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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025074059
(43)【公開日】2025-05-13
(54)【発明の名称】多相インバータ
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20250502BHJP
【FI】
H02P27/06
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024188226
(22)【出願日】2024-10-25
(31)【優先権主張番号】18/496,587
(32)【優先日】2023-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】599158797
【氏名又は名称】インフィニオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Infineon Technologies AG
【住所又は居所原語表記】Am Campeon 1-15, 85579 Neubiberg, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100210099
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 太介
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゴ ダ シルヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ラドヴァン ヴレティック
(72)【発明者】
【氏名】古川 昌博
(72)【発明者】
【氏名】小谷 和也
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 郁央
(72)【発明者】
【氏名】平野 晴洋
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505CC04
5H505CC09
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HA09
5H505HB01
5H505LL22
5H505LL41
5H505MM12
(57)【要約】
【課題】本発明は多相インバータを提供する。
【解決手段】一実施形態によれば、回路は、中性ノードに対する正電源電圧および負電源電圧を監視するように構成されたバッテリ監視回路と、基準電圧ベクトルを表す複数の変調相電圧を提供するように構成されたインバータと、基準電圧ベクトルに基づいてインバータ用の変調駆動信号を生成するように構成された空間ベクトル変調器と、を含み、変調駆動信号のデューティサイクルは、監視される正電源電圧および監視される負電源電圧に依存する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性ノードに対する正電源電圧および負電源電圧を監視するように構成されたバッテリ監視回路と、
基準電圧ベクトルを表す複数の変調相電圧を提供するように構成されたインバータと、
前記基準電圧ベクトルに基づいて前記インバータ用の変調駆動信号を生成するように構成された空間ベクトル変調器であって、前記変調駆動信号のデューティサイクルが、前記監視される正電源電圧および前記監視される負電源電圧に依存する空間ベクトル変調器と、
を備える回路。
【請求項2】
前記回路は、前記中性ノードに接続され、前記正電源電圧および前記負電源電圧を提供するように構成された第1のバッテリおよび第2のバッテリをさらに備える、
請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記インバータは、アクティブニュートラルポイントクランプ(ANPC)マルチレベルコンバータである、
請求項1に記載の回路。
【請求項4】
前記ANPCマルチレベルコンバータは、3相を含み、前記3相の各相は、第1の電源ノードと第2の電源ノードとの間に結合され、前記正電源電圧と前記負電源電圧との間の差に対応するDC電源電圧を受け取るように構成され、
前記3相の各相は、前記ANPCマルチレベルコンバータのスイッチング状態に応じて、前記正電源電圧、前記負電源電圧または中性点電圧のいずれかを出力することによって、3相電圧のそれぞれ1つを提供するように構成される、
請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記空間ベクトル変調器は、前記インバータが1サイクル期間内にスイッチング状態の選択可能な変調シーケンスを通過するように前記変調駆動信号を生成するように構成され、前記選択可能な変調シーケンスは、前記基準電圧ベクトルに基づいて選択されるように構成される、
請求項1に記載の回路。
【請求項6】
前記空間ベクトル変調器は、1サイクル期間内に、前記選択可能な変調シーケンスの各スイッチング状態が特定のオン時間にわたってアクティブであるように、前記変調駆動信号を生成するように構成され、
前記スイッチング状態の前記オン時間は、前記変調駆動信号の前記デューティサイクルに基づいて決定されるように構成され、
前記変調駆動信号の前記デューティサイクルは、前記監視される正電源電圧および前記監視される負電源電圧に依存するように構成される、
請求項5に記載の回路。
【請求項7】
前記選択可能な変調シーケンスは、第1の状態と第2の状態とを含み、
前記第1の状態は、前記第1の状態がアクティブであるサイクル中に前記インバータに正の平均負荷電流を生成させるように構成され、
前記第2の状態は、前記第2の状態がアクティブであるサイクル中に前記インバータに負の平均負荷電流を生成させるように構成される、
請求項5に記載の回路。
【請求項8】
前記空間ベクトル変調器は、前記正電源電圧が前記負電源電圧よりも大きい大きさを有することに応答して、前記第1の状態の累積オン時間が前記第2の状態の累積オン時間よりも大きくなるように、前記変調駆動信号の前記デューティサイクルを制御するように構成され、
前記空間ベクトル変調器は、前記正電源電圧が前記負電源電圧よりも小さい大きさを有することに応答して、前記第2の状態の前記累積オン時間が前記第1の状態の前記累積オン時間よりも大きくなるように、前記変調駆動信号の前記デューティサイクルを制御するように構成される、
請求項7に記載の回路。
【請求項9】
中性ノードに対するインバータの正電源電圧および負電源電圧を監視するステップと、
空間ベクトル変調器によって、基準電圧ベクトルに基づいて前記インバータ用の変調駆動信号を生成するステップであって、前記変調駆動信号のデューティサイクルは、前記監視される正電源電圧および前記監視される負電源電圧に依存するステップと、
前記変調駆動信号を前記インバータに提供するステップであって、前記インバータは、前記変調駆動信号に応答して前記基準電圧ベクトルを表す複数の変調相電圧を提供するように構成されるステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記インバータは、アクティブニュートラルポイントクランプ(ANPC)マルチレベルコンバータである、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、
前記中性ノードに接続された第1のバッテリによって前記正電源電圧を提供するステップと、
前記中性ノードに接続された第2のバッテリによって前記負電源電圧を提供するステップと、
をさらに含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
中性ノードに接続され、正電源電圧を供給するように構成された第1の電源と、
前記中性ノードに接続され、負電源電圧を供給するように構成された第2の電源と、
前記正電源電圧および前記負電源電圧を監視するように構成されたバッテリ監視回路と、
前記正電源電圧および前記負電源電圧によって供給されるインバータと、
前記監視された正電源電圧および前記負電源電圧に基づいて前記インバータ用の変調駆動信号を生成するように構成された空間ベクトル変調器であって、前記生成された変調駆動信号は、前記正電源電圧と前記負電源電圧とを実質的に平衡化させたままにするように構成される空間ベクトル変調器と、
を備える3レベルインバータシステム。
【請求項13】
前記インバータは、基準電圧ベクトルを表す複数の変調相電圧を提供するように構成され、
前記空間ベクトル変調器は、前記基準電圧ベクトルに基づいて前記インバータ用の前記変調駆動信号を生成するように構成され、
前記変調駆動信号のデューティサイクルは、前記監視される正電源電圧および前記監視される負電源電圧に依存する、
請求項12に記載の3レベルインバータシステム。
【請求項14】
前記インバータは、アクティブニュートラルポイントクランプ(ANPC)3レベルコンバータである、
請求項12に記載の3レベルインバータシステム。
【請求項15】
前記ANPC 3レベルコンバータは、3相を含み、前記3相の各相は、第1の電源ノードと第2の電源ノードとの間に結合され、前記正電源電圧と前記負電源電圧との差に対応するDC電源電圧を受け取るように構成され、
前記3相の各相は、前記ANPC 3レベルコンバータのスイッチング状態に応答して、前記正電源電圧、前記負電源電圧または中性点電圧のいずれかを出力することによって、3相電圧のそれぞれ1つを提供するように構成される、
請求項14に記載の3レベルインバータシステム。
【請求項16】
前記空間ベクトル変調器は、前記インバータが1サイクル期間内にスイッチング状態の選択可能な変調シーケンスを通過するように、前記変調駆動信号を生成するように構成され、
前記選択可能な変調シーケンスは、基準電圧ベクトルに基づいて選択されるように構成される、
請求項12に記載の3レベルインバータシステム。
【請求項17】
前記空間ベクトル変調器は、前記インバータが1サイクル期間内にスイッチング状態の選択された変調シーケンスを通過するように、前記変調駆動信号を生成するように構成され、
前記選択可能な変調シーケンスは、前記正電源電圧と前記負電源電圧とが実質的に平衡化されたままであるように、基準電圧ベクトルに基づいて決定されるように構成される、
請求項12に記載の3レベルインバータシステム。
【請求項18】
前記空間ベクトル変調器は、1サイクル期間内に、選択可能な変調シーケンスの各スイッチング状態が特定のオン時間にわたってアクティブであるように、前記変調駆動信号を生成するように構成され、
前記スイッチング状態の前記オン時間は、前記変調駆動信号のデューティサイクルに基づいて決定されるように構成され、
前記変調駆動信号の前記デューティサイクルは、前記監視される正電源電圧および前記監視される負電源電圧に依存する、
請求項12に記載の3レベルインバータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子回路の分野に関し、特に多相インバータに関する。
【背景技術】
【0002】
多相インバータは、同期または非同期モータを駆動するために一般的に使用される。このようなモータは、インバータ給電同期/非同期モータとも呼ばれる。(実際には、励磁場が永久磁石によって生成される同期モータである)ブラシレスDCモータもまた、インバータを使用して駆動され得る。多相インバータは3相を有することが多いが、2つ、4つまたはそれ以上の相を有することもできる。
【0003】
インバータの1つの一般的なタイプは、いわゆるアクティブニュートラルポイントクランプ(ANPC)インバータである。ANPCインバータは、3つ以上の異なる電圧レベルをとることができる変調相電圧を生成することができるマルチレベルインバータである。例えば、3レベルインバータでは、各相電圧は、正電源電圧の電圧レベル、0(中性点の電圧レベル)または負電源電圧の電圧レベルのいずれかをとることができる。バッテリ供給インバータの場合、中性点は、通常、容量性分圧器を使用して(しばしばDCバス電圧と呼ばれる)バッテリ電圧UDCを等しい電圧に分割することによって生成/定義される。このようにして、対称バイポーラ電源が提供され、正電源電圧はUDC/2であり、中性点の電圧は定義により0ボルトであり、負電源電圧は-UDC/2である。
【0004】
いくつかの用途では、2つのバッテリ(またはバッテリモジュール)が直列に接続され、バッテリが接続される共通回路ノードが中性点として使用される。このような状況では、2つのバッテリの充電状態(SoC)が異なると、バイポーラ電源が非対称になり得る。同時に、DCバス電圧UDCは、2つのバッテリのバッテリ電圧の合計である。
【0005】
インバータは、通常、インバータのトランジスタをアクティブ化(スイッチオン)および停止(スイッチオフ)するために使用される複数のパルス幅変調(PWM)信号によって駆動される。さまざまな適切なPWM方式は、このように知られている。しかしながら、中性点で接続された2つのバッテリ(またはバッテリモジュール)で構成される非対称電源の場合、既知のPWMスイッチング方式は、SoCが低いバッテリの方が、SoCが高いバッテリよりも多く放電され、したがってバイポーラ電源の非対称性を悪化させることがある。
【0006】
さらに、PWM信号を生成するために使用される既知のアルゴリズムは、電圧電源が対称的であることを想定しており、非対称電源による動作は系統誤差を導入することになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
回路であって、1つの実施形態により、中性ノードに対する正電源電圧および負電源電圧を監視するように構成されたバッテリ監視回路と、基準電圧ベクトルを表す複数の変調相電圧を提供するように構成されたインバータと、基準電圧ベクトルに基づいてインバータ用の変調駆動信号を生成するように構成された空間ベクトル変調器と、を含む、回路が本明細書に記載される。駆動信号は、監視される正電源電圧および監視される負電源電圧に依存するデューティサイクルを有する。
【0008】
さらに、対応する方法が本明細書に記載されている。1つの実施形態によれば、本方法は、中性ノードに対するインバータの正および負の電源電圧を監視するステップと、空間ベクトル変調器によって、基準電圧ベクトルに基づいてインバータ用の変調駆動信号を生成するステップと、を含む。変調駆動信号のデューティサイクルは、監視される正電源電圧および監視される負電源電圧に応じて制御される。変調された駆動信号はインバータに提供され、したがって基準電圧ベクトルを表す複数の変調相電圧をインバータに提供させる。
【0009】
さらに、本明細書では、3レベルインバータシステムについて記載される。1つの実施形態によれば、システムは、中性ノードに接続され、正および負の電源電圧を提供する第1の電源および第2の電源を備える。システムは、正電源電圧および負電源電圧を監視するように構成されたバッテリ監視回路と、正電源電圧および負電源電圧によって供給されるインバータと、をさらに備える。空間ベクトル変調器は、正電源電圧と負電源電圧とが再平衡化されるか、または実質的に平衡化されたままであるように、インバータ用の変調駆動信号を生成するように構成される。
【0010】
本発明は、以下の図面および説明を参照してよりよく理解することができる。図中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本発明の原理を説明することに重点がおかれている。さらに、図では、同様の参照番号は、対応する同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】空間ベクトル変調を使用して3相同期モータを制御するための制御ループの1つの例を示すブロック図である。
図2】空間ベクトル変調に使用され得るPWM変調器およびANPCインバータを示す例示的なブロック図である。
図3】3相を有する3レベルANPCインバータの1つの例を示す図である。
図4】(a)~(d)において、各インバータ相の4つの異なるスイッチング状態を視覚化する図である。
図5】任意の電圧ベクトルを生成するために使用することができるインバータ状態の複数のシーケンスを含む表である。
図6】インバータの対称電源について図5の表に列挙されたインバータ状態によって達成され得る異なる電圧ベクトル(空間ベクトル)を視覚化する図である。
図7】特定の変調シーケンスを視覚化する図である。
図8】1つの実施形態によって修正された図7の変調シーケンスを視覚化する図である。
図9】非対称電源によって供給されるインバータについて、図6の図がどのように歪んでいるかを視覚化する図である。
図10】変調シーケンスおよび決定されたシーケンスのインバータ状態に関連する時間を決定するための図6の図の六角形の分解を示す図である。
図11】変調シーケンスおよび決定されたシーケンスのインバータ状態に関連する時間を決定するための図6の図の六角形の分解を示す別の図である。
図12】変調シーケンスおよび決定されたシーケンスのインバータ状態に関連する時間を決定するための図6の図の六角形の分解を示す別の図である。
図13図11の電圧ベクトルに対応する変調シーケンスを視覚化する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のいくつかの実施形態は、非対称電源での動作に適した方法でインバータを動作させる方法に関する。
【0013】
図1は、多相電圧が供給される負荷の一例として使用される3相同期モータ100を制御するための制御ループの1つの例を示すブロック図であり、PWM変調器およびANPCインバータの例をより詳細に論じる前に、図1を参照して、空間ベクトル変調の適用例について記載する。
【0014】
モータ100は、空間ベクトル変調器を用いて制御されるインバータを用いて駆動される。変調器およびインバータを含む機能ブロックは、図1において200でラベル付けされている。この例では、空間ベクトル変調器は、振幅VREFおよび角度θ(基準空間ベクトルVREF の極座標)によって表すことができる基準空間ベクトルを受け取る。インバータは、モータ100に供給される変調相電圧V、V、Vを生成する。モータ100の角速度を制御するために、結果として生じる3つの相電流i、i、iが測定され得る。いくつかの用途では、ロータの角度位置θは、例えばロータリエンコーダなどを使用して測定される。
【0015】
この例では、相電流i、i、iの測定値をクラーク-パーク変換(クラーク変換およびその後のパーク変換)と一般に呼ばれる座標変換に供する。クラーク変換およびパーク変換は、1つの変換ステップに組み合わせることができ、対応する機能ブロックは、図1において220でラベル付けされている。クラークパーク変換220は、直交電流信号iおよびiを生成する。対応するデカルト座標系の軸はdおよびqとラベル付けされることが多く、したがって、パーク変換はd/q変換とも呼ばれる。電流信号iおよびiはコントローラ230に供給され、コントローラは対応する設定値Vd、SETおよびVq、SETを受信する。
【0016】
コントローラ230は、電流信号i、iおよび設定値Vd、SET、Vq、SETに基づいて、出力信号V、Vを生成する。コントローラ出力信号VおよびVは逆パーク変換に供され、対応する電圧信号VαおよびVβ図1には示さず)が得られ、添字αおよびβは、回転基準フレームにおけるデカルト座標系の軸を表す。デカルト座標系α/βにおける前述の基準空間ベクトルVREF を表す電圧信号VαおよびVβは、続いて、空間ベクトル変調器の入力パラメータである振幅VREFおよび角度θを得るために極座標に変換される。逆パーク変換および極座標への座標変換を含む関数ブロックは、図1において符号210でラベル付けされている。いくつかの実装形態では、機能ブロック210および220は、ロータの測定された角度位置θを入力パラメータとして使用してもよい。
【0017】
図1の制御ループによって示される概念は、一般にベクトル制御またはフィールド指向制御(FOC)として知られているので、本明細書ではこれ以上詳細に論じない。しかしながら、さらなる論議のために、機能ブロック200、特にインバータは、一般性を失うことなく、0ボルトとして定義され得るいわゆる中性ノードn(中性点)の基準電圧に対して、バイポーラ電圧電源によって、例えば正電源電圧+Uおよび負電源電圧-Uによって供給されることが重要である。バイポーラ電圧電源は、中性ノードnにおいて直列に接続された2つのバッテリ(または複数のバッテリを含む2つのバッテリモジュール)によって提供される。2つのバッテリ(図1では「バッテリ1」および「バッテリ2」とラベル付けされている)の充電状態(SoC)は必ずしも同一ではないため、バイポーラ電圧電源は、中性ノードnの電位に対して非対称であり得る(すなわち、U≠Uである)。
【0018】
図2は、機能ブロック200をより詳細に示している。したがって、機能ブロック200は、インバータ202と、インバータ動作を制御するために通常PWMスイッチング方式を使用する空間ベクトル変調器201と、を含む。図2に示すように、インバータ202は、空間ベクトル変調器201から、インバータ202内に含まれるトランジスタの制御電極に供給される複数のゲート信号を受け取り、インバータ202は、3相モータ100のための対応する変調相電圧V、V、Vを生成する。いくつかの用途では、4つ以上の相が使用されてもよいことに留意されたい。前述したように、インバータ202はバイポーラ電源(0Vとして定義され得る中性点電圧に対する電圧+Uおよび-U)によって供給され、電源電圧+Uおよび-Uは、バッテリの異なる充電状態に起因して中性点に対して非対称であり得る。パラメータρは、バイポーラ電源の非対称性の程度を定量化するために使用されてもよい。この例では、パラメータρは、比U/UDCとして定義され、UDCは、電源電圧U+Uの合計を表す。したがって、電源電圧は、U=ρ・UDCおよびU=(1-ρ)・UDCとして表すこともでき、パラメータρは(理論的に)0と1との間で変化し得る(ρ=0はU=0を示し、ρ=1はU=0を示す)。したがって、ρは、電源の対称性(または対称性/非対称性の欠如)を定量的に記述する対称性パラメータと呼ばれる。
【0019】
図2に示す回路は、バッテリの中性ノードnに対する正電源電圧Uおよび負電源電圧Uを監視するように構成されたバッテリ監視回路203をさらに含む。バッテリ監視回路203は、バッテリ電圧UおよびUを表す任意の信号またはパラメータ、例えば、上記で記載した合計U+Uおよびパラメータρを表す測定されたUDCを提供し得る。実際の実装に応じて、他の信号またはパラメータが使用されてもよい。パラメータUDCおよびρは、例えばCAN(コントローラエリアネットワーク(Controller Area Network))などのデジタルバスまたは任意の他の適切な通信リンクを使用して、任意の既知の方法で空間ベクトル変調器201に伝えられてもよい。別の例では、UおよびUを表すアナログ電圧信号が、空間ベクトル変調器201に供給されてもよい。
【0020】
さらに、図2の回路は、基準電圧ベクトルVREF (極座標における振幅VREFおよび角度θ)を表す複数の変調相電圧を提供するように構成されたインバータ202を含む。空間ベクトル変調器201は、基準電圧ベクトルVREF に基づいてインバータ202用の変調駆動信号を生成するように構成される。本明細書に記載の例では、PMWスイッチング方式が使用される。インバータ202が金属-オン-半導体(MOS)電界効果トランジスタ(MOSFET)で構成される場合、上述の駆動信号は、MOSFETのゲートに供給されるゲート電圧である。各駆動信号(ゲート信号)は、デューティサイクルに応じて変調される。本明細書に記載の例では、変調駆動信号のデューティサイクルは、監視される正電源電圧Uおよび監視される負電源電圧-Uに依存する。図2に示す例では、変調駆動信号のデューティサイクルは、総DC電圧UDCおよびパラメータρ(これらは共に明確にUおよび-Uを表し、したがって電圧Uおよび-Uと同じ情報を伝達する)に依存する。
【0021】
図3は、インバータ202の1つの例示的な実施形態を示す。図3によれば、インバータは3つの相から構成され、各相はインバータの対応する分岐によって実装される。上述したように、他の実施形態では、インバータは4つ以上の相を有してもよい。「バッテリ1」および「バッテリ2」とラベル付けされたバッテリは、図示の例では電圧源によって表され、電圧源は、中性点nで電気的に接続されている。
【0022】
図3のインバータの3つの分岐の各々1つは、
【数1】
で示される6つのMOSFETを備え、上付き文字p(p=0、1、2)は、相/分岐を示し、下付き文字i(i=0、...5)は、特定の相/分岐の特定のトランジスタを示す。各分岐pにおいて、トランジスタ
【数2】

【数3】

【数4】
、および
【数5】
は、(電圧Uが提供される)正電源ノードnと(電圧-Uが提供される)負電源ノードnとの間にチェーン(直列回路)を形成する。この文脈において、「トランジスタのチェーン」または2つ以上のトランジスタの直列回路は、トランジスタの主電流経路(ドレイン-ソース電流経路)が直列に(次々に)電気的に接続されることを意味する。すなわち、第1の分岐p=0の場合、トランジスタ
【数6】
は正電源ノードnと回路ノード
【数7】
との間に接続され、トランジスタ
【数8】
は回路ノード
【数9】
と相出力ノード
【数10】
との間に接続され、トランジスタ
【数11】
は相出力ノード
【数12】
と回路ノード
【数13】
との間に接続され、トランジスタ
【数14】
は回路ノード
【数15】
と負電源ノードnとの間に接続される。回路ノード
【数16】

【数17】
との間には、2つのさらなるトランジスタ
【数18】
および
【数19】
の直列回路が、トランジスタ
【数20】
および
【数21】
の直列回路に並列に接続され、トランジスタ
【数22】

【数23】
との間の共通回路ノードは、中性ノードnに接続される。インバータの他の分岐(p=1およびp=2)は、第1の分岐(p=0)と同様に構成される。
【0023】
本明細書に記載の例では、インバータの各相pは、P型状態、U型状態、L型状態およびN型状態と呼ばれる4つの状態のうちの1つをとることができる。これらの4つの状態は、図4(a)~(d)に示されており、図示する各状態では、グレーアウトされて示されているトランジスタは非アクティブ(オフ)であり、他のトランジスタはアクティブ(オン)である。
【0024】
P型状態では、トランジスタ
【数24】

【数25】
および
【数26】
はオンに切り替えられ、他のトランジスタ
【数27】

【数28】
および
【数29】
はオフに切り替えられる。結果として、出力ノード
【数30】
における相電圧は、導電性トランジスタにわたる電圧降下を無視した場合に正電源電圧Uに等しい。この状況を図4(a)に示す。
【0025】
U型状態では、トランジスタ
【数31】

【数32】
および
【数33】
はオンに切り替えられ、他のトランジスタ
【数34】

【数35】
および
【数36】
はオフに切り替えられる。その結果、出力ノード
【数37】
の相電圧
【数38】
は、中性点電圧(0V)に等しくなる。この状況は、図4(b)によって表され、これは、出力ノード
【数39】
がトランジスタ
【数40】
および
【数41】
を介して中性ノードnに能動的に接続されていることを示す。
【0026】
L型状態では、トランジスタ
【数42】

【数43】
および
【数44】
はオンに切り替えられ、他のトランジスタ
【数45】

【数46】
および
【数47】
はオフに切り替えられる。したがって、L型状態は、U型状態と相補的である。ここでも、出力ノード
【数48】
における相電圧
【数49】
は、中性点電圧(0V)に等しい。この状況は、図4(c)によって表され、これは、出力ノード
【数50】
がトランジスタ
【数51】
および
【数52】
を介して中性ノードnに能動的に接続されていることを示す。
【0027】
N型状態では、トランジスタ
【数53】

【数54】
および
【数55】
はオンに切り替えられ、他のトランジスタ
【数56】

【数57】
および
【数58】
はオフに切り替えられる。したがって、N型状態はP型状態と相補的である。その結果、出力ノード
【数59】
の相電圧は、負電源電圧-Uに等しい。この状況を図4(d)に表す。
【0028】
上記の論議では、アクティブトランジスタにわたる電圧降下は無視できると仮定される。インバータの特定の分岐pの状態P、U、LおよびNについて、図4を参照して論じてきた。同様に、3相インバータの状態は、LNN、LUN、PUN、PUU、PUNなどの3部分によって表すことができる。本明細書に記載の例では、インバータの特定の分岐pにおける唯一の許容可能な状態遷移は、
【数60】

【数61】
および
【数62】
であるが、P型状態とU型状態との間の遷移は、N型状態とL型状態との間の遷移と同様に回避される。したがって、状態LUNは、一例を挙げると、相p=0がL型状態を有し、相p=1がU型状態を有し、相p=2がN型状態を有することを意味する。4相インバータの場合、LUNPなどの4倍、n相インバータ(整数n>1)の場合はn倍で表現される。
【0029】
特定の出力を生成するために、空間ベクトル変調器201(図2を参照されたい)は、「変調シーケンス」と呼ばれる特定の一連の状態を繰り返し生成し、各状態は特定の時間の間アクティブである。図5は、72個の異なる変調シーケンスを有する表を示し、表の各行は、インバータのスイッチング状態の特定のシーケンスを表す。この説明では、変調シーケンスは、ο、μ、ν、ο、μ、νと表され、スイッチング状態ο、μなどのそれぞれは、LNN、LUNなどのトリペルを表す。表に含まれる特定のシーケンスを識別する変数Σ、σおよび
【数63】
は、後で論じられる。
【0030】
インバータ202(図2を参照されたい)の出力は、基準電圧VREFおよび関連角度θによって決定される。空間ベクトル変調器201は、インバータ202(図3を参照されたい)がTPWMとして示される1サイクル期間内にインバータ状態(インバータのスイッチング状態、図5の表を参照されたい)の所望のシーケンスを通過するように、インバータ202内に含まれるトランジスタ用の変調駆動信号(例えば、ゲート信号)を生成するように構成される。所望の変調シーケンスは、空間ベクトル変調器201によって受信される基準電圧ベクトル(大きさVREFおよび角度θ)に基づく。
【0031】
上述した変調シーケンスの「選択」およびインバータ状態の関連するタイミングは、空間ベクトル変調器201によって制御される。したがって、空間ベクトル変調器201は、選択された変調シーケンスの各インバータ状態が1サイクル期間内に特定のオン時間にわたってアクティブになるように、変調駆動信号を生成するように構成される。本明細書に記載の実施形態では、個々のインバータ状態(図5ではο、μ、ν、ο、μおよびνと示される)のオン時間は、空間ベクトル変調器201によって出力され、インバータ202の個々の相/分岐内に含まれるトランジスタに供給される駆動信号のデューティサイクルによって決定される。
【0032】
図6は、図5の表に列挙されたインバータ状態によって生成され得る異なる電圧ベクトル(デカルト座標における空間ベクトル)を視覚化する。図6は、インバータ(すなわち、各インバータ状態のインバータ状態)によって出力された3つの電圧V
【数64】
、V
【数65】
、およびV
【数66】
をデカルト座標における対応する空間ベクトルにマッピングするクラーク変換の視覚化とみなすこともできる。この論議の点で、図6の図が、インバータの電源が対称である状況を表していることを理解することが重要である。すなわち、電源電圧UおよびUは等しく、対称性パラメータρは0.5に等しい。
【0033】
インバータ出力電圧(相電圧)の任意の3つ(V、V、V)は、以下の変換(クラーク変換):
【数67】
に従ってデカルト座標系に変換することができる3×1ベクトルとみなされ得る。
しかしながら、図6に示すようなx座標およびy座標は正規化されており、そのようなx軸およびy軸はボルト単位ではなく無次元であることに留意されたい。
【0034】
デカルト座標において、図3に示すような3レベル3相インバータによって生成することができる状態はすべて、内側(より小さい)六角形の頂点上、外側(より大きい)六角形の頂点上、または外側六角形の縁の中心点上のいずれかに位置する(すなわち、2つの隣接する頂点の間の中央にある)。合計で19個の異なる電圧ベクトル、すなわち、中心にゼロベクトル、内側六角形の頂点に端点を有する6つのベクトル、外側六角形の頂点に端点を有する6つのベクトル、および外側六角形の縁に端点を有する6つのベクトルを生成することができる。異なるインバータ状態がデカルト座標において同じベクトルをもたらし得ることは、図6から明らかである。例えば、インバータ状態PPP、NNN、UUU、LLL、LUU、ULU、UUL、ULL、LULおよびLLUはすべて0ベクトルをもたらす。同様に、インバータ状態LNN、UNN、PLL、PUL、PLUおよびPUUはすべて、内側六角形の右端の頂点を示すベクトルをもたらす。6つの状態PPN、NPN、NPP、NNP、PNPおよびPNNのみが、図6に示す外側六角形の6つの頂点を示す6つのベクトルを明確に表す。図6の図のx軸およびy軸のスケールは正規化されており、本論議にとって重要ではないことに留意されたい。図6に示す各状態(したがって、各頂点)は、その出力においてインバータによって生成することができる電圧(デカルト座標で、または大きさおよび角度として表される)を表す。
【0035】
図6は、例示的な基準電圧ベクトル(大きさVREF、角度θ)を含む。この基準電圧は、基準ベクトルの終点を囲む三角形の隣接する頂点に関連するインバータ状態を含む変調シーケンスによって表され得る。図6の例では、基準ベクトルは、変調シーケンスPUU、LUU、LUN、LNN、LUN、LUUで表されてもよい。このシーケンスは図5の表には含まれておらず、図5の表はむしろ一例であり、変調シーケンスを選択する唯一の選択肢ではないことを示している。この例では、空間ベクトル変調器201は、時間T、TおよびTを決定し、時間Tは、状態PUUおよびLNN(両方とも同じ空間ベクトル/頂点にマッピングされるという意味で同等である)に関連付けられ、時間Tは、状態LUU(前述の変調シーケンスで2回発生する)に関連付けられ、時間Tは、状態LUN(これも同様に2回発生する)に関連付けられる。
【0036】
図7に、上述の変調シーケンスのタイミングが視覚化されている。状態LUUの2つの発生はそれぞれT/2の持続時間を有し、状態LUNの2つの発生はそれぞれT/2の持続時間を有し、状態LNNはT/2の持続時間を有し、等価状態PUUは(時間的に)2つの部分に分割される。第1の部分は配列の最初にあり、第2の部分は配列の最後にあり、各部分はT/4の長さを有する。T+T+Tの合計は、PWMサイクル時間TPWMに等しい。時間T、T、Tは、インバータ内に含まれるトランジスタのスイッチング動作を制御する駆動信号のデューティサイクルを明確に決定する。
【0037】
図6から分かるように、特定の変調シーケンスPUU、LUU、LUN、LNN、LUN、LUU、(PUU)は、純粋に基準電圧ベクトルVREF に基づいて選択することができる。インバータ状態の適切なシーケンスを選択するために、空間ベクトル変調器は、図6の六角形を構成する三角形の3つの隣接する頂点を決定するだけでよい。状態に関連する時間T、T、Tはまた、純粋に基準電圧ベクトルVREF および選択されたシーケンス内に含まれるインバータ状態に基づいて計算される。時間T、T、Tを計算するためのアルゴリズムは、そのようなものとして知られているので、本明細書では詳細に論じない。基本的に、時間は、選択されたシーケンスによって表される3つの頂点によって表される電圧を使用して基準ベクトルVREF の重心座標を計算することによって取得することができる。述べられたように、PUUおよびLNNは、同じ(第1の)頂点を表し、LUUおよびLUNは、現在考慮されている変調シーケンスに関連する第2および第3の頂点を表す。
【0038】
基準ベクトルVREF は、唯一の(一定でない)入力パラメータであり、これは、変調シーケンスの選択、および選択されたシーケンスのインバータ状態に関連する時間の計算に影響を及ぼす。上述したように、図6および上記の説明は、通常は、DCバス電圧を1対1の容量分圧器で分圧して中性点電圧を得る従来のシステム内でよくあるようなインバータの対称電源の想定に基づく。しかしながら、インバータ202の電源が非対称(すなわち、ρ≠0.5)である場合、状況はやや複雑である。
【0039】
第1の手法では、変調シーケンスの選択は、(電源が対称であるかのように)上記で説明したように行われる。時間T、TおよびTも、(例えば、重心法を使用して)上記で説明したように決定することができる。しかしながら、図7の例において状態PUUおよびLNNに使用される時間Tは、ここでは、電源電圧UおよびUに応じて、例えば対称性パラメータρに応じて修正される。一例を図8に示す。
【0040】
図8は、実際に測定された電源の非対称性に依存する上述の変調シーケンスの修正されたタイミングを示す図である。図8は、時間Tが状態PUUの場合はTAPに、状態LNNの場合はTANに変更されていることを除いて、図7とほぼ同じであり、TAN=T+ΔTおよびTAP=T-ΔTであり、そのため、総PWMサイクル時間は変化しない。この修正は、状態PUUおよびLNNが同じ電圧ベクトル(図6を参照されたい。PUUおよびLNNは、同じ頂点に関連付けられている)を表すので、1サイクルにわたって平均化されたときにインバータの出力電圧に影響を及ぼさない。しかしながら、図3および図4から分かるように、状態PUUは負荷を第1のバッテリに結合し(Uを提供し)、その一方で状態LNNは負荷を第2のバッテリに結合し(-Uを提供し)、両方の状態は同じ頂点を表す。したがって、正のΔTは、状態LNNの時間を増加させ、状態PUUの時間を減少させるが、それぞれの頂点の合計時間は変化しない。
【0041】
したがって、第1のバッテリのSoCが第2のバッテリのSoCよりも低い状況(すなわち、ρ>0.5、U>U)では、ΔTは、正の時間値に設定されて、第1のバッテリをより短い時間(そして第2のバッテリをより長い時間)負荷に結合してもよい。逆に、第1のバッテリのSoCが第2のバッテリのSoCよりも高い状況(すなわち、ρ<0.5、U<U)では、ΔTは負の時間値に設定されて、第1のバッテリをより長い時間(および第2のバッテリをより短い時間)負荷に結合してもよい。時間差ΔTは、ρのその理想値0.5からの偏差がそれぞれ増加または減少するとき、より高い正の値または負の値に増加され得る。両方のバッテリのSoCがほぼ等しい場合(例えば、ρ∈[0.5-ε、0.5+ε]であり、εは小さい正の値である)、ΔTはゼロに設定され得る。
【0042】
上述した概念は、図7および図8の例示的な変調シーケンスを参照して説明されており、これは、その終点が内側六角形の最初の三角形/セグメント(θ=0°からθ=60°の間)にある基準ベクトルVREF に対して有効である。しかしながら、図6で分かるように、この概念は、図6の六角形を構成するすべての三角形/セグメントに適用することができる。この概念は、SoCが低いバッテリからよりも、SoCが高いバッテリからの方がより多くの電力を供給することを可能にするため、電源の対称性を安定させるのに役立つことに留意されたい。1つまたは複数の単相負荷がバッテリの1つのみから電力を供給するシステムでは、2つのバッテリによって提供されるバイポーラ電源は常に非対称になる。上記で記載したように3相負荷を動作させることは、電源を再平衡化するか、または少なくともその非対称性を低減するのに役立つ。さらに、SoCがより低いバッテリが他のバッテリよりもさらに多く放電される暴走状態を回避することができる。
【0043】
言い換えれば、空間ベクトル変調器201は、1サイクル期間TPWM内に、所望の変調シーケンスの各スイッチング状態(図5を参照されたい。状態ο、μ、ν、ο、μ、ν)が特定のオン時間(図13も参照されたい。オン時間
【数68】

【数69】

【数70】

【数71】

【数72】

【数73】
)にわたってアクティブであるように、インバータ202用の変調駆動信号を生成するように構成される。スイッチング状態の実際のオン時間は、駆動信号のデューティサイクルによって決定され、駆動信号は、空間ベクトル変調器201によって決定されたオン時間に基づいて生成される。図7および図8に示す例では、所望の変調は、第1の状態(図5を参照されたい。状態ο、μ、ν)と、第2の状態(図5を参照されたい。状態ο、μ、ν)と、を含み、第1の状態は、インバータに1サイクルTPWM中に正の平均負荷電流を生成させ(したがって、平均してより多くの負荷を第1のバッテリに結合させ)、第2の状態は、インバータに1サイクルTPWM中に負の平均負荷電流を生成させる(したがって、平均してより多くの負荷を第2のバッテリに結合させる)。本手法を使用して、空間ベクトル変調器201は、正電源電圧Uが負電源電圧-Uよりも大きい大きさを有する場合、およびその逆の場合に、第1の状態の累積オン時間が第2の状態の累積オン時間よりも大きくなるように、変調駆動信号のデューティサイクルを制御する。
【0044】
上記の例では、変調シーケンスの選択は、対称電源の想定の下で基準ベクトルVREF に基づいて行われた。すなわち、空間ベクトル変調器は基本的には、電源が対称であるかのように動作し、シーケンスのタイミングのみが図7および図8を参照して上記で説明したように修正される。この手法は、電源をほぼ平衡状態に保つのに役立ち、非対称電源を再平衡化するためにさらに使用されてもよい。しかしながら、上記の手法は、電源が非対称である場合に、(1サイクルにわたって平均化された)インバータによって生成された実際の平均電圧ベクトルが基準ベクトルVREF と正確に一致しないという事実を考慮していない。その結果、DC成分がゼロと異なり、より高い高調波が生成される場合がある。以下に記載する手法は、非対称性が顕著であっても、非対称バイポーラ電源におけるインバータの正確な3相動作を可能にする。
【0045】
上述したように、図6は、インバータの電源が対称(すなわち、U=U、ρ=0.5)である状況を示す。何らかの理由で、対称性パラメータρが0.5を超える値まで増加するか、または0.5を下回る値まで減少すると、図6の内側六角形が歪む。図9は、ρ=0.6の状況を示しており、これは、第2のバッテリの電圧Uが第1のバッテリの電圧Uの1.5倍であることを意味する。図6の内側六角形は、実際には、2つの一致した六角形であり、その一致もまた、ρ≠0.5の場合に破壊される。したがって、図6に従って同じ電圧ベクトルを生成するインバータ状態(例えば、PLLおよびLNN)は、もはや同じ電圧ベクトルをもたらさない。さらに、外側六角形(歪んでいない)の縁上にそれらの端点を有する電圧ベクトルは、ρ>0.5またはρ<0.5の場合、2つの頂点間の中心点から隣接する頂点のうちの一方に向かって移動する。
【0046】
図10図12は、特定の基準ベクトルVREF に適した変調シーケンスを選択し、選択されたシーケンスのインバータ状態に関連する時間を計算する目的で、図6の図の六角形をセクタΣ、セクションσおよびセグメントζに分解することを示す。図を簡単にするために、図10図12は、ρ=0.5(歪んでいない内側六角形)の状況を示している。しかしながら、以下の手法は汎用的であり、対称性パラメータρが0.5より大きいまたは小さい状況にも適用される。
【0047】
図10は、図6の図に相当する。外側六角形は、セクタΣと呼ばれる6つの三角形に規則的に分割される。(ρ≠0.5の場合に歪まない)外側六角形の頂点上にそれらの端点を有する電圧ベクトルは、0°、60°、120°、180°、240°および300°の角度を有する。ベクトルVREF の角度θが[Σ・π/3、(Σ+1)・π/3]の区間にある場合、任意の基準ベクトルVREF は、セクタΣにある。言い換えれば、セクタΣ=0は、0からπ/3rad(60°)まで、セクタΣ=1は、π/3から2π/3rad(120°)まで、などである。
【0048】
図10から分かるように、各セクタΣは、2つのセクションσに分割することができ、セクションσ=0はより低い角度に位置し、セクションσ=1はより高い角度に位置する。なお、図10では、σ=0とσ=1のセクションの大きさは等しいが、これは、ρ≠0.5の一般的な状況では必ずしもそうとは限らない。図9に示す非対称の場合、セクションΣ=0において、セクションσ=0は、セクションσ=1よりも大きいが、セクタΣ=1では、その逆となる。セクタが2つのセクションσ=0およびσ=1に分割される角度は、図10においてφとして示され、φは各セクタΣにおいて異なり、電源電圧U、Uに依存する。
【0049】
図11および図12に示す6つのセグメントζ(すなわち、ζ=0、1、...、5)に、セクタΣの各セクションが関連付けられる。図11において、図の網掛け領域は、セクタΣ=0のセクションσ=0を示している。セクションσ=0に関連するセグメントは、図11においてζ=0、1、ζ=2、3およびζ=4、5としてそれぞれラベル付けされた三角形である。上述したように、対称の場合、いくつかのインバータ状態は同じ電圧ベクトルをもたらす。したがって、セグメントζ=0およびζ=1は一致しており、セグメントζ=2およびζ=3ならびにセグメントζ=4およびζ=5も一致している。しかしながら、非対称の場合(ρ≠0.5)、図9から分かるように、一致は破壊される。それにもかかわらず、対称の場合に一致するセグメントは、非対称の場合に部分的に重なり合い得る。
【0050】
図12において、図の網掛け領域は、セクタΣ=0のセクションσ=1を示している。セクションσ=1に関連するセグメントは、図12においてζ=0、1、ζ=2、3およびζ=4、5としてそれぞれラベル付けされた三角形である。ここでも、セグメントζ=0およびζ=1は一致しており、セグメントζ=2およびζ=3ならびにセグメントζ=4およびζ=5も一致している。図11および図12のセグメントは、基本的に1つのセクタΣを構成する4つの三角形である。各頂点は、1つまたは複数のインバータ状態(V、V、V)に対応する電圧ベクトル(V、V)の終点である。
【0051】
特定の変調シーケンスを選択するために、空間ベクトル変調器201は、基準電圧ベクトルVREF の終点が(Σ、σおよびζによって特定される)どのセグメントにあるかを決定する必要がある。幾何学的に、この決定は自明である。空間ベクトル変調器201は、各セグメントζの3つの頂点によって表される電圧ベクトルを使用して基準ベクトルVREF の重心座標を計算することによって、この決定を行うことができる(重心法)。正しいセグメントが見つかった場合、この方法はまた、それぞれの頂点に対応するインバータ状態に関連付けられた時間をもたらす。点が三角形内にあるかどうかを判定する問題の背後にある数学は、そのように周知であり、したがって、本明細書ではこれ以上詳細に論じない。
【0052】
セクタΣ、セクションσおよびセグメントζへの図10図12外側六角形の分解の1つの結果が、既に上記で論じられている図5の表に要約されている。各々が6つのセグメントに関連付けられた2つのセクションをそれぞれが有する6つのセクタは、図5の表に列挙された72の可能な組み合わせをもたらす。しかしながら、上記で論じたように、セグメントζ=0およびζ=1は、重複しており、セグメントζ=2およびζ=3ならびにセグメントζ=4およびζ=5も重複している。したがって、1つの変調シーケンスは、2つの重複セグメントに関連付けられたサブシーケンスで構成される。図5において、各ラインは36個の変調シーケンスのうちの1つを含み、各シーケンスの(3つのインバータ状態の)第1のサブシーケンスは、セグメントζ=0、2または4に関連付けられ、各シーケンスの(3つのインバータ状態の)第2のサブシーケンスは、セグメントζ=1、3または5に関連付けられる。合わせて、2つのサブシーケンスは、1つの変調シーケンスを形成する6つのインバータ状態を含む。
【0053】
図11は、基準ベクトルVREF が、第1のセクタΣ=0の下側セクションσ=0内のセグメントζ=4、ζ=5に端点を有する1つの例を示している。これらのパラメータΣ、σ、ζは、図5の表の3行目における変調シーケンスLNN、PNN、PUN、PUU、PUN、PNNを特定する。変調シーケンス中、インバータ出力は、(図11では一致しているが、図9に示すような一般的な場合には部分的にしか重複していない)セグメントζ=4およびζ=5によって表される三角形の頂点間をジャンプする。結果として生じるスイッチングパターンは、図13のタイミング図によってさらに示されており、ここでは、第1の状態LNNは、先の図7および図8の例のように再度2つの部分に分割されている。
【0054】
外側六角形の頂点を除く図11のすべての頂点が電源電圧UおよびUに依存するので、重心法がもたらす図13に示すオン時間
【数74】

【数75】

【数76】

【数77】

【数78】

【数79】
もまた電源電圧UおよびUに依存する(したがって、パラメータρに依存する)ことは明らかである。その結果、インバータ202の各トランジスタについて空間ベクトル変調器201が生成する駆動信号のデューティサイクルも、電源電圧U、Uに依存する。
【0055】
本発明は、1つまたは複数の実装形態に関して例示および説明されているが、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、例示された例に対して変更および/または修正が行われてもよい。特に、上述の構成要素または構造(ユニット、アセンブリ、デバイス、回路、システムなど)によって実行されるさまざまな機能に関して、そのような構成要素を記載するために使用される用語(「手段」への参照を含む)は、特に指示されない限り、本明細書に示された本発明の例示的な実装形態における機能を実行する開示された構造と構造的に同等ではないとしても、説明された構成要素の特定の(例えば、機能的に等価である)機能を実行する任意の構成要素または構造に対応することを意図している。
【0056】
さらに、本開示の要約の目的は、米国特許商標庁および公衆一般、特に特許または法律用語または表現に精通していない科学者、技術者および実務家が、大まかな検査から本出願の技術的開示の性質および本質を迅速に決定することを可能にすることである。本開示の要約は、決して範囲を限定するものではない。
【0057】
最後に、本出願人は、明示的な文言「のための手段」または「のための工程」を含む請求項のみが35U.S.C.§112の下で解釈されることを意図している。「のための手段」または「のための工程」という語句を明示的に含まない請求項は、35U.S.C.112に基づいて解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】