(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025074045
(43)【公開日】2025-05-13
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250502BHJP
H01C 7/18 20060101ALI20250502BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01C7/18
H01G4/30 201F
H01G4/30 201D
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024186967
(22)【出願日】2024-10-23
(31)【優先権主張番号】10-2023-0144625
(32)【優先日】2023-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0197417
(32)【優先日】2023-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン ミン
(72)【発明者】
【氏名】カン、バム スク
(72)【発明者】
【氏名】グ、ヒュン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】リー、カン ハ
(72)【発明者】
【氏名】リー、チュン エウン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AC09
5E001AE03
5E001AF02
5E001AF03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC40
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082PP03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】信頼性に優れた積層型電子部品を提供し、内部電極と外部電極との間の連結性を向上させる。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層111、内部電極121を含む本体と、本体上に配置されて内部電極と連結される外部電極と、を含む。外部電極の内部電極界面付近の領域141はNi、Al、Cuを含み、内部電極はNiを含み、外部電極はAl及びCuを含む。界面付近の領域141はさらに、第1領域P1及び2領域P2に細分化され成分が規定される。外部電極の下地電極層は、Al(M2)、Cu(M1)及びガラス(G)を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置されて、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
Ni、Al及びCuを含む領域を含み、
前記内部電極はNiを含み、
前記外部電極はAl及びCuを含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記Ni、Al及びCuを含む領域のうち、前記内部電極に隣接する領域を第1領域、前記外部電極に隣接する領域を第2領域とするとき、
前記第1領域にはAl-Ni合金が配置され、前記第2領域にはAl-Cu合金が配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記Ni、Al及びCuを含む領域は、Al-Ni合金及びAl-Cu合金からなる、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1領域は、前記内部電極から外部電極方向に向かうほどNi含有量が減少し、前記第2領域は、前記外部電極から内部電極方向に向かうほどCu含有量が減少する、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1領域は、前記内部電極から外部電極方向に向かうほどAl含有量が増加し、前記第2領域は、前記外部電極から内部電極方向に向かうほどAl含有量が増加する、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記第1領域は、前記本体の内部に配置され、前記第2領域の少なくとも一部は前記本体の外部に配置される、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記第1領域と第2領域との間を中間領域とするとき、前記中間領域に含まれたAlの原子百分率は、前記第1領域及び前記第2領域に含まれたAlの原子百分率よりも高い、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記中間領域はNi及びCuを含まない、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記中間領域はAl含有量が99at%以上であり、前記中間領域の少なくとも一部はAl含有量が100at%である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記第1領域は、前記内部電極から外部電極方向に向かうほどNi含有量が減少し、Al含有量が増加し、前記第2領域は、前記外部電極から内部電極方向に向かうほどCu含有量が減少し、Al含有量が増加する、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記第1領域は、前記本体の内部に配置され、前記第2領域の少なくとも一部は前記本体の外部に配置される、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記中間領域は前記本体の内部に配置される、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記Ni、Al及びCuを含む領域は、実質的にNi-Al-Cu合金からなる、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記Ni、Al及びCuを含む領域は、前記内部電極から外部電極方向に向かうほどNi含有量が減少し、Cu含有量が増加する、請求項13に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記Ni、Al及びCuを含む領域は、中央領域でAl含有量が最も高く、前記中央領域から内部電極方向に向かうほどAl含有量が減少し、前記中央領域から外部電極方向に向かうほどAl含有量が減少する、請求項13に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記Ni、Al及びCuを含む領域のうち、前記内部電極に隣接する領域を第1領域、前記外部電極に隣接する領域を第2領域、前記第1領域と第2領域との間を中間領域とするとき、
前記第1領域にはAl-Ni合金が配置され、前記第2領域にはAl-Cu合金が配置され、前記中間領域にはNi-Al-Cu合金が配置される、請求項1から15のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項17】
前記Ni、Al及びCuを含む領域は、前記内部電極と外部電極との間に配置される、請求項1から15のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
誘電体層、及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置され、前記内部電極と連結される下地電極層を含む外部電極と、を含み、
前記下地電極層は、Al、Cu及びガラスを含む、積層型電子部品。
【請求項19】
前記下地電極層は、前記内部電極間に配置された誘電体層の端部の少なくとも一部と接する、請求項18に記載の積層型電子部品。
【請求項20】
前記下地電極層に含まれたAl、Cu及びガラスのうち1つ以上は、前記内部電極間に配置された誘電体層の端部の少なくとも一部と接する、請求項18に記載の積層型電子部品。
【請求項21】
前記下地電極層に含まれたAlの少なくとも一部はCuと合金を成す、請求項18に記載の積層型電子部品。
【請求項22】
前記外部電極は、前記下地電極層上に配置されるNiめっき層をさらに含み、
前記下地電極層と前記Niめっき層との界面領域の少なくとも一部には、Al及びAl-Ni合金が配置される、請求項18に記載の積層型電子部品。
【請求項23】
前記外部電極は、前記下地電極層上に配置され、導電性粒子及び樹脂を含む導電性樹脂層をさらに含む、請求項18に記載の積層型電子部品。
【請求項24】
前記導電性樹脂層に含まれた導電性粒子はCu粒子であり、
前記下地電極層と前記導電性樹脂層の界面領域の少なくとも一部には、Al及びAl-Cu合金が配置される、請求項23に記載の積層型電子部品。
【請求項25】
前記内部電極の端部から前記下地電極層に延びるNi、Al及びCuを含む領域をさらに含み、
前記Ni、Al及びCuを含む領域の全体領域にAlが存在し、前記Ni、Al及びCuを含む領域に含まれたAlの少なくとも一部はNi及びCuのうち1つ以上と合金を成す、請求項18から24のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。
【0004】
最近では、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、積層セラミックキャパシタも小型化及び高容量化する傾向にあり、このような流れによって積層セラミックキャパシタの高信頼性を確保する重要度が高まっている。
【0005】
また、モバイル機器の高圧充電が普遍化しながら、小型でありながらも高電圧での信頼性に優れることが求められている。
【0006】
内部電極と外部電極との間の接触性の低下時に、内部電極と外部電極との間の電気的連結性が低下して、等価直列抵抗(ESR)が増加する可能性があり、高電圧の印加時にアークバーン(Arc burnt)などの不良が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の様々な目的の一つは、信頼性に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0008】
本発明の様々な目的の一つは、内部電極と外部電極との間の連結性を向上させることである。
【0009】
但し、本発明の目的は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、Ni、Al及びCuを含む領域を含み、上記内部電極はNiを含み、上記外部電極はAl及びCuを含むことができる。
【0011】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される下地電極層を含む外部電極と、を含み、上記下地電極層は、Al、Cu及びガラスを含むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0013】
本発明の様々な効果の一つとして、内部電極と外部電極との間の接触性を向上させることができる。
【0014】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図5】
図2の本体の一部を概略的に示したものである。
【
図6】
図2のK1領域を拡大して示した拡大図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る
図6に対応する図面である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る
図6に対応する図面である。
【
図9】
図2のK2領域を拡大して示した拡大図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る
図2に対応する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0017】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0019】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図4は、本体を分解して概略的に示したものであり、
図5は、
図2の本体の一部を概略的に示したものであり、
図6は、
図2のK1領域を拡大して示した拡大図であり、
図7は、本発明の一実施形態に係る
図6に対応する図面である。
【0020】
以下、
図1~
図7を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100について詳細に説明する。また、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、以下「MLCC」という)について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、セラミック材料を用いる多様な積層型電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用され得る。
【0021】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体上に配置されて上記内部電極と連結される外部電極131、132と、を含み、Ni、Al及びCuを含む領域141、142を含み、上記内部電極はNiを含み、上記外部電極はAl及びCuを含むことができる。
【0022】
外部電極と内部電極との間の連結性は、積層型電子部品の信頼性に大きな影響を与える。内部電極と外部電極との間の接触性の低下時に内部電極と外部電極との間の電気的連結性が低下して、等価直列抵抗(ESR)が増加する可能性があり、高電圧の印加時にアークバーン(Arc burn)などの不良が発生する可能性がある。
【0023】
本発明の一実施形態に係ると、Ni、Al及びCuを含む領域141、142を含むことにより、内部電極と外部電極との間の連結性を向上させて、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100に含まれる各構成について説明する。
【0025】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。
【0026】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0027】
本体110は、第1方向に向かい合う第1面1及び第2面2、上記第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に向かい合う第3面3及び第4面4、第1面1及び第2面2と連結され、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に向かい合う第5面5及び第6面6を有することができる。
【0028】
誘電体層111上に内部電極121、122が配置されていないマージン領域が重なることによって、内部電極121、122の厚さによる段差が発生して、第1面と第3面、第4面及び第5面を連結するコーナー及び/または第2面と第3面、第4面及び第5面を連結するコーナーは、第1面または第2面を基準として見るとき、本体110の第1方向の中央側に収縮した形態を有することができる。または、本体の焼結過程での収縮挙動によって第1面1と第3面3、第4面4、第5面5及び第66を連結するコーナー及び/または第2面2と第3面3、第4面4、第5面5及び第6面6を連結するコーナーは、第1面または第2面を基準として見るとき、本体110の第1方向の中央側に収縮した形態を有することができる。または、チッピング不良などを防止するために本体110の各面を連結する角を別途の工程を行ってラウンド処理することで第1面と第3面、第4面、第5面及び第6面を連結するコーナー及び/または第2面と第3面、第4面、第5面及び第6面を連結するコーナーは、ラウンド形態を有することができる。
【0029】
一方、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成する場合には、第1面と第5面及び第6面を連結する部分並びに第2面と第5面及び第6面を連結する部分が収縮した形態を有さないことができる。
【0030】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。誘電体層の積層数は特に制限する必要はなく、積層型電子部品のサイズを考慮して決定することができる。例えば、誘電体層を400層以上積層して本体を形成することができる。
【0031】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた後、上記セラミックグリーンシートを焼成することで形成することができる。セラミック粉末は、十分な静電容量が得られる限り、特に制限されないが、例えば、セラミック粉末としてチタン酸バリウム系(BaTiO3)系粉末などを用いることができる。より具体的な例を挙げると、セラミック粉末は、BaTiO3、(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)及びBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)のうち一つ以上であることができる。
【0032】
誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はないが、例えば、0.01μm~10μmであることができる。また、誘電体層111の平均厚さtdは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができ、例えば、小型IT用電子部品の場合、小型化及び高容量化を達成するために複数の誘電体層111の少なくとも1つの平均厚さtdは1.5μm以下であり得る。
【0033】
ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向の大きさを意味することができる。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的には、1つの誘電体層111の多数の地点、例えば第2方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30個の地点は、後述する容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0034】
本体110は本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと上記容量形成部Acの第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113を含むことができる。
【0035】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0036】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び上記容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0037】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0038】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0039】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0040】
一方、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは60μm以下であることができる。
【0041】
カバー部112、113の平均厚さtcは第1方向の大きさを意味することができ、容量形成部Acの上部または下部で等間隔の5個の地点で測定したカバー部112、113の第1方向の大きさを平均した値であることができる。
【0042】
また、上記容量形成部Acの側面には、マージン部114、115が配置されることができる。
【0043】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1マージン部114と第6面6に配置された第2マージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両端面(end surfaces)に配置されることができる。
【0044】
マージン部114、115は、
図3に示されたように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面(cross-section)において、第1内部電極121及び第2内部電極122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0045】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0046】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されるところを除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであることができる。
【0047】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0048】
一方、マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、マージン部114、115の平均幅は45μm以下であることができる。
【0049】
マージン部114、115の平均幅は、内部電極が第5面から離隔した領域の第3方向の平均大きさ及び内部電極が第6面から離隔した領域の第3方向の平均大きさを意味することができ、容量形成部Acの側面で等間隔の5個の地点で測定したマージン部114、115の第3方向の大きさを平均した値であることができる。
【0050】
したがって、一実施形態において、内部電極121、122が第5面及び第6面から離隔した領域の第3方向の平均大きさは、それぞれ45μm以下であり得る。
【0051】
一方、本体110に誘電体物質の代わりに磁性体物質を適用する場合、積層型電子部品はインダクタとして機能することができる。磁性体物質は、例えばフェライト及び/または金属磁性粒子であり得る。積層型電子部品がインダクタとして機能する場合、内部電極はコイル状導体であり得る。
【0052】
また、本体110に誘電体物質の代わりに圧電体物質を適用する場合、積層型電子部品は圧電体素子として機能することができる。圧電体物質は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)であり得る。
【0053】
また、本体110に誘電体物質の代わりにZnO系またはSiC系物質を適用する場合、積層型電子部品はバリスタとして機能することができ、本体110に誘電体物質の代わりにスピネル系物質を適用する場合、積層型電子部品はサーミスタとして機能することができる。
【0054】
すなわち、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、本体110の材料や構造を適宜変更することで、積層セラミックキャパシタだけでなく、インダクタ、圧電体素子、バリスタまたはサーミスタとして機能することができる。
【0055】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に配置されることができ、例えば、互いに異なる極性を有する一対の電極である第1内部電極121と第2内部電極122が誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置されることができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、その間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。このとき、内部電極121、122は、誘電体層111と第1方向に交互に配置されることができる。
【0056】
第1内部電極121は第4面4から離隔し、第3面3に向かって延びることができる。第2内部電極122は第3面3から離隔し、第4面4に向かって延びることができる。第1内部電極121は第3面3側で第1外部電極131と電気的に連結されることができ、第2内部電極122は第4面4側で第2外部電極132と電気的に連結されることができる。
【0057】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、Ni、Cu、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、W、Ti及びこれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0058】
一実施形態において、内部電極121、122はNiを含むことができる。内部電極121、122がNiを含むことにより、下地電極層131a、132aの形成時にNi、Al及びCuを含む領域141、142にAl及びNi合金が容易に形成されることができる。また、内部電極121、122は、Niを主成分として含むことができ、ここで主成分として含むということは、内部電極の断面をSEM-EDSで分析する際に、内部電極の全体面積に対してNiが占める面積割合が90%以上であることを意味することができる。
【0059】
内部電極121、122を形成する方法は、特に制限されない。例えば、内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することで形成されることができる。内部電極用導電性ペーストの塗布方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はないが、例えば0.01μm~3μmであることができる。また、内部電極121、122の平均厚さteは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができ、例えば、小型IT用電子部品の場合、小型化及び高容量化を達成するために複数の内部電極121、122の少なくとも1つの平均厚さteは、0.8μm以下であり得る。
【0061】
ここで、内部電極の平均厚さteは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的には、1つの内部電極121、122の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30個の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0062】
一実施形態において、Ni、Al及びCuを含む領域141、142は、内部電極121、122と外部電極131、132との間に配置されることができる。Ni、Al及びCuを含む領域141、142は、第1内部電極121と第1外部電極131との間に配置される第1Ni、Al及びCuを含む領域141及び第2内部電極122と第2外部電極132との間に配置される第2Ni、Al及びCuを含む領域142を含むことができる。
【0063】
さらに、Ni、Al及びCuを含む領域141、142は、内部電極121、122の端部で下地電極層131a、132aに延びることができる。また、Ni、Al及びCuを含む領域141、142の全体領域にAlが存在し、Ni、Al及びCuを含む領域141、142に含まれたAlの少なくとも一部はNi及びCuのうち1つ以上と合金を成すことができる。Ni、Al及びCuを含む領域141、142に含まれたAlは、Al、Al-Cu合金、Al-Ni合金、Al-Cu-Ni合金などの形態で存在することができる。これにより、内部電極121、122と外部電極131、132との間の連結性を向上させることができる。
【0064】
Alは、Ni及びCuと安定して合金を形成することができる。また、Alの融点は約660℃で一般的な焼成電極の焼成温度よりも低いため、外部電極131、132を形成する際に、外部電極131、132と内部電極121、122との間の連結性を向上させることが容易である。
【0065】
一実施形態において、Ni、Al及びCuを含む領域141、142は、Ni含有量が内部電極121、122の端部から離れるほど減少する区間、及びCu含有量が下地電極層131a、132aから離れるほど減少する区間を含むことができる。このようなNi含有量及びCu含有量の濃度勾配は、内部電極121、122に含まれていたNiがNi、Al及びCuを含む領域141、142に拡散し、外部電極131、132に含まれていたCuがNi、Al及びCuを含む領域141、142に拡散することによるものであり得る。
【0066】
図6は、
図2のK1領域を拡大して示した拡大図であり、
図7は、本発明の一実施形態に係る
図6に対応する図面であり、
図8は、本発明の一実施形態に係る
図6に対応する図面である。
【0067】
上記K1領域は、第1外部電極131の一部、第1Ni、Al及びCuを含む領域141及び第1内部電極121の一部を拡大して示したが、第1外部電極131は第3面に配置され、第2外部電極132は第4面に配置されるという差異があるだけで、第1外部電極131と第2外部電極132の構成は類似するため、以下では、第1外部電極131を基準に説明するが、これは第2外部電極132に関する説明を含むものと見なす。また、Ni、Al及びCuを含む領域141、142及び内部電極121、122も第1Ni、Al及びCuを含む領域141及び第1内部電極121を基準として説明するが、これは、第2Ni、Al及びCuを含む領域142及び第2内部電極122に関する説明を含むものと見なす。
【0068】
一実施形態において、Ni、Al及びCuを含む領域141のうち、内部電極121に隣接する領域を第1領域P1、外部電極131に隣接する領域を第2領域P2とするとき、第1領域P1にはAl-Ni合金が配置され、第2領域P2にはAl-Cu合金が配置されることができる。
【0069】
一実施形態において、Ni、Al及びCuを含む領域141は、Al-Ni合金及びAl-Cu合金からなることができる。
図6を参照すると、Ni、Al及びCuを含む領域141は、Al-Ni合金から構成された第1領域P1及びAl-Cu合金から構成された第2領域P2を含む2層からなることができる。
【0070】
また、第1領域P1は内部電極121から外部電極131方向に向かうほどNi含有量が減少し、第2領域P2は外部電極131から内部電極121方向に向かうほどCu含有量が減少する可能性がある。
【0071】
また、第1領域P1は、内部電極121から外部電極131方向に向かうほどAl含有量が増加し、第2領域P2は、外部電極131から内部電極121方向に向かうほどAl含有量が増加することができる。したがって、第1領域P1と第2領域P2の境界において、Al含有量は最大値を有することができる。
【0072】
一実施形態において、第1領域P1は本体110の内部に配置され、第2領域P2の少なくとも一部は本体110の外部に配置されることができる。第1領域P1は、本体110の内部で内部電極121の端部と接するように配置されることができ、第2領域P2は、本体110の外部で下地電極層131aと接するように配置されることができる。
【0073】
図5を参照すると、本体110は、内部電極121、122の端部が本体110の一面から離隔した溝部G1、G2を含むことができる。溝部G1、G2は、本体110の焼成過程で内部電極121、122と誘電体層111との間の収縮挙動の差異によって形成されることができる。内部電極121、122の焼成収縮率が誘電体層111よりも大きい場合、溝部G1、G2によって内部電極121、122と外部電極131、132との間の連結性が低下するという問題点が発生する可能性がある。従来には、このような問題点を解決するために、サンドブラスト法などを用いて突出した誘電体層を除去する工程を追加して、このような問題点を解決しようとした。一方、本発明の一実施形態に係ると、溝部G1、G2にNi、Al及びCuを含む領域141、142の少なくとも一部が配置されることによって、別途の研磨過程なしで内部電極121、122と外部電極131、132との間の連結性を向上させることができる。このとき、第1領域P1は、溝部G1、G2内で内部電極121の端部と接するように配置され、第2領域P2の少なくとも一部は溝部G1、G2内に配置され、第2領域P2の残りの領域は、本体110の外部に配置されることができる。
【0074】
図7を参照すると、一実施形態において、Ni、Al及びCuを含む領域141'は、第1領域P1'と第2領域P2'との間に配置された中間領域Pc'を含むことができる。Ni、Al及びCuを含む領域141'は、Al-Ni合金から構成された第1領域P1'、Al-Cu合金から構成された第2領域P2'、及び第1領域P1'と第2領域P2'との間に配置された中間領域Pc'を含む3層からなることができる。
【0075】
一実施形態において、中間領域Pc'のAl含有量は、第1領域P1'及び第2領域P2'のAl含有量よりも高いことができる。
【0076】
一実施形態において、中間領域Pc'はNi及びCuを含まないことができ、実質的にAlからなることができる。
【0077】
また、中間領域Pc'は、Al含有量が99at%以上であり、中間領域Pc'の少なくとも一部は、Al含有量が100at%以上であることができる。
【0078】
このとき、第1領域P1'は内部電極から外部電極方向に向かうほどNi含有量が減少し、Al含有量が増加し、第2領域P2'は外部電極から内部電極方向に向かうほどCu含有量が減少し、Al含有量が増加することができる。また、Al含有量は、中間領域Pc'においては比較的一定の含有量を維持することができる。
【0079】
但し、中間領域Pc'が必ずしもAlからなる必要はなく、一実施形態における中間領域Pc'にはNi-Al-Cu合金が配置されることができる。このとき、中間領域Pc'の中央部で第1領域P1'及び第2領域P2'に近づくほど、Al含有量は減少することができ、第1領域P1'と中間領域Pc'の境界から第2領域P2'と中間領域Pc'の境界に向かうほどNi含有量は減少し、Cu含有量は増加することができる。
【0080】
一実施形態において、第1領域P1'は本体110の内部に配置され、第2領域P2'の少なくとも一部は本体110の外部に配置されることができる。このとき、中間領域Pc'は本体110の内部に配置されることができる。
【0081】
一実施形態において、Ni、Al及びCuを含む領域141''は、Ni-Al-Cu合金からなることができる。
図8を参照すると、Ni、Al及びCuを含む領域は、Ni-Al-Cu合金からなる1つの層に配置されることができる。但し、内部電極に隣接する領域と外部電極に隣接する領域のNi、Al及びCuの含有量が同じである必要はなく、Ni、Al及びCuを含む領域141''は、内部電極の端部で外部電極方向にNi含有量が減少し、Cu含有量は増加する濃度勾配を有することができ、Ni、Al及びCuを含む領域141''の第2方向の中央部でAl含有量が最も高いことができる。
【0082】
一方、Ni、Al及びCuを含む領域141、142に含まれた元素の分析は、本体110の第3方向の中央を通る第1方向及び第2方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)及び分散型分光分析法(EDS)を利用して測定することができる。
【0083】
また、
図7を参照すると、内部電極121の端部から下地電極層の内部までのラインL1に沿ってラインプロファイルを行い、Al、Ni及びCuの含有量の変化を分析することができる。
【0084】
具体的な例を挙げると、積層型電子部品100を第3方向の中央から第1方向及び第2方向に切断した断面を2万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしてイメージを得た後、Al、Ni及びCuに対するラインプロファイルを実行することができる。このとき、得られたラインプロファイルグラフにおいて、L1に沿ってNi含有量がほぼ一定してから減少し始める部分を内部電極121、122とNi、Al及びCuを含む領域141、142の境界とすることができ、Cu含有量が増加してからほぼ一定に収束し始める部分をNi、Al及びCuを含む領域141、142と下地電極層131a、132aの境界とすることができる。また、L1に沿ってAl含有量が増加し始める部分からAl含有量の最高点を経てAl含有量が減少してから収束する部分までをNi、Al及びCuを含む領域141、142と見なすことができる。
【0085】
外部電極131、132は本体110上に配置されることができる。
【0086】
図2に示されたように、外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4上にそれぞれ配置されて、Ni、Al及びCuを含む領域141、142を介して第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。
【0087】
外部電極131、132は、Al及びCuを含むことができる。外部電極131、132がAl及びCuを含むことにより、外部電極131、132の形成時にNi、Al及びCuを含む領域141、142を容易に形成することができる。
【0088】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0089】
外部電極131、132は、本体110上に配置される下地電極層131a、132aを含むことができる。
【0090】
図6を参照すると、一実施形態において、下地電極層131a、132aは、Al(M2)、Cu(M1)、及びガラス(G)を含むことができる。すなわち、下地電極層131a、132aは、Al、Cu及びガラスを含むペーストを塗布した後、熱処理によって形成される焼成型電極であることができる。
【0091】
従来には、一般的にCu及びガラスを含むペーストを用いて焼成型電極を形成し、ペーストに含まれるガラスは580℃~630℃の融点を有している。本体にCu及びガラスを含むペーストを塗布し、650~900℃の熱処理工程である焼成工程を行うと、焼成工程中にCu粒子のネッキング(necking)が先に起こり、ガラスは溶融して空隙を満たすようになる。しかし、ガラスは非導電体であり、Cu粒子のみでは内部電極と外部電極との間の空隙を十分に埋めにくくて、内部電極と外部電極との間の接触性が低下するという問題点があった。ここで、Cu粒子のネッキング(necking)とは、Cu粒子とCu粒子が接触部の拡散によって1つの粒子で連結される現象を意味することができる。
【0092】
一方、本発明の一実施形態に係ると、下地電極層131a、132aがCu及びガラスの他にAlをさらに含むことができる。Alの融点は、約660℃で一般的な焼成電極の焼成温度よりも低く、ガラスと類似した融点を有しているため、焼成工程中にAl粒子は溶融して内部電極と外部電極との間の空隙を容易に満たすことができる。また、AlはNi及びCuと安定して合金を形成することができるため、内部電極と下地電極層との間の導電性物質の濡れ性(wettability)を向上させて、下地電極層131a、132aを形成する際に下地電極層131a、132aと内部電極121、122との間の連結性を向上させることが容易である。また、下地電極層131a、132aがCu及びガラスの他にAlをさらに含むことにより、Alが焼成工程中のガラスの役割を一部代替することができるため、ガラス含有量を下げることができ、これにより等価直列抵抗(ESR)を下げることができる。
【0093】
下地電極層形成用ペーストに含まれたAlは、パウダー(powder)形態で含まれることができ、焼成工程中に約660℃以上でAl及びガラスが溶融し、溶融したAlの一部は、界面エネルギーを減らすために内部電極が凹んだ溝部G1、G2に浸透して入り、Niと合金を形成することで強固な金属性結合を有したNi、Al及びCuを含む領域141、142を形成することができる。さらに、溶融したAlの一部はネッキング(necking)されたCu粒子間の空隙に浸透することができ、Cuと接する部分はCuと合金を形成して、下地電極層が高い緻密度を有するようにすることができる。
【0094】
下地電極層形成用ペーストに含まれたAl及びCuの具体的な例を挙げると、Alは粒径が50~30000nmのAlパウダーを用いることができ、Cuは粒径が50~30000nmのCuパウダーを用いることができる。
【0095】
一実施形態において、下地電極層131a、132aは、内部電極121、122の間に配置された誘電体層111の端部の少なくとも一部と接するように配置されることができる。さらに、下地電極層131a、132aに含まれたAl、Cu及びガラスのうち1つ以上は、内部電極121、122の間に配置された誘電体層111の端部の少なくとも一部と接するように配置されることができる。また、下地電極層131a、132aは、Ni、Al及びCuを含む領域141、142を覆うように配置されることができる。
【0096】
一実施形態において、下地電極層131a、132aに含まれたAlの少なくとも一部は、Cuと合金を成してAl-Cu合金で配置されることができる。
図6を参照すると、Al-Cu合金(M3)は、下地電極層131aに含まれたAl(M2)の少なくとも一部を囲む形態で配置されることができる。また、Cu(M1)は、Al-Cu合金(M3)の少なくとも一部を囲む形態で配置されることができる。このとき、Al-Cu合金(M3)は、Al(M2)に隣接する領域からCu(M1)に隣接する領域に向かうほどAl含有量は少なくなり、Cu含有量は高くなる濃度勾配を有することができる。
【0097】
図2を参照すると、外部電極131、132は、下地電極層131a、132a上に配置されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0098】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たすことができる。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0099】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0100】
外部電極131、132は、下地電極層131a、132a上に配置されるNiめっき層131b1、131b2を含み、上記下地電極層131a、132aと上記Niめっき層131b1、131b2の界面領域の少なくとも一部にはAl及びAl-Ni合金が配置されることができる。
図9を参照すると、下地電極層131aとNiめっき層131b1の界面領域に配置されたAl(Mz)は、下地電極層131aの一部及びNiめっき層131b1の一部にわたって配置されることができる。また、下地電極層131aとNiめっき層131b1の界面領域に配置されたAl(Mz)のうち、下地電極層131a側に配置された部分は、Cu(M1)と接する部分にAl-Cu合金(M3a)が配置されることができ、下地電極層131aとNiめっき層131b1の界面領域に配置されたAl(Mz)のうち、Niめっき層131b1側に配置された部分は、Niめっき層131b1と接する部分にAl-Ni合金(M3b)が配置されることができる。したがって、Al(Mz)は、Al-Cu合金(M3a)及びAl-Ni合金(M3b)を含む層M3'によって少なくとも一部が覆われるように配置されることができる。
【0101】
このとき、Niめっき層131b1上にはSnめっき層131b2がさらに配置されることができる。
【0102】
図10を参照すると、一実施形態において、外部電極131'、132'は、下地電極層131a'、132a'上に配置され、導電性粒子及び樹脂を含む導電性樹脂層131c'、132c'を含むことができる。また、外部電極131'、132'は、上記導電性樹脂層131c'、132c'上に配置されるめっき層131b'、132b'をさらに含むことができる。
【0103】
導電性樹脂層131c'、132c'に含まれる導電性粒子Mfは、特に限定する必要はなく、例えば、Cu、Ni、Sn、Pd、Pt、Au、Ag、Pb及び/又はこれを含む合金などを含むことができ、より好ましくはCu、Ag、Sn及びそれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0104】
導電性樹脂層131c'、132c'は、めっき層131b'、132b'と下地電極層131a'、132a'を電気的に連結させてくれる役割を果たし、電子部品を基板に実装する際の機械的または熱的環境で発生する引張ストレス(stress)を吸収してクラック(crack)が発生することを防止し、基板の反り衝撃から積層型電子部品を保護する役割を果たすことができる。
【0105】
導電性樹脂層131c'、132c'に含まれた樹脂Rsは、電気絶縁性を有する熱硬化性樹脂を含むことができる。
【0106】
このとき、上記熱硬化性樹脂は、例えばエポキシ樹脂であることができるが、本発明がこれに限定されるものではなく、例えばビスフェノールA樹脂、グリコールエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂またはこれらの誘導体のうち分子量が小さくて、常温で液状である樹脂であることができる。
【0107】
一実施形態において、導電性樹脂層131c'、132c'に含まれた導電性粒子MfはCu粒子であり、下地電極層131a'、132a'と導電性樹脂層131c'、132c'との界面領域の少なくとも一部には、Al及びAl-Cu合金が配置されることができる。
【0108】
図11を参照すると、下地電極層131a'に含まれたAlが導電性樹脂層131c'との界面領域に拡散し、拡散したAlの一部が導電性樹脂層131c'に含まれたCu粒子(Mf)とAl-Cu合金(M3)を形成することができる。また、Al(M2)は、Cu粒子(Mf)及び樹脂RsのうちCu粒子(Mf)との濡れ性が良好であるため、Cu粒子(Mf)側に拡散する確率が高く、下地電極層131a'内に配置されたAlと類似した形態を有して区分が難しいことがある。また、導電性樹脂層131c'に含まれたCu粒子(Mf)と下地電極層131a'に含まれたCu(M1)との境界も明確に区分し難いことがある。
【0109】
一方、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置され、上記内部電極と連結される下地電極層131a、132aを含む外部電極131、132と、を含み、上記下地電極層はAl、Cu及びガラスを含むことができる。
【0110】
上述したように、下地電極層131a、132aがCu及びガラスの他にAlをさらに含むことにより、焼成工程中にAlは溶融して内部電極と外部電極との間の空隙を容易に満たすことができ、Ni及びCuと安定して合金を形成することができるため、下地電極層131a、132aと内部電極121、122との間の連結性を向上させることができる。また、Alが焼成工程中にガラスの役割を一部代替することができるため、ガラス含有量を下げることができ、これにより等価直列抵抗(ESR)を下げることができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0112】
また、本開示において用いられた「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0113】
本開示で用いられた用語は、単に一実施形態を説明するために用いられたものであり、本開示を限定する意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0114】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a 電極層
131b、132b めっき層
131c、132c 導電性樹脂層
141、142 Ni、Al及びCuを含む領域