(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007410
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】収穫機の前処理装置
(51)【国際特許分類】
A01D 63/04 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A01D63/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108789
(22)【出願日】2023-06-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構、農業機械技術クラスター事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 弘
(72)【発明者】
【氏名】津田 純歩
【テーマコード(参考)】
2B081
【Fターム(参考)】
2B081AA11
2B081DA09
2B081DA11
2B081DA13
(57)【要約】
【課題】車幅を抑えることができ、しかも、飛散防止プレートやサイドカバーが変形した場合であっても、簡単にデバイダを大きく折り畳めるようにした収穫機の前処理装置を提供する。
【解決手段】機体10の前方に突出して設けられ、先端部分を上方から後方に向けて折り畳み可能に設けられて複数のデバイダ2と、左右のサイドカバー12の間に設けられ、前記デバイダ2の間に取り込まれたトウモロコシを収穫する収穫部11と、前記左右のサイドカバー12に設けられ、前記収穫部11で収穫されたイアコーンの飛散を防止するための飛散防止プレート8と、を備えてなる収穫機の前処理装置1において、前記飛散防止プレート8を前記サイドカバー12から側方に向けて傾倒させるための傾倒部81を設け、当該傾倒部81による傾倒によって形成されたサイドカバー12の上方空間に、前記デバイダ2の先端部分を折り畳めるようにする。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前方に突出して設けられ、先端部分を上方から後方に向けて折り畳み可能に設けられて複数のデバイダと、
左右のサイドカバーの間に設けられ、前記デバイダの間に取り込まれた作物を収穫する収穫部と、
前記左右のサイドカバーに設けられ、前記収穫部で収穫された作物の飛散を防止するための飛散防止プレートと、
を備えてなる収穫機の前処理装置において、
前記飛散防止プレートを前記サイドカバーから側方に向けて傾倒させる傾倒部を設け、
当該傾倒部による傾倒によって形成されたサイドカバーの上方空間に、前記デバイダの先端部分を折り畳めるようにしたことを特徴とする収穫機の前処理装置。
【請求項2】
前記飛散防止プレートが、サイドカバーの上面部に面接触する底面部を有するように構成されるものである請求項1に記載の収穫機の前処理装置。
【請求項3】
前記傾倒部が、サイドカバーの上面部の中央より外側を中心に飛散防止プレートを傾倒させるように構成されるものである請求項1に記載の収穫機の前処理装置。
【請求項4】
さらに、前記飛散防止プレートを傾倒させた状態で固定させた固定部を設けるようにした請求項1に記載の収穫機の前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場のトウモロコシなどの作物を収穫する収穫機の前処理装置に関するものであって、より詳しくは、トウモロコシなどの作物を分離・収集するためのデバイダを折り畳む際に、その折り畳み角度を大きくできるようにした収穫機の前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圃場で育成されたトウモロコシは、収穫機の前処理装置によって刈り取られ、その刈り取られたトウモロコシからイアコーンが採取される。
【0003】
このような収穫機の前方に取り付けられる前処理装置の一般的な構造(特許文献1)を、
図11、
図12を用いて説明する。
【0004】
図11、
図12において、符号101は、デバイダであって、条に沿ってトウモロコシを取り込めるようにしたものである。また、符号102は、収穫部であって、デバイダ101で集められたトウモロコシの茎葉を下方に掻き込むための掻き込みローラ103や、その掻き込みローラ103で掻き込まれたトウモロコシを細断するカッタ104、掻き込みローラ103で下方に掻き込まれたトウモロコシからイアコーンを分離させるセパレータ105、このセパレータ105で分離されたイアコーンを機体後方に向けて搬送する搬送チェーン106などを有するものである。また、符号107は、機体の側部に起立して設けられた飛散防止プレートであって、イアコーンを機体側方へ飛散させないようにしたものである。
【0005】
ところで、このような収穫機を使用する場合、収穫機をトラックに載せて圃場まで運搬し、そこで収穫機を下ろして圃場を走行させるようにしているが、トラックによる運搬時や、圃場走行時におけるコーナー近傍での旋回時に、収穫機の前後方向の長さを短くする必要があるため、デバイダを折り畳めるようにしている。
【0006】
しかしながら、このようにデバイダを折り畳めるようにした場合、左右に設けられたデバイダについては、左右の飛散防止プレート上に折り畳むようにしているため、折り畳み角度が小さくなってしまう。このため、搬送途中にデバイダが折り畳んだ状態から元の状態に戻ってしまう危険性が大きくなるために、ロック機構などを設ける必要があった。これに対して、飛散防止プレートの高さを低くすれば、折り畳み角度を大きくすることができるが、今度は、イアコーンが側方に飛散してしまうという問題を生ずる。
【0007】
これを解決するために、下記の特許文献2には、飛散防止プレートの高さを調整してデバイダを折り畳めるようにした構造が提案されている。
【0008】
具体的に、この特許文献2には、飛散防止プレートの前端側を回動可能にサイドカバー上に取り付けておき、サイドカバーの上面に設けられたスリットを介して、飛散防止プレートをサイドカバー内に収納させるようにした構造が開示されている。このように構成すれば、左右のデバイダを折り畳む際に、飛散防止プレートをサイドカバー内に下げて、飛散防止プレートの存在していた場所にデバイダを折り畳むことができるため、飛散防止プレートの折り畳み角度を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-6003号公報
【特許文献2】特開2021-6002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このように飛散防止プレートを下方にスライドさせる場合、搬送チェーンを避けた位置に飛散防止プレートを収納させるためのスリットや空間を形成しなければならず、車幅が大きくなってしまう。
【0011】
また、このように飛散防止プレートをスリット内に収納させる場合、飛散防止プレートやサイドカバーが異物に当たってしまうと、飛散防止プレートが変形してしまうため、飛散防止プレートを収容させることができなくなる。
【0012】
さらに、このように飛散防止プレートを取り付ける場合、比較的重量のある飛散防止プレートを手で摘み上げて固定しなければならないため、飛散防止プレートの設置作業に時間が掛かってしまうといった問題もある。
【0013】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、車幅を抑えることができ、しかも、飛散防止プレートやサイドカバーが変形した場合であっても、簡単にデバイダの折り畳み角度を大きくしてデバイダを折り畳めるようにした収穫機の前処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、機体の前方に突出して設けられ、先端部分を上方から後方に向けて折り畳み可能に設けられて複数のデバイダと、左右のサイドカバーの間に設けられ、前記デバイダの間に取り込まれた作物を収穫する収穫部と、前記左右のサイドカバーに設けられ、前記収穫部で収穫された作物の飛散を防止するための飛散防止プレートと、を備えてなる収穫機の前処理装置において、前記飛散防止プレートを前記サイドカバーから側方に向けて傾倒させる傾倒部を設け、当該傾倒部による傾倒によって形成されたサイドカバーの上方空間に、前記デバイダの先端部分を折り畳めるようにしたものである。
【0015】
このように構成すれば、車幅を抑えることができるとともに、飛散防止プレートの折り畳み角度を大きくしてデバイダを側方に折り畳むことができるようになる。また、飛散防止プレートやサイドカバーが変形した場合であっても、飛散防止プレートを側方に倒すことができるため、確実にデバイダを折り畳むことができるようになる。
【0016】
また、このような発明において、前記飛散防止プレートを、サイドカバーの上面部に面接触する底面部を設けるように構成する。
【0017】
このように構成すれば、飛散防止プレートの底面部とサイドカバーの上面部とを面接触させることで、安定した状態で飛散防止プレートを起立させることができる。
【0018】
さらに、前記傾倒部を、サイドカバーの上面部の中央より外側を中心に飛散防止プレートを傾倒させるように設ける。
【0019】
このように構成すれば、飛散防止プレートを傾倒させた際に、飛散防止プレートをサイドカバーの側面に沿わせることができ、傾倒時においても、車幅を抑えることがきるようになる。
【0020】
また、さらに、前記飛散防止プレートを傾倒させた状態に固定する固定部を設けるようにすることもできる。
【0021】
このように構成すれば、デバイダを折り畳んだ状態で走行する際、飛散防止プレートが振れるようなことがなくなり、飛散防止プレートが異物に当たってしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、機体の前方に突出して設けられ、先端部分を上方から後方に向けて折り畳み可能に設けられて複数のデバイダと、左右のサイドカバーの間に設けられ、前記デバイダの間に取り込まれた作物を収穫する収穫部と、前記左右のサイドカバーに設けられ、前記収穫部で収穫された作物の飛散を防止するための飛散防止プレートと、を備えてなる収穫機の前処理装置において、前記飛散防止プレートを前記サイドカバーから側方に向けて傾倒させる傾倒部を設け、当該傾倒部による傾倒によって形成されたサイドカバーの上方空間に、前記デバイダの先端部分を折り畳めるようにしたので、車幅を抑えることができるとともに、飛散防止プレートの折り畳み角度を大きくしてデバイダを側方に折り畳むことができるようになる。また、飛散防止プレートやサイドカバーが変形した場合であっても、飛散防止プレートを側方に倒すことができるため、確実にデバイダを折り畳むことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施の形態における前処理装置を平面から見た概略図
【
図2】同形態における前処理装置のデバイダとサイドカバー、中央カバーを示す図
【
図3】同形態における掻き込みローラとカッタ、搬送チェーンを示す底面概略図
【
図4】同形態における掻き込みローラとカッタ、搬送チェーンを前後方向に見た図
【
図5】同形態におけるサイドカバーと飛散防止プレートを示す概略図
【
図6】同形態における飛散防止プレートの動作状態を機体前方から見た図
【
図7】同形態における飛散防止プレートの動作状態を機体後方から見た図
【
図8】同形態における飛散防止プレートを傾倒させた状態の平面概略図
【
図9】同形態における飛散防止プレートの起立状態とシャフトをスライドさせた状態を示す図
【
図10】同形態における飛散防止プレートを傾倒させた状態と、デバイダを折り畳む状態を示す図
【
図11】従来例における前処理装置の構造を示す平面概略図
【
図12】従来例における前処理装置を前後方向から見た概略図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
この実施の形態における収穫機の前処理装置1は、
図1や
図2に示すように、機体10の前方に突出して設けられ、先端部分を上方から後方に向けて折り畳み可能に設けられた複数のデバイダ2と、左右のサイドカバー12とサイドカバー12の間に設けられ、前記デバイダ2によって取り込まれた作物を収穫する収穫部11と、前記左右のサイドカバー12から起立して設けられ、収穫部11で収穫された作物の飛散を防止するための飛散防止プレート8(
図2)などを備えて構成されるものである。そして、特徴的に、
図5から
図7に示すように、飛散防止プレート8をサイドカバー12の側方に傾倒させるための傾倒部81を設け、当該傾倒部81による傾倒によって形成されたサイドカバー12の上方に、前記デバイダ2の先端部分を折り畳めるようにして(
図10)、折り畳み角度を大きくできるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
なお、説明において、収穫する作物の例として、トウモロコシを例に挙げて説明し、また、そのトウモロコシは、茎と葉の部分である「茎葉」と、雌穂の部分である「イアコーン」で構成されているものとする。また、装置の説明において、機体10の走行方向をX軸方向、上下方向をZ軸方向として説明し、また、Y軸方向である機体10の両側を「側方」あるいは「外側」として説明する。
【0027】
まず、機体10の前方に設けられるデバイダ2は、
図2に示すように、前方側を尖状に構成したものであって、機体10を走行させることによって、圃場のトウモロコシを左右に分離・収集できるようにしたものである。このうち、左右のデバイダ2は、サイドカバー12の前方に設けられ、一方、中央部分のデバイダ2は、中央カバー13の前方に設けられる。
【0028】
一方、左右に設けられたサイドカバー12は、機体10の左右両側に設けられるもので、搬送チェーン6などを覆うように設けられる。このサイドカバー12は、
図2や
図5に示すように、上面部12aや側面部12bを有するように構成されており、上面部12aの前方に、左右のデバイダ2を折り畳むための折畳部21(
図8から
図10参照)を設けるようにしている。
【0029】
この折畳部21は、
図9から
図10に示すように、サイドカバー12の前面に設けられる下片22と、デバイダ2の後端面の上方に設けられる上片23とを設け、これらの下片22と上片23をピン24で回動可能に連結するように構成される。そして、このピン24を中心に、デバイダ2の先端側を上方に持ち上げて、
図10に示すように、デバイダ2を後方に折り畳めるようにしている。このとき、折り畳まれたデバイダ2の先端側は、サイドカバー12の後方に設けられたメインカバーの上面14aに当たり(
図10の下図)、デバイダ2とサイドカバー12の上面部12aとの間に隙間空間が形成されるようになっている。
【0030】
一方、飛散防止プレート8は、このサイドカバー12の上面部12aから起立するように設けられるものであって、収穫部11で収穫されたイアコーンを側方へ飛散させないように構成される。
【0031】
この飛散防止プレート8は、
図5などに示すように、サイドカバー12の上面部12aに面接触する底面部80aと、この底面部80aから屈曲して設けられる起立面80bと、この起立面80bの外側面において上下方向に沿ってL字状に設けられたリブ80cなどを設けて構成される。
【0032】
この傾倒部81は、サイドカバー12の上面部12aに設けられる起立片82、92と、飛散防止プレート8に設けられたリブ80cの穴(図示せず)との間にピン83を挿通させて構成されるもので、サイドカバー12の外側位置に存在するピン83を中心に、飛散防止プレート8を側方に傾倒させるようになっている。なお、飛散防止プレート8は、傾倒された状態において、
図10の下図に示すように、サイドカバー12の側面部12bに沿うようになっている。
【0033】
また、この飛散防止プレート8は、固定部9によって起立状態が固定される。この固定部9は、
図5に示すように、飛散防止プレート8の2つのリブ80cと、サイドカバー12の上面部12aの後方に設けられた起立片92の穴(図示せず)と間にシャフト91を挿通させて構成されるもので、バネ84の力に抗してシャフト91の端部を起立片92から抜くことにより、飛散防止プレート8を傾倒させられるようにしている。一方、飛散防止プレート8を起立状態に固定する場合は、飛散防止プレート8を起立させた状態で、バネ84の力でシャフト91を起立片92の穴に挿通させ、飛散防止プレート8を起立状態に維持させるようにしている。
【0034】
また、このように飛散防止プレート8を傾倒させた状態で機体10を走行させると、飛散防止プレート8が左右に振れてしまい、異物に当たって変形してしまう可能性がある。そこで、ここでは、固定部9によって、飛散防止プレート8を傾倒させた状態に固定できるようにしている。この固定部9を構成する場合、
図5に示すように、リブ80cと起立片92との間に規制プレート90を設けておき、シャフト91を抜いて飛散防止プレート8を傾倒させた際に、そのシャフト91の端部を、規制プレート90の側方の縁部90aに当てて、飛散防止プレート8が戻らないように構成する。
【0035】
次に、収穫部11の構成について、
図1から
図4を用いて説明する。
【0036】
この収穫部11は、トウモロコシを細断するカッタ3や、トウモロコシをカッタ3側に掻き込むための掻き込みローラ4や、掻き込みローラ4で下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉からイアコーンを分離させるためのセパレータ5や、このセパレータ5で分離されたイアコーンを機体10の後方に向けて搬送させる搬送チェーン6などを備えて構成される。
【0037】
このうち、カッタ3は、
図3に示すように、機体10の底面側に設けられるもので、デバイダ2によって分離・収集されたトウモロコシを株元部分で切断するとともに、後述する掻き込みローラ4で下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉を細断できるように構成される。このカッタ3は、Z軸を中心として回転する回転プレート31の外周部分に複数の刃32を取り付けて構成され、その刃32を高速回転させることにより、トウモロコシの茎葉を細断し、その細断片を圃場に還元できるようにしている。
【0038】
このカッタ3の上方に設けられる掻き込みローラ4は、デバイダ2で収集されたトウモロコシの茎葉を下方に引き込めるようにしたもので、X軸方向を中心に回転させることによって、
図3や
図4に示すように、外周面に設けられた複数枚の羽根41によって、トウモロコシの茎葉を屈曲させながら下方に掻き込めるように構成されている。また、この掻き込みローラ4の前方には、トウモロコシを機体10の後方に向けて取り込めるようにしたスクリュー部42(
図3参照)が設けられており、このスクリュー部42によってもトウモロコシの茎葉を機体10の後方に搬送できるようにしている。
【0039】
また、この掻き込みローラ4の上方には、トウモロコシの茎葉からイアコーンを分離させるためのセパレータ5(
図1、
図4参照)が設けられる。このセパレータ5は、互いに所定の隙間を空けて設けられるものであって、左右の隙間をトウモロコシのイアコーンの幅よりも狭くすることによって、下方に掻き込まれたトウモロコシの茎葉からトウモロコシのイアコーンのみを分離させるようになっている。
【0040】
搬送チェーン6は、このセパレータ5によって分離されたトウモロコシのイアコーンを、機体10の後方に向けて搬送できるようにしたものであって、
図1に示すように、セパレータ5上で前後方向に周回する爪61を設け、その爪61にトウモロコシのイアコーンを当てて、イアコーンを後方の収集オーガ7に搬送できるように構成されている。
【0041】
収集オーガ7(
図1)は、この搬送チェーン6によって機体10の後方に搬送されたイアコーンを中央側に収集して走行機体側に集められるようにしたものであって、左右方向に沿った回転軸の外周面に螺旋状の羽根を設けて構成される。
【0042】
なお、これらのカッタ3や掻き込みローラ4、搬送チェーン6のうち、カッタ3については、
図3に示すように、カッタ駆動用ギアボックスに内蔵されたミッションによって駆動され、また、掻き込みローラ4や搬送チェーン6については、メイン駆動用ギアボックスに内蔵されたミッションによって駆動される。
【0043】
次に、このように構成されたトウモロコシの収穫機における前処理装置1の作用について説明する。
【0044】
まず、トウモロコシを収穫する場合、前処理装置1を取り付けた収穫機を走行させて、圃場のトウモロコシをデバイダ2によって分離・収集する。
【0045】
すると、前方から押し込まれたトウモロコシが掻き込みローラ4のスクリュー部42によって後方に押し込まれ、株元付近でカッタ3で刈り取られるとともに、掻き込みローラ4の羽根41の回転によって、トウモロコシの茎葉が下方に掻き込まれてカッタ3で細断される。このように細断されたトウモロコシの茎葉は、圃場に還元される。
【0046】
このように掻き込みローラ4によって下方に掻き込まれたトウモロコシのうち、イアコーンは、左右のセパレータ5によって茎葉から分離される。このとき、高速で茎葉から分離されたイアコーンは、セパレータ5に当たって跳ね上がってしまう場合があるが、機体10の左右に設けられた飛散防止プレート8によって側方への飛散が防止されるとともに、中央カバー13の円弧状の上面を滑って搬送チェーン6の間に落とし込まれる。
【0047】
そして、分離されたイアコーンを搬送チェーン6の爪61を用いて後方に搬送させ、機体10の後方の収集オーガ7で収集する。
【0048】
ところで、トウモロコシの収穫機をトラックで運搬する際、あるいは、圃場でのコーナー近傍での旋回が困難な場合、デバイダ2を折り畳んでトラックに積載させ、あるいは、デバイダ2を折り畳んで機体10を旋回させる必要がある。
【0049】
このとき、左右の飛散防止プレート8に設けられたシャフト91を前方にスライドさせ、サイドカバー12の後方の起立片92の穴からシャフト91の先端を抜く(
図10の下図参照)。
【0050】
すると、飛散防止プレート8が、傾倒部81のピン83を中心として側方に傾倒可能な状態になり、飛散防止プレート8の起立面80bが、サイドカバー12の側面部12bに沿うようになる(
図10)。このとき、傾倒した飛散防止プレート8のシャフト91の端部が、規制プレート90の縁部90aの外側に再び突出し(
図8)、これによって、規制プレート90の縁部90aにシャフト91を当てて、飛散防止プレート8の傾倒状態を維持させる。
【0051】
そして、このように飛散防止プレート8を傾倒させた状態で、デバイダ2の先端側を上方に持ち上げ、後方側に折り畳む(
図10の下図参照)。このとき、そのデバイダ2の先端部分をメインカバーの上面14aに当てて、デバイダ2とサイドカバー12との間に飛散防止プレート8の傾倒部81を位置させて、デバイダ2との干渉を防止する。
【0052】
この作業を、反対側の飛散防止プレート8についても同様に行い、また、中央のデバイダ2を、中央カバー13の上に折り畳む。
【0053】
そして、このようにデバイダ2を折り畳んだ状態で、トラックへの積載や、圃場での旋回を行い、その後、デバイダ2を元の状態に戻す。
【0054】
このように上記実施の形態によれば、機体10の前方に突出して設けられ、先端部分を上方から後方に向けて折り畳み可能に設けられて複数のデバイダ2と、左右のサイドカバー12の間に設けられ、前記デバイダ2の間に取り込まれたトウモロコシを収穫する収穫部11と、前記左右のサイドカバー12に設けられ、前記収穫部11で収穫されたイアコーンの飛散を防止するための飛散防止プレート8と、を備えてなる収穫機の前処理装置1において、前記飛散防止プレート8を前記サイドカバー12から側方に向けて傾倒させる傾倒部81を設け、当該傾倒部81による傾倒によって形成されたサイドカバー12の上方空間に、前記デバイダ2の先端部分を折り畳めるようにしたので、車幅を抑えた状態で、大きくデバイダ2を折り畳むことができるようになる。また、飛散防止プレート8やサイドカバー12が変形した場合であっても、飛散防止プレート8を側方に倒すことができるため、デバイダ2の折り畳みが可能となる。
【0055】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0056】
例えば、上記実施の形態では、デバイダ2の先端側をメインカバーの上面14aに当てて傾倒部81と干渉させないようにしたが、傾倒部81の上部にゴムなどを設けておき、このゴムにデバイダ2を当てるように折り畳んでもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、トウモロコシを収穫する場合について説明したが、これ以外に、例えば、ヒマワリなどの他の作物を収穫する場合についても適用することができる。
【0058】
さらに、上記実施の形態では、ピン83によって飛散防止プレート8を傾倒させるようにしたが、円弧状の長穴を設けておき、この円弧状の長穴に沿って飛散防止プレート8をスライドさせながら傾倒させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・・前処理装置
10・・・機体
11・・・収穫部
2 デバイダ
21 折畳部
8 飛散防止プレート
80a 底面部
80b 起立面
80c リブ
81 傾倒部
82 起立片
9 固定部
90 規制プレート
91 シャフト
92 起立片