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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007456
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20250109BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20250109BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20250109BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20250109BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20250109BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20250109BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20250109BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/0432
H01M8/04537
H01M8/0606
H01M8/04313
C01B3/38
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/12 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108876
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】小林 和明
【テーマコード(参考)】
4G140
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EB43
4G140EB47
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC06
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA12
5H127BA13
5H127BA34
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB19
5H127DB63
5H127DB75
5H127DB80
5H127DC83
(57)【要約】
【課題】品質に幅のある原燃料を用いながら耐久性の低下を抑制する。
【解決手段】燃料電池装置10は改質器11と燃料電池12と燃焼部13と制御装置14とを有する。改質器11は原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する。燃料電池12は燃料ガス及び空気を用いて発電する。燃焼部13は燃料電池において未反応の燃料ガスを燃焼させた熱を用いて改質器11を加熱する。制御装置14は燃料電池12の電流値が第1の条件を満たし且つ燃焼部13の温度が第2の条件を満たす場合に改質器11に供給する原燃料及び水の少なくとも一方の量を変動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池と、
前記燃料電池において未反応の前記燃料ガスを燃焼させた熱を用いて前記改質器を加熱する燃焼部と、
前記燃料電池の電流値が第1の条件を満たし、且つ前記燃焼部の温度が第2の条件を満たす場合、前記改質器に供給する前記原燃料及び前記水の少なくとも一方の量を変動させる制御装置と、を備える
燃料電池装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池装置において、
前記制御装置は、原燃料の複数の種類それぞれに対して予め定められている炭素価数値の中から、供給される原燃料ガスの種類に対応する炭素価数値を選択し、該炭素価数値に基づいて前記改質器に供給する前記原燃料の量を変動させる
燃料電池装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池装置において、
前記第1の条件は、前記燃料電池の電流値が第1の電流値以上であることであり、
前記第2の条件は、前記燃焼部の温度が第1の温度以上であることであり、
前記制御装置は、前記第1の条件及び前記第2の条件が満たされる場合、前記改質器におけるS/Cが予め定められる第1の下限値以上になるように、前記改質器に供給する前記水の量を増加させる
燃料電池装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池装置において、
前記制御装置は、前記燃焼部の温度が前記第1の温度未満に低下する場合、前記改質器に供給する水の量を減少させる
燃料電池装置。
【請求項5】
請求項3に記載の燃料電池装置において、
前記制御装置は、前記燃料電池の電流値が前記第1の電流値以上の第2の電流値以上であり、且つ前記燃焼部の温度が前記第1の温度より低い第2の温度又は前記燃料電池の温度未満である場合、前記改質器に供給する前記原燃料の量を変動させる
燃料電池装置。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池装置において、
前記第1の条件は、前記燃料電池の電流値が第2の電流値以上であることであり、
前記第2の条件は、前記燃焼部の温度が、第2の温度又は前記燃料電池の温度未満であることであり、
前記制御装置は、前記第1の条件及び前記第2の条件が満たされる場合、前記改質器に供給する前記原燃料の量を変動させる
燃料電池装置。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池装置において、
前記制御装置は、前記燃焼部の温度が前記第2の温度及び前記燃料電池の温度以上に上昇する場合、前記改質器に供給する前記原燃料の量を変動前の量に戻す方向に変動させる
燃料電池装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の燃料電池装置において、
前記制御装置は、原燃料の複数の種類それぞれに対して予め定められている炭素価数値の中から、供給される原燃料ガスの種類に対応する炭素価数値を選択し、該炭素価数値に基づいて前記改質器に供給する前記原燃料の量を変動させる
燃料電池装置。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池装置において、
前記制御装置は、前記燃焼部の温度が前記第2の電流値未満に低下し且つ前記燃料電池の温度以上に上昇する場合、選択された炭素価数値を、選択前の炭素価数値に戻す
燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池等の燃料電池と改質器とを組合わせた燃料電池装置には、燃料電池に供給する燃料ガスを生成するための原燃料及び水、並びに燃料電池において燃料ガスとともに発電に用いられる空気が供給される。燃料電池装置では、安定的な運転、発電効率、耐久性等のバランスを取りながら運転するように設計されていることが一般的である。例えば、上記の設計において安定的な運転を行うために、失火判定等を行い原燃料ガスの供給量を調整することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-123512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の設計は、供給される原燃料の品質、例えば軽質炭化水素の組成、不純物の濃度等が一定の範囲内であること前提として作成されている。近年、バイオガス等の品質に幅のある原燃料を用いることが検討されている。従来の運転設計では、軽質炭化水素の組成が想定されている範囲から外れると、燃料電池及び改質触媒等の耐久性が低下する虞がある。
【0005】
本開示の目的は、品質に幅のある原燃料を用いながら、耐久性の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による燃料電池装置は、
原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池と、
前記燃料電池において未反応の前記燃料ガスを燃焼させた熱を用いて前記改質器を加熱する燃焼部と、
前記燃料電池の電流値が第1の条件を満たし、且つ前記燃焼部の温度が第2の条件を満たす場合、前記改質器に供給する前記原燃料及び前記水の少なくとも一方の量を変動させる制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、品質に幅のある原燃料を用いながら耐久性の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る燃料電池装置の概略構成を示す構成図である。
図2図1の制御装置が実行する第1の維持処理を説明するためのフローチャートである。
図3図1の制御装置が実行する第2の維持処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の図面に示す構成要素において、同じ構成要素には同じ符号を付す。
【0010】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る燃料電池装置10は、改質器11、燃料電池12、燃焼部13、及び制御装置14を含んで構成される。燃料電池装置10は、更に、第1の供給装置15、第2の供給装置16、第1の温度センサ17、及び第2の温度センサ18を含んで構成されてよい。
【0011】
改質器11は、原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する。具体的には、改質器11は、改質触媒を収容してよい。改質触媒が、原燃料及び水から燃料ガスを生成してよい。原燃料は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の軽質炭化水素を含む。原燃料は、例えば、当該軽質炭化水素を含む都市ガス、LPG、バイオガス等である。水蒸気は、液状の改質水として改質器11に供給され、改質器11に設けられる気化部において水蒸気に気化されてよい。燃料ガスは、例えば、水素ガスを含む。
【0012】
燃料電池12は、燃料ガス及び空気を用いて、電気化学反応により発電する。詳細には、燃料電池12は、空気中の酸素ガスを用いて電気化学反応を行う。燃料電池12は、燃料電池セルを含んでよい。燃料電池12は、複数の燃料電池セルを含んでよい。複数の燃料電池セルは、セルスタックを構成してよい。セルスタックは、例えば、中空平板、平板、メタルサポート、円筒等の任意の形状であってよい。燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池セルであってよい。燃料電池12において、燃料ガス及び空気中の酸素ガスのすべてが電気化学反応を起こさずに未反応の燃料ガス及び酸素ガスが、排出されてよい。
【0013】
燃焼部13は、燃料電池12における未反応の燃料ガスを、未反応の酸素ガスを用いて燃焼させる。燃焼部13は、当該未反応燃料ガスを燃焼させた熱を用いて改質器11を加熱する。燃焼部13は、改質器11を加熱することにより、改質器11における水蒸気改質反応を行わせるエネルギーを付与してよい。燃焼部13は、改質器11を効果的に加熱するために、改質器11から第1の方向の反対方向に位置してよい。燃料電池装置10において、第1の方向は、燃料電池装置10の設置に際して鉛直上方に向けられることを想定されている方向である。
【0014】
第1の供給装置15は、水の改質器11への供給量を調整してよい。第1の供給装置15は、例えば、デューティー比を変更可能なポンプであってよい。第2の供給装置16は、原燃料の改質器11への供給量を調整してよい。第2の供給装置16は、例えば、デューティー比を変更可能なポンプであってよい。
【0015】
第1の温度センサ17は、燃焼部13の温度を検出してよい。第2の温度センサ18は、燃料電池12の温度を検出してよい。第1の温度センサ17及び第2の温度センサ18は、例えば、熱電対である。
【0016】
制御装置14は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含んで構成される。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等であってもよい。制御装置14は、燃料電池装置10の動作を制御してよい。
【0017】
制御装置14は、更に、記憶部を含んで構成されてよい。記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等、任意の記憶デバイスを含む。記憶部は、制御装置14を機能させる多様なプログラム、及び制御装置14が用いる多様な情報を記憶してよい。
【0018】
例えば、記憶部は、原燃料ガスの複数の種類に応じた炭素価数値を記憶してよい。炭素価数値は、原燃料の単位容量の炭素数である。炭素価数値は、原燃料における炭化水素の濃度及び炭化水素の種類に基づいて算出される。炭素価数値は、炭化水素の濃度が高くなるほど大きくなる。又、炭素価数値は、炭化水素の平均の炭素数が増えるほど大きくなる。燃料電池装置10では、複数の種類の原燃料のいずれかの使用が想定されており、各種類別に炭素価数値が予め定められ記憶部に情報として格納されている。炭素価数値は、燃料電池12を任意の状態に遷移や維持させるために、原燃料、水等の供給量を調整するためのパラメータとして用いられる。
【0019】
制御装置14は、燃料電池12の発電した電力の電流値を情報として、電流センサ又は外部機器から取得してよい。制御装置14は、例えば、燃料電池装置10が内蔵する電流センサ又は燃料電池装置10の外部に設けられる電流センサから取得してよい。又、制御装置14は、例えば、他の情報処理装置から燃料電池12の発電する電力の電流を取得してよい。制御装置14は、第1の温度センサ17から燃焼部13の温度を情報として取得してよい。制御装置14は、第2の温度センサ18から燃料電池12の温度を情報として取得してよい。
【0020】
制御装置14は、燃料電池12の電流値が第1の条件を満たしているか否かを判別する。制御装置14は、燃焼部13の温度が第2の条件を満たしているか否かを判別する。制御装置14は、当該電流値が第1の条件を満たし、且つ当該温度が第2の条件を満たしている場合、改質器11に供給する原燃料及び水の少なくとも一方の量(以下、本願明細書において「供給量」と呼ぶこともある。)を変動させる耐久性維持のための処理を実行する。具体的には、制御装置14は、第1の供給装置15及び第2の供給装置16を制御することにより、改質器11に供給する原燃料及び水の少なくとも一方の量を変動させる。本願明細書において以下に記載の供給量は、流量、即ち短時間当たりに流れる量を意味してよい。
【0021】
制御装置14は、原燃料の複数の種類それぞれに対して予め定められている炭素価数値の中から、供給される原燃料の種類に対応する炭素価数値を選択してよい。制御装置14は、具体的には、記憶部が記憶した、都市ガス、プロパンガス、バイオガス等の各原燃料における炭化水素の組成や濃度に基づいて設定された各原燃料の基準炭素価数値から、供給される原燃料に応じて適宜基準炭素価数値を選択する。制御装置14は、選択した炭素価数値に基づいて、改質器11に供給する原燃料の量を変動させてよい。
【0022】
耐久性の維持の処理は、例えば、S/Cの下限値以上への維持に基づく第1の維持処理、及び燃料枯れに基づく第2の維持処理を含む。S/Cは、改質器11入り口における炭素に対する水の割合(モル比)である。燃料枯れは、発電に必要な燃料が燃料電池12において不足している状態を意味する。制御装置14は、第1の維持処理及び第2の維持処理の一方を実行可能でも、両方を実行可能でもよい。
【0023】
第1の維持処理は、S/Cの低下による燃料電池12の破損の可能性を低減するために行われる。又、第1の維持処理は、改質触媒の劣化を低減するために行われる。第1の維持処理における第1の条件は、燃料電池12の電流値が第1の電流値以上であることである。又、第1の維持処理における第2の条件は、燃焼部13の温度が第1の温度以上であることである。第1の維持処理において、制御装置14は、第1の条件及び第2の条件が満たされる場合、改質器11におけるS/Cが第1の下限値以上になるように、改質器11に供給する水の量を増加させる。
【0024】
制御装置14は、S/Cが第1の下限値以上であることを、例えば、投入された原燃料の供給量と発電量と燃焼部温度とから原燃料に含まれる炭化水素の濃度を推定し、推定した炭化水素濃度と改質器11に供給する水の供給量とから、推定してよい。また、制御装置14は、S/Cが第1の下限値以上であることを、事前の実験により確認される原燃料に含まれる炭化水素濃度と燃焼部の温度との関係を用いて、特定の炭化水素濃度を基準値として、燃焼部温度に応じて炭化水素濃度を推定し、推定した炭化水素濃度と改質器11に供給する水の供給量とから、推定してよい。
【0025】
第1の維持処理において、制御装置14は、水の供給量を徐々に又は段階的に増加させてよい。具体的には、水の単位増加量が定められていてよい。制御装置14は、単位増加量だけ水の供給量を増加させた後、所定時間待機してから、第1の条件及び第2の条件を満たすか否かを判別してよい。更に、制御装置14は、第1の条件及び第2の条件を満たす場合、更に単位増加量だけ水の供給量を増加させてよい。制御装置14は、水の供給量の上限値に到達するまで、第1の条件及び第2の条件を満たすかの判別、及び水の供給量の単位増加量分の増加を繰返してよい。水の供給量の上限値は、S/Cが第1の下限値以上であって、かつ改質器11の温度が低下しない量で、定められていてよい。
【0026】
制御装置14は、第1の維持処理の実行後、燃焼部13の温度が第1の温度未満に低下する場合、改質器11に供給する水の量を減少させてよい。更には、制御装置14は、改質器11に供給する水の量を、第1の維持処理の実行前の供給量に戻してよい。
【0027】
第2の維持処理は、燃料枯れによる燃料電池12の破損の可能性を低減するために行われる。第2の維持処理における第1の条件は、燃料電池12の電流値が第2の電流値以上であることである。第2の電流値は、第1の電流値以上である。又、第2の維持処理における第2の条件は、燃焼部13の温度が第2の温度又は燃料電池12の温度未満であることである。第2の温度は、第1の温度より低い。第2の電流値及び第2の温度は、燃料電池12における燃料枯れの発生の可能性を推定させる値を実験結果等に基づいて事前に決定されていてよい。第2の維持処理において、制御装置14は、第1の条件及び第2の条件が満たされる場合、改質器11に供給する原燃料の量を変動させる。原燃料の供給量の変動は、原燃料の容量当たりの炭素原子数が増加する方向への変動であってよい。
【0028】
第2の維持処理において、制御装置14は、原燃料の供給量を徐々に又は段階的に変動させてよい。具体的には、原燃料の単位変動量が定められていてよい。単位変動量は、容量を変化させる構成においては、増加させる容量である。単位変動量は、炭素価数値を変化させる構成においては、増加させる炭素価数値である。制御装置14は、単位変動量だけ原燃料の供給量を変動させた後、所定時間待機してから、第1の条件及び第2の条件を満たすか否かを判別してよい。更に、制御装置14は、第1の条件及び第2の条件を満たす場合、更に単位変動量だけ原燃料の供給量を変動させてよい。制御装置14は、原燃料の供給量の上限値に到達するまで、第1の条件及び第2の条件を満たすかの判別、及び原燃料の供給量の単位変動量分の変動を繰返してよい。原燃料の供給量の上限値は、原燃料の供給量と、燃焼部13の温度又は燃料電池12の温度との関係を事前の実験により確認して、予め定められていてよい。
【0029】
制御装置14は、第2の維持処理の実行後、燃焼部13の温度が第2の温度及び燃料電池12の温度以上に上昇する場合、改質器11に供給する原燃料の量を第2の維持処理による変動前の量に戻す方向に変動させる。戻す方向に変動とは、原燃料の容量当たりの炭素原子数が減少する方向への変動であってよい。原燃料の供給量を変動前の量に戻す方向への変動の条件として、更に燃料電池12の電流値が第2の電流値未満であることが含まれていてよい。
【0030】
更には、制御装置14は、第2の維持処理の実行後、燃焼部13の温度が第2の温度及び燃料電池12の温度以上に上昇する場合、改質器11に供給する原燃料の量を、第2の維持処理の実行前の供給量に戻してよい。制御装置14は、第2の維持処理の実行直前の炭素価数値から他の炭素価数値を選択することにより実行した場合、選択された当該他の炭素価数値を、選択前の炭素価数値に戻すことにより、原燃料の供給量を戻してよい。
【0031】
次に、本実施形態において制御装置14が実行する第1の維持処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。第1の維持処理は、燃料電池装置10の稼働中に、例えば、周期的に開始する。
【0032】
ステップS100において、制御装置14は、第1の維持処理において定められる第1の条件及び第2の条件を満たしているか否かを判別する。言換えると、制御装置14は、燃料電池12の温度が第1の温度以上且つ燃焼部13の温度が第1の温度以上であるか否かを判別する。第1の条件及び第2の条件を満たす場合、プロセスはステップS101に進む。第1の条件及び第2の条件の少なくとも一方を満たさない場合、第1の維持処理は終了する。
【0033】
ステップS101では、制御装置14は、改質器11への水の供給量を記憶する。記憶後、プロセスはステップS102に進む。
【0034】
ステップS102では、制御装置14は、改質器11への水の供給量が上限値未満であるか否かを判別する。上限値未満である場合、プロセスはステップS103に進む。上限値未満でない場合、プロセスはステップS104に進む。
【0035】
ステップS103では、制御装置14は、改質器11への水の供給量を単位増加量で増加させる。増加後、プロセスはステップS104に進む。
【0036】
ステップS104では、制御装置14は、所定時間待機する。待機後、プロセスはステップS105に進む。
【0037】
ステップS105では、制御装置14は、第1の維持処理において定められる第1の条件及び第2の条件を満たしているか否かを判別する。第1の条件及び第2の条件を満たす場合、プロセスはステップS102に戻る。第1の条件及び第2の条件の少なくとも一方を満たさない場合、プロセスはステップS106に進む。
【0038】
ステップS106では、制御装置14は、改質器11への水の供給量を、ステップS101において記憶した供給量に戻す。供給量を戻した後、第1の維持処理は終了する。
【0039】
次に、本実施形態において制御装置14が実行する第2の維持処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。第2の維持処理は、燃料電池装置10の稼働中に、例えば、周期的に開始する。
【0040】
ステップS200において、制御装置14は、第2の維持処理において定められる第1の条件及び第2の条件を満たしているか否かを判別する。言換えると、制御装置14は、燃料電池12の温度が第2の温度以上且つ燃焼部13の温度が第2の温度及び燃料電池12の温度未満であるか否かを判別する。第1の条件及び第2の条件を満たす場合、プロセスはステップS201に進む。第1の条件及び第2の条件の少なくとも一方を満たさない場合、第2の維持処理は終了する。
【0041】
ステップS201では、制御装置14は、改質器11への原燃料の供給量を記憶する。記憶後、プロセスはステップS202に進む。
【0042】
ステップS202では、制御装置14は、改質器11への原燃料の供給量が上限値未満であるか否かを判別する。上限値未満である場合、プロセスはステップS203に進む。上限値未満でない場合、プロセスはステップS204に進む。
【0043】
ステップS203では、制御装置14は、改質器11への原燃料の供給量を単位増加量で増加させる。増加後、プロセスはステップS204に進む。
【0044】
ステップS204では、制御装置14は、所定時間待機する。待機後、プロセスはステップS205に進む。
【0045】
ステップS205では、制御装置14は、第2の維持処理において定められる第1の条件及び第2の条件を満たしているか否かを判別する。第1の条件及び第2の条件を満たす場合、プロセスはステップS202に戻る。第1の条件及び第2の条件の少なくとも一方を満たさない場合、プロセスはステップS206に進む。
【0046】
ステップS206では、制御装置14は、改質器11への原燃料の供給量を、ステップS201において記憶した供給量に戻す。供給水を戻した後、第2の維持処理は終了する。
【0047】
以上のような構成の本実施形態の燃料電池装置10は、原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器11と、燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池12と、燃料電池12において未反応の燃料ガスを燃焼させた熱を用いて改質器11を加熱する燃焼部13と、燃料電池12の電流値が第1の条件を満たし且つ燃焼部13の温度が第2の条件を満たす場合に改質器11に供給する原燃料及び水の少なくとも一方の量を変動させる制御装置14とを備える。上述の構成により、燃料電池装置10は、燃料電池12の電流値及び燃焼部13の温度に基づいて燃料電池12の状態を推定して、適切に原燃料及び水の少なくとも一方を供給し得る。したがって、燃料電池装置10は、品質に幅のある原燃料を用いながらも、燃料電池12の状態を推定して適切な供給を行うことにより、耐久性の低下を抑制し得る。
【0048】
又、本実施形態の燃料電池装置10は、原燃料の複数の種類それぞれに対して予め定められている炭素価数値の中から、供給される原燃料ガスの種類に対応する炭素価数値を選択し、当該炭素価数値に基づいて改質器11に供給する原燃料の量を変動させる。従来の燃料電池装置に供給される原燃料の品質は、設置個所のガス供給事業者によって異なることがある。それゆえ、燃料電池装置10では設置個所で供給されることが想定される複数の種類の原燃料別の品質における炭素価数値に着目して、炭素価数値別の制御方法がもうけられている。このような事情に対して、燃料電池装置10は、バイオガス等のように、短期又は中期において炭化水素の濃度等が変動する原燃料の使用による適切な制御からのブレを、既定の炭素価数値別の制御を利用して、適切化し得る。
【0049】
又、本実施形態の燃料電池装置10では、第1の条件は燃料電池12の電流値が第1の電流値以上であることであり、第2の条件は燃焼部13の温度が第1の温度以上であることであり、制御装置14は第1の条件及び第2の条件が満たされる場合に改質器11におけるS/Cが予め定められる第1の下限値以上になるように改質器11に供給する水の量を増加させる。一般的に燃料電池12では、S/Cが低下していくとセルが破損する可能性が高まる。S/Cは、物質量を基にした水蒸気と燃料ガスに含まれる炭素との割合であるため、原燃料における炭化水素の組成及び炭化水素全体の濃度の変化により変動し得る。設置個所で使用可能な原燃料であれば原燃料の品質の変動は少ないが、バイオガス等を用いる場合は、原燃料における組成及び濃度に変動があり得る。このような原燃料を用いた原燃料及び水の容積による量の制御では、S/Cの低下及び燃焼部13の温度上昇が生じ得る。このような事象に対して、上述の構成を有する燃料電池装置10は、燃料電池12の電流値及び燃焼部13の温度の状態から、S/Cの第1の下限値以下への低下が発生していることの推定に基づきS/Cの極端な低下を抑制し得る。又、燃料電池装置10は、水の供給量を増やすので、燃焼部13の過昇温による改質器11に収容される改質触媒の劣化を抑制し得る。
【0050】
又、本実施形態の燃料電池装置10は、燃焼部13の温度が第1の温度未満に低下する場合に改質器11に供給する水の量を減少させる。このような構成により、燃料電池装置10は、S/Cの低下による燃料電池12の破損の可能性が低下したと判断された状況で、制御を元の通常状態に戻し得る。したがって、燃料電池装置10は、破損の可能性が低下した状態で、効率の向上等を優先し得る。
【0051】
又、本実施形態の燃料電池装置10は、燃料電池12の電流値が第1の電流値以上の第2の電流値以上であり且つ燃焼部13の温度が第1の温度より低い第2の温度又は燃料電池12の温度未満である場合に改質器11に供給する原燃料の量を変動させる。一般的に燃料電池12では、電流値が高い状態で燃料利用率が高い場合、燃料枯れを起こすことによりセルが破損する可能性がある。燃料利用率は、原燃料における炭化水素の組成及び炭化水素全体の濃度の変化により変動し得る。前述のように、設置個所で使用可能な原燃料であれば原燃料の品質の変動は少ないが、バイオガス等を用いる場合は、原燃料における組成及び濃度に変動があり得る。このような原燃料を用いた原燃料及び水の容積による量の制御では、燃料枯れが生じ得る。このような事象に対して、上述の構成を有する燃料電池装置10は、燃料電池12の電流値並びに燃焼部13の温度の状態から、燃料枯れの発生の可能性の推定に基づき燃料電池12の破損の可能性を低減する。
【0052】
又、本実施形態の燃料電池装置10は、燃焼部13の温度が第2の温度及び燃料電池12の温度以上に上昇する場合に改質器11に供給する原燃料の量を変動前の量に戻す方向に変動させる。のような構成により、燃料電池装置10は、燃料枯れによる燃料電池12の破損の可能性が低下したと判断された状況で、制御を元の通常状態に戻し得る。したがって、燃料電池装置10は、破損の可能性が低下した状態で、効率の向上等を優先し得る。
【0053】
一実施形態において、(1)燃料電池装置は、
原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池と、
前記燃料電池において未反応の前記燃料ガスを燃焼させた熱を用いて前記改質器を加熱する燃焼部と、
前記燃料電池の電流値が第1の条件を満たし、且つ前記燃焼部の温度が第2の条件を満たす場合、前記改質器に供給する前記原燃料及び前記水の少なくとも一方の量を変動させる制御装置と、を備える。
【0054】
(2)上記(1)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、原燃料の複数の種類それぞれに対して予め定められている炭素価数値の中から、供給される原燃料ガスの種類に対応する炭素価数値を選択し、該炭素価数値に基づいて前記改質器に供給する前記原燃料の量を変動させる。
【0055】
(3)上記(1)又は(2)の燃料電池装置では、
前記第1の条件は、前記燃料電池の電流値が第1の電流値以上であることであり、
前記第2の条件は、前記燃焼部の温度が第1の温度以上であることであり、
前記制御装置は、前記第1の条件及び前記第2の条件が満たされる場合、前記改質器におけるS/Cが予め定められる第1の下限値以上になるように、前記改質器に供給する前記水の量を増加させる。
【0056】
(4)上記(3)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記燃焼部の温度が前記第1の温度未満に低下する場合、前記改質器に供給する水の量を減少させる。
【0057】
(5)上記(3)又は(4)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記燃料電池の電流値が前記第1の電流値以上の第2の電流値以上であり、且つ前記燃焼部の温度が前記第1の温度より低い第2の温度又は前記燃料電池の温度未満である場合、前記改質器に供給する前記原燃料の量を変動させる。
【0058】
(6)上記(1)の燃料電池装置では、
前記第1の条件は、前記燃料電池の電流値が第2の電流値以上であることであり、
前記第2の条件は、前記燃焼部の温度が、第2の温度又は前記燃料電池の温度未満であることであり、
前記制御装置は、前記第1の条件及び前記第2の条件が満たされる場合、前記改質器に供給する前記原燃料の量を変動させる
【0059】
(7)上記(5)又は(6)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記燃焼部の温度が前記第2の温度及び前記燃料電池の温度以上に上昇する場合、前記改質器に供給する前記原燃料の量を変動前の量に戻す方向に変動させる。
【0060】
(8)上記(5)乃至(7)のいずれかの燃料電池装置では、
前記制御装置は、原燃料の複数の種類それぞれに対して予め定められている炭素価数値の中から、供給される原燃料ガスの種類に対応する炭素価数値を選択し、該炭素価数値に基づいて前記改質器に供給する前記原燃料の量を変動させる。
【0061】
(9)上記(8)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記燃焼部の温度が前記第2の電流値未満に低下し且つ前記燃料電池の温度以上に上昇する場合、選択された炭素価数値を、選択前の炭素価数値に戻す。
【0062】
以上、燃料電池装置10の実施形態を説明してきたが、本開示の実施形態としては、装置を実施するための方法又はプログラムの他、プログラムが記録された記憶媒体(一例として、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、ハードディスク、又はメモリカード等)としての実施態様をとることも可能である。
【0063】
又、プログラムの実装形態としては、コンパイラによってコンパイルされるオブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード等のアプリケーションプログラムに限定されることはなく、オペレーティングシステムに組み込まれるプログラムモジュール等の形態であってもよい。さらに、プログラムは、制御基板上のCPUにおいてのみ全ての処理が実施されるように構成されてもされなくてもよい。プログラムは、必要に応じて基板に付加された拡張ボード又は拡張ユニットに実装された別の処理ユニットによってその一部又は全部が実施されるように構成されてもよい。
【0064】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0065】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0066】
本開示に記載された構成要件の全て、及び/又は、開示された全ての方法、又は、処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。又、本開示に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、又は類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一、又は、均等となる特徴の一例にすぎない。
【0067】
さらに、本開示に係る実施形態は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本開示に係る実施形態は、本開示に記載された全ての新規な特徴、又は、それらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法、又は、処理のステップ、又は、それらの組合せに拡張することができる。
【0068】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1の温度センサは、第2の温度センサと識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0069】
10 燃料電池装置
11 改質器
12 燃料電池
13 燃焼部
14 制御装置
15 第1の供給装置
16 第2の供給装置
17 第1の温度センサ
18 第2の温度センサ
図1
図2
図3