(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025074360
(43)【公開日】2025-05-13
(54)【発明の名称】ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
B60N 2/879 20180101AFI20250502BHJP
A47C 7/72 20060101ALI20250502BHJP
【FI】
B60N2/879
A47C7/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025035681
(22)【出願日】2025-03-06
(62)【分割の表示】P 2023551467の分割
【原出願日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】63/261,755
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 信之
(72)【発明者】
【氏名】松本 直也
(57)【要約】
【課題】スピーカが内蔵されたヘッドレストにおいて、パッドの局所的な変形を抑制する。
【解決手段】乗物用シート1のヘッドレスト4は、シートバック3に支持されるヘッドレストピラー11と、ヘッドレストピラーに結合されたヘッドレスト本体12と、ヘッドレスト本体に支持された少なくとも1つのスピーカ13と、ヘッドレスト本体に被せられ、スピーカと対向する部分に少なくとも1つのパッド開口部121を有するパッド14と、パッド開口部を覆うように、パッドの外面に沿って設けられ、縁部において、パッドの外面に結合されたメッシュ状の保形材15と、パッド及び保形材に被せられた表皮材16とを有する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートのヘッドレストであって、
シートバックに支持されるヘッドレストピラーと、
前記ヘッドレストピラーに結合されたヘッドレスト本体と、
前記ヘッドレスト本体に支持された少なくとも1つのスピーカと、
前記ヘッドレスト本体に被せられ、前記スピーカと対向する部分に少なくとも1つのパッド開口部を有するパッドと、
前記パッド開口部を覆うように、前記パッドの外面に沿って設けられ、縁部において、前記パッドの外面に結合されたメッシュ状の保形材と、
前記パッド及び前記保形材に被せられた表皮材とを有し、
前記ヘッドレスト本体は、
前記ヘッドレストピラーに結合され、前後を向く支持プレートと、
前記支持プレートの後側に設けられた後ケースとを有し、
前記保形材の上端は、前記パッドの上側の後端を越えて後方に延び、前記後ケースに結合され、前記保形材の下端は、前記パッドの下側の後端を越えて後方に延び、前記後ケースに結合されているヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートのヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部にスピーカを有するヘッドレストが開示されている。ヘッドレストは、空洞部を形成する枠体と、枠体の外面に設けられたパッドと、パッドを覆う表皮材とを有する。スピーカは空洞部に向けて配置され、枠体には開口部が形成されている。パッド及び表皮材には、開口部に連通する通気孔が形成されている。スピーカから出力された音は、空洞部、開口部、通気孔を介してヘッドレストの外部に伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パッド及び表皮材に形成された通気孔は、パッド及び表皮材の剛性を低下させるという問題がある。その結果、ヘッドレストは通気孔が位置する部分で局所的に柔らかさが変化し、使用者の頭部に違和感を与える虞がある。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、スピーカが内蔵されたヘッドレストにおいて、パッドの局所的な変形を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、乗物用シート(1)のヘッドレスト(4)であって、シートバック(3)に支持されるヘッドレストピラー(11)と、前記ヘッドレストピラーに結合されたヘッドレスト本体(12)と、前記ヘッドレスト本体に支持された少なくとも1つのスピーカ(13)と、前記ヘッドレスト本体に被せられ、前記スピーカと対向する部分に少なくとも1つのパッド開口部(121)を有するパッド(14)と、前記パッド開口部を覆うように、前記パッドの外面に沿って設けられ、縁部において、前記パッドの外面に結合されたメッシュ状の保形材(15)と、前記パッド及び前記保形材に被せられた表皮材(16)とを有する。
【0007】
この態様によれば、スピーカが内蔵されたヘッドレストにおいて、局所的な変形を抑制することができる。保形材がパッドに剛性を付与するため、パッドの開口部の変形が抑制される。
【0008】
上記の態様において、前記保形材の縁部には、前記保形材よりも剛性が高い枠部(125)が設けられ、前記枠部が前記パッドに結合されてもよい。
【0009】
この態様によれば、保形材及び枠部によって、パッド開口部の変形が一層抑制される。
【0010】
上記の態様において、前記パッド開口部は前記パッドの前面に開口し、前記保形材は、前記パッドの前記前面を上下に延び、前記パッドの上端及び下端に結合されてもよい。
【0011】
この態様によれば、保形材が比較的広い範囲に配置されているため、パッドに加わる荷重が分散され、パッドの局所的な変形が一層抑制される。
【0012】
上記の態様において、前記ヘッドレスト本体は、前記ヘッドレストピラーに結合され、前後を向く支持プレート(35)と、前記支持プレートの前側に設けられ、前記支持プレートとの間に内部空間(36)を形成する前ケース(37)と、前記支持プレートの後側に設けられた後ケース(38)とを有し、前記スピーカは前記支持プレートの前面に支持され、前記内部空間に配置され、前記前ケースは、前記スピーカと対向する部分に前後に貫通する少なくとも1つのケース開口部(66)を有し、前記スピーカの周囲には第1吸音材(117)が設けられてもよい。
【0013】
この態様によれば、第1吸音材によって、スピーカから支持プレート、前ケース、及び後ケースに伝達する振動が抑制される。
【0014】
上記の態様において、前記支持プレートの前記前面の左端及び右端に前記スピーカがそれぞれ設けられ、前記内部空間の左右方向における中央部には、前記内部空間を左右に区画する隔壁(69)が設けられてもよい。
【0015】
この態様によれば、左右のスピーカから出力される音の干渉が抑制される。
【0016】
上記の態様において、前記ケース開口部の縁部には、前記スピーカに向けて延びるファンネル(81)が設けられてもよい。
【0017】
この態様によれば、ファンネルによって各スピーカから出力される音の向きが規制される。これにより、左右のスピーカから出力される音の干渉が抑制される。
【0018】
上記の態様において、前記隔壁と左右の前記スピーカとの間には第2吸音材(118)が設けられてもよい。
【0019】
この態様によれば、左右のスピーカから出力される音の干渉が抑制される。
【0020】
上記の態様において、前記隔壁は、可撓性の吸音材によって形成されてもよい。
【0021】
この態様によれば、左右のスピーカから出力される音の干渉が抑制される。
【0022】
上記の態様において、前記前ケースと前記後ケースとが互いに結合することによって、前記前ケース及び前記後ケースの間に前記支持プレートが挟持され、前記前ケース及び前記後ケースと前記支持プレートとは、緩衝材(111~114)を介して互いに当接してもよい。
【0023】
この態様によれば、支持プレートから前ケース及び後ケースに伝達される振動を抑制することができる。
【0024】
上記の態様において、前記後ケースの後面には後カバー(130)が結合され、前記後カバーの前面には制振材(138)が設けられてもよい。
【0025】
この態様によれば、ヘッドレストから後方に音が伝達されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様は、乗物用シート(1)のヘッドレスト(4)であって、シートバック(3)に支持されるヘッドレストピラー(11)と、前記ヘッドレストピラーに結合されたヘッドレスト本体(12)と、前記ヘッドレスト本体に支持された少なくとも1つのスピーカ(13)と、前記ヘッドレスト本体に被せられ、前記スピーカと対向する部分に少なくとも1つのパッド開口部(121)を有するパッド(14)と、前記パッド開口部を覆うように、前記パッドの外面に沿って設けられ、縁部において、前記パッドの外面に結合されたメッシュ状の保形材(15)と、前記パッド及び前記保形材に被せられた表皮材(16)とを有する。
【0027】
この態様によれば、スピーカが内蔵されたヘッドレストにおいて、局所的な変形を抑制することができる。保形材がパッドに剛性を付与するため、パッドの開口部の変形が抑制される。
【0028】
上記の態様において、前記保形材の縁部には、前記保形材よりも剛性が高い枠部(125)が設けられ、前記枠部が前記パッドに結合されてもよい。
【0029】
この態様によれば、保形材及び枠部によって、パッド開口部の変形が一層抑制される。
【0030】
上記の態様において、前記パッド開口部は前記パッドの前面に開口し、前記保形材は、前記パッドの前記前面を上下に延び、前記パッドの上端及び下端に結合されてもよい。
【0031】
この態様によれば、保形材が比較的広い範囲に配置されているため、パッドに加わる荷重が分散され、パッドの局所的な変形が一層抑制される。
【0032】
上記の態様において、前記ヘッドレスト本体は、前記ヘッドレストピラーに結合され、前後を向く支持プレート(35)と、前記支持プレートの前側に設けられ、前記支持プレートとの間に内部空間(36)を形成する前ケース(37)と、前記支持プレートの後側に設けられた後ケース(38)とを有し、前記スピーカは前記支持プレートの前面に支持され、前記内部空間に配置され、前記前ケースは、前記スピーカと対向する部分に前後に貫通する少なくとも1つのケース開口部(66)を有し、前記スピーカの周囲には第1吸音材(117)が設けられてもよい。
【0033】
この態様によれば、第1吸音材によって、スピーカから支持プレート、前ケース、及び後ケースに伝達する振動が抑制される。
【0034】
上記の態様において、前記支持プレートの前記前面の左端及び右端に前記スピーカがそれぞれ設けられ、前記内部空間の左右方向における中央部には、前記内部空間を左右に区画する隔壁(69)が設けられてもよい。
【0035】
この態様によれば、左右のスピーカから出力される音の干渉が抑制される。
【0036】
上記の態様において、前記ケース開口部の縁部には、前記スピーカに向けて延びるファンネル(81)が設けられてもよい。
【0037】
この態様によれば、ファンネルによって各スピーカから出力される音の向きが規制される。これにより、左右のスピーカから出力される音の干渉が抑制される。
【0038】
上記の態様において、前記隔壁と左右の前記スピーカとの間には第2吸音材(118)が設けられてもよい。
【0039】
この態様によれば、左右のスピーカから出力される音の干渉が抑制される。
【0040】
上記の態様において、前記隔壁は、可撓性の吸音材によって形成されてもよい。
【0041】
この態様によれば、左右のスピーカから出力される音の干渉が抑制される。
【0042】
上記の態様において、前記前ケースと前記後ケースとが互いに結合することによって、前記前ケース及び前記後ケースの間に前記支持プレートが挟持され、前記前ケース及び前記後ケースと前記支持プレートとは、緩衝材(111~114)を介して互いに当接してもよい。
【0043】
この態様によれば、支持プレートから前ケース及び後ケースに伝達される振動を抑制することができる。
【0044】
上記の態様において、前記後ケースの後面には後カバー(130)が結合され、前記後カバーの前面には制振材(138)が設けられてもよい。
【0045】
この態様によれば、ヘッドレストから後方に音が伝達されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図4】ヘッドレスト本体及びヘッドレストピラーを示す斜視図
【
図10】ヘッドレストの縦断面図(
図2のX-X断面図)
【
図11】ヘッドレストの縦断面図(
図2のXI-XI断面図)
【
図12】ヘッドレストの水平断面図(
図2のXII-XII断面図)
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して、本発明に係るヘッドレストの実施形態について説明する。ヘッドレストは、乗物用シートに適用される。以下の実施形態では、自動車用のシートのヘッドレストの例について説明する。
【0048】
図1に示すように、シート1は、シートクッション2と、シートバック3と、ヘッドレスト4とを有する。シートクッション2は、使用者の臀部を下方から支持する。シートバック3は、シートクッション2の後部から上方に延びている。シートバック3は、使用者の背部を後方から支持する。ヘッドレスト4は、シートバック3の上端に設けられている。ヘッドレスト4は使用者の頭部を後方から支持する。
【0049】
図2~
図4に示すように、ヘッドレスト4は、ヘッドレストピラー11と、ヘッドレスト本体12と、少なくとも1つのスピーカ13と、パッド14と、少なくとも1つの保形材15と、表皮材16とを有する。
【0050】
図1に示すように、ヘッドレストピラー11は、シートバック3に支持される。
図3及び
図5に示すように、ヘッドレストピラー11は、上下方向に延びる左右の縦部21と、左右方向に延び、左右の縦部21の上端に接続した横部22とを有する。左右の縦部21及び横部22の内部にはワイヤハーネス24が配置される通路孔25が形成されている。通路孔25は、左右の縦部21の下端に下開口部26を有する。また、通路孔25は、横部22に上開口部27を有する。下開口部26及び上開口部27には、グロメット28が装着されている。グロメット28は樹脂材料によって形成されているとよい。ヘッドレストピラー11は、金属製のパイプを折曲することによって形成されているとよい。
【0051】
図1に示すように、左右の縦部21は、シートバック3の骨格をなすシートバックフレーム29に支持される。シートバックフレーム29には、縦部21を受容する左右のピラー支持部30が設けられている。ピラー支持部30は、両端が開口した筒形に形成されている。ピラー支持部30は樹脂材料によって形成されているとよい。縦部21は、対応するピラー支持部30に挿入される。縦部21の下端はピラー支持部30の下端から突出している。
図2に示すように、縦部21の外面には、長手方向に間隔をおいて配列された複数の係止溝31が形成されている。
図1に示すように、ピラー支持部30には、複数の係止溝31の1つを選択的に係止するロック装置32が設けられている。ロック装置32が複数の係止溝31の1つを係止することによって、シートバック3に対するヘッドレスト4の高さが定まる。
【0052】
図3~
図6に示すように、ヘッドレスト本体12は、ヘッドレストピラー11に結合されている。ヘッドレスト本体12は、ヘッドレストピラー11に結合され、前後を向く支持プレート35と、支持プレート35の前側に設けられ、支持プレート35との間に内部空間36を形成する前ケース37と、支持プレート35の後側に設けられた後ケース38とを有する。支持プレート35は、金属板によって形成されているとよい。前ケース37及び後ケース38は、樹脂材料によって形成されているとよい。
【0053】
支持プレート35は、面が前後を向き、左右に延びている。ヘッドレストピラー11は、支持プレート35の後面に結合されている。詳細には横部22及び左右の縦部21が支持プレート35の後面に溶接されているとよい。
【0054】
支持プレート35の中央部には、厚み方向に貫通する少なくとも1つの中央開口部41が形成されている。支持プレート35の上縁には、下方に向けて凹んだ左右の係合溝42が形成されている。支持プレート35の下部には、厚み方向に貫通する少なくとも1つの第1締結孔43が形成されている。
【0055】
ヘッドレスト本体12には、左右一対のスピーカ13が支持されている。左右一対のスピーカ13は支持プレート35の前面の左端及び右端に設けられている。各スピーカ13は、上下に長い、直方体のスピーカケース46を有する。スピーカケース46の内部には音を出力するスピーカユニット47が設けられている。スピーカユニット47はスピーカケース46の前面に露出しており、スピーカケース46の前方に向けて音を出力する。各スピーカ13は吸音材48を支持プレート35の前面に取り付けられているとよい。吸音材48は、防振材であってよく、例えばゴムシートやフェルト等であってよい。吸音材48は、スピーカ13の振動が支持プレート35に伝達することを抑制する。
【0056】
各スピーカ13の下端には、マイクユニット51が結合されている。マイクユニット51は省略されてもよい。
【0057】
各スピーカ13及び各マイクユニット51は、ワイヤハーネス24によって制御装置53と接続されている。制御装置53は、電子制御装置であり、マイクロプロセッサ(MPU)、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、及びインターフェースを有する演算装置である。制御装置53は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムをマイクロプロセッサが実行することによって、各種のアプリケーションを実現する。制御装置53は、シートバック3の内部又はシートクッション2の下方等に配置されているとよい。
【0058】
図5に示すように、ワイヤハーネス24は、シートバック3内部から、下開口部26、通路孔25、上開口部27を通過して、ヘッドレスト4の内部に到達する。ワイヤハーネス24は、支持プレート35の裏面に結合されたハーネス係止部59に支持されている。ハーネス係止部59は、ワイヤハーネス24が通過するリング部を有する樹脂製のクリップである。ハーネス係止部59は、係止爪によって支持プレート35に形成された係止孔に係止されている。ワイヤハーネス24の上端部は、複数の分岐部54に分岐している。各分岐部54は中央開口部41を通過して支持プレート35の前面側に延びている。各分岐部54には、それぞれコネクタ55が設けられている。
【0059】
図6に示すように、各スピーカ13は、先端にコネクタ13Aを有するハーネス13Bを有する。同様に、各マイクユニット51は、先端にコネクタ51Aを有するハーネス51Bを有する。各コネクタ13A、51Aには係止爪13C、51Cが設けられている。係止爪13C、51Cは、支持プレート35に形成された係止孔に係合する。これにより、各コネクタ13A、51Aは、支持プレート35の前面に取り付けられている。各コネクタ13A、51Aは、複数の中央開口部41の周囲に配置されているとよい。本実施形態では、上側の中央開口部41の左右に一対のコネクタ13Aが配置され、下側の中央開口部41の左右に一対のコネクタ51Aが配置されている。各コネクタ55は、対応するコネクタ13A、51Aに接続されている。
【0060】
図4及び
図7に示すように、前ケース37は、後方に向けて開口した箱形に形成されている。前ケース37は、面が前後を向く前壁部61と、前壁部61の上縁から後方に延びる上壁部62と、前壁部61の左右の側縁から後方に延びる左右の側壁部63と、前壁部61の下縁から後方に延びる下壁部64とを有する。前壁部61の左右の側部は、側方に向けて前方に傾斜している。
【0061】
前ケース37は、スピーカ13と対向する部分に前後に貫通する少なくとも1つのケース開口部66を有する。本実施形態では、前壁部61の左右の側部のそれぞれに、ケース開口部66が形成されている。左右のケース開口部66には、格子67が設けられている。
【0062】
前壁部61の裏面の中央部には、後方に突出し、上下に延びた隔壁69が設けられている。隔壁69は、上壁部62及び下壁部64に接続しているとよい。隔壁69は前ケース37と一体に形成されてよい。また、隔壁69は、前ケース37と独立した部材であり、異なる部材によって形成されてもよい。隔壁69は、例えば発泡ウレタン等の吸音材によって形成され、前ケース37に取り付けられてもよい。
【0063】
前壁部61の裏面の上部には、後方に突出する左右一対の上ボス71が設けられている。左右の上ボス71は隔壁69の左右に配置されている。左右の上ボス71の後端には、後方に延びる結合片72が設けられている。結合片72は下方に延びる爪部を有する。左右の上ボス71の内側にはそれぞれ肉抜き部73が形成されている。各肉抜き部73は、前壁部61の前面に開口している。
【0064】
前壁部61の裏面の下部には、後方に突出する左右一対の下ボス75が設けられている。左右の下ボス75は隔壁69の左右に配置されている。左右の下ボス75は、円筒形に形成され、後端に底板部76を有する。底板部76には、厚み方向に貫通する第2締結孔77が形成されている。
【0065】
図7、及び
図10~
図12に示すように、ケース開口部66の縁部のそれぞれには、スピーカ13に向けて延びるファンネル81がそれぞれ設けられている。ファンネル81は、筒形に形成され、前壁部61の裏面から後方に延びている。ファンネル81の後端は、スピーカ13の出力部であるスピーカユニット47に対向している。
【0066】
図4及び
図7に示すように、前ケース37の左右の側壁部63のそれぞれには、複数の第1カバー係止孔83が形成されている。複数の第1カバー係止孔83は、対応する側壁部63を厚み方向に貫通している。
【0067】
図8及び
図9に示すように、後ケース38は、前方に向けて開口した箱形に形成されている。後ケース38は、面が前後を向く後壁部91と、後壁部91の上縁から前方に延びる上壁部92と、後壁部91の左右の側縁から後方に延びる左右の側壁部93と、後壁部91の下縁から後方に延びる下壁部94とを有する。
【0068】
後壁部91の前面の上部には、前方に突出すると共に、下方に延びた左右一対の後フック96が設けられている。後フック96の前端には、後方に凹む結合孔97が形成されている。結合孔97は結合片72を受容する。
【0069】
後壁部91の前面の下部には、前方に向けて突出する左右一対の後ボス101が設けられている。各後ボス101には、雌ねじ孔102が形成されている。雌ねじ孔102は、後ボス101の前端面から後方に延びている。
【0070】
後壁部91の前面には、前方に突出する少なくとも1つの凸部104が形成されている。少なくとも1つの凸部104は、互いに接続してもよく、互いに独立していてもよい。本実施形態では、凸部104は、後ろ下部の前面の中央部に環状に形成されている。凸部104は、左右の後フック96及び左右の後ボス101に接続している。後壁部91の後面において凸部104と対応する部分には、前方に凹む凹部105が形成されている。凹部105の縁部を形成する凹部105側壁には、複数の表皮フック106が設けられている。凹部105の底部を形成する凹部105底部には、厚み方向に貫通する複数の第2カバー係止孔108が形成されている。
【0071】
図10に示すように、左右の後フック96は支持プレート35の左右の係合溝42に引っ掛かる。これにより、後ケース38は支持プレート35に支持される。このとき、凸部104は、支持プレート35の後面及びヘッドレストピラー11の左右の縦部21に当接する。また、左右の後ボス101の前端は、支持プレート35の後面の対応する第1締結孔43の縁部に当接する。また、各雌ねじ孔102が対応する第1締結孔43と対向する。このようにして、後ケース38は、支持プレート35に支持されている。左右の後フック96の前端部は、支持プレート35よりも前方に突出する。
【0072】
前ケース37の左右の結合片72は、対応する後フック96の結合孔97に挿入され、結合する。これにより、前ケース37の上部が後ケース38の上部に結合する。この状態で、前ケース37の各下ボス75の各底板部76が支持プレート35の前面の第1締結孔43の縁部に当接する。また、左右の第2締結孔77は、対応する第1締結孔43と対向する。前ケース37の前側から、第2締結孔77及び第1締結孔43を通過して雌ねじ孔102に螺合するねじ103によって、前ケース37、支持プレート35、及び後ケース38は互いに締結されている。このように、前ケース37と後ケース38とが互いに結合することによって、前ケース37及び後ケース38の間に支持プレート35が挟持される。
【0073】
前ケース37及び後ケース38と支持プレート35とは、緩衝材を介して互いに当接しているとよい。
図10に示すように、左右の後フック96と左右の係合溝42との間には、第1緩衝材111が設けられているとよい。下ボス75の底板部76と支持プレート35との間には、第2緩衝材112が設けられているとよい。後ボス101の前端部と支持プレート35との間には、第3緩衝材113が設けられているとよい。
図11に示すように、凸部104と支持プレート35の後面との間及び凸部104とヘッドレストピラー11との間には第4緩衝材114が設けられているとよい。第1~第4緩衝材114は、ゴムやフェルト等の可撓性を有する材料から形成されているとよい。第1~第4緩衝材111~114は、支持プレート35、前ケース37、及び後ケース38の間での振動の伝達を抑制する。
【0074】
図12に示すように、前ケース37及び後ケース38が支持プレート35に結合された状態において、支持プレート35と前ケース37との間には内部空間36が形成される。前ケース37の隔壁69は、内部空間36を左右の部分に区画する。左右のスピーカ13は、内部空間36に配置されている。隔壁69が可撓性の吸音材によって形成されている場合には、隔壁69の後端は支持プレート35の前面に当接しているとよい。隔壁69が前ケース37と一体に形成されている場合には、隔壁69の後端は支持プレート35の前面から離れているとよい。この場合、隔壁69の後端と支持プレート35の間に、可撓性の吸音材が充填されてもよい。
【0075】
各スピーカ13の周囲には吸音材117が設けられている。吸音材117は、スピーカ13の上面、下面、及び左右の側面を囲むように環状に設けられているとよい。吸音材117は、例えば発泡ウレタンであるとよい。
【0076】
隔壁69と左右のスピーカ13との間には吸音材118が設けられている。吸音材118は、隔壁69の左側面及び右側面に沿って設けられているとよい。各吸音材118は、隔壁69とスピーカ13に装着された吸音材117との間の空間に充填されているとよい。吸音材118は、例えば、フェルトによって形成されているとよい。
【0077】
図10~
図12に示すように、パッド14は、ヘッドレスト本体12に被せられている。すなわち、パッド14は、前ケース37及び後ケース38の外面に沿って設けられている。パッド14は、少なくとも、前ケース37の前壁部61の前面、前ケース37の上壁部62及び後ケース38の上壁部92、前ケース37の下壁部64及び後ケース38の下壁部94、前ケース37の左右の側壁部63及び後ケース38の左右の側壁部93に沿って設けられている。パッド14は、可動性を有する材料から形成されている。パッド14は、例えば発泡ウレタンによって形成されているとよい。
【0078】
パッド14は、スピーカ13と対向する部分に少なくとも1つのパッド開口部121を有する。本実施形態では、複数のパッド開口部121が、前ケース37の左右のケース開口部66の前方に配置されている。各パッド開口部121はパッド14の前面に開口している。各パッド開口部121は、パッド14を厚み方向に貫通している。1つのケース開口部66に対して1つのパッド開口部121が形成されてもよく、1つのケース開口部66に対して複数のパッド開口部121が形成されてもよい。複数のパッド開口部121は、対応するケース開口部66に連通している。
【0079】
図3、
図11、及び
図12に示すように、本実施形態では、左右一対の保形材15がパッド14の外面に設けられている。各保形材15は、パッド開口部121を覆うように、パッド14の外面に沿って設けられている。保形材15は、縁部において、パッド14の外面に結合されている。保形材15は、メッシュ状に形成されているとよい。保形材15は、パッド14よりも高い剛性を有する。保形材15は、パッド14よりも高いヤング率を有するとよい。
【0080】
保形材15の縁部には、保形材15よりも剛性が高い枠部125が設けられている。枠部125は、織布等のシート材によって形成されているとよい。枠部125は、保形材15よりも高いヤング率を有するとよい。保形材15は、枠部125を介してパッド14の外面に結合されているとよい。すなわち、枠部125がパッド14に結合されているとよい。枠部125は、例えば接着剤や両面テープによってパッド14に結合されているとよい。
【0081】
各保形材15は、パッド14の前面を上下に延び、パッド14の上端及び下端に結合されているとよい。他の実施形態では、保形材15の上端は、パッド14の上側の後端を越えて後方に延び、後ケース38に結合されていてもよい。同様に、保形材15の下端は、パッド14の下側の後端を越えて後方に延び、後ケース38に結合されていてもよい。
【0082】
表皮材16は、パッド14及び保形材15に被せられている。表皮材16は、後方に開口した袋状に形成されているとよい。表皮材16の縁部は、後ケース38の後面に形成された複数の表皮フック106に係止されている。表皮材16の、複数のパッド開口部121と対向する部分には、厚み方向に貫通する複数の透孔126が形成されているとよい。
【0083】
図3及び
図10~
図12に示すように、後ケース38の後面には後カバー130が取り付けられている。後カバー130は、左右に延びたカバー中央部131と、カバー中央部131の左右の両端から前方に延びた左右のカバー側部132とを有する。カバー中央部131は、前後を向く板状に形成されている。左右のカバー側部132は、左右を向く板状に形成されている。左右のカバー側部132には、前ケース37の左右の第1カバー係止孔83に係止される第1係止爪134がそれぞれ設けられている。パッド14及び表皮材16には、左右の第1係止爪134が通過する貫通孔が形成されている。カバー中央部131には、後ケース38の複数の第2カバー係止孔108に形成される複数の第2係止爪135が設けられている。
【0084】
後カバー130のカバー中央部131は、後ケース38の凹部105を覆い、表皮材16の縁部を隠す。左右のカバー側部132は、ヘッドレスト4の左右の端部を構成する。後カバー130の前面には制振材138が設けられている。例えば、カバー中央部131の前面に、複数の制振材138が貼り付けられているとよい。制振材138は、例えばゴムシートであるとよい。制振材138は、後カバー130と後ケース38とに挟持されているとよい。制振材138は後ケース38の振動を抑制し、ヘッドレスト4から後方に音が伝達されることを抑制する。
【0085】
次に、実施形態に係るヘッドレスト4の製造方法について説明する。最初に、ヘッドレストピラー11が支持プレート35に溶接等によって結合される。次に、スピーカ13及びマイクユニット51が、吸音材48を介して支持プレート35に締結される。そして、スピーカ13のコネクタ13Aが係止爪13Cによって支持プレート35に結合される。同様に、マイクユニット51のコネクタ51Aが係止爪51Cによって支持プレート35に結合される。
【0086】
次に、ワイヤハーネス24がヘッドレストピラー11の通路孔25及びピラー支持部30に挿入される。このとき、ワイヤハーネス24の両端の少なくとも一方のコネクタは取り外されている。例えば、ワイヤハーネス24に複数のコネクタ55が取り付けられた状態で、ワイヤハーネス24の制御装置53側の端部が、上開口部27から通路孔25に挿入されるとよい。そして、ワイヤハーネス24の制御装置53側の端部が、下開口部26から引き出され、かつピラー支持部30を通過した後に、ワイヤハーネス24の制御装置53側の端部に制御装置53と接続するためのコネクタが取り付けられるとよい。また、各コネクタ55は、対応するコネクタ13A、51Aに接続される。
【0087】
次に、後ケース38が支持プレート35に係止される。この状態で、前ケース37が後ケース38に結合される。これにより、前ケース37と後ケース38とが支持プレート35を挟持する。これにより、支持プレート35、前ケース37、及び後ケース38によってヘッドレスト本体12が形成される。
【0088】
次に、前ケース37及び後ケース38にパッド14が被せられる。次に、パッド14の表面に、枠部125を備えた保形材15が結合される。次に、パッド14、保形材15、及び枠部125に表皮材16が被せられる。表皮材16の縁部は、後ケース38の複数の表皮フック106に係止される。
【0089】
次に、後カバー130が前ケース37及び後ケース38に結合され、表皮材16の縁部が隠される。以上の組立手順によって、ヘッドレスト4が形成される。
【0090】
実施形態に係るヘッドレスト4では、パッド14開口の外面側に保形材15が設けられているため、局所的な変形を抑制することができる。保形材15がパッド14に剛性を付与するため、パッド14の開口部の変形が抑制される。保形材15の縁部に枠部125が設けられることによって、保形材15の剛性が高められ、パッド開口部121の変形が一層抑制される。保形材15が比較的広い範囲に配置されることによって、パッド14に加わる荷重が分散され、パッド14の局所的な変形が一層抑制される。
【0091】
吸音材117は、スピーカ13から支持プレート35、前ケース37、及び後ケース38に伝達する振動を抑制する。吸音材118及び隔壁69は、左右のスピーカ13から出力される音の干渉を抑制する。ファンネル81は各スピーカ13から出力される音の向きを規制し、音をヘッドレスト4に前方に向けて伝達させる。これにより、左右のスピーカ13から出力される音の干渉が抑制される。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。保形材15は、パッド14の表面の全域に設けられてもよい。また、保形材15は、表皮材16の裏面に結合されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 :シート
4 :ヘッドレスト
11 :ヘッドレストピラー
12 :ヘッドレスト本体
13 :スピーカ
14 :パッド
15 :保形材
16 :表皮材
24 :ワイヤハーネス
35 :支持プレート
36 :内部空間
37 :前ケース
38 :後ケース
48 :吸音材
51 :マイクユニット
66 :ケース開口部
69 :隔壁
81 :ファンネル
111 :第1緩衝材
112 :第2緩衝材
113 :第3緩衝材
114 :第4緩衝材
117 :第1吸音材
118 :第2吸音材
121 :パッド開口部
125 :枠部
130 :後カバー
138 :制振材