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特開2025-7474ラミネート型電池、及びラミネート型電池の製造方法
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  • 特開-ラミネート型電池、及びラミネート型電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007474
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ラミネート型電池、及びラミネート型電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20250109BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108903
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿下 健一
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 澄子
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H028AA07
5H028BB04
5H028CC07
5H028HH00
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM11
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029CJ03
5H029CJ05
5H029DJ02
5H029EJ01
5H029EJ12
5H029HJ00
(57)【要約】
【課題】構造効率の低下を抑制することができるラミネート型電池の提供。
【解決手段】電極体と、電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、ラミネートフィルムは、端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部を有し、融着部は90°未満の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた鋭角曲げ部と、鋭角曲げ部よりも融着部の先端側の領域において、鋭角曲げ部における折り曲げ方向と反する方向に延びる先端側領域と、を有する、ラミネート型電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、
前記ラミネートフィルムは、端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部を有し、
前記融着部は90°未満の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた鋭角曲げ部と、前記鋭角曲げ部よりも前記融着部の先端側の領域において、前記鋭角曲げ部における折り曲げ方向と反する方向に延びる先端側領域と、を有する、ラミネート型電池。
【請求項2】
前記鋭角曲げ部の角度が30°以上75°以下である、請求項1に記載のラミネート型電池。
【請求項3】
電極体と、前記電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、前記ラミネートフィルムは端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部をする、ラミネート型電池の製造方法であって、
回転する円盤状の支点ロール部材を前記融着部に押し当て、前記支点ロール部材が押し当てられた箇所を支点として90°未満の角度となるよう前記融着部を折り曲げて鋭角曲げ部を形成する折り曲げ工程を有し、
前記支点ロール部材は、前記融着部に接する側の面における前記円盤状の形状の外周端部に、周方向に配置された突起を有する、ラミネート型電池の製造方法。
【請求項4】
前記折り曲げ工程は、前記融着部の前記鋭角曲げ部を形成する箇所に対して、前記支点ロール部材の前記突起が接する側の反対側から弾性ロールを押し当てながら前記融着部の折り曲げを行う、請求項3に記載のラミネート型電池の製造方法。
【請求項5】
前記突起の先端の角度が20°以上45°以下である、請求項3又は請求項4に記載のラミネート型電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラミネート型電池、及びラミネート型電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極体がラミネートフィルムに覆われたラミネート型電池では、電極体を封入するためにラミネートフィルムの一部を融着して融着部を形成することが行われている。そして、電池における構造効率を向上させるため、この融着部を折り曲げることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ラミネート加工が施された外装体において、少なくとも1つの端部に折り曲げ部を有する二次電池の製造方法であって、外装体の端部の折り曲げの基点に押さえ板を当接させる工程と、当接させる工程後、端部を挟むように押さえ板と押さえ板に対向する位置に配置されている押し付け板とを摺動させて、基点を中心に端部を折り曲げるとともに、押さえ板と押し付け板とで端部を挟持することにより折り曲げ部を形成する工程と、を備え、押し付け板の端部と摺動する面は、端部の折り曲げを行う傾斜面と端部を挟持する挟持面とを有し、傾斜面は押し付け板の幅方向に直交する断面において、押し付け板の断面積が摺動方向に狭まるように傾斜しており、傾斜面は前記幅方向に傾斜している二次電池の製造方法、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-200973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、ラミネート型電池の構造効率を向上させるため、ラミネートフィルムの融着部を90°以下の角度となるよう折り曲げて曲げ部を形成し、ラミネート型電池全体の外形のサイズを小さくすることが行われていた。しかし、曲げ部にスプリングバックが生じ、結果的に曲げ部が90°よりも浅い角度になり、ラミネート型電池の外形のサイズが大きくなって体積効率が低下することがあった。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、構造効率の低下を抑制することができるラミネート型電池、及び該ラミネート型電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 電極体と、
前記電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、
前記ラミネートフィルムは、端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部を有し、
前記融着部は90°未満の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた鋭角曲げ部と、前記鋭角曲げ部よりも前記融着部の先端側の領域において、前記鋭角曲げ部における折り曲げ方向と反する方向に延びる先端側領域と、を有する、ラミネート型電池。
<2> 前記鋭角曲げ部の角度が30°以上75°以下である、<1>に記載のラミネート型電池。
<3> 電極体と、前記電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、前記ラミネートフィルムは端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部をする、ラミネート型電池の製造方法であって、
回転する円盤状の支点ロール部材を前記融着部に押し当て、前記支点ロール部材が押し当てられた箇所を支点として90°未満の角度となるよう前記融着部を折り曲げて鋭角曲げ部を形成する折り曲げ工程を有し、
前記支点ロール部材は、前記融着部に接する側の面における前記円盤状の形状の外周端部に、周方向に配置された突起を有する、ラミネート型電池の製造方法。
<4> 前記折り曲げ工程は、前記融着部の前記鋭角曲げ部を形成する箇所に対して、前記支点ロール部材の前記突起が接する側の反対側から弾性ロールを押し当てながら前記融着部の折り曲げを行う、<3>に記載のラミネート型電池の製造方法。
<5> 前記突起の先端の角度が20°以上45°以下である、<3>又は<4>に記載のラミネート型電池の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、構造効率の低下を抑制することができるラミネート型電池、及び該ラミネート型電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るラミネート型電池を例示する概略断面図である。
図2】本実施形態に係るラミネート型電池のラミネートフィルムの融着部における各部の角度を示す概略断面図である。
図3】本実施形態に係るラミネート型電池の別の態様を例示する概略断面図である。
図4】本実施形態に係るラミネート型電池の製造方法を例示する概略断面図である。
図5】本実施形態に係るラミネート型電池の製造方法に用いる支点ロール部材の突起における各部の角度を示す概略断面図である。
図6】固体電池の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ラミネート型電池>
本開示の実施形態に係るラミネート型電池は、電極体と、電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、ラミネートフィルムは、端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部を有する。そして、融着部は90°未満の角度となるよう角状又は弧状に曲げられた鋭角曲げ部と、鋭角曲げ部よりも融着部の先端側の領域において、鋭角曲げ部における折り曲げ方向と反する方向に延びる先端側領域と、を有する。
【0011】
以下、本開示に係るラミネート型電池の一実施形態について、図面を用いて説明する。
以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
【0012】
図1は、本実施形態に係るラミネート型電池を例示する概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池10は、電極体2と、電極体2を覆って内部に封入するラミネートフィルム4と、を有する。ラミネートフィルム4は端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部40をする。そして、融着部40は90°未満の角度となるよう角状又は弧状に折り曲げられた鋭角曲げ部42を有する。さらに、融着部40は鋭角曲げ部42よりも融着部40の先端40a側の領域において、鋭角曲げ部42における折り曲げ方向と反する方向に延びる先端側領域44と、を有する。
【0013】
上記の構成を有するラミネート型電池10によれば、融着部40の鋭角曲げ部42におけるスプリングバックによるラミネート型電池10の構造効率の低下が抑制される。この効果が奏される理由は、以下のように推察される。
【0014】
まず、従来のラミネート型電池について説明する。従来から、ラミネート型電池の構造効率を向上させるため、ラミネートフィルムの融着部を90°以下の角度となるよう折り曲げて曲げ部を形成し、ラミネート型電池全体の外形のサイズを小さくすることが行われていた。しかし、曲げ部にスプリングバックが生じ、結果的に曲げ部が90°よりも浅い角度になり、ラミネート型電池の外形のサイズが大きくなって体積効率が低下することがあった。
【0015】
これに対し、本実施形態に係るラミネート型電池10は、融着部40に90°未満の角度となるよう折り曲げられた鋭角曲げ部42を有し、且つ鋭角曲げ部42よりも先端40a側の先端側領域44は鋭角曲げ部42における折り曲げ方向と反する方向に延びる形状とされている。これにより、鋭角曲げ部42におけるスプリングバックの発生量を考慮して、先端側領域44の反りの角度つまり先端側領域44が鋭角曲げ部42における折り曲げ方向と反する方向に延びる角度を設定することができる。そのため、鋭角曲げ部42にスプリングバックが発生しても、先端側領域44の反りの角度の調整により、ラミネート型電池10の体積効率の低下を抑制することができる。
【0016】
以上により、本開示の実施形態に係るラミネート型電池によれば、融着部の鋭角曲げ部におけるスプリングバックによるラミネート型電池の構造効率の低下を抑制することができる。
【0017】
・融着部における各部の角度
ここで、本開示の実施形態に係るラミネート型電池でのラミネートフィルムの融着部における、各部の好ましい角度について説明する。
角状又は弧状に曲げられた鋭角曲げ部の角度(図2示す角度a)は、90°未満であればよく、ラミネート型電池の構造効率の低下を抑制する観点から、75°以下であることが好ましく、60°以下であることがより好ましい。一方、鋭角曲げ部の角度の下限値は、ラミネート型電池の構造効率の低下を抑制する観点から、30°以上であることが好ましく、40°以上であることがより好ましい。鋭角曲げ部の角度は30°以上75°以下であることが好ましく、40°以上60°以下であることがより好ましい。
なお、鋭角曲げ部の角度とは図2に示す角度aを意味する。つまり、融着部40の根元(つまり融着部40における電極体2側の端部)から融着部40が延びる方向と、融着部40の鋭角曲げ部42よりも先端40a側の領域が鋭角曲げ部42から延びる方向と、が成す角度を意味する。
鋭角曲げ部は角状又は弧状に曲げられた形状を有する。角状とは角を有する形状を意味し、弧状とは角を有さない湾曲状の形状を意味する。
【0018】
鋭角曲げ部よりも融着部の先端側の領域において鋭角曲げ部における折り曲げ方向と反する方向に反って延びる先端側領域の角度(図2示す角度b)は、ラミネート型電池の構造効率の低下を抑制する観点から、95°以下であることが好ましく、90°以下であることがより好ましい。一方、上記先端側領域の角度の下限値は、ラミネート型電池の構造効率の低下を抑制する観点から、80°以上であることが好ましく、85°以上であることがより好ましい。上記先端側領域の角度は80°以上95°以下であることが好ましく、85°以上90°以下であることがより好ましい。
なお、融着部の鋭角曲げ部における折り曲げ方向と反する方向に反って延びる先端側領域の角度とは図2に示す角度bを意味する。つまり、融着部40の根元(つまり融着部40における電極体2側の端部)から融着部40が延びる方向と、融着部40の鋭角曲げ部42における折り曲げ方向と反する方向に反って延びる先端側領域44が延びる方向と、が成す角度を意味する。
【0019】
・他の態様
融着部は、鋭角曲げ部以外に別の曲げ部を1箇所以上有していてもよい。
図3は、本実施形態に係るラミネート型電池の別の態様を例示する概略断面図である。
図3に示すラミネート型電池10Aは、電極体2と、電極体2を覆って内部に封入するラミネートフィルム4と、を有する。ラミネートフィルム4は端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部400をする。融着部400は90°未満の角度となるよう角状又は弧状に折り曲げられた鋭角曲げ部420を有する。さらに、融着部400は鋭角曲げ部420よりも融着部400の先端側の領域において、鋭角曲げ部420における折り曲げ方向と反する方向に延びる先端側領域440と、を有する。さらに融着部400は、先端側領域440において角度が略0°となるよう角状又は弧状に折り曲げられた曲げ部460を有し、融着部400の先端側領域440が折り返された形状を有している。このように、図3に示すラミネート型電池10Aは、ラミネートフィルム4の融着部400に2つの曲げ部(鋭角曲げ部420及び曲げ部460)を有している。
【0020】
<ラミネート型電池の製造方法>
次いで、本開示の実施形態に係るラミネート型電池の製造方法について説明する。
【0021】
本開示の実施形態に係るラミネート型電池の製造方法は、電極体と、電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、ラミネートフィルムは端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部をする、ラミネート型電池を製造する方法である。
このラミネート型電池の製造方法は、回転する円盤状の支点ロール部材を融着部に押し当て、支点ロール部材が押し当てられた箇所を支点として90°未満の角度となるよう融着部を折り曲げて鋭角曲げ部を形成する折り曲げ工程を有する。そして、支点ロール部材は、融着部に接する側の面における円盤状の形状の外周端部に、周方向に(好ましくは連続して)配置された突起を有する。
【0022】
以下、本開示に係るラミネート型電池の製造方法の一実施形態について、図面を用いて説明する。図4は、本実施形態に係るラミネート型電池の製造方法を例示する概略断面図である。
図4に示すラミネート型電池10は、電極体2と、電極体2を覆って内部に封入するラミネートフィルム4と、を有する。ラミネートフィルム4は端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部40をする。
【0023】
ラミネート型電池の製造方法では、ラミネートフィルム4の融着部40に鋭角曲げ部42を形成する折り曲げ工程を有する。折り曲げ工程では、鋭角曲げ部が形成されていない融着部40に対して、軸60を中心に回転する円盤状の支点ロール部材6を押し当て、支点ロール部材6が押し当てられた箇所を支点として90°未満の角度となるよう融着部40を折り曲げることで鋭角曲げ部42を形成する。支点ロール部材6は、融着部40に接する側の面における円盤状の形状の端部に突起62を有する。突起62は、支点ロール部材6の円盤状の形状の外周端部に周方向に連続して配置されている。
【0024】
図4に示すように、端部に突起62を有する支点ロール部材6を押し当てながら融着部40の折り曲げを行うことで、支点ロール部材6を立てた状態のまま融着部40に押し当てても、90°未満の角度となる鋭角曲げ部42を形成することができる。
もし、端部に突起を有しない支点ロール部材を用いてラミネートフィルムの融着部に90°未満の角度となる鋭角曲げ部を形成しようとした場合、支点ロール部材を斜めにして融着部に押し当てる必要がある。その場合、支点ロール部材を斜めにするためのスペースが必要となり、その分電極体から鋭角曲げ部までの距離が長くなり、その結果電池の構造効率は低下する。
しかし、端部に突起62を有する支点ロール部材6を用いて鋭角曲げ部42の形成を行うことで、支点ロール部材6を斜めにする必要が無いため、電極体2から鋭角曲げ部42までの距離を短くすることができる。つまり支点ロール部材6に突起62を設けて融着部40の折り曲げを行うことで、狭いスペースでも90°未満の角度となる鋭角曲げ部42を形成することができる。その結果、電池の構造効率を向上させることができる。
【0025】
また、融着部40の鋭角曲げ部42を形成する箇所に対して、支点ロール部材6の突起62が接する側の反対側から、融着部と接触する面が弾性部材(例えばゴム)で構成される弾性ロール64が押し当てられている。融着部40の鋭角曲げ部42を形成する箇所を挟んで支点ロール部材6の突起42に対向する位置に弾性ロール64を押し当てながら折り曲げを行うことで、高い圧を掛けながら鋭角曲げ部42を形成することができ、形成後の鋭角曲げ部42におけるスプリングバックの発生をより抑制することができる。
【0026】
さらに、融着部40の鋭角曲げ部42を形成する箇所よりも根元側(つまり融着部40における電極体2側)において、融着部40を挟んで支点ロール部材6に対向する位置に対向ロール66が押し当てられている。
【0027】
・突起における各部の角度
ここで、本開示の実施形態に係るラミネート型電池の製造方法で用いられる支点ロール部材の突起における、各部の好ましい角度について説明する。
突起の先端の角度(図5示す角度c)は、ラミネート型電池の構造効率の低下を抑制する観点から、45°以下であることが好ましく、40°以下であることがより好ましい。一方、突起の先端の角度の下限値は、ラミネート型電池の構造効率の低下を抑制する観点から、20°以上であることが好ましく、25°以上であることがより好ましい。突起の先端の角度は20°以上45°以下であることが好ましく、25°以上40°以下であることがより好ましい。
なお、突起の先端の角度とは図5に示す角度cを意味する。つまり、支点ロール部材6の突起62において尖っている先端部分の角度を意味する。
【0028】
支点ロール部材における円盤の形状の端部から突起の先端に向かう方向の角度(図5示す角度d)は、ラミネート型電池の構造効率の低下を抑制する観点から、45°以下であることが好ましく、40°以下であることがより好ましい。一方、支点ロール部材における円盤の形状の端部から突起の先端に向かう方向の角度の下限値は、ラミネート型電池の構造効率の低下を抑制する観点から、20°以上であることが好ましく、25°以上であることがより好ましい。該角度は20°以上45°以下であることが好ましく、25°以上40°以下であることがより好ましい。
なお、支点ロール部材における円盤の形状の端部から突起の先端に向かう方向の角度とは図5に示す角度dを意味する。つまり、支点ロール部材6における円盤の形状の端部6eから突起62の先端に向かう方向と、円盤状の支点ロール部材6における平面方向と、が成す角度を意味する。
【0029】
(電池の部材)
次いで、本実施形態に係るラミネート型電池を構成する、電極体及びラミネートフィルムについて説明する。
【0030】
(1)ラミネートフィルム
ラミネートフィルムは、例えば、金属層と、金属層の外側に保護樹脂層と、金属層の内側に融着樹脂層と、を有する三層構造のフィルムが用いられる。
【0031】
融着樹脂層の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂が挙げられる。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が挙げられる。保護樹脂層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンが挙げられる。融着樹脂層の厚さは、例えば40μm以上100μm以下である。金属層の厚さは、例えば30μm以上60μm以下である。保護樹脂層の厚さは、例えば20μm以上60μm以下である。ラミネートフィルム全体の厚さは、例えば70μm以上、220μm以下である。
【0032】
(2)電極体
電極体は、電池の発電要素として機能する。電極体は、通常、正極集電体、正極活物質層、電解質層、負極活物質層および負極集電体を、厚さ方向において、この順に有する。
【0033】
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する。正極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。正極活物質の形状は、例えば粒子状である。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。また、正極活物質として硫黄(S)を用いてもよい。
【0034】
正極活物質として、リチウム複合酸化物を含むことが好ましい。リチウム複合酸化物は、F、Cl、N、S、Br及びIよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。また、リチウム複合酸化物は、空間群R-3m、Immm、及びP63-mmc(P63mc、P6/mmcともいう。)より選ばれる少なくとも1つの空間群に属する結晶構造を有してもよい。また、リチウム複合酸化物は、遷移金属、酸素、及びリチウムの主たる配列がO2型構造であってもよい。
【0035】
R-3mに属する結晶構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、LiMeαβ(MeはMn、Co、Ni、Fe、Al、Cu、V、Nb、Mo、Ti、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Ag、Ru、W、B、Si及びPからなる群より選択される少なくとも一種を表し、Xは、F、Cl、N、S、Br及びIからなる群より選択される少なくとも一種を表し、0.5≦x≦1.5、0.5≦y≦1.0、1≦α<2、0<β≦1を満たす。)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
Immmに属する結晶構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、Lix1 (1.5≦x1≦2.3を満たし、MはNi、Co、Mn、Cu及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種を含み、Aは少なくとも酸素を含み、Aに占める酸素の比率は85原子%以上である。)で表される複合酸化物(具体的な例としてLiNiO)、Lix11A 1-x21B x22-y (0≦x2≦0.5、0≦y≦0.3であり、x2及びyの少なくとも一方は0でなく、M1AはNi、Co、Mn、Cu及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種を表し、M1BはAl、Mg、Sc、Ti、Cr、V、Zn、Ga、Zr、Mo、Nb、Ta及びWよりなる群から選択される少なくとも1種を表し、A2はF、Cl、Br、S及びPよりなる群から選択される少なくとも1種を表す。)で表される複合酸化物が挙げられる。
【0037】
P63-mmcに属する結晶構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、M1M2(M1はアルカリ金属(Na及びKの少なくとも一種が好ましい)を表し、M2は遷移金属(Mn、Ni、Co及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい)を表し、x+yは0<x+y≦2を満たす。)で表される複合酸化物が挙げられる。
【0038】
O2型構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、Li[Liα(MnCo1-α]O(0.5<x<1.1、0.1<α<0.33、0.17<a<0.93、0.03<b<0.50、0.04<c<0.33であり、MはNi、Mg、Ti、Fe、Sn、Zr、Nb、Mo、W及びBiよりなる群から選ばれる少なくとも一種を表す。)で表される複合酸化物が挙げられ、具体的な例としてLi0.744[Li0.145Mn0.625Co0.115Ni0.115]O等が挙げられる。
【0039】
また、正極は、正極活物質に加え、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及びハロゲン化物固体電解質からなる固体電解質群より選ばれる固体電解質を含むことが好ましく、正極活物質の表面の少なくとも一部が、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、又はハロゲン化物固体電解質で被覆されている態様がより好ましい。正極活物質の表面の少なくとも一部を被覆するハロゲン化物固体電解質としては、Li6-(4-x)b(Ti1-xAl(0<x<1、0<b≦1.5)〔LTAF電解質〕が好ましい。
【0040】
導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。固体電解質は、ゲル電解質等の有機固体電解質であってもよく、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質等の無機固体電解質であってもよい。また、液体電解質(電解液)は、例えば、LiPF等の支持塩と、カーボネート系溶媒等の溶媒とを含有する。また、バインダーとしては、例えば、ゴム系バインダー、フッ化物系バインダーが挙げられる。
【0041】
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する。負極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、Li、Si等の金属活物質、グラファイト等のカーボン活物質、LiTi12等の酸化物活物質が挙げられる。負極集電体の形状は、例えば、箔状、メッシュ状である。導電材、電解質およびバインダーについては、上述した内容と同様である。
【0042】
電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に配置され、少なくとも電解質を含有する。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。電解質層としては、固体電解質層であることが好ましい。電解質層は、セパレータを有していてもよい。
【0043】
固体電解質として、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及びハロゲン化物固体電解質からなる固体電解質群より選ばれる少なくとも1つの固体電解質種を含むことが好ましい。
【0044】
硫化物固体電解質として、アニオン元素の主成分として硫黄(S)を含有することが好ましく、更には例えばLi元素、A元素、及びS元素を含有することが好ましい。A元素は、P、As、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、及びInよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。硫化物固体電解質は、O及びハロゲン元素の少なくとも一方を更に含有してもよい。ハロゲン元素(X)としては、例えば、F、Cl、Br、I等が挙げられる。硫化物固体電解質の組成は、特に限定されず、例えば、xLiS・(100-x)P(70≦x≦80)、yLiI・zLiBr・(100-y-z)(xLiS・(1-x)P)(0.7≦x≦0.8、0≦y≦30、0≦z≦30)が挙げられる。硫化物固体電解質は、下記一般式(1)で表される組成を有してもよい。
Li4-xGe1-x (0<x<1) ・・・式(1)
式(1)において、Geの少なくとも一部は、Sb、Si、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、V及びNbよりなる群から選ばれる少なくとも一つで置換されてもよい。また、Pの少なくとも一部は、Sb、Si、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、V及びNbよりなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されてもよい。Liの一部は、Na、K、Mg、Ca及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されてもよい。Sの一部は、ハロゲンで置換されてもよい。ハロゲンとしては、F、Cl、Br及びIの少なくとも1つである。
【0045】
酸化物固体電解質として、アニオン元素の主成分として、酸素(O)を含有することが好ましく、例えば、Li、Q元素(Qは、Nb、B、Al、Si、P、Ti、Zr、Mo、W及びSの少なくとも一種を表す。)、及びOを含有してもよい。酸化物固体電解質としては、ガーネット型固体電解質、ペロブスカイト型固体電解質、ナシコン型固体電解質、Li-P-O系固体電解質、Li-B-O系固体電解質等が挙げられる。ガーネット型固体電解質としては、例えば、LiLaZr12、Li7-xLa(Zr2-xNb)O12(0≦x≦2)、LiLaNb12等が挙げられる。ペロブスカイト型固体電解質としては、例えば、(Li、La)TiO、(Li、La)NbO、(Li、Sr)(Ta、Zr)O等が挙げられる。ナシコン型固体電解質としては、例えば、Li(Al、Ti)(PO、Li(Al、Ga)(PO等が挙げられる。Li-P-O系固体電解質としては、LiPO、LIPON(LiPOのOの一部をNに置換した化合物)、Li-B-O系固体電解質としては、LiBO、LiBOのOの一部をCで置換した化合物等が挙げられる。
【0046】
ハロゲン化物固体電解質として、Li、M及びXを含む固体電解質(MはTi、Al及びYの少なくとも1つを表し、XはF、Cl又はBrを表す。)が好適である。具体的には、Li6-3z(XはCl又はBrを表し、zは0<z<2を満たす。)、Li6-(4-x)b(Ti1-xAl(0<x<1、0<b≦1.5)が好ましい。Li6-3zの中でも、リチウムイオン伝導度に優れる点で、LiYX(XはCl又はBr表す。)がより好ましく、更にはLiYClが好ましい。また、Li6-(4-x)b(Ti1-xAl(0<x<1、0<b≦1.5)は、例えば、硫化物固体電解質の酸化分解を抑える等の観点から、硫化物固体電解質等の固体電解質とともに含まれることが好ましい。
【0047】
正極集電体は、正極活物質層の集電を行う。正極集電体は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、カーボン等が挙げられ、アルミニウム合金箔又はアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム合金箔及びアルミニウム箔は、粉末を用いて製造されてもよい。正極集電体の形状は、例えば、箔状、メッシュ状である。
【0048】
負極集電体は、負極活物質層の集電を行う。負極集電体の材料としては、例えば、銅、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。
【0049】
・電池構造
固体電池の構造は、正極/固体電解質層/負極の積層構造を有する。固体電池には、電解質として固体電解質を用いたいわゆる全固体電池が含まれ、固体電解質は電解質全量に対して10質量%未満の電解液を含んでもよい。なお、固体電解質は、無機系固体電解質とポリマー電解質を含む複合固体電解質であってもよい。
【0050】
正極は、正極活物質層と集電体とを有し、負極は、負極活物質層と集電体とを有する。
固体電解質層は、単層構造でもよいし、2層以上の多層構造でもよい。
固体電池は、例えば、図6に示す断面構造を有していてもよく、固体電解質層Bは図6のように2層構造でもよい。図6は、固体電池の一例を示す概略断面図である。図6に示す固体電池は、負極集電体113及び負極活物質層Aを含む負極と、固体電解質層Bと、正極集電体115及び正極活物質層Cを含む正極と、を有している。負極活物質層Aは、負極活物質101、導電助剤105及びバインダー109を含む。正極活物質層Cは、被覆正極活物質103、導電助剤107及びバインダー111を含み、被覆正極活物質103は、正極活物質の表面がLTAF電解質又はLiNbO電解質で被覆されている。
また、固体電池は、正極/固体電解質層/負極の積層構造の積層端面(側面)を樹脂で封止して構成されていてもよい。電極の集電体は、表面に緩衝層、弾性層、又はPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ層が配置された構成であってもよい。
【0051】
・電池
本開示におけるラミネート型電池は、典型的にはリチウムイオン二次電池である。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0052】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
2 電極体、4 ラミネートフィルム、6 支点ロール部材、10、10A ラミネート型電池、40、400 融着部、40a 先端、42、420 鋭角曲げ部、44、440 先端側領域、460 曲げ部、60 軸、62 突起、64 弾性ロール、66 対向ロール、101 負極活物質、103 被覆正極活物質、105、107 導電助剤、109、111 バインダー、113 負極集電体、115 正極集電体、A 負極活物質層、B 固体電解質層、C 正極活物質層
図1
図2
図3
図4
図5
図6