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特開2025-7416硬化性組成物、硬化物、有機EL素子、固体撮像素子及び化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007416
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、有機EL素子、固体撮像素子及び化合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20250109BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20250109BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20250109BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20250109BHJP
   C07C 271/16 20060101ALI20250109BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20250109BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20250109BHJP
   H10K 59/124 20230101ALI20250109BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20250109BHJP
   H10K 50/858 20230101ALI20250109BHJP
   C08G 65/32 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08L71/02
C08F290/06
C09D4/00
C09D171/02
C07C271/16 CSP
C07F7/18 L
C07F7/18 W
G02B1/04
H10K59/124
H10K85/10
H10K50/858
C08G65/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108799
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】山口 宙志
【テーマコード(参考)】
3K107
4H006
4H049
4J002
4J005
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC05
3K107DD90
3K107DD96
3K107EE21
3K107FF14
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB49
4H006RA04
4H006RB28
4H049VN01
4H049VP01
4H049VP02
4H049VQ38
4H049VR21
4H049VR43
4H049VU17
4H049VW02
4J002CH051
4J002EA016
4J002EA046
4J002EA066
4J002EE037
4J002EF046
4J002EF076
4J002EF096
4J002EH076
4J002EH156
4J002EL106
4J002EL136
4J002EL146
4J002EP016
4J002ES017
4J002EU026
4J002EU027
4J002EU117
4J002EU236
4J002EV087
4J002EV217
4J002EV297
4J002EV307
4J002EW147
4J002EY017
4J002EY027
4J002FD146
4J002FD157
4J005AA21
4J005BD02
4J005BD03
4J005BD05
4J005BD08
4J038DF011
4J038FA091
4J038FA111
4J038FA271
4J038GA01
4J038GA02
4J038GA07
4J038GA09
4J038GA12
4J038GA15
4J038JA33
4J038JB10
4J038JC15
4J038KA04
4J038KA06
4J038MA09
4J038MA14
4J038NA07
4J038PA06
4J038PA17
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC08
4J127AA01
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB021
4J127BB031
4J127BB151
4J127BB191
4J127BB221
4J127BB301
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD211
4J127BE331
4J127BE33Z
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BE501
4J127BE50Z
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BF141
4J127BF14Y
4J127BF261
4J127BF26Z
4J127BF771
4J127BF77Z
4J127BG081
4J127BG08Y
4J127BG121
4J127BG12Z
4J127BG141
4J127BG14Y
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG17Z
4J127BG201
4J127BG20Z
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127BG27Z
4J127BG391
4J127BG39Z
4J127CB141
4J127CB281
4J127CB282
4J127FA08
4J127FA17
4J127FA21
4J127FA24
4J127FA41
(57)【要約】
【課題】パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物を含み、硬化前の組成物が高い透明性を示すとともに、硬化により透明性が高い硬化物を得ることができる硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】(A)-[(C2m)O]-C2k-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖(mは1以上の整数であり、nは2以上の整数であり、複数の(C2m)は同一又は異なる。kは1~6の整数である。)と、パーフルオロポリエーテル鎖の各末端に対し直接又は2価の連結基を介して結合する複数個の反応性基と、を有する反応性ポリエーテル化合物、(B)重合性化合物(ただし、反応性ポリエーテル化合物を除く。)、及び、(C)光重合開始剤、を含有し、反応性ポリエーテル化合物が、反応性基として第1反応性基と第2反応性基とを1分子内に有する化合物を含むか、又は、反応性基が分子間で異なる第1化合物と第2化合物とを含む硬化性組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)-[(C2m)O]-C2k-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖(ただし、mは1以上の整数であり、nは2以上の整数であり、複数の(C2m)は同一又は異なる。kは1~6の整数である。)と、前記パーフルオロポリエーテル鎖の各末端に対し直接又は2価の連結基を介して結合する複数個の反応性基と、を有する反応性ポリエーテル化合物、
(B)重合性化合物(ただし、前記反応性ポリエーテル化合物を除く。)、及び、
(C)光重合開始剤
を含有し、
前記反応性ポリエーテル化合物が、前記反応性基として第1反応性基と、前記第1反応性基とは異なる第2反応性基とを1分子内に有する化合物を含むか、又は、前記反応性基が分子間で異なる第1化合物と第2化合物とを含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記第1反応性基と前記第2反応性基とは極性が異なり、
前記第1化合物が有する前記反応性基と前記第2化合物が有する前記反応性基とは極性が異なる、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記反応性基は、(メタ)アクリロイル基、-Si(OR(R3-tで表される基(ただし、R及びRは、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、tは1~3の整数であり、tが2又は3の場合、複数のRは同一又は異なり、tが1の場合、複数のRは同一又は異なる。)、ビニル基、アリル基及び環状エーテル基よりなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記2価の連結基は、炭素数2~10のアルカンジイル基における一部のメチレン基が酸素原子、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合に置き換えられた基である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記反応性ポリエーテル化合物が、前記第1反応性基と前記第2反応性基とを1分子内に有する化合物を含み、
前記第1反応性基は、下記に示すA群、B群、C群及びD群のうちいずれかの群の中から選ばれる基であり、
前記第2反応性基は、下記に示すA群、B群、C群及びD群のうち、前記第1反応性基とは異なる群の中から選ばれる基である、請求項1に記載の硬化性組成物。
A群:(メタ)アクリロイル基
B群:-Si(OR(R3-tで表される基(ただし、R及びRは、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、tは1~3の整数であり、tが2又は3の場合、複数のRは同一又は異なり、tが1の場合、複数のRは同一又は異なる。)
C群:ビニル基、アリル基
D群:環状エーテル基
【請求項6】
前記反応性ポリエーテル化合物が、下記式(1)で表される化合物を含む、請求項5に記載の硬化性組成物。
【化1】
(式(1)中、Xは前記第1反応性基である。Xは前記第2反応性基である。Y及びYは、互いに独立して、単結合、又は、炭素数2~10のアルカンジイル基における一部のメチレン基が酸素原子、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合若しくはウレア結合に置き換えられた2価の基である。Lfは、-[(C2m)O]-C2k-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖である。mは1以上の整数であり、nは2以上の整数であり、複数の(C2m)は同一又は異なる。kは1~6の整数である。)
【請求項7】
前記反応性ポリエーテル化合物が、前記第1化合物と前記第2化合物とを含み、
前記第1化合物が有する前記反応性基は、下記に示すA群、B群、C群及びD群のうちいずれかの群の中から選ばれる基であり、
前記第2化合物が有する前記反応性基は、下記に示すA群、B群、C群及びD群のうち、前記第1化合物が有する前記反応性基とは異なる群の中から選ばれる基である、請求項1に記載の硬化性組成物。
A群:(メタ)アクリロイル基
B群:-Si(OR(R3-tで表される基(ただし、R及びRは、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、tは1~3の整数であり、tが2又は3の場合、複数のRは同一又は異なり、tが1の場合、複数のRは同一又は異なる。)
C群:ビニル基、アリル基
D群:環状エーテル基
【請求項8】
前記反応性ポリエーテル化合物の重量平均分子量が500~5,000である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記パーフルオロポリエーテル鎖が、-[CFO]-、-[CFCFO]-、又は-[CFO]-及び-[CFCFO]-の両方を繰返し単位として有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記重合性化合物は、芳香環を有しない、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記重合性化合物の含有量が、前記反応性ポリエーテル化合物と前記重合性化合物との合計量100質量部に対して5~99.99質量部である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
更に溶剤を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
平坦化膜、表面保護膜又はレンズの形成用である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の硬化性組成物により形成される硬化物。
【請求項15】
平坦化膜、表面保護膜又はレンズである、請求項14に記載の硬化物。
【請求項16】
請求項14に記載の硬化物を備える有機EL素子。
【請求項17】
請求項14に記載の硬化物を備える固体撮像素子。
【請求項18】
下記式(1)で表される化合物。
【化2】
(式(1)中、Xは、下記に示すA群、B群、C群及びD群のうちいずれかの群の中から選ばれる基である。Xは、下記に示すA群、B群、C群及びD群のうち、Xとは異なる群の中から選ばれる基である。
A群:(メタ)アクリロイル基
B群:-Si(OR(R3-tで表される基(ただし、R及びRは、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、tは1~3の整数であり、tが2又は3の場合、複数のRは同一又は異なり、tが1の場合、複数のRは同一又は異なる。)
C群:ビニル基、アリル基
D群:環状エーテル基
及びYは、互いに独立して、単結合、又は、炭素数2~10のアルカンジイル基における一部のメチレン基が酸素原子、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合若しくはウレア結合に置き換えられた2価の基である。Lfは、-[(C2m)O]-C2k-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖である。mは1以上の整数であり、nは2以上の整数であり、複数の(C2m)は同一又は異なる。kは1~6の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、硬化物、有機EL素子、撮像素子及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、陽極、有機発光層及び陰極を含む積層構造を有する発光素子であり、表示装置や照明装置等の用途において実用化が進められている。有機EL素子は、平坦化膜等の絶縁性の硬化膜を備えている。平坦化膜は、半導体素子等が形成された基板表面の凹凸を埋めて基板表面を平坦化することを目的として基板上に形成される。平坦化膜は一般に、感光性組成物を基材上に塗布し、露光及び現像の処理によりパターンを形成した後、必要に応じて加熱処理を行うことにより形成される(例えば、特許文献1参照)。近年では、高屈折率材と低屈折率材とを組み合わせることにより、表示装置の輝度向上や視野角の調整を行うことが検討されている。
【0003】
また、タッチパネルディスプレイ等の各種表示素子では、基材表面に汚れや傷が発生することを抑制するために、撥水性や撥油性を有する表面保護膜を基材表面に設け、基材表面を保護することが行われている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。特許文献2には、シリル基を有するパーフルオロポリエーテルを含む硬化性組成物をハードコート層の形成材料として用いることが開示されている。また、特許文献3には、両末端にトリメトキシシリル基を有するパーフルオロポリエーテルと低屈折率粒子とを含む硬化性組成物を用いて、反射防止性や防汚性を示す硬化被膜を形成することが開示されている。
【0004】
CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサといった各種イメージセンサは、カメラ等の撮像装置における固体撮像素子として用いられている。固体撮像素子には、受光素子(フォトダイオード)に光を集めてセンサ感度を向上させるために、半球状の集光レンズ(以下、「マイクロレンズ」ともいう)や層内レンズが設けられている。また、有機EL素子において、光取り出し効率の向上や視野角調整を目的として、各画素に対し光出射側に、高屈折率材料又は低屈折率材料からなるマイクロレンズを設けた構造を採用することが行われている(例えば、特許文献4参照)。固体撮像素子や有機EL素子のレンズもまた、感光性組成物を用いたフォトリソグラフィー技術により形成することが近年行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-039979号公報
【特許文献2】国際公開第2015/190526号
【特許文献3】特開2010-106075号公報
【特許文献4】特開2020-101659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パーフルオロアルキル化合物、特にパーフルオロポリエーテル誘導体は、低表面エネルギーかつ低屈折率であるというユニークな物性を持つ。このため、光学用途や撥水性コート剤等の種々の用途にパーフルオロポリエーテル誘導体を適用することが試みられている。光学用途については、例えば有機EL素子や固体撮像素子に設けられる低屈折率材を、パーフルオロアルキル化合物を用いて製造することが考えられる。
【0007】
しかしながら、パーフルオロポリエーテル誘導体は、硬化性組成物の一成分として使用する際には、その特徴的な特性ゆえに、非フッ素系の溶剤や、硬化性を付与するために配合される他の成分(例えば、重合性化合物)等との相溶性が低いという問題がある。そのため、硬化性組成物中でパーフルオロポリエーテル誘導体が均一に分散せず、硬化前の組成物が不透明になり、また当該組成物を用いて得られる膜は海島構造を持った不均一な膜になりやすい等といった不具合が発生することが懸念される。特に、硬化物に透明性が要求される用途では、透明性を担保できないために、パーフルオロポリエーテル誘導体の使用が制限されることが考えられる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物を含み、硬化前の組成物が高い透明性を示すとともに、硬化により透明性が高い硬化物を得ることができる硬化性組成物を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下の硬化性組成物、硬化物、有機EL素子、撮像素子及び化合物が提供される。
【0010】
[1] (A)-[(C2m)O]-C2k-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖(ただし、mは1以上の整数であり、nは2以上の整数であり、複数の(C2m)は同一又は異なる。kは1~6の整数である。)と、前記パーフルオロポリエーテル鎖の各末端に対し直接又は2価の連結基を介して結合する複数個の反応性基と、を有する反応性ポリエーテル化合物、
(B)重合性化合物(ただし、前記反応性ポリエーテル化合物を除く。)、及び、
(C)光重合開始剤
を含有し、前記反応性ポリエーテル化合物が、前記反応性基として第1反応性基と、前記第1反応性基とは異なる第2反応性基とを1分子内に有する化合物を含むか、又は、前記反応性基が分子間で異なる第1化合物と第2化合物とを含む、硬化性組成物。
[2] 上記[1]に記載の硬化性組成物により形成される硬化物。
[3] 上記[2]に記載の硬化物を備える有機EL素子。
[4] 上記[2]に記載の硬化物を備える固体撮像素子。
【0011】
[5] 下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、Xは、下記に示すA群、B群、C群及びD群のうちいずれかの群の中から選ばれる基である。Xは、下記に示すA群、B群、C群及びD群のうち、Xとは異なる群の中から選ばれる基である。
A群:(メタ)アクリロイル基
B群:-Si(OR(R3-tで表される基(ただし、R及びRは、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、tは1~3の整数であり、tが2又は3の場合、複数のRは同一又は異なり、tが1の場合、複数のRは同一又は異なる。)
C群:ビニル基、アリル基
D群:環状エーテル基
及びYは、互いに独立して、単結合、又は、炭素数2~10のアルカンジイル基における一部のメチレン基が酸素原子、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合若しくはウレア結合に置き換えられた2価の基である。Lfは、-[(C2m)O]-C2k-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖である。mは1以上の整数であり、nは2以上の整数であり、複数の(C2m)は同一又は異なる。kは1~6の整数である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物を含みながら、硬化前の組成物が高い透明性を示し、かつ硬化により透明性が高い硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
【0014】
≪硬化性組成物≫
本開示の硬化性組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、以下に示す(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する。
(A)-[(C2m)O]-C2k-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖(ただし、mは1以上の整数であり、nは2以上の整数であり、複数の(C2m)は同一又は異なる。kは1~6の整数である。)と、上記パーフルオロポリエーテル鎖の各末端に対し直接又は2価の連結基を介して結合する複数個の反応性基と、を有する反応性ポリエーテル化合物
(B)重合性化合物(ただし、上記反応性ポリエーテル化合物を除く。)
(C)光重合開始剤
以下、各成分及び任意に配合される成分の詳細について説明する。なお、各成分については特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
ここで、本明細書において「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素基は、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族炭化水素基は、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。また、芳香族炭化水素基が有する芳香環構造は、単環でもよく縮合環でもよい。なお、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する環構造は、炭化水素構造からなる置換基を有していてもよい。
【0016】
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を包含する意味である。「(メタ)アクリロイル基」は、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」を包含する意味である。
【0017】
<(A)成分:反応性ポリエーテル化合物>
反応性ポリエーテル化合物は、-[(C2m)O]-C2k-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖を主鎖に含む化合物である。すなわち、パーフルオロポリエーテル鎖は、パーフルオロアルカンジイル基と酸素原子とが交互に連結した構造からなる鎖をいう。パーフルオロアルカンジイル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。mの値は特に限定されないが、1~4であることが好ましく、1~3がより好ましく、1又は2が更に好ましい。-[(C2m)O]-で表される繰返し単位の具体例としては、-[CFO]-(オキシパーフルオロメチレン基)、-[CFCFO]-(オキシパーフルオロエチレン基)、-[CFCFCFO]-(オキシパーフルオロプロパン-1,3-ジイル基)、-[CFC(CF)(F)O]-(オキシパーフルオロプロパン-1,2-ジイル基)等が挙げられる。-C2k-で表される基の具体例としては、-CF-、-CFCF-、-CF(CF)-、-CFCFCF-、-CFC(CF)(F)-等が挙げられる。kの値は1~3が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0018】
パーフルオロポリエーテル鎖は、-[(C2m)O]-で表される繰返し単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。パーフルオロポリエーテル鎖が-[(C2m)O]-で表される繰返し単位を2種以上有する場合、それら2種以上の繰返し単位はランダムに配列されていてもよく、ブロック状に配列されていてもよい。また、パーフルオロポリエーテル鎖は直鎖状でも分岐状でもよい。好ましくは直鎖状である。
【0019】
上記の中でも、取り扱い性や入手容易性の観点から、パーフルオロポリエーテル鎖が有する繰返し単位は-[(CFO]-で表されることが好ましい。具体的には、-[CFO]-により構成されているか、-[CFCFO]-により構成されているか、又は、-[CFO]-及び-[CFCFO]-の両方を繰返し単位として有することが好ましく、-[CFO]-及び-[CFCFO]-の両方を繰返し単位として有することがより好ましい。パーフルオロポリエーテル鎖が-[CFO]-と-[CFCFO]-とを繰返し単位として有する場合、-[CFO]-に対する-[CFCFO]-の比率は、モル比で、0.3~3が好ましく、0.5~2がより好ましい。
【0020】
パーフルオロポリエーテル鎖において、-[(C2m)O]-で表される繰返し単位の数(すなわちnの値)は特に限定されない。低屈折率化を図りつつ、他の成分との相溶性を確保する観点から、nは5~50であることが好ましく、5~40であることがより好ましく、5~30であることが更に好ましく、5~25であることがより更に好ましく、7~25であることが一層好ましい。
【0021】
パーフルオロポリエーテル鎖における各末端には、直接又は2価の連結基を介して反応性基が結合しており、これにより反応性ポリエーテル化合物は、分子鎖が有する複数個の末端における各末端に反応性基を有する。反応性基は、放射線の照射によって同一又は異なる種類の官能基と結合を形成し得る基(すなわち、光反応性基)であってもよく、加熱により同一又は異なる種類の官能基と結合を形成し得る基(すなわち、熱反応性基)であってもよい。なお、反応性ポリエーテル化合物が有する反応性基は、本組成物中に含まれる成分(例えば、反応性ポリエーテル化合物自身や、重合性化合物等)が有する官能基と結合を形成し得る基であってもよく、基板表面の官能基等と結合を形成し得る基であってもよい。
【0022】
反応性ポリエーテル化合物が有する反応性基は、本組成物の光硬化性を良好にする観点から、光反応性基であることが好ましい。中でも、光反応性が高い点において、エチレン性不飽和結合含有基、-Si(OR(R3-tで表される基(ただし、R及びRは、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、tは1~3の整数であり、tが2又は3の場合、複数のRは同一又は異なり、tが1の場合、複数のRは同一又は異なる。以下同じ。)及び環状エーテル基よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0023】
エチレン性不飽和結合含有基としては、(メタ)アクリルロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルフェニル基等が挙げられる。エチレン性不飽和結合含有基は、これらのうち、(メタ)アクリルロイル基、ビニル基又はアリル基が好ましい。環状エーテル基としては、オキセタニル基及びオキシラニル基が挙げられる。なお、本明細書では、オキセタニル基及びオキシラニル基を包含して「エポキシ基」ともいう。
【0024】
又はRで表される炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~10の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~10の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。光反応性の観点から、Rは、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。Rは、炭素数1~10のアルキル基又は置換若しくは無置換のフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基又はフェニル基がより好ましい。
tは、反応性の観点から2又は3が好ましく、3がより好ましい。
【0025】
反応性基は、上記の中でも、(メタ)アクリロイル基、-Si(OR(R3-tで表される基、ビニル基、アリル基及び環状エーテル基よりなる群から選択される基であることが好ましい。反応性ポリエーテル化合物が1分子内に有する反応性基の数は、例えば2~10個であり、好ましくは2~6個である。化合物の入手容易性や、透明性が高い硬化膜を得る観点から、反応性ポリエーテル化合物は、直鎖状のパーフルオロポリエーテル鎖を有し、その両末端のそれぞれに直接又は2価の連結基を介して反応性基が結合していることが好ましい。
【0026】
反応性ポリエーテル化合物が有する複数個の反応性基はそれぞれ、単結合により又は2価の連結基を介してパーフルオロポリエーテル鎖の末端に結合している。当該2価の連結基としては、酸素原子、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、炭素数1~10のアルカンジイル基、炭素数2~10のアルカンジイル基における一部のメチレン基が酸素原子、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合に置き換えられた基等が挙げられる。反応性ポリエーテル化合物の合成容易性の観点から、パーフルオロポリエーテル鎖と反応性基とを連結する2価の連結基は、これらのうち、炭素数2~10のアルカンジイル基における一部のメチレン基が酸素原子、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合に置き換えられた基であることが好ましく、ウレタン結合、エーテル結合又はエステル結合を少なくとも有していることがより好ましく、ウレタン結合を少なくとも有していることが更に好ましい。
【0027】
反応性ポリエーテル化合物の重量平均分子量(Mw)は、本組成物の塗布性を良好にする観点、及び得られる硬化膜の平坦性を確保する観点から、500~5,000であることが好ましい。反応性ポリエーテル化合物のMwは、より好ましくは800以上であり、更に好ましくは1,000以上である。また、反応性ポリエーテル化合物のMwは、より好ましくは4,500以下であり、更に好ましくは4,000以下である。なお、反応性ポリエーテル化合物のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値である。
【0028】
本組成物に配合される反応性ポリエーテル化合物は、反応性基として第1反応性基と、第1反応性基とは異なる第2反応性基とを1分子内に有する化合物(以下、「化合物(a1)」ともいう)を含むか、又は、反応性基が分子間で異なる化合物として第1化合物と第2化合物とを含む。ここで、パーフルオロアルカンジイル構造を有する反応性のオリゴマーは重合性化合物や溶剤に溶解しにくく、また得られる硬化物は白化しやすい傾向にある。これに対し、反応性基を1分子内に2種以上含む化合物を含有するか、又は反応性基が分子間で異なる化合物を反応性ポリエーテル化合物として用いることにより、本組成物に含まれる他の成分(具体的には、重合性化合物や、任意に配合される溶剤)との相溶性が高まり、硬化前の組成物の透明性を確保できるとともに、硬化により得られる硬化物の透明性を担保することができる。
【0029】
硬化前の組成物及びその硬化物の透明性をより良好にする観点から、本組成物は、反応性ポリエーテル化合物として、化合物(a1)を含み、かつ化合物(a1)における第1反応性基と第2反応性基の極性が異なるか、又は、第1化合物と第2化合物とを含み、かつ第1化合物が有する反応性基と第2化合物が有する反応性基との極性が異なることが好ましい。第1反応性基と第2反応性基、第1化合物が有する反応性基と第2化合物が有する反応性基は、反応性基中のヘテロ原子の有無や種類又は官能基の種類が異なり、これにより極性が互いに異なることが好ましい。以下に、化合物(a1)、第1化合物及び第2化合物についてそれぞれ説明する。
【0030】
(化合物(a1))
反応性ポリエーテル化合物が化合物(a1)を含む場合、化合物(a1)が有する第1反応性基は、下記に示すA群、B群、C群及びD群のうちいずれかの群の中から選ばれる基であり、第2反応性基は、下記に示すA群、B群、C群及びD群のうち、第1反応性基とは異なる群の中から選ばれる基であることが好ましい。
A群:(メタ)アクリロイル基
B群:-Si(OR(R3-tで表される基
C群:ビニル基、アリル基
D群:環状エーテル基
なお、R、R及びtは上記と同義である。D群の環状エーテル基の具体例は上述したとおりである。
【0031】
例えば、第1反応性基がA群の中から選ばれる基(例えば、アクリロイル基)である場合、第2反応性基は、B群、C群又はD群の中から選ばれる基(例えば、トリエトキシシリル基)であることが好ましい。また、第1反応性基がB群の中から選ばれる基(例えば、ビニル基)である場合、第2反応性基は、A群、C群又はD群の中から選ばれる基(例えば、エポキシ基)であることが好ましい。
【0032】
化合物(a1)が有する第1反応性基及び第2反応性基の好ましい組み合わせとしては、以下の(IA)~(IIIA)が挙げられる。
(IA) 第1反応性基が(メタ)アクリロイル基であり、第2反応性基が-Si(OR(R3-tで表される基、ビニル基、アリル基又は環状エーテル基である態様。
(IIA) 第1反応性基が-Si(OR(R3-tで表される基であり、第2反応性基がビニル基、アリル基又は環状エーテル基である態様。
(IIIA) 第1反応性基が環状エーテル基であり、第2反応性基がビニル基又はアリル基である態様。
これらのうち、光硬化性が良好な硬化性組成物を得ることができる点において、(IA)の態様が好ましい。
【0033】
化合物(a1)としては、下記式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【化2】
(式(1)中、Xは第1反応性基である。Xは第2反応性基である。Y及びYは、互いに独立して、単結合、又は、炭素数2~10のアルカンジイル基における一部のメチレン基が酸素原子、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合若しくはウレア結合に置き換えられた2価の基である。Lfは、-[(C2m)O]-C2k-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖である。mは1以上の整数であり、nは2以上の整数であり、複数の(C2m)は同一又は異なる。kは1~6の整数である。)
【0034】
上記式(1)において、X及びXは、極性が互いに異なる基であることが好ましい。具体的には、第1反応性基(X)は、上記に示すA群、B群、C群及びD群のうちいずれかの群の中から選ばれる基であり、第2反応性基(X)は、上記に示すA群、B群、C群及びD群のうち、第1反応性基(X)とは異なる群の中から選ばれる基であることが好ましい。X及びXの好ましい組み合わせとしては、上述した(IA)、(IIA)又は(IIIA)の態様が挙げられ、これらのうち(IA)の態様が好ましい。
【0035】
又はYで表される基が2価の連結基である場合、2価の連結基の具体例及び好ましい例については、上述した2価の連結基の説明が適用される。Lfで表される基の具体例及び好ましい例については、上述したパーフルオロポリエーテル鎖の具体例及び好ましい例の説明が適用される。
【0036】
化合物(a1)としてより具体的には、下記式(a1-1)~式(a1-12)のそれぞれで表される化合物を例示することができる。
【化3】
【化4】
(式(a1-1)~式(a1-12)中、R及びRは、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基である。tは1~3の整数である。tが2又は3の場合、複数のRは同一又は異なり、tが1の場合、複数のRは同一又は異なる。Rは水素原子又はメチル基である。a、b、c及びdは、互いに独立して1~10の整数である。p及びqは1以上の整数である。kは1~6の整数である。r及びsは、互いに独立して1~5の整数である。aが2以上の場合、(C2r)は同一又は異なる。bが2以上の場合、(C2s)は同一又は異なる。)
【0037】
(第1化合物及び第2化合物)
本組成物が反応性ポリエーテル化合物として第1化合物と第2化合物とを含む場合、第1化合物及び第2化合物としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
(式(2)中、Xは、上記に示すA群、B群、C群及びD群のうちいずれかの群の中から選ばれる基である。Y、Y及びLfは、上記式(1)中のY、Y及びLfと同義である。)
【0038】
上記式(2)において、Xの各群の具体例については上記のとおりである。例えば、上記式(2)中の2個の反応性基(X)がA群の中から選ばれる基である場合、2個の反応性基は共にアクリロイル基であってもよく、2個の反応性基は共にメタクリロイル基であってもよい。また、2個の反応性基のうち一方がアクリロイル基であり、他方がメタクリロイル基であってもよい。
又はYで表される基が2価の連結基である場合、2価の連結基の具体例及び好ましい例については、上述した2価の連結基の説明が適用される。Lfで表される基の具体例及び好ましい例については、上述したパーフルオロポリエーテル鎖の具体例及び好ましい例の説明が適用される。
【0039】
反応性ポリエーテル化合物が第1化合物と第2化合物とを含む場合、第1化合物が有する反応性基が、上記に示すA群、B群、C群及びD群のうちいずれかの群の中から選ばれる基であり、第2化合物が有する反応性基が、上記に示すA群、B群、C群及びD群のうち、第1化合物が有する反応性基とは異なる群の中から選ばれる基であることが好ましい。具体的には、例えば、第1化合物が有する反応性基がA群の中から選ばれる基(例えば、アクリロイル基)である場合、第2化合物が有する反応性基は、B群、C群又はD群の中から選ばれる基(例えば、トリエトキシシリル基)であることが好ましい。また、第1化合物が有する反応性基がB群の中から選ばれる基(例えば、ビニル基)である場合、第2化合物が有する反応性基は、A群、C群又はD群の中から選ばれる基(例えば、エポキシ基)であることが好ましい。
【0040】
第1化合物が有する反応性基と、第2化合物が有する反応性基との好ましい組み合わせとしては、以下の(IB)~(IIIB)の態様が挙げられる。
(IB) 第1化合物が有する反応性基が(メタ)アクリロイル基であり、第2化合物が有する反応性基が-Si(OR(R3-tで表される基、ビニル基、アリル基又は環状エーテル基である態様。
(IIB) 第1化合物が有する反応性基が-Si(OR(R3―tで表される基であり、第2化合物が有する反応性基がビニル基、アリル基又は環状エーテル基である態様。
(IIIB) 第1化合物が有する反応性基が環状エーテル基であり、第2化合物が有する反応性基がビニル基又はアリル基である態様。
これらのうち、光硬化性が良好な硬化性組成物を得ることができる点において、(IB)の態様が好ましい。
【0041】
第1化合物及び第2化合物の具体例としては、下記式(a2-1)~式(a2-5)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化6】
(式(a2-1)~式(a2-5)中、R及びRは、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基である。tは1~3の整数である。tが2又は3の場合、複数のRは同一又は異なり、tが1の場合、複数のRは同一又は異なる。Rは水素原子又はメチル基である。a、b、c及びdは、互いに独立して1~10の整数である。p及びqは1以上の整数である。kは1~6の整数である。r及びsは、互いに独立して1~5の整数である。aが2以上の場合、(C2r)は同一又は異なる。bが2以上の場合、(C2s)は同一又は異なる。)
【0042】
本組成物が第1化合物と第2化合物とを含む場合、本組成物における第1化合物及び第2化合物の比率は、第1化合物100質量部に対する第2化合物の割合が、30~300質量部であることが好ましく、50~200質量部であることがより好ましく、70~150質量部であることが更に好ましい。
【0043】
本組成物に含まれる反応性ポリエーテル化合物は、本組成物の光硬化性及び硬化物の透明性を優れたものとする観点から、化合物(a1)を含むことが好ましく、上記式(1)で表される化合物を含むことがより好ましい。
【0044】
反応性ポリエーテル化合物の合成方法は特に限定されず、有機化学の定法を適宜組み合わせることによって得ることができる。例えば、上記式(1)で表される化合物は、-[(C2m)O]-(C2k)-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖の各末端に、直接又は2価の有機基を介してヒドロキシ基が結合した化合物(以下、「特定ヒドロキシ基含有化合物」ともいう)と、反応性基(X、X)を有するイソシアネート化合物(例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートや、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等)とを反応させる方法(例えば、特許第3888653号公報参照);特定ヒドロキシ基含有化合物と、反応性基を導入可能な酸クロリド(例えば、(メタ)アクリル酸クロリド)とを脱塩酸反応させる方法;特定ヒドロキシ基含有化合物と、反応性基を導入可能なカルボン酸(例えば、(メタ)アクリル酸)を脱水反応させる方法;特定ヒドロキシ基含有化合物と無水イタコン酸とをエステル化反応させる方法;等により得ることができる。
【0045】
上記の中でも、特定ヒドロキシ基含有化合物と、反応性基を有するイソシアネート化合物とを反応させる方法、及び特定ヒドロキシ基含有化合物と、反応性基を導入可能な酸クロリドとを反応させる方法は、反応が容易である点で好ましい。
【0046】
<(B)成分:重合性化合物>
重合性化合物は、本組成物に対する放射線照射に伴い、重合性化合物同士で反応して重合体を生成し得る化合物である。なお、重合性化合物は、上述した反応性ポリエーテル化合物とは異なる成分であり、パーフルオロポリエーテル鎖を有しない。
【0047】
重合性化合物としては、ラジカル重合性基を1個又は2個以上有する化合物を好ましく使用できる。このような重合性化合物としては、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する化合物が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイル基含有化合物、鎖状ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。重合性化合物としては、得られる硬化物の透明性を良好にする観点から、中でも(メタ)アクリロイル基含有化合物を好ましく使用できる。
【0048】
(メタ)アクリロイル基含有化合物の具体例としては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、鎖状構造からなる(メタ)アクリル酸エステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、重合性が良好である点や、可塑性が比較的高い点で好ましく使用できる。
【0049】
重合性化合物としては、単官能化合物を用いてもよく、多官能化合物を用いてもよい。また、重合性化合物として、単官能化合物と多官能化合物との混合物を用いてもよい。硬さの調整による基板との接着性向上や硬化性の観点から、本組成物に配合する重合体化合物は、多官能化合物を含むことが好ましい。
【0050】
単官能重合性化合物の具体例としては、不飽和カルボン酸として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸無水物としては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物等が挙げられる。鎖状構造からなる(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレンエステル、(メタ)アクリル酸ポリオキシカルボニルアルキレンエステル、ジカルボン酸のモノ(メタ)アクリロイルオキシアルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレンエステルとしては、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシテトラエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルオキシジエチレングリコール等が挙げられる。(メタ)アクリル酸ポリオキシカルボニルアルキレンエステルとしては、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ジカルボン酸のモノ(メタ)アクリロイルオキシアルキルエステルとしては、こはく酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル等が挙げられる。
【0051】
脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸4-ブチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシメチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,5]デカン-8-イルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチルメチル、(メタ)アクリル酸ナフチルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニルチオエチル、(メタ)アクリル酸m-フェノキシフェニルメチル、(メタ)アクリル酸p-フェノキシフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o-フェニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸ポリエチレンオキシノニルフェニル、(メタ)アクリル酸(1-ナフチル)メチル、(メタ)アクリル酸(2-ナフチル)メチル、(メタ)アクリル酸(1,1’-ビフェニル-4-イル)メチル等が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリルアミド化合物としては、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等が挙げられる。鎖状ビニル化合物としては、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、t-ブトキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、o-ビニル安息香酸、m-ビニル安息香酸、p-ビニル安息香酸、ビニルナフタレン等が挙げられる。マレイミド化合物としては、N-メチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(p-メチルフェニル)マレイミド等が挙げられる。
【0053】
単官能重合性化合物の更なる具体例としては、下記式(b1-1)~式(b1-21)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化7】
【化8】
(式(b1-1)~式(b1-21)中、R20は、水素原子又はメチル基である。R21は、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。nは0~10の整数である。)
【0054】
多官能重合性化合物としては、多官能(メタ)アクリロイル基含有化合物の具体例として、2官能(メタ)アクリル酸エステル、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル等を例示できる。これらの具体例としては、2官能(メタ)アクリル酸エステルとして、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、カルボキシ基含有多塩基酸変性(メタ)アクリルオリゴマーの他、直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上のヒドロキシ基とを有し、かつ3個、4個又は5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート化合物等が挙げられる。
【0056】
多官能重合性化合物の更なる具体例としては、下記式(b2-1)~式(b2-13)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化9】
【化10】
(式(b2-1)~式(b2-13)中、R20は、水素原子又はメチル基である。m及びnは、それぞれ独立して0~10の整数である。x、y及びzは、それぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、1≦x+y+z≦3を満たす。)
【0057】
本組成物を用いて得られる硬化物の透明性や低屈折率化を図る観点から、本組成物に配合する重合性化合物は、上記の中でも、芳香環を有しない化合物であることが好ましく、鎖状化合物であることがより好ましい。
【0058】
本組成物における重合性化合物の含有量は、反応性ポリエーテル化合物と重合性化合物との合計量100質量部に対して、5~99.99質量部であることが好ましい。本組成物における重合性化合物の含有量を上記範囲とすることにより、本組成物の光硬化性を良好にすることができる。このような観点から、重合性化合物の含有量は、反応性ポリエーテル化合物と重合性化合物との合計量100質量部に対して、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。また、重合性化合物の含有量は、反応性ポリエーテル化合物と重合性化合物との合計量100質量部に対して、80質量部以下がより好ましく、60質量部以下が更に好ましく、50質量部以下がより更に好ましく、45質量部以下が一層好ましく、40質量部以下がより一層好ましい。
【0059】
<(C)成分:光重合開始剤>
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤及び光塩基発生剤よりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用することができる。これらのうち、光重合開始剤としては、本組成物の光硬化性を高める観点から、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤及び光塩基発生剤よりなる群から選択される2種以上を組み合わせて使用することが好ましく、光ラジカル重合開始剤のうちの1種以上と、光酸発生剤のうちの1種以上とを組み合わせて使用することがより好ましい。
【0060】
・光ラジカル重合開始剤
光ラジカル重合開始剤は、放射線に感応してラジカルを発生し、重合を開始できる化合物である。光ラジカル重合開始剤としては、O-アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0061】
O-アシルオキシム化合物としては、例えば1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、1-(9-エチル-6-ベンゾイル-9.H.-カルバゾール-3-イル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、1-〔9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。また、市販品として、例えばアデカアークルズN-1919T、同NCI-831E、同NCI-930、同NCI-730(以上、ADEKA社製);イルガキュアOXE01、同OXE2、同OXE3、同OXE4(以上、BASF社製);等が挙げられる。
【0062】
アセトフェノン化合物としては、例えばα-アミノケトン化合物、α-ヒドロキシケトン化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、α-アミノケトン化合物として、例えば2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。α-ヒドロキシケトン化合物としては、例えば1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。また、市販品として、例えばイルガキュア369、同369E、同379EG、同651、同184、同907(以上、BASF社製)等が挙げられる。
【0063】
ビイミダゾール化合物としては、例えば2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールまたは2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0064】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0065】
本組成物における光ラジカル重合開始剤の含有量は、本組成物中に含まれる反応性ポリエーテル化合物と重合性化合物との合計量100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、光ラジカル重合開始剤の含有量は、本組成物中に含まれる反応性ポリエーテル化合物と重合性化合物との合計量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましい。光ラジカル重合開始剤の含有量を上記範囲とすることにより、良好な硬化性と透明性を示す硬化性組成物を得ることができる。
【0066】
・光酸発生剤
光酸発生剤としては、放射線に感応して酸を発生する公知の化合物を使用できる。光酸発生剤の具体例としては、例えば、オキシムスルホネート化合物、スルホンイミド化合物、オニウム塩、ハロゲン含有化合物(トリクロロメチル-s-トリアジン化合物等)、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0067】
これらの具体例としては、例えばオキシムスルホネート化合物として、(5-プロピルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-オクチルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(カンファースルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-p-トルエンスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(2-[2-(4-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)]-2,3-ジヒドロチオフェン-3-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリル)、2-(オクチルスルホニルオキシイミノ)-2-(4-メトキシフェニル)アセトニトリル、及びこれらの誘導体、国際公開第2016/124493号に記載の化合物等が挙げられる。オキシムスルホネート化合物の市販品としては、BASF社製のIrgacure PAG121等が挙げられる。
【0068】
スルホンイミド化合物の具体例としては、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、トリフルオロメタンスルホン酸-1,8-ナフタルイミド、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0069】
オニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、第4級アンモニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩等が挙げられる。これらの具体例としては、ジフェニルヨードニウム塩として、例えばジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホナート等を;トリフェニルスルホニウム塩として、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホナート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムブチルトリス(2、6-ジフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0070】
また、スルホニウム塩として、例えば、ベンジルスルホニウム塩、ジベンジルスルホニウム塩、置換ベンジルスルホニウム塩等を挙げることができる。アルキルスルホニウム塩としては、例えば4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート等のアルキルスルホニウム塩;ベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のベンジルスルホニウム塩;ジベンジル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のジベンジルスルホニウム塩;p-クロロベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p-ニトロベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等の置換ベンジルスルホニウム塩;等を挙げることができる。
【0071】
ベンゾチアゾニウム塩としては、例えば3-ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3-ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、3-ベンジルベンゾチアゾニウムテトラフルオロボレート、3-(p-メトキシベンジル)ベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3-ベンジル-2-メチルチオベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3-ベンジル-5-クロロベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0072】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば4,7-ジ-n-ブトキシ-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウム-10-カンファースルホネート、等を挙げることができる。また、オニウム塩としては、特開2014-174235号公報、特開2016-87486号公報、特開2014-157252号公報、特開2015-18131号公報等に記載のオニウム塩も光酸発生剤として用いることができる。
【0073】
また、オキシムスルホネート化合物、スルホンイミド化合物、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、及びカルボン酸エステル化合物の具体例としては、特開2014-157252号公報の段落0078~0106に記載された化合物、国際公開第2016/124493号に記載された化合物等が挙げられる。光酸発生剤としては、イオン性光酸発生型又は非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤として公知の化合物を使用することもできる。光酸発生剤としては、これらのうち、放射線感度の観点から、オキシムスルホネート化合物、スルホンイミド化合物及びオニウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用できる。
【0074】
本組成物における光酸発生剤の含有量は、本組成物中に含まれる反応性ポリエーテル化合物と重合性化合物との合計量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、光酸発生剤の含有量は、本組成物中に含まれる反応性ポリエーテル化合物と重合性化合物との合計量100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましい。光酸発生剤の含有量を上記範囲とすることにより、良好な硬化性と透明性を示す硬化性組成物を得ることができる。
【0075】
・光塩基発生剤
光塩基発生剤としては、光によって塩基を発生する化合物として公知の化合物の中から適宜選択して使用することができる。具体例としては、オルトニトロベンジルカルバメート類、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルカルバメート類、アシルオキシイミノ類等が挙げられる。光塩基発生剤を本組成物に配合する場合、本組成物における光塩基発生剤の含有量は、本組成物中に含まれる反応性ポリエーテル化合物と重合性化合物との合計量100質量部に対して、0.01~5質量部とすることが好ましい。
【0076】
本組成物における光重合開始剤の含有量の合計は、本組成物中に含まれる反応性ポリエーテル化合物と重合性化合物との合計量100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、本組成物中に含まれる本組成物中に含まれる反応性ポリエーテル化合物と重合性化合物との合計量100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量を上記範囲とすることにより、良好な硬化性と透明性を示す感光性組成物とすることができる。
【0077】
<その他の成分>
本組成物は、上述した反応性ポリエーテル化合物、重合性化合物及び光重合開始剤に加え、これら以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう)を更に含有していてもよい。その他の成分としては、溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤、消泡剤、接着助剤、増感剤、可塑剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0078】
本組成物は、反応性ポリエーテル化合物、重合性化合物及び光重合開始剤と共に、溶剤を含んでいてもよい。本組成物に溶剤を含有させる場合、溶剤は、本組成物に配合される各成分を溶解し、かつ各成分と反応しない有機溶媒が好ましい。溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレンジグリコールモノメチルエーテル、エチレンジグリコールエチルメチルエーテル、ジメチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらのうち、溶剤としては、エーテル類及びエステル類よりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用することができる。
【0079】
本組成物は、反応性ポリエーテル化合物、重合性化合物及び光重合開始剤、並びに任意に配合されるその他の成分を所定の割合で混合することにより得ることができる。なお、その他の成分の配合量は、本開示の効果を損なわない範囲で各成分に応じて適宜選択することができる。
【0080】
本組成物が溶剤を含む場合、硬化性組成物中の溶剤以外の成分の合計質量が、硬化性組成物の全質量に対して占める割合(以下、「固形分濃度」ともいう)は、粘性や揮発性等を考慮して適宜に選択され得る。本組成物の固形分濃度は、好ましくは5~70質量%の範囲である。固形分濃度が5質量%以上であると、本組成物を基板上に塗布した際に塗膜の膜厚を十分に確保できる。また、固形分濃度を70質量%以下とすることにより、塗膜の膜厚が過大となりすぎず、更に本組成物の粘性を適度に高くでき、良好な塗布性を確保できる。本組成物の固形分濃度は、より好ましくは10~60質量%である。
【0081】
<硬化物の製造方法>
上記のように調製された硬化性組成物を用いることにより硬化物を製造することができる。本組成物は特に、硬化性組成物により形成された膜の一部を露光し、未露光部をアルカリ現像液に溶解させることによって得られたパターン(すなわち、硬化性組成物により形成された部分)を熱処理するネガ型のパターン形成材料として好適である。
【0082】
本開示の硬化物は、例えば、以下の工程(I)~(IV)を含む方法により製造することができる。
(I) 基材上に本組成物を塗布する工程
(II) 基材上に塗布した本組成物に放射線を照射する工程
(III) 放射線を照射した後の本組成物を現像する工程
(IV) 現像後の本組成物を加熱して硬化させる工程
以下、本開示の製造方法における各工程(工程(I)~(IV))について説明する。
【0083】
<工程(I):塗布工程>
工程(I)は、本組成物を基材上に塗布することにより、基材上に塗膜を形成する工程である。基材としては、例えば、ガラス基板、シリコンウエハ、プラスチック基板、プラスチックフィルム及びこれらの表面に着色レジスト、オーバーコート、反射防止膜、各種金属薄膜、封止膜等が形成された基板等が挙げられる。プラスチック基板及びプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックからなる樹脂基板及びフィルムが挙げられる。これらの基材には、各種素子(例えば、フォトダイオード等の受光素子や、有機発光ダイオード等の発光素子)が予め設けられていてもよい。
【0084】
本組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法等の適宜の方法を採用することができる。塗布方法としては、これらのうち、スピンコート法、バー塗布法、スリットダイ塗布法が好ましい。
【0085】
本組成物を基材上に塗布した後には、液だれ防止等を目的として、本組成物を予備加熱する処理(プレベーク)が行われてもよい。プレベークの条件は、各成分の種類や使用割合等によって適宜設定することができる。プレベークの条件は、例えば、60~100℃で30秒間~10分間程度の条件とすることができる。プレベーク温度は、有機EL素子に適用可能にする観点から、好ましくは60~90℃である。形成される塗膜の膜厚は、プレベーク後の値として、0.1~20μmが好ましく、0.2~15μmがより好ましい。
【0086】
<工程(II):露光工程>
工程(II)は、工程(I)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程である。この放射線照射により露光部において硬化反応が進行する。工程(II)において、塗膜に対する放射線照射は、通常、マスクを介して実施される。マスクは、ハーフトーンマスクやグレイトーンマスク等の多階調マスクであってもよい。
【0087】
塗膜に照射する放射線としては、例えば、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。紫外線としては、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)等が挙げられる。X線としては、例えばシンクロトロン放射線等が挙げられる。荷電粒子線としては、例えば、電子線等が挙げられる。これらのうち、塗膜に照射する放射線は紫外線が好ましく、波長200nm以上380nm以下の紫外線がより好ましい。使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が挙げられる。放射線の露光量としては、500J/m~5,000J/m(50~500mJ/cm)が好ましい。
【0088】
<工程(III):現像工程>
工程(III)は、工程(II)により放射線が照射された塗膜を現像することにより、基材上にパターンを形成する工程である。この現像工程により、基材上に形成された塗膜のうち未露光部が除去されて、露光部からなるパターンを基材上に形成することができる。
【0089】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ〔4.3.0〕-5-ノナンなどのアルカリ(塩基性化合物)の水溶液等が挙げられる。また、アルカリの水溶液に、メタノールやエタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適量添加したり、本組成物を溶解可能な各種有機溶媒を少量添加したりすることにより得られる水溶液を現像液として使用してもよい。
【0090】
現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を採用することができる。現像時間は、本組成物の組成によって適宜調整すればよい。現像時間は、例えば20秒~120秒である。
【0091】
<工程(IV):加熱工程>
工程(IV)は、現像後のパターンを加熱する工程である。工程(IV)の加熱処理により更に硬化が進行して、良好な耐熱性及び耐薬品性を示す硬化物を得ることができる。加熱処理は、例えばオーブンやホットプレート等の加熱装置を用いて行うことができる。硬化物としてマイクロレンズを得る場合、工程(IV)の加熱処理によって現像後のパターンをサーマルフローさせることにより半球状のマイクロレンズを得るようにしてもよい。
【0092】
工程(IV)における加熱温度は、有機EL素子への適用を可能にする観点から、100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましい。また、耐熱性及び耐薬品性が高い硬化物を得る観点から、工程(IV)における加熱温度は、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。加熱時間は、加熱装置の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、ホットプレートにより加熱を行う場合、加熱時間は、例えば5~60分間である。また、オーブンにより加熱を行う場合、加熱時間は、例えば10~90分間である。工程(IV)においては、複数回の加熱処理を行うステップベーク法を用いてもよい。
【0093】
また、本開示の製造方法は、任意の工程として、工程(IV)による加熱工程の前又は後の硬化物に対し放射線を照射する工程(以下、「ポスト露光工程」ともいう)を更に含んでいてもよい。ポスト露光工程における放射線の照射(以下、「ポスト露光」ともいう)により、耐熱性や耐薬品性等を更に向上でき、信頼性がより高い硬化物とすることができる。ポスト露光における放射線の種類や露光条件については、工程(II)と同様の条件を採用することができる。なお、ポスト露光の際の照射光の波長や照射量、光源等の条件は、工程(II)と同一でもよく異なってもよい。
【0094】
・用途
本組成物は、各成分の相溶性が高く硬化前における透明性に優れている。また、本組成物は、光硬化性及び保存安定性にも優れている。さらに、本組成物により形成される硬化物は、パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物を含むことから低屈折率であり、透明性及び基板との接着性にも優れている。このような本組成物は、硬化物の透明性が要求される用途に好適であり、例えば、有機EL素子用又は固体撮像素子用の光学部材を形成するための硬化性組成物として好適である。本組成物により形成される光学部材は、例えば、高屈折率材との組み合わせにより、有機EL素子において有機発光層から放出される光の経路を調整して光取り出し効率を高めたり、固体撮像素子において受光素子(フォトダイオード)に光を集めてセンサ感度を向上させたりする用途に好ましく適用することができる。また、本組成物により形成される硬化物を、撥水性や撥油性を有する表面保護膜とし、当該表面保護膜を表示素子等の基材に貼り付けることによって基材表面に汚れや傷が発生することを抑制する用途に適用してもよい。
【0095】
本組成物により形成される光学部材は、好ましくは平坦化膜又はレンズである。平坦化膜は、半導体素子等が形成された基板の表面を平坦化するために基板上に形成される。レンズは、有機EL素子や固体撮像素子(例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ)に設けられる微小集光体(以下、「マイクロレンズ」ともいう)又は層間レンズであり、有機EL素子においては、各画素における光取り出し効率の向上や視野角調整を目的として各画素に設けられる。また、固体撮像素子においては、受光素子に光を集めてセンサ感度を向上させる目的で設けられる。本組成物は、好ましくは、平坦化膜形成用又はレンズ製造用の硬化性組成物である。
【0096】
以上説明した本開示によれば、次の手段が提供される。
【0097】
〔手段1〕 (A)-[(C2m)O]-C2k-で表されるパーフルオロポリエーテル鎖(ただし、mは1以上の整数であり、nは2以上の整数であり、複数の(C2m)は同一又は異なる。kは1~6の整数である。)と、前記パーフルオロポリエーテル鎖の各末端に対し直接又は2価の連結基を介して結合する複数個の反応性基と、を有する反応性ポリエーテル化合物、(B)重合性化合物(ただし、前記反応性ポリエーテル化合物を除く。)、及び、(C)光重合開始剤を含有し、前記反応性ポリエーテル化合物が、前記反応性基として第1反応性基と、前記第1反応性基とは異なる第2反応性基とを1分子内に有する化合物を含むか、又は、前記反応性基が分子間で異なる第1化合物と第2化合物とを含む、硬化性組成物。
〔手段2〕 前記第1反応性基と前記第2反応性基とは極性が異なり、前記第1化合物が有する前記反応性基と前記第2化合物が有する前記反応性基とは極性が異なる、〔手段1〕に記載の硬化性組成物。
〔手段3〕 前記反応性基は、(メタ)アクリロイル基、-Si(OR(R3-tで表される基(ただし、R及びRは、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、tは1~3の整数であり、tが2又は3の場合、複数のRは同一又は異なり、tが1の場合、複数のRは同一又は異なる。)、ビニル基、アリル基及び環状エーテル基よりなる群から選択される、〔手段1〕又は〔手段2〕に記載の硬化性組成物。
〔手段4〕 前記2価の連結基は、炭素数2~10のアルカンジイル基における一部のメチレン基が酸素原子、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合に置き換えられた基である、〔手段1〕~〔手段3〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔手段5〕 前記反応性ポリエーテル化合物が、前記第1反応性基と前記第2反応性基とを1分子内に有する化合物を含み、前記第1反応性基は、上記に示すA群、B群、C群及びD群のうちいずれかの群の中から選ばれる基であり、前記第2反応性基は、上記に示すA群、B群、C群及びD群のうち、前記第1反応性基とは異なる群の中から選ばれる基である、〔手段1〕~〔手段4〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔手段6〕 前記反応性ポリエーテル化合物が、上記式(1)で表される化合物を含む、〔手段1〕~〔手段5〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔手段7〕 前記反応性ポリエーテル化合物が、前記第1化合物と前記第2化合物とを含み、前記第1化合物が有する前記反応性基は、上記に示すA群、B群、C群及びD群のうちいずれかの群の中から選ばれる基であり、前記第2化合物が有する前記反応性基は、上記に示すA群、B群、C群及びD群のうち、前記第1化合物が有する前記反応性基とは異なる群の中から選ばれる基である、〔手段1〕~〔手段6〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔手段8〕 前記反応性ポリエーテル化合物の重量平均分子量が500~5,000である、〔手段1〕~〔手段7〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔手段9〕 前記パーフルオロポリエーテル鎖が、-[CFO]-、-[CFCFO]-、又は-[CFO]-及び-[CFCFO]-の両方を繰返し単位として有する、〔手段1〕~〔手段8〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔手段10〕 前記重合性化合物は、芳香環を有しない、〔手段1〕~〔手段9〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔手段11〕 前記重合性化合物の含有量が、前記反応性ポリエーテル化合物と前記重合性化合物との合計量100質量部に対して5~50質量部である、〔手段1〕~〔手段10〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔手段12〕 更に溶剤を含む、〔手段1〕~〔手段11〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔手段13〕 平坦化膜、表面保護膜又はレンズの形成用である、〔手段1〕~〔手段12〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔手段14〕 〔手段1〕~〔手段13〕のいずれかに記載の硬化性組成物により形成される硬化物。
〔手段15〕 平坦化膜、表面保護膜又はレンズである、〔手段14〕に記載の硬化物。
〔手段16〕 〔手段15〕に記載の硬化物を備える有機EL素子。
〔手段17〕 〔手段15〕に記載の硬化物を備える固体撮像素子。
〔手段18〕 上記式(1)で表される化合物。
【実施例0098】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0099】
本実施例において、反応性ポリエーテル化合物の重量平均分子量(Mw)は以下の方法により測定した。
・測定方法:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法
・装置:昭和電工社のGPC-101
・GPCカラム:島津ジーエルシー社のGPC-KF-801、GPC-KF-802、GPC-KF-803及びGPC-KF-804を結合
・移動相:テトラヒドロフラン
・カラム温度:40℃
・流速:1.0mL/分
・試料濃度:1.0質量%
・試料注入量:100μL
・検出器:示差屈折計
・標準物質:単分散ポリスチレン
【0100】
1.(A)反応性ポリエーテル化合物の合成
[合成例1]
フッ素含有ポリエーテルジオール(商品名:FOMBLIN D2、ソルベイジャパン社製)、フッ素含有ポリエーテルジオールの水酸基量に対し1.6~2.0当量の2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートをフラスコに入れ、フッ素含有ポリエーテルジオールに対し0.03~3質量%量のジブチル錫ジラウレートを入れた後、残存イソシアネート濃度が0.1質量%以下になるまで25~60℃にて撹拌することにより、「アクリロイル基-O-CHCH-NH-CO-O-L-O-CO-NH-CHCH-O-アクリロイル基」で表される化合物(ただし、Lは「-CH-CFO-(CFCFO)-(CFO)-CF-CH-」を表す(以下同じ)。p及びqはそれぞれ、p:0~14、q:0~24の整数を表す(以下同じ))を得た。得られた化合物を「化合物(A-6)」とした。化合物(A-6)の重量平均分子量(Mw)は1,780であった。
【0101】
[合成例2]
反応性基含有イソシアネート化合物を変更した以外は合成例1と同様にして、下記に示す化合物(A-5)を合成した。
A-5: Si(OR-CHCHCH-NH-CO-O-L-O-CO-NH-CHCHCH-Si(OR
なお、Rはエチル基を表す(以下同じ)。化合物(A-5)のMwは1,990であった。
【0102】
[合成例3]
フッ素含有ポリエーテルジオール(商品名:FOMBLIN D2、ソルベイジャパン社製)、フッ素含有ポリエーテルジオールの水酸基量に対し0.8~1.0当量の2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートをフラスコに入れ、フッ素含有ポリエーテルジオールに対し0.03~3質量%の量のジブチル錫ジラウレートを入れた後、25~60℃にて数時間撹拌した。その後、フッ素含有ポリエーテルジオールの水酸基量に対し0.8~1.0当量の3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランをフラスコに入れ、残存イソシアネート濃度が0.1質量%以下になるまで25~60℃にて撹拌することにより、下記に示す化合物(A-1)を合成した。
A-1: アクリロイル基-O-CHCH-NH-CO-O-L-O-CO-NH-CHCHCH-Si(OR
化合物(A-1)のMwは1,780であった。
【0103】
[合成例4、5]
末端官能基が異なるオリゴマーについて、合成に使用するイソシアネート化合物を変更し、合成例3と同様の手法にて合成することにより下記に示すオリゴマー(化合物(A-2)、化合物(A-4))を得た。
A-2: アクリロイル基-O-CHCH-NH-CO-O-L-O-CO-NH-CH=CH
A-4: アクリロイル基-O-CHCH-NH-CO-O-L-O-CO-CH-CH=CH
化合物(A-2)のMwは1,710であり、化合物(A-4)のMwは1,724であった。
【0104】
[合成例6]
文献(特開2010-275306号公報等)に記載の方法を参考に、該当するモル比にて反応させることにより、下記に示す化合物(A-3)を合成した。具体的には、フッ素含有ポリエーテルジオール(商品名:FOMBLIN D2、ソルベイジャパン社製)、1モル、アクリル酸クロリド1モルを溶剤中、塩基触媒存在下で反応させることにより中間体を得た。その後、ポタジウムハイドライドを溶剤中で反応させ、1モル当量の2-(6-クロロヘキシルオキシメチル)オキシランを反応させることにより化合物(A-3)を得た。
A-3: アクリロイル基-O-L-O-CHCHCHCHCHCH-O-グリシジル基
化合物(A-3)のMwは1,726であった。
【0105】
2.硬化性組成物の調製及び評価
硬化性組成物の調製に用いた(A)反応性ポリエーテル化合物、(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤及び(D)溶剤を以下に示す。
・(A)反応性ポリエーテル化合物
A-1~A-6:合成例1~6で合成した化合物
A-7;式「Si(OCH-(CH-CFO-(CFCFO)p-(CFO)q-CF-(CH-Si(OCH」で表される化合物(Mw=1,500)
・(B)重合性化合物
B-1:2-エチルヘキシルアクリレート
B-2:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
B-3:ネオペンチルジアクリレート
・(C)光重合開始剤
C-1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
C-2:トリフェニルスルホニウム塩(商品名「SP-150」、ADEKA社製)
・(D)溶剤
D-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0106】
[実施例1~13、比較例1~3]
表1に示される各成分を、撹拌機を備えた反応容器に入れ、液温度50℃で1時間撹拌して、各実施例及び比較例の組成物を調製した。また、調製した各組成物について、以下に示す各評価を行った。なお、表1中の数値の単位は質量部である。
【0107】
(1)保存安定性
各組成物を60mLプラスチックボトルに入れ、暗環境において40℃のオーブン内に1か月静置した。その後、硬化性組成物の増粘度合いを目視にて観察し、保存安定性を評価した。硬化性組成物に粘度の増大(増粘)が見られない場合を「○(良好)」、増粘が見られた場合を「×(不良)」と判定した。
【0108】
(2)組成物の透明度
得られた硬化性組成物を透明な10mLバイアル瓶に5g程度入れ、硬化性組成物の透明度を目視にて確認した。硬化性組成物に白濁が観察されなかった場合を「○(良好)」、やや白濁が観察されたが実用レベルであった場合を「△(可)」、白濁が観察された場合を「×(不良)」と判定した。
【0109】
(3)光硬化性
(実施例1~11、比較例1~3)
200μm厚の塗膜を形成可能なアプリケーターバーを用いてガラス板上に各組成物を塗布し、窒素下で高圧水銀ランプを用いて1J/cmのエネルギーの紫外線を照射した。照射後、直ちに指触試験にて膜の硬化具合を確認し、膜の生成度合いとタック性から硬化性組成物の光硬化性を判定した。硬化膜が形成され、かつタックが無い場合を「○(良好)」、ややタックが有るが実用レベルであった場合を「△(可)」、タック有りの場合を「×(不良)」と判定した。
(実施例12、13)
ガラス板上に各組成物をスピンコーティングにより塗布し、80℃3分オーブンに入れた後、窒素下で高圧水銀ランプを用いて1J/cmのエネルギーの紫外線を照射した。紫外線照射後は実施例1~11、比較例1~3と同様の方法により硬化性組成物の光硬化性を判定した。
【0110】
(4)フィルム濁度
(実施例1~11、比較例1~3)
200μm厚の塗膜を形成可能なアプリケーターバーを用いてガラス板上に各組成物を塗布し、窒素下で高圧水銀ランプを用いて1J/cmのエネルギーの紫外線を照射した。照射後、直ちに目視により膜の濁度(フィルム濁度)を確認した。白濁が観察されなかった場合を「○(良好)」、やや白濁が観察されたが実用レベルであった場合を「△(可)」、白濁が観察された場合を「×(不良)」と判定した。
(実施例12、13)
ガラス板上に各組成物をスピンコーティングにより塗布し、80℃3分オーブンに入れた後、窒素下で高圧水銀ランプを用いて1J/cmのエネルギーの紫外線を照射した。紫外線照射後は実施例1~11、比較例1~3と同様の方法によりフィルム濁度を判定した。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示すように、実施例1~13の硬化性組成物は、硬化前の組成物の透明度が高く、保存安定性及び光硬化性が良好であった。また、実施例1~13では、硬化性組成物により得られた硬化膜は光硬化後の濁度が低い、すなわち硬化膜の透明度が高いという結果が得られた。特に、(A)反応性ポリエーテル化合物として、分子鎖の両末端に結合する反応性基が1分子内で互いに異なる化合物を用いた実施例1~10,12,13の硬化性組成物は、優れた光硬化性を示し、またフィルムの白濁も観察されず、特に優れていた。
【0113】
これに対し、(A)反応性ポリエーテル化合物として、分子鎖の両末端に結合する反応性基が1分子内で互いに同一である化合物を用いた比較例1~3では、硬化前の組成物の透明度及び光硬化後のフィルム濁度の一方又は両方の評価において不良であり、実施例1~13よりも性能が劣っていた。また、比較例1及び比較例3については更に、保存安定性及び光硬化性の評価が不良であった。