(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007475
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電動車両の車両下部構造及び車両用シート構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20250109BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B62D25/20 G
B60N2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108904
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 慎介
【テーマコード(参考)】
3B087
3D203
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087DE09
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB12
3D203DA51
3D203DA53
3D203DB05
(57)【要約】
【課題】車室内にシートレールを配置する場合と比較して、車両上下方向の高さを抑えることができ、車室空間の拡大を狙うことができる電動車両の車両下部構造及び車両用シート構造を得る。
【解決手段】電動車両の車両下部構造10は、車両のフロア12の車両下側に搭載された駆動用バッテリパック20と、車両用シート30に配設されたスライド部材58が係合可能であって、フロア12の車両下側で、かつ駆動用バッテリパック20の車両幅方向の壁部23、又は該壁部に対向する位置に設けられた少なくとも1つのシートレール26と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアの車両下側に搭載された駆動用バッテリパックと、
車両用シートに配設されたスライド部材が係合可能であって、前記フロアの車両下側で、かつ前記駆動用バッテリパックの車両幅方向の壁部、又は該壁部に対向する位置に設けられた少なくとも1つのシートレールと、
を備える電動車両の車両下部構造。
【請求項2】
前記車両の車両幅方向の両端部において車両前後方向に沿って設けられるロッカを備え、
前記シートレールは、前記車両用シートの車両幅方向外側に設けられており、前記駆動用バッテリパックの前記壁部の外側であって、かつ前記ロッカ上面に配設されている請求項1に記載の電動車両の車両下部構造。
【請求項3】
前記シートレールは、前記車両用シートの車両幅方向外側に設けられており、前記駆動用バッテリパックの前記壁部の内側に設けられている請求項1に記載の電動車両の車両下部構造。
【請求項4】
請求項1に記載の車両下部構造と、
乗員が着座するシートクッションと、
前記シートクッションの車両幅方向両側において車両下方側に向かって延在し、前記車両のフロアの側面とオーバラップして配設された一対のシート脚部と、
前記一対のシート脚部のうち前記シートレールに対応する少なくとも一方のシート脚部に設けられ、前記シートレールに沿って移動するスライド部材と、
を備える車両用シート構造。
【請求項5】
前記少なくとも一方のシート脚部は、他方のシート脚部と対向する面側に前記スライド部材が設けられている請求項4に記載の車両用シート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の車両下部構造及び車両用シート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フロアの下側に駆動用バッテリが配設された電動車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電動車両においては、バッテリが存在しているが故に、バッテリの上方位置に対応するフロア上にシートレールを設けることとなり、乗員の車両高さ方向の居住空間に改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車室内のフロア上にシートレールを配置する場合と比較して、乗員の車両高さ方向の居住空間を拡充させることができる電動車両の車両下部構造及び車両用シート構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る電動車両の車両下部構造は、車両のフロアの車両下側に搭載された駆動用バッテリパックと、車両用シートに配設されたスライド部材が係合可能であって、前記フロアの車両下側で、かつ前記駆動用バッテリパックの車両幅方向の壁部、又は該壁部に対向する位置に設けられた少なくとも1つのシートレールと、を備える。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る電動車両の車両下部構造では、少なくとも1つのシートレールが、車両用シートに配設されたスライド部材が係合可能であって、車両のフロアの車両下側に設けられ、かつ駆動用バッテリパックの車両幅方向の壁部、又は該壁部に対向する位置に設けられている。そのため、車両のフロア上にシートレールを配置する場合と比較して車両用シートの設置位置を低くすることができるので、乗員の車両高さ方向の居住空間を拡充することができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明に係る電動車両の車両下部構造は、請求項1に記載の構成において、前記車両の車両幅方向の両端部において車両前後方向に沿って設けられるロッカを備え、前記シートレールは、前記車両用シートの車両幅方向外側に設けられており、前記駆動用バッテリパックの前記壁部の外側であって、かつ前記ロッカ上面に配設されている。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係る電動車両の車両下部構造では、車両幅方向外側に設けられたシートレールが、駆動用バッテリパックの壁部の外側であって、かつロッカ上面に配設されている。そのため、シートレールが駆動用バッテリパックの壁部の外側に設けられていることにより、駆動用バッテリとの絶縁性を担保し易くすることができる。また、シートレールがロッカ上面に設けられていることにより、駆動用バッテリパックよりもロッカ側の空間を、駆動用バッテリへの荷重伝達を抑制する空間と、シートレールを配置する空間との両方に活用することができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明に係る電動車両の車両下部構造は、請求項1に記載の構成において、前記シートレールは、前記車両用シートの車両幅方向外側に設けられており、前記駆動用バッテリパックの前記壁部の内側に設けられている。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係る電動車両の車両下部構造では、シートレールが、車両用シートの車両幅方向外側に設けられており、駆動用バッテリパックの壁部の内側に設けられている。そのため、駆動用バッテリパックの外側において、新たにシートレールを配置するためのスペースを設ける必要がないので、車両幅方向の配置スペースの増加を抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載の本発明に係る車両用シート構造は、請求項1~3の何れか1項に記載の車両下部構造と、乗員が着座するシートクッションと、前記シートクッションの車両幅方向両側において車両下方側に向かって延在し、前記車両のフロアの側面とオーバラップして配設された一対のシート脚部と、前記一対のシート脚部のうち前記シートレールに対応する少なくとも一方のシート脚部に設けられ、前記シートレールに沿って移動するスライド部材と、を備える。
【0013】
請求項4に記載の本発明に係る車両用シート構造は、一対のシート脚部が、シートクッションの車両幅方向両側において車両下方側に向かって延在し、車両のフロアの側面とオーバラップして配設されている。そのため、車両のフロア上の一対のシート脚部の間に、一対のシート脚部の高さに応じた空間ができるので、例えば当該車両用シートの後側の車両用シートに着座する乗員の足下の居住空間を拡充することができる。
【0014】
請求項5に記載の本発明に係る車両用シート構造は、請求項4に記載の構成において、前記少なくとも一方のシート脚部は、他方のシート脚部と対向する面側に前記スライド部材が設けられている。
【0015】
請求項5に記載の本発明に係る車両用シート構造では、少なくとも一方のシート脚部は、他方のシート脚部と対向する面側にスライド部材が設けられているので、スライド部材がシート脚部から露出するのを防止することができるので、見栄えを良くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る電動車両の車両下部構造及び車両用シート構造は、車室内のフロア上にシートレールを配置する場合と比較して、乗員の車両高さ方向の居住空間を拡充させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両下部構造が適用された車両下部の斜め左方向から見た斜視図である。
【
図5】
図3に対応する他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る車両下部構造について図面に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、及び矢印LHは、それぞれ本発明の一実施形態に係る車両下部構造が適用された車両の前方向、上方向、及び左方向を示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、前方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0019】
本実施形態の車両下部構造10が適用される車両は、例えば図示しない電動機(モータ)を駆動源として走行する電気自動車、ガソリンハイブリット車、燃料電池ハイブリット車等であり、車両のフロアを構成するフロアパネル12の車両下側に、電動機へ供給する電力を蓄電する駆動用バッテリパック20が配置されている。
【0020】
(車両下部構造の構成)
図1~
図3に示されるように、本実施形態に係る車両下部構造が適用された車両下部10には、車両幅方向及び車両前後方向に沿ってフロアパネル12が延在されている。本実施形態においては、このフロアパネル12が車両の床面であるフロアを構成している。また、フロアパネル12の車両幅方向の両端には、車両前後方向に沿ってロッカ14がそれぞれ延在されている。なお、各図において、車両幅方向左側のロッカ14のみが記載されており、右側のロッカ14については図示が省略されている。以下では、車両幅方向左側のロッカ14について説明し、右側のロッカ14については左側のロッカ14と同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0021】
ロッカ14は、車体側部における車体下部の骨格を構成する骨格部材であり、車両前後方向に延びている。
図3に示されるように、ロッカ14は、車両幅方向の外側に配置されたアウタ部15と、車両幅方向の内側に配置されたインナ部16と、アウタ部15とインナ部16との間に配置されたロッカリインフォースメント17と、を含んで構成されている。ロッカリインフォースメント17によって、アウタ部15とインナ部16とが補強されている。なお、
図3において、ロッカ14は模式的に記載されている。ロッカ14は、例えば、アルミニウム合金等の金属によって形成されており、アウタ部15とインナ部16とロッカリインフォースメント17とは、溶接等によって結合されている。なお、ロッカ14は、アウタ部15、インナ部16、ロッカリインフォースメント17とが、鋳造加工や、押出し加工、引抜き加工などによって一体形成されていてもよい。
【0022】
また、
図3に示されるように、本実施形態において、ロッカ14の車両外側面は、樹脂等からなる意匠部品であるロッカモール18により覆われている。ロッカモール18は、車両幅方向に沿って切断された断面形状において、上下方向に沿って形成されたカバー部18Aを備えている。また、ロッカモール18は、カバー部18Aの車両上側に設けられ、車両幅方向の内側へ向かうにつれて上方側へ向かって傾斜する上カバー部18Bを備えている。さらに、ロッカモール18は、車両幅方向の内側へ向かって延在された下カバー部18Cを備えている。上カバー部18Bは、車両前後方向に一部において、上端に、車両幅方向の内側に向かって略直角に屈折された上端部18Dを備えており、この上端部18Dにより後述する脚部フレーム56が挿通するカバー挿通孔18Eが形成されている。
【0023】
フロアパネル12は、平坦状に形成された平坦部12Aと、平坦部12Aの両端から下方に向かって斜め外側に延在された斜辺部12Bとを備えている。斜辺部12Bは、フロアパネル12がロッカモール18に載置された際に、上カバー部18Bと同じ角度で傾斜するように形成されている。
【0024】
また、カバー挿通孔18Eは、車両前後方向に延在して形成されており、本実施形態では、カバー挿通孔18Eに後述する脚部フレーム56が挿通された後で、フロアパネル12とロッカモール18とがボルト等によって結合される。なお、フロアパネル12とロッカモール18とは、
図1に示されるように、カバー挿通孔18Eが形成されていない箇所において固定される。また、
図3は、模式的に記載されている。例えば、
図3においては、ロッカ14とロッカモール18とは、離れて記載されているが、実際には、ロッカモール18はロッカ14に当接して固定されている。
【0025】
図1に戻り、フロアパネル12の上面には、車両用シート30が配置されている。なお、各図においては、車両幅方向の左側に配設された前側の車両用シート30のみが記載されているが、実際には、車両幅方向の右側にも前側の車両用シート30が配置されている。また、前側の車両用シート30の車両後方側には、一例としてベンチシート等の後側の車両用シート(図示省略)が配置されている。なお、後側の車両用シートは、2列目のみに設けていてもよいし、2列目及び3列目に設けていてもよい。また、後側の車両用シートはベンチシートに限られず、公知の構造のシートを配置することができる。
【0026】
図1に示されるように、フロアパネル12の上面において、左右の前側の車両用シート30の間には、センタコンソール40が設けられている。センタコンソール40は、インストルメントパネル(図示省略)の車両幅方向中央部と連続して設けられており、車両幅方向の両端が各々左側の車両用シート30と右側の車両用シート30の側方に位置するように設けられている。センタコンソール40の上面には、図示は省略するが、一例として、カップホルダ、カーナビゲーションや音響機器等の車両電子機器を操作可能な操作部が設けられていてもよいし、コンソールボックスが設けられていてもよい。コンソールボックスが設けられている場合には、コンソールボックスの上部に、当該上部を覆うように車両前後方向に延在されたアームレストを配置してもよい。この場合、アームレストの後端部又は側端部は、コンソールボックスに対して回動可能に設けられ、アームレストがコンソールボックスを開閉する蓋体として機能する。
【0027】
また、
図3に示されるように、フロアパネル12の車両下側には、モータ等のパワーユニットに電力を供給するための駆動力供給装置として駆動用バッテリパック20が配置されている。駆動用バッテリパック20は、その外殻を構成するバッテリパックケース22及びバッテリパックケース22の内側に配置されたバッテリ24を含んで構成されている。
【0028】
バッテリパックケース22は、バッテリ24を車両上側から覆うバッテリアッパケース22Aと、バッテリ24を車両下側から覆うバッテリロアケース22Bとを備えており、バッテリ24は、バッテリアッパケース22Aとバッテリロアケース22Bとにより車両上下方向から覆われるようにしてバッテリパックケース22内に収納されている。バッテリパックケース22は、車両幅方向左右両側のロッカ14の間において車両幅方向に延在されており、車両前側の左右の車両用シート30の下側に配置されている。また、バッテリパックケース22は、少なくとも車両前側の左右の車両用シート30を含むようにして車両前後方向に延在されている。
【0029】
バッテリアッパケース22Aは、一例として、軽金属又は鋼板製であり、バッテリロアケース22Bは、一例として鋼板製である。バッテリアッパケース22Aの車両幅方向の両側の壁部23の外側であって、かつロッカ14側には、各々、車両前後方向を長手方向とした略長尺状を有するシートレール26が設けられており、シートレール26は、一例として、ボルト等によってロッカ14の上面に締結されている。なお、シートレール26は、ロッカ14と一体的に形成されていてもよい。シートレール26は、車両用シート30の後述するスライド部材58が係合可能に構成されている。シートレール26は、一例として、縦断視で略水平に延在する下面部と、下面部の車両幅方向両端部から車両上方側へ延在する側壁部とを備えており、車両上方側へ開放された略C字状の開断面を有している。すなわち、車両上側が開放され、車両前後方向に延在する凹部26Aを備えている。
【0030】
バッテリ24は、図示しない複数のバッテリパックモジュールを含んで構成されている。バッテリモジュールは、例えば多数の電池セルが積層されてなる電池スタック、電池スタックを収容する金属ケース、電池スタックの上に配置された各種の電気部品などから構成されている。電池セルは充放電可能な二次電池、例えばリチウムイオン二次電池である。金属ケースは、例えばアルミなどの軽金属製である。
【0031】
バッテリモジュール(図示省略)はバッテリロアケース22Bの上に一定の間隔を空けて一方向に並べて載置されている。バッテリアッパケース22Aはバッテリロアケース22Bの上に並べられたバッテリモジュールの上面を覆っている。なお、バッテリアッパケース22Aの上面には車両の骨格を形成するアッパークロスメンバ(図示省略)が取り付けられており、バッテリロアケース22Bの下面には車両の骨格を形成するロワークロスメンバ(図示省略)が取り付けられている。
【0032】
バッテリロアケース22Bは、一例として、衝撃吸収部(図示省略)を介してボルト等によりロッカ14に締結されている。また、ロッカ14内部に衝撃吸収構造が設けられている場合には、バッテリロアケース22Bは、ボルト等によりロッカ14に締結される。なお、衝撃吸収部及び衝撃吸収構造としては、例えば断面梯子形状等に形成された公知の構造を使用することができる。
【0033】
(車両用シート構造の構成)
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る車両用シート30は、乗員が着座する(乗員の臀部及び大腿部を支持する)シートクッション32と、乗員の背部を支持する、すなわち背もたれを構成するシートバック34と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト36と、を備えている。シートバック34は、シートクッション32の車両後端部から立設されており、シートクッション32に対して回動可能とされたリクライニング機能を備えている。なお、リクライニング機能としては、公知の技術を使用できるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0034】
また、車両用シート30は、一対のシート脚部50を備えている。一対のシート脚部50は、車両幅方向の外側の外シート脚部50Aと、内側の内シート脚部50Bとを備えている。外シート脚部50A及び内シート脚部50Bは、シートクッション32の車両幅方向両側において車両下方側に向かって延在し、
図2に示されるように、フロアパネル12の側面とオーバラップして配設されている。具体的には、
図2に示されるように、外シート脚部50A及び内シート脚部50Bは、車両下方向の下端部52が上述したロッカモール18に設けられたカバー挿通孔18Eを覆うように配置されている。なお、本実施形態においては、一例として、フロアパネル12はセンタコンソール40の側部に車両前後方向に延在する開口(図示省略)を有しており、内シート脚部50Bは、この開口に挿入されることによりフロアパネル12の開口を形成する側面とオーバラップして配設される。
【0035】
図3に示されるように、一対のシート脚部50(外シート脚部50A)は、外面を覆う、樹脂等からなる意匠部品である脚部モール54を備えている。外シート脚部50Aを覆う脚部モール54の車両下側の下端は、上述したロッカモール18のカバー挿通孔18Eを覆うように位置している。すなわち、
図1及び
図2に示されるように、脚部モール54が位置していない箇所においては、車両外側からカバー挿通孔18Eが視認できるように形成されている。
【0036】
また、外シート脚部50Aは、シートクッション32の骨格を形成するシートパン(図示省略)の車両幅方向の外側に接続され、外シート脚部50Aの骨格を形成する脚部フレーム56を備えている。脚部フレーム56は、一例としてステンレス製であり、シートパンの下端から車両下側に向かって延在する上フレーム56Aと、上フレーム56Aの下端部から車両幅方向の内側へ向かって延在する中間フレーム56Bと、中間フレーム56Bの端部から下方側へ向かって延在する下フレーム56Cとを備えている。
【0037】
外シート脚部50Aの下フレーム56Cの下端には、上述したシートレール26の凹部26Aに係合するスライド部材58が設けられている。すなわち、外シート脚部50Aに設けられたスライド部材58は、中間フレーム56B及び下フレーム56Cを介して、内シート脚部50Bと対応する面に設けられている。
【0038】
スライド部材58は、車両前後方向に延在されており、シートレール26の凹部26Aよりも短い長さとされている。スライド部材58は、一例として、スライド部材58とシートレール26との間にボールベアリング等を設けることにより、シートレール26に対してスライド可能に構成されている。すなわち、スライド部材58は、シートレール26に沿って移動する。なお、スライド可能な構造については、公知の技術を使用することができることとし、ここでの詳細な説明は省略する。
【0039】
内シート脚部50Bは、シートクッション32の骨格を形成するシートパン(図示省略)の車両幅方向の内側に接続され、内シート脚部50Bの骨格を形成する脚部フレームを備えている。脚部フレームは、一例としてステンレス製であり、シートパンの下端から車両下側に向かって延在しており、下端部にスライド部材58が設けられている。なお、本実施形態においては、一例として内シート脚部50B側のスライド部材58に係合する凹部56Aを有するシートレールは、図示は省略するが、上述したフロアパネル12の開口の車両下端に位置するバッテリアッパケース22Aの上面に設けられている。
【0040】
(車両下部構造の作用及び効果)
次に、本実施の形態に係る車両下部構造10及び車両用シート30構造の作用及び効果について説明する。
【0041】
本実施形態に係る電動車両の車両下部構造10では、車両幅方向外側のシートレール26が、車両用シート30に配設されたスライド部材58が係合可能であって、車両のフロアパネル12の車両下側に設けられ、かつ駆動用バッテリパック20の車両幅方向の壁部23に対向する位置に設けられている。そのため、車両のフロアパネル12上にシートレール26を配置する場合と比較して車両用シート30の設置位置を低くすることができるので、乗員の車両高さ方向の居住空間を拡充することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る電動車両の車両下部構造10では、車両幅方向外側に設けられたシートレール26が、駆動用バッテリパック20の壁部23の外側であって、かつロッカ14側に設けられている。そのため、シートレール26が駆動用バッテリパック20の壁部23の外側に設けられていることにより、バッテリ24との絶縁性を担保し易くすることができる。また、シートレール26がロッカ14上面に設けられていることにより、駆動用バッテリパック20よりもロッカ14側の空間を、バッテリ24への荷重伝達を抑制する空間と、シートレール26を配置する空間との両方に活用することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る車両用シート30の構造では、一対のシート脚部50が、シートクッション32の車両幅方向両側において車両下方側に向かって延在し、車両のフロアパネル12の側面とオーバラップして配設されている。そのため、車両のフロアパネル12上の一対のシート脚部50の間に、一対のシート脚部50の高さに応じた空間ができるので、例えば車両用シート30の後側の車両用シートに着座する乗員の足下の居住空間を拡充することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る車両用シート30の構造では、外シート脚部50Aは、内シート脚部50Bと対向する面側にスライド部材58が設けられているので、スライド部材58が外シート脚部50Aから露出するのを防止することができる。これにより、見栄えを良くすることができる。
【0045】
なお、上記実施形態においては、車両幅方向外側のシートレール26が、駆動用バッテリパック20の壁部23に対向する位置に設けられているが、本発明はこれに限られない。ここで、
図4に
図3に対応する変形例を、
図5に
図3に対応する他の変形例を示す。例えば、
図4に示されるように、シートレール26が、駆動用バッテリパック20の壁部23の外側の側面に設けられていてもよい。この場合、シートレール26は、一例としてボルトなどによって壁部23に締結される。この場合、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0046】
また、
図5に示されるように、シートレール26が、駆動用バッテリパック20のバッテリロアケース22Bの壁部23Bの内側に設けられていてもよい。この場合、シートレール26の車両上側に位置するバッテリアッパケース22Aに、下フレーム56Cが挿通する挿通孔59を設け、挿通孔59からスライド部材58が挿入される。なお、挿通孔59は、車両前後方向に延在されている。
【0047】
変形例に示される車両下部構造10では、シートレール26が、駆動用バッテリパック20の壁部23Bの内側に設けられている。そのため、駆動用バッテリパック20の外側において新たにシートレール26を配置するためのスペースを設ける必要がないので、車両幅方向の配置スペースの増加を抑制することができる。
【0048】
(本実施形態の補足事項)
以上の実施形態では、
図3及び
図4に示されるように、シートレール26の凹部26Aは、上方側が開放されるように配設されているが、本発明はこれに限られない。例えば、
シートレール26の凹部26Aは、車両幅方向の外側が開放されるように配設されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、一例として内シート脚部50B側のスライド部材58に係合する凹部56Aを有するシートレールは、上述したフロアパネル12の開口の車両下端に位置するバッテリアッパケース22Aの上面に設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば、駆動用バッテリパック20が車両幅方向に複数並んで配置されている場合には、内シート脚部50B側のシートレールも外シート脚部50Aのシートレール26と同様に構成にすることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10 車両下部構造
12 フロアパネル(車両のフロア)
14 ロッカ
20 駆動用バッテリパック
23 壁部
23B 壁部
26 シートレール
30 車両用シート
50 一対のシート脚部
50A 外シート脚部(一方のシート脚部)
50B 内シート脚部(他方のシート脚部)
58 スライド部材