(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007530
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電動バイス
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20250109BHJP
B25B 1/10 20060101ALI20250109BHJP
B25B 1/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B23Q3/06 301L
B25B1/10 Z
B25B1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108987
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591231867
【氏名又は名称】共和電機工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】多田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】植村 恭成
(72)【発明者】
【氏名】大島 弘三
【テーマコード(参考)】
3C016
3C020
【Fターム(参考)】
3C016CA08
3C016CC01
3C020BB03
3C020CC02
3C020CC06
3C020GG03
3C020GG06
(57)【要約】
【課題】
本発明は、ネジ軸をモータで回転させて可動ジョーを移動させ、固定ジョーとの間でワークをクランプする電動バイスにおいて、過大なクランプ力の作用によるワーク等の破損を防止すると共に、所望のクランプ力でワークをクランプすることが可能な構成を提供する。
【解決手段】
電動バイスは、ネジ軸に連結される中空軸と、クラッチ機構で中空軸に連結される回転推進軸と、中空軸に収容される増締め機構とを備え、回転推進軸をモータで回転させることで、クラッチ機構が連結状態では中空軸を回転させ、解除状態では増締め機構による増締め動作が行われるように構成される。そして、電動バイスは、回転推進軸に作用するトルクを検出するトルク検出器と、モータの駆動を制御する制御装置とを備え、制御装置が、トルク検出値に基づいてクラッチ機構の解除状態を検出するクラッチ切れ検出器と、停止条件に基づいて増締め動作を制御する増締め制御器とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークをクランプする固定ジョー及び可動ジョーと、前記可動ジョーを軸線方向に移動させるネジ軸と、前記ネジ軸の一端部に対し相対回転不能に連結される中空円筒状の中空軸であって本体フレームに対し回転可能に支持される中空軸と、クラッチ機構を介して前記中空軸に連結される回転推進軸と、前記中空軸内に収容される増締め機構とを備え、
前記回転推進軸を回転させることで、前記クラッチ機構が連結状態で前記クラッチ機構を介して前記中空軸を回転させ、前記クラッチ機構が解除状態で前記ネジ軸を介して前記可動ジョーに対しクランプ力を作用させる前記増締め機構による増締め動作が行われる電動バイスであって、
前記回転推進軸を回転駆動するモータと、
前記回転推進軸に作用するトルクを検出するトルク検出器と、
前記モータの駆動を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、前記トルク検出器で検出したトルク検出値に基づいて前記クラッチ機構が前記解除状態となったことを検出するクラッチ切れ検出器と、予め設定された停止条件に基づいて前記増締め動作を制御する増締め制御器とを備える
ことを特徴とする電動バイス。
【請求項2】
前記クラッチ切れ検出器は、前記トルク検出値の微分値を求める演算器と、前記微分値に基づいて前記解除状態となったことを判断する判断器とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電動バイス。
【請求項3】
前記制御装置は、前記クラッチ切れ検出器で前記解除状態が検出された時点での前記モータの駆動量に基づいて前記軸線方向における前記固定ジョーと前記可動ジョーとの間隔を求める算出器と、前記間隔と予め設定されたワーク寸法とを比較して前記ワークのクランプの適否を判定する判定器とを備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動バイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定ジョー及び可動ジョーと、可動ジョーを軸線方向に移動させるネジ軸と、ネジ軸を回転させるモータとを備え、モータでネジ軸を回転させることで可動ジョーを移動させて固定ジョーとの間でワークをクランプする電動バイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前記の電動バイス(万力)が開示されている。また、その特許文献1に開示された電動バイスは、モータに供給される電流を測定し、その電流の測定値(供給電流値)に基づいてモータの駆動を制御するように構成されている。具体的には、ワークをクランプすべくモータを駆動して可動ジョーを固定ジョー側へ移動させた上で、前記供給電流値と予め設定された閾値とを比較し、前記供給電流値が閾値を超えたことが検出された時点で、モータの駆動を停止するようにその制御が行われている。そして、そのような制御によってモータの駆動が停止した時点を、ワークのクランプが完了した時点としている。
【0003】
なお、そのモータの制御について、前記した電流の測定は、可動ジョーがワークに作用させる力(ワークに対するクランプ力)を把握するためのものである。詳しくは、モータで可動ジョーを駆動してワークにクランプ力を作用させる結果として、その反力が可動ジョー(モータ)に対し負荷(負荷トルク)として作用する。そして、前記供給電流値がその負荷トルクに応じたものとなる(負荷トルクの上昇に伴って前記供給電流値が上昇する)ことから、クランプ力を前記供給電流値から把握できるものである。また、前記供給電流値が負荷トルク(モータの出力トルク)と比例していることから、その電流の測定は、モータの出力トルクの検出を代替するものである。
【0004】
そして、特許文献1では、そのようなモータの出力トルクに応じた力をクランプ力としてワークに対し作用させ続ける電動バイスにおいて、前記のような閾値による制御を行うことで、ワークに対するクランプ力が過大とならない状態でクランプが完了され(モータが停止され)、ワークの傷つき等が防止されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電動バイスにおいては、実際にワークに作用するクランプ力が、ジョーとワークとの間での切粉の噛み込みやネジ軸の給脂状態、ワークの設置状態等が原因で、前記したモータの出力トルクに応じて想定されるクランプ力とは異なる場合がある。すなわち、前記原因によって実際のクランプ力が想定のクランプ力に対し上下にばらつく場合がある。そのため、実際のクランプ力が想定のクランプ力よりも低くなる場合も想定し、そのように実際のクランプ力が低くなった場合でも十分なクランプ力が得られるように、前記した閾値は、想定のクランプ力に基づいて定められる値よりも大きい値に設定する必要がある。
【0007】
しかし、実際のクランプ力は、想定のクランプ力よりも大きくなる場合もある。そのため、前記のように閾値を設定した場合において、実際のクランプ力が想定のクランプ力よりも大きくなってしまった場合には、ワークに対し過大なクランプ力が作用する状態となってしまい、ワークやバイスの破損を招いてしまう虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、ワークに過大なクランプ力が作用することによるワークやバイスの破損を可及的に防止すると共に、所望のクランプ力で確実にワークをクランプした状態とすることが可能な電動バイスの構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明の電動バイスは、ワークをクランプする固定ジョー及び可動ジョーと、可動ジョーを軸線方向に移動させるネジ軸と、ネジ軸の一端部に対し相対回転不能に連結される中空円筒状の中空軸であって本体フレームに対し回転可能に支持される中空軸と、クラッチ機構を介して中空軸に連結される回転推進軸と、中空軸内に収容される増締め機構とを備え、回転推進軸を回転させることで、クラッチ機構が連結状態でクラッチ機構を介して中空軸を回転させ、クラッチ機構が解除状態でネジ軸を介して可動ジョーに対しクランプ力を作用させる増締め機構による増締め動作が行われるように構成されている。
【0010】
その上で、本発明の電動バイスは、回転推進軸を回転駆動するモータと、回転推進軸に作用するトルクを検出するトルク検出器と、モータの駆動を制御する制御装置とを備え、制御装置が、トルク検出器で検出したトルク検出値に基づいてクラッチ機構が解除状態となったことを検出するクラッチ切れ検出器と、予め設定された停止条件に基づいて前記増締め動作を制御する増締め制御器とを備えている。
【0011】
なお、ここで言う「停止条件」とは、クラッチ機構が前記解除状態となってからの回転推進軸の移動量に応じたモータの駆動量を特定する条件(例えば、回転回数や駆動時間、出力トルクの閾値等)を言う。
【0012】
また、そのような本発明による電動バイスにおいて、クラッチ切れ検出器が、トルク検出値の微分値を求める演算器と、微分値に基づいて前記解除状態となったことを判断する判断器とを備えるように構成されても良い。さらに、制御装置が、クラッチ切れ検出器で解除状態が検出された時点でのモータの駆動量に基づいて前記軸線方向における固定ジョーと可動ジョーとの間隔を求める算出器と、前記間隔と予め設定されたワーク寸法とを比較してワークのクランプの適否を判定する判定器とを備えるように構成されても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動バイスによれば、初期状態ではクラッチ機構が連結状態となっており、その状態でモータによる回転推進軸の回転駆動を開始することにより、クラッチ機構を介して中空軸が回転されてネジ軸が回転される。それにより、可動ジョーがワーク側へ移動してワークに当接し、ワークに対し可動ジョーがクランプ力を作用させる状態となる。その上で、モータによる回転推進軸の回転駆動が更に継続されると、反力として可動ジョーに作用する負荷が上昇し、その負荷がクラッチ機構において想定された負荷を超えるとクラッチ機構が解除状態となる。そして、そのクラッチ機構の解除状態では、回転推進軸が回転駆動されても中空軸(ネジ軸)は回転せず、回転推進軸がその回転量に応じた分だけネジ軸側へ移動し、増締め機構を介して増力された力でネジ軸がワーク側へ押圧された状態となる。
【0014】
その上で、本発明の電動バイスにおいては、クラッチ切れ検出器により、前記負荷に応じて回転推進軸に作用するトルクの検出値(トルク検出値)に基づいて、クラッチ機構が解除状態となったとみなされる時点(解除時点)が検出される。その上で、その解除時点以降では、その解除時点よりも前とは異なる態様でモータの制御が行われる。具体的には、前記解除時点以降では、最終的に所望のクランプ力が得られるような回転推進軸の移動量を生じさせる回転推進軸の回転量を踏まえ、予め設定された停止条件に基づいてモータの駆動が制御される。
【0015】
このように、本発明の電動バイスにおいては、前記解除時点でモータの制御態様を切り換えると共に、前記解除時点以降では、回転推進軸の移動量に応じたモータの駆動量を踏まえて設定された停止条件に基づき、そのモータの制御が行われる。そして、そのモータの駆動量(回転推進軸の移動量)については適切に制御することが可能であることから、そのような本発明の電動バイスによれば、実際のクランプ力とは異なる可能性のある想定のクランプ力に応じた出力トルクに基づいてモータを制御して最終的なクランプ力を得ようとする従来の電動バイスと比べ、クランプ状態でのクランプ力を適切な大きさとすることができる。それにより、最終的なワークのクランプ状態をより適切なものとし、ワークやバイスの破損等を可及的に防止することができる。
【0016】
また、本発明による電動バイスにおいては、クラッチ機構との関係で、前記トルクは、ワークに対し可動ジョーが当接してから徐々に上昇していき、前記解除状態となった時点で0に変化する。そこで、そのような電動バイスにおいて、クラッチ切れ検出器を、トルク検出値の微分値を求める演算器と、微分値に基づいて前記解除状態となったことを判断する判断器とを備えるように構成することにより、クラッチ機構が前記解除状態となった時点の検出がより正確に行われるようになる。
【0017】
さらに、クラッチ切れ検出器で解除状態が検出された時点での固定ジョーと可動ジョーとの間隔を求める算出器、及びその求められた間隔と予め設定されたワークの寸法とを比較してワークのクランプの適否を判定する判定器を制御装置が備えることにより、前記解除時点においてワークがクランプされた状態(ワークが両ジョーに当接した状態)となっているか否かが判定される。それにより、電動バイスにおいて、ワークのクランプの適否を自動的に判断できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る一実施形態の電動バイスにおいて、その全体を示す側面断面図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態の電動バイスにおいて、その初期状態における要部拡大断面図である。
【
図3】本発明に係る一実施形態の電動バイスにおいて、増締め動作が完了した状態における要部拡大断面図である。
【
図4】
図2に対し、本体フレームに支持される部分を示す外形図で示す。
【
図5】本発明に係る一実施形態の電動バイスにおいて、その全体を示す上面図である。
【
図6】本発明に係る一実施形態の電動バイスにおけるブロック図である。
【
図7】本発明に係る一実施形態の電動バイスにおいて、電動バイスでワークをクランプした際のトルク波形図である。
【
図8】本発明に係る別の実施形態の電動バイスにおけるブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下では、
図1~
図7に基づき、本発明の電動バイスの一実施形態(実施例)について説明する。
【0020】
電動バイス1は、工作機械等の設置面上に固定される筐体状の本体フレーム3と、ワークWをクランプするための固定ジョー5及び可動ジョー7とを備えている。また、電動バイス1は、可動ジョー7が取り付けられるスライドブロック9と、スライドブロック9を本体フレーム3の長手方向に移動させるためのネジ軸10とを備えている。
【0021】
固定ジョー5は、前記長手方向における一端側において、本体フレーム3の上面に対し、ネジ部材により固定されている。また、可動ジョー7は、本体フレーム3の上面上において、前記長手方向において固定ジョー5と対向するように設けられている。さらに、スライドブロック9は、本体フレーム3の内部の空間において、前記長手方向に摺動可能に設けられている。そして、可動ジョー7は、本体フレーム3の上面に形成された貫通溝を介して、ネジ部材によりスライドブロック9と連結されている。
【0022】
また、ネジ軸10は、その軸線が前記長手方向と平行を成すような向きで、本体フレーム3の内部に設けられている。なお、スライドブロック9には、その摺動方向に貫通する雌ネジ孔が形成されている。そして、スライドブロック9は、その雌ネジ孔においてネジ軸10と螺合している。それにより、電動バイス1においては、ネジ軸10が正転/逆転されることにより、スライドブロック9が前記長手方向(ネジ軸10の軸線方向)に移動し、それに伴って可動ジョー7が固定ジョー5に対し接近/離間するようになっている。
【0023】
また、電動バイス1は、ネジ軸10を回転させるための中空軸20及び回転推進軸30を備えている。なお、中空軸20は、ネジ軸10に連結される軸として設けられており、また、回転推進軸30は、中空軸20に連結されると共に後述のモータによって回転駆動される軸として設けられている。
【0024】
それらのうち、中空軸20は、中空円筒状の軸部材であって、軸線方向における中間部分に径方向の外側に向けて突出するように形成されたフランジ部20aを有している。そして、中空軸20は、そのフランジ部20aにおいて、本体フレーム3に対し回転可能に支持されている。
【0025】
より詳しくは、本体フレーム3は、その一端側(固定ジョー5とは反対側)に、中空軸20を支持するための支持部材3aを有している。その支持部材3aは、中空軸20を収容するための貫通孔を有するブロック状の部材である。そして、支持部材3aは、その貫通孔の中心線を前記長手方向に一致させる向きで設けられ、本体フレーム3の端部を構成している。なお、その支持部材3aと中空軸20との関係について、中空軸20におけるフランジ部20aの外径は、支持部材3aの貫通孔の内径に対し、その貫通孔の内周面に摺接する程度に僅かに小さい大きさとなっている。そして、支持部材3aは、その貫通孔内に、内周面の全周に亘って径方向の内側に向けて突出するように形成されると共にその内側に中空軸20を配置可能な円環状の突出部3bを有している。
【0026】
その上で、中空軸20は、前記長手方向に関しフランジ部20aが支持部材3aの突出部3bに対し固定ジョー5側で対向する配置で、フランジ部20aの外周面において支持部材3a(本体フレーム3)に対し相対回転可能に支持されている。なお、フランジ部20aと突出部3bとの間にスラストメタルが介装されると共に、フランジ部20aに対するスラストメタルとは反対側に止め輪が支持部材3aに固定されて設けられている。それにより、中空軸20は、前記のように回転可能に支持された状態で、前記長手方向に関し、移動が規制されて位置決めされた状態となっている。
【0027】
また、中空軸20は、中空円筒状の部材であることから貫通孔を有しており、その貫通孔における一端側の内周面には雌ネジが形成されている。そして、その中空軸20の一端には、貫通孔の雌ネジに螺合されるかたちで円環状のリング部材14が内装されている。なお、中空軸20とリング部材14とは、六角穴付ボルトによって相対回転不能に固定されている。
【0028】
また、リング部材14の貫通孔におけるネジ軸10側の部分は、六角孔となっている。また、ネジ軸10の一端部は、そのリング部材14の六角孔に対応する六角形状に形成されている。その上で、リング部材14の貫通孔(六角孔の部分)に対しネジ軸10の一端部が嵌挿されており、それによってネジ軸10とリング部材14とは相対回転不能な状態となっている。したがって、ネジ軸10と中空軸20とは、そのリング部材14を介して相対回転不能に連結された状態となっている。
【0029】
また、ネジ軸10の一端には、付勢軸12が摺動可能なかたちで挿入されている。なお、付勢軸12は、その一端がネジ軸10に挿入された状態で、他端側の部分がリング部材14から突出した状態となっている。その上で、付勢軸12は、そのリング部材14から突出した他端側の部分にフランジ部を有している。また、そのフランジ部の外径は、中空軸20の貫通孔の内周面に対し摺接可能な程度の大きさとなっている。したがって、付勢軸12は、そのフランジ部において、前記長手方向に関し、リング部材14と対向した状態となっている。その上で、付勢軸12のフランジ部とリング部材14との間には、複数の皿バネが介装されている。それにより、付勢軸12は、その皿バネの弾性力によって固定ジョー5側とは反対側へ付勢された状態となっている。
【0030】
なお、中空軸20は、前記のように一端側でネジ軸10に連結された状態では、その他端側が支持部材3aから突出した状態となっている。そして、その中空軸20の他端には、丸ナット22が内嵌されている。そして、その丸ナット22は、六角穴付ボルトによって中空軸20に対し相対回転不能に固定されている。
【0031】
回転推進軸30は、中空軸20(丸ナット22)に連結される主体部31と、主体部31の一端に連続するように形成されて主体部31よりも小径の小径部32とを有している。また、回転推進軸30は、その軸線方向における主体部31の中間部分よりも他端側(小径部32とは反対側)において主体部31の外周面から突出するように形成されたフランジ部33を有している。さらに、主体部31には、そのフランジ部33よりも小径部32側において、外周面上に雄ネジが形成されている。
【0032】
そして、回転推進軸30は、前記長手方向において主体部31に対して小径部32が固定ジョー5側となる向きで、主体部31における雄ネジが丸ナット22の雌ネジ孔に螺合されることで、丸ナット22を介して中空軸20に対し支持された状態とされている。したがって、回転推進軸30は、少なくともフランジ部33及びそのフランジ部33よりも他端側の部分が中空軸20(丸ナット22)から突出した状態となっている。
【0033】
その上で、中空軸20と回転推進軸30との間にはクラッチ機構40が設けられている。それにより、回転推進軸30が回転駆動された際に、その回転推進軸30の回転がクラッチ機構40を介して中空軸20に伝達されるようになっている。
【0034】
そのクラッチ機構40について、詳しくは、回転推進軸30の小径部32には、中空円筒状のクラッチリング41が外嵌されている。但し、クラッチリング41と小径部32との間にはキーが介装され、クラッチリング41は、回転推進軸30に対し相対回転不能であると共に、軸線方向に移動可能に設けられている。なお、そのクラッチリング41は、軸線方向における一端側(固定ジョー5側とは反対側)の部分が、それ以外の部分よりも大径の(円盤状の)クラッチ部として形成されている。また、そのクラッチ部の外径は、回転推進軸30における主体部31の外径よりも大きくなっている。したがって、クラッチリング41は、回転推進軸30(小径部32)に外嵌された状態で、そのクラッチ部において丸ナット22と対向した状態となっている。
【0035】
また、回転推進軸30における小径部の先端には、円盤状のベアリングホルダ43がネジ部材によって固定されている。なお、ベアリングホルダ43の外径は、クラッチリング41の他端側の部分(クラッチ部以外の部分)の外径よりも大きくなっている。したがって、ベアリングホルダ43は、その外周側の部分においてクラッチ部と対向した状態となっている。その上で、そのベアリングホルダ43とクラッチリング41のクラッチ部との間には、圧縮バネ42が設けられている。それにより、クラッチリング41がその圧縮バネ42の弾性力によって丸ナット22側に付勢された状態となっている。
【0036】
なお、クラッチリング41のクラッチ部における丸ナット22側の端面には、周方向に間隔を置いて複数の係合突起が形成されている。一方で、丸ナット22におけるクラッチリング41側の端面には、クラッチリング41(クラッチ部)における係合突起に対応する複数の係合溝が形成されている。したがって、電動バイス1における初期状態(ワークWをクランプしていない状態)においては、前記のように圧縮バネ42によってクラッチリング41が丸ナット22側に付勢されているのに伴い、クラッチリング41の係合突起と丸ナット22の係合溝とが係合すると共に、その係合状態が維持された状態となる。その結果として、回転推進軸30と中空軸20とが連結された状態となる。
【0037】
そして、回転推進軸30は、前述のようにモータMによって回転駆動される。すなわち、電動バイス1は、回転推進軸30を駆動するためのモータMを備えている。そして、そのモータMは、本体フレーム3の側方において、出力軸が回転推進軸30と平行を成すと共に、その出力軸が固定ジョー5に対する可動ジョー7の側となるような向きで設けられている。
【0038】
その上で、電動バイス1は、そのモータMの出力軸と回転推進軸30とを連結するための駆動伝達機構50を備えている。さらに、電動バイス1は、モータM及び駆動伝達機構50を本体フレーム3に対して支持された状態とするための連結フレーム60を備えている。なお、連結フレーム60は、ベースとなる板状の基部61であって、本体フレーム3に取り付けられると共にモータM及び駆動伝達機構50を支持する基部61を有している。但し、その基部61は、板厚方向の端面が本体フレーム3の幅方向(ネジ軸10の軸線方向と直交する方向)と平行を成した状態で、本体フレーム3の支持部材3aに支持されている。また、連結フレーム60は、基部61に取り付けられるカバー部であって、モータM及び駆動伝達機構50を覆うカバー部を有している。
【0039】
駆動伝達機構50は、モータMの出力軸に対しカップリングを介して連結された駆動軸51、並びに回転推進軸30に対し伝達軸53及びカップリングを介して連結された従動軸52を有している。さらに、駆動伝達機構50は、駆動軸51に取り付けられるプーリ55、従動軸52に取り付けられるプーリ56、及び両プーリ55、56を連結するベルト57を有している。なお、伝達軸53は、回転推進軸30の他端に形成された収容溝に嵌装されるかたちで、回転推進軸30に対し連結されている。また、駆動軸51及び従動軸52は、連結フレーム60における基部61を貫通するように設けられており、基部61に対し軸受(図示略)を介して回転可能に支持されている。そして、プーリ55、56は、基部61よりも先端側において、それぞれ駆動軸51及び従動軸52に取り付けられている。
【0040】
そして、以上のような構成によれば、その前記初期状態でモータMによって回転推進軸30が回転駆動されると、中空軸20が回転されるため、それに伴ってネジ軸10が回転してスライドブロック9に連結された可動ジョー7が固定ジョー5側へ移動することとなる。また、そのように可動ジョー7が移動して可動ジョー7と固定ジョー5とでワークWがクランプされた状態となると、可動ジョー7の移動がワークWによって阻止されることから、ネジ軸10(中空軸20)の回転が阻止された状態となる。
【0041】
その上で、モータMによる回転推進軸30の回転駆動が更に継続されると、連結された中空軸20の回転が阻止されていることに伴い、モータMの駆動トルクが徐々に上昇する。そして、その駆動トルクがクラッチリング41の係合突起と丸ナット22の係合溝との間の係合力を超えると、前記係合状態が解除された状態(解除状態)となる。それにより、回転推進軸30が中空軸20(丸ナット22)に対し相対回転する状態となるため、主体部31における雄ネジで丸ナット22と螺合している回転推進軸30は、その回転に伴って固定ジョー5側へ移動することとなる。
【0042】
このように、その電動バイス1においては、中空軸20側の丸ナット22と回転推進軸30側のクラッチリング41との間で、中空軸20と回転推進軸30とが連結された状態(連結状態)とその連結が解除された状態(解除状態)とが切り換えられる。したがって、その構成においては、前記係合状態となる丸ナット22及びクラッチリング41と、前記係合状態を維持するためにクラッチリング41に対して弾性力を作用させる圧縮バネ42及びベアリングホルダ43との組み合わせが、クラッチ機構40として機能するようになっている。
【0043】
また、電動バイス1は、クラッチ機構40の前記解除状態で、ネジ軸10を介して可動ジョー7に対しクランプ力を作用させる増締め機構70を備えている。その増締め機構70は、前記長手方向に関しネジ軸10(付勢軸12)と回転推進軸30との間で、中空軸20に収容されるかたちで設けられている。また、増締め機構70は、中空軸20に支持される中空円筒状のローラサポート71と、ローラサポート71に支持される作動軸72と、作動軸72の傾斜面に接する一対の大ローラ73、73及び一対の小ローラ74、74とを有している。
【0044】
その増締め機構70について、より詳しくは、作動軸72は、円筒状の軸部72aと、側面視において二等辺三角形状を成すと共に平面視において矩形状を成す楔状部72bであって、軸部72aの一端に連続するかたちで軸部72aと一体に形成された楔状部72bとから成っている。なお、楔状部72bは、側面視において軸部72a側の部分の大きさが、軸部72aの外径よりも若干大きくなっている。したがって、作動軸72の外面には、軸部72aと楔状部72bとの間には段部が存在している。そして、作動軸72は、その軸部72aにおいて、ローラサポート71を介して中空軸20に支持されている。
【0045】
ローラサポート71は、前記長手方向に関しネジ軸10(付勢軸12)と回転推進軸30との間の位置で中空軸20の貫通孔に対し内嵌されている。なお、ローラサポート71は、中空円筒状であって貫通孔を有している。そして、ローラサポート71の貫通孔について、ローラサポート71が中空軸20に内嵌された状態で、その貫通孔における中空軸20のフランジ部20aよりも前記長手方向における回転推進軸30側の部分が、作動軸72の軸部72aを収容可能な丸孔として形成されている。なお、その丸孔の径は、作動軸72の軸部72aが収容された状態で、その軸部72aが前記長手方向に摺動可能となるような大きさとなっている。
【0046】
また、ローラサポート71の貫通孔において、その丸孔の部分よりも固定ジョー5側の部分は、作動軸72の楔状部72bを収容可能な大きさの角孔として形成されている。そして、その角孔は、作動軸72の楔状部72bが収容された状態で、その楔状部72bの軸部72a側の部分が前記長手方向に摺動可能となるような大きさとなっている。したがって、そのローラサポート71の貫通孔は、角孔が丸孔よりも大きく形成されていることから、その内面に段部が形成された孔となっている。
【0047】
そして、作動軸72は、軸部72aがローラサポート71の貫通孔における丸孔の部分に嵌挿されると共に、楔状部72bがその貫通孔における角孔の部分に収容された状態で、ローラサポート71に対しその軸線方向に摺動可能に支持されている。それにより、作動軸72は、その楔状部72bの側面が電動バイス1(本体フレーム3)の上下方向と略平行を成す状態で、中空軸20内において支持された状態となっている。また、前述のように作動軸72の外面に段部が存在し、ローラサポート71の貫通孔における内面にも段部が存在していることから、両段部が当接することで、作動軸72のローラサポート71に対する回転推進軸30側への移動が規制されるようになっている。
【0048】
また、ローラサポート71は、その一端側(角孔側)の端部において、その外周面から径方向の外側に向けて突出するように形成されたフランジを有している。そして、そのローラサポート71が内嵌される中空軸20の貫通孔は、軸線方向におけるフランジ部20aよりも一端側(固定ジョー5側)の部分の内径が、それ以外の部分の内径よりも大きくなっている。したがって、中空軸20は、その貫通孔の内面に段部を有している。また、ローラサポート71のフランジの外径は、その中空軸20の貫通孔における一端側の部分に内嵌されるような大きさとなっている。そして、ローラサポート71は、そのフランジにおいて中空軸20の貫通孔の内周面に形成された段部と当接した状態で、中空軸20の貫通孔に内嵌されている。
【0049】
また、ローラサポート71は、そのフランジの端面から軸線方向における固定ジョー5側へ向けて突出する突出部71aを有している。なお、その突出部71aは、中空軸20内において、ローラサポート71の軸線を挟んで上下に対称的に位置するような配置で一対形成されている。そして、両突出部71a、71aは、その内側となる部分が切り欠かれて平面状のテーパ面が形成されたものとなっている。
【0050】
また、作動軸72における軸部72aの他端には、円盤状のベアリングホルダ45が嵌合するかたちで設けられている。そして、そのベアリングホルダ45と回転推進軸30に取り付けられたベアリングホルダ43との間には、スラストベアリング44が介装されている。それにより、作動軸72は、そのベアリングホルダ45、スラストベアリング44、及び回転推進軸30に取り付けられたベアリングホルダ43を介して回転推進軸30に連結されると共に、回転推進軸30に対し相対回転可能となっている。なお、作動軸72は、そのように回転推進軸30に連結された状態で、前記初期状態において、その外面の段部がローラサポート71の貫通孔における内面の段部と当接した状態となっている。
【0051】
また、作動軸72が前記のように中空軸20内で支持された状態では、中空軸20内におけるローラサポート71と付勢軸12との間の空間に、作動軸72における楔状部72bが存在している。その上で、増締め機構70における一対の大ローラ73、73及び一対の小ローラ74、74が、前記空間(ローラ収容空間)において楔状部72bを上下に挟むかたちで、各軸心を前記幅方向に向けるかたちで設けられている。
【0052】
なお、大ローラ73、73は、前記初期状態において、付勢軸12の一方の端面(回転推進軸30側の端面)に当接した状態で、作動軸72の楔状部72bを挟んで上下方向に対向した状態となっている。また、小ローラ74、74は、前記長手方向に関し対応する大ローラ73とローラサポート71との間で、作動軸72の楔状部72bを上下方向に挟むようなかたちで設けられている。そして、各小ローラ74は、前記初期状態において、対応する大ローラ73、ローラサポート71における突出部71aのテーパ面及び楔状部72bの傾斜面に当接した状態となっている。但し、大ローラ73と小ローラ74との当接位置は、上下方向に関し、大ローラ73の中心よりも作動軸72の軸線から離間した位置となっている。
【0053】
そして、そのように構成された増締め機構70によれば、前述のようにクラッチ機構40が解除状態となり、その後に回転推進軸30が更に回転されて固定ジョー5側へ移動すると、その回転推進軸30により、作動軸72が押圧された状態(押圧力を受ける状態)となる。それにより、作動軸72が、楔状部72bで各ローラ73、74の間隔を上下に押し広げながら固定ジョー5側へ移動することとなる。その結果として、各小ローラ74が当接する楔状部72bの傾斜面及びローラサポート71における突出部71aのテーパ面による楔効果により、作動軸72が小ローラ74に作用させる押圧力が増力されて大ローラ73に作用し、その力が大ローラ73を介してネジ軸10に作用する状態となる。そして、そのような力がネジ軸10を介して可動ジョー7に対し作用することで、ワークWは、その増力された力でクランプされた状態(増締め動作が完了した状態)となる。
【0054】
そして、以上のように構成された電動バイス1は、モータMの駆動を制御する制御装置100を備えている。なお、その制御装置100は、電動バイス1が設置される工作機械等の主制御装置90に接続されている。また、その制御装置100は、電動バイス1(モータM)の基本的な動作を指令する駆動指令器101を備えている。
【0055】
なお、主制御装置90には、ワークWを加工するための一連の加工プログラムが記憶されており、その加工プログラムには、電動バイス1によるワークWをクランプする工程(クランプ工程)、及びワークWのクランプ状態を解除する工程(アンクランプ工程)等が含まれている。そして、主制御装置90は、その加工プログラムの進行に伴い、工程が前記クランプ工程となった時点で、制御装置100における駆動指令器101へ向けてクランプ指令信号を出力するように構成されている。また、主制御装置90は、加工プログラムにおける工程が前記アンクランプ工程となった時点で、駆動指令器101へ向けてアンクランプ指令信号を出力するように構成されている。
【0056】
駆動指令器101は、その出力端側で、モータMを駆動するドライバ102に接続されている。そして、駆動指令器101は、主制御装置90からクランプ指令信号が出力されると、ドライバ102に対し、設定された正転用の回転速度(設定正転速度)でモータMを正転駆動するための正転指令信号を出力するように構成されている。また、駆動指令器101は、主制御装置90からアンクランプ指令信号が出力されると、設定された逆転用の回転速度(設定逆転速度)でモータMを逆転駆動するための逆転指令信号を出力するように構成されている。
【0057】
そして、ドライバ102は、正転指令信号又は逆転指令信号に応じた回転速度(設定正転速度、設定逆転速度)で、モータMを正転駆動又は逆転駆動するように構成されている。それにより、駆動指令器101から正転指令信号が出力されると、それに応じた設定正転速度でモータMが正転駆動され、可動ジョー7が固定ジョー5に対し接近するように動作することとなる。また、駆動指令器101から逆転指令信号が出力されると、それに応じた設定逆転速度でモータMが逆転駆動され、可動ジョー7が固定ジョー5から離間するように動作することとなる。
【0058】
また、電動バイス1は、回転推進軸30に作用するトルクを検出するトルク検出器110を備えている。なお、本実施例では、そのトルク検出器110は、そのトルクの検出をモータMに供給される電流(駆動電流)の測定値(駆動電流値)に基づいて行うものとなっている。そこで、そのトルク検出器110は、ドライバ102の出力端側に接続されている。そして、トルク検出器110は、所定の検出期間毎に、その検出値(トルク検出値)に応じた検出トルク信号を連続的に出力するように構成されている。
【0059】
また、制御装置100は、トルク検出器110で検出したトルク検出値に基づいてクラッチ機構40が解除状態となったことを検出するためのクラッチ切れ検出器104を備えている。そして、そのクラッチ切れ検出器104は、トルク検出器110に接続される演算器104aと、その演算器104aに接続される判断器104bとで構成されている。それらのうち、演算器104aは、トルク検出器110から出力される検出トルク信号が入力される毎に、その検出トルク信号に基づき、前記検出期間における検出トルクの微分値(変化量)を求め、その微分値を示す信号(微分値信号)を出力するように構成されている。
【0060】
また、判断器104bは、演算器104aから出力される微分値信号に基づき、クラッチ機構40が解除状態となったか否かを判断するように構成されている。具体的には、本実施例では、判断器104bは、その判断を前記微分値が正の値から0に変化したか否かに基づいて行うようになっている。すなわち、前述のように可動ジョー7の移動がワークWに阻止された状態からモータMによる回転推進軸30の回転駆動が継続されるとモータMの駆動トルク(前記駆動電流値)が徐々に上昇するが、クラッチ機構40が解除状態となるとその駆動トルクが下降(減少)に転じることから、その減少に転じる時点で前記微分値が瞬間的に0となるため、その前記微分値が0となった時点を判断(判別)するように判断器104bは構成されている。そして、その前記微分値が0となった時点がクラッチ機構40が解除状態となった時点に対応することから、判断器104bは、その前記微分値が0となったことを判断した時点で、ワンショットのクラッチ切れ信号を出力するように構成されている。
【0061】
また、制御装置100は、予め設定された電動バイス1の停止条件に基づいてモータMの駆動を制御する増締め制御器105を備えている。なお、その停止条件は、ワークWのクランプ状態でのクランプ力が適切な大きさとなるように定められる。そして、本実施例では、その停止条件は、回転推進軸30の回転回数で設定されている。さらに、その回転回数は、本実施例では3回転であるものとする。但し、その回転回数は、3回転に限られるものでは無く、最終的に得たいクランプ力を踏まえた適宜な回数に設定されれば良い。そして、その停止条件に関する設定値は、主制御装置90に備えられた入力設定器(図示略)において入力設定され、その主制御装置90から増締め制御器105が備える記憶器(図示略)に伝送されることで、増締め制御器105において記憶されているものとする。
【0062】
また、制御装置100において、前記した判断器104bからのクラッチ切れ信号は、その増締め制御器105に入力されるようになっている。そして、増締め制御器105は、そのクラッチ切れ信号が入力されると、設定された停止条件である回転回数(3回転)に基づき、モータMをその設定回数に応じた分だけ正転駆動するための増締め駆動信号をドライバ102に出力するように構成されている。なお、制御装置100においては、判断器104bからのクラッチ切れ信号は、駆動指令器101にも入力されるようになっている。そして、駆動指令器101は、そのクラッチ切れ信号が入力されると、前述したドライバ102への正転指令信号の出力を停止するように構成されている。
【0063】
それにより、制御装置100においては、判断器104bからクラッチ切れ信号が出力された時点以降では、ドライバ102が増締め制御器105からの増締め駆動信号に基づいてモータMを駆動する状態となる。すなわち、制御装置100においては、クラッチ切れ信号の出力に伴い、モータMの制御態様が、駆動指令器101からの正転指令信号に基づく制御態様から、増締め制御器105からの増締め駆動信号に基づく制御態様に切り換わるようになっている。
【0064】
なお、モータMには、そのモータMの回転量を検出するエンコーダENが接続されている。そして、制御装置100においては、そのエンコーダENによって検出された回転量を示す回転検出信号が、増締め制御器105に出力(フィードバック)されるようになっている。その上で、増締め制御器105は、前記した停止条件(設定回数)とそのエンコーダENから出力される回転検出信号に基づいて増締め駆動信号を出力すると共に、モータMの回転量が設定回数に達した時点でその出力を停止するように構成されている。
【0065】
また、増締め制御器105は、モータMの回転量が設定回数に達した時点で、増締め動作が完了したことを示す完了信号を主制御装置90に出力するように構成されている。そして、主制御装置90は、その完了信号の入力に伴い、加工プログラムにおける工程を次の工程(例えば、加工工程)に進行させるようになっている。
【0066】
以上のような増締め機構70を備えた電動バイス1によれば、主制御装置90からクランプ指令信号が発せられることに伴い、モータMの駆動が開始されてそのクランプ工程が開始される。そして、そのモータMの駆動トルクは、
図7に示すように、ワークWに対し固定ジョー5及び可動ジョー7が当接した状態となった時点から急激に上昇し、前述のようにクラッチ機構40が解除状態となった時点(解除時点)で減少に転じる。そこで、電動バイス1においては、そのクランプ工程においてモータMの駆動トルクの検出が行われ、その検出トルクに基づき、前記微分値が正の値から0に変化した時点がクラッチ切れ検出器104(判断器104b)において判断(検出)される。そして、その前記微分値が0に変化した時点が前記解除時点に対応することから、判断器104bは、その検出時点でクラッチ切れ信号を出力する。それにより、前記解除時点が検出された状態となる。
【0067】
そして、判断器104bからそのクラッチ切れ信号が出力されると、増締め制御器105からの増締め駆動信号が出力され、制御装置100は、駆動指令器101からの正転指令信号に基づいてモータMの駆動を制御する状態から、その増締め駆動信号に基づいてモータMの駆動を制御する状態に切り換わった状態となる。それにより、モータMは、前記のように前記解除時点から、停止条件として設定された設定回数(3回転)分だけ回転推進軸30を回転駆動するように正転駆動され、その設定回数に応じた分の正転駆動が完了した時点で停止される。なお、その停止条件は、前述のようにワークWのクランプ状態でのクランプ力が適切な大きさとなるように定められている。したがって、その増締め駆動信号に基づくモータMの駆動が完了した時点では、ワークWは、適切なクランプ力でクランプされた状態となる。
【0068】
このように、本実施例によれば、増締め機構70を備えた電動バイス1において、クラッチ機構40が解除状態となった時点(前記解除時点)が、モータMの検出トルクに基づいて自動的に検出され、その検出時点でモータMの制御態様が切り換えられると共に、その検出時点以降の制御が、前記した停止条件に基づく適切なクランプ力でのワークWのクランプがより確実に達成されるように行われるものとなっている。したがって、そのような電動バイス1によれば、ワークや電動バイスの破損等を可及的に防止することができる。
【0069】
なお、本実施例では、制御装置100は、電動バイス1でのワークWのクランプの適否を判定するためのクランプ状態検出器106を備えている。そのクランプ状態検出器106は、モータMの回転量を検出する回転量検出器106aと、回転量検出器106aで検出されたモータMの回転量に基づいて可動ジョー7の移動量等を算出する算出器106bと、算出器106bで算出された値に基づいてワークWのクランプの適否を判定する判定器106cとを備えている。
【0070】
それらのうち、回転量検出器106aは、主制御装置90が接続されており、主制御装置90からのクランプ指令信号が入力されるようになっている。また、回転量検出器106aは、クラッチ切れ検出器104における判断器104bにも接続されており、判断器104bからのクラッチ切れ信号も入力されるようになっている。さらに、回転量検出器106aは、エンコーダENにも接続されており、エンコーダENからの(モータMの回転量を示す)回転検出信号が入力されるようになっている。
【0071】
そして、回転量検出器106aは、クランプ指令信号が入力されてからクラッチ切れ信号が入力されるまでの間におけるエンコーダENからの回転検出信号に基づき、モータMの駆動が開始された時点から前記解除時点(ワークWに対し固定ジョー5及び可動ジョー7が当接した状態となった時点)までの間におけるモータMの回転量を検出するように構成されている。その上で、回転量検出器106aは、クラッチ切れ信号の入力に伴い、前記解除時点までのモータMの回転量を示す信号(回転量信号)を出力するように構成されている。
【0072】
また、算出器106bは、回転量検出器106aに接続されており、回転量検出器106aから出力される回転量信号(モータMの回転量)に基づき、前記解除時点での可動ジョー7の移動量(前記初期状態の時の可動ジョー7の位置からの移動量)を算出するように構成されている。なお、算出器106bには、内蔵されたメモリ(図示略)において前記初期状態における固定ジョー5と可動ジョー7との間隔(初期間隔)が記憶されている。そして、算出器106bは、前記移動量と前記初期間隔とに基づき、前記解除時点における固定ジョー5と可動ジョー7との間隔を算出し、その算出された間隔(算出間隔)を示す信号(間隔値信号)を出力するように構成されている。
【0073】
さらに、判定器106cは、算出器106bに接続されており、算出器106bから出力される間隔値信号に基づき、前記算出間隔と予め設定されたワークWの寸法(ワーク寸法)とを比較してワークWのクランプの適否を判定するように構成されている。すなわち、判定器106cは、ワークWが適正にクランプされていれば、前記算出間隔と前記ワーク寸法とが略一致している筈なので、それに基づきワークWのクランプの適否を判定するようになっている。
【0074】
なお、前記した主制御装置90に記憶されている加工プログラムには、前記ワーク寸法が含まれている。その上で、判定器106cは、主制御装置90に接続され、算出器106bからの間隔値信号の入力に伴い、主制御装置90から前記ワーク寸法を読み出すように構成されている。また、判定器106cは、その間隔値信号の入力に伴い、その間隔値信号に基づく前記算出間隔と、主制御装置90から読み出した前記ワーク寸法とを比較するように構成されている。さらに、判定器106cは、両者が一致しない場合において、その差が予め設定された誤差範囲から逸脱している場合に、主制御装置90に対してクランプ状態が異常状態であることを示すクランプ異常信号を出力するように構成されている。
【0075】
そして、主制御装置90は、判定器106cからのクランプ異常信号の入力に伴い、ワークWのクランプ状態に異常が生じていると判断し、加工プログラムを停止するようになっている。したがって、制御装置100がそのようなクランプ状態検出器106を備えることで、ワークWのクランプ状態の適否が自動的に判別され、そのクランプ状態が不完全なままでワークWの加工が行われることを有効に回避することができる。
【0076】
以上では、本発明が適用された電動バイスの一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明した構成に限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0077】
(1)トルク検出器について、前記実施例では、トルク検出器110は、回転推進軸30に作用するトルクの検出を、モータMに供給される電流(駆動電流)の測定値(駆動電流値)に基づいて行うものとなっている。しかし、本発明において、トルク検出器は、そのようにモータの前記駆動電流値に基づいて回転推進軸に作用するトルクを検出するように構成されるのには限られない。例えば、トルク検出器は、歪みゲージを検出手段とするトルク検出用のセンサ(所謂、トルクセンサ)を用いてトルクを検出するように構成されたものであっても良い。そして、その場合には、回転推進軸やモータの出力軸等にそのトルクセンサを接続し、回転推進軸に作用するトルクを検出するようにすれば良い。
【0078】
(2)クラッチ切れ検出器について、前記実施例では、クラッチ切れ検出器104は、検出トルクの微分値を求め、その微分値に基づいてクラッチ機構40が前記解除状態となったか否かの判断を行うように構成されている。その上で、そのクラッチ切れ検出器104は、前記微分値が正の値から0に変化したことで前記解除状態となったと判断するように設定されている。しかし、本発明において、クラッチ切れ検出器は、例えば、前記微分値が0(又は正の値)から負の値に変化したことで前記解除状態となったと判断するように設定されていても良い。また、クラッチ切れ検出器は、内蔵するメモリにクラッチ機構が前記解除状態となったことを判断するためのトルクの基準値(閾値)が記憶されたものとし、前記微分値(又は前記微分値の絶対値)とその閾値とを比較し、その前記微分値が前記閾値を超えた時点でクラッチ機構が前記解除状態となったと判断するように構成されていても良い。
【0079】
また、クラッチ切れ検出器による前記判断について、前記微分値に基づいて行われるのにも限られず、検出されたトルク検出値に基づいて行われても良い。そして、その場合には、前記判断を、その検出されたトルク検出値とクラッチ切れ検出器のメモリに記憶されたトルクの基準値(閾値)との比較に基づいて行うようにクラッチ切れ検出器を構成すれば良い。
【0080】
(3)増締め制御器が用いる停止条件について、前記実施例では、その停止条件は、回転推進軸30の回転回数(3回転)で設定されている。それにより、モータMは、前記解除時点が検出された時点から、増締め制御器105からの増締め駆動信号に基づいて設定回数(3回転)分だけ回転推進軸30を回転駆動するように正転駆動される。しかし、本発明において、その停止条件は、前述のような回転回数には限られず、モータMの駆動時間で設定されても良い。なお、この場合の駆動時間は、適切なクランプ力が得られるような前記長手方向への回転推進軸30の移動量と、予め設定された回転推進軸30の速度とを踏まえて設定される。
【0081】
そして、そのようにモータMの駆動時間を停止条件とする場合、増締め制御器の記憶器にその駆動時間(設定時間)が記憶されたものとすると共に、クラッチ切れ信号が入力されてから(前記解除時点から)のモータMの駆動時間を計測するタイマーを備えるように増締め制御器が構成されたものとする。さらに、その増締め制御器を、クラッチ切れ信号が入力された時点からタイマーによる計時を開始するものとし、駆動時間が設定時間に達した時点で、増締め動作が完了したことを示す完了信号を主制御装置に加えて駆動指令器にも出力するように構成する。その上で、駆動指令器を、その完了信号の入力に伴い、ドライバへの正転指令信号の出力を停止するように構成すれば良い。それにより、モータMの駆動は、前記解除時点から設定時間が経過した時点で停止されることとなる。
【0082】
また、停止条件は、前記解除時点以降におけるモータMの駆動トルクに関する条件として設定することも可能である。より詳しくは、以下の通りである。
【0083】
先ず、電動バイスを、前記解除時点以降に回転しつつ固定ジョー5側へ移動する回転推進軸がその移動に伴って係合することでその回転が停止されるように構成されたものとする。なお、説明は省略したが、前記実施例の電動バイス1も、その回転推進軸30に係合した状態となることでその回転を停止させるための構成としてのストッパ機構80を備えている。但し、前記実施例では、そのストッパ機構80は、停止条件として設定された回転回数分だけ回転推進軸30が固定ジョー5側へ移動してもその係合(回転推進軸30の回転停止)が行われないように設定されている。以下では、電動バイスの機械構成については前記実施例と同じであることから、その機械構成について、前記実施例の電動バイス1に基づいて説明する。但し、制御構成については前記実施例とは異なる構成となることから、後述のように
図8に基づいて説明する。
【0084】
その前提となるストッパ機構80について、ストッパ機構80は、本体フレーム3の支持部材3aに対し嵌挿される中空円筒状の調整リング81と、その調整リング81に対し内嵌されると共に中空軸20に対し外嵌される中空円筒状のストッパリング82とを備えている。また、ストッパ機構80は、概ね中空円筒状を成すと共にその一端側に径方向の内側に突出する突出部分を有するように形成されたスリーブ83であって、回転推進軸30を収容するように回転推進軸30に取り付けられるスリーブ83を備えている。
【0085】
それらのうち、調整リング81は、その一端側において支持部材3aの貫通孔に内嵌され、他端側が支持部材3aから突出するかたちで設けられている。なお、調整リング81の外周面には軸線方向に延びる溝が形成され、その溝に対し支持部材3aに設けられたピンが嵌挿されている。それにより、調整リング81は、支持部材3aに対し、相対回転不能に且つ前記長手方向に摺動可能に設けられた状態となっている。
【0086】
その上で、調整リング81は、その外周面に形成された凹部に対し支持部材3a側の球状の係止部材が押し当てられることで、その軸線方向の位置が保持された状態となっている。なお、その係止部材は、支持部材3aに形成された孔内に収容されると共に、圧縮バネによって調整リング81側へ付勢されている。そして、その凹部が軸線方向に並列されるかたちで複数形成されていることにより、調整リング81は、軸線方向の位置が調整可能となっている。
【0087】
また、ストッパリング82は、軸線方向の寸法が調整リング81の半分程度の大きさを有しており、前記一端側で調整リング81に対し内嵌されている。また、ストッパリング82の外周面には円周方向に亘る溝が形成され、その溝に対し調整リング81に設けられたピンが嵌挿されることで、ストッパリング82は、調整リング81に対し、相対回転可能に且つ前記長手方向に相対移動不能に設けられた状態となっている。さらに、ストッパリング82の内周面にはキー溝が形成され、ストッパリング82と中空軸20との間にキーが介装された状態とされている。そして、ストッパリング82のキー溝が、軸線方向に貫通するように形成されていることから、ストッパリング82は、中空軸20に対し、相対回転不能に且つ前記長手方向に摺動可能に設けられた状態となっている。これらの構成により、ストッパリング82は、前記した調整リング81の位置の調整時において、調整リング81と共に軸線方向に移動することとなる。
【0088】
また、スリーブ83は、前記した突出部分において回転推進軸30のフランジ部33に対しネジ部材で固定され、前述のように回転推進軸30を収容するように設けられている。なお、そのスリーブ83は、前記突出部分を除く部分の内径が中空軸20の外径よりも僅かに大きいものとなっており、中空軸20の他端側の部分をも収容するように設けられている。また、スリーブ83は、その外径が調整リング81の内径よりも僅かに小さいものとなっている。それにより、スリーブ83は、その他端側の部分が調整リング81に嵌挿され、調整リング81内においてストッパリング82と前記長手方向に対向した状態となっている。そして、そのスリーブ83とストッパリング82との間隔は、電動バイス1の前記初期状態において、回転推進軸30が3回転したときの回転推進軸30の移動量よりも大きいものとなっている。
【0089】
なお、スリーブ83と中空軸20の外周面との間にはニードルベアリングが介装されており、スリーブ83は、そのニードルベアリングによって中空軸20に対し相対回転可能に支持されると共に、その中空軸20に対し相対回転不能に設けられた調整リング81に対しても、相対回転可能で、且つ前記長手方向に摺動可能な状態となっている。
【0090】
そして、スリーブ83が前記のように回転推進軸30に固定されていることから、前記解除時点以降の回転推進軸30の回転駆動に伴い、スリーブ83は、回転推進軸30と共に回転しつつ固定ジョー5側へ移動し、ストッパリング82に対し接近することとなる。
【0091】
その上で、ストッパリング82におけるスリーブ83側の端面には、その一部からスリーブ83側に突出するように形成された被係合部82aが設けられている。一方で、スリーブ83におけるストッパリング82側の端面にも、その一部からストッパリング82側に突出すると共にストッパリング82側の被係合部82aに対し係合可能であるような形に形成された係合部83aが設けられている。そして、前記解除時点以降の回転推進軸30の回転駆動により、スリーブ83が回転しつつストッパリング82に接近することから、その接近に伴って両者の間隔が狭くなることで、スリーブ83側の係合部83aとストッパリング82側の被係合部82aとが係合することとなる。そして、その係合により、スリーブ83の回転(回転推進軸30の回転)が阻止(停止)された状態となる。
【0092】
以上のようなストッパ機構80を備えた電動バイスにおいて、前記したようにストッパ機構80が前記係合状態となった時点以降もモータMによる回転推進軸30の回転駆動が継続されると、モータMに掛かる負荷が増大し、モータMの駆動トルク(前記駆動電流値)は上昇することとなる。したがって、その駆動トルクを監視することで、ストッパ機構80が前記係合状態となったか否かをモータMの駆動トルクに基づいて判別することが可能である。そして、その前記係合状態となったことで増締め動作が完了した状態となることから、停止条件を前記解除時点以降におけるモータMの駆動トルクに関する条件として設定することで、増締め動作完了までのモータMの駆動の制御が実現される。なお、この場合の電動バイスにおけるモータMの制御については、例えば、
図8に示す構成に基づいて説明することができる。
【0093】
その
図8に示す例においては、前記実施例等と同様に、トルク検出器110からの検出トルク信号がクラッチ切れ検出器104’の演算器104a’に出力されるようになっている。そして、演算器104a’から出力されるトルク検出値を示す検出トルク信号に基づき、電動バイスにおいてクラッチ機構40が前記解除状態となったことが判断器104b’において判断されるようになっている。また、前記実施例では、判断器104bからのクラッチ切れ信号(クラッチ切れを示す信号)が駆動指令器101及び増締め制御器105に対し出力されているが、この例では、それに代えて、そのクラッチ切れ信号が演算器104a’のみに出力されるようになっている。なお、この場合、駆動指令器101に対しクラッチ切れ信号が出力されないため、前記解除時点以降も、その駆動指令器101からの正転指令信号によるモータMの駆動が継続されることとなる。
【0094】
そして、演算器104a’は、そのクラッチ切れ信号の入力に伴い、検出トルク信号の出力先を、判断器104b’から増締め制御器105’に変更するように構成されている。それにより、前記解除時点以降では、演算器104a’からの前記検出トルク信号が増締め制御器105’に出力される。
【0095】
その上で、増締め制御器105’は、演算器104a’からの前記検出トルク信号に基づき、ストッパ機構80が前記係合状態となったか否かを判断するように構成されている。そこで、増締め制御器105’には、停止条件として、ストッパ機構80が前記係合状態となったことを判断するためのトルクの基準値(閾値)が記憶されている。そして、増締め制御器105’は、演算器104a’からの前記検出トルク信号の入力に伴い、そのトルク検出値と前記閾値とを比較し、前記閾値を超えた時点で増締め動作が完了したことを示す完了信号を主制御装置90及び駆動指令器101に出力するように構成されている。
【0096】
なお、駆動指令器101は、その増締め制御器105’からの完了信号の入力に伴い、正転指令信号の出力を停止するように構成されている。それにより、ストッパ機構80が前記係合状態となった時点に対する所定の遅れ時間後に、モータMの駆動が停止されることとなる。
【0097】
その上で、その電動バイスにおいて、前記のストッパ機構80を、概ね適切なクランプ力が得られる程度まで回転推進軸30が回転駆動(固定ジョー5側へ移動)されたときに前記係合状態となるように設定することで、そのモータMの駆動が停止される時点では、電動バイスは、適切なクランプ力が得られた状態となる。このように、ストッパ機構80を備えた電動バイスにおいては、停止条件を前記解除時点以降におけるモータMの駆動トルクに関する条件として設定することでも、適切なクランプ力を得られる増締め動作完了までのモータMの駆動の制御が実現可能である。
【0098】
因みに、前記実施例では、制御装置100は、電動バイス1でのワークWのクランプの適否を判定するための構成として、クランプ状態検出器106を備えている。しかし、電動バイスでのワークWのクランプの適否を判定する構成は、本発明において必須では無く、
図8の例のように省略することも可能である。
【0099】
(4)増締め機構を備えた電動バイスについて、前記実施例における電動バイス1の増締め機構70は、ネジ軸10と作動軸72の楔状部72bとの間に4つのローラ73、74を備え、作動軸72が各ローラ73、74の間隔を上下に押し広げながら固定ジョー5側へ移動することで、その楔効果によって増力された力をネジ軸10を介して可動ジョー7に作用させるように構成されている。しかし、本発明が適用される電動バイスは、そのような楔効果によってクランプ力を増力する楔式構造の増締め機構を備えたものには限られない。例えば、本発明は、詳細な説明は省略するが、特開平4-240076号公報に開示されたような、てこ式構造やトグル式構造の増締め機構を備えた電動バイスにも適用可能である。
【0100】
(5)モータMと回転推進軸とを連結する構成(連結構成)について、その連結構成は、前記実施例のような駆動軸51に取り付けられるプーリ55、従動軸52に取り付けられるプーリ56、及び両プーリ55、56を連結するベルト57から成る駆動伝達機構50には限られない。例えば、その連結構成は、駆動軸51に取り付けられた駆動歯車と従動軸52に取り付けられた従動歯車とから成る歯車列であっても良い。また、その連結構成は、回転推進軸30に取り付けられた伝達軸53とモータMの出力軸とをカップリングを介して直接的に連結するように構成されたものであっても良い。
【0101】
(6)本発明の電動バイスは、前記実施例のように工作機械等に設置されるものには限られず、それ単体でも使用することが可能である。そして、その場合には、その電動バイスを、手動の操作器が備えられ、クランプ動作を開始させるための指令信号等がその操作器を操作することによって出力されるように構成されたものとすれば良い。
【0102】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 電動バイス
3 本体フレーム
3a 支持部材
3b 突出部
5 固定ジョー
7 可動ジョー
9 スライドブロック
10 ネジ軸
12 付勢軸
14 リング部材
20 中空軸
20a フランジ部
22 丸ナット
30 回転推進軸
31 主体部
32 小径部
33 フランジ部
40 クラッチ機構
41 クラッチリング
42 圧縮バネ
43 ベアリングホルダ
44 スラストベアリング
45 ベアリングホルダ
50 駆動伝達機構
51 駆動軸
52 従動軸
53 伝達軸
55 プーリ
56 プーリ
57 ベルト
60 連結フレーム
61 基部
70 増締め機構
71 ローラサポート
71a 突出部
72 作動軸
72a 軸部
72b 楔状部
73 大ローラ
74 小ローラ
80 ストッパ機構
81 調整リング
82 ストッパリング
82a 被係合部
83 スリーブ
83a 係合部
90 主制御装置
100 制御装置
101 駆動指令器
102 ドライバ
104 クラッチ切れ検出器
104a 演算器
104b 判断器
105 増締め制御器
106 クランプ状態検出器
106a 回転量検出器
106b 算出器
106c 判定器
110 トルク検出器
M モータ
EN エンコーダ