(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007444
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ダイヤモンドFET、電気機械器具、及び、ダイヤモンドFETの製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 30/87 20250101AFI20250109BHJP
H10D 30/60 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L29/80 B
H01L29/78 301Z
H01L29/78 301N
H01L29/78 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108836
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】523028541
【氏名又は名称】大熊ダイヤモンドデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】山口 卓宏
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 仁
(72)【発明者】
【氏名】川島 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰悟
(72)【発明者】
【氏名】星川 尚久
【テーマコード(参考)】
5F102
5F140
【Fターム(参考)】
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ01
5F102GL01
5F102GR09
5F102GT01
5F102GT02
5F102GT03
5F102GV05
5F102GV06
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC11
5F102HC17
5F102HC19
5F140BA04
5F140BD01
5F140BD06
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5F140BD09
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5F140BJ15
5F140BJ17
5F140BJ27
5F140CC02
5F140CC03
5F140CC08
5F140CC09
5F140CE02
(57)【要約】
【課題】ゲート長を100nm未満に微細化したときにもゲート電極の接触性を確保することに貢献することができるダイヤモンドFET、電気機械器具、及び、ダイヤモンドFETの製造方法を提供すること。
【解決手段】ダイヤモンドFETは、ダイヤモンド半導体層と、ダイヤモンド半導体層上に配設されるとともに、ゲート長が100nm未満であるゲート電極と、ゲート電極を含むダイヤモンド半導体層の少なくとも素子領域を覆うパッシベーション膜と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド半導体層と、
前記ダイヤモンド半導体層上に配設されるとともに、ゲート長が100nm未満であるゲート電極と、
前記ゲート電極を含む前記ダイヤモンド半導体層の少なくとも素子領域を覆うパッシベーション膜と、
を備える、ダイヤモンドFET。
【請求項2】
前記ゲート長が60nm未満である、請求項1記載のダイヤモンドFET。
【請求項3】
前記ゲート長が50nm未満である、請求項1記載のダイヤモンドFET。
【請求項4】
前記パッシベーション膜は、フッ素を含有する絶縁材料からなる、請求項1記載のダイヤモンドFET。
【請求項5】
前記パッシベーション膜は、CaF2、LaF3、MgF2のいずれかの単層構造又は任意に組み合わせた積層構造からなる、請求項1記載のダイヤモンドFET。
【請求項6】
前記パッシベーション膜の厚さは、100nm以上である、請求項1記載のダイヤモンドFET。
【請求項7】
前記ゲート電極と前記ダイヤモンド半導体層との間に介在するゲート絶縁膜を備える、請求項1記載のダイヤモンドFET。
【請求項8】
前記ゲート絶縁膜は、CaF2、LaF3、MgF2のいずれかの単層構造又は任意に組み合わせた積層構造からなる、請求項7記載のダイヤモンドFET。
【請求項9】
前記ダイヤモンド半導体層上における前記ゲート電極の両側に間隔をあけて配設されるとともに、厚さが100nm未満であり、前記パッシベーション膜に覆われているソース電極及びドレイン電極を備える、請求項1記載のダイヤモンドFET。
【請求項10】
キャリア移動度が60cm/Vs以上かつ3800cm/Vs以下である、請求項1記載のダイヤモンドFET。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一に記載のダイヤモンドFETを備える電気機械器具。
【請求項12】
ダイヤモンド半導体層上にゲート長が100nm未満であるゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極を含む前記ダイヤモンド半導体層上にパッシベーション膜を成膜する工程と、
を含む、ダイヤモンドFETの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンドFET、電気機械器具、及び、ダイヤモンドFETの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のダイヤモンドCVD(Chemical Vapor Deposition)技術の発展により、CVDダイヤモンドの高純度化が進み、キャリア(電子、正孔)移動度が高いダイヤモンド単結晶が得られるようになり、電気的特性、高周波特性等の素子性能に優れたダイヤモンドFET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)への利用が期待されている。
【0003】
ダイヤモンドFETの製造方法の一つとして、以下のようなセルフアライン法がある(例えば、非特許文献1、2参照)。まず、ダイヤモンド単結晶の(001)上にダイヤモンド半導体層(例えば、水素終端ダイヤモンド層)を成膜し、ダイヤモンド半導体層の表面に金を蒸着し、金上の素子領域に第1レジストを形成し、当該第1レジストをマスクとして、ダイヤモンド半導体層が露出するまで金をウェットエッチングし、第1レジストを除去する。次に、ゲート電極形成用兼ソース電極/ドレイン電極形成用の開口部を有する第2レジストを形成し、当該第2レジストの開口部から露出する金をウェットエッチングして、当該開口部より幅広く分離した、金からなるソース電極/ドレイン電極を形成する。次に、第2レジストをそのままマスクとして用いて、当該第2レジストの開口部から露出したダイヤモンド半導体層上に、金属の蒸着によりゲート電極を成膜し、その後、第2レジスト及びその上の金属層をリフトオフする。これにより、 MESFET(Metal Semiconductor Field Effect Transistor)型のダイヤモンドFETが完成する。
【0004】
上記セルフアライン法によれば、ゲート電極とソース電極/ドレイン電極とを別々のレジストを用いて形成する非セルフアライン法(例えば、特許文献1参照)と比べて、ソース電極/ドレイン電極の位置に対してゲート電極を正確な位置に配置することができ、高周波特性を向上させるためにゲート長を微細化してゲート電極を形成するのに有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ダイヤモンドにおけるキャリア輸送特性と高周波FETへの応用、川原田ら、応用物理、73、339-345、2004-03-10、公益社団法人応用物理学会
【非特許文献2】水素終端ダイヤモンドFETのゲート金属界面、嘉数ら、表面科学 Vol. 29, No. 3, pp. 159-163, 2008特集「ダイヤモンド表面・界面研究の最前線」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsssj/29/3/29_3_159/_pdf/-char/ja)
【非特許文献3】"High performance diamond MISFETs using CaF2 gate insulator", S. Miyamoto et al, Diamond and Related Materials, Volume 12, Issues 3-7,2003(https://doi.org/10.1016/S0925-9635(03)00034-7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下の分析は、本願発明者により与えられる。
【0008】
ゲート電極の微細化を進めてゆくと、ダイヤモンド半導体層の表面の形態(形状、ダメージ、被毒等)が影響して、ゲート電極の接触性が低下し、所望の電気的特性を得ることが難しくなる。このことは、非特許文献1、2に記載のセルフアライン法で微細化したゲート電極を形成する場合にも、同じことが言える。ゲート電極の接触性を確保するために、非特許文献3のようにゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を含むダイヤモンド半導体層の全体をパッシベーション膜で覆うことが考えられるが、ゲート長を100nm未満で微細化したときにはゲート電極の接触性の低下が著しくなるので、パッシベーション膜で覆ったときにもゲート電極の接触性を確保できるかどうかが明らかでない。なお、非特許文献3では、ゲート長が0.4~0.5μmであり、スケール的に、ゲート電極とダイヤモンド半導体層との接触性の低下が問題にならない。
【0009】
本発明の主な課題は、ゲート長を100nm未満に微細化したときにもゲート電極の接触性を確保することに貢献することができるダイヤモンドFET、電気機械器具、及び、ダイヤモンドFETの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の視点に係るダイヤモンドFETは、ダイヤモンド半導体層と、前記ダイヤモンド半導体層上に配設されるとともに、ゲート長が100nm未満であるゲート電極と、前記ゲート電極を含む前記ダイヤモンド半導体層の少なくとも素子領域を覆うパッシベーション膜と、を備える。
【0011】
第2の視点に係る電気機械器具は、前記第1の視点に係るダイヤモンドFETを備える。
【0012】
第3の視点に係るダイヤモンドFETの製造方法は、ダイヤモンド半導体層上にゲート長が100nm未満であるゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極を含む前記ダイヤモンド半導体層上にパッシベーション膜を成膜する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
前記第1~第3の視点によれば、ゲート長を100nm未満に微細化したときにもゲート電極とダイヤモンド半導体層との接触性を確保することに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】形態1に係るダイヤモンドFETの構成の一例を模式的に示した部分断面図である。
【
図2】形態1に係るダイヤモンドFETの構成の変形例を模式的に示した部分断面図である。
【
図3】形態1に係るダイヤモンドFETの製造方法の一例を模式的に示した工程断面図である。
【
図4】形態1に係るダイヤモンドFETの製造方法の一例を模式的に示した
図3に続く工程断面図である。
【
図5】形態1に係るダイヤモンドFETの製造方法の一例を模式的に示した
図4に続く工程断面図である。
【
図6】形態1に係るダイヤモンドFETの製造方法の一例を模式的に示した
図5に続く工程断面図である。
【
図7】形態1に係るダイヤモンドFETの所定のゲート電圧ごとのドレイン電圧とドレイン電流との関係を模式的に示したグラフである。
【
図8】形態1に係るダイヤモンドFETのドレイン電圧-6Vのときのゲート電圧とドレイン電流との関係を模式的に示したグラフである。
【
図9】形態2に係るダイヤモンドFETの構成の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。また、下記の形態は、あくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【0016】
[形態1]
形態1に係るダイヤモンドFETについて図面を用いて説明する。
図1は、形態1に係るダイヤモンドFETの構成の一例を模式的に示した部分断面図である。
図2は、形態1に係るダイヤモンドFETの構成の変形例を模式的に示した部分断面図である。
【0017】
ダイヤモンドFET1は、ダイヤモンド半導体層11(
図1では水素終端部11a)上の素子領域2に、ソース電極12a、ドレイン電極12b、及びゲート電極14aを備えたFET(Field Effect Transistor)である(
図1参照)。ダイヤモンドFET1では、ソース電極12a、ドレイン電極12b、及びゲート電極14aを含むダイヤモンド半導体層11上にパッシベーション膜15で覆われている。ダイヤモンドFET1は、例えば、半導体装置、パワーエレクトロニクス用デバイス、高周波用デバイス、通信用機器、センシング機器、自動車、送配電設備、過酷環境用デバイス、高温環境用機器、放射線環境用機器、宇宙設備、原子炉設備等の電気機械器具に組み込むことができる。
【0018】
ダイヤモンドFET1は、
図1のようなゲート絶縁膜のないMESFET(Metal Semiconductor Field Effect Transistor)に適用した場合、以下のような構成とすることができる。
【0019】
図1のダイヤモンドFET1では、ダイヤモンド基板10上に、上面((001)面)が水素終端部11aとなったダイヤモンド半導体層11が形成されている。水素終端部11aは、
図1では、素子領域2に存在し、素子領域2の外側に存在しないように構成されている。水素終端部11a上の中央付近には、ゲート電極14aが水素終端部11aとショットキー接触するように配設されている。水素終端部11a上のゲート電極14aの両外側には、ソース電極12a及びドレイン電極12bが水素終端部11aとオーミック接触するように配設されている。ソース電極12a及びドレイン電極12bは、ゲート電極14aと間隔をおいて配されている。ソース電極12a、ドレイン電極12b、及びゲート電極14aを含むダイヤモンド半導体層11上は、パッシベーション膜15で覆われている。パッシベーション膜15には、ソース電極12a及びドレイン電極12bに通ずるコンタクトホール15a、15bが形成されている。コンタクトホール15a、15bには、プラグ16a、16b(コンタクトパッドでも可)が埋め込まれている。なお、プラグ16a、16bがない構造であってもよい。パッシベーション膜15には、
図1の断面の位置とは異なる位置において、ゲート電極14aに通ずるコンタクトホール(図示せず)が形成されており、当該コンタクトホールには、プラグ(図示せず)が埋め込まれている。プラグ16a、16b含むパッシベーション膜15上には、ダイヤモンドFET1の大きさに応じて、多層配線構造体(図示せず)を形成したり、ソース電極12a、ドレイン電極12b、及びゲート電極14a用のパッド(図示せず、プラグと一体であっても可)を形成してもよい。なお、ダイヤモンドFET1は、
図1のようなMESFET以外にも、
図2のようにゲート電極14aと水素終端部11aとの間にゲート絶縁膜13aを有するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)にも適用することができ、MIMSFET(Metal Insulator Metal Semiconductor Field Effect Transistor;図示せず)に適用してもよい。
【0020】
ダイヤモンド基板10は、ダイヤモンド単結晶からなる基板である(
図1参照)。ダイヤモンド基板10として、例えば、高温高圧合成ダイヤモンド単結晶基板を用いることができる。ダイヤモンド基板10には、表面粗さ(ISO4287準拠)が10nm以下になったものを用いることが好ましい。ダイヤモンド基板10は、表面粗さが10nmを超える場合、表面粗さが10nm以下になるように研磨することが好ましい。こうすることで、ダイヤモンド基板10上に合成されるダイヤモンド半導体層11の表面粗さを低減することができ、ダイヤモンド半導体層11と金属や絶縁膜との接触性を向上させられる等のメリットがある。
【0021】
ダイヤモンド半導体層11は、ダイヤモンドを備えるとともに半導体として機能する部分を有する層である(
図1参照)。ダイヤモンド半導体層11の厚さは、例えば、数μm、数十μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。ダイヤモンド半導体層11は、例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、水素及びメタンガスを原料にして、ダイヤモンド基板10上にダイヤモンド結晶(エピタキシャルダイヤモンド結晶)を化学気相成長させて成膜することができる。このようにして成膜されたダイヤモンド半導体層11は、(001)面(上面)に水素終端部11aを有する。水素終端部11aは、正孔チャンネルが形成されており、p型伝導を示す。水素終端部11aにおける素子領域2以外の領域をオゾン処理して水素を離脱させることで、水素終端部11aが素子領域2に存在し、かつ、水素終端部11aが素子領域2以外の領域に存在しないように構成させることができる。なお、ダイヤモンド半導体層11は、水素終端部11aを有するものに限らず、ダイヤモンドに不純物(例えば、ホウ素、リン等)を含んだ(ドープされた、注入された)部分を有するものであってもよい。また、ダイヤモンド基板10上にダイヤモンド半導体層11を有するものの代わりに、例えば、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて、水素及びメタンガスを原料にして、種基板上にダイヤモンド結晶を化学気相成長させて当該種基板を除去して得られたダイヤモンド自立膜であってもよい。
【0022】
ソース電極12a及びドレイン電極12bは、所定の金属からなる電極である(
図1参照)。ソース電極12a及びドレイン電極12bには、例えば、Auを用いることができる。ソース電極12a及びドレイン電極12bは、ダイヤモンド半導体層11上に形成されている。ソース電極12a及びドレイン電極12bは、ダイヤモンド半導体層11との密着性を確保するため、エッチング剤やレジスト剥離剤又はレジストアッシング用酸素プラズマ等に晒されたことが無い状態のダイヤモンド半導体層11上に形成されていることが好ましい。ソース電極12a及びドレイン電極12bは、ダイヤモンド半導体層11の水素終端部11aと直接接する(オーミック接触する)ように配設されている。ソース電極12a及びドレイン電極12bは、例えば、ダイヤモンド半導体層11上に金属層を成膜(例えば、蒸着、スパッタ)し、金属層上にソース電極/ドレイン電極形成用のレジストを形成して当該レジストをマスクとしてエッチングし、レジストを除去することにより形成することができる。ソース電極12aとドレイン電極12bとの間の距離であるソースドレイン間距離L
SDは、高周波帯(例えば、遮断周波数50~100GHz)で動作させることを考慮すると、100nm未満であることが好ましい。なお、ソースドレイン間距離L
SDの下限は、FETとして機能する限界距離である。ソース電極12a及びドレイン電極12bの厚さは、高周波帯で動作させることを考慮すると、100nm未満であることが好ましく、所望のRF(Radio Frequency)特性を得ることを考慮すると、50nm未満であることが好ましく、さらなる高周波帯(例えば、遮断周波数100GHz超)で動作させることを考慮すると、25nm未満であることが好ましい。なお、ソース電極12a及びドレイン電極12bの厚さの下限は、臨界膜厚である(下限が示されていない他の厚さについても同様)。
【0023】
ゲート電極14aには、例えば、Al、Au、Ti、Mo、Cr、Ru、Cu、Pb、Zn、Ptのいずれかの単層構造又は任意の組み合わせの積層構造からなる金属膜を用いることができる。ゲート電極14aは、例えば、ダイヤモンド半導体層11上に、ゲート電極形成用のレジストを形成し、当該レジストをマスクとして、セルフアライン法により、ダイヤモンド半導体層11上にゲート電極14a用の金属膜を成膜(例えば、蒸着、スパッタ)し、その後、レジスト、及びその上にある金属膜をリフトオフすることで、形成することができる。
図2のようにゲート電極14aと水素終端部11aとの間にゲート絶縁膜13aを形成する場合、ゲート絶縁膜13aには、例えば、Al
2O
3、SiO
2、HfO
2、AlN、BN、Si
3N
4、SiON、Ta
2O
5、TiO
2、WO
3、CaF
2、LaF
3、及びMgF
2のいずれかの単層構造又は任意の組み合わせの積層構造からなる絶縁膜を用いることができ、パッシベーション膜15との組み合せ、及び、キャリア移動度の向上(60~3800cm/Vs)を考慮して、CaF
2、LaF
3、MgF
2のいずれかの単層構造又は任意の組み合わせの積層構造からなる絶縁膜を用いることができる。なお、キャリア移動度の向上(60~3800cm/Vs)を考慮して、CaF
2、LaF
3、MgF
2のいずれかの単層構造又は任意の組み合わせの積層構造からなる絶縁膜を用いることも、本発明を活用したデバイスの応用先によっては有用である。ゲート絶縁膜13aは、例えば、上記のゲート電極14aの形成方法において、ゲート電極14a用の金属膜を成膜する前に、所定の原料ガスを用いてCVD法によりゲート絶縁膜13a用の絶縁膜を成膜し、リフトオフの際にレジストと金属膜の間にある絶縁膜もリフトオフすることで、形成することができる。ゲート電極14aの厚さは、ゲート長のサイズを考慮して、100nm未満とすることが望ましい。
【0024】
ゲート電極14aの幅であるゲート長は、周波数特性の向上(チャネルを走行するキャリアの走行時間の短縮)のため、100nm未満とすることが望ましく、さらなる高周波帯(例えば、遮断周波数100GHz超)で動作させることを考慮すると、60nm未満であることが好ましく、所望のRF(Radio Frequency)特性を得ることを考慮すると、50nm未満であることが好ましい。なお、ゲート長の下限は、FETとして機能する限界長さである。なお、ゲート長の微細化が進むほどに、ゲート電極14aとダイヤモンド半導体層11との接触性が低下して、抵抗成分が発生したり、断裂して素子が破壊されたりすることが起きやすくなるので、ゲート長を100nm未満にする場合、ゲート電極14aを、以下のようなパッシベーション膜15で覆うことが望ましい。
【0025】
パッシベーション膜15には、例えば、Al2O3、SiO2、HfO2、AlN、BN、Si3N4、SiON、Ta2O5、TiO2、WO3、CaF2、LaF3、及びMgF2のいずれかの単層構造又は任意の組み合わせの積層構造からなる絶縁膜を用いることができ、キャリア移動度の向上、及び、プロセスにおける加工性を考慮して、F(フッ素)を含む絶縁材料、例えば、CaF2、LaF3、MgF2のいずれか又は任意に組み合わせたものを用いることができる。パッシベーション膜15は、大気中のイオン、電子、ラジカル等の成分による電気的特性の劣化を防ぐため、少なくとも素子領域2の全体を覆って保護することが望ましい。パッシベーション膜15の厚さは、ゲート電極14aとダイヤモンド半導体層11との接触性、及び、ソース電極12a及びドレイン電極12bとダイヤモンド半導体層11との接触性を確保することを考慮して、100nm以上であることが好ましく、パッシベーション膜15の上面の平坦性又は平坦加工性を考慮して、300nm以上であることが好ましい。
【0026】
プラグ16a、16bには、例えば、Au、Ru、Al、Ti、Mo、Cu、Cr、Pb、Zn、Pt及びWのいずれかの単層構造又は任意の組み合わせの積層構造からなる金属を用いることができ、ソース電極12a及びドレイン電極12bと接触する層でソース電極12a及びドレイン電極12bの金属とは異なる金属を用いることが好ましい。
【0027】
ソース電極12a及びドレイン電極12bは、プラグ16a、16bのゲート電極14a側の端面よりもゲート電極14a側に延在した(はみ出した)延在部17a、17bを有する。延在部17a、17bの長さLext(プラグ16a、16bのゲート電極14a側の端面から延在部17a、17bの先端面までの長さ)は、高周波帯で動作させることを考慮すると、200nm未満であることが好ましく、高周波帯で動作させるときのソース電極12a及びドレイン電極12bの各厚さとの兼ね合いを考慮すると、100nm未満であることが好ましく、所望のRF特性を得ることを考慮すると、50nm未満であることが好ましい(0nmでもよい)。
【0028】
次に、形態1に係るダイヤモンドFETの製造方法について図面を用いて説明する。
図3~
図6は、形態1に係るダイヤモンドFETの製造方法の一例を模式的に示した工程断面図である。
【0029】
まず、ダイヤモンド基板10上にダイヤモンド半導体層11を成膜する(
図3(A)参照)。ダイヤモンド半導体層11は、例えば、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて、不純物の添加がない水素及びメタンガスを原料(水素に対するメタンの容積比率0.5%)にして、ダイヤモンド基板10上にダイヤモンド結晶を化学気相成長させて成膜することができる。このようにして成膜されたダイヤモンド半導体層11は、(001)面(上面)に水素終端部11aを有する水素終端ダイヤモンドである。
【0030】
次に、ダイヤモンド半導体層11上に金属層12を成膜する(
図3(B)参照)。金属層12は、例えば、RFスパッタにより、ダイヤモンド半導体層11上に所定の金属(例えば、金)を堆積させて成膜することができる。
【0031】
次に、金属層12上の素子領域2を覆うレジスト20を形成し、レジスト20をマスクとして、ダイヤモンド半導体層11が露出するまで、金属層12をエッチングする(
図3(C)参照)。レジスト20は、例えば、リソグラフィ法によって形成することができる。金属層12のエッチングには、例えば、ウェットエッチング剤を用いて行うことができる。
【0032】
次に、レジスト20をマスクとして、オゾン処理して、ダイヤモンド半導体層11における素子領域2以外の領域の水素終端部11aを選択的に消滅させる(
図3(D)参照)。これにより、ダイヤモンド半導体層11における素子領域2以外の領域(酸素終端部となった領域)が高抵抗になり、素子間を電気的に絶縁させることができる。
【0033】
次に、金属層12上のレジスト(
図3(D)の20)を除去する(
図4(A)参照)。レジスト20は、例えば、レジスト剥離剤、アッシングにより除去することができる。レジスト20を除去した後、洗浄を行う。
【0034】
次に、金属層12を含むダイヤモンド半導体層11上に、ゲート電極形成用兼ソース電極/ドレイン電極形成用の開口部21aを有するレジスト21を形成する(
図4(B)参照)。レジスト21は、例えば、リソグラフィ法によって形成することができる。
【0035】
次に、レジスト21をマスクとして、開口部21aから露出した金属層(
図4(B)の12)をエッチングし、アンダーエッチングによって金属層12をソース電極12aとドレイン電極12bとに分離させ、続いて、サイドエッチングによりソース電極12a及びドレイン電極12bの端面間の間隔を開口部21aの幅よりも広くさせる(
図4(C)参照)。金属層12のエッチングには、例えば、ウェットエッチング剤を用いて行うことができる。
【0036】
次に、レジスト21を含むダイヤモンド半導体層11上に、金属層14及びゲート電極14aを成膜する(
図5(A)参照)。言い換えると、レジスト21をそのまま利用したセルフアラインプロセスにより、レジスト21の開口部21aの領域にあるダイヤモンド半導体層11上にゲート電極14aを形成する。金属層14及びゲート電極14aは、例えば、スパッタリング法により成膜することができる。
【0037】
次に、レジスト(
図5(A)の21)、及び、その上の金属層(
図5(A)の14)を除去する(
図5(B)参照)。レジスト21、及び、その上の金属層14は、例えば、レジスト剥離剤を用いてリフトオフすることにより除去することができる。レジスト21を除去した後、洗浄を行う。
【0038】
次に、所定の原料ガスを用いてCVD法により、ソース電極12a、ドレイン電極12b、及びゲート電極14aを含むダイヤモンド半導体層11上に、パッシベーション膜15を成膜し、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法によりパッシベーション膜15の上面を平坦化し、その後、平坦化されたパッシベーション膜15上に、プラグ形成用の開口部22a、22bを(ゲート電極用の開口部は図示せず)有するレジスト22を形成する(
図5(C)参照)。レジスト21は、例えば、リソグラフィ法によって形成することができる。なお、パッシベーション膜15の平坦化は必須でなく、平坦化の方法もCMP法に限定されない。
【0039】
次に、レジスト22をマスクとして、開口部22a、22b(ゲート電極用の開口部は図示せず)から露出するパッシベーション膜15を、ソース電極12a、ドレイン電極12b及びゲート電極14aが現れるまでエッチングすることにより、コンタクトホール15a、15b(ゲート電極上のコンタクトホールは図示せず)を形成する(
図6(A)参照)。パッシベーション膜15のエッチングは、例えば、ドライエッチング法で行うことができる。
【0040】
次に、パッシベーション膜15上のレジスト(
図6(A)の22)を除去する(
図6(B)参照)。レジスト22は、例えば、レジスト剥離剤を用いて除去することができる。レジスト22を除去した後、洗浄を行う。
【0041】
次に、ソース電極12a、ドレイン電極12b、及びゲート電極14aを含むパッシベーション膜15上に、コンタクトホール15a、15b(ゲート電極上のコンタクトホールは図示せず)を埋め込むように、金属層16(例えば、Ti上にAuを積層した金属層)を成膜する(
図6(C)参照)。金属層16は、例えば、RFスパッタ法、蒸着法により成膜することができる。
【0042】
次に、CMP法によりパッシベーション膜15の上面が全面的に現れるまで金属層16を研摩除去して平坦化することにより、プラグ16a、16b(ゲート電極上のプラグは図示せず)を形成する(
図1参照)。その後、ダイヤモンドFET1の大きさに応じて、プラグ16a、16bを含むパッシベーション膜15上に多層配線構造体(図示せず)を形成するようにしてもよい。なお、上部にパッド(図示せず)を有するプラグ16a、16bを形成する場合は、リソグラフィ法及びエッチング法を用いてパッド付のプラグ16a、16b(コンタクトパッド)を形成することができる。また、プラグ16a、16bがない構成であってもよい。
【0043】
次に、形態1に係るダイヤモンドFETのサンプルの特性及び状態について説明する。
図7は、形態1に係るダイヤモンドFETの所定のゲート電圧ごとのドレイン電圧とドレイン電流との関係を模式的に示したグラフである。
図8は、形態1に係るダイヤモンドFETのドレイン電圧-6Vのときのゲート電圧とドレイン電流との関係を模式的に示したグラフである。
【0044】
形態1に係るダイヤモンドFETのサンプル(
図1参照)は、以下のようにして得た。まず、ダイヤモンド基板10(4mm×4mm×0.5mm)上に、水素終端部11aを有するダイヤモンド半導体層11(厚さ100nm)を成膜(CVD法)した、次に、水素終端部11a上に、ソース電極/ドレイン電極用の金属層(Au、厚さ90nm;
図3(B)の12に相当)を成膜(電子ビーム真空蒸着装置:エイコー・エンジニアリング社製NPF023使用、蒸着温度100℃以下)し、当該金属層12上にレジスト(
図3(C)の20に相当;200μm四方)を形成し、当該レジスト20をマスクとして金属層12をエッチングした。次に、レジスト(
図3(D)の20に相当)をそのまま用いて、オゾン処理して、ダイヤモンド半導体層11における素子領域2以外の領域の水素終端部11aを選択的に消滅させ、当該レジストを除去し、洗浄した。次に、ソース電極/ドレイン電極用のAu電極(
図4(B)の12に相当)を含むダイヤモンド半導体層11上に、ゲート電極形成用兼ソース電極/ドレイン電極形成用の開口部(幅80nm)を有するレジスト(
図4(B)の21に相当)を形成し、当該レジスト21をマスクとして、開口部から露出した金属層(
図4(B)の12に相当)をエッチングして、ソース電極12a及びドレイン電極12bを形成した。次に、ゲート電極形成用兼ソース電極/ドレイン電極形成用のレジスト(
図5(A)の21に相当)を含むダイヤモンド半導体層11上に、金属層(
図5(A)の14)及びゲート電極14aを成膜(スパッタ)し、当該レジスト21、及び、その上の金属層14をリフトオフし、洗浄した。次に、所定の原料ガスを用いてCVD法により、ソース電極12a、ドレイン電極12b、及びゲート電極14aを含むダイヤモンド半導体層11上に、パッシベーション膜15(厚さ100~1000nm)を成膜し、CMP法によりパッシベーション膜15の上面を平坦化し、その後、平坦化されたパッシベーション膜15上に、プラグ形成用の開口部を有するレジスト(
図5(C)の22に相当)を形成した。次に、レジスト(
図6(A)の22に相当)をマスクとして、開口部から露出するパッシベーション膜15を、ソース電極12a、ドレイン電極12b及びゲート電極14aが現れるまでエッチングすることにより、コンタクトホール15a、15b(ゲート電極上のコンタクトホールは図示せず)を形成し、その後、パッシベーション膜15上のレジスト(
図6(A)の22に相当)を除去し、洗浄した。次に、ソース電極12a、ドレイン電極12b及びゲート電極14aを含むパッシベーション膜15上に、コンタクトホール15a、15b(ゲート電極上のコンタクトホールは図示せず)を埋め込むように、金属層(
図6(C)の16に相当)を成膜(スパッタ)し、その後、CMP法によりパッシベーション膜15の上面が全面的に現れるまで金属層16を研摩除去して平坦化することにより、プラグ16a、16b(ゲート電極上のプラグは図示せず)を形成し、サンプルを得た。厚さや長さは、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製:S-4800)を用いて測定し、補助的に、触針式段差計(ケーエルエー・テンコール社製:Alpha-Step IQ)で測定した。また、電気的特性の測定では、プローバ(ハイブリッジ社製、超高真空マイクロプローバー:HUMP-100)、及び、半導体パラメータアナライザ(アジレント社製、B1505A)を用いた。
【0045】
上記サンプルのゲート電極の接触性について、1日1回の測定(毎回測定用針を接触しなおす)を1ヶ月間実施したが、ソース電極12a、ドレイン電極12b、及びゲート電極14aの剥離などは起きなかった。また、CaF2厚さも100nm以上において、ゲート電極の接触安定化効果が高いことを確認した。また、ミリ波帯以上(30GHz以上)の高周波動作に不可欠であるゲート長100nm未満の領域において効果的であった。さらに、さらなる高周波動作を狙ったゲート長50~60nmの領域において、ゲート電極の接触性の安定化は特に顕著であった。
【0046】
上記サンプルの移動度について、電流電圧特性から計算される上記サンプルの移動度は、同設計のパッシベーション膜がAl2O3のダイヤモンドFETと比較して、2倍以上に向上したことを確認した。
【0047】
上記サンプルの電気的特性について、同設計のパッシベーション縁膜のないダイヤモンドFETと比較して、大気中の成分による、素子の電気的特性への影響が抑えられていた。また、1ヶ月間放置後に再測定したが、上記サンプルは、最大電流値、トランスコンダクタンス、閾値電圧・漏れ電流の変化が全て40%未満であった。
【0048】
所定のゲート電圧(-2~+3V)ごとのドレイン電流I
D-ドレイン電圧V
D特性は
図7のようになり、ドレイン電圧-6Vのときのドレイン電流I
D-ゲート電圧V
G特性は
図8のようになった。なお、
図7及び
図8において電流値は絶対値に変更されている。
【0049】
形態1によれば、パッシベーション膜15でゲート電極14aを覆うことで、ゲート長を100nm未満に微細化したときにもゲート電極14aとダイヤモンド半導体層11との接触性(ゲート絶縁膜13aはある場合はゲート電極14aとゲート絶縁膜13aとの接触性、及び、ゲート絶縁膜13aとダイヤモンド半導体層11との接触性)を確保することに貢献することができる。その結果、製造時の歩留まりを向上させることができ、安定的に製造することができる。また、長期間使用しても、ダイヤモンドFET1の電気的特性を安定化させることができる。
【0050】
また、形態1によれば、パッシベーション膜15でソース電極12a及びドレイン電極12bを覆うことで、ソースドレイン間距離のバラツキを抑えるためにソース電極12a及びドレイン電極12bの厚さを100nm未満にしても、ソース電極12a及びドレイン電極12bとダイヤモンド半導体層11との接触性を確保することができ、素子破壊や電気特性劣化を防止することができる。
【0051】
また、形態1によれば、パッシベーション膜15でダイヤモンド半導体層11のチャネルを保護しているので、大気中のイオン、電子、ラジカル等の成分による素子領域2の表面への影響(構造や吸着物の変化等)が低減され、電気的特性を安定化させることができ、耐久性も向上させることができる。
【0052】
また、形態1によれば、ダイヤモンド半導体層11のチャネルをフッ素系の絶縁材料を用いたパッシベーション膜15で保護することで、チャネル部分の抵抗の増大の影響が抑えられ、信頼性や電気的特性を向上させることができる。
【0053】
また、形態1によれば、MISFET構造において、チャネル部分をフッ素系の絶縁材料を用いたパッシベーション膜15及びゲート絶縁膜13aで覆うことで、例えば、Al2O3に代表される酸化膜などを用いたパッシベーション膜及びゲート絶縁膜で覆った場合と比べて、移動度を向上させることができ、トランスコンダクタンスを向上させることができ、高周波特性を向上させることができる。なお、Al2O3等の酸化膜をゲート絶縁膜やパッシベーション膜に用いることで信頼性の高いMISFETを製造することが可能であるが、Al2O3等の酸化膜を用いたMISFETでは、電荷が界面に近いためクーロン散乱によりキャリア移動度が低いため、トランスコンダクタンスの向上が困難であり、高周波特性の向上が難しい。
【0054】
また、形態1によれば、パッシベーション膜15にフッ素系の絶縁材料を用いることで、酸化膜の絶縁材料を用いたプロセスよりも、電気的特性、安全性を向上させることができる。つまり、Al2O3等の酸化膜の絶縁材料ではALD(Atomic Layer Deposition)プロセスによるチャネル部の表面の劣化が大きいが、フッ素系の絶縁材料の場合、抵抗加熱蒸着で成膜することができ、チャネル部の表面の劣化を抑えることができる。なお、半導体デバイスプロセス工程ではフッ酸処理による洗浄・ウェットエッチングが非常に有用であるが、Al2O3等の酸化膜はフッ酸に溶けてしまうため、こうした洗浄・プロセスが不可能である。一方、フッ素系のパッシベーション膜を使用する素子ならば、こうした洗浄・プロセスが可能であり、プロセスの選択肢が広まり、より高効率で素子作製が可能になる。
【0055】
また、形態1によれば、ソース電極12a及びドレイン電極12bの形成に用いたレジスト21をゲート電極14aの形成にも用いていたセルフアライン法を用いてゲート電極14aを形成しているので、ソース電極12a及びドレイン電極12b対するゲート電極14aの位置合わせが不要になり、ゲート長が100nm未満の微細なダイヤモンドFET1を安定的に形成することができる。
【0056】
さらに、形態1によれば、ハンドリングが困難な小型のダイヤモンド基板10であっても、セルフアラインプロセスによって、歩留り、信頼性、及び、金とダイヤモンド半導体層との密着性を確保しつつ、400℃の高温な環境、500Vの高電圧な環境、放射線環境等の過酷環境でも、安定して動作する高性能な素子を得ることができる。
【0057】
[形態2]
形態2に係るダイヤモンドFETについて図面を用いて説明する。
図9は、形態2に係るダイヤモンドFETの構成の一例を模式的に示した断面図である。
【0058】
ダイヤモンドFET1は、ダイヤモンド半導体層11と、ゲート電極14aと、パッシベーション膜15と、を備える。ゲート電極14aは、ダイヤモンド半導体層11上に配設されるとともに、ゲート長が100nm未満である。パッシベーション膜15は、ゲート電極14aを含むダイヤモンド半導体層11の少なくとも素子領域を覆う。
【0059】
形態2によれば、パッシベーション膜15でゲート電極14aを覆うことで、ゲート長を100nm未満に微細化したときにもゲート電極14aとダイヤモンド半導体層11との接触性を確保することに貢献することができる。
【0060】
上記形態の一部または全部は以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0061】
[付記1]
ダイヤモンド半導体層と、
前記ダイヤモンド半導体層上に配設されるとともに、ゲート長が100nm未満であるゲート電極と、
前記ゲート電極を含む前記ダイヤモンド半導体層の少なくとも素子領域を覆うパッシベーション膜と、
を備える、ダイヤモンドFET。
[付記2]
前記ゲート長が60nm未満である、付記1記載のダイヤモンドFET。
[付記3]
前記ゲート長が50nm未満である、付記1又は2記載のダイヤモンドFET。
[付記4]
前記パッシベーション膜は、フッ素を含有する絶縁材料からなる、付記1乃至3のいずれか一に記載のダイヤモンドFET。
[付記5]
前記パッシベーション膜は、CaF2、LaF3、MgF2のいずれかの単層構造又は任意に組み合わせた積層構造からなる、付記1乃至4のいずれか一に記載のダイヤモンドFET。
[付記6]
前記パッシベーション膜の厚さは、100nm以上である、付記1乃至5のいずれか一に記載のダイヤモンドFET。
[付記7]
前記ゲート電極は、前記ダイヤモンド半導体層にショットキー接触している、付記1乃至6のいずれか一に記載のダイヤモンドFET。
[付記8]
前記ゲート電極と前記ダイヤモンド半導体層との間に介在するゲート絶縁膜を備える、付記1乃至6のいずれか一に記載のダイヤモンドFET。
[付記9]
前記ゲート絶縁膜は、CaF2、LaF3、MgF2のいずれかの単層構造又は任意に組み合わせた積層構造からなる、付記8記載のダイヤモンドFET。
[付記10]
前記ダイヤモンド半導体層上における前記ゲート電極の両側に間隔をあけて配設されるとともに、厚さが100nm未満であり、前記パッシベーション膜に覆われているソース電極及びドレイン電極を備える、付記1乃至9のいずれか一に記載のダイヤモンドFET。
[付記11]
キャリア移動度が60cm/Vs以上かつ3800cm/Vs以下である、付記1乃至10のいずれか一に記載のダイヤモンドFET。
[付記12]
付記1乃至11のいずれか一に記載のダイヤモンドFETを備える電気機械器具。
[付記13]
ダイヤモンド半導体層上にゲート長が100nm未満であるゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極を含む前記ダイヤモンド半導体層上にパッシベーション膜を成膜する工程と、
を含む、ダイヤモンドFETの製造方法。
【0062】
なお、上記の特許文献、非特許文献の各開示は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとし、必要に応じて本発明の基礎ないし一部として用いることが出来るものとする。本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(必要により不選択)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、本願に記載の数値及び数値範囲については、明記がなくともその任意の中間値、下位数値、及び、小範囲が記載されているものとみなされる。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本願発明の趣旨に則り、本願発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれる(属する)ものと、みなされる。
【符号の説明】
【0063】
1 ダイヤモンドFET
2 素子領域
10 ダイヤモンド基板
11 ダイヤモンド半導体層
11a 水素終端部
12 金属層
12a ソース電極
12b ドレイン電極
13 絶縁層
13a ゲート絶縁膜
14 金属層
14a ゲート電極
15 パッシベーション膜
15a、15b コンタクトホール
16 金属層
16a、16b プラグ
17a、17b 延在部
20、21、22 レジスト
21a、22a、22b 開口部