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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025075542
(43)【公開日】2025-05-15
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20250508BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20250508BHJP
   F01N 1/08 20060101ALI20250508BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
F01N13/08 A
F01N13/00 A
F01N1/08 F
F01N3/24 J
F01N13/08 D
F01N1/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186785
(22)【出願日】2023-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】三上 恒平
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
【Fターム(参考)】
3G004BA01
3G004CA06
3G004DA25
3G091AB01
3G091BA26
3G091HA37
(57)【要約】
【課題】触媒ユニットと接続パイプとの熱膨張差、および接続パイプと外筒との熱膨張差にそれぞれ起因する相対変位を許容して、熱膨張差に起因する応力を抑制する排気装置を提供する。
【解決手段】排気装置1は、触媒ユニット3と、触媒ユニット3の下流側に接続された接続パイプ4と、接続パイプ4の内部を流れる排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサ5と、接続パイプ4の外周を覆う外筒6とを備える。接続パイプ4の上流側端部は、触媒ユニット3の出口に圧入されている。接続パイプ4は、上流側端部よりも下流側の位置で当該接続パイプ4の周囲の第1バッフルプレート11に固定されている。接続パイプ4の周面には、排気ガスセンサ5の外径D1よりも大きい開口径D2を有する第1開口4cが形成され、排気ガスセンサ5は、検出部5aが第1開口4cを通して接続パイプ4の内部に挿入された状態で外筒6に固定されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出される排気ガスを浄化する触媒を有する触媒ユニットと、
前記触媒ユニットに対して前記排気ガスの流通方向において下流側に接続された接続パイプと、
前記接続パイプの内部を流れる排気ガスの状態を検出する検出部を有する排気ガスセンサと、
前記接続パイプの外周を覆う外筒と、
を備え、
前記接続パイプの上流側端部は、前記触媒ユニットの出口に圧入され、
前記接続パイプは、前記上流側端部よりも下流側の位置で当該接続パイプの周囲の他の部材に固定され、
前記接続パイプの周面には、前記排気ガスセンサの外径よりも大きい開口径を有する第1開口が形成され、
前記排気ガスセンサは、前記検出部が前記第1開口を通して前記接続パイプの内部に挿入された状態で前記外筒に固定されている、
ことを特徴とする排気装置。
【請求項2】
前記外筒は、前記触媒ユニットおよび前記接続パイプの外周を覆い、
前記外筒の出口は、前記接続パイプの出口よりも下流側の位置に配置されている、
請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記接続パイプのうちで、前記排気ガスセンサが配置される前記第1開口が形成された部分の外径は、前記触媒の直径よりも小さく、
前記触媒ユニットまたは前記接続パイプは、前記触媒から前記排気ガスセンサに達するまでの間において、下流側に進むにつれて縮径する縮径部分を有する、
請求項1または2に記載の排気装置。
【請求項4】
前記接続パイプの軸中心は、前記外筒の軸中心に対して、前記第1開口が前記外筒における前記排気ガスセンサを支持する支持部に近づく方向にオフセットして配置されている、
請求項1または2に記載の排気装置。
【請求項5】
前記外筒における前記排気ガスセンサが固定された部分は、前記外筒の他の部分に対して径方向内側に凹んでいる、
請求項1または2に記載の排気装置。
【請求項6】
前記外筒は、
前記接続パイプの前記第1開口に連通する第2開口が形成された外筒本体と、
前記第2開口を塞ぐ蓋部材と
を備えており、
前記蓋部材は、
前記排気ガスセンサを前記第1開口に挿入された状態で支持する支持部を有し、前記外筒本体よりも径方向内側に凹んだ中央部と、
前記外筒本体の前記第2開口の周縁に接合された周縁部と
を備える、
請求項5に記載の排気装置。
【請求項7】
前記接続パイプにおける前記第1開口よりも下流側の部分を支持する支持部材をさらに備えている、
請求項1または2に記載の排気装置。
【請求項8】
前記支持部材は、前記外筒の内周面と前記接続パイプの外周面とを接続するとともに当該外筒と前記接続パイプとの間の空間部における排気ガスの流れを規制するバッフルプレートである、
請求項7に記載の排気装置。
【請求項9】
前記接続パイプの下流側端部よりも下流側に配置された下流側パイプをさらに備え、
前記下流側パイプは、閉じられた上流側端部と、複数の通気孔を有する周面とを有しており、
前記第1開口は、前記接続パイプの下流側端部よりも上流側端部に近い位置に配置されている、
請求項8に記載の排気装置。
【請求項10】
前記外筒は、当該外筒の内部に、前記触媒ユニットを収容するとともに、排気ガスの運動エネルギーを小さくするための消音室を形成する、
請求項1または2に記載の排気装置。
【請求項11】
前記消音室は、
前記外筒と、
前記接続パイプと、
前記外筒の内周面と前記接続パイプの外周面とを接続するとともに当該外筒と前記接続パイプとの間の空間部における排気ガスの流れを規制するバッフルプレートと、
によって形成され、
前記触媒ユニットは、前記外筒に前記接続パイプおよび前記バッフルプレートとともに収容されている、
請求項10に記載の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、触媒ユニットの下流側に排気ガスセンサが配置された排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車やオートバイなどでは、エンジンから排出される排気ガスを浄化する触媒を有する触媒ユニットを備えた排気装置が種々提案されている。触媒ユニットを備えた排気装置には、触媒ユニットの状態の検知やその他の目的のために酸素濃度などを検知する排気ガスセンサが触媒ユニットの下流側のパイプに設けられるものがある。
【0003】
特許文献1に記載されている排気装置では、下流側酸素センサの先端の検知部分が触媒の下流側に延びる第1内筒の内部に挿入されている。この排気装置では、第1内筒は、当該第1内筒のその外周を外筒で覆われている。第1内筒と外筒との間は、外筒の径方向内側に延びる管部材によって連結されている。管部材の両端部は、第1内筒および外筒にそれぞれ接合されている。下流側酸素センサは、管部材に挿入され、センサ先端の検知部分が第1内筒の内部に挿入された位置に保持されている。第1内筒は、その内部に触媒を収容するとともに触媒の上流側および下流側に延長して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-110616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構造では、第1内筒は、触媒を収容するとともに触媒の上流側および下流側に延長して形成されているので、第1内筒と触媒とが互いに相対変位できない。したがって、触媒と第1内筒との熱膨張差に起因する相対変位が生じるおそれがある。
【0006】
しかも、第1内筒と外筒との間は、外筒の径方向内側に延びる管部材によって連結されている。この管部材を介した連結により、第1内筒と下流側酸素センサとの間は互いに相対変位できない。そのため、第1内筒と外筒との熱膨張差に起因する応力を抑制することができない。この応力によって、管部材およびその内部に挿入された下流側酸素センサなどにゆがみや変形などが生じるおそれがある。
【0007】
本開示は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、触媒ユニットと接続パイプとの熱膨張差、および接続パイプと外筒との熱膨張差にそれぞれ起因する相対変位を許容して、熱膨張差に起因する応力を抑制する排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の局面に係る排気装置は、エンジンから排出される排気ガスを浄化する触媒を有する触媒ユニットと、前記触媒ユニットに対して前記排気ガスの流通方向において下流側に接続された接続パイプと、前記接続パイプの内部を流れる排気ガスの状態を検出する検出部を有する排気ガスセンサと、前記接続パイプの外周を覆う外筒と、を備え、前記接続パイプの上流側端部は、前記触媒ユニットの出口に圧入され、前記接続パイプは、前記上流側端部よりも下流側の位置で当該接続パイプの周囲の他の部材に固定され、前記接続パイプの周面には、前記排気ガスセンサの外径よりも大きい開口径を有する第1開口が形成され、前記排気ガスセンサは、前記検出部が前記第1開口を通して前記接続パイプの内部に挿入された状態で前記外筒に固定されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の排気装置によれば、触媒ユニットと接続パイプとの熱膨張差、および接続パイプと外筒との熱膨張差にそれぞれ起因する相対変位を許容して、熱膨張差に起因する応力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る排気装置の一例としてオートバイのマフラーの全体構成を示す一部分解斜視図である。
図2図1の触媒ユニットおよび排気ガスセンサおよびその周辺部の拡大斜視図である。
図3図2の外筒の蓋部材を取り除いた状態の拡大斜視図である。
図4図1の排気ガスセンサの上端の延長線上から見た触媒ユニットおよび排気ガスセンサおよびその周辺部の拡大図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6図1の意匠カバーの開口窓を通して排気ガスセンサが外部から見える状態を示す斜視説明図である。
図7図6の意匠カバーを取り除いて、排気ガスセンサとともに外筒を構成する外筒本体および蓋部材が外部から見える状態を示す斜視説明図である。
図8図7の排気ガスセンサおよび蓋部材を外筒本体に対して周方向下方にずらした状態を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る排気装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1~5には、本開示の実施形態に係る排気装置の一例としてオートバイのマフラーが示されている。なお、本開示の排気装置は、触媒ユニットおよび排気ガスセンサを備えた排気装置に広く適用され、エンジンを備えた自動車などの排気システムに広く適用することができる。
【0012】
図1~5に示される排気装置であるマフラー1は、エンジンEの排気口に対して接続管2を介して接続されている。接続管2は、エンジンEの排気口に接続される上流側端部2aと、マフラー1に接続される下流側端部2bと、下流側端部2bに設けられた上流側センサ支持部2cとを有する。上流側センサ支持部2cには、触媒ユニット3に対して排気ガスの流通方向Xの上流側で排気ガスの状態を検知するセンサを取り付けることができる。
【0013】
図1~5に示されるマフラー1は、触媒ユニット3と、接続パイプ4と、排気ガスセンサ5と、外筒6と、意匠カバー7と、マフラーエンド8と、第1バッフルプレート11と、第1下流側パイプ12と、第2バッフルプレート13と、第2下流側パイプ14と、第3バッフルプレート15とを備える。マフラーエンド8は、マフラー1の下流端部分を構成する部材である。
【0014】
触媒ユニット3は、エンジンEから排出される排気ガスを浄化する触媒3aを有するユニットである。触媒ユニット3は、具体的には、図5に示されるように、触媒3aと、上流側支持部3bと、下流側支持部3cとを有する。触媒3aは、排気ガスに含まれる有害成分を浄化する物質として白金などの金属を含む。上流側支持部3bは、触媒3aの上流側端部を支持する部分であり、触媒ユニット3の入口3dを形成するとともに入口3dから流通方向Xの下流側に向かうにつれて径方向外側に拡大するテーパ状の部分である。上流側支持部3bにおける上記の入口3dを形成している部分は、接続管2の下流側端部2bに溶接などによって接合されている。下流側支持部3cは、触媒3aの下流側端部を支持する部分であり、触媒ユニット3の出口3eを形成するとともに流通方向Xの下流側に向かうにつれて出口3eに向かって径方向内側に縮小するテーパ状の部分である。
【0015】
下流側支持部3cは、具体的には、触媒3aの下流側端部を支持する触媒支持部3c1と、接続パイプ4の上流側端部4aが圧入されたパイプ圧入部3c2と、触媒支持部3c1からパイプ圧入部3c2へ向かうにつれて径方向内側に縮小する縮径部分3c3とを有する。縮径部分3c3は、触媒3aから排気ガスセンサ5に達するまでの間において、言い換えれば、触媒3aから接続パイプ4の第1開口4cが形成された部分に達するまでの間において、下流側に進むにつれて縮径する。
【0016】
接続パイプ4は、触媒ユニット3に対して流通方向Xにおいて下流側に接続されている。具体的には、接続パイプ4の上流側端部4aは、触媒ユニット3の出口3eに圧入されている。触媒ユニット3の出口3eは、下流側支持部3cのパイプ圧入部3c2に形成されている。
【0017】
上記の接続パイプ4の上流側端部4aは、触媒ユニット3の出口3eに圧入されていることで、接続パイプ4と触媒ユニット3とが互いに相対変位可能となる。これによって触媒ユニット3と接続パイプ4との熱膨張差に起因する相対変位を許容することが可能となり、両者の間で生じる熱膨張差に起因する応力を抑制することができる。
【0018】
本実施形態でいう「圧入」とは、排気ガスの熱による熱応力を受けて触媒ユニット3および接続パイプ4が熱膨張時に相対変位可能な嵌め合いで圧入されていることをいう。また、「圧入」は、溶接などによる相対変位を阻止する接合はされていないことを意味する。
【0019】
接続パイプ4の上流側端部4aは、触媒ユニット3の出口3eに圧入されているだけで溶接されている部分がないので、排気ガスセンサ5を触媒3aに近づけることができ、より精度の高い測定が可能になる。
【0020】
接続パイプ4の上流側端部4aは、触媒ユニット3の出口3eに圧入されているのみなので、排気ガスが接続パイプ4の上流側端部4aと触媒ユニット3の出口3eとの隙間から接続パイプ4の外周側にわずかに流出する可能性がある。しかし、微量の排気ガスの流出は排気ガスセンサ5の測定には影響がない。
【0021】
接続パイプ4の下流側端部4bは、上流側端部4aよりも下流側の部分であり、接続パイプ4の周囲の他の部材、本実施形態では第1バッフルプレート11に固定されている。下流側端部4bは、第1バッフルプレート11を介して外筒6に連結されている。
【0022】
図5に示されるように、接続パイプ4の軸中心C2は、外筒6の軸中心C1に対して、第1開口4cが外筒6における排気ガスセンサ5を支持する支持部であるナット62aに近づく方向、図4では上方にオフセットして配置されている。そのため、第1開口4cと当該ナット62aとの距離を短くすることが可能になり、それに伴って外筒6のナット62aに固定されながら接続パイプ4の第1開口4cに挿入される排気ガスセンサ5の長さを短くすることが可能になる。すなわち、既存の排気ガスセンサ5の適用が容易になる。
【0023】
図5に示されるように、接続パイプ4の周面には、排気ガスセンサ5の外径D1よりも大きい開口径D2を有する第1開口4cが形成されている。
【0024】
第1開口4cは、接続パイプ4の下流側端部4bよりも上流側端部4aに近い位置に配置されている。
【0025】
また、本実施形態では、接続パイプ4のうちで、排気ガスセンサ5が配置される第1開口4cが形成された部分の外径D3は、触媒の直径D4よりも小さい。触媒ユニット3は、上記のように、触媒3aから排気ガスセンサ5に達するまでの間において、下流側に進むにつれて縮径する縮径部分3c3を有する。この構成により、触媒3aを通過後の排気ガスを縮径部分3c3で集めて接続パイプ4の第1開口4cに挿入された排気ガスセンサ5に導くことができ、排気ガスの検出精度を高めやすい。なお、縮径部分は、触媒ユニット3の代わりに接続パイプ4の上流側端部4aに形成してもよい。
【0026】
排気ガスセンサ5は、検出素子5aと、取付部5bと、出力端子5cとを有する。検出素子5aは、接続パイプ4の内部を流れる排気ガスの状態を検出する検出部である。取付部5bは、その周面においておねじ部5b1を有する。排気ガスセンサ5のおねじ部5b1は、外筒6のナット62aに挿入されてナット62aの内周面に形成されためじに部に螺合する。これにより、排気ガスセンサ5は、検出素子5aが第1開口4cを通して接続パイプ4の内部に挿入された状態で、外筒6のナット62aに固定されている。
【0027】
排気ガスセンサ5は、その外径D1よりも大きい開口径D2を有する第1開口4cを通して接続パイプ4の内部に挿入されている。したがって排気ガスセンサ5と接続パイプ4とは径方向に間隔gをあけた状態に形成される。このため、接続パイプ4と排気ガスセンサ5とが互いに相対変位可能となる。これによって、接続パイプ4と外筒6との熱膨張差に起因する相対変位を許容することが可能となり、接続パイプ4と外筒6の両者の間で生じる熱膨張差に起因する応力を抑制することができる。
【0028】
検出素子5aは、排気ガスの状態として、排気ガスの酸素濃度を検出するOセンサや排気ガスの流量を検出するエアフローセンサなどである。
【0029】
出力端子5cは、外筒6の外方に突出するとともに意匠カバー7の開口窓7cを通して外部に露出しており、外部のエンジン制御用のコントローラなどに電気的に接続される。出力端子5cは、検出素子5aで検出された排気ガスの状態に関する信号をコントローラへ送信する。
【0030】
外筒6は、少なくとも接続パイプ4の外周を覆う。本実施形態では、外筒6は、触媒ユニット3、接続パイプ4、第1バッフルプレート11、第1下流側パイプ12、第2バッフルプレート13、第2下流側パイプ14、第3バッフルプレート15の外周を覆う。外筒6の出口6bは、図1に示されるように、接続パイプ4の出口4eよりも下流側の位置、具体的には第3バッフルプレート15の下流側の位置に配置されている。この構成により、排気ガスセンサ5と接続パイプ4との隙間や、接続パイプ4と触媒ユニット3の隙間から排気ガスが漏れても、外筒6で覆われているので、外筒6の出口6b以外から外方に排気ガスが漏れることが防ぐことが可能である。
【0031】
外筒6は、接続パイプ4の第1開口4cに連通する第2開口61aが形成された外筒本体61と、第2開口61aを塞ぐ蓋部材62とを備えている。
【0032】
蓋部材62は、中央部62cと、周縁部62bとを有する。中央部62cは、ナット62aを有し、外筒6の他の部分である外筒本体61に対して径方向内側に凹んでいる。これにより、外筒6の凹部6cが形成されている。ナット62aは、蓋部材62の中央部62cに溶接などによって接合されている。ナット62aは、排気ガスセンサ5を接続パイプ4の第1開口4cに挿入された状態で支持する支持部である。
【0033】
周縁部62bは、中央部62cの周囲を取り囲む部分であり、外筒本体61の第2開口61aの周縁に溶接によって接合されているので、第2開口61aから外筒6の外部への排気ガスの漏れはない。
【0034】
本実施形態では、外筒6は、排気ガスセンサ5が固定された部分において、径方向内側に凹む凹部6cを有している。そのため、外筒6との取付位置から検出素子5aまでの距離を短くでき、排気ガスセンサ5が長尺になることを防ぐことができる。
【0035】
しかも、蓋部材62の中央部62cは、ナット62aを有し、外筒本体61よりも径方向内側に凹んで凹部6cを形成している。そのため、外筒6における排気ガスセンサ5が固定されるため凹部6cを形成しやすい。また、外筒6における排気ガスセンサ5が固定されるための凹部6cが存在することにより、排気ガスセンサ5を着脱作業する際にレンチなどの工具を排気ガスセンサ5に近づけやすい。
【0036】
本実施形態では、接続パイプ4の第1開口4cの開口径D2は、外筒6のナット62aの外径D5よりも大きく設定されている。言い換えれば、第1開口4cの内周縁とナット62aの外周縁との間に隙間gが形成されている。これにより、蓋部材62の取付しろを大きくすることができ、周囲の状況などに応じて、外筒6に対する排気ガスセンサ5の取付位置を調整しやすくすることができる。
【0037】
たとえば、図6~8に示されるように、意匠カバー7に収容された外筒6は、共通の外筒6を用いて、排気ガスセンサ5の向きを異ならせることができる。具体的には、図7~8に示されるように、排気ガスセンサ5がナット62aに固定された蓋部材62は、外筒本体61の第2開口61aを塞いでいる範囲では、外筒本体61の周方向に沿って上下方向に位置調整できる。これにより、排気ガスセンサ5の向きを変えることが可能である。
【0038】
第1バッフルプレート11は、接続パイプ4における第1開口4cよりも下流側の部分を支持する支持部材である。
【0039】
第1バッフルプレート11は、図5に示されるように、中央に穴が開いた円板状の部材であり、外筒6の内周面に接合された外周側部分11aと、接続パイプ4の外周面に接合された内周側部分11bと、流通方向Xを向いて開口する開口部11cとを有する。この構成により、第1バッフルプレート11は、外筒6の内周面と接続パイプ4の外周面とを接続するとともに当該外筒6と接続パイプ4との間の空間部S1における排気ガスの流れE1を規制する。
【0040】
マフラー1が上記の第1バッフルプレート11を備えることにより、接続パイプ4は、その上流側端部4aが触媒ユニット3に圧入されるとともに第1開口4cよりも下流側の部分が第1バッフルプレート11で支持される。この構成では、接続パイプ4は、第1開口4cの上流側および下流側で支持されたいわゆる両端支持された状態になる。これにより、接続パイプ4を長尺化したとしても、接続パイプ4の支持強度を向上することが可能である。これによって排気ガスセンサ5から接続パイプ4の出口4eまでの距離を長くしやすく、接続パイプ4の出口4eから排気ガスセンサ5まで逆流する排気ガスを抑えることができる。
【0041】
また、接続パイプ4を支持する第1バッフルプレート11によって外筒6と接続パイプ4との間の空間部S1における排気ガスの流れを規制して当該排気ガスの消音を行うことが可能である。
【0042】
第1下流側パイプ12は、接続パイプ4の下流側端部4bよりも下流側に配置されたパイプである。第1下流側パイプ12は、図5に示されるように、閉じられた上流側端部12aと、複数の通気孔12cを有する周面12bとを有している。この構成により、接続パイプ4を通過した排気ガスは、第1下流側パイプ12の閉じられた上流側端部12aに当たったのちに、バッフルプレートに規制されながら接続パイプ4と外筒6との間の空間部S1へ向かう流れE1と、第1下流側パイプ12の周面12bの通気孔12cを通して第1下流側パイプ12の内部へ向かう流れE2とに分かれて、急拡大と急縮小をすることによって、効果的に消音される。
【0043】
また、本実施形態では、排気ガスセンサ5は、第1開口4cに挿入されることにより、接続パイプ4の下流側端部4bよりも上流側端部4aに近い位置に配置されている。接続パイプ4の下流側にある第1下流側パイプ12の上流側端部12aは、閉じられている。したがって、接続パイプ4を通過した排気ガスの脈動が排気ガスセンサの測定に影響を与えるおそれが低減し、検知精度が向上する。
【0044】
第2バッフルプレート13は、図1~3に示されるように、第1バッフルプレート11と同様に、中央に穴が開いた円板状の部材である。第2バッフルプレート13は、外筒6の内周面と第1下流側パイプ12の外周面とを接続するとともに当該外筒6と第1下流側パイプ12との間の空間部における排気ガスの流れを規制する。
【0045】
第2下流側パイプ14は、第1下流側パイプ12の下流側端部よりも下流側に配置されたパイプである。第2下流側パイプ14は、第1下流側パイプ12と同様に、閉じられた上流側端部と、複数の通気孔を有する周面とを有している。
【0046】
第3バッフルプレート15は、第1バッフルプレート11と同様に、中央に穴が開いた円板状の部材である。第3バッフルプレート15は、外筒6の内周面と第2下流側パイプ14の外周面とを接続するとともに当該外筒6と第2下流側パイプ14との間の空間部における排気ガスの流れを規制する。
【0047】
本実施形態では、外筒6は、当該外筒6の内部に、触媒ユニット3を収容するとともに、排気ガスの運動エネルギーを小さくするための消音室10を形成する。この構成では、外筒6内部に形成された消音室10によって排気ガスの消音を行うとともに、触媒ユニット3を外部から視認しにくくして触媒ユニット3による美観低下を防ぐことができる。
【0048】
本実施形態の消音室10は、具体的には、図2および図5に示されるように、接続パイプ4と、外筒6と、第1バッフルプレート11と、第1下流側パイプ12と、第2バッフルプレート13と、第2下流側パイプ14と、第3バッフルプレート15とによって形成されている。
【0049】
触媒ユニット3は、外筒6に接続パイプ4および第1バッフルプレート11その他の消音室10を構成する部材とともに収容されている。これにより、触媒ユニット3を外部から視認しにくくして美観低下を防ぐとともに消音室10を外筒6内部の限られたスペースで形成することが可能になる。そのため、排気装置の小型化を達成できる。
【0050】
意匠カバー7は、外筒6の外周を覆って意匠性および断熱性を向上させる樹脂製または金属製の筒状の部材である。意匠カバー7は、円筒状の本体部7dと、本体部7dの上流側端部7d1を閉じる円板状の上流側蓋部7aとを有する。本体部7dは、開放された下流側端部7bと、開口窓7cとを有する。意匠カバー7の上流側蓋部7aは、図5に示されるように、当該上流側蓋部7aの中心に開口7a4を有する円板状の部分であり、内側接合部7a1と、中間接合部7a2と、外側接合部7a3とを有する。内側接合部7a1は、開口7a4の周縁を形成するフランジ部であり、接続管2の下流側端部2bの外周面に溶接などによって接合されている。中間接合部7a2は、上流側蓋部7aにおける内周縁と外周縁との間の領域に形成された階段状の部分であり、外筒6の上流側端部6dの内周面に溶接などによって接合されている。外側接合部7a3は、上流側蓋部7aの外周縁を形成するフランジ部であり、本体部7dの上流側端部7d1の内周面に溶接などによって接合されている。本体部7dの下流側端部7bは、図1に示されるマフラーエンド8に溶接などによって接合されている。開口窓7cは、意匠カバー7の本体部7dの周面に形成され、外筒6における排気ガスセンサ5の取付位置に対応する位置に配置されている。これにより、開口窓7cを通して、外部のコントローラを排気ガスセンサ5に電気的に接続することが可能である。
【0051】
[本開示のまとめ]
本開示の第1の態様に係る排気装置は、エンジンから排出される排気ガスを浄化する触媒を有する触媒ユニットと、前記触媒ユニットに対して前記排気ガスの流通方向において下流側に接続された接続パイプと、前記接続パイプの内部を流れる排気ガスの状態を検出する検出部を有する排気ガスセンサと、前記接続パイプの外周を覆う外筒と、を備え、 前記接続パイプの上流側端部は、前記触媒ユニットの出口に圧入され、前記接続パイプは、前記上流側端部よりも下流側の位置で当該接続パイプの周囲の他の部材に固定され、 前記接続パイプの周面には、前記排気ガスセンサの外径よりも大きい開口径を有する第1開口が形成され、前記排気ガスセンサは、前記検出部が前記第1開口を通して前記接続パイプの内部に挿入された状態で前記外筒に固定されている。
【0052】
第1の態様によれば、接続パイプの上流側端部は、触媒ユニットの出口に圧入されていることで、接続パイプと触媒ユニットとが互いに相対変位可能となる。これによって触媒ユニットと接続パイプとの熱膨張差に起因する相対変位を許容することが可能となり、両者の間で生じる応力を抑制することができる。
【0053】
また、排気ガスセンサは、その外径よりも大きい第1開口を通して接続パイプの内部に挿入されている。したがって排気ガスセンサと接続パイプとは径方向に間隔をあけた状態に形成される。このため、接続パイプと排気ガスセンサとが互いに相対変位可能となる。これによって、接続パイプと外筒との熱膨張差に起因する相対変位を許容することが可能となり、両者の間で生じる応力を抑制することができる。
【0054】
本開示の第2の態様に係る排気装置は、第1の態様に係る排気装置において、前記外筒は、前記触媒ユニットおよび前記接続パイプの外周を覆い、前記外筒の出口は、前記接続パイプの出口よりも下流側の位置に配置されている。
【0055】
第2の態様によれば、排気ガスセンサと接続パイプとの隙間や、接続パイプと触媒ユニットの隙間から排気ガスが漏れても、外筒で覆われているので、外筒の出口以外から外方に排気ガスが漏れることが防ぐことが可能である。
【0056】
本開示の第3の態様に係る排気装置は、第1または第2の態様に係る排気装置において、前記接続パイプのうちで、前記排気ガスセンサが配置される前記第1開口が形成された部分の外径は、前記触媒の直径よりも小さく、前記触媒ユニットまたは前記接続パイプは、前記触媒から前記排気ガスセンサに達するまでの間において、下流側に進むにつれて縮径する縮径部分を有する。
【0057】
第3の態様によれば、触媒を通過後の排気ガスを縮径部分で集めて接続パイプの第1開口に挿入された排気ガスセンサに導くことができ、排気ガスの検出精度を高めやすい。
【0058】
本開示の第4の態様に係る排気装置は、第1~第3の態様に係る排気装置において、前記接続パイプの軸中心は、前記外筒の軸中心に対して、前記第1開口が前記外筒における前記排気ガスセンサを支持する支持部に近づく方向にオフセットして配置されている。
【0059】
第4の態様によれば、接続パイプは、外筒の軸中心に対して、接続パイプの第1開口が外筒における排気ガスセンサを支持する支持部に近づく方向にオフセットして配置されているので、第1開口と当該支持部との距離を短くすることが可能になり、それに伴って外筒の支持部に固定されながら接続パイプの第1開口に挿入される排気ガスセンサの長さを短くすることが可能になる。これにより、既存の排気ガスセンサの適用が容易になる。
【0060】
本開示の第5の態様に係る排気装置は、第1~第4の態様に係る排気装置において、前記外筒における前記排気ガスセンサが固定された部分は、前記外筒の他の部分に対して径方向内側に凹んでいる。
【0061】
第5の態様によれば、外筒との取付位置から検出部までの距離を短くでき、排気ガスセンサが長尺になることを防ぐことができる。
【0062】
本開示の第6の態様に係る排気装置は、第5の態様に係る排気装置において、前記外筒は、前記接続パイプの前記第1開口に連通する第2開口が形成された外筒本体と、前記第2開口を塞ぐ蓋部材とを備えており、前記蓋部材は、前記排気ガスセンサを前記第1開口に挿入された状態で支持する支持部を有し、前記外筒本体よりも径方向内側に凹んだ中央部と、前記外筒本体の前記第2開口の周縁に接合された周縁部とを備える。
【0063】
第6の態様によれば、外筒における排気ガスセンサが固定されるための凹んだ部分を形成しやすい。
【0064】
本開示の第7の態様に係る排気装置は、第1~第6の態様に係る排気装置において、前記接続パイプにおける前記第1開口よりも下流側の部分を支持する支持部材をさらに備えている。
【0065】
第7の態様によれば、上記の支持部材を備えることにより、接続パイプは、その上流側端部が触媒ユニットに圧入されるとともに第1開口よりも下流側の部分が支持部材で支持されるので、接続パイプは第1開口の上流側および下流側で支持されたいわゆる両端支持された状態になる。これにより、接続パイプを長尺化したとしても、接続パイプの支持強度を向上することが可能である。これによって排気ガスセンサから接続パイプの出口までの距離を長くしやすく、接続パイプの出口から排気ガスセンサまで逆流する排気ガスを抑えることができる。
【0066】
本開示の第8の態様に係る排気装置は、第7の態様に係る排気装置において、前記支持部材は、前記外筒の内周面と前記接続パイプの外周面とを接続するとともに当該外筒と前記接続パイプとの間の空間部における排気ガスの流れを規制するバッフルプレートである。
【0067】
第8の態様によれば、接続パイプを支持する支持部材がバッフルプレートであるので、当該バッフルプレートによって外筒と接続パイプとの間の空間部における排気ガスの流れを規制して当該排気ガスの消音を行うことが可能である。
【0068】
本開示の第9の態様に係る排気装置は、第8の態様に係る排気装置において、前記接続パイプの下流側端部よりも下流側に配置された下流側パイプをさらに備え、前記下流側パイプは、閉じられた上流側端部と、複数の通気孔を有する周面とを有しており、前記第1開口は、前記接続パイプの下流側端部よりも上流側端部に近い位置に配置されている。
【0069】
第9の態様によれば、接続パイプの下流側に配置された下流側パイプが、閉じられた上流側端部と、複数の通気孔を有する周面とを有することにより、接続パイプを通過した排気ガスは、下流側パイプの閉じられた上流側端部に当たったのちに、バッフルプレートに規制されながら接続パイプと外筒との間の空間部へ向かう流れと、下流側パイプの周面の通気孔を通して下流側パイプの内部へ向かう流れとに分かれて、急拡大と急縮小をすることによって、効果的に消音される。
【0070】
また、排気ガスセンサは第1開口に挿入されることにより、接続パイプの下流側端部よりも上流側端部に近い位置に配置され、かつ、接続パイプの下流側の下流側パイプの上流側端部が閉じられている。したがって、接続パイプを通過した排気ガスの脈動が排気ガスセンサの測定に影響を与えるおそれが低減し、検知精度が向上する。
【0071】
本開示の第10の態様に係る排気装置は、第1~第9の態様に係る排気装置において、前記外筒は、当該外筒の内部に、前記触媒ユニットを収容するとともに、排気ガスの運動エネルギーを小さくするための消音室を形成する。
【0072】
第10の態様によれば、外筒内部に形成された消音室によって排気ガスの消音を行うとともに、触媒ユニットを外部から視認しにくくして触媒ユニットによる美観低下を防ぐことができる。
【0073】
本開示の第11の態様に係る排気装置は、第10の態様に係る排気装置において、前記消音室は、前記外筒と、前記接続パイプと、前記外筒の内周面と前記接続パイプの外周面とを接続するとともに当該外筒と前記接続パイプとの間の空間部における排気ガスの流れを規制するバッフルプレートと、によって形成され、前記触媒ユニットは、前記外筒に前記接続パイプおよび前記バッフルプレートとともに収容されている。
【0074】
第11の態様によれば、触媒ユニットが外筒に消音室を形成する接続パイプおよびバッフルプレートとともに収容されることで、触媒ユニットを外部から視認しにくくして美観低下を防ぐとともに消音室を外筒内部の限られたスペースで形成することが可能になる。そのため、排気装置の小型化を達成できる。
【符号の説明】
【0075】
1 マフラー(排気装置)
3 触媒ユニット
3a 触媒
3c2 縮径部分
4 接続パイプ
4a 上流側端部
4b 下流側端部
4c 第1開口
4d 入口
4e 出口
5 排気ガスセンサ
5a 検出部
6 外筒
6a 入口
6b 出口
6c 凹部
61 外筒本体
61a 第2開口
62 蓋部材
62a ナット(支持部)
62b 周縁部
62c 中央部
10 消音室
11 第1バッフルプレート
12 第1下流側パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8