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特開2025-7467移動制御装置、移動制御方法及び移動制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007467
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】移動制御装置、移動制御方法及び移動制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20250109BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01C21/28
G08G1/09 V
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108895
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】510084297
【氏名又は名称】株式会社ブロードリーフ
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】平野 喜丈
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB15
2F129BB20
2F129BB22
2F129BB26
2F129BB33
2F129BB49
2F129BB62
2F129BB66
2F129EE78
2F129EE94
2F129FF02
2F129FF20
2F129GG17
2F129GG18
2F129GG28
2F129HH12
2F129HH20
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】移動体の現在位置をより正確に推定することが可能な移動制御装置を提供する。
【解決手段】移動制御装置1は、車両Vの現在位置の情報に基づいて車両Vの移動を制御する。具体的には、移動制御装置1は、GNSS情報に基づいて車両Vの現在位置を推定する自己位置推定部と、車両Vの周囲における環境情報を取得する環境情報取得部と、車両Vの移動情報を取得する移動情報取得部とを備えている。自己位置推定部は、GNSS情報を取得できない場合に環境情報に基づいて車両Vの現在位置を推定する。また、GNSS情報及び環境情報を取得できない場合に、移動情報に基づいて車両Vの現在位置を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動を制御する移動制御装置であって、
前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する自己位置推定部と、
前記移動体に搭載された第1のセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記移動体に搭載された第2のセンサを通じて前記移動体の移動情報を取得する移動情報取得部と、を備え、
前記自己位置推定部は、
前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報取得部によって得られた前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、
前記GNSS情報及び前記環境情報を取得できない場合に、前記移動情報取得部によって得られた前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する、移動制御装置。
【請求項2】
前記移動体の移動により、前記自己位置推定部が前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する状態から、前記自己位置推定部が前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する状態へと変更された位置を基準点として特定する基準点特定部と、
前記基準点特定部によって特定された前記基準点の情報を記録する基準点記録部と、を備えている、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項3】
前記基準点記録部によって記録された前記基準点に前記移動体が到達すると、前記基準点において前記自己位置推定部が前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定モードから、前記自己位置推定部が前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第2の推定モードへと切り替える推定モード切り替え部と、を備え、
前記自己位置推定部は、前記推定モード切り替え部によって切り替えられた推定モードにより前記移動体の現在位置を推定する、請求項2に記載の移動制御装置。
【請求項4】
前記基準点記録部によって記録された前記基準点の履歴情報に基づいて、前記基準点の情報を含むマップ情報を作成する、又はマップ情報を更新するマップ作成部と、
前記マップ作成部によって作成又は更新された前記マップ情報に基づいて、前記マップ情報に含まれる前記基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことを検出する検出部と、を備え、
前記推定モード切り替え部は、前記検出部によって前記移動体の検出がなされると、前記基準点において推定モードを切り替えるための準備を行う、請求項3に記載の移動制御装置。
【請求項5】
前記移動制御装置は、
所定の移動予定経路に沿って前記移動体の移動を制御し、
前記自己位置推定部が前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第3の推定モードから、前記自己位置推定部が前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定モードへと変更された場合に、前記第3の推定モードで推定された前記移動体の現在位置と、前記第1の推定モードで推定された前記移動体の現在位置との位置誤差を測定する位置誤差測定部と、
前記位置誤差測定部によって測定された前記位置誤差に基づいて、前記移動予定経路へと導くための移動補正経路を設定する補正経路設定部と、を備える請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項6】
前記基準点特定部は、前記自己位置推定部が前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第3の推定モードから、前記第1の推定モードへと変更された場合に、前記第3の推定モードから前記第1の推定モードへと変更された位置を他の基準点として特定し、
前記基準点記録部は、前記他の基準点の情報を記録し、
前記推定モード切り替え部は、前記他の基準点に前記移動体が到達すると、前記他の基準点において前記第3の推定モードから前記第1の推定モードへと切り替え、
前記移動制御装置は、
所定の移動予定経路に沿って前記移動体の移動を制御し、
前記推定モード切り替え部によって前記他の基準点において前記第3の推定モードから前記第1の推定モードへと切り替わった場合に、前記第3の推定モードで推定された前記移動体の現在位置と、前記第1の推定モードで推定された前記移動体の現在位置との位置誤差を測定する位置誤差測定部と、
前記他の基準点において測定された前記位置誤差により、前記移動予定経路へと導くための移動補正経路を設定する補正経路設定部と、を備える請求項3又は4に記載の移動制御装置。
【請求項7】
移動体の移動を制御するコンピュータによって実行される移動制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定することと、
前記移動体に搭載された第1のセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得することと、
前記移動体に搭載された第2のセンサを通じて前記移動体の移動情報を取得することと、を実行し、
前記移動体の現在位置を推定するにあたって、
前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、
前記GNSS情報及び前記環境情報を取得できない場合に、前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する、移動制御方法。
【請求項8】
移動体の移動を制御する移動制御装置としてのコンピュータに、
前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する処理と、
前記移動体に搭載された第1のセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得する処理と、
前記移動体に搭載された第2のセンサを通じて前記移動体の移動情報を取得する処理と、を実行させ、
前記移動体の現在位置を推定する処理では、
前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、
前記GNSS情報及び前記環境情報を取得できない場合に、前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する、移動制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動制御装置、移動制御方法及び移動制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者の安全性、快適性を実現するために、車両自体が周囲の外部環境の情報を把握し、運転者に代わって車両の走行を制御し、自動運転するためのADAS(先進運転支援システム)を搭載した車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の自動運行方法では、車両の走行中にGPS信号を受信して車両の現在位置(絶対位置)をリアルタイムで取得し、車両の位置精度の信頼性が低下した場合には、GPS(衛星測位システム)に基づく座標及び方位角と、慣性測定装置(IMU)に基づく座標及び方位角とを整合させて上記絶対位置を補正することとしている。そして、車両の現在位置の情報に基づいて車両の走行を制御することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-32873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような移動体の走行制御において、GPS信号(GNSS情報)を取得できない外部環境下であっても、走行する移動体の現在位置をより精度良く推定する技術が求められていた。そして、当該技術を利用して移動体の走行制御に利用することや、運転者やオペレータに対し目的地までの経路を案内するナビゲーションサービスに利用することが求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、移動体の現在位置をより正確に推定することが可能な移動制御装置、移動制御方法及び移動制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の移動制御装置によれば、移動体の移動を制御する移動制御装置であって、前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する自己位置推定部と、前記移動体に搭載された第1のセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得する環境情報取得部と、前記移動体に搭載された第2のセンサを通じて前記移動体の移動情報を取得する移動情報取得部と、を備え、前記自己位置推定部は、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報取得部によって得られた前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、前記GNSS情報及び前記環境情報を取得できない場合に、前記移動情報取得部によって得られた前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定すること、により解決される。
上記のように、自己位置推定部は、GNSS情報に基づいて移動体の現在位置を推定し、GNSS情報を取得できない場合に環境情報に基づいて移動体の現在位置を推定し、GNSS情報及び環境情報を取得できない場合に移動情報に基づいて移動体の現在位置を推定する。そうすることで、移動する移動体の周囲の環境に応じて、移動体の現在位置をより正確に推定することが可能な移動制御装置を実現できる。
【0008】
また前記課題は、本発明の移動制御方法によれば、移動体の移動を制御するコンピュータによって実行される移動制御方法であって、前記コンピュータが、前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定することと、前記移動体に搭載された第1のセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得することと、前記移動体に搭載された第2のセンサを通じて前記移動体の移動情報を取得することと、を実行し、前記移動体の現在位置を推定するにあたって、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、前記GNSS情報及び前記環境情報を取得できない場合に、前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定すること、によっても解決される。
【0009】
また前記課題は、本発明の移動制御プログラムによれば、移動体の移動を制御する移動制御装置としてのコンピュータに、前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する処理と、前記移動体に搭載された第1のセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得する処理と、前記移動体に搭載された第2のセンサを通じて前記移動体の移動情報を取得する処理と、を実行させ、前記移動体の現在位置を推定する処理では、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、前記GNSS情報及び前記環境情報を取得できない場合に、前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定すること、によっても解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の移動制御装置、移動制御方法及び移動制御プログラムによれば、移動体の現在位置をより正確に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の走行制御システム全体の構成図である。
図2】走行制御装置のハードウェア構成を説明する図である。
図3A】情報発信装置のハードウェア構成を説明する図である。
図3B】対象車両に取り付けられた識別マークの位置を示す図である。
図3C】対象車両に取り付けられた識別マークの位置を示す図である。
図4】遠隔操作装置のハードウェア構成を説明する図である。
図5】走行制御装置、情報発信装置、遠隔操作装置の機能を説明する図である。
図6】マップ情報を示す図であって、車両の走行ルート及び基準点を示す図である。
図7】車両が第3空間から第1空間へと走行したときの様子を説明する図である。
図8】車両の自己位置推定の変化態様と、車両の進行方向との関係を説明する図である。
図9】マップ情報を示す図であって、基準点及び進行方向の認識について説明する図である。
図10A】自律運転制御が行われている状態を説明する図である。
図10B】自律運転制御から相対運転制御に変更された状態を説明する図である。
図10C】相対運転制御から自律運転制御に変更され、移動体が対象車両を追い越す様子を説明する図である。
図11】車間距離データを示す図である。
図12】走行制御方法(1)を示す処理フロー図である。
図13】走行制御方法(2)を示す処理フロー図である。
図14】走行制御方法(3)を示す処理フロー図である。
図15】走行制御方法(4)を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<走行制御システム(移動制御システム)の全体構成>
以下、本発明の一実施形態について図1図15を参照して説明する。
本実施形態では、「移動体」の一例として車両を用いて説明することとする。なお、「移動体」とは、自動車のほか、バス、トラック等の車両であっても良いし、電車、汽車等の鉄道車両であっても良いし、飛行機、船等の乗り物であっても良い。あるいは、ドローン等の無人移動体であっても良い。「移動体」の一例として、車両を用いて説明しているため、以下の記載では位置(地点)が移ることを「走行」と表現している。これに限られず、「移動体」の種類によっては、「航行」、「飛行」などとも表現することが適切であり、適宜、置換して表現する。また、これらを総称して「移動」と表現することができる。
【0013】
本実施形態の走行制御システムS(移動制御システム)は、図1に示すように、車両Vの外部環境を把握し、運転者に代わって車両Vの走行予定経路(「移動予定経路」とも称する)を計画し、当該走行予定経路に沿って車両Vを制御することで走行(「移動」とも称する)させる「自動運転」と、所定の対象車両FVに相対して車両Vを追従させて走行させる「追従運転」とを実現するシステムであって、自動運転制御モードと追従運転制御モードの間で切り替える「モード切替処理」を行うことが可能となっている。
なお、「追従運転(追従運転制御)」を「相対運転(相対運転制御)」と称しても良い。本実施形態では、以下「相対運転」と称して説明する。
また、本実施形態では、以下「自動運転制御モード(第1の運転制御モード)」を単に「自動運転モード」と称し、「追従運転制御モード(第2の運転制御モード)」を単に「相対運転モード」と称して説明する。
【0014】
「自動運転(自動運転モード)」には、車両Vを制御することで自律的に走行(移動)させる「自律運転(自律運転モード)」と、車両Vの外部にいるオペレータが車両Vを遠隔操作(外部操作)することで走行させる「遠隔運転(遠隔運転モード)」とが含まれるものとする。つまり、「自律運転」と「遠隔運転」を総称して「自動運転」と呼ぶこととする。基本的には、自動運転と称するときには自律運転を意味するものとして説明する。
なお、遠隔運転において上記オペレータはヒトでなくても良く、AI(人工知能)であっても良い。
【0015】
上記「自動運転」、「相対運転」のほか、車両Vに乗車して実際に運転操作を行う「手動運転(手動運転モード)」がある。上記モード切替処理では、この「手動運転モード」と「自動運転モード」を切り替えるほか、「手動運転モード」と「相対運転モード」を切り替えることも可能である。
【0016】
なお、「車両V」は、後述の走行制御装置1を搭載し、自動運転する機能と、相対運転する機能とを具備した車両である。
「対象車両FV」は、後述の車両情報発信装置50を搭載し、通信によって車両情報(具体的には、車両識別情報、現在の位置情報、走行予定経路の情報)を発信することが可能な状態で走行(移動)する車両である。
対象車両FVは、車両Vよりも前方を走行(移動)する前走車両に限定されず、車両Vと並んで走行する並走車両であっても良い。あるいは、車両Vよりも後方を走行する後走車両であっても良い。
対象車両FVは、例えば、予め設定された走行予定経路に沿って走行するバス、タクシー、トラック等のほか、所定の循環経路に沿って走行する循環バス等であっても良い。もちろん、その他の一般車両であっても良い。
【0017】
<走行制御システム(移動制御システム)のハードウェア構成>
走行制御システムSは、図1図4に示すように、車両Vに搭載され、車両Vの走行を総合的に制御する走行制御装置1(移動制御装置)と、車両Vの周囲の外部環境を検出する車載センサ10と、人工衛星SA及び基準局STからGNSS信号を受信し、車両Vの現在位置を測定する車載ロケータ20と、車両Vの操舵及び加減速等を制御する車載ECU30と、外部機器と通信する車載通信装置40と、を備えている。
また、走行制御システムSは、対象車両FVに搭載され、走行制御装置1と接続され、通信によって対象車両FVの位置情報を含む対象車両情報を発信する車両情報発信装置50と、対象車両FVに取り付けられ、対象車両FVの車両識別情報が埋め込まれた識別マーク60と、備えている。
なお、車両Vが、上記対象車両FVが備える車両情報発信装置50、識別マーク60をさらに具備しているほか、対象車両FVが、上記車両Vが備える車載センサ10、車載ロケータ20、車載ECU30、車載通信装置40をさらに具備するような構成であっても良い。つまり、車両Vと対象車両FVが同様の構成であっても良く、これによって車両Vと対象車両FVが相互に入れ替わり、走行制御システムSを構成することが可能となる。
さらに、走行制御システムSは、車両Vの外部に設置され、走行制御装置1と通信によって車両Vの走行(移動)を操作(遠隔操作)する遠隔操作装置70を備えている。
なお、走行制御装置1と、車両情報発信装置50と、遠隔操作装置70とが直接通信を行うこととしても良い。
【0018】
<走行制御装置(移動制御装置)>
走行制御装置1は、図2に示すように、車載センサ10、車載ロケータ20、車載ECU30及び車載通信装置40と車載ネットワーク(CAN)を通じて接続されたコンピュータである。
具体的には、走行制御装置1は、データの演算・制御処理装置としてのCPU(プロセッサ)と、記憶装置としてのROM、RAM及びHDD(SSD)と、車載ネットワークを通じて情報データの送受信を行う通信インタフェースと、を備えたコンピュータである。
走行制御装置1の記憶装置(メモリ)には、コンピュータとして必要な機能を果たすメインプログラムに加えて、走行制御プログラムが記憶されており、これらプログラムがCPU(プロセッサ)によって実行されることにより、走行制御装置1の機能が発揮される。あるいは、CPUを実装した半導体集積回路又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)によって実行されても良い。
なお、車載ECU30(総合ECU31)、車両情報発信装置50、遠隔操作装置70についても同様のハードウェア構成を備えたコンピュータである。
【0019】
<<自律運転、相対運転、遠隔運転>>
走行制御装置1は、「自律運転」を実行すべく、車載センサ10から得られる外部の環境情報と、車載ロケータ20から得られる車両Vの位置情報及び走行情報と、車載ECU30から得られる車両情報とに基づいて車載ECU30(総合ECU31)を制御することで、車両Vの「自律走行」を制御する。
また、走行制御装置1は、「相対運転(追従運転)」を実行すべく、車載通信装置40を通じて車両情報発信装置50と無線通信し、所定の対象車両FVの位置情報を含む対象車両情報を受信する。そして、外部の環境情報と、車両Vの位置情報と、対象車両FVの位置情報を含む対象車両情報とに基づいて車載ECU30(総合ECU31)を制御することで、対象車両FVに対する車両Vの「相対走行(追従走行)」を制御する。
そのほか、走行制御装置1は、「遠隔運転」を実行すべく、車載通信装置40を通じて遠隔操作装置70と無線通信し、外部の環境情報と、車両Vの位置情報及び走行情報と、車両情報とを遠隔操作装置70に向けて送信する。遠隔操作装置70は、これら情報を受信し、外部の環境情報と、車両Vの位置情報とに基づく内容をモニタ71(ナビモニタ72)に表示するほか、オペレータに向けてユーザ報知することができる。
【0020】
より詳しく述べると、走行制御装置1は、「自律運転機能(車載センサ10、車載ロケータ20、車載ECU30)」を予め搭載した車両Vに対して新たに搭載されることで、既存の「自律運転機能」の性能を高めることと、新たに「相対運転機能」及び「遠隔運転機能」を付与するものである。
【0021】
<<マップ情報を用いた走行制御>>
走行制御装置1は、「自律運転」、「相対運転」、「遠隔運転」を実行すべく、図6に示す「マップ情報」を用いて自己位置推定を行い、車両Vの位置情報(以下、「現在位置」、「現地点」とも称する)を精度良く推定しながら車両Vの走行制御(「移動制御」とも称する)を行う。
詳しく述べると、走行制御装置1は、「基準点(第1基準点、第2基準点)」の情報を含む「マップ情報」を用いて、当該基準点に到達したことをもって到達した「空間(第1空間、第2空間、第3空間)」を認識し、当該空間に応じた好適な自己位置推定を行い、車両Vの位置情報の推定処理と、車両Vの走行制御とを行う。もちろん、車両Vの位置情報を推定しながら車両Vの走行制御を行っても良い。
【0022】
「空間(第1空間、第2空間、第3空間)」とは、地上空間(地中空間であっても良い。)において自己位置推定の手法の違いに基づいて区分けされたものであって、空間が異なることで車両V(走行制御装置1)による自己位置推定の手法が異なることになる。なお、「空間」は「領域」や「特定範囲」等と表現されても良い。
「第1空間」は、車両Vが空間内に存在しているとき、車両V(走行制御装置1)が外部通信によってGNSS情報を取得することができ、GNSS情報に基づいて自己位置を推定できる状態にある空間を示す。
GNSS情報に基づいて自己位置を推定できる状態とは、例えばGNSS情報(GNSS信号)の受信感度レベルを計測したときに、当該感度レベルが一定レベル(一定レベル以上)にある状態である。
なお、「第1空間」を例えば「屋外(屋外空間)」と称しても良く、車両Vが屋外(屋外空間)に存在している(位置している)等と表現しても良い。
【0023】
「第2空間」は、車両Vが空間内に存在しているとき、車両V(走行制御装置1)が外部通信を行わず、車両単独で外部の環境情報を取得でき、環境情報に基づいて自己位置を推定できる状態にある空間を示す。言い換えれば、「第2空間」では、車両VがGNSS情報に基づいて自己位置を推定できない状態(GNSS信号の受信感度レベルが一定未満にある状態)にある空間を示す。
環境情報に基づいて自己位置を推定できる状態とは、例えば車両V(車載センサ10)が車両Vの周囲の外部環境を検出し、3次元の空間マッピングを行える状態である。
なお、「第2空間」、「第3空間」を例えば「屋内(屋内空間)」と称しても良く、車両Vが屋内(屋内空間)に存在している等と表現しても良い。
【0024】
「第3空間」は、車両Vが空間内に存在しているときに、車両V(走行制御装置1)が外部通信を行わず、また車両単独で外部の環境情報を取得せず、車両Vの走行情報を取得し、走行情報に基づいて自己位置を推定する状態にある空間を示す。言い換えれば、「第3空間」では、車両VがGNSS情報に基づいて自己位置を推定できない状態(外部通信できない状態)であり、かつ、車両Vが外部の環境情報を一定レベル以上で取得できない状態にある空間を示す。
外部通信ができず、かつ、外部の環境情報を取得できない状態とは、例えば車両Vがトンネル内や高架下に位置している状態や、車両Vが「第1空間」から「第2空間」へと移動した直後の状態、「第2空間」から「第1空間」へと移動した直後の状態である。この状態にあるとき、車両Vは、慣性測定装置22によって車両Vの走行情報を取得する。
上記状態が一定時間以上継続している間に、慣性測定装置22が車両Vの走行情報を取得できない場合には、車両V(走行制御装置1)は、車両Vの故障又はカンカルエラー(致命的なエラー)が発生したものと認識し、走行制御処理を終了する。
【0025】
上記における「車両Vが空間内に存在しているとき」とは、車両の位置情報(現在位置)がその空間(領域)に属しているときを示し、車両の位置情報が「車両位置範囲情報」で表される場合、その車両位置範囲情報の少なくとも一部がその空間に属しているときを示す。
また、「車両Vが空間内に存在していないとき」とは、車両の位置情報(現在位置)がその空間(領域)に属していないときを示し、車両の位置情報が、「車両位置範囲情報」で表される場合、その車両位置範囲情報の全てがその空間に属していないときを示す。
【0026】
なお、車両V(走行制御装置1)は、マップ情報(第1空間、第2空間及び第3空間)が地続きであることを認識している。そのため、車両Vの走行により空間が切り替わるときに、車両Vに記憶されたマップ情報の全てから空間を探索するものではない。
「マップ情報」では、図6に示すように、第1空間内に第2空間及び第3空間が存在している。そのため、車両Vが「屋内(第2空間、第3空間)」を走行しているときであっても「基準点」をもとにGNSS情報に基づく座標(GNSS座標)を把握できる。
【0027】
ところで、車両Vが「第1空間」から「第2空間」へと移動した直後の状態にあるとき、車両VはGNSS情報に基づく自己位置推定から環境情報に基づく自己位置推定へと切り替えるところ、当該切り替えのタイミングには多少のタイムラグが生じてしまう(車両Vが迷走してしまう)。なお、「第2空間」から「第1空間」へと移動した直後の状態も同様である。そのため、上記切り替えのタイミングでは車両V(走行制御装置1)が車両Vの走行情報をもとにして一時的に自己位置の推定を行い、車両Vの走行を制御しているところ、より精度良く自己位置の推定が行えることが望ましい。
そこで、走行制御装置1は、図6に示すように、上述した「基準点(第1基準点、第2基準点)」の情報を含む「マップ情報」を用い、当該基準点に到達したことをもって「空間(第1空間、第2空間、第3空間)」を認識し、当該空間に応じた自己位置推定を行う。
なお、走行制御装置1は、「基準点」による切り替え後の自己位置の推定にあたって、「基準点」の切り替え前の位置、進行方向をもとに「屋内(第2空間、第3空間)」の探査範囲を限定することで、自己位置推定精度と探査速度を向上させることができる(「屋内」の全てを探査するわけではない)。
【0028】
「基準点」とは、上記の「第1空間」と「第2空間」と「第3空間」との間において、車両Vが異なる空間へ出入りするときの位置(出入り位置、基準位置)を示すものであって、当該基準点に車両Vが到達したことで、車両V(走行制御装置1)による自己位置推定の手法が切り替えられることになる。「基準点」は、図6のマップ情報に記録される。
「第1基準点」は、入口基準点とも称され、第1空間内で走行している車両Vが第1空間から第2空間へと移動するときの「第2空間の入口」を示す位置(基準位置)である。
言い換えれば、「第1基準点」は、走行している車両V(走行制御装置1)がGNSS情報に基づいて現在位置を推定する状態(第1推定状態)から、環境情報に基づいて現在位置を推定する状態(第2推定状態)へと変更された位置(切り替え位置)である。
なお、車両Vが第1空間から第3空間へと移動するときの「第3空間の入口」を示す位置(基準位置)、また車両Vが第2空間から第3空間へと移動するときの「第3空間の入口」を示す位置(基準位置)についても「第1基準点(入口基準点)」と称される。
【0029】
「第2基準点」は、出口基準点とも称され、第2空間内で走行している車両Vが第2空間から第1空間へと移動するときの「第2空間の出口」を示す位置(基準位置)である。
言い換えれば、「第2基準点」は、走行している車両V(走行制御装置1)が環境情報に基づいて現在位置を推定する状態(第2推定状態)から、GNSS情報に基づいて現在位置を推定する状態(第1推定状態)へと変更された位置(切り替え位置)である。
なお、車両Vが第3空間から第1空間へと移動するときの「第3空間の出口」を示す位置(基準位置)、また車両Vが第3空間から第2空間へと移動するときの「第3空間の出口」を示す位置(基準位置)についても「第2基準点(出口基準点)」と称される。
【0030】
上記基準点が記録されたマップ情報を用いることで、走行制御装置1は、基準点に到達したことをもって車両Vの自己位置の推定手法(計測手法)を切り替えて、あるいは基準点に到達することをもって車両Vの自己位置の推定手法を予め切り替えることができる。
そうすることで、自己位置推定の切り替えタイミングのときに、走行制御装置1が車両Vの走行を円滑に制御できる。すなわち、よりタイミング良く自己位置推定の手法を切り替えて、より精度良く車両Vの現在位置を推定できる。
【0031】
「マップ情報」は、地図情報と、第1空間、第2空間及び第3空間の情報を含む空間情報と、第1基準点及び第2基準点の情報を含む基準点の情報とを含むものであって、走行制御システムS(走行制御装置1)によって作成され、また更新される。
詳しく述べると、走行制御装置1は、車両Vが所定の走行予定経路を走行しているときに、GNSS情報に基づいて車両Vの現在位置を推定する状態(第1推定状態)から、環境情報に基づいて車両Vの現在位置を推定する状態(第2推定状態)へと変更された位置を第1基準点として特定する(第2基準点も同様である)。そして、特定された基準点の情報を記録し、マップ情報に反映させる。そうすることで、マップ情報内に基準点の情報が更新され、また空間情報についても更新される。
なお、走行制御装置1は、「基準点」の付近(「基準点」から一定の距離内)の環境情報と、「基準点」の到達直前の車両情報(車速、加減速度(ロール、ピッチ、ヨー)、傾きの情報)とを保存しておき、これら情報をもとに「基準点」の推測精度を向上させても良い。
なお、マップ情報は、走行制御システムSによって管理される複数の車両V(走行制御装置1)によって記録された基準点の情報、空間情報を収集し、集約することで作成され、更新されると良い。
それぞれの車両V(走行制御装置1)が、アップデートされた上記マップ情報を用いることで、走行する車両Vの現在位置をより正確に推定することが可能となる。
【0032】
このように、「マップ情報」は、車両Vの現在位置の推定に用いられるほか、車両Vが実際に走行した実走行ルートの特定に用いられる。
図6に示すように、「マップ情報」には、車両Vのスタート位置、目的位置(ゴール位置)、車両Vの走行予定経路が設定される。
なお、図6に示す「マップ情報」には、「第1空間」、「第2空間」及び「第3空間」の情報についても設定されるところ、当該空間の情報については参考情報として用いられるものである。すなわち、走行制御装置1は、基準点の位置、あるいは自己位置の推定手法の切り替えが行われた位置に基づいて異なる空間への移動を認識すると良い。
【0033】
<走行制御装置以外の構成>
車載センサ10は、車両Vの周囲の外部環境として車両V周辺の移動物体(他の車両や歩行者等)、各種の構造物、道路形状等を検出するものであって、具体的には、複数の撮像装置11と、複数のレーダ12と、複数のライダ13と、を有している。
車載センサ10は、外界センサとも称され、車両Vの周囲の環境情報を検出する「第1のセンサ」に相当する。
なお、車載センサ10は、上記以外の検出センサをさらに有しても良い。あるいは、上記の検出センサのうち、撮像装置11のみを有しても良いし、レーダ12のみを有しても良いし、ライダ13のみを有しても良い。
【0034】
撮像装置11は、車両Vの周囲の外部映像を撮像する小型の撮像カメラ(広角カメラ)であって、車両Vの走行制御向けの「センシング機能」と、運転者(オペレータ)向けの「モニタリング機能」を実行すべく、外部映像データを作成し、走行制御装置1に向けて外部映像データを送信する。
撮像装置11は、車両Vに複数搭載されており、車両Vのフロントガラスに取り付けられ、車両Vの前方、右側方、左側方を撮像する第1撮像装置11a、第2撮像装置11b、第3撮像装置11cと、車両Vのバックバンパーに取り付けられ、車両Vの後方を撮像する第4撮像装置11dと、車両Vの左右のミラーに取り付けられ、車両Vの右斜め後方、左斜め後方を撮像する第5撮像装置11e、第6撮像装置11fと、をメインカメラとして備えている。
また、撮像装置11は、サブカメラとして、車両Vのフロントバンパーに取り付けられ、車両Vの前方を撮像する第7撮像装置11gと、車両Vの左右のバックライトの周辺に取り付けられ、車両Vの右斜め後方、左斜め後方を撮像する第8撮像装置11h、第9撮像装置11iと、を備えている。
なお、本実施形態では、撮像装置11が車両Vの所定位置に計9個取り付けられているが、撮像装置11の個数や取り付け位置については車両Vの車種や形状に応じて変更可能である。レーダ12及びライダ13についても同様である。
【0035】
レーダ12は、照射方向を連続的に変化させながら電波を発信し、対象物体からの反射波を受信することで対象物体を検出し(対象物体の位置と速度を測定し)、3次元の空間イメージングを行うミリ波レーダである。撮像装置11やライダ13と比較して、視界が悪い夜間や悪天候のような環境状況であっても精度良く検出することができる。
レーダ12は、上記対象物体の検出結果データ(検出信号)を取得し、走行制御装置1に向けて検出結果データを送信する。
レーダ12は、車両Vに複数搭載されており、車両Vの左右のフロントライトの周辺に取り付けられる第1レーダ12a、第2レーダ12bと、車両Vの左右のバックライトの周辺に取り付けられる第3レーダ12c、第4レーダ12dと、を備えている。
なお、レーダ12は、ミリ波レーダに特に限定されることなく、レーザーレーダ、超音波センサ等のレーダであっても良い。
【0036】
ライダ13は、「Lidar」とも称し、レーザー光を照射し、対象物体(例えば構造物、歩行者等)からの反射光を受光することで対象物体までの距離を測定し、3次元の空間イメージング(マッピング)を行うリモートセンサである。撮像装置11やレーダ12と比較して、周囲の対象物体との距離を数センチ単位で測定することができる。
ライダ13は、上記対象物体との距離を測定した距離測定データを取得し、走行制御装置1に向けて距離測定データを送信する。
ライダ13は、車両Vに複数搭載されており、車両Vの左右のフロントライトの周辺に取り付けられる第1ライダ13a、第2ライダ13bと、車両Vのバックパンパ―に取り付けられる第3ライダ13cと、車両Vの左右のバックライトの周辺に取り付けられる第4ライダ13d、第5ライダ13eと、を備えている。
【0037】
車載ロケータ20は、人工衛星SA及び基準局STを用いた衛生測位システムを利用して車両Vの現在位置を測定し、また車両Vの現在位置の測定精度を高めるべく、車両Vの走行情報(加速度及び角速度等)を測定するものである。なお、衛星測位システムを利用できない場合(外部通信できない場合)には、車両Vの走行情報をもって車両Vの現在位置を測定する。
車載ロケータ20は、具体的には、複数の人工衛星SAからGNSS電波(GPS電波)を受信するGNSS受信機21と、車両Vの走行情報(加速度及び角速度等)を測定する慣性測定装置22と、を備えている。
なお、車載ロケータ20は、車両Vのホイールの回転速度、回転角度等の走行情報を測定するエンコーダ(ホイールエンコーダ)をさらに備えても良い。
【0038】
GNSS受信機21は、具体的には、RTK-GNSS受信機であって、複数(具体的には4個)の人工衛星SAからGNSS電波を受信し、単独測位に必要な「GNSS情報」を生成する。また、外部の基準局STから相対測位に必要な「GNSS補正情報」を受信する。
なお、基準局STは、既知点に設定された固定基準局であって、複数の人工衛星SAからGNSS電波を受信し、「GNSS補正情報」を生成し、GNSS受信機21に向けて送信する。
「GNSS情報」とは、複数の人工衛星SAとGNSS受信機21との距離情報である。
「GNSS補正情報」とは、既知点に位置する基準局STがGNSS電波を受信し、基準局STとGNSS受信機21が通信することで、「GNSS情報」の計測誤差を補正した距離情報である。
【0039】
慣性測定装置22は、IMUとも称され、3軸のジャイロセンサ(角速度計)と、3軸の加速度センサ(加速度計)と、を備えており、車両Vの3次元の角速度及び加速度を測定し、走行制御装置1に向けて車両Vの走行情報(加速度及び角速度の情報)を送信する。
慣性測定装置22(IMU)は、内界センサとも称され、車両Vの走行情報を測定する「第2のセンサ」に相当する。
走行制御装置1は、GNSS受信機21から受信したGNSS情報(GNSS補正情報)と、慣性測定装置22から受信した車両Vの走行情報とを組み合わせて測位することで、より小さい誤差範囲で車両Vの現在位置を測定できる。
また、GNSS情報を利用できない場合(外部通信できない場合)には、走行制御装置1は、車両Vの走行情報をもって車両Vの現在位置を測定する。このとき、車載ロケータ20がエンコーダをさらに備えている場合には、走行制御装置1は、慣性測定装置22から受信した車両Vの走行情報と、エンコーダから受信した車両Vの走行情報とを組み合わせて車両Vの現在位置を測定すると良い。
【0040】
車載ECU30は、例えば、ADAS用ECUであって、走行制御装置1と接続され、各種データの送受信を行う上位階層の総合ECU31と、この上位階層としての総合ECU31とそれぞれ接続され、車両Vの操舵及び加減速等を細分化して制御する下位階層としてのハンドルECU32と、アクセルECU33と、ブレーキECU34と、を備えており、階層構造を形成している。
なお、ハンドルECU32は、ドライビングサポートコンピュータとも称され、アクセルECU33及びブレーキECU34は、パワーマネジメントコントロールユニットとも称される。
なお、総合ECU31と接続される個々のECUの数や機能については、上記の3つのECU32~34に特に限定されることなく、これらのECUと同階層でその他のECUをさらに備えていても良い。
【0041】
ハンドルECU32は、総合ECU31からの指示に対応して車両Vの電動パワーステアリングV1を制御し、主に車両Vの進行方向を制御する。
電動パワーステアリングV1は、車両Vの前輪を操舵する操舵機構を備えている。例えば、手動運転モードの際には、運転者によるハンドルV1aの操舵操作によって車両Vの前輪を操舵する。
【0042】
アクセルECU33は、総合ECU31からの指示に対応して車両Vの電動スロットルV2を制御し、主に車両Vの加減速を制御する。
電動スロットルV2は、車両Vの駆動車輪を回転させる駆動力を出力する駆動機構を備えている。例えば、手動運転モードの際には、運転者によるアクセルペダルV2aのアクセル操作に対応してエンジンの出力を調整する。
【0043】
ブレーキECU34は、総合ECU31からの指示に対応して車両Vの電磁ブレーキ装置V3を制御し、主に車両Vの減速及び停止を制御する。
電磁ブレーキ装置V3は、車両Vの各車輪に取り付けられ、車輪の回転に抵抗を加えることで車両Vを減速又は停止させる機構を備えている。例えば、手動運転モードの際には、運転者によるブレーキペダルV3aのブレーキ操作に対応して電磁ブレーキ装置V3の作動を調整する。
【0044】
車載通信装置40は、対象車両FVに搭載された車両情報発信装置50、外部に設置された遠隔操作装置70、及び不図示の外部サーバとネットワークを通じて情報通信する装置である。
具体的には、車載通信装置40は、「相対運転」に必要な情報として車両情報発信装置50が取得した対象車両FVの位置情報を含む対象車両報を受信し、走行制御装置1に向けて送信する。
また、車載通信装置40は、「遠隔運転」に必要な情報として走行制御装置1が取得した外部映像の情報と、現在位置の情報とを遠隔操作装置70に向けて送信する。また、オペレータによるユーザ入力を受け付けた遠隔操作装置70から車両Vの運転操作情報を受信し、走行制御装置1に向けて送信する。
そのほか、車載通信装置40は、不図示の外部サーバと情報通信を行い、例えば、外部サーバから最新の交通情報や天候情報等を受信することもできる。
【0045】
車両情報発信装置50は、図1図3Aに示すように、対象車両FVに搭載され、対象車両FVの現在の位置情報を含む対象車両情報を取得し、当該対象車両情報を車両Vに向けて発信するためのコンピュータであって、具体的なハードウェア構成として、車載ロケータ51と、車載通信装置52と、を備えている。
「対象車両情報」とは、対象車両FVの位置情報(リアルタイムの位置情報)と、走行予定経路の情報と、車両識別情報とを含むものであって、車両情報発信装置50の記憶部500に記憶されている。
「車両識別情報」とは、対象車両FVを識別する車両IDであって、この車両IDごとに、車種名、型式、車台番号等の情報が対応付けられて記憶部500に記憶されたものである。車両識別情報は、記憶部500に記憶されているほか、対象車両FVに取り付けられた識別マーク60にも埋め込まれている。
【0046】
車載ロケータ51は、上述の車載ロケータ20と同様に、複数の人工衛星SAからGNSS電波(GPS電波)を受信するGNSS受信機51aと、対象車両FVの加速度及び角速度を測定する慣性測定装置51bと、を有している。車載ロケータ51は、エンコーダをさらに有しても良い。
車載通信装置52は、車両Vに搭載された走行制御装置1とネットワークを通じて情報通信する装置である。
具体的には、車載通信装置52は、車両Vの「相対運転」に必要な情報として対象車両情報を走行制御装置1(車載通信装置40)に向けて常時又は必要に応じて発信する。
詳しく述べると、車載通信装置52は、対象車両情報のうち対象車両FVの位置情報をリアルタイムで発信することができる。
「リアルタイムで発信」とは、対象車両FVの位置情報の変化と同じタイミングで位置情報を発信する場合のほか、多少のタイムラグが発生した状態で位置情報を発信する場合も含むものである。
【0047】
識別マーク60は、図3A図3Cに示すように、対象車両FVを識別するための車両識別情報が埋め込まれた(格納された)2次元バーコードであって、対象車両FVの外面に複数取り付けられている。なお、識別マーク60には、対象車両FVの走行予定経路を特定することができる情報が合わせて埋め込まれても良い。
識別マーク60は、車両Vの撮像装置11によって認識される。
詳しく述べると、撮像装置11は、撮像装置11が撮像した映像内において識別マーク60を認識したときに、識別マーク60に埋め込まれた対象車両FVの車両識別情報、走行予定経路を特定できる情報等を認識結果として取得する。そして、走行制御装置1が、所定の通信方式におけるネットワーク通信や車載ネットワーク(CAN)を通じて撮像装置11から対象車両FVの車両識別情報を取得できる。
上記実施形態では、走行制御装置1が、車両情報発信装置50、識別マーク60から車両識別情報を取得できることとしているが、少なくとも一方から取得できれば良い。
【0048】
識別マーク60は、対象車両FVの後面において車両幅方向の中央部、左側端部、右側端部にそれぞれ取り付けられる第1識別マーク60a、第2識別マーク60b、第3識別マーク60cと、対象車両FVの前面において中央部、左側端部、右側端部にそれぞれ取り付けられる第4識別マーク60d、第5識別マーク60e、第6識別マーク60fと、を有している。
また、識別マーク60は、対象車両FVの左側面において車両前後方向の中央部、前端部、後端部にそれぞれ取り付けられる第7識別マーク60g、第8識別マーク60h、第9識別マーク60iと、対象車両FVの右側面において中央部、前端部、後端部にそれぞれ取り付けられる第10識別マーク60j、第11識別マーク60k、第12識別マーク60lと、を備えている。
【0049】
識別マーク60a~60lには、それぞれ対象車両FVの車両識別情報が埋め込まれているほか、対象車両FVにおいて個々の識別マーク60が取り付けられている位置(車体位置)を示すマーク位置情報が埋め込まれている。
そのため、識別マーク60a~60lのうち、いずれかの識別マーク60が車両Vの撮像装置11によって認識されることで、走行制御装置1が、対象車両FVの車両識別情報を取得し、対象車両FVを検知することができる。
また、識別マーク60a~60lのうち、例えば識別マーク60a及び識別マーク60cが認識されることで、あるいは識別マーク60cのみが認識されることで、走行制御装置1は、上記マーク位置情報に基づいて車両Vが対象車両FVの後方位置にいること、さらには対象車両FVよりも右側位置にいることを検知できる。
特に、走行制御装置1は、車両Vの周囲の環境情報と、車両Vの位置情報と、車両Vの走行情報と、対象車両FVの位置情報と、識別マーク60によって得られるマーク位置情報とに基づいて車両Vに対する対象車両FVの位置(相対位置)を精度良く把握することができる。
【0050】
遠隔操作装置70は、図1図4に示すように、オペレータによって操作され、車両Vの「遠隔運転」を行うためのコンピュータであって、具体的なハードウェア構成として、複数のモニタ71と、ナビモニタ72と、ハンドル73と、アクセルペダル74と、ブレーキペダル75と、複数の操作スイッチ76と、を備えている。
なお、遠隔操作装置70は、スピーカーやマイク、シフトレバー等の構成部品をさらに備えていても良い。
【0051】
モニタ71、ナビモニタ72は、「遠隔運転」を行うための視覚情報を出力する表示部であって、モニタ71には、複数の撮像装置11a~11iによって撮像された車両Vの外部映像を所定のレイアウト情報に基づいて合成した合成映像(合成画像)が表示される。
所定のレイアウト情報とは、例えば、オペレータの死角を作らない、オペレータが操作し易いレイアウトの表示態様である。このとき、所定のレイアウト情報を含む複数のレイアウト情報は、レイアウトID(レイアウト識別情報)によって対応付けられ、走行制御装置1の記憶部100に記憶されていると良い。この場合、操作スイッチ76等を用いて所定のレイアウト情報の変更操作を行うと、遠隔操作装置70から走行制御装置1に向けて変更後のレイアウトIDが送信される。
そして、走行制御装置1は、変更後のレイアウトIDに対するレイアウト情報に基づいて外部映像を合成した合成映像を生成し、当該合成映像を遠隔操作装置70に向けて送信する。そうすることで、モニタ71にはその合成映像が変更表示される。
【0052】
ハンドル73は、オペレータによって操作され、車両Vの操舵角(操舵量)を調整するために用いられる操作部である。
アクセルペダル74、ブレーキペダル75は、それぞれオペレータによって操作され、車両Vの電動スロットルV2の駆動、電磁ブレーキ装置V3の作動を調整するために用いられる操作部である。
複数の操作スイッチ76は、例えば「遠隔運転」を行うための設定情報をユーザ入力するために用いられる。例えばオペレータが操作スイッチ76を適宜操作することで、車両Vの外部映像(合成映像)を所定のレイアウト表示に切り替えることや、自律運転モードと、相対運転モードと、遠隔運転モードとの間で運転モードを切り替えることができる。
【0053】
<走行制御システムの機能>
走行制御装置1は、図5に示すように、機能面から説明すると、各種プログラム及び各種データを記憶しておく記憶部100のほか、主として「車両の現在位置を推定する処理」を実行すべく、環境情報取得部101と、走行情報取得部102(移動情報取得部)と、自己位置推定部103と、走行制御部104と、基準点特定部105と、基準点記録部106と、マップ作成部107と、認識部108と、推定モード切り替え部109と、検出部110と、位置誤差測定部111と、補正経路設定部112と、進行方向認識部113と、を主な構成要素として備えている。
また、走行制御装置1は、主として「自律運転、相対運転、遠隔運転の走行制御処理」を実行すべく、走行制御部104と、車両検知部114と、通信部115と、運転モード変更部116と、走行速度取得部117と、映像処理部118と、を備えている。
これらは、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM、HDD、通信用インタフェース、及び各種プログラム等によって構成されている。
なお、記憶部100には、車両Vの車両識別情報、車両Vの走行予定経路の情報、図6に示す「マップ情報」、図8に示す「自己位置推定時の進行方向に関するデータ」、図11に示す「車間距離データ」等が記憶されている。
【0054】
車両情報発信装置50についても機能面から説明すると、各種プログラム及び各種データを記憶する記憶部500と、対象車両FVの「現在の位置情報」を取得する位置情報取得部501と、走行制御装置1との間で各種データを送受信する通信部502と、を主に備えている。
記憶部500には、対象車両FVの現在の位置情報と、走行予定経路の情報と、車両識別情報とを含む「対象車両情報」が記憶されている。
位置情報取得部501は、車載ロケータ51を利用して対象車両FVの「現在の位置情報」をリアルタイムで取得する。そして、取得した「現在の位置情報」を記憶部500に記憶していくことで、車両情報発信装置50が搭載された対象車両FVの走行軌跡(過去の走行ルート)を記録することが可能となる。記憶部500には、対象車両FVの走行軌跡が記憶された状態となる。
通信部502は、車載通信装置52を利用して「対象車両情報」を走行制御装置1(車載通信装置40)に向けて発信する。また、対象車両情報のうち対象車両FVの「現在の位置情報」をリアルタイムで発信する。
【0055】
遠隔操作装置70についても機能面から説明すると、各種プログラム及び各種データを記憶する記憶部700と、走行制御装置1との間で各種データを送受信する通信部701と、車両Vの外部映像、車両情報をモニタ71に表示し、また車両Vの現在位置の情報に基づく内容(例えば、車両ナビゲーション)をナビモニタ72に表示する画面表示部702と、ユーザ操作の入力を受け付けて操作データを作成する操作データ作成部703と、オペレータに向けてユーザ報知するユーザ報知部704と、を主に備えている。
【0056】
以下、走行制御装置1の機能について詳しく説明する。
<<1.自己位置の推定>>
走行制御装置1は、車両Vの現在位置を推定しながら車両Vの走行制御を行う。自己位置の推定処理について具体的には、以下の通りである。
環境情報取得部101は、車両Vに搭載された車載センサ10(第1センサ)を通じて、車両Vの周囲における「環境情報(厳密には、外部環境の検出情報)」を取得する。
詳しく述べると、「環境情報」として、撮像装置11から車両Vの周囲の外部映像データを取得し、レーダ12から車両Vの周囲の対象物体の検出結果データを取得し、ライダ13から車両Vの対象物体との距離を測定した距離測定データを取得する。
なお、「環境情報」とは、具体的には、車両V周辺の移動物体(他の車両や歩行者等)、各種の構造物、道路形状等の検出情報であって、走行環境情報とも称され、交通環境情報や道路環境情報等を含むものである。
【0057】
走行情報取得部102(移動情報取得部)は、車両Vに搭載された慣性測定装置22(第2センサ)を通じて、車両Vの「走行情報」を取得する。
「走行情報」とは、具体的には、車両Vの加速度及び角速度の情報を含む車両Vの挙動情報(挙動に基づく情報)である。「走行情報」には、車両Vのホイールの回転速度、回転角度等の情報、車両Vによる一定速度の走行動作、加速動作、減速動作、停止動作、左折動作、右折動作、後退動作等に関する情報が含まれても良い。
なお、「走行情報」はオドメトリ情報と称されても良い。
【0058】
自己位置推定部103は、車両Vに搭載された車載センサ10及び車載ロケータ20(GNSS受信機21、慣性測定装置22)を通じて得られた情報に基づいて、車両Vの現在位置を推定する。
具体的には、自己位置推定部103は、第1位置推定部103aと、第2位置推定部103bと、第3位置推定部103cと、受信判定部103dと、を有している。
【0059】
第1位置推定部103aは、GNSS受信機21を通じて単独測位に必要な「GNSS情報」を取得し、単独測位によって車両Vの「絶対位置」を算出する。
車両Vの「絶対位置」とは、複数の人工衛星SAからGNSS電波を受信し、既知点にそれぞれ位置する人工衛星SAと車両Vとの間の距離を測定し、それぞれの測定距離(GNSS情報に相当)から未知点を求める3次元方程式を解くことで得られる車両Vの3次元位置である。
第1位置推定部103aは、上記車両Vの「絶対位置」をもとに車両Vの現在位置を推定する。
【0060】
第2位置推定部103bは、環境情報取得部101によって得られた車両Vの周囲における「環境情報」を用いて車両Vの現在位置を推定する。
第3位置推定部103cは、走行情報取得部102によって得られた車両Vの「走行情報」を用いて車両Vの現在位置を推定する。
第1位置推定部103aによって推定される車両Vの位置精度は、第2位置推定部103b及び第3位置推定部103cによって推定される車両Vの位置精度よりも高くなる。また、第2位置推定部103bによって推定される車両Vの位置精度は、第3位置推定部103cによって推定される車両Vの位置精度よりも高くなる。
【0061】
受信判定部103dは、「GNSS情報」をリアルタイムで取得できるか否かを判定し、「GNSS情報」を取得できると判定した場合に、第1位置推定部103aが「GNSS情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定する(第1の推定)。
具体的には、受信判定部102dは、車両Vの周囲に障害物等があって人工衛星SAから電波を受信できない場合を想定し、人工衛星SAから電波を受信できるか否かを判定する。
受信判定部103dは、「GNSS情報」を取得できないと判定した場合、「環境情報」を取得できるか否かをさらに判定し、「環境情報」を取得できると判定した場合に、第2位置推定部103bが「環境情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定する(第2の推定)。
受信判定部103dは、「環境情報」を取得できないと判定した場合、「走行情報」を取得できるか否かをさらに判定し、「走行情報」を取得できると判定した場合に、第3位置推定部103cが「走行情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定する(第3の推定)。
受信判定部103dが「環境情報」を一定時の時間に取得できないと判定した場合には、自己位置推定部103は自己位置の推定処理を終了する。
【0062】
なお、第1位置推定部103aは、「GNSS情報」を取得し、単独測位によって算出される「絶対位置」を用いて車両Vの現在位置を推定するところ、相対測位によって算出される「相対位置」を用いて車両Vの現在位置を推定しても良い。
車両Vの「相対位置」とは、既知点に位置する基準局STにおいてGNSS電波を受信し、基準局STから計測誤差がより小さい距離(それぞれの人工衛星SAと車両Vとの間の距離)を取得し、それぞれの測定距離(GNSS補正情報に相当)から求められる車両Vの3次元位置である。
「相対位置」の算出方法としては、RTK測位方式(干渉測位方式)の算出方法と、DGPS測位方式(相対測位方式)の算出方法とがある。いずれの算出方法であっても良い。
第1位置推定部103aは、基準局STから相対測位に必要な上記「GNSS補正情報」を取得し、相対測位によって算出される「相対位置」を用いて車両Vの現在位置を推定する。
「相対位置」の位置精度は、「絶対位置」の位置精度よりも高く、±40cm程度と言われている。
【0063】
あるいは、第1位置推定部103aは、慣性測定装置22を通じて車両Vの「走行情報」をさらに取得し、「GNSS情報(GNSS補正情報)」及び「走行情報」に基づいて車両Vの絶対位置(相対位置)を補正した「補正絶対位置(補正相対位置)」を算出し、当該「補正絶対位置(補正相対位置)」を用いて車両Vの現在位置を推定しても良い。
車両Vの「補正絶対位置」とは、GNSS情報と、車両Vの走行情報(IMU情報とも呼ばれる)とを組み合わせて測位することで得られる車両Vの3次元位置である。
車両Vの「補正相対位置」とは、GNSS補正情報と、車両Vの走行情報とを組み合わせて測位することで得られる車両Vの3次元位置である。
「補正絶対位置」の位置精度は、「絶対位置」の位置精度よりも高い。また、「補正相対位置」の位置精度は、「補正絶対位置」の位置精度よりも高く、±5cm程度と言われている。
【0064】
第1位置推定部103aは、上記「絶対位置」、「相対位置」、「補正絶対位置」、「補正相対位置」のいずれかを用いて車両Vの現在位置を推定して良いが、最も位置精度が高い「補正相対位置」を用いて車両Vの現在位置を推定すると好ましい。
【0065】
走行制御装置1は、自己位置推定部103によって得られた位置情報を記憶部100に記憶していくことで、車両Vの走行軌跡(過去の走行ルート)を記録することができ、記憶部100には、車両Vの走行軌跡が記憶された状態となる。この車両Vの走行軌跡は、車両Vが走行する走行予定経路上にあるか否かを判断し、必要に応じて走行予定経路上に導く新たな走行予定経路の設定に用いられる。
【0066】
<<2.マップ情報を用いた自己位置の推定、走行制御>>
走行制御装置1は、上記自己位置の推定を行うにあたって、上述した図6に示す「マップ情報」を用いることで、車両Vの現在位置をより精度良く推定しながら車両Vの走行制御を行う。
詳しく述べると、走行制御装置1は、「基準点(第1基準点、第2基準点)」の情報を含む「マップ情報」を用いて、当該基準点に到達したことをもって到達した「空間(第1空間、第2空間、第3空間)」を認識し、当該空間に応じた自己位置推定を行い、車両Vの現在位置を推定しながら車両Vの走行制御を行う。具体的には、以下の通りである。
【0067】
(マップ情報の作成、更新)
記憶部100に記憶される「マップ情報」は、図6に示すように、地図情報と、第1空間、第2空間及び第3空間の情報を含む空間情報と、第1基準点及び第2基準点の情報を含む基準点の情報とを含むものであって、走行制御システムSによって予め作成されたものである。
「マップ情報」は、基準点特定部105と、基準点記録部106と、マップ作成部107とによって更新される。なお、「マップ情報」は、基準点特定部105と、基準点記録部106と、マップ作成部107とによって地図情報をもとに新たに作成されても良い。
【0068】
基準点特定部105は、自己位置推定部103が「GNSS情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定する状態(第1推定状態)から、自己位置推定部103が「環境情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定する状態(第2推定状態)へと変更された位置を「第1基準点(入口基準点)」として特定する。
基準点特定部105は、上記第1推定状態から、自己位置推定部103が「走行情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定する状態(第3推定状態)へと変更された位置についても「第1基準点」として特定する。
また、基準点特定部105は、上記第2推定状態又は第3推定状態から、上記第1推定状態へと変更された位置を「第2基準点(出口基準点)」として特定する。
【0069】
詳しく述べると、基準点特定部105は、「GNSS情報」に基づく現在位置の推定状態(第1推定状態)から、「環境情報」に基づく現在位置の推定状態(第2推定状態)へと変更されたときに、当該変更されたタイミングで取得した「GNSS情報」に基づく現在位置を「第1基準点」として特定する。
変更されたタイミングで取得した「GNSS情報」とは、言い換えれば、変更される直前に取得した「GNSS情報」とも言える。
なお、第1推定状態から第3推定状態へと変更されたときも同様である。
【0070】
また、基準点特定部105は、第2推定状態から第1推定状態へと変更されたときに、当該変更されたタイミングで取得した「GNSS情報」に基づく現在位置を「第2基準点」として特定する。
変更されたタイミングで取得した「GNSS情報」とは、言い換えれば、変更された直後に取得した「GNSS情報」とも言える。
このように、車両Vの現在位置の推定にあたって、変更直前又は変更直後に取得した「GNSS情報」に基づいて基準点の位置を特定することで、より精度の高い基準点の位置を特定することが可能となる。
【0071】
なお、基準点特定部105は、車両Vの「走行情報」に基づく現在位置の推定状態(第3推定状態)から、「GNSS情報」に基づく現在位置の推定状態(第1推定状態)へと変更されたときには、当該変更されたタイミングで取得した「走行情報」に基づく現在位置を「第2基準点」として特定する。
理由として、第3推定状態から第1推定状態へと変更されるときに変更地点において後述の位置誤差が生じてしまう(図7参照)。そのため、変更後に取得した「GNSS情報」に基づく現在位置の情報よりも、変更直前に取得した「走行情報」に基づく現在位置の情報を用いることで、より正確な基準点が特定されるためである。
【0072】
基準点記録部106は、基準点特定部105によって特定された第1基準点及び第2基準点の情報を記録し、基準点の記録情報(履歴情報)として記憶部100に保存する。
マップ作成部107は、基準点記録部106によって記録された基準点の履歴情報に基づいて、「マップ情報」を更新する。具体的には、「マップ情報」に含まれる地図情報に第1基準点及び第2基準点の情報を新たに更新する。
走行制御装置1は、適宜、マップ作成部107によって更新されたマップ情報、すなわち基準点の情報を不図示の管理サーバ(クラウドサーバ)に送信する。
そうすることで、走行制御システムSは、様々な車両V(走行制御装置1)によって記録され、更新された基準点の記録情報を管理サーバに集約させることで、既存のマップ情報を随時アップデートさせることができる。車両V(走行制御装置1)は、アップデートされたマップ情報を取得し、当該マップ情報を利用することができる。
【0073】
(マップ情報を用いた自己位置推定)
認識部108は、車両Vが所定の走行予定経路に沿って走行しているとき又は停止後一定時間内に、マップ情報を用いて、基準点記録部106によって記録された基準点(第1基準点、第2基準点)に車両Vが到達したことを認識する。
推定モード切り替え部109は、認識部108によって上記認識がなされると、基準点において推定モードの切り替えを行う。
【0074】
具体的には、図6に示すマップ情報において車両Vが「第1空間」を走行しているときに、認識部108が第1基準点(第1空間と第2空間の境界点)に車両Vが到達したことを認識する。
そうすると、推定モード切り替え部109は、自己位置推定部103が「GNSS情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定する「第1推定モード(第1推定状態とも言う。)」から、自己位置推定部103が「環境情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定する「第2推定モード(第2推定状態とも言う。)」へと切り替える。自己位置推定部103は、推定モード切り替え部109によって設定された第2推定モードにより車両Vの現在位置を推定する。
そして、走行制御部104は、第2推定モードにより車両Vの現在位置を推定しながら、「第2空間」において車両Vの走行を制御する。
【0075】
また、図6に示すマップ情報において車両Vが「第2空間」を走行しているときに、認識部108が第2基準点に車両Vが到達したことを認識する。
そうすると、推定モード切り替え部109は、自己位置推定部103が「第2推定モード」から「第1推定モード」へと切り替える。自己位置推定部103は、第1推定モードにより車両Vの現在位置を推定する。
そして、走行制御部104は、第1推定モードにより車両Vの現在位置を推定しながら、「第1空間」において車両Vの走行を制御する。
【0076】
また、図6に示すマップ情報において車両Vが「第1空間」を走行しているときに、認識部108が第1基準点(第1空間と第3空間の境界点)に車両Vが到達したことを認識する。
そうすると、推定モード切り替え部109は、「第1推定モード」から、自己位置推定部103が「走行情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定する「第3推定モード(第3推定状態とも言う。)」へと切り替える。自己位置推定部103は、第3推定モードにより車両Vの現在位置を推定する。
そして、走行制御部104は、第3推定モードにより車両Vの現在位置を推定しながら、「第3空間」において車両Vの走行を制御する。
なお、「第3推定モード」から「第1推定モード」への切り替えについても同様である。
【0077】
このように、車両V(走行制御装置1)が基準点(第1基準点、第2基準点)を認識することで、走行制御装置1は、基準点に到達したことをもって車両Vの自己位置の推定手法をタイミング良く切り替えることができる(即座に切り替え処理を行うことができる)。すなわち、自己位置推定の切り替えタイミングのときに、走行制御装置1が車両Vの走行を円滑に制御することができる。
【0078】
(モード切り替えの準備)
走行制御装置1は、「マップ情報」に含まれる基準点(第1基準点、第2基準点)の情報をもとに、車両Vが当該基準点に近づいたときに自己位置推定の切り替え準備(切り替えのための起動開始)を行っても良い。詳しく述べると、以下の通りである。
検出部110は、「マップ情報」に基づいて車両Vが所定の走行予定経路を走行しているときに、「マップ情報」に含まれる基準点から一定の距離内に車両Vが到達したことを検出する。
検出部110によって車両Vの検出がなされると、推定モード切り替え部109は、基準点において推定モードを切り替えるための準備を行う。
【0079】
具体的には、車両Vが「第1空間」を走行しているときに、検出部110が「マップ情報」に含まれる第1基準点(第1空間と第2空間の境界点)から一定の距離内に車両Vが到達したことを検出する。
そうすると、推定モード切り替え部109は、第1基準点において第1推定モードから第2推定モードを切り替えるための準備を行う。すなわち、環境情報に基づいて自己位置を推定できる状態へと準備を行う(車載センサ10による自己位置推定の起動準備、起動開始を行う)。
そうすることで、よりタイミング良く自己位置推定の手法を切り替えて、より精度良く車両Vの現在位置を推定できる。
【0080】
(走行補正経路の設定)
図7に示すように、「走行情報」を用いて自己位置推定が行われる「第3推定モード(第3推定状態)」から、「GNSS情報」を用いて自己位置推定が行われる「第1推定モード(第1推定状態)」へと変更される処理について、より詳しく説明する。
「第3推定モード」が行われる場合とは、上述したように、車両Vがトンネル内や高架下に位置している状態や、車両Vが「第2空間」から「第1空間」へと移動した直後の状態等である。このとき、車両Vは、慣性測定装置22によって車両Vの「走行情報」を取得する。
ここで、図7に示すように、走行情報に基づく「第3推定モード」によって推定された現在位置と、GNSS情報に基づく「第1推定モード」によって推定された現在位置とでは、位置誤差が生じることがある。例えば、第3空間において車両Vの現在位置の情報の精度が低くなってしまい、車両Vが走行予定経路から幾分外れてしまった場合である。
この場合、第2基準点(出口基準点)において「第3推定モード」による現在位置の情報(切り替え直前の位置情報)は、走行予定経路に沿った位置(実際とは異なる位置)になる。他方で、「第1推定モード」による現在位置の情報(切り替え直後の位置情報)は、走行予定経路から外れた位置(実際の位置)になる。
【0081】
上記のように位置誤差が生じてしまった場合には、走行制御装置1は当該位置誤差を算出し、走行予定経路へと導くための走行補正経路を設定する。そして、走行制御装置1は、当該走行補正経路に沿って車両Vの走行を制御し、車両Vが走行予定経路に復帰したときには当該走行予定経路に沿って車両Vの走行を制御し、車両Vを目的位置へと導く。
具体的な処理は、以下の通りである。
【0082】
図7に示すように、車両Vが「第3空間」において「第3推定モード」によって走行し、第2基準点(第3空間と第1空間の境界点)に到達すると、認識部108は、車両Vが第2基準点に到達したことを認識する。
認識部108が上記認識を行うと、推定モード切り替え部109は、第2基準点において「第3推定モード」から「第1推定モード」へと切り替える。
そして、位置誤差測定部111は、第2基準点において「第3推定モード」で推定された車両Vの現在位置(実際とは異なる位置)と、「第1推定モード」で推定された車両Vの現在位置(実際の位置)との位置誤差を測定する。
補正経路設定部112は、第2基準点において測定された位置誤差により、走行予定経路へと導くための走行補正経路を設定する。
そして、走行制御部104は、上記走行補正経路に沿って車両Vの走行を制御し、車両Vが走行予定経路に復帰したときには当該走行予定経路に沿って車両Vの走行を制御し、車両Vを目的位置へと導く。
【0083】
上記のように、車両Vの自己位置を推定するにあたって基準点で位置誤差が生じてしまった場合であっても、位置誤差に基づく走行補正経路を新たに設定し、車両Vを円滑に走行予定経路へと導き、車両Vを目的位置まで走行させることができる。
なお、位置誤差が生じる場合としては、上記図7に示すケースのほか、「第3推定モード(第3推定状態)」から「第2推定モード(第2推定状態)」へと変更されるケースが想定される。
【0084】
<<3.進行方向の認識>>
走行制御部104は、自己位置推定部103によって推定された車両Vの「位置情報(現在位置)」と、進行方向認識部113によって認識された車両Vの「進行方向」とにより、車両Vの走行を制御する。
「進行方向」とは、自己位置推定部103(推定モード切り替え部109)によって推定状態(推定モード)が変更されたときに、変更後の車両Vが進む方向を示すものであって、車両Vの進行ベクトル(移動ベクトル)とも称される。
走行制御装置1が「進行方向」を認識することで、自己位置推定の手法が変更されたときに(切り替わったときに)、変更直後の(切り替え直後の)車両Vの挙動を把握することができ、車両Vの走行をより円滑に制御することが可能となる。
具体的な処理は、以下の通りである。
【0085】
(進行方向の認識)
自己位置推定部103は、「第1推定状態」と、「第2推定状態」と、「第3推定状態」とにより、車両Vの現在位置を推定する。
そして、車両Vが走行しているとき又は停止後一定時間内に自己位置推定部103によって推定状態が変更されると、当該変更の態様に基づいて、進行方向認識部113が車両Vの「進行方向」を認識する。言い換えれば、自己位置の推定に用いる情報(GNSS情報、環境情報、走行情報)の変化態様に基づいて、進行方向認識部113が車両Vの「進行方向」を認識する。
【0086】
自己位置推定部103によって第1推定状態から第2推定状態へと変更されたときに、進行方向認識部113は、車両Vの進行方向を「第1進行方向」として認識する。
「第1進行方向」とは、「第1空間」から「第2空間」へと車両Vが進む方向を示すものであり、言い換えれば「屋外空間」から「屋内空間」へと車両Vが進む方向を示す。
また、自己位置推定部103によって第2推定状態から第1推定状態へと変更されたときには、進行方向認識部113は、車両Vの進行方向を「第2進行方向」として認識する。
「第2進行方向」とは、「第2空間」から「第1空間」へと車両Vが進む方向を示すものであり、言い換えれば「屋内空間」から「屋外空間」へと車両Vが進む方向を示す。
具体的には、図8に示す「自己位置推定時の進行方向に関するデータ」の通りである。
【0087】
図8によれば、自己位置の推定に用いる情報が「GNSS情報」から「環境情報」へと変化したときに(第1推定状態から第2推定状態へ変更されたときに)、進行方向認識部113が車両Vの進行方向を「第1進行方向」として認識する。
自己位置の推定に用いる情報が「GNSS情報」から「走行情報」を経て「環境情報」へと変化したときも(第1推定状態から第3推定状態を経て第2推定状態へ変更されたときも)同様である。
【0088】
自己位置の推定に用いる情報が「GNSS情報」から「走行情報」を経て「GNSS情報」へと変化したときには(第1推定状態から第3推定状態を経て第1推定状態へ変更されたときには)、進行方向認識部113が車両Vの進行方向を「第3進行方向」として認識する。
「第3進行方向」とは、「第1空間」から一時的に「第3空間」を経て「第1空間」へと車両Vが進む方向を示すものであり、言い換えれば「屋外空間」から一時的に「屋内空間」を経て「屋外空間」へと復帰するように車両Vが進む方向を示す。
これは、車両Vが一時的にGNSS情報を取得できない状態(外部通信できない状態)となった場合であって、例えば車両Vが一時的にトンネル内や高架下を走行した場合等である。
【0089】
自己位置の推定に用いる情報が「環境情報」から「GNSS」へと変化したときには(第2推定状態から第1推定状態へ変更されたときには)、進行方向認識部113が車両Vの進行方向を「第2進行方向」として認識する。
また、自己位置の推定に用いる情報が「環境情報」から一時的に「走行情報」を経て「GNSS情報」へと変化したときも(第2推定状態から第3推定状態を経て第1推定状態へ変更されたときも)同様である。
なお、自己位置の推定に用いる情報が「環境情報」から一時的に「走行情報」を経て「環境情報」へと変化したときには(第2推定状態から第3推定状態を経て第2推定状態へ変更されたときには)、車両Vの進行方向は設定されない。これは、「第2空間」及び「第3空間」を「屋内空間」とみなし、「第1空間」を「屋外空間」とみなしたときに、「屋内空間」と「屋外空間」の間で移動が伴わないためである。言い換えれば、車両Vの進行方向に変更が生じていないことを示している。
【0090】
(進行方向を認識するタイミング)
進行方向認識部113によって車両Vの進行方向を認識するタイミングは、以下の通りである。
進行方向認識部113は、車両Vが走行しているときに「第1推定状態」から「第2推定状態」へと変更された場合に、自己位置推定部103が「環境情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定開始したタイミングで「第1進行方向」を認識する。
また、進行方向認識部113は、車両Vが走行しているときに「第2推定状態」から「第1推定状態」へと変更された場合に、自己位置推定部103が「GNSS情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定開始したタイミングで「第2進行方向」を認識する。
具体的には、図8に示す「自己位置推定時の進行方向に関するデータ」の通りである。
【0091】
図8によれば、自己位置の推定に用いる情報が「GNSS情報」から「環境情報」へと変化したとき(第1推定状態から第2推定状態へと変更されたとき)、自己位置推定部103が「環境情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定開始したタイミングをもって、進行方向認識部113が車両Vの進行方向(第1進行方向)を認識する。
また、自己位置の推定に用いる情報が「環境情報」から「GNSS情報」へと変化したとき(第2推定状態から第1推定状態へと変更されたとき)、自己位置推定部103が「GNSS情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定開始したタイミングをもって、進行方向認識部113が車両Vの進行方向(第2進行方向)を認識する。
また、自己位置の推定に用いる情報が「GNSS情報」から「走行情報」を経て「GNSS情報」へと再び変化したとき(第1推定状態から第3推定状態を経て第1推定状態へと再び変更されたとき)、自己位置推定部103が「GNSS情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定開始したタイミングをもって、進行方向認識部113が車両Vの進行方向(第3進行方向)を認識する。
【0092】
このように、進行方向認識部113は、自己位置推定の手法が変更されたときに、変更直後に得られる情報(GNSS情報又は環境情報)を取得開始したタイミングで、車両Vの進行方向を認識する。
そうすることで、走行制御部104は、自己位置の推定に用いられる情報が変化したときに、「当該変化後に得られる情報(例えば環境情報)」と、当該情報を取得開始したタイミングで認識した「車両Vの進行方向(例えば第1進行方向)」とを用いて、車両Vの走行を制御することができる。すなわち、車両Vの挙動を把握しながら車両Vの走行を制御することができる。
【0093】
(推定状態の切り替え位置)
基準点特定部105は、自己位置推定部103によって「GNSS情報に基づく第1推定状態」から「環境情報に基づく第2推定状態」へと変更され、進行方向認識部113によって「第1進行方向」が認識されたとき、自己位置推定部103が「環境情報」に基づいて車両Vの自己位置を推定開始した位置を「基準点(第1基準点)」として特定する。
また、基準点特定部105は、「環境情報に基づく第2推定状態」から「GNSS情報に基づく第1推定状態」へと変更され、「第2進行方向」が認識されたとき、自己位置推定部103がGNSS情報に基づいて車両Vの自己位置を推定開始した位置を「基準点(第2基準点)」として特定する。
具体的には、図8に示す「自己位置推定時の進行方向に関するデータ」の通りである。
このように、自己位置の推定に用いられる情報が変化したときに、「当該変化後に得られる情報」と、「車両Vの進行方向」とをもとにして基準点の位置を特定することで、より精度の高い位置で基準点を特定できる。
【0094】
一方で、図8に示すように、基準点特定部105は、「GNSS情報に基づく第1推定状態」から「走行情報に基づく第3推定状態」を経て「環境情報に基づく第2推定状態」へと変更され、進行方向認識部113によって「第1進行方向」が認識されたときには、自己位置推定部103が「走行情報」に基づいて車両Vの自己位置を推定開始した位置を「基準点(第1基準点)」として特定する(図8の2番目)。
また、基準点特定部105は、「GNSS情報に基づく第1推定状態」から「走行情報に基づく第3推定状態」を経て「GNSSに基づく第1推定状態」へと変更され、「第3進行方向」が認識されたときには、自己位置推定部103が「走行情報」に基づいて車両Vの自己位置を推定開始した位置を「基準点(第2基準点)」として特定する(図8の3番目)。
上述したように(図7で説明したように)、走行情報に基づく「第3推定状態」によって推定された現在位置と、GNSS情報(環境情報)に基づく「第1推定状態(第2推定状態)」によって推定された現在位置とでは、位置誤差が生じる。そのため、変更後に取得した「GNSS情報(環境情報)」に基づく現在位置の情報よりも、変更直前に取得した「走行情報」に基づく現在位置の情報を用いることで、より正確な基準点が特定される。このことから、基準点特定部105は、「走行情報」に基づく現在位置の情報が取得開始された位置を基準点として特定している。
【0095】
基準点特定部105によって基準点が特定され、基準点記録部106によって基準点が記録された後は、当該基準点において自己位置推定部103(推定モード切り替え部109)が推定モードの変更を行い、進行方向認識部113が車両Vの進行方向を認識する。
そして、走行制御部104が、自己位置推定部103によって推定された車両Vの現在位置と、進行方向認識部113によって認識された車両Vの進行方向とにより、車両Vの走行制御を行う。
このように基準点をもって自己位置の推定手法を切り替えるとともに、車両Vの進行方向を認識することで、基準点を通過したときの車両Vの挙動をより精度良く把握することが可能となる。その結果、車両Vの走行をより円滑に制御できる。
【0096】
(基準点、進行方向を認識することの利点)
走行制御装置1では、車両Vが予め「第2空間内の情報」をマップ情報として有している場合(「ケース1」)と、車両Vが「第2空間内の情報」をマップ情報として有していない場合(「ケース2」)とがある。
上記「ケース1」とは、例えば車両V自身がその場所に過去に訪れたことがあること、あるいは他の車両からその場所の情報を取得したことのいずれかである。上記「ケース2」とは、上記「ケース1」とは異なることを示すものである。
【0097】
上記「ケース1」として、車両Vが「第2空間内の情報」をマップ情報として有している場合には、当該マップ情報は、第1空間、第2空間及び第3空間の情報と、基準点の情報とが対応付けられて各車両Vに保存され、また管理サーバ(クラウドサーバ)に管理された状態となっている。
そのため、車両Vの走行中に空間内において似たような場所が存在した場合であっても、車両Vが基準点を認識することで、対応するマップ情報(空間情報)を特定できる。似たような場所とは、例えば柱の位置や形状、窓の位置や形状などが似た構造物を有する場所や、同じ建築会社が建築した建築物を有する場所などである。
なお、図9に示すように、マップ情報には、空間の情報と、基準点の情報とが対応付けられているほか、地図情報としての方位情報(東西南北)が含まれてている。車両Vは、基準点(入口基準点、出口基準点)の情報と、方位情報とを特定することで、車両Vの進行方向を認識することができる。
【0098】
上記「ケース1」の場合には、図9に示すように、車両Vは、第1空間から第2空間へと移動したときに「マップ情報」を展開し(使用できるようにセットし)、ライダ13(レーダ12)の照射範囲を予め指定した範囲内に設定する。すなわち、ライダ13の照射範囲を全範囲に設定しない(車両Vを傾けて全範囲に照射する必要がない)。
車両Vは、「マップ情報」を用いてライダ13の予め設定された照射範囲でオブジェクト(構造物、移動物体など)を認識しながら、「走行情報」を用いて車両Vの進行方向、進行する距離などを制御することができる。
このように探索範囲を限定することで探索処理を短縮でき、自己位置推定の処理速度を上げることができる。また、第二空間内において自己位置推定の精度を向上できる。
このことが、車両Vが基準点及び進行方向を認識できることの利点である。
【0099】
また上記「ケース1」の一例として、図9に示すように、車両Vが第1空間(南側)から第2空間(北側)へと移動し、その後に第2空間内で90度旋回して東側へ走行し、第2空間(西側)から第1空間(東側)へと移動するケースを想定する。
このケースにおいて車両Vが第1空間から第2空間へと移動したときに「環境情報」に基づく自己位置の推定を行えない場合であっても、車両Vは、「マップ情報」を用いて空間の情報と、基準点の情報と、方位の情報とを特定して進行方向を認識することで、どの位置まで直進するべきか、どの位置でどの程度旋回するべきかを把握できる。
【0100】
他方で、「上記ケース2」として、車両Vが「第2空間内の情報」をマップ情報として有していない場合には、当然ながら車両Vは第2空間の情報を把握できない。
そのため、車両Vは、第1空間から第2空間へと移動したときに、ライダ13の照射範囲を全範囲に設定する必要がある。すなわち、第2空間の全方位の探索(全探索とも言う。)を行う必要がある。
このことは、空間内において似たような場所が別の場所に存在する場合があり、このような場合に車両Vが全探索を行わないと、車両Vが第2空間内で正確に走行できないためである(車両Vが行ったり来たり、ぐるぐる同じ位置を回ってしまう)。
【0101】
上記「ケース2」のように車両Vが第2空間の全方位の探索を行うと、探索処理に時間を要してしまう。また、第二空間内において自己位置の推定処理を誤ってしまう虞がある。
【0102】
<<4.自律運転制御>>
走行制御部104は、環境情報取得部101によって得られた「環境情報」と、自己位置推定部103によって得られた「車両Vの位置情報(現在位置)」とに基づいて総合ECU31を制御し、車両Vの「自律運転制御」を行う(図10A参照)。
なお、走行制御部104は、車両Vの「自律運転制御」を行うにあたって、車載ECU30から車両Vの「車両情報」を取得し、「車両情報」をさらに組み合わせて総合ECU31を制御しても良い。
【0103】
走行制御部104は、車両Vの走行予定経路に沿って車両Vが走行開始すると、「自律運転制御」を行い、車両Vの自律運転をスタートする。
詳しく述べると、車両Vが走行開始すると「自律運転モード」が設定された状態となり、走行制御部104は、「自律運転モード」が設定された状態で自律運転制御を行う。
その後、運転モード変更部116によって「自律運転モード」及び「相対運転モード」の間で運転モードの変更が行われながら、車両Vが走行予定経路の目的地に向かって走行することになる。
なお、車両Vが走行開始するタイミングで、既に追従対象となる対象車両FVが検知され、対象車両FVの位置情報がリアルタイムで得られる場合には、運転モード変更部116によって「自律運転モード」から「相対運転モード」に変更された状態となっても良い。その場合には、走行制御部104が、「相対運転モード」が設定された状態で相対運転制御を行い、対象車両FVに対する車両Vの相対運転をスタートする。
あるいは、車両Vが走行開始すると、「自律運転モード」の代わりに「遠隔運転モード」が設定された状態となって、走行制御部104は、「遠隔運転モード」が設定された状態で遠隔運転制御を行うこととしても良い。
【0104】
車両検知部114は、車両Vの前方を走行する所定の前走車両が、車両Vの走行予定経路において追従対象となる対象車両FVであることを検知する(図10B参照)。
「追従対象となる対象車両」とは、車両Vの走行予定経路と少なくとも一部合致する走行予定経路を走行する車両のほか、一定の走行距離(走行時間)において車両Vの走行予定経路と同じ経路を走行することになる車両を含むものである。
例えば、一定の走行距離(走行時間)において分岐点が存在しない高速道路や一般道路等を走行する場合に車両Vの周辺を走行している車両が該当する。
【0105】
具体的には、車両検知部114は、撮像装置11によって認識された所定の前走車両の識別マーク60の認識結果をもとに、当該前走車両が対象車両FVであることを検知する。
例えば、対象車両FVの第1識別マーク60aが認識されたときには、車両検知部114は、車両Vよりも前方位置に対象車両FVが存在することを検知する。
あるいは、対象車両FVの第7識別マーク60gが認識されたときには、車両検知部114は、車両Vの右側位置に対象車両FVが存在することを検知する。
【0106】
より詳しく述べると、車両検知部114は、撮像装置11から対象車両FVの各識別マーク60a~60lの認識結果をリアルタイムで取得することで、対象車両FVの車両識別情報(対象車両FVの形状、大きさ)と、各識別マーク60a~60lに埋め込まれているマーク位置情報とから、車両Vに対する対象車両FVの相対位置をリアルタイムで精度良く検知することができる。
例えば、走行制御装置1は、車両Vに対して対象車両FVが幾分左側寄りの前方位置を走行していることや、車両Vに対して対象車両FVが並走しており、車両Vの幾分前方側を走行していること等を精度良く検知することができる。この場合、対象車両FVの相対位置は、例えば、車両Vを中心位置とする三次元座標位置によって特定されると良い。
そうすることで、図10Bに示すように、車両Vと対象車両FVの間で適切な車間距離を維持しながら車両Vを相対運転させることができる。また、図10Cに示すように、車両Vが対象車両FVを適切に追い越せるように車両Vを自律運転させることもできる。
【0107】
なお、車両検知部114は、識別マーク60の認識結果をもとに対象車両FVを検知しているが、その他の検知手段によって対象車両FVを検知しても良い。
例えば、車両検知部114は、車載通信装置40を利用して対象車両FVに搭載された車両情報発信装置50から対象車両FVの車両識別情報を無線通信によって取得し、当該車両識別情報に基づいて対象車両FVを検知しても良い。
言い換えれば、対象車両FVに取り付けられた識別マーク60によって対象車両FVが検知され得る状態としても良いし、あるいは、対象車両FVに搭載された車両情報発信装置50との無線通信によって対象車両FVが検知され得る状態としても良い。
【0108】
通信部115は、車両検知部114によって検知された対象車両FVの位置情報を少なくとも含む対象車両情報を受信する。
詳しく述べると、通信部115は、車両検知部114によって対象車両FVが検知されると、車両情報発信装置50とネットワークを介した通信を開始する。
そして、通信部115は、対象車両FVに搭載された車両情報発信装置50から、対象車両FVの位置情報と、走行予定経路の情報とを受信する。
なお、車両情報発信装置50の位置情報取得部501は、上述の自己位置推定部103と同様にして対象車両FVの「現在の位置情報」をリアルタイムで取得している。
【0109】
<<5.モード変更(自律運転⇒相対運転)>>
運転モード変更部116は、所定の相対運転開始条件を満たしたときに「自律運転モード(自律運転制御)」から「相対運転モード(相対運転制御)」に変更する。
具体的には、運転モード変更部116は、図10Aに示すように「自律運転モード」が設定された状態で自律運転制御が行われているときに、車両検知部114によって対象車両FVが検知され、通信部115によって対象車両情報が受信されると、図10Bに示すように「自律運転モード」から「相対運転モード」に変更する。
より具体的には、車両検知部114が、「所定の相対運転開始条件」として前走車両を検知したときに当該前走車両が対象車両FVであるか否かを判断し、対象車両FVであると判断された場合に当該前走車両を対象車両FVとして認識する。そして、運転モード変更部116が、「自律運転モード」から「相対運転モード」に変更する。
なお、上記前走車両が対象車両FVではないと判断された場合には、上記前走車両が検知された場合であっても、「所定の相対運転開始条件」を満たさないため、運転モード変更部116によるモード変更はなされない。
ここで「対象車両FV」とは、車両Vに搭載された走行制御装置1(記憶部100)によって予め登録された車両IDを有し、当該車両IDによって識別される車両である。上記前走車両に当該車両IDが設定されている場合、「所定の相対運転開始条件」を満たし、当該車両IDが設定されていない場合には、当該条件を満たさないことになる。
【0110】
詳しく述べると、運転モード変更部116は、「自律運転モード」が設定された状態で自律運転制御が行われているときに、対象車両FVが検知されると、「自律運転モード」を設定した状態で「相対運転モード」を設定する。言い換えれば、「自律運転モード」を有効状態としながら、「相対運転モード」を無効状態から有効状態とする。
このとき、運転モード変更部116は、両方のモードを設定した状態で「自律運転モード」を優先して継続させる。つまり、走行制御部104は、自律運転制御を継続して行う。
そして、運転モード変更部116は、両方のモードが設定された状態で自律運転制御が継続しているときに、対象車両FVの対象車両情報が得られると、両方のモードを設定した状態で「相対運転モード」を優先して実行させる。つまり、走行制御部104は、相対運転制御を新たに行う。
なお、運転モード変更部116は、両方のモードが設定された状態で自律運転制御が継続しているときに、対象車両FVの対象車両情報が得られなかった場合、すなわち、対象車両FVに搭載された車両情報発信装置50との無線通信ができなかった場合には、一度設定した「相対運転モード」を未設定の状態に戻す。言い換えれば、「相対運転モード」を有効状態から無効状態に戻す。このとき、「自律運転モード」は設定されたままの状態(有効状態)であるため、走行制御部104は、自律運転制御を継続して行うことになる。
【0111】
<<6.相対運転制御>>
走行制御部104は、「環境情報」と、「車両Vの位置情報」と、「対象車両FVの対象車両情報」とに基づいて総合ECU31を制御し、対象車両FVに対して車両Vの「相対運転制御」を行う(図10B参照)。
なお、走行制御部104は、「相対運転制御」を実行するにあたって、識別マーク60の認識結果から得られた「対象車両FVの車両識別情報」をさらに組み合わせて総合ECU31を制御することで、対象車両FVの車種(形状や大きさ、走行性能、燃費、排気量等)に応じた好適な相対運転を行うことができる。
【0112】
また、走行制御部104によって行われる「相対運転制御」は、対象車両FVから取得した対象車両情報に含まれる「対象車両FVの位置情報」をもとに、その対象車両FVの位置情報に基づいて描かれる走行軌跡上で車両Vが走行するための位置情報を特定する制御処理である。この相対運転制御では、その走行軌跡上であって、車両Vと対象車両FVの車間距離を適切に確保すべく、車両Vの走行速度に応じた設定車間距離を空けた所定の位置情報を走行する制御が行われる。
具体的には、走行速度取得部117が、慣性測定装置22から車両Vの「走行情報(加速度及び角速度)」を取得し、当該加速度及び角速度を積分演算することで車両Vの「走行速度」をリアルタイムで取得する。
そして、走行制御部104は、記憶部100に記憶された図11に示す「車間距離データ」を参照しながら、対象車両FVの位置情報をもとに車両Vが走行する位置情報を特定し、車両Vの位置情報と環境情報とに基づき、対象車両FVに相対して車両Vを走行させる相対運転制御を行う。
この相対運転制御では、対象車両FVの位置情報をもとに特定した位置情報を車両Vが実際に走行するように、「車両Vの位置情報」をもとに補正、軌道修正する処理を行う。つまり、対象車両FVの位置情報をもとに特定した、移動体が走行する位置情報と、実際に移動体が走行している位置情報とのズレ(誤差)を補正、軌道修正する処理である。
これによって、車両Vが実際に走行した走行軌跡(車両Vの位置情報に基づく走行軌跡)を記憶部100で記憶する。
【0113】
図11に示す「車間距離データ」は、車両Vの走行速度と、設定車間距離との対応関係を示すデータテーブルである。
例えば、車両Vの走行速度(平均走行速度)が「80km/h」であるとき、車両Vと対象車両FVの間の設定車間距離が「40~70m」に設定されている。
なお、「車間距離データ」は、車両Vの走行速度をX軸とし、設定車間距離をY軸とし、走行速度に比例して設定車間距離が増加する(二次関数的に増加する)グラフデータであっても良い。
【0114】
走行速度取得部117は、車両Vの「走行速度」を演算するにあたって「GNSS情報(GNSS補正情報)」と、「加速度及び角速度の情報」とをカルマンフィルタで処理することで、車両Vの「速度」を演算することとしても良い。そうすることで、より精度良く「走行速度」を演算することができる。
なお、車両Vの「速度の情報」を取得するにあたっては、車両Vに車輪速センサを新たに搭載し、車輪速センサを通じて「速度の情報」を取得しても良い。
【0115】
走行制御部104は、車両Vの走行速度に応じた設定車間距離を空けて相対運転制御を行っているが、車両Vと対象車両FVの同期状態(例えば、対象車両FVが「1m」走行すると、車両Vも「1m」走行する状態)により、対象車両FVに対して車両Vの相対運転制御を行っても良い。
同期状態の場合には、走行制御部104が、車両Vの周囲の環境情報と、車両Vの位置情報と、対象車両FVの位置情報を含む対象車両情報とをリアルタイムで取得し、これら情報を組み合わせて相対運転制御を行うと良い。
【0116】
<<7.モード変更(相対運転⇒自律運転)>>
(対象車両が停止動作した場合)
運転モード変更部116は、図10Bに示すように「相対運転モード」が設定された状態で相対運転制御が行われているときに、対象車両FVの「走行状態に応じた所定の条件」を満たすと、相対運転モードから「自律運転モード」に変更する。そして、走行制御部104は、図10Cに示すように「自律運転モード」により自律運転制御を行う。
「走行状態に応じた所定の条件」とは、車両Vが効率良く走行するために、車両Vが対象車両FVを追い越す必要が生じたこと、あるいは対象車両FVとは異なる経路を走行する必要が生じたことが対象車両FVの挙動から検知された場合である。
例えば走行中の対象車両FVが道路脇(路側帯)に停止動作したこと、または停止動作を開始したことが、対象車両FVの挙動から検知された場合である。
また例えば、走行中の対象車両FVが走行予定経路とは異なる経路(具体的には、休憩エリアに向かう経路)を走行開始したことが、対象車両FVの挙動から検知された場合である。
つまり、「走行状態に応じた所定の条件」とは、車両Vの相対運転制御を解除するための「相対運転解除条件」と言い換えることもできる。
以下、図10Cに示すように、走行中の対象車両FVが道路脇に停止動作した場合を想定して説明することとする。
【0117】
環境情報取得部101は、図10Bに示すように「相対運転モード」が設定された状態で相対運転制御が行われているときに、対象車両FVの走行状態に関する検出情報として、対象車両FVが道路脇に停止動作したこと(停止動作を開始したこと)を検出する。
そして、運転モード変更部116は、対象車両FVの走行状態に応じた所定の条件として、環境情報取得部101による検出結果をもとに対象車両FVが道路脇に停止動作したことが検知された場合に、当該所定の条件が成立したものとみなす。そして、「相対運転モード」から「自律運転モード」に変更する。
そして、走行制御部104は、「自律運転モード」により自律運転制御を行う。具体的には、車両Vの周囲の走行環境情報を把握しながら、図10Cに示すように対象車両FVを追い越すように車両Vの自律運転制御を行う。
なお、「自律運転モード」は常に設定されたままの状態(有効状態)であるため、走行制御部104は、相対運転制御から自律運転制御に円滑に移行することができる。
【0118】
(対象車両が分岐点で別れた場合)
上記条件のほか、運転モード変更部116は、「相対運転モード」が設定された状態で相対運転制御が行われているときに、対象車両FVの走行予定経路に応じた所定の条件を満たすと、相対運転モードから「自律運転モード」に変更する。そして、走行制御部104は、「自律運転モード」により自律運転制御を行う。
「走行予定経路に応じた所定の条件」とは、対象車両FVの走行予定経路と、車両Vの走行予定経路とが合致しなくなったことが検知された場合である。
例えば、対象車両FVの走行予定経路が予め取得されており、当該走行予定経路が合致しなくなったこと、あるいは対象車両FVの走行予定経路が変更され、変更後の走行予定経路が合致しなくなったこと等が想定される。
以下、対象車両FVと車両Vが分岐点で別れる場合を想定して説明することとする。
【0119】
通信部115は、車両情報発信装置50から、対象車両FVの位置情報と、走行予定経路の情報とを含む「対象車両情報」を受信する。
そして、運転モード変更部116は、図10Bに示すように「相対運転モード」が設定された状態で相対運転制御が行われているときに、通信部115によって得られた対象車両情報をもとに双方の走行予定経路が合致しなくなったことが検知された場合に、当該「走行状態に応じた所定の条件」が成立したものとみなす。そして、相対運転モードから「自律運転モード」に変更する。
そして、走行制御部104は、「自律運転モード」により自律運転制御を行う。具体的には、所定の分岐点で対象車両FVと別れて、車両Vの自律運転制御を開始する。
【0120】
上記構成により、車両Vが対象車両FVに相対して走行可能とし、必要に応じて車両Vの運転状態を変更することが可能な走行制御装置1を実現できる。
また、走行制御装置1を利用することで、対象車両FVの位置情報をリアルタイムで受信し、対象車両FVの挙動(走行状態の変化)に応じて「自律運転制御」と「相対運転制御」の切り替えを行うことができる。
【0121】
<<8.遠隔運転制御>>
次に、「遠隔運転制御」について説明する。
映像処理部118は、複数の撮像装置11a-11iから車両Vの外部映像データをそれぞれ取得し、所定のレイアウト情報に基づいてそれぞれの外部映像を合成した合成映像(合成映像データ)を作成する。
上記合成映像を生成し、生成した合成映像データを遠隔操作装置70に向けて送信することで、複数の外部映像データを送信する場合と比較してデータ通信コストを削減できる。
【0122】
通信部115は、車載通信装置40を利用して走行制御装置1と遠隔操作装置70の間でデータの送受信を実行する。
具体的には、通信部115は、車両Vの「遠隔運転」に必要な情報として、環境情報取得部101によって得られた「環境情報」と、自己位置推定部103によって得られた「現在の位置情報」とを遠隔操作装置70に向けて送信する。
また、通信部115は、オペレータによるユーザ入力を受け付けた遠隔操作装置70から、車両Vの「運転操作情報」を受信する。
走行制御部104は、遠隔操作装置70から取得した車両Vの「運転操作情報」に基づいて総合ECU31を制御し、車両Vの「遠隔運転制御」を実行する。
【0123】
上記構成により、オペレータが車両Vを遠隔操作して走行させる「遠隔運転制御」を行うことも可能な走行制御装置1を実現することができる。
そのため、対象車両FVの挙動に応じて「遠隔運転制御」と「相対運転制御」の切り替えを行うことも可能となる。「遠隔運転制御」から「相対運転制御」に切り替わると、オペレータが車両Vの遠隔運転の作業から解放されることになる。
【0124】
<走行制御方法(移動制御方法)>
次に、走行制御システムSで実行される走行制御プログラム(走行制御作方法)の処理の一例について、図12図15に基づいて説明する。
本実施形態に係る上記プログラムは、記憶部100を備えた走行制御装置1の機能的な構成要素として、上述した環境情報取得部101と、走行情報取得部102と、自己位置推定部103と、走行制御部104と、基準点特定部105と、基準点記録部106と、マップ作成部107と、認識部108と、推定モード切り替え部109と、検出部110と、位置誤差測定部111と、補正経路設定部112と、進行方向認識部113と、車両検知部114と、通信部115と、運転モード変更部116と、走行速度取得部117と、映像処理部118とを実現させるためのプログラムであって、走行制御装置1のCPU(プロセッサ)がこの走行制御プログラムを実行する。
上記プログラムは、ユーザ(具体的には、車両Vの運転手又は外部のオペレータ)からの操作指示を受け付けて実行されるものである。
【0125】
図12は、走行制御装置1において行われる処理の流れであって、自己位置の推定に関する走行制御方法(1)を示す処理フロー図である。
図13は、マップ情報を用いた自己位置の推定に関する走行制御方法(2)を示す処理フロー図である。
図14は、進行方向に基づいた走行制御方法(3)を示す処理フロー図である。
図15は、運転モードの変更に関する走行制御方法(4)を示す処理フロー図である。
【0126】
図12に示す走行制御フロー(1)では、まず、走行制御装置1が、車両Vの走行開始に伴って自己位置推定の処理を開始するステップ1(S1)から始まる。
【0127】
ステップ2では、自己位置推定部103(受信判定部103d)が、車両Vの「GNSS情報」をリアルタイムで受信できるか否かを判定する。
「GNSS情報」を受信できると判定された場合には(ステップ2:Yes)、ステップ3に進み、第1位置推定部103aが、単独測位に必要な「GNSS情報」を取得し、単独測位によって車両Vの「絶対位置」を算出する。
他方で、「GNSS情報」を受信できないと判定された場合には(ステップ2:No)、ステップ7に進む。
【0128】
ステップ4では、第1位置推定部103aが、車両Vの「絶対位置」をもとに車両Vの現在位置を推定する。
そして、ステップ5で、走行制御部104が、車両Vの現在位置を推定しながら車両Vの走行制御を行う。
そして、ステップ6で、走行制御装置1は、車両Vが目的位置に到着したことをもって自己位置の推定、走行制御を終了する。車両Vが目的位置に到着していない場合には、ステップ2に戻る。
【0129】
ステップ7では、受信判定部103dが、車両Vの周囲における「環境情報」をリアルタイムで受信できるか否かを判定する。
「環境情報」を受信できると判定された場合には(ステップ7:Yes)、ステップ8に進み、第2位置推定部103bが、車両Vの「環境情報」を取得する。
そして、ステップ4に進み、第2位置推定部103bが、車両Vの「環境情報」をもとに車両Vの現在位置を推定する。
そして、ステップ5に進み、走行制御部104は車両Vの現在位置を推定しながら車両Vの走行制御を行う。ステップ6で、走行制御装置1は、車両Vが目的位置に到着したことをもって自己位置の推定、走行制御を終了する。
他方で、「環境情報」を取得できないと判定された場合には(ステップ7:No)、ステップ9に進む。
【0130】
ステップ9では、受信判定部103dが、車両Vの「走行情報」をリアルタイムで受信できるか否かを判定する。
「走行情報」を受信できると判定された場合には(ステップ9:Yes)、ステップ10に進み、第3位置推定部103cが、車両Vの「走行情報」を取得する。
そして、ステップ4に進み、第3位置推定部103cが、車両Vの「走行情報」をもとに車両Vの現在位置を推定する。
そして、ステップ5に進み、走行制御部104は車両Vの現在位置を推定しながら車両Vの走行制御を行う。ステップ6で、走行制御装置1は、車両Vが目的位置に到着したことをもって自己位置の推定、走行制御を終了する。
他方で、「走行情報」を取得できないと判定された場合には(ステップ9:No)、自己位置の推定、走行制御を終了する。
上記ステップを経て図12のプロセスを終了する。
【0131】
次に、図13に示すように、マップ情報を用いた自己位置の推定に関する走行制御方法(2)の処理フローについて説明する。
当該フローでは、まず、走行制御装置1が、車両Vの走行開始に伴って走行制御の処理を開始するステップ101(S101)から始まる。
【0132】
ステップ102では、自己位置推定部103が、GNSS情報に基づく「第1推定モード」によって車両Vの自己位置を推定する。そして、走行制御部104が、マップ情報と、車両Vの「位置情報(現在位置)」とに基づいて車両Vの走行を制御する。
【0133】
ステップ103では、認識部108は、車両Vが所定の走行予定経路に沿って走行しているときに、マップ情報を用いて第1基準点(入口基準点)に車両Vが到達したことを認識する。
そして、ステップ104で、推定モード切り替え部109が、第1基準点において推定モードの切り替えを行う。具体的には、推定モード切り替え部109は、GNSS情報に基づく「第1推定モード」から、環境情報に基づく「第2推定モード」へと切り替える。
そして、ステップ105で、自己位置推定部103は、推定モード切り替え部109によって設定された「第2推定モード」により車両Vの現在位置を推定する。そして、走行制御部104が、マップ情報と、車両Vの「位置情報」とに基づいて車両Vの走行を制御する。
なお、推定モード切り替え部109は、「第1推定モード」から、走行情報に基づく「第3推定モード」へと切り替えることもある。
【0134】
ステップ106では、認識部108は、車両Vが所定の走行予定経路に沿って走行しているときに、マップ情報を用いて第2基準点(出口基準点)に車両Vが到達したことを認識する。
そして、ステップ107で、推定モード切り替え部109が、第2基準点において推定モードの切り替えを行う。具体的には、推定モード切り替え部109は、「第2推定モード」から再び「第1推定モード」へと切り替える。
そして、ステップ108で、自己位置推定部103は、推定モード切り替え部109によって設定された「第1推定モード」により車両Vの現在位置を推定する。そして、走行制御部104が、マップ情報と、車両Vの「位置情報」とに基づいて車両Vの走行を制御する。
【0135】
最後に、ステップ109で、走行制御装置1は、車両Vが目的位置に到着したことをもって走行制御を終了する。車両Vが目的位置に到着していない場合には、ステップ102に戻る。
上記ステップを経て図13のプロセスを終了する。
【0136】
次に、図14に示すように、進行方向に基づいた走行制御方法(3)の処理フローについて説明する。
当該フローでは、まず、走行制御装置1が、車両Vの走行開始に伴って走行制御の処理を開始するステップ201(S201)から始まる。
【0137】
ステップ202では、自己位置推定部103が、所定の推定状態(第1推定状態又は第2推定状態)によって車両Vの自己位置を推定する。そして、走行制御部104が、車両Vの「位置情報(現在位置)」に基づいて車両Vの走行を制御する。
【0138】
ステップ203では、自己位置推定部103が、車両Vが走行しているときに車両Vの外部環境の変化に伴って自己位置の推定状態を変更する。
そして、ステップ204で、当該推定状態の変更の態様に基づいて、進行方向認識部113が車両Vの「進行方向」を認識する。言い換えれば、自己位置の推定に用いる情報(GNSS情報、環境情報、走行情報)の変化態様に基づいて、進行方向認識部113が車両Vの「進行方向」を認識する。
具体的には、自己位置推定部103によって「第1推定状態」から「第2推定状態」へと変更されたときに、進行方向認識部113は、車両Vの進行方向を「第1進行方向」として認識する(図8参照)。
より具体的には、進行方向認識部113は、「第1推定状態」から「第2推定状態」へと変更された場合に、自己位置推定部103が「環境情報」に基づいて車両Vの現在位置を推定開始したタイミングで「第1進行方向」を認識する。
【0139】
ステップ205では、基準点特定部105が、推定状態の変更位置(切り替え位置)を基準点として特定する。
具体的には、基準点特定部105は、「第1推定状態」から「第2推定状態」へと変更され、「第1進行方向」が認識されたとき、自己位置推定部103が「環境情報」に基づいて車両Vの自己位置を推定開始した位置を「第1基準点」として特定する。
【0140】
ステップ206では、自己位置推定部103が、変更後の推定状態によって車両Vの自己位置を推定する。そして、走行制御部104が、車両Vの「位置情報(現在位置)」に基づいて車両Vの走行を制御する。
【0141】
最後に、ステップ207で、走行制御装置1は、車両Vが目的位置に到着したことをもって走行制御を終了する。車両Vが目的位置に到着していない場合には、ステップ202に戻る。
上記ステップを経て図14のプロセスを終了する。
【0142】
次に、図15に示すように、運転モードの変更に関する走行制御方法(4)の処理フローについて説明する。
当該フローでは、まず、走行制御装置1が、自車両Vの走行開始に伴って「自律運転モード」を設定する。ステップS301から始まる。
なお、走行制御装置1は、「自律運転モード」の代わりに「遠隔操作運転モード」を設定しても良い。
仮に「遠隔操作運転モード」が設定された場合には、後述のステップS303で、走行制御部104が、自車両Vの遠隔操作運転制御を行うことになる。
【0143】
次に、ステップS302で、環境情報取得部101が自車両Vの周囲における「環境情報」を取得開始し、また自己位置推定部103が「自車両Vの位置情報」を取得開始する。
そして、ステップS303で、走行制御部104が、環境情報と、自車両Vの位置情報とに基づいて総合ECU31を制御し、自車両Vの「自律運転制御」を行う(図10A参照)。
【0144】
次に、ステップS304で、車両検知部114が、所定の前走車両が自車両Vの走行予定経路において追従対象となる対象車両FVであるか否かを検知する。
具体的には、車両検知部114は、撮像装置11によって認識された所定の前走車両の識別マーク60の認識結果をもとに、当該前走車両が対象車両FVであるか否かを上記の所定の相対運転開始条件をもとに判断する。
車両検知部114が、所定の相対運転開始条件を満たすことで対象車両FVであると判断した場合には(ステップS304:Yes)、ステップS305に進む。一方で、車両検知部114が、所定の相対運転開始条件を満たさず対象車両FVであると判断しない場合には(ステップS304:Nо)、ステップS302に戻る。つまり、「自律運転モード」での自律運転制御を継続する。
【0145】
次に、ステップS305で、運転モード変更部116が、「自律運転モード」が設定された状態で「相対運転モード」を設定する。言い換えれば、「自律運転モード」を有効状態としながら「相対運転モード」を無効状態から有効状態へと変更する。
【0146】
次に、ステップS306で、通信部115が、車両検知部114によって検知された「対象車両FVの位置情報」を含む「対象車両情報」の受信を試みる。
詳しく述べると、通信部115は、対象車両FVに搭載された車両情報発信装置50とネットワークを介した通信を開始し、車両情報発信装置50から対象車両FVの位置情報を受信することを試みる。
【0147】
通信部115が対象車両FVから当該対象車両FVの位置情報を受信した場合には(ステップS306:Yes)、ステップS307に進み、走行制御部104が、「環境情報」と、「自車両Vの位置情報」と、「対象車両FVの対象車両情報」とに基づいて総合ECU31を制御し、対象車両FVに対して自車両Vの「相対運転制御」を行う(図10B参照)。
一方で、通信部115が対象車両FVの位置情報を受信しなかった場合には(ステップS306:No)、ステップS308に進み、「自律運転モード」が設定された状態で、運転モード変更部116が「相対運転モード」を有効状態から無効状態へと変更して解除した上でステップS302に戻る。
【0148】
次に、ステップS309で、運転モード変更部116が、「相対運転モード」が設定された状態で相対運転制御が行われているときに、対象車両FVが「所定の条件」を満たしたか否かを判定する。
具体的には、運転モード変更部116は、対象車両FVが「走行状態に応じた所定の条件」を満たしたか否か、あるいは対象車両FVが「走行予定経路に応じた所定の条件」を満たしたか否かを判定する。
なお、運転モード変更部116は、対象車両FVの「走行状態に応じた所定の条件」及び「走行予定経路に応じた所定の条件」のいずれか一方の条件を満たすと判定した場合に、上記「所定の条件」を満たしたものと判定する。
【0149】
対象車両FVが「所定の条件」を満たしたと判定された場合には(ステップS309:Yes)、ステップS310に進み、運転モード変更部116が「相対運転モード」を有効状態から無効状態へと変更して解除する。
そして、ステップS311で、走行制御部104が、図10Cに示すように「自律運転モード」により自律運転制御を行う。
例えば、走行中の対象車両FVが停止動作したことが検知されたことで「走行状態に応じた所定の条件」が成立した場合には、運転モード変更部116が「相対運転モード」を解除し、走行制御部104が、相対運転制御を切り替えて自律運転制御を行うことになる。
一方で、対象車両FVが「所定の条件」を満たしていないと判定された場合には(ステップS309:Nо)、ステップS307に戻る。
【0150】
最後に、ステップS312で、走行制御装置1が、自車両Vが目的地に到着したこと、若しくは自律運転モードによる自律運転制御を終了するものと判定した場合には(ステップS312:Yes)、図15のプロセスを終了する。
一方で、走行制御装置1が引き続き自車両Vの運転制御を行う場合には(ステップS312:Nо)、ステップS302に戻る。
【0151】
上記の走行制御プログラムによれば、走行する車両の現在位置をより正確に推定することが可能となる。
また、車両Vが対象車両FVに相対して走行可能とし、必要に応じて車両Vの運転状態を変更することが可能となる。
【0152】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、走行制御装置1が読み取り可能な記録媒体に走行制御プログラムが記憶されており、走行制御装置1が当該プログラムを読み出して実行することによって処理が実行される。ここで走行制御装置1が読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。
そのほか、走行制御装置1となる端末(携帯端末)を利用して専用ソフトウェアを起動させて、ウェブブラウザ上で走行制御プログラムが実行されても良い。
【0153】
上記実施形態では、主として本発明に係る走行制御装置、走行制御方法及び走行制御プログラムに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0154】
S 走行制御システム(移動制御システム)
V 車両、自車両(移動体)
V1 電動パワーステアリング
V1a ハンドル
V2 電動スロットル
V2a アクセルペダル
V3 電磁ブレーキ装置
V3a ブレーキペダル
FV 対象車両(対象移動体)
1 走行制御装置(移動制御装置)
10 車載センサ(第1のセンサ、外界センサ)
11 撮像装置
11a~11i 第1撮像装置~第9撮像装置
12 レーダ(ミリ波レーダ)
12a~12d 第1レーダ~第4レーダ
13 ライダ
13a~13e 第1ライダ~第5ライダ
20 車載ロケータ
21 GNSS受信機(RTK-GNSS受信機)
22 慣性測定装置(IMU、第2のセンサ、内界センサ)
30 車載ECU
31 総合ECU
32 ハンドルECU
33 アクセルECU
34 ブレーキECU
40 車載通信装置
50 車両情報発信装置(情報発信装置)
51 車載ロケータ
51a GNSS受信機
51b 慣性測定装置
52 車載通信装置
60 識別マーク
60a~60l 第1識別マーク~第12識別マーク
70 遠隔操作装置(操作装置)
71 表示モニタ
72 表示ナビモニタ
73 ハンドル
74 アクセルペダル
75 ブレーキペダル
76 操作スイッチ
100 記憶部
101 環境情報取得部
102 走行情報取得部(移動情報取得部)
103 自己位置推定部
103a 受信判定部
103b 第1位置推定部
103c 第2位置推定部
103d 第3位置推定部
104 走行制御部
105 基準点特定部
106 基準点記録部
107 マップ作成部
108 認識部
109 推定モード切り替え部
110 検出部
111 位置誤差測定部
112 補正経路設定部
113 進行方向認識部
114 車両検知部
115 通信部
116 運転モード変更部
117 走行速度取得部
118 映像処理部
500 記憶部
501 位置情報取得部
502 通信部(第2通信部)
700 記憶部
701 通信部(第3通信部)
702 画面表示部
703 操作データ作成部
704 ユーザ報知部
SA 人工衛星
ST 基準局
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動を制御する移動制御装置であって、
前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する自己位置推定部と、
前記移動体に搭載されたセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得する環境情報取得部と、を備え、
前記自己位置推定部は、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報取得部によって得られた前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、
前記移動制御装置は、
前記自己位置推定部が前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定状態から、前記自己位置推定部が前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第2の推定状態へと変更された位置を第1基準点として特定し、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと変更された位置を前記第1基準点とは異なる第2基準点として特定する基準点特定部と、
前記基準点特定部によって特定された基準点の情報を記録する基準点記録部と、
前記基準点記録部によって記録された前記基準点の情報に基づいて前記自己位置推定部による推定状態を切り替える切り替え部と、を備え、
前記切り替え部は、前記第1基準点に前記移動体が到達したことをもって、又は前記第1基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことをもって、前記第1の推定状態から前記第2の推定状態へと切り替え、
前記自己位置推定部は、切り替えられた前記第2の推定状態により前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する、移動制御装置。
【請求項2】
移動体の移動を制御する移動制御装置であって、
前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する自己位置推定部と、
前記移動体に搭載されたセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得する環境情報取得部と、を備え、
前記自己位置推定部は、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報取得部によって得られた前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、
前記移動制御装置は、
前記自己位置推定部が前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定状態から、前記自己位置推定部が前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第2の推定状態へと変更された位置を第1基準点として特定し、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと変更された位置を前記第1基準点とは異なる第2基準点として特定する基準点特定部と、
前記基準点特定部によって特定された基準点の情報を記録する基準点記録部と、
前記基準点記録部によって記録された前記基準点の情報に基づいて前記自己位置推定部による推定状態を切り替える切り替え部と、を備え、
前記切り替え部は、前記第2基準点に前記移動体が到達したことをもって、又は前記第2基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことをもって、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと切り替え、
前記自己位置推定部は、切り替えられた前記第1の推定状態により前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する、移動制御装置。
【請求項3】
前記基準点は、自己位置の推定状態(推定手法)に基づいて区分けされた複数の空間において前記移動体が異なる空間へ出入りするときの境界点であって、
前記第1基準点、前記第2基準点は、前記GNSS情報に基づいて自己位置を推定できる状態にある第1空間と、前記GNSS情報に基づいて自己位置を推定できず、前記環境情報に基づいて自己位置を推定できる状態にある第2空間との境界点であって、
前記基準点記録部によって記録された前記基準点の履歴情報に基づいて、前記基準点の情報を含むマップ情報を作成する、又はマップ情報を更新するマップ作成部を備え、
前記切り替え部は、
前記マップ情報に含まれる前記第1基準点又は前記第1基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことをもって、前記第1空間内で移動する前記移動体の現在位置を推定する状態を、前記第1の推定状態から前記第2の推定状態へと切り替え、
前記マップ情報に含まれる前記第2基準点又は前記第2基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことをもって、前記第2空間内で移動する前記移動体の現在位置を推定する状態を、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと切り替える、請求項1又は2に記載の移動制御装置。
【請求項4】
前記自己位置推定部は、切り替えられた推定状態により前記移動体の現在位置を推定する(通信状況に応じて変更された推定状態により前記移動体の現在位置を推定するものを除く)、請求項1又は2に記載の移動制御装置。
【請求項5】
前記移動体に搭載された第2のセンサを通じて前記移動体の移動情報を取得する移動情報取得部を備え、
前記自己位置推定部は、前記GNSS情報及び前記環境情報を取得できない場合に、前記移動情報取得部によって得られた前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、
前記移動制御装置は、
所定の移動予定経路に沿って前記移動体の移動を制御し、
前記自己位置推定部が前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第3の推定状態から、前記自己位置推定部が前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定状態へと変更された場合に、前記第3の推定状態で推定された前記移動体の現在位置と、前記第1の推定状態で推定された前記移動体の現在位置との位置誤差を測定する位置誤差測定部と、
前記位置誤差測定部によって測定された前記位置誤差に基づいて、前記移動予定経路へと導くための移動補正経路を設定する補正経路設定部と、を備える請求項1又は2に記載の移動制御装置。
【請求項6】
前記移動体に搭載された第2のセンサを通じて前記移動体の移動情報を取得する移動情報取得部を備え、
前記自己位置推定部は、前記GNSS情報及び前記環境情報を取得できない場合に、前記移動情報取得部によって得られた前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、
前記基準点特定部は、前記自己位置推定部が前記移動情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第3の推定状態から、前記第1の推定状態へと変更された場合に、前記第3の推定状態から前記第1の推定状態へと変更された位置を他の基準点として特定し、
前記基準点記録部は、前記他の基準点の情報を記録し、
記切り替え部は、前記他の基準点に前記移動体が到達すると、前記他の基準点において前記第3の推定状態から前記第1の推定状態へと切り替え、
前記移動制御装置は、
所定の移動予定経路に沿って前記移動体の移動を制御し、
記切り替え部によって前記他の基準点において前記第3の推定状態から前記第1の推定状態へと切り替わった場合に、前記第3の推定状態で推定された前記移動体の現在位置と、前記第1の推定状態で推定された前記移動体の現在位置との位置誤差を測定する位置誤差測定部と、
前記他の基準点において測定された前記位置誤差により、前記移動予定経路へと導くための移動補正経路を設定する補正経路設定部と、を備える請求項1又は2に記載の移動制御装置。
【請求項7】
移動体の移動を制御するコンピュータによって実行される移動制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定することと、
前記移動体に搭載されたセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得することと、を実行し、
前記移動体の現在位置を推定するにあたって、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、
前記コンピュータが、
前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定状態から、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第2の推定状態へと変更された位置を第1基準点として特定し、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと変更された位置を前記第1基準点とは異なる第2基準点として特定することと、
特定された基準点の情報を記録することと、
記録された前記基準点の情報に基づいて推定状態を切り替えることと、を実行し、
前記推定状態を切り替えるにあたって、前記第1基準点に前記移動体が到達したことをもって、又は前記第1基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことをもって、前記第1の推定状態から前記第2の推定状態へと切り替え、
前記移動体の現在位置を推定するにあたって、切り替えられた前記第2の推定状態により前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する、移動制御方法。
【請求項8】
移動体の移動を制御する移動制御装置としてのコンピュータに、
前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する処理と、
前記移動体に搭載されたセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得する処理と、を実行させ、
前記移動体の現在位置を推定する処理では、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、
前記コンピュータに、
前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定状態から、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第2の推定状態へと変更された位置を第1基準点として特定し、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと変更された位置を前記第1基準点とは異なる第2基準点として特定する処理と、
特定された基準点の情報を記録する処理と、
記録された前記基準点の情報に基づいて推定状態を切り替える処理と、を実行させ、
前記推定状態を切り替える処理では、前記第1基準点に前記移動体が到達したことをもって、又は前記第1基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことをもって、前記第1の推定状態から前記第2の推定状態へと切り替え、
前記移動体の現在位置を推定する処理では、切り替えられた前記第2の推定状態により前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する、移動制御プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
前記課題は、本発明の移動制御装置によれば、移動体の移動を制御する移動制御装置であって、前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する自己位置推定部と、前記移動体に搭載されたセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得する環境情報取得部と、を備え、前記自己位置推定部は、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報取得部によって得られた前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、前記移動制御装置は、前記自己位置推定部が前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定状態から、前記自己位置推定部が前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第2の推定状態へと変更された位置を第1基準点として特定し、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと変更された位置を前記第1基準点とは異なる第2基準点として特定する基準点特定部と、前記基準点特定部によって特定された基準点の情報を記録する基準点記録部と、前記基準点記録部によって記録された前記基準点の情報に基づいて前記自己位置推定部による推定状態を切り替える切り替え部と、を備え、前記切り替え部は、前記第1基準点に前記移動体が到達したことをもって、又は前記第1基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことをもって、前記第1の推定状態から前記第2の推定状態へと切り替え、前記自己位置推定部は、切り替えられた前記第2の推定状態により前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定すること、により解決される。
また、本発明の移動制御装置によれば、移動体の移動を制御する移動制御装置であって、前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する自己位置推定部と、前記移動体に搭載されたセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得する環境情報取得部と、を備え、前記自己位置推定部は、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報取得部によって得られた前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、前記移動制御装置は、前記自己位置推定部が前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定状態から、前記自己位置推定部が前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第2の推定状態へと変更された位置を第1基準点として特定し、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと変更された位置を前記第1基準点とは異なる第2基準点として特定する基準点特定部と、前記基準点特定部によって特定された基準点の情報を記録する基準点記録部と、前記基準点記録部によって記録された前記基準点の情報に基づいて前記自己位置推定部による推定状態を切り替える切り替え部と、を備え、前記切り替え部は、前記第2基準点に前記移動体が到達したことをもって、又は前記第2基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことをもって、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと切り替え、前記自己位置推定部は、切り替えられた前記第1の推定状態により前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定すること、により解決される。
上記のように、自己位置推定部は、GNSS情報に基づいて移動体の現在位置を推定し、GNSS情報を取得できない場合に環境情報に基づいて移動体の現在位置を推定する。そうすることで、移動する移動体の周囲の環境に応じて、移動体の現在位置をより正確に推定することが可能な移動制御装置を実現できる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また前記課題は、本発明の移動制御方法によれば、移動体の移動を制御するコンピュータによって実行される移動制御方法であって、前記コンピュータが、前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定することと、前記移動体に搭載されたセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得することと、を実行し、前記移動体の現在位置を推定するにあたって、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、前記コンピュータが、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定状態から、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第2の推定状態へと変更された位置を第1基準点として特定し、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと変更された位置を前記第1基準点とは異なる第2基準点として特定することと、特定された基準点の情報を記録することと、記録された前記基準点の情報に基づいて推定状態を切り替えることと、を実行し、前記推定状態を切り替えるにあたって、前記第1基準点に前記移動体が到達したことをもって、又は前記第1基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことをもって、前記第1の推定状態から前記第2の推定状態へと切り替え、前記移動体の現在位置を推定するにあたって、切り替えられた前記第2の推定状態により前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定すること、によっても解決される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また前記課題は、本発明の移動制御プログラムによれば、移動体の移動を制御する移動制御装置としてのコンピュータに、前記移動体に搭載されたGNSS受信機を通じてGNSS情報を取得し、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する処理と、前記移動体に搭載されたセンサを通じて前記移動体の周囲における環境情報を取得する処理と、を実行させ、前記移動体の現在位置を推定する処理では、前記GNSS情報を取得できない場合に、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定し、前記コンピュータに、前記GNSS情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第1の推定状態から、前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定する第2の推定状態へと変更された位置を第1基準点として特定し、前記第2の推定状態から前記第1の推定状態へと変更された位置を前記第1基準点とは異なる第2基準点として特定する処理と、特定された基準点の情報を記録する処理と、記録された前記基準点の情報に基づいて推定状態を切り替える処理と、を実行させ、前記推定状態を切り替える処理では、前記第1基準点に前記移動体が到達したことをもって、又は前記第1基準点から一定の距離内に前記移動体が到達したことをもって、前記第1の推定状態から前記第2の推定状態へと切り替え、前記移動体の現在位置を推定する処理では、切り替えられた前記第2の推定状態により前記環境情報に基づいて前記移動体の現在位置を推定すること、によっても解決される。