IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一ファインケミカル株式会社の特許一覧

特開2025-7538乾燥リポソーム製剤、真菌抑制剤及び皮膚外用製剤
<>
  • 特開-乾燥リポソーム製剤、真菌抑制剤及び皮膚外用製剤 図1A
  • 特開-乾燥リポソーム製剤、真菌抑制剤及び皮膚外用製剤 図1B
  • 特開-乾燥リポソーム製剤、真菌抑制剤及び皮膚外用製剤 図1C
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007538
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】乾燥リポソーム製剤、真菌抑制剤及び皮膚外用製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/702 20060101AFI20250109BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250109BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 8/14 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 35/20 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 9/127 20250101ALI20250109BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20250109BHJP
   A61K 47/24 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
A61K31/702
A61P31/10
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/14
A61P17/00
A61K35/20
A61K9/127
A23L33/125
A61K47/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108997
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】390010205
【氏名又は名称】協和ファーマケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】森本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】杉田 愛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祐希
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD31
4B018MD46
4B018MD71
4B018ME09
4B018MF01
4B018MF02
4B018MF05
4B018MF06
4C076AA19
4C076BB31
4C076CC31
4C076DD63
4C076FF16
4C076FF36
4C076GG08
4C076GG45
4C076GG47
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD572
4C083BB48
4C083BB60
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA44
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB39
4C087CA14
4C087CA22
4C087MA24
4C087MA44
4C087NA03
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB35
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、真菌の繁殖を抑制し、リポソームの凝集を抑制する物質を提供することである。
【解決手段】ヒトミルクオリゴ糖(HMO)を含有する乾燥リポソーム製剤、及びこのリポソーム製剤を使用した真菌抑制剤及び皮膚外用製剤。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)を含有する乾燥リポソーム製剤。
【請求項2】
前記HMOは、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3’-シアリルラクトース(3’-SL)及び6’-シアリルラクトース(6’-SL)から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の乾燥リポソーム製剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乾燥リポソーム製剤を用いた真菌抑制剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載の乾燥リポソーム製剤を水性の製剤に溶解して得られる皮膚外用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌の繁殖を抑制し、リポソームの凝集を抑制する、HMO含有乾燥リポソーム製剤に関する。また、本発明は、当該乾燥リポソーム製剤を使用した真菌抑制剤及び皮膚外用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
HMOは、ヒトの母乳に含まれるオリゴ糖である。HMOはビフィズス菌などの善玉菌の栄養素となる物質であり、その様々な生理機能が応用されることが期待されている。粉ミルクとしての使用のみならず、水性製剤化して使用することで、成人用の化粧品や健康食品への展開も可能となる。リポソームもDDSや化粧品へキャリアーや機能性成分として活用されている。化粧品や健康食品等においては、近年、防腐剤フリー、脱ケミカル指向傾向である。
【0003】
リポソーム凍結乾燥保護剤として、従来、スクロース等の二糖類が主に用いられてきた。ただしこの二糖類は、皮膚に塗布した際に糖特有のべたつきがあるため、高配合は好ましくない反面、配合量(対レシチン比)を減らすと、復水後のリポソームの凝集が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64-9931号公報
【特許文献2】特開昭64-3115号公報
【特許文献3】特開2009-161503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、真菌の繁殖を抑制し、リポソームの凝集を抑制する物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の乾燥リポソーム製剤は、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)を含有することを特徴とする。
【0007】
前記HMOは、2'-フコシルラクトース(2'-FL)である。
【0008】
本発明の真菌抑制剤は、前記乾燥リポソーム製剤を用いることを特徴とする。
【0009】
本発明の皮膚外用製剤は、乾燥リポソーム製剤を水性の製剤に溶解して得られることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】実施例1においてカンジダを用いた場合の吸光度変化率の測定結果を示す。
図1B】実施例1においてアスペルギルスを用いた場合の吸光度変化率の測定結果を示す。
図1C】実施例1においてロドトルラ・ムシラギノーサを用いた場合の吸光度変化率の測定結果を示す
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的実施例を詳細に説明する。
【実施例0012】
リポソーム保護能評価
リポソーム凍結乾燥製剤の調製
水素添加大豆レシチン0.84gにエタノール1.0gを加え溶解した。この溶液に2’-FL1.70gを水46.50gに溶解した水溶液48.20gを加え、70℃で加温しながら、ホモミキサーで2,000rpmにて5分間乳化した。乳化後、水で全量を50.0gとした。乳化した溶液を0.2μmのメンブレンフィルターを用いて加圧ろ過した。メンブレンフィルターは2枚重ねとし、3回の加圧ろ過を行い、リポソーム懸濁液とした。このリポソーム懸濁液3.0gを凍結乾燥用瓶に充填し、-40℃で凍結後、真空度を約1~10Paにして、約-40~30℃まで昇温しながら、凍結乾燥し、リポソーム凍結乾燥製剤を得た。この実施例のリポソーム凍結乾燥製剤を、水10mLで復水すると、水素添加大豆レシチン濃度は0.5%、2’-FL濃度は1.0%となる。
【実施例0013】
実施例の2’-FLに代えて、3’-SL1.70gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液3.0gを凍結乾燥用瓶に充填し、凍結乾燥し、リポソーム凍結乾燥製剤を得た。このリポソーム凍結乾燥製剤を、水10mLの復水により、水素添加大豆レシチン濃度は0.5%、3’-SL濃度は1.0%となる。
【実施例0014】
実施例の2’-FLに代えて、6’-SL1.70gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液3.0gを凍結乾燥用瓶に充填し、凍結乾燥し、リポソーム凍結乾燥製剤を得た。このリポソーム凍結乾燥製剤を、水10mLの復水により、水素添加大豆レシチン濃度は0.5%、6’-SL濃度は1.0%となる。
【0015】
[比較例1]
実施例の2’-FLに代えて、スクロース1.70gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液3.0gを凍結乾燥用瓶に充填し、凍結乾燥し、リポソーム凍結乾燥製剤を得た。このリポソーム凍結乾燥製剤を、水10mLの復水により、水素添加大豆レシチン濃度は0.5%、スクロース濃度は1.0%となる。
【0016】
[比較例2]
実施例の2’-FLに代えて、マンニトール1.70gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液3.0gを凍結乾燥用瓶に充填し、凍結乾燥し、リポソーム凍結乾燥製剤を得た。このリポソーム凍結乾燥製剤を、水10mLの復水により、水素添加大豆レシチン濃度は0.5%、マンニトール濃度は1.0%となる。
【0017】
[比較例3]
実施例の2’-FLに代えて、ガラクトース1.70gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液3.0g凍結乾燥用瓶に充填し、凍結乾燥し、リポソーム凍結乾燥製剤を得た。このリポソーム凍結乾燥製剤を、水10mLの復水により、水素添加大豆レシチン濃度は0.5%、ガラクトース濃度は1.0%となる。
【0018】
[比較例4]
実施例の2’-FLに代えて、ラフィノース1.70gとして、同様にリポソーム懸濁液を作製した。このリポソーム懸濁液3.0gを凍結乾燥用瓶に充填し、凍結乾燥し、リポソーム凍結乾燥製剤を得た。このリポソーム凍結乾燥製剤を、水10mLの復水により、水素添加大豆レシチン濃度は0.5%、ラフィノース濃度は1.0%となる。
【0019】
表1に示されたとおり、マンニトールとガラクトースは、凍結乾燥後の粒子径が明らかに大きくなったが、その他の変化は小さかった。特に2’-FLは、凍結乾燥前後の粒子径に変化なかった。
【0020】
表2に示されたとおり、マンニトールとガラクトースを含む比較例4種はすべて、40℃1ヵ月保存により粒子径が明らかに増大したが、実施例のHMO(2’-FL、3’-FL、6’-FL)は40℃6ヵ月まで安定であった。
【0021】
【表1】
【0022】
粒子径の測定
リポソーム懸濁液は水で50倍希釈、凍結乾燥後の復水液は水で20倍希釈し、粒度分布測定装置nanoSAQLA(大塚電子)にて、動的光散乱法により測定した。
【0023】
【表2】
【0024】
安定性試験
各リポソーム凍結乾燥製剤を40℃で1、3、6ヵ月保管し、随時、水10mLで復水後、水で20倍に希釈し、粒度分布測定装置nanoSAQLA(大塚電子)にて、動的光散乱法により、平均粒子径を測定した。
【実施例0025】
抗菌活性評価
<実施例1-1:吸光度測定>
真菌としてカンジダ、アスペルギルス及びロドトルラ・ムシラギノーサを用いた。50mLの遠沈管に、被検試料を0.05~0.5mg/mL含有するSCD培地20mLを測り入れ、評価菌体をそれぞれ終濃度400cfu/mL(カンジダ)、200cfu/mL(アスペルギルス)、300cfu/mL(ロドトルラ・ムシラギノーサ)となるよう調製した菌液100μLを加えた。その後、30℃、静置50時間、続いて30℃ 150r/min24時間の計74時間培養した。培養終了後、被検試料含有培地の濁度(As、600nm)を測定した。
【0026】
<実施例1-2:リファレンス吸光度測定及び吸光度変化率(%)の算出>
被験試料を添加しなかったこと以外は<実施例1-1>と同様にして、評価菌体を培養し、被検試料未添加培地の濁度を測定した。得られた吸光度をAbとし、下記式(1)で表される吸光度変化率(%)を求めた。結果を図1A-Cに示した。
吸光度変化率(%)=((Ab-As)/Ab)×100…(1)
【0027】
図1A-Cに示されたとおり、HMO(2’-FL、3’-FL、6’-FL)は、真菌(カンジダ、アスペルギルス、ロドトルラ・ムシラギノーサ)の増殖を用量依存的に抑制した。
【0028】
凍結乾燥剤の処方は、実施例に限ったものではない。
図1A
図1B
図1C