に含まれる、請求項2に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記ガリウム(Ga)は、前記第1サイドマージン部内における前記バリウム(Ba)100重量部に対して0重量部超過~1.5重量部以下で含まれる、請求項3に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記ガリウム(Ga)は、前記第1サイドマージン部および前記第2サイドマージン部に含まれ、
前記ガリウム(Ga)は、前記第2サイドマージン部より、前記第1サイドマージン部により高い含有量で含まれる、請求項3に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
前記チタン酸バリウム系の主成分および前記ガリウム(Ga)は、前記アクティブ部に含まれる、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
前記アクティブ部は、前記接合部との境界面から前記サイドマージン部の幅方向の長さの2倍~3倍に相当する長さを有する地点までと定義される境界近傍領域を含み、
前記ガリウム(Ga)は、前記アクティブ部の境界近傍領域に含まれる、請求項6に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記アクティブ部の境界近傍領域を幅方向に2等分して前記接合部とより近く隣接する領域を第1アクティブ部とし、残りの領域を第2アクティブ部とする時、
前記ガリウム(Ga)は、前記第1アクティブ部および前記第2アクティブ部に含まれ、
前記ガリウム(Ga)は、前記第2アクティブ部より、前記第1アクティブ部により高い含有量で含まれる、請求項7に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
前記チタン酸バリウム系の主成分および前記ガリウム(Ga)は、前記サイドマージン部および前記アクティブ部に含まれる、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
前記ガリウム(Ga)は、前記アクティブ部より、前記サイドマージン部により高い含有量で含まれる、請求項9に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
前記接合部は、バリウム(Ba)およびTi(チタン)を含むチタン酸バリウム系化合物、ならびにガリウム(Ga)を含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
前記ガリウム(Ga)は、前記接合部内における前記バリウム(Ba)100重量部に対して0.3重量部~1.5重量部含まれる、請求項11に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項13】
前記アクティブ部と前記接合部との接合面に対して下記数式1によって得られる内部電極層の終端部の気孔発生率は0%超過~40%以下である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
[数式1]
内部電極層の終端部の気孔発生率(%)=(終端部に気孔を有する内部電極層の個数/全体内部電極層の個数)×100
【請求項14】
マージンシートの少なくとも一面にチタン酸バリウム系化合物およびガリウム(Ga)を含むコーティング組成物を塗布して、粘着面を有するマージンシートを準備する段階と、
誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する段階と、
前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階と、
前記誘電体グリーンシート積層体を前記導電性ペースト層が形成されない領域を残さずに前記導電性ペースト層が露出した状態で切断する段階と、
前記切断された誘電体グリーンシート積層体の切断面に、前記粘着面を有するマージンシートを接合させる段階と、
前記マージンシートが接合された誘電体グリーンシート積層体を焼成してキャパシタボディを製造する段階と、
前記キャパシタボディの一面に外部電極を形成する段階とを含み、
前記キャパシタボディは、誘電体層と内部電極層とが互いに交互に配置されたアクティブ部と、前記アクティブ部の互いに対向する両側端部に配置されたサイドマージン部と、前記アクティブ部と前記サイドマージン部との間に配置された接合部とを含み、
前記アクティブ部および前記サイドマージン部の少なくとも1つは、バリウム(Ba)およびTi(チタン)を含むチタン酸バリウム系の主成分、ならびにガリウム(Ga)を含む積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記コーティング組成物は、前記ガリウム(Ga)を前記チタン酸バリウム系化合物100モル部に対して0モル部超過~6モル部以下で含む、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項16】
前記ガリウム(Ga)は、前記コーティング組成物内においてGa含有酸化物、Ga含有窒化物、Ga含有塩化合物、またはこれらの組み合わせの形態で含まれる、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項17】
前記コーティング組成物は、バインダーをさらに含む、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層セラミックキャパシタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料を用いる電子部品として、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタまたはサーミスタなどがある。このようなセラミック電子部品のうち、積層セラミックキャパシタ(multilayer ceramic capacitor、MLCC)は、小型でかつ高容量が保障され、実装が容易であるというメリットによって、多様な電子装置に使用可能である。
【0003】
例えば、積層セラミックキャパシタ(MLCC)は、液晶表示装置(liquid crystal display、LCD)、プラズマディスプレイパネル(plasma display panel、PDP)、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode、OLED)などの映像機器、コンピュータ、個人携帯用端末およびスマートフォンのような様々な電子製品の基板に装着されて、電気を充電したり放電させる役割を果たすチップ状のコンデンサに使用できる。
【0004】
一方、積層セラミックキャパシタ(MLCC)は、BaTiO3で構成された誘電体層とNi内部電極層とが交互に積層された形態の内部構造をなしており、多様な外部の刺激からチップを保護するために、一定の厚さの緻密度に優れたBaTiO3層で外部構造が構成されている。このような外部構造は内部電極層のない部分に発生する段差によって、外部応力によるクラックの発生および電気的特性低下の問題を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、内部電極層の終端緻密度が向上して耐湿信頼性および耐電圧特性に優れた積層セラミックキャパシタを提供する。
【0006】
他の実施形態は、前記積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、誘電体層と内部電極層とを含むキャパシタボディと、前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極とを含み、前記キャパシタボディは、前記誘電体層と前記内部電極層とが互いに交互に配置されたアクティブ部と、前記アクティブ部の互いに対向する両側端部に配置されたサイドマージン部と、前記アクティブ部と前記サイドマージン部との間に配置された接合部とを含み、前記アクティブ部および前記サイドマージン部の少なくとも1つは、バリウム(Ba)およびTi(チタン)を含むチタン酸バリウム系の主成分、ならびにガリウム(Ga)を含む積層セラミックキャパシタを提供する。
【0008】
前記チタン酸バリウム系の主成分および前記ガリウム(Ga)は、前記サイドマージン部に含まれる。
【0009】
前記サイドマージン部を幅方向に2等分して前記接合部とより近く隣接する領域を第1サイドマージン部とし、残りの領域を第2サイドマージン部とする時、前記ガリウム(Ga)は、前記第1サイドマージン部に含まれる。
【0010】
前記ガリウム(Ga)は、前記第1サイドマージン部内における前記バリウム(Ba)100重量部に対して0重量部超過~1.5重量部以下で含まれる。
【0011】
前記ガリウム(Ga)は、前記第1サイドマージン部および前記第2サイドマージン部に含まれ、前記ガリウム(Ga)は、前記第2サイドマージン部より、前記第1サイドマージン部により高い含有量で含まれる。
【0012】
前記チタン酸バリウム系の主成分および前記ガリウム(Ga)は、前記アクティブ部に含まれる。
【0013】
前記アクティブ部は、前記接合部との境界面から前記サイドマージン部の幅方向の長さの2倍~3倍に相当する長さを有する地点までと定義される境界近傍領域を含むことができ、前記ガリウム(Ga)は、前記アクティブ部の境界近傍領域に含まれる。
【0014】
前記アクティブ部の境界近傍領域を幅方向に2等分して前記接合部とより近く隣接する領域を第1アクティブ部とし、残りの領域を第2アクティブ部とする時、前記ガリウム(Ga)は、前記第1アクティブ部および前記第2アクティブ部に含まれ、前記ガリウム(Ga)は、前記第2アクティブ部より、前記第1アクティブ部により高い含有量で含まれる。
【0015】
前記チタン酸バリウム系の主成分および前記ガリウム(Ga)は、前記サイドマージン部および前記アクティブ部に含まれる。
【0016】
前記ガリウム(Ga)は、前記アクティブ部より、前記サイドマージン部により高い含有量で含まれる。
【0017】
前記接合部は、バリウム(Ba)およびTi(チタン)を含むチタン酸バリウム系化合物、ならびにガリウム(Ga)を含むことができる。
【0018】
前記ガリウム(Ga)は、前記接合部内における前記バリウム(Ba)100重量部に対して0.3重量部~1.5重量部含まれる。
【0019】
前記アクティブ部と前記接合部との接合面に対して下記数式1によって得られる内部電極層の終端部の気孔(pore)発生率は0%超過~40%以下であってもよい。
[数式1]
内部電極層の終端部の気孔発生率(%)=(終端部に気孔を有する内部電極層の個数/全体内部電極層の個数)×100
【0020】
他の実施形態は、マージンシートの少なくとも一面にチタン酸バリウム系化合物およびガリウム(Ga)を含むコーティング組成物を塗布して、粘着面を有するマージンシートを準備する段階;誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する段階;前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階;前記誘電体グリーンシート積層体を前記導電性ペースト層が形成されない領域を残さずに前記導電性ペースト層が露出した状態で切断する段階;前記切断された誘電体グリーンシート積層体の切断面に、前記粘着面を有するマージンシートを接合させる段階;前記マージンシートが接合された誘電体グリーンシート積層体を焼成してキャパシタボディを製造する段階;および前記キャパシタボディの一面に外部電極を形成する段階を含み、前記キャパシタボディは、誘電体層と内部電極層とが互いに交互に配置されたアクティブ部と、前記アクティブ部の互いに対向する両側端部に配置されたサイドマージン部と、前記アクティブ部と前記サイドマージン部との間に配置された接合部とを含み、前記アクティブ部および前記サイドマージン部の少なくとも1つは、バリウム(Ba)およびTi(チタン)を含むチタン酸バリウム系の主成分、ならびにガリウム(Ga)を含む積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【0021】
前記コーティング組成物は、前記ガリウム(Ga)を前記チタン酸バリウム系化合物100モル部に対して0モル部超過~6モル部以下で含むことができる。
【0022】
前記ガリウム(Ga)は、前記コーティング組成物内においてGa含有酸化物、Ga含有窒化物、Ga含有塩化合物、またはこれらの組み合わせの形態で含まれる。
【0023】
前記コーティング組成物は、バインダーをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
一実施形態による積層セラミックキャパシタは、内部電極層の終端緻密度が向上して優れた耐湿信頼性および耐電圧特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す斜視図である。
【
図2】
図1のI-I’線に沿った積層セラミックキャパシタの断面図である。
【
図3】
図1のII-II’線に沿った積層セラミックキャパシタの断面図である。
【
図4】一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法のうちサイドマージン部の形成過程を示す概略図である。
【
図5A】実施例1による積層セラミックキャパシタにおける位置別のガリウム(Ga)の含有量を示すグラフである。
【
図5B】実施例2による積層セラミックキャパシタにおける位置別のガリウム(Ga)の含有量を示すグラフである。
【
図6A】実施例1による積層セラミックキャパシタにおける内部電極層の終端部の気孔発生を示すSEMイメージである。
【
図6B】実施例2による積層セラミックキャパシタにおける内部電極層の終端部の気孔発生を示すSEMイメージである。
【
図6C】比較例1による積層セラミックキャパシタにおける内部電極層の終端部の気孔発生を示すSEMイメージである。
【
図7A】実施例1による積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性を示すグラフである。
【
図7B】実施例2による積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性を示すグラフである。
【
図7C】比較例1による積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例を詳細に説明する。図面において本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付した。また、添付図面において一部の構成要素は誇張されたり省略されたりまたは概略的に示され、各構成要素の大きさは実際の大きさを完全に反映するものではない。
【0027】
添付した図面は本明細書に開示された実施例を容易に理解できるようにするためのものに過ぎず、添付した図面によって本明細書に開示された技術的思想が制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物あるいは代替物を含むことが理解されなければならない。
【0028】
第1、第2などのような序数を含む用語は多様な構成要素を説明するのに使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0029】
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとする時、これは、他の部分の「直上」にある場合のみならず、その中間に他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「直上」にあるとする時には、中間に他の部分がないことを意味する。さらに、基準となる部分の「上」にあるというのは、基準となる部分の上または下に位置することであり、必ずしも重力の反対方向の「上」に位置することを意味するのではない。
【0030】
明細書全体において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。したがって、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0031】
また、明細書全体において、「平面上」とする時、これは対象部分を上から見た時を意味し、「断面上」とする時、これは対象部分を垂直に切断した断面を横から見た時を意味する。
【0032】
さらに、明細書全体において、「連結される」とする時、これは2以上の構成要素が直接的に連結されることだけを意味するのではなく、2以上の構成要素が他の構成要素を介して間接的に連結されること、物理的に連結されることだけでなく電気的に連結されること、または位置や機能により異なる名称で称されたものの一切を意味することができる。
【0033】
以下、一実施形態による積層セラミックキャパシタについて、
図1~3を参照して説明する。
【0034】
図1は、一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す斜視図であり、
図2は、
図1のI-I’線に沿った積層セラミックキャパシタの断面図であり、
図3は、
図1のII-II’線に沿った積層セラミックキャパシタの断面図である。
【0035】
図1~3に表示されたL軸、W軸およびT軸はそれぞれ、キャパシタボディ110の長手方向、幅方向および厚さ方向を示す。ここで、厚さ方向(T軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に垂直な方向であってもよく、一例として、誘電体層111が積層される積層方向と同じ概念で使用できる。長手方向(L軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に並んで延びる方向で厚さ方向(T軸方向)と略垂直な方向になり、一例として、両側に第1外部電極131および第2外部電極132が位置する方向であってもよい。幅方向(W軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に並んで延びる方向で厚さ方向(T軸方向)および長手方向(L軸方向)と略垂直な方向であってもよく、シート形状の構成要素の長手方向(L軸方向)の長さは、幅方向(W軸方向)の長さよりも長い。
【0036】
図1~
図3を参照すれば、一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、キャパシタボディ110と、キャパシタボディ110の外側に配置される外部電極131、132とを含む。外部電極131、132は、キャパシタボディ110の長手方向(L軸方向)に対向する両端に配置される第1外部電極131および第2外部電極132を含むことができる。
【0037】
キャパシタボディ110は、一例として、略六面体形状であってもよい。
一実施形態に関する説明の便宜のために、キャパシタボディ110において厚さ方向(T軸方向)に互いに対向する両面を第1面および第2面、第1面および第2面に連結され、長手方向(L軸方向)に互いに対向する両面を第3面および第4面、第1面および第2面に連結され、第3面および第4面に連結され、幅方向(W軸方向)に互いに対向する両面を第5面および第6面と定義する。
【0038】
一例として、下面の第1面が実装方向に向かう面になる。また、第1面~第6面は平らであってもよいが、一実施形態がこれに限定されるものではない。例えば、第1面~第6面は、中央部が凸の曲面であってもよく、各面の境界である角部はラウンド(round)状であってもよい。
【0039】
キャパシタボディ110の形状、寸法および誘電体層111の積層数は、本実施形態の図示に限定されるものではない。
【0040】
キャパシタボディ110は、複数の誘電体層111と、内部電極層121、122とを含む。具体的には、キャパシタボディ110は、複数の誘電体層111と、誘電体層111を挟んで厚さ方向(T軸方向)に交互に配置される第1内部電極121および第2内部電極122とを含む。
【0041】
この時、キャパシタボディ110の互いに隣接するそれぞれの誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)を用いずには確認しにくいほど一体化されている。
【0042】
キャパシタボディ110は、誘電体層と内部電極層とが互いに交互に配置されたアクティブ部10と、アクティブ部10の互いに対向する両側端部に配置されたサイドマージン部20、20’と、アクティブ部10とサイドマージン部20、20’との間に配置された接合部30、30’とを含むことができる。
【0043】
アクティブ部10は、積層セラミックキャパシタ100の容量の形成に寄与する部分である。具体的には、アクティブ部10は、厚さ方向(T軸方向)に沿って積層される第1内部電極121または第2内部電極122が重畳(overlap)した領域であってもよい。
【0044】
サイドマージン部20、20’は、アクティブ部10の互いに対向する両側端部に配置され、側面カバー部と見なすことができ、幅方向(W軸方向)にアクティブ部10の互いに対向する両側端部、つまり、第5面および第6面側にそれぞれ位置することができる。
【0045】
キャパシタボディ110は、カバー部をさらに含むことができる。
カバー部は、厚さ方向のマージン部であって、厚さ方向(T軸方向)にアクティブ部10の第1面および第2面側にそれぞれ位置することができる。このようなカバー部は、単一誘電体層111または2つ以上の誘電体層111がアクティブ部10の上面および下面にそれぞれ積層されたものであってもよい。
【0046】
サイドマージン部20、20’およびカバー部は、物理的または化学的ストレスによる第1内部電極121および第2内部電極122の損傷を防止する役割を果たす。
【0047】
接合部30、30’は、アクティブ部10とサイドマージン部20、20’との間に配置されて、アクティブ部10にサイドマージン部20、20’を接合させる役割を果たす。
【0048】
前記アクティブ部10および前記少なくとも1つのサイドマージン部20、20’の少なくとも1つは、バリウム(Ba)およびTi(チタン)を含むチタン酸バリウム系の主成分、そしてガリウム(Ga)を含むことができる。
【0049】
前記チタン酸バリウム系の主成分は、誘電体母材であって、高い誘電率を有し、積層セラミックキャパシタ100の誘電率の形成に寄与する。
【0050】
チタン酸バリウム系の主成分は、例えば、BaTiO3、Ba(Ti、Zr)O3、Ba(Ti、Sn)O3、(Ba、Ca)TiO3、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O3、(Ba、Ca)(Ti、Sn)O3、(Ba、Sr)TiO3、(Ba、Sr)(Ti、Zr)O3、(Ba、Sr)(Ti、Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0051】
アクティブ部10およびサイドマージン部20、20’の少なくとも1つに含まれるガリウム(Ga)は、接合部30、30’の形成時に添加されるガリウム(Ga)成分に由来し得る。つまり、キャパシタボディ110の製造過程で、ガリウム(Ga)は、サイドマージン部を形成するマージンシートと、アクティブ部を形成する誘電体グリーンシート積層体とを接合させるためのコーティング組成物に含まれる成分で、前記ガリウム(Ga)は、接合された誘電体グリーンシート積層体の焼成後、アクティブ部10およびサイドマージン部20、20’の少なくとも1箇所に拡散して形成される。
【0052】
アクティブ部10および少なくとも1つのサイドマージン部20、20’の1つ以上が接合部30、30’の形成時に使用される成分に拡散して由来したガリウム(Ga)成分を含む場合、内部電極層の終端緻密度が向上して積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性および耐電圧特性が改善できる。
【0053】
一般的な積層セラミックキャパシタのサイドマージン領域には、アクティブ領域と異なって内部電極がないため、印刷されない空間だけの段差が発生することがある。このような段差発生現象は、外部応力によるクラックの発生や電気的特性の低下など多様な問題を引き起こすことがある。一実施形態によれば、積層セラミックキャパシタの製造過程で誘電体グリーンシート積層体を切断する時、マージン領域を残さずに、つまり、内部電極層になる導電性ペースト層が形成されない領域を残さずに導電性ペースト層が露出した状態で切断した後、切断面にマージンシートを付着してサイドマージン部を形成するMF(margin formation)工法を適用して積層セラミックキャパシタを製造することができる。このようなMF工法過程で、切断面にマージンシートを付着する時、一種の接着剤の役割を果たすコーティング組成物にガリウム(Ga)を含む場合、焼成後拡散することによって、アクティブ部10およびサイドマージン部20、20’の少なくとも1つがガリウム(Ga)を含むことによって、接合面の接着力に優れてデラミネーション(delamination)不良の発生を抑制し、焼成後、接合面の緻密度が十分に確保されて耐湿信頼性が向上できる。
【0054】
具体的には、チタン酸バリウム系の主成分およびガリウム(Ga)は、少なくとも1つのサイドマージン部20、20’に含まれ、またはアクティブ部10に含まれる。また、チタン酸バリウム系の主成分およびガリウム(Ga)は、少なくとも1つのサイドマージン部20、20’およびアクティブ部10のすべてに含まれる。これはSEM-EDS(走査電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)分析によって確認される。
【0055】
SEM-EDSの分析は次のような方法で行われる。まず、積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディ110のW軸およびT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2地点まで研磨(polishing)し、固定後、真空雰囲気チャンバー内維持して、誘電体層111と内部電極層121、122との交差するアクティブ部、そしてサイドマージン部を観察できるように断面サンプルを得ることができる。次に、WT面を有する断面サンプルにおいて幅(W軸)方向に半分を分けて一方のサイドマージン部とアクティブ部を走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で測定できる。SEMは、例えば、thermofisher scientific社のVerios G4製品を用い、測定条件は10kV、0.2nA、分析倍率10k倍であってもよく、少なくとも10層以上の誘電体層111および内部電極層121、122が出られるように測定できる。次に、測定された断面サンプルのSEMイメージでEDS(エネルギー分散型分光法)分析を行って、アクティブ部およびサイドマージン部の少なくとも1箇所にガリウム(Ga)が存在するかを確認できる。
【0056】
一例として、チタン酸バリウム系の主成分およびガリウム(Ga)は、サイドマージン部20、20’に含まれる。サイドマージン部20、20’は、両側の少なくとも1箇所に前記チタン酸バリウム系の主成分およびガリウム(Ga)を含むことができる。
また、前記サイドマージン部20、20’を幅方向に2等分して接合部30、30’とより近く隣接する領域を第1サイドマージン部21、21’とし、残りの領域を第2サイドマージン部22、22’に分けることができる。この場合、ガリウム(Ga)は、少なくとも1つの第1サイドマージン部21、21’に含まれる。
【0057】
具体的には、ガリウム(Ga)は、少なくとも1つの第1サイドマージン部21、21’内におけるバリウム(Ba)100重量部に対して0重量部超過~1.5重量部以下で含まれ、例えば、0.1重量部~1.3重量部、例えば、0.3重量部~1.2重量部含まれる。第1サイドマージン部21、21’内でガリウム(Ga)が前記含有量の範囲内に含まれる場合、内部電極層の終端緻密度が向上して積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性および耐電圧特性が改善できる。
【0058】
前記サイドマージン部20、20’内のガリウム(Ga)の含有量はSEM-EDS分析によって確認される。具体的には、前述のような方法で得られた断面サンプルのSEMイメージにおいて、サイドマージン部を幅方向に2等分して接合部とより近く隣接する領域を第1サイドマージン部とし、残りの領域を第2サイドマージン部とする時、第1サイドマージン部および第2サイドマージン部それぞれにおいて少なくとも1個の地点、例えば、1個~10個の地点、1個~5個の地点でガリウム(Ga)の含有量を測定してその平均値が求められる。
【0059】
また、ガリウム(Ga)は、少なくとも1つの第1サイドマージン部21、21’および少なくとも1つの第2サイドマージン部22、22’に含まれる。この時、ガリウム(Ga)は、第2サイドマージン部22、22’でより、第1サイドマージン部21、21’でより高い含有量で含まれる。サイドマージン部のうちアクティブ部10とより近く隣接した第1サイドマージン部21、21’内でガリウム(Ga)がより高い含有量で含まれる場合、内部電極層の終端緻密度が向上して積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性および耐電圧特性が改善できる。
【0060】
他の例として、チタン酸バリウム系の主成分およびガリウム(Ga)は、アクティブ部10に含まれる。
【0061】
アクティブ部10は、接合部30、30’との境界面からサイドマージン部20、20’の幅方向の長さの2倍~3倍に相当する長さを有する地点までと定義される境界近傍領域15、15’を含むことができる。具体的には、ガリウム(Ga)は、アクティブ部10の少なくとも1つの境界近傍領域15、15’に含まれる。
【0062】
アクティブ部10の境界近傍領域15、15’を幅方向に2等分して前記接合部30、30’とより近く隣接する領域を第1アクティブ部16、16’とし、残りの領域を第2アクティブ部17、17’に分けることができる。この場合、ガリウム(Ga)は、第1アクティブ部16、16’および第2アクティブ部17、17’に含まれる。
【0063】
具体的には、ガリウム(Ga)は、第2アクティブ部17、17’でより、第1アクティブ部16、16’でより高い含有量で含まれる。アクティブ部10の境界近傍領域15、15’のうちサイドマージン部20、20’とより近く隣接した第1アクティブ部16、16’内でガリウム(Ga)がより高い含有量で含まれる場合、内部電極層の終端緻密度が向上して積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性および耐電圧特性が改善できる。
【0064】
前記アクティブ部10内のガリウム(Ga)の含有量はSEM-EDS分析によって確認される。具体的には、前述のような方法で得られた断面サンプルのSEMイメージにおいて、アクティブ部における、接合部との境界面からサイドマージン部の幅方向の長さの2倍~3倍に相当する長さを有する地点までと境界近傍領域を定義し、前記アクティブ部の境界近傍領域を幅方向に2等分して接合部とより近く隣接する領域を第1アクティブ部とし、残りの領域を第2アクティブ部とする時、第1アクティブ部および第2アクティブ部それぞれにおいて少なくとも1個の地点、例えば、1個~10個の地点、1個~5個の地点でガリウム(Ga)の含有量を測定してその平均値が求められる。
【0065】
さらに他の例として、チタン酸バリウム系の主成分およびガリウム(Ga)は、少なくとも1つのサイドマージン部20、20’およびアクティブ部10にすべて含まれる。
【0066】
具体的には、ガリウム(Ga)は、アクティブ部10でより、サイドマージン部20、20’でより高い含有量で含まれる。ガリウム(Ga)がアクティブ部10でよりサイドマージン部20、20’でより高い含有量で含まれる場合、内部電極層の終端緻密度が向上して優れた耐湿信頼性および耐電圧特性を有することができる。
【0067】
例えば、ガリウム(Ga)は、少なくとも1つの第1サイドマージン部21、21’に、少なくとも1つの第2サイドマージン部22、22’より高い含有量で含まれ、また、第1アクティブ部16、16’でのガリウム(Ga)は、第2サイドマージン部22、22’より低い含有量で含まれ、第2アクティブ部17、17’にはガリウム(Ga)が最も少ない含有量で含まれる。
【0068】
一実施形態によれば、少なくとも1つの接合部30、30’は、バリウム(Ba)およびTi(チタン)を含むチタン酸バリウム系化合物、そしてガリウム(Ga)を含むことができる。
【0069】
前記チタン酸バリウム系化合物は、例えば、BaTiO3、Ba(Ti、Zr)O3、Ba(Ti、Sn)O3、(Ba、Ca)TiO3、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O3、(Ba、Ca)(Ti、Sn)O3、(Ba、Sr)TiO3、(Ba、Sr)(Ti、Zr)O3、(Ba、Sr)(Ti、Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0070】
接合部30、30’に含まれるガリウム(Ga)は、接合部30、30’の形成時に添加されるガリウム(Ga)成分がそのまま残って形成される。
【0071】
接合部30、30’内でのガリウム(Ga)は、バリウム(Ba)100重量部に対して0.3重量部~1.5重量部含まれ、例えば、0.5重量部~1.2重量部含まれる。接合部30、30’内でガリウム(Ga)が前記含有量の範囲で含まれる場合、内部電極層の終端緻密度が向上して優れた耐湿信頼性および耐電圧特性を有することができる。
【0072】
前記接合部30、30’内のガリウム(Ga)の含有量はSEM-EDS分析によって確認される。具体的には、前述のような方法で得られた断面サンプルのSEMイメージにおいて、接合部内において少なくとも1個の地点、例えば、1個~10個の地点、1個~5個の地点でのガリウム(Ga)の含有量を測定してその平均値が求められる。
【0073】
接合部30、30’は、サイドマージン部を形成するマージンシートと、アクティブ部を形成する誘電体グリーンシート積層体とを接合させるためのコーティング組成物から形成される。コーティング組成物に関する詳細な説明は、積層セラミックキャパシタの製造方法に関する説明で後述する。
【0074】
一実施形態によれば、アクティブ部10と接合部30、30’との接合面に対して内部電極層121、122の終端部の気孔発生率は0%超過~40%以下であってもよく、例えば、1%~35%であってもよい。内部電極層の終端部の気孔発生率が前記範囲内の場合、サイドマージン部が接合された接合部位での内部電極層の終端緻密度に優れていることを意味し、これによって耐湿信頼性および耐電圧特性が向上できる。
【0075】
内部電極層の終端部の気孔発生率は次のような方法で測定される。積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディ110のW軸およびT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2地点まで研磨(polishing)し、固定後、真空雰囲気チャンバー内維持して、誘電体層111と内部電極層121、122との交差するアクティブ部と、サイドマージン部を観察できるように断面サンプルを得ることができる。次に、WT面を有する断面サンプルにおいて幅(W軸)方向に半分を分けて一方のサイドマージン部とアクティブ部を、特に内部電極層の終端がよく見えるように走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で測定できる。SEMは、例えば、thermofisher scientific社のVerios G4製品を用い、測定条件は2kV、0.2nA、分析倍率10k倍であり、少なくとも20層以上、例えば、20層~100層、20層~50層の誘電体層111および内部電極層121、122が測定できる。
【0076】
これによって測定された内部電極層の終端部の気孔発生率は下記数式1によって算出できる。
[数式1]
内部電極層の終端部の気孔発生率(%)=(終端部に気孔を有する内部電極層の個数/全体内部電極層の個数)×100
【0077】
誘電体層111の平均厚さ(T軸方向の平均長さ)は2.0μm~8.0μmであってもよく、例えば、2.4μm~7.8μmであってもよい。誘電体層111の平均厚さが前記範囲内の場合、積層セラミックキャパシタの信頼性に優れている。
【0078】
誘電体層111の平均厚さは、積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、研磨(polishing)した後、イオンミリングして走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)分析によって測定される。走査電子顕微鏡は、例えば、thermofisher scientific社のVerios G4製品を用い、測定条件は10kV、0.2nAであり、分析倍率は100倍であってもよく、少なくとも1層以上、3層以上、5層以上、または10層以上の誘電体層111が測定できる。走査電子顕微鏡(SEM)イメージにおいて、誘電体層111の長手方向(L軸方向)または幅方向(W軸方向)の中央地点を基準点とし、基準点から所定の間隔で離れた10個の地点における、誘電体層111の厚さの算術平均値であってもよい。10個の地点の間隔は、走査電子顕微鏡(SEM)イメージのスケール(scale)により調節可能であり、例えば、1μm~100μm、1μm~50μm、または1μm~10μmの間隔であってもよい。この時、10個の地点はすべて誘電体層111内に位置しなければならず、10個の地点がすべて誘電体層111内に位置しない場合、基準点の位置を変更するか、10個の地点間の間隔を調節することができる。
【0079】
第1内部電極121と第2内部電極122は、互いに異なる極性を有する電極であって、誘電体層111を挟んでT軸方向に沿って互いに対向するように交互に配置され、一端がキャパシタボディ110の第3および第4面を介してそれぞれ露出できる。
【0080】
第1内部電極121と第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁可能である。
【0081】
キャパシタボディ110の第3および第4面を介して交互に露出する第1内部電極121および第2内部電極122の端部は、第1外部電極131および第2外部電極132にそれぞれ接続されて電気的に連結可能である。
【0082】
第1内部電極121および第2内部電極122は、導電性金属を含み、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属、またはこれらの合金、例えば、Ag-Pd合金を含むことができる。
【0083】
また、第1内部電極121および第2内部電極122は、誘電体層111に含まれるセラミック材料と同じ組成系の誘電体粒子を含んでもよい。
【0084】
第1内部電極121および第2内部電極122は、導電性金属を含む導電性ペーストを用いて形成される。導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法を用いることができる。
【0085】
第1内部電極121および第2内部電極122の平均厚さは0.1μm~2μmであってもよい。第1内部電極121および第2内部電極122の平均厚さは走査電子顕微鏡(SEM)分析によって測定される。ここで、走査電子顕微鏡(SEM)分析は、前述した誘電体層111の平均厚さ測定時の方法と同一であるので、その説明を省略する。
【0086】
キャパシタボディ110は、複数の誘電体層111と内部電極層121、122とが積層された積層体を焼成して形成される。一実施形態によるキャパシタボディ110の詳細な製造方法は後で説明する。
【0087】
第1外部電極131および第2外部電極132は、互いに異なる極性の電圧が提供され、第1内部電極121および第2内部電極122の露出する部分にそれぞれ接続されて電気的に連結可能である。
【0088】
このような構成により、第1外部電極131および第2外部電極132に所定の電圧を印加すれば、互いに対向する第1内部電極121および第2内部電極122の間に電荷が蓄積される。この時、積層セラミックキャパシタ100の静電容量は、アクティブ部においてT軸方向に沿って互いに重畳する第1内部電極121および第2内部電極122のオーバーラップされた面積に比例する。
【0089】
第1外部電極131および第2外部電極132は、キャパシタボディ110の第3および第4面にそれぞれ配置されて第1内部電極121および第2内部電極122に接続される第1および第2接続部と、キャパシタボディ110の第3および第4面と、第1および第2面または第5および第6面との出会う角部に配置される第1および第2バンド部とをそれぞれ含むことができる。
【0090】
第1および第2バンド部は、第1および第2接続部からキャパシタボディ110の第1および第2面または第5および第6面の一部までそれぞれ延びることができる。第1および第2バンド部は、第1外部電極131および第2外部電極132の固着強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0091】
第1外部電極131および第2外部電極132はそれぞれ、キャパシタボディ110と接触する焼結金属層と、焼結金属層を覆うように配置される伝導性樹脂層と、伝導性樹脂層を覆うように配置されるメッキ層とを含むことができる。
焼結金属層は、導電性金属およびガラスを含むことができる。
【0092】
導電性金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、これらの合金、またはこれらの組み合わせを含むことができ、例えば、銅(Cu)は、銅(Cu)合金を含むことができる。導電性金属が銅を含む場合、銅以外の金属は、銅100モル部に対して5モル部以下で含まれる。
【0093】
ガラスは、酸化物が混合された組成を含むことができ、例えば、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、遷移金属酸化物、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択された1つ以上であってもよい。遷移金属は、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)およびニッケル(Ni)からなる群より選択され、アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)からなる群より選択され、アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)からなる群より選択された1つ以上であってもよい。
【0094】
選択的に、伝導性樹脂層は、焼結金属層上に形成され、例えば、焼結金属層を完全に覆う形態に形成される。一方、第1外部電極131および第2外部電極132は、焼結金属層を含まなくてもよいし、この場合、伝導性樹脂層がキャパシタボディ110と直接接触できる。
【0095】
伝導性樹脂層は、キャパシタボディ110の第1および第2面または第5および第6面に延び、伝導性樹脂層がキャパシタボディ110の第1および第2面または第5および第6面に延びて配置された領域(つまり、バンド部)の長さは、焼結金属層がキャパシタボディ110の第1面および第2面または第5および第6面に延びて配置された領域(つまり、バンド部)の長さより長い。つまり、伝導性樹脂層は、焼結金属層上に形成され、焼結金属層を完全に覆う形態に形成される。
【0096】
伝導性樹脂層は、樹脂および導電性金属を含む。
伝導性樹脂層に含まれる樹脂は、接合性および衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作れるものであれば特に制限されず、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂を含むことができる。
【0097】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、第1内部電極121および第2内部電極122または焼結金属層と電気的に連結されるようにする役割を果たす。
【0098】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、球状、フレーク状、またはこれらの組み合わせの形態を有することができる。つまり、導電性金属は、フレーク状のみからなるか、球状のみからなってもよく、フレーク状と球状とが混合された形態であってもよい。
【0099】
ここで、球状は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸との長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粉末は平らでかつ細長い形態を有する粉末を意味し、特に制限されるわけではないが、例えば、長軸と短軸との長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。
【0100】
第1外部電極131および第2外部電極132は、伝導性樹脂層の外側に配置されるメッキ層をさらに含むことができる。
【0101】
メッキ層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)または鉛(Pb)の単独またはこれらの合金を含むことができる。例えば、メッキ層は、ニッケル(Ni)メッキ層またはスズ(Sn)メッキ層であってもよく、ニッケル(Ni)メッキ層およびスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよく、スズ(Sn)メッキ層、ニッケル(Ni)メッキ層およびスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよい。また、メッキ層は、複数のニッケル(Ni)メッキ層および/または複数のスズ(Sn)メッキ層を含んでもよい。
【0102】
メッキ層は、積層型キャパシタ100の基板との実装性、構造的信頼性、外部に対する耐久度、耐熱性および等価直列抵抗値(equivalent series resistance、ESR)を改善することができる。
以下、一実施形態による積層セラミックキャパシタ100の製造方法について説明する。
【0103】
一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、マージンシートの少なくとも一面にチタン酸バリウム系化合物およびガリウム(Ga)を含むコーティング組成物を塗布して、粘着面を有するマージンシートを準備する段階;誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する段階;前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階;前記誘電体グリーンシート積層体を前記導電性ペースト層が形成されない領域を残さずに前記導電性ペースト層が露出した状態で切断する段階;前記切断された誘電体グリーンシート積層体の切断面に、前記粘着面を有するマージンシートを接合させる段階;前記マージンシートが接合された誘電体グリーンシート積層体を焼成してキャパシタボディを製造する段階;および前記キャパシタボディの一面に外部電極を形成する段階を含んで製造できる。
【0104】
まず、マージンシートの少なくとも一面にコーティング組成物を塗布して、粘着面を有するマージンシートを準備する。
コーティング組成物は、チタン酸バリウム系化合物およびガリウム(Ga)を含む。
【0105】
チタン酸バリウム系化合物は、バリウム(Ba)およびTi(チタン)を含むことができ、例えば、BaTiO3、Ba(Ti、Zr)O3、Ba(Ti、Sn)O3、(Ba、Ca)TiO3、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O3、(Ba、Ca)(Ti、Sn)O3、(Ba、Sr)TiO3、(Ba、Sr)(Ti、Zr)O3、(Ba、Sr)(Ti、Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0106】
ガリウム(Ga)は、コーティング組成物内においてGa含有酸化物、Ga含有窒化物、Ga含有塩化合物、またはこれらの組み合わせの形態で含まれる。例えば、ガリウム(Ga)は、Ga含有酸化物、例えば、酸化ガリウム(Ga2O3)を使用することができる。また、ガリウム(Ga)は、例えば、50nm以下の微細粒子を使用することができる。
【0107】
ガリウム(Ga)は、チタン酸バリウム系化合物100モル部に対して0モル部超過~6モル部以下で含まれ、例えば、0.5モル部~5モル部、例えば、1モル部~4モル部含まれる。ガリウム(Ga)がコーティング組成物内に前記含有量の範囲で含まれる場合、内部電極層の終端緻密度が向上して耐湿信頼性および耐電圧特性に優れた積層セラミックキャパシタを製造することができる。
【0108】
コーティング組成物は、粘着性を付与するためにバインダーをさらに含むことができる。
バインダーは、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチルセルロース樹脂などであってもよい。
【0109】
バインダーは、コーティング組成物の総量に対して5重量部~60重量部含まれ、例えば、40重量部~60重量部含まれる。バインダーが前記含有量の範囲内に含まれる場合、コーティング組成物の分酸性に優れ、接合面に十分な接着力を付与することによって、デラミネーション(delamination)不良の発生を抑制することができ、焼成後、接合面の緻密度が十分に確保されて耐湿信頼性に優れた積層セラミックキャパシタを得ることができる。
【0110】
マージンシートは、焼成後にサイドマージン部20、20’に形成されるもので、マージンシートは、チタン酸バリウム系の主成分を含むことができる。チタン酸バリウム系の主成分は、アクティブ部10およびサイドマージン部20、20’の少なくとも1つに含まれるチタン酸バリウム系の主成分と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0111】
次の段階として、誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する。
【0112】
誘電体スラリーは、チタン酸バリウム系の主成分粉末と、選択的に副成分粉末とを混合して製造できる。
【0113】
チタン酸バリウム系の主成分粉末は、アクティブ部10およびサイドマージン部20、20’の少なくとも1つに含まれるチタン酸バリウム系の主成分と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0114】
副成分粉末は、例えば、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテニウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されない。前記副成分粉末それぞれは、チタン酸バリウム系の主成分粉末100モル部に対して0.01モル部~5モル部含まれる。
【0115】
前記副成分粉末は、各金属を含有する酸化物または塩化合物の形態で使用され、または有機溶媒に分散したゾル形態で使用されてもよい。
【0116】
また、誘電体スラリーは、分散剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤などの添加剤と溶媒とを追加的に混合して製造できる。
【0117】
チタン酸バリウム系の主成分粉末と、選択的に副成分粉末との混合は、湿式ボールミルまたは撹拌ミルを用いることができる。湿式ボールミルでジルコニアボールを用いる場合、直径0.1mm~10mmの複数のジルコニアボールを用いて8時間~48時間、または10時間または24時間湿式混合することができる。
【0118】
製造された誘電体スラリーは、焼成後に誘電体層に形成される。
製造された誘電体スラリーをシート形状に成形する方法としては、ドクターブレード法、カレンダーロール法などのテープ成形法など、例えば、ヘッド吐出方式のオンロール(on roll)成形コーター(coater)を用いることができ、その後、成形体を乾燥することによって、誘電体グリーンシートを得ることができる。
【0119】
焼成後、内部電極層になる導電性ペースト層を形成するために、導電性金属またはその合金からなる導電性粉末、バインダーおよび溶媒を混合して導電性ペーストを製造することができる。また、必要に応じて、共材としてチタン酸バリウム粉末が共に混合される。共材は、焼結過程で導電性粉末の焼結を抑制する作用を行うことができる。誘電体グリーンシートの表面にスクリーン印刷などの各種印刷法や転写法によって導電性ペーストを所定のパターンに塗布して導電性ペースト層を形成する。
【0120】
誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を塗布する時、誘電体グリーンシート表面の一部領域にのみ導電性ペースト層を塗布し、誘電体グリーンシート表面の両側側面には導電性ペースト層を塗布しない誘電体グリーンシートを積層できる。
【0121】
次に、内部電極パターンを形成した誘電体グリーンシートを複数層にわたって積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する。この時、誘電体グリーンシート積層体の積層方向の上面および下面には誘電体グリーンシートが位置するように誘電体グリーンシートと内部電極パターンとを積層できる。前記誘電体グリーンシート積層体は、積層方向に圧着(プレス)して形成される。
【0122】
次に、製造された誘電体グリーンシート積層体をダイシングなどによって所定の寸法に切断する。この時、誘電体グリーンシート積層体を導電性ペースト層が塗布されない領域、つまり、マージン領域を残さずに導電性ペースト層が露出した状態で切断する。
【0123】
また、誘電体グリーンシート積層体は、必要に応じて、可塑剤などを除去するために固化乾燥することができ、固化乾燥後に、水平遠心バレル機などを用いてバレル研磨することができる。バレル研磨では、誘電体グリーンシート積層体をメディアおよび研磨液と共にバレル容器内に投入し、そのバレル容器に対して回転運動や振動などを付与することによって、切断時に発生したバリ(burr)などの不要部分を研磨することができる。また、バレル研磨後、誘電体グリーンシート積層体は、水などの洗浄液で洗浄して乾燥できる。
【0124】
次に、切断された誘電体グリーンシート積層体の切断面に、先に準備した粘着面を有するマージンシートを接合させる。
【0125】
次に、マージンシートが接合された誘電体グリーンシート積層体を脱バインダー処理および焼成処理してキャパシタボディを製造する。
【0126】
図4は、一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法のうちサイドマージン部の形成過程を示す概略図である。
【0127】
図4を参照すれば、前述のように、誘電体グリーンシート積層体を圧着および切断した後、粘着面を有するマージンシートを接合させた後、焼成処理することによって、アクティブ部に接合されたサイドマージン部が形成される。
【0128】
脱バインダー処理条件は、誘電体層の成分や内部電極層の成分により適切に調節可能である。例えば、脱バインダー処理時の昇温速度は5℃/時間~300℃/時間、保持温度は180℃~400℃、温度維持時間は0.5時間~24時間であってもよい。脱バインダー処理時の雰囲気は、空気または還元性雰囲気であってもよい。
【0129】
焼成処理の条件は、誘電体層の主成分の組成や内部電極の主成分の組成により適切に調節可能である。例えば、焼成は、1100℃~1400℃の温度で行われ、例えば、1200℃~1350℃の温度で行われる。また、焼成は、0.5時間~8時間、例えば、1時間~3時間行われる。さらに、焼成は、還元性雰囲気、例えば、窒素および水素の混合ガスを加湿した雰囲気で行われる。内部電極がニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)合金を含む場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、1.0×10-14MPa~1.0×10-10MPaであってもよい。
【0130】
焼成処理後、必要に応じてアニーリングを進行させることができる。アニーリングは、誘電体層を再酸化させるための処理であり、還元性雰囲気で焼成処理した場合、アニーリングを進行させることができる。アニーリング処理の条件も、誘電体層の成分により適切に調節可能である。例えば、アニーリング時の温度は、950℃~1150℃であってもよく、時間は、0時間~20時間であってもよく、昇温速度は、50℃/時間~500℃/時間であってもよい。アニーリング雰囲気は、加湿した窒素ガス(N2)雰囲気であってもよく、酸素分圧は、1.0×10-9MPa~1.0×10-5MPaであってもよい。
【0131】
脱バインダー処理、焼成処理またはアニーリング処理において、窒素ガスや混合ガスなどを加湿するためには、例えば、ウェッター(wetter)などを使用することができ、この場合、水温は、5℃~75℃であってもよい。脱バインダー処理、焼成処理およびアニーリング処理は、連続して行ってもよく、独立して行ってもよい。
【0132】
選択的に、製造されたキャパシタボディ110の第3面および第4面に対して、サンドブラスト処理、レーザ照射、バレル研磨などの表面処理を行うことができる。このような表面処理を行うことによって、第3面および第4面の最表面に第1内部電極および第2内部電極の端部が露出し、これによって第1外部電極および第2外部電極と第1内部電極および第2内部電極との電気的接合が良好になり、合金部が形成されやすくなる。
【0133】
次に、製造されたキャパシタボディ110の一面に外部電極を形成する。
一例として、外部電極に焼結金属層形成用ペーストを塗布した後、焼結させて焼結金属層を形成することができる。
【0134】
焼結金属層形成用ペーストは、導電性金属とガラスとを含むことができる。導電性金属とガラスに関する説明は上述した通りであるので、繰り返しの説明は省略する。また、焼結金属層形成用ペーストは、選択的に、バインダー、溶媒、分散剤、可塑剤、酸化物粉末などを含むことができる。バインダーは、例えば、エチルセルロース、アクリル、ブチラール(butyral)などを使用することができ、溶媒は、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエンなどの有機溶媒や水系溶媒を使用することができる。
【0135】
焼結金属層形成用ペーストをキャパシタボディ110の外面に塗布する方法としては、ディップ法、スクリーン印刷などの各種印刷法、ディスペンサなどを用いた塗布法、スプレーを用いた噴霧法などを使用することができる。焼結金属層形成用ペーストは、少なくともキャパシタボディ110の第3面および第4面に塗布され、選択的に、第1外部電極および第2外部電極のバンド部が形成される第1面、第2面、第5面または第6面の一部にも塗布される。
【0136】
以後、焼結金属層形成用ペーストが塗布されたキャパシタボディ110を乾燥させ、700℃~1000℃の温度で0.1時間~3時間焼結させて焼結金属層を形成する。
【0137】
選択的に、得られたキャパシタボディ110の外面に、伝導性樹脂層形成用ペーストを塗布した後、硬化させて伝導性樹脂層を形成することができる。
【0138】
伝導性樹脂層形成用ペーストは、樹脂、および選択的に導電性金属または非伝導性フィラーを含むことができる。導電性金属と樹脂に関する説明は上述した通りであるので、繰り返しの説明は省略する。また、伝導性樹脂層形成用ペーストは、選択的に、バインダー、溶媒、分散剤、可塑剤、酸化物粉末などを含むことができる。バインダーは、例えば、エチルセルロース、アクリル、ブチラール(butyral)などを使用することができ、溶媒は、テルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエンなどの有機溶媒や水系溶媒を使用することができる。
【0139】
一例として、伝導性樹脂層の形成方法は、伝導性樹脂層形成用ペーストにキャパシタボディ110をディッピングして形成した後、硬化させるか、伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディ110の表面にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などで印刷するか、伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディ110の表面に塗布した後、硬化させて形成することができる。
【0140】
次に、伝導性樹脂層の外側にメッキ層を形成する。
一例として、メッキ層は、メッキ法によって形成され、スパッタまたは電解メッキ(electric deposition)によって形成されてもよい。
【0141】
以下、実施例を通じて上述した実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、権利範囲を制限するものではない。
【0142】
(積層セラミックキャパシタ製造)
実施例1
BaTiO3粉末、Ga2O3粉末、およびポリビニルブチラール樹脂を混合してコーティング組成物を製造した。この時、Ga2O3粉末はBaTiO3粉末100モル部に対して3モル部混合され、バインダーはコーティング組成物の総量に対して50重量%で混合された。製造されたコーティング組成物をBaTiO3を含むマージンシートの一面に塗布して、粘着面を有するマージンシートを準備した。
【0143】
BaTiO3粉末を用いてジルコニウムボール(ZrO2 ball)を分散媒として用いて、エタノール/トルエンと湿潤分散剤(wetting dispersant)およびバインダーとしてポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)樹脂を共に投入した後、機械的ミリング(milling)して誘電体スラリーを製造した。
【0144】
製造された誘電体スラリーをヘッド吐出方式のオンロール(on roll)成形コーター(coater)を用いて誘電体グリーンシートを製造した。誘電体グリーンシートの表面にニッケル(Ni)を含む導電性ペースト層を印刷し、導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシート(横×縦×高さ=3.2mm×2.5mm×2.5mm)を積層および圧着して誘電体グリーンシート積層体を製造した。
【0145】
誘電体グリーンシート積層体を導電性ペースト層が印刷されない領域を残さずに導電性ペースト層が露出した状態で切断した。切断された誘電体グリーンシート積層体の切断面に、前記粘着面を有するマージンシートを接合させた。
【0146】
マージンシートが接合された誘電体グリーンシート積層体を400℃以下、窒素雰囲気で可塑工程を経て、焼成温度1300℃以下、水素濃度1.0%H2以下の条件で焼成した。
次に、外部電極、メッキなどの工程を経て、積層セラミックキャパシタを製造した。
【0147】
実施例2
実施例1においてコーティング組成物製造時のGa2O3粉末をBaTiO3粉末100モル部に対して6モル部混合したことを除けば、実施例1と同様の方法で積層セラミックキャパシタを製造した。
【0148】
比較例1
実施例1においてコーティング組成物製造時のGa2O3粉末を用いないことを除けば、実施例1と同様の方法で積層セラミックキャパシタを製造した。
【0149】
評価1:SEM-EDS分析
実施例1および2で製造された積層セラミックキャパシタに対してSEM-EDS(走査電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)分析を行って、位置別のガリウム(Ga)の存在および含有量を確認して、その結果を
図5Aおよび5Bに示した。
SEM-EDS分析は次のような方法で測定された。
【0150】
実施例1および2で製造された積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディ110のW軸およびT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2地点まで研磨(polishing)し、固定後、真空雰囲気チャンバー内維持して、誘電体層111と内部電極層121、122との交差するアクティブ部、そしてサイドマージン部を観察できるように断面サンプルを得た。次に、WT面を有する断面サンプルにおいて幅(W軸)方向に半分を分けて一方のサイドマージン部とアクティブ部を走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で測定した。SEMは、例えば、thermofisher scientific社のVerios G4製品を用い、測定条件は10kV、0.2nA、分析倍率10k倍であり、少なくとも10層以上の誘電体層111および内部電極層121、122が出られるように測定した。
【0151】
次に、測定された断面サンプルのSEMイメージにおいてEDS(エネルギー分散型分光法)分析を行った。EDS分析は、測定された断面サンプルのSEMイメージにおいて、サイドマージン部を幅方向に2等分して接合部とより近く隣接する領域を第1サイドマージン部とし、残りの領域を第2サイドマージン部に区分した。また、アクティブ部において、接合部との境界面からサイドマージン部の幅方向の長さの2倍~3倍に相当する長さを有する地点までと境界近傍領域を定義し、前記アクティブ部の境界近傍領域を幅方向に2等分して接合部とより近く隣接する領域を第1アクティブ部とし、残りの領域を第2アクティブ部と区分した。ここで、第1サイドマージン部、第2サイドマージン部、第1アクティブ部および第2アクティブ部それぞれの1個の地点でガリウム(Ga)の含有量を測定した。
【0152】
図5Aは、実施例1による積層セラミックキャパシタにおける位置別のガリウム(Ga)の含有量を示すグラフであり、
図5Bは、実施例2による積層セラミックキャパシタにおける位置別のガリウム(Ga)の含有量を示すグラフである。
【0153】
図5Aおよび5Bを参照すれば、一実施形態による実施例1および2の場合、アクティブ部(site1および2)およびサイドマージン部(site3および4)の少なくとも1つは、ガリウム(Ga)を含むことが分かる。また、第1サイドマージン部(site3)でのガリウム(Ga)は、バリウム(Ba)100重量部を基準に換算すれば、実施例1の場合に0.7重量部の含有量で、実施例2の場合に0.8重量部の含有量で含まれることが分かる。さらに、ガリウム(Ga)は、第2サイドマージン部(site4)より、第1サイドマージン部(site3)に、より高い含有量で含まれることが分かる。
【0154】
評価2:SEM分析
実施例1および2と比較例1で製造された積層セラミックキャパシタに対してSEM(走査電子顕微鏡)分析を行って、これから内部電極層の終端部の気孔発生率を確認して、その結果を
図6A~6Cに示した。
【0155】
まず、SEM分析は次のように行われた。実施例1および2と比較例1で製造された積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディ110のW軸およびT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2地点まで研磨(polishing)し、固定後、真空雰囲気チャンバー内維持して、誘電体層111と内部電極層121、122との交差するアクティブ部とサイドマージン部を観察できるように断面サンプルを得た。次に、WT面を有する断面サンプルにおいて幅(W軸)方向に半分を分けて一方のサイドマージン部とアクティブ部を、特に内部電極層の終端がよく見えるように走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で測定した。SEMは、例えば、thermofisher scientific社のVerios G4製品を用い、測定条件は2kV、0.2nA、分析倍率10k倍であり、少なくとも20層以上の誘電体層111および内部電極層121、122が見えるように測定した。
【0156】
測定された断面サンプルのSEMイメージから内部電極層の終端部の気孔発生率を下記数式1によって得た。
[数式1]
内部電極層の終端部の気孔発生率(%)=(終端部に気孔を有する内部電極層の個数/全体内部電極層の個数)×100
【0157】
図6Aは、実施例1による積層セラミックキャパシタにおける内部電極層の終端部の気孔発生を示すSEMイメージであり、
図6Bは、実施例2による積層セラミックキャパシタにおける内部電極層の終端部の気孔発生を示すSEMイメージであり、
図6Cは、比較例1による積層セラミックキャパシタにおける内部電極層の終端部の気孔発生を示すSEMイメージである。
【0158】
図6A~6Cを参照すれば、実施例1および2の場合、内部電極層の終端部の気孔発生率はそれぞれ39%および27%であるのに対し、比較例1の場合に78%であることが分かる。これから、アクティブ部およびサイドマージン部の少なくとも1つにガリウム(Ga)が含まれている一実施形態による積層セラミックキャパシタは、内部電極層の終端緻密度に優れていることが分かる。これによって耐湿信頼性および耐電圧特性が向上できる。
【0159】
評価3:耐湿信頼性
実施例1および2と比較例1で製造された積層セラミックキャパシタに対して耐湿信頼性を測定して、その結果を
図7A~7Cに示した。
【0160】
具体的には、実施例1および2と比較例1で製造された積層セラミックキャパシタをそれぞれ80個ずつ準備して測定基板に実装し、ESPEC(PR-3J、8585)装置を用いて85℃、相対湿度(R.H.)85%、6.3Vおよび8時間の条件で測定した。
【0161】
図7Aは、実施例1による積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性を示すグラフであり、
図7Bは、実施例2による積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性を示すグラフであり、
図7Cは、比較例1による積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性を示すグラフである。
【0162】
図7A~7Cを参照すれば、一実施形態によりアクティブ部およびサイドマージン部の少なくとも1つにガリウム(Ga)が含まれている実施例1および2の場合、比較例1に比べて耐湿信頼性に優れていることが分かる。
【0163】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0164】
100:積層セラミックキャパシタ
110:キャパシタボディ
111:誘電体層
121:第1内部電極
122:第2内部電極
131:第1外部電極
132:第2外部電極
10:アクティブ部
15、15’:境界近傍領域
16、16’:第1アクティブ部
17、17’:第2アクティブ部
20、20’:サイドマージン部
21、21’:第1サイドマージン部
22、22’:第2サイドマージン部
30、30’:接合部