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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025074020
(43)【公開日】2025-05-13
(54)【発明の名称】アクリレート系繊維不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4382 20120101AFI20250502BHJP
   D04H 1/4282 20120101ALI20250502BHJP
   D04H 1/46 20120101ALI20250502BHJP
   D04H 1/435 20120101ALI20250502BHJP
【FI】
D04H1/4382
D04H1/4282
D04H1/46
D04H1/435
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024182359
(22)【出願日】2024-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2023184178
(32)【優先日】2023-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004053
【氏名又は名称】日本エクスラン工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安川 真一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 克也
(72)【発明者】
【氏名】溝部 穣
(72)【発明者】
【氏名】片岡 謙太
(72)【発明者】
【氏名】中村 正治
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA17
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB07
4L047AB09
4L047BA03
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】吸湿性と伸縮性を兼ね備えるアクリレート系繊維不織布を提供する。
【解決手段】1~10mmol/gのカルボキシル基を有するアクリレート系繊維、および捲縮ポリエステル繊維を混合含有するニードルパンチ不織布であって、伸長回復率が65~100%であり、伸び率が15~80%であり、かつ厚さが1.0~10mmであるアクリレート系繊維不織布。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~10mmol/gのカルボキシル基を有するアクリレート系繊維、および捲縮ポリエステル繊維を混合含有するニードルパンチ不織布であって、伸長回復率が65~100%であり、伸び率が15~80%であり、かつ厚さが1.0~10mmであるアクリレート系繊維不織布。
【請求項2】
目付が70~200g/mであることを特徴とする請求項1に記載のアクリレート系繊維不織布。
【請求項3】
アクリレート系繊維の含有率が、10~50重量%であることを特徴とする請求項1に記載のアクリレート系繊維不織布。
【請求項4】
アクリレート系繊維の繊度が、1~10dtexであることを特徴とする請求項1に記載のアクリレート系繊維不織布。
【請求項5】
捲縮ポリエステル繊維の繊度が、2~8dtexであることを特徴とする請求項1に記載のアクリレート系繊維不織布。
【請求項6】
捲縮ポリエステル繊維が、収縮性の異なる2種のポリエステルを複合したものであることを特徴とする請求項1に記載のアクリレート系繊維不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリレート系繊維不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料や産業用資材などに用いられる繊維材料は、綿や麻、羊毛に代表される天然繊維であったが、近年では耐薬品性や洗濯耐久性、生産性に優れる点から、ポリエステル繊維やアクリル繊維、ナイロンなどといった合成繊維が主流となっている。
【0003】
衣料には、着用者から発せられる汗や水分を取り除き、着用者の快適性を向上させる目的のため、吸湿性を求められるが、上述の合成繊維はほとんど吸湿性を有さないものである。
この点に関して、アクリル繊維を化学変性して得られるアクリレート系繊維は合成繊維でありながら優れた吸放湿性能を有しており、該繊維からなる繊維構造物は効果的に湿気や水分を吸収できることから、湿気や水分を好まない環境下において、好適に採用されている。
【0004】
かかるアクリレート系繊維に関して、例えば、特許文献1では共重合成分として(メタ)アクリル酸エステル化合物が5重量%未満であるアクリロニトリル系重合体からなるアクリル系繊維に、ヒドラジン系化合物による架橋導入処理、加水分解、還元処理を施した高白度吸湿性合成繊維を含む繊維構造体を報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4058677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、不織布などの繊維構造物には、吸湿性のほかに伸縮性もしばしば求められるところ、アクリレート系繊維は吸湿性に優れる一方、伸長後の復元性に乏しいため、該繊維からなる不織布は伸縮性が求められる用途には好適に採用できず、利用範囲が制限されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、アクリレート系繊維と捲縮ポリエステル繊維を混合含有するニードルパンチ不織布であって、後述する伸長回復率、伸び率及び厚さが特定の範囲内であるアクリレート系繊維不織布が吸湿性と伸縮性を兼ね備えることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
(1)1~10mmol/gのカルボキシル基を有するアクリレート系繊維、および捲縮ポリエステル繊維を混合含有するニードルパンチ不織布であって、伸長回復率が65~100%であり、伸び率が15~80%であり、かつ厚さが1.0~10mmであるアクリレート系繊維不織布。
(2)目付が70~200g/mであることを特徴とする(1)に記載のアクリレート系繊維不織布。
(3)アクリレート系繊維の含有率が、10~50重量%であることを特徴とする(1)に記載のアクリレート系繊維不織布。
(4)アクリレート系繊維の繊度が、1~10dtexであることを特徴とする(1)に記載のアクリレート系繊維不織布。
(5)捲縮ポリエステル繊維の繊度が、2~8dtexであることを特徴とする(1)に記載のアクリレート系繊維不織布。
(6)捲縮ポリエステル繊維が、収縮性の異なる2種のポリエステルを複合したものであることを特徴とする(1)に記載のアクリレート系繊維不織布。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアクリレート系繊維不織布は、吸湿性と伸縮性を兼ね備えたものであり、従来の課題であった伸縮性が求められる用途にも好適に採用できる。また、前記不織布は繊維構造物に含有させることで、該繊維構造物に伸縮性の低下を抑えつつ吸湿性を付与することができるため、例えば衣料用の材料として用いた場合、着用者から発せられる汗や水分を吸収しつつ、伸縮することで体の動きに追従できる。中でも、体をよく動かし、発汗も多くなりがちなスポーツや力作業の際に着用するスポーツ衣料や作業服に対しては、特に好適に採用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明に採用される各繊維について詳細に説明する。
【0011】
本発明に採用するカルボキシル基を有するアクリレート系繊維は、繊維中にカルボキシル基を有しており、このカルボキシル基が水分を吸着することによって、前記繊維は吸湿性を発現する。ここで、前記アクリレート系繊維が含有するカルボキシル基量は、下限としては1mmol/gであり、好ましくは2.5mmol/gであり、より好ましくは4mmol/gである。カルボキシル基量が1mmol/gを下回る場合、十分な吸湿性が得られないおそれがある。また、上限としては、10mmol/gであり、好ましくは8mmol/gであり、より好ましくは7mmol/gである。カルボキシル基量が10mmol/gを上回る場合、繊維が水を過度に吸着して膨潤してしまい、繊維物性が低下して加工や使用が困難となるおそれがある。
【0012】
前記カルボキシル基のカウンターイオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の陽イオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の陽イオン、アンモニウムイオン、水素イオン等から1種あるいは複数種を必要な特性に応じて選択することができる。水素イオン以外のカウンターイオンを有するカルボキシル基(以下、塩型カルボキシル基という)が存在する場合、飽和吸湿量、吸湿速度がより大きくなるため、中綿として使用する場合の快適性が向上する。
【0013】
前記アクリレート系繊維を得る方法については特に制限はなく、例えば特開2000-314082号公報に記載されている、アクリル系繊維の架橋、加水分解処理によるアクリレート系繊維の製造方法のように、公知の方法で製造してもよく、市販品を採用してもよい。かかる市販品としては、例えば東洋紡(株)製のアクリレート系繊維であるエクス(登録商標)、ディスメル(登録商標)、モイスファイン(登録商標)、モイスケア(登録商標)や、帝人フロンティア(株)製のアクリレート系繊維であるサンバーナー(登録商標)などが例として挙げられる。
【0014】
前記アクリレート系繊維の繊度は、下限として1dtexであることが好ましく、2dtexであることがより好ましい。繊度が1dtexを下回る場合、強度が不十分となり、前記不織布への加工が困難となるおそれがある。また、上限としては、10dtexが好ましく、7dtexがより好ましい。繊度が10dtexを上回る場合、不織布の風合いが悪くなるおそれがある。
【0015】
次に、捲縮ポリエステル繊維について述べる。
【0016】
本発明に採用する捲縮ポリエステル繊維は、自身の捲縮に由来する伸縮性を有しており、前記ポリエステル繊維を含有する不織布に伸縮性を付与することができる。
【0017】
前記捲縮ポリエステル繊維の繊度は、下限としては2dtexが好ましく、3dtexがより好ましい。繊度が2dtexを下回る場合、紡糸性やカード機の通過性が低下するおそれがある。また、上限としては8dtexが好ましく、7dtexがより好ましい。繊度が8dtexを上回る場合、不織布としたときに風合いが粗くなり、衣料用途に適さなくなるおそれがある。
【0018】
前記捲縮ポリエステル繊維が有する捲縮については特に制限はないが、嵩高性や伸縮性の観点から、コイル状やスパイラル状などといった3次元捲縮を選択することが好ましい。
【0019】
前記捲縮ポリエステル繊維に3次元捲縮を発現させる方法としては、例えば熱収縮率が異なる2成分のポリエステル重合体からなる複合繊維を用いる方法が挙げられる。該複合繊維に熱処理を行うと、該複合繊維を構成する2種類の重合体がそれぞれの熱収縮率に従い熱収縮を起こし、結果として該複合繊維に3次元収縮が発現する。ここで、該複合繊維に用いる2成分のポリエステル重合体の組み合わせは、2成分の熱収縮率が異なればよく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど、それぞれ熱収縮率が異なるポリエステル重合体から2種類を選択してもよく、ポリエチレンテレフタレートと変性ポリエチレンテレフタレートなど、あるポリエステル重合体と、該重合体の変性や重合度の変更等により熱収縮率をもとの重合体から変更したものを組み合わせてもよい。また、複合繊維の構造としては、例えば2種類の重合体が貼り合わされた2層構造であるサイドバイサイド構造、芯が繊維軸からずれた位置に配置された芯鞘構造である偏心芯鞘構造が挙げられる。
【0020】
前記捲縮ポリエステル繊維を得る方法については特に制限はなく、2種類のポリエステル重合体を複合紡糸装置で製造するといった公知の方法を採用してもよく、市販品を用いてもよい。
【0021】
本発明のアクリレート系繊維不織布は、前述したカルボキシル基を有するアクリレート系繊維と捲縮ポリエステル繊維を混合含有するニードルパンチ不織布であり、後述する伸び率、伸長回復率および厚さが特定の数値範囲内であることを特徴とする。
【0022】
上記のように本発明のアクリレート系繊維不織布は、ニードルパンチ不織布である。不織布の種類としては、ニードルパンチ不織布のほかにもスパンレース不織布やスパンボンド不織布がよく知られているが、スパンレース不織布では繊維の交絡に水を使用するため、アクリレート繊維が水膨潤して強度が弱くなり、繊維の微細化や脱落が発生して望ましくない。また、スパンボンド不織布では繊維が固定されて変形しづらくなるため、伸び率や伸長回復率が低下し、風合いも硬くなるので望ましくない。これらに対して、ニードルパンチ不織布は乾式不織布であり、繊維も固定されないため、本発明において適したものである。
【0023】
また、本発明のアクリレート系繊維不織布の伸び率は、下限として15%であり、好ましくは20%である。伸び率が15%を下回る場合、十分な伸長性が得られず、衣料などに用いた際に体の動きを制限するおそれがある。また、上限としては80%であり、好ましくは60%であり、より好ましくは50%である。伸び率が80%を上回る場合、後述する伸長回復率を65%以上とすることが困難となり、その結果伸縮性が損なわれ、衣料に用いた際に着心地を損ねるおそれがある。
【0024】
前記アクリレート系繊維不織布の伸長回復率は、下限として65%であり、好ましくは70%である。伸長回復率が65%を下回る場合、衣料などに用いた際に追従性が低下し、着心地を損ねるおそれがある。また、上限としては特に制限はないが、現実的に考えて、100%が上限となる。ここで、伸長回復率とは、引き伸ばしに対する弾性を示した値であり、後述する実施例に記載の方法で求められる。伸長回復率が高いほど、不織布は引き伸ばされても元に戻りやすいといえる。
【0025】
前記アクリレート系繊維不織布の厚さは、下限としては1.0mmであり、好ましくは2.0mmである。厚さが1.0mmを下回る場合、十分な強度を得られないおそれがある。
また、上限としては10mmであり、好ましくは6.0mmである。厚さが10mmを上回る場合、衣料とした際に通気性や着用感が低下するおそれがある。
【0026】
前記アクリレート系繊維不織布の目付は、下限として70g/mが好ましく、100g/mがより好ましい。目付が70g/mを下回る場合、十分な吸湿性が得られないおそれがある。また、上限としては200g/mが好ましく、160g/mがより好ましい。目付が200g/mを上回る場合、通気性や柔軟性が低下するため、衣料等に用いた際に着用感の低下を招くおそれがある。
【0027】
前記アクリレート系繊維不織布は、優れた吸放湿性を有し、不織布周囲の湿度を適度に保つ観点から、後述の実施例に記載されている方法で求められる吸湿率差が下限として5.0%であることが好ましく、10%であることがより好ましい。
【0028】
前記アクリレート系繊維不織布における前記アクリレート系繊維の含有率は、前記アクリレート系不織布が十分な吸湿性を得る観点から、下限としては10重量%が好ましく、20重量%がより好ましい。また、前記アクリレート繊維が十分な強度や加工性を得る観点から、上限としては50重量%が好ましく、40重量%がより好ましい。
【0029】
また、前記アクリレート系繊維不織布における捲縮ポリエステル繊維の含有率については、前記アクリレート系繊維不織布が十分な伸縮性を得る観点から、含有率の下限としては50重量%が好ましく、60重量%がより好ましい。また、前記アクリレート系繊維不織布において、吸湿性を有している前記アクリレート系繊維の含有量を確保する観点から、含有率の上限としては90重量%が好ましく、80重量%がより好ましい。
【0030】
前記アクリレート系繊維不織布は、本発明の目的を妨げない限り、上述した繊維以外の繊維を含有してもよい。含有させる繊維としては、例えば非捲縮性ポリエステル繊維やアクリル繊維、レーヨンなどの合成繊維、綿や麻、羊毛などの天然繊維、ガラス繊維などの無機繊維などが挙げられる。また、その含有率は、上限としては40重量%が好ましく、より好ましくは20重量%である。
【0031】
前記アクリレート系繊維不織布の製造方法は、従来公知の方法を採用すればよく、例えば前記アクリレート系繊維と前記捲縮ポリエステル繊維を混合し、カード機等でウェブを作成し、ニードルパンチで交絡したのち、熱風乾燥機等による熱処理により、前記捲縮ポリエステル繊維の捲縮を発現させ、その後必要に応じてカレンダー加工を行い、不織布を得る方法が挙げられる。ここで、前記捲縮ポリエステル繊維に捲縮が発現した状態でカード機やニードルパンチ加工を行おうとすると、前記捲縮がカード機やニードルパンチ用機械のニードルに絡まってしまうなどして、加工に問題が生じるおそれがあるため、前記捲縮はウェブにニードルパンチ加工を行った後で発現させることが望ましい。
【0032】
本発明のアクリレート系繊維不織布は、吸湿性と伸縮性を兼ね備えたものであり、衣料や寝具の材料に好適に採用でき、中でもスポーツ衣料や作業服、ベッドパッドに特に好適に採用できる。
【実施例0033】
以下に本発明の理解を容易にするために実施例を示すが、これらはあくまで例示的なものであり、本発明の要旨はこれらにより限定されるものではない。
【0034】
<カルボキシル基量の測定方法>
試料繊維約1gを、50mLの1mol/L塩酸水溶液に30分間浸漬した。次いで、試料を、浴比1:500で水に浸漬した。15分後、浴pHが4以上であることを確認したら、十分に乾燥させた(浴pHが4未満の場合は、再度水洗する)。次に、かかる乾燥させた後の試料約0.2gを精秤し(W[g])、100mLの水を加え、さらに、15mLの0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液、0.4gの塩化ナトリウムおよびフェノールフタレインを添加して攪拌した。15分後、濾過によって試料と濾液に分離し、引き続き濾液を、フェノールフタレインの呈色がなくなるまで0.1mol/L塩酸水溶液で滴定し、塩酸水溶液消費量(V[mL])を求めたのち、下式よりカルボキシル基量を算出した。

カルボキシル基量[mmol/g]=(0.1×15-0.1×V)/W
【0035】
<伸長回復率の測定方法>
一定伸長を30%、繰返し回数を1回、つかみ間隔を100mm、引張速度を100mm/minとしたほかは「JIS-L1096:2010-8.16.2-D法(繰返し定伸長法)」に準拠して測定、算出を行った。
【0036】
<伸び率の測定方法>
初荷重を49mN、間隔を200mm、加える荷重を931mNとしたほかは「JIS-L1096:2010-8.16.1-B法(織物の定荷重法)」に準拠して測定、算出を行った。
【0037】
<目付の測定方法>
100×100mmの試料不織布を105℃で2時間乾燥した後、重量(Y[g])を測定し、次式によって算出した。

目付け[g/m]=Y/(0.1×0.1)
【0038】
<厚さの測定方法>
100×100mmの試料不織布の厚さを、(株)大栄科学精器製作所製の厚さ測定器FS-60DSを用いて測定した。測定方法は、1つの試料不織布の異なる3箇所で測定したほかは、「JIS-L1913:2010-6.1.1-A法」に準拠して行った。
【0039】
<吸湿率差の測定方法>
100×100mmの試料不織布を80℃の恒温乾燥機で16時間乾燥したのち、デシケーターで15分放冷した(試料重量:W0[g])。その後、20℃×95%RHに設定した恒温恒湿機内で平衡吸湿状態になるまで放置し、平衡吸湿後の質量を測定したW1[g])のち、下記式にて吸湿率Aを算出した。その後、該不織布を20℃×50%RHに設定した恒温恒湿機で平衡吸湿状態になるまで放置し、平衡吸湿後の質量を測定した(W2[g])のち、下記式にて吸湿率Bを算出した。最後に、得られた吸湿率A及びBを用いて下記式から吸湿率差を算出した。なお、「20℃×40%RH」や「20℃×90%RH」とは、温度が20℃かつ相対湿度がそれぞれ40%、90%である雰囲気のことを意味する。

吸湿率A(%)={(W1ーW0)/W0}×100
吸湿率B(%)={(W2ーW0)/W0}×100
吸湿率差(%)=吸湿率Aー吸湿率B
【0040】
(実施例1)
日本エクスラン(株)製のアクリレート系繊維(繊度5.1dtex、繊維長48mm、カルボキシル基量6.5mmol/g)30重量部と東レ(株)製の捲縮ポリエステル繊維(繊度6.6dtex、繊維長51mm)70重量部を均一に混合して開繊機で開繊したのち、カード機に通してカードウェブを作成し、該カードウェブをニードルパンチで交絡したのち、180℃の雰囲気下で3分加熱して前記捲縮ポリエステル繊維の捲縮を発現させ、最後にカレンダー加工することで、実施例1の不織布(目付128g/m、厚さ2.8mm)を得た。
【0041】
(比較例1)
捲縮ポリエステル繊維を非捲縮ポリエステル繊維(繊度6.6dtex、繊維長51mm)に変更するほかは実施例1と同様にして、比較例1の不織布(目付101g/m、厚さ2.4mm)を得た。
【0042】
(比較例2)
使用する繊維を比較例1の非捲縮ポリエステル繊維のみとするほかは実施例1と同様にして、比較例2の不織布(目付130g/m、厚さ2.5mm)を得た。
【0043】
上記実施例及び比較例に対して各種測定を行い、そのうち伸長回復率、伸び率の測定結果を表1に示した。
【0044】
【表1】