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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025075706
(43)【公開日】2025-05-15
(54)【発明の名称】光伝送用光受動部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/26 20060101AFI20250508BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
G02B6/26
G02B6/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187072
(22)【出願日】2023-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 真人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆司
(72)【発明者】
【氏名】堀口 奏美
(72)【発明者】
【氏名】金田 安生
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137AB01
2H137BA01
2H137BA15
2H137BC01
2H137BC32
2H137BC51
2H137CA15A
2H137CA15C
2H137CA15D
2H137CA35
2H137CB06
2H137CB26
2H137CB32
2H137CB34
2H137CB35
2H137CC01
2H137CC08
2H137DA07
2H137HA01
(57)【要約】
【課題】製造時の調芯作業が容易で、結合的な損失が極めて低い光伝送用光受動部品を提供する。
【解決手段】光信号が入出力される光回路を備えた光伝送用光受動部品1であって、筐体2と、筐体の内部に配置される光学素子dと、筐体に対して光信号を入出力させるための複数の端子10と、備え、複数の前記端子は、n≧2として、外部機器に接続されるn個の第1種端子10aと、外部機器に接続されない第2種端子10bとを含み、二つ一組の前記第2種端子が前記筐体外にて光ファイバー22で連絡されてなる迂回光路を有し、光回路は、一つの光路(31~34)の両端で互いに空間結合された二つの第1種端子を光信号の入出力端とし、光路の数がmであるとともに、迂回光路を含まない筐体内回路部と、光路34の途上に前記迂回光路を含む迂回回路部とで構成され、m≧nである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号が入出力される光回路を備えた光伝送用光受動部品であって、
筐体と、
筐体の内部に配置される光学素子と、
前記筐体に対して光信号を入出力させるための複数の端子と、
を備え、
複数の前記端子は、n≧2として、外部機器に接続されるn個の第1種端子と、外部機器に接続されない第2種端子とを含み、
二つ一組の前記第2種端子が前記筐体の外方にて光ファイバーで連絡されてなる迂回光路を有し、
前記光回路は、一つの光路の両端で互いに空間結合された二つの前記第1種端子を光信号の入出力端とし、光路の数がmであるとともに、前記迂回光路を含まない筐体内回路部と、光路の途上に前記迂回光路を含む迂回回路部とで構成され、
m≧nである、
光伝送用光受動部品。
【請求項2】
前記筐体内回路部は、一つの光路の両端となる二つ一組の第1種端子の組をn-1組有する、請求項1に記載の光伝送用光受動部品。
【請求項3】
前記端子として、前記光回路を構成する光学素子を内蔵した二芯光ファイバーコリメーターを有する、請求項1に記載の光伝送用光受動部品。
【請求項4】
前記端子として、前記光回路を構成する光学素子を内蔵した二芯光ファイバーコリメーターを有し、
前記二芯光ファイバーコリメーターは、前記第1種端子と前記第2種端子とを兼用し、
前記二芯光ファイバーコリメーターに内蔵された前記光学素子は、当該二芯光ファイバーコリメーターに接続される二つの光ファイバーの一方から筐体内に向かう光を筐体内に向かう光と他方の光ファイバーに入射する光とに分離し、
前記他方の光ファイバーにより前記迂回光路が形成されている、
請求項1に記載の光伝送用光受動部品。
【請求項5】
少なくとも一つの前記端子が調芯機構を介して前記筐体に取り付けられている請求項1に記載の光伝送用光受動部品。
【請求項6】
前記筐体と前記迂回光路とを収納する第2の筐体を有し、前記第2の筐体の外の外部機器に接続される光ファイバーが第2の筐体の外方に案内される、請求項1~5のいずれかに記載の光伝送用光受動部品。
【請求項7】
請求項1に記載の光伝送用光受動部品の製造方法であって、
一つの迂回光路において、筐体内から筐体外に光を案内する第2種端子を第1の第2種端子とするとともに、筐体外から筐体内に光を案内する第2種端子を第2の第2種端子として、
前記筐体内に前記光学素子を配置して固定する光学素子配置ステップと、
筐体に複数の端子を調芯して取り付ける端子調芯取付ステップと、
前記第1の第2種端子と第2の第2種端子とを光ファイバーで連絡させて前記迂回光路を形成する迂回光路形成ステップと、
を含む、
光伝送用光受動部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光伝送用光受動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号が入出力される光回路では、光信号の入力端から出力端に至る光路の途上に光学素子が配置されてなる。そして、光回路には、フリースペース型と呼ばれるものがある。フリースペース型の光回路は、光導波路や光ファイバーを介さずに光信号をフリースペース(空間)中で伝搬させる。このフリースペース型の光回路を備えた光伝送用部品では、光学的な機能を有する複数の光学素子が筐体内に配置されている。また、光伝送用部品には、光回路にレーザーダイオード等の能動型の光学素子を含む光伝送用光能動部品と、光学素子がフィルター等の受動型の光学素子のみで光回路が構成される光伝送用光受動部品とがある。そして、光伝送用光受動部品では、光ファイバーコリメーター等の端子を介して筐体外からの光信号が筐体内に入射されるととともに、入射された光は光回路の光路を辿って端子から筐体外に向けて出射される。
【0003】
そして、フリースペース型の光回路を備えた光伝送用光受動部品は、光伝送に光ファイバーを使用しないため、伝送損失が少ないという特徴を有する。また、フリースペース型の光伝送用光受動部品は、筐体内の光学素子同士を光ファイバーで結合する工程が不要であることから製造コストを低減させることができる。さらに、フリースペース型の光伝送用光受動部品において、筐体内の光学素子における光の入出射面は、原理的には、光路となるレーザー光のスポット径の大きさがあればよく、光学素子間で光ファイバーを取り回すためのスペースも不要なことからフリースペース型の光伝送用光受動部品は、小型化にも適している。なお、以下の特許文献1には筐体内にフリースペース型の光回路が形成された光伝送用部品である光増幅器及び受光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】特開平7-335956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、フリースペース型の光伝送用光受動部品は、光伝送に伴う損失として、光回路と端子との間のみで考慮すればよいことから、総合的な損失を最小限にすることが期待できる。言い換えれば、フリースペース型の光伝送用光受動部品は、端子と光回路との結合損失をより少なくすることで、損失を極めて低くすることができる。
【0006】
しかしながら、複数の機能を実現するための光回路が一つの筐体内に構成されたフリースペース型の光伝送用光受動部品では、光回路が備える一つの機能毎に二つ一組の端子が必要となる。すなわち、光回路が備える一つの機能は、一つの端子を光信号の入力端として外部から筐体内に導かれた光信号が、光回路における光路の一つを伝搬しつつ、その光路の途上に配置された光学素子による透過や反射等を経て、最終的に出力端となる一つの端子に結合して外部に出力される。したがって、一つの光伝送用光受動部品で複数の機能を実現させる場合には、光回路において、入力端と出力端となる二つ一組の端子の組を複数備えることになる。そして、ある機能を実現するための二つ一組の端子の一方が、他の機能における入力端と出力端のいずれかを兼ねる場合がある。例えば、図1に例示した4ポート型の光伝送用光受動部品100では、光ファイバーコリメーター10を端子として、矩形箱状の筐体2において互いに対面する二面3に二つずつ、合計四つの光ファイバーコリメーター10が取り付けられており、筐体2内に、複数の光学素子dが配置されなるフリースペース型の光回路が構成されている。
【0007】
ここで、四つの光ファイバーコリメーター10を第1~第4の光ファイバーコリメーター(11~14)と称して識別するとともに、上記の互いに対面する二面3の一方に第1と第3の光ファイバーコリメーター(11,13)が取り付けられ、他方に第2と第4の光ファイバーコリメーター(12,14)が取り付けられていることとする。そして、光回路には、第1の光ファイバーコリメーター11から第2の光ファイバーコリメーター12に至る第1の光路31、第3の光ファイバーコリメーター13から第2の光ファイバーコリメーター12に至る第2の光路32、第3の光ファイバーコリメーター13から第4の光ファイバーコリメーター14に至る第3の光路33、及び第4の光ファイバーコリメーター14から第2の光ファイバーコリメーター12に至る第4の光路34の合計四つの光路が形成されている。
【0008】
そして、図1に例示した光伝送用光受動部品100の組み立て手順としては、例えば、まず、筐体2内に光回路が備える複数の光学素子dとして、第1~第5のフィルター(F1~F5)と、第1と第2のミラー(M1,M2)とを配置する。全ての光学素子dを筐体2内に配置したならば、第1と第2の光ファイバーコリメーター(11,12)を調芯して第1の光路31を形成する。次いで、第2の光路32において調芯済みの第2の光ファイバーコリメーター12の対となる第3の光ファイバーコリメーター13を調芯して第2の光路32を形成する。同様にして、調芯済みの第3の光ファイバーコリメーター13と第3の光路33において対となる第4の光ファイバーコリメーター14を調芯する。この時点で、第1~第3の光路(31~33)が形成される。
【0009】
ところが、この時点で調芯済みの第2と第4の光ファイバーコリメーター(12,14)とが高精度に結合した状態になって、第4の光路34が形成されているとは限らない。このような場合、最終的に全ての光路(31~34)において低損失で結合するように、既に配置済みの第4の光路34に関係する第1と第2のミラー(M1,M2)の角度を微調整したり、調芯済みの第2及び第4の光ファイバーコリメーター(12,14)、さらにはこれらの光ファイバーコリメーター(12,14)と他の光路(31~33)を介して結合している他の光ファイバーコリメーター(11、13)に対する調芯作業を繰り返したりする場合がある。ミラー(M1,M2)に加えフィルター(F1~F5)の配置を再調整する必要が生じる可能性もある。もちろん、光ファイバーコリメーター10の調芯範囲には限度があることから、全ての光ファイバーコリメーター10で調芯可能にするために、事前に光学素子dを極めて高い精度で配置しておく必要もある。
【0010】
したがって、従来のフリースペース型の光伝送用光受動部品では、現実的には、総合的な損失を極めて低くすることが難しかった。また、調芯作業も繁雑なことから、その作業に掛かるコストにより光伝送用光受動部品をより安価に提供することも難しかった。
【0011】
そこで本発明は、製造時の調芯作業が容易で、結合的な損失が極めて低い光伝送用光受動部品、及び光伝送用光受動部品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、光信号が入出力される光回路を備えた光伝送用光受動部品であって、
筐体と、
筐体の内部に配置される光学素子と、
前記筐体に対して光信号を入出力させるための複数の端子と、
を備え、
複数の前記端子は、n≧2として、外部機器に接続されるn個の第1種端子と、外部機器に接続されない第2種端子とを含み、
二つ一組の前記第2種端子が前記筐体の外方にて光ファイバーで連絡されてなる迂回光路を有し、
前記光回路は、一つの光路の両端で互いに空間結合された二つの前記第1種端子を光信号の入出力端とし、光路の数がmであるとともに、前記迂回光路を含まない筐体内回路部と、光路の途上に前記迂回光路を含む迂回回路部とで構成され、
m≧nである。
【0013】
前記筐体内回路部は、一つの光路の両端となる二つ一組の第1種端子をn-1組有する、光伝送用光受動部品としてもよい。
【0014】
前記端子として、前記光回路を構成する光学素子を内蔵した二芯光ファイバーコリメーターを有する、請求項1に記載の光伝送用光受動部品とすることもできる。
【0015】
前記端子として、光学素子を内蔵した二芯光ファイバーコリメーターを有し、
前記二芯光ファイバーコリメーターは、前記第1種端子と前記第2種端子とを兼用し、
前記二芯光ファイバーコリメーターに内蔵された前記光学素子は、当該二芯光ファイバーコリメーターに接続される二つの光ファイバーの一方から筐体内に向かう光を筐体内に向かう光と他方の光ファイバーに入射する光とに分離し、
前記他方の光ファイバーにより前記迂回光路が形成されている、
請求項1に記載の光伝送用光受動部品とすることもできる。
【0016】
少なくとも一つの前記端子が調芯機構を介して前記筐体に取り付けられていてもよい。
【0017】
前記筐体と前記迂回光路とを収納する第2の筐体を有し、前記迂回光路が当該第2の筐体内に収納され、前記第2の筐体の外の外部機器に接続される光ファイバーが第2の筐体の外方に案内される、光伝送用光受動部品とすることもできる。
【0018】
本発明の範囲には、光伝送用光受動部品の製造方法も含まれており、当該製造方法は、
一つの迂回光路において、筐体内から筐体外に光を案内する第2種端子を第1の第2種端子とするとともに、筐体外から筐体内に光を案内する第2種端子を第2の第2種端子として、
前記筐体内に前記光学素子を配置して固定する光学素子配置ステップと、
筐体に複数の端子を調芯して取り付ける端子調芯取付ステップと、
前記第1の第2種端子と第2の第2種端子とを光ファイバーで連絡させて前記迂回光路を形成する迂回光路形成ステップと、
を含んでいる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製造時の調芯作業が容易で、結合損失が極めて低い光伝送用光受動部品、及び光伝送用光受動部品の製造方法が提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】比較例に係る光伝送用光受動部品の構成を示す図である。
図2】第1の実施例に係る光伝送用光受動部品の外観を示す図である。
図3】第1の実施例に係る光伝送用光受動部品の構成を示す図である。
図4】第1の実施例に係る光伝送用光受動部品の製造方法を示す図である。
図5】第2の実施例に係る光伝送用光受動部品が備える光ファイバーコリメーターを、調芯機構を介して筐体に取り付けた状態を示す図である。
図6】第2の筐体に収納された第1の実施例に係る光伝送用光受動部品を示す図である。
図7】第2の実施例に係る光伝送用光受動部品の構成を示す図である。
図8】第2の実施例に係る光伝送用光受動部品が備える二芯光ファイバーコリメーターの構成を示す図である。
図9】その他の実施例に係る光伝送用光受動部品を示す図であり、光伝送用光受動部品が備える第2種光ファイバーコリメーターの筐体への取り付け位置を示す図である。
図10】その他の実施例に係る光伝送用光受動部品を示す図であり、ミラーを用いずに全ての光ファイバーコリメーターを筐体の取付面に配置する場合の光回路の構成を示す図である。
図11】第1の実施例に係る光伝送用光受動部品を二つ接続した状態を示す図である。
図12】その他の実施例に係る光伝送用光受動部品の構成を示す図であり、第1種光ファイバーコリメーターを二つ備えた光伝送用光受動部品の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例について、以下に添付図面を参照しつつ説明する。なお以下の説明に用いた図面において、同一、又は類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。ある図面において符号を付した部分について、不要であれば他の図面ではその部分に符号を付さない場合もある。
===第1の実施例===
<光回路の構成>
図2は、本発明の実施例に係る光伝送用光受動部品1の外観を示す図である。図2に示した光伝送用光受動部品1は、矩形箱状の筐体2において互いに平行となる対面し合う二面(以下、「取付面3」と言うことがある。)のそれぞれに、端子として光ファイバー20が接続されてなる光ファイバーコリメーター(10a,10b)が三つずつ取り付けられている。また、六つの光ファイバーコリメーター(10a,10b)のうち、四つの光ファイバーコリメーター(11~14)に接続されている光ファイバー21は、外部機器に対する光信号の入力端あるいは出力端となる。しかし、二つの光ファイバーコリメーター(15,16)は、外部機器に接続されず、互いが一本の光ファイバー22によってループ状となるように接続されている。そして、筐体2内には複数の光学素子が配置されており、光伝送用光受動部品1の光回路は、その筐体2内においはフリースペース型となっている。
【0022】
図3に実施例に係る光伝送用光受動部品1の光回路を示した。図3では筐体2内に配置される光学素子dとその光学素子dによって構成される光回路の光路(31~34)とが示されている。図3に示した実施例に係る光伝送用光受動部品1の光回路は、図1に示した光伝送用光受動部品(以下、「比較例100」又は「比較例に係る光伝送用光受動部品100」と言うことがある。)と実質的に同じ機能を有する。すなわち、光回路は、光信号を第1と第2の光ファイバーコリメーター(11,12)同士が空間結合する経路で伝搬させる第1の光路31、以下、同様に、第2と第3の光ファイバーコリメーター(12,13)同士を空間結合させる第2の光路32、第3と第4の光ファイバーコリメーター(13,14)同士を空間結合させる第3の光路33、及び第4と第2の光ファイバーコリメーター(14,12)同士を空間結合させる第4の光路34とを有する。また、光学素子dとして第1~第5のフィルター(F1~F5)と第1と第2のミラー(M1,M2)とを備える。
【0023】
なお、実施例に係る光伝送用光受動部品1の光回路において、第1~第5のフィルター(F1~F5)は、例えば、波長選択フィルターであり、所定の波長帯域の光を透過させ、それ以外の波長帯域の光を反射する。波長選択フィルターとしては、例えば、透明基板上に誘電体多層膜が積層された干渉フィルター等がある。そして、第1のフィルターF1は、波長帯域λ1の光を透過し、第2と第3のフィルター(F2,F3)は、波長帯域λ2の光を透過し、第4のフィルターF4波長帯域λ4の光を透過し、第5のフィルターF5は波長帯域λ1とλ3の光を透過するものとする。
【0024】
そして、第1の光ファイバーコリメーター11は、外部機器から光ファイバー20を介して伝送されてきた波長帯域λ1の光信号を光回路の第1の光路31に光信号を入力するための光ポート(以下、「入力ポート」と言うことがある。)であり、第2の光ファイバーコリメーター12は、第1、第2、及び第4の光路を伝搬してきた波長帯域λ1、λ3、及びλ4のそれぞれの光信号が合波されたものを出力するための光ポート(以下、「出力ポート」と言うことがある。)である。第3の光ファイバーコリメーターは、第2及び第3の光路(32,33)への入力ポートであり、波長帯域λ2及びλ3が合波された光信号を光回路に入力する。そして、第4の光ファイバーコリメーター14は、波長帯域λ2の光信号が伝搬される第2の光路31の出力ポートであるとともに、波長帯域λ4の光信号を第4の光路34へ入力する入力ポートでもある。なお、図3では、波長帯域λ1の光を太い実線で示し、波長帯域λ2の光を細い実線で示している。また、波長帯域λ3の光を破線で示し、波長帯域λ4の光を点線で示している。このように、比較例100と実施例に係る光伝送用光受動部品1とでは、光回路における各光路31~34のそれぞれにおける入力ポートと出力ポートとの組み合わせが同じである。そして、フィルターF1~F5が同じであれば、比較例100と実施例に係る光伝送用光受動部品1は、実質的に同じ機能を有するものとなる。しかし、実施例に係る光伝送用光受動部品1では、第4の光路34の経路が比較例100とは異なっている。
【0025】
具体的には、実施例に係る光伝送用光受動部品1では、外部機器と接続されて光信号の入出力に関わるに光ファイバーコリメーター(以下、「第1種光ファイバーコリメーター10a」と言うこととする。)に加え、第4の光路34を形成するために、外部機器に接続されない光ファイバーコリメーター(以下、「第2種光ファイバーコリメーター10b」と言うことがある。)を備える。
【0026】
第2種光ファイバーコリメーター10bは、二つ一組で構成され、一組の第2種光ファイバーコリメーター(15,16)は、筐体2の外方を経由する光ファイバー22で接続されている。なお、以下では、光回路において、この筐体2の外方における光ファイバー22とその両端に接続された第2種光ファイバーコリメーター10bとによって形成される光信号の経路を迂回光路と称することとする。
【0027】
図3に示した実施例に係る光伝送用光受動部品1の光回路は、四つの第1種光ファイバーコリメーター10a(以下、「第1~第4の第1種光ファイバーコリメーター11~14」と言うことがある。)と二つの第2種光ファイバーコリメーター10b(15,16)とを有する。そして、光回路は、迂回光路を経ずに二つ一組の第1種光ファイバーコリメーター10a同士が空間結合する第1~第3の光路(31~33)、及びそれらの光路(31~33)の途上に介在する光学素子(F1~F4)を含む回路部分(以下、「筐体内回路部」と言うことがある。)と、迂回光路を経由して二つ一組の第1種光ファイバーコリメーター10b同士が空間結合する第4の光路34、及び当該光路34の途上に介在する光学素子(F3,F4,M1,M2,F5)とを含む回路部分(以下、「迂回回路部」と言うことがある。)とで構成される。すなわち、光伝送用光受動部品1備える光回路において、筐体内回路部は、筐体2内に形成された光路(31~33)のみで構成されたフリースペース型の光回路であり、迂回回路部は、フリースペース型の光回路に光ファイバーを経由する迂回光路が追加された光回路である。なお、筐体内回路部における第1~第3の光路(31~33)の経路は比較例100と同じである。
【0028】
一方、実施例における第4の光路34は、まず、第4の第1種光ファイバーコリメーター14から筐体2内に入射した波長帯域λ2の光が第3の光路33を逆に辿る途上でフィルターF3により反射されて分岐するとともに、その分岐した先において、迂回光路を構成する二つの第2種光ファイバーコリメーター10bの一方15と空間結合し、筐体2外へ案内される。具体的には、フィルターF3により反射されて分岐した光が、分岐した先に配置されているミラーM1により図3の紙面右側の取付面3の方向に反射され、その反射した光が、二つ一組の一方の第2種光ファイバーコリメーター15に結合し、迂回光路を構成する光ファイバー23により筐体2外へ案内される。そして、光信号は、二つ一組の他方の第2種光ファイバーコリメーター16を介して再び筐体2内に入射し、ミラーM2で紙面下方に反射された後、筐体内回路部の第1の光路31上に介在するフィルターF5にて紙面右方に反射して第1の光路31と合流しつつ、第2の第1種光ファイバーコリメーター12に結合する。
<光伝送用光受動部品の製造手順>
次に、実施例に係る光伝送用光受動部品1の製造方法について説明する。図3に光伝送用光受動部品1の製造手順の一例を示した。まず、筐体2内に光学素子dを配置して固定するとともに、取付面3に六つの光ファイバーコリメーター(11~16)を完全に固定せずに取り付ける(s1)。すなわち、光ファイバーコリメーター(11~16)を調芯可能に取り付ける。なお、迂回光路を構成する光ファイバー22の両端には、それぞれ第2種光ファイバーコリメーター(15,16)を接続しておく。
【0029】
次に、筐体内回路部を構成する第1~第3の光路(31~33)のそれぞれを、この順に形成していく。具体的には、第1の光路31を形成するために第1と第2の第1種光ファイバーコリメーター(11,12)の取付面3への取り付け位置や取付角度を調整し、結合損失が最少となったところで第1と第2の第1種光ファイバーコリメーター(11,12)を接着や溶接などにより固定する(s2)。なお、光ファイバーコリメーター10に対する調芯作業は、周知のごとく、光路の両端で空間結合する二つ一組の光ファイバーコリメーター10の一方から光ビームを入射し、他方の光ファイバーコリメーター10から出力される光ビームの強度を測定することで行われる。そして、出力される光ビームの強度が最大となるようにする。
【0030】
同様にして第2の光路32を形成するために、調芯済みの第1の第1種光ファイバーコリメーター11と第2の光路32を介して空間結合する第3の第1種光ファイバーコリメーター13を調芯して固定する(s3)。第3の第1種光ファイバーコリメーター13と第3の光路33を介して空間結合する第4の第1種光ファイバーコリメーター14についても同様にして調芯して固定する(s4)。
【0031】
次に、迂回回路部を構成する第4の光路34を形成する。具体的には、二つの第2種光ファイバーコリメーター(15,16)において、筐体2内から筐体2外へ光信号を案内する第2種光ファイバーコリメーター15を第1の第2種光ファイバーコリメーター15とし、この第2種光ファイバーコリメーター15と光ファイバー22を介して接続されるもう一方の第2種光ファイバーコリメーター16を第2の第2種光ファイバーコリメーター16とすると、第4の光路34の入力ポートとなる第4の第1種光ファイバーコリメーター14と、第1の第2種光ファイバーコリメーター15との結合損失が最小となるように第1の第2種光ファイバーコリメーター15を調芯し固定する(s5)。それにより、第4の光路34において、第4の第1種光ファイバーコリメーター14から第1の第2種光ファイバーコリメーター15までの経路34aが形成される。そして、第4の光路33の出力ポートなる第2の第1種光ファイバーコリメーター12と第2の第2種光ファイバーコリメーター16との結合損失が最小となるように、第2の第2種光ファイバーコリメーター16を調芯して固定する(s6)。このようにして第1~第4の光路(31~34)が形成され、光伝送用光受動部品1の光回路が構成される。
【0032】
なお、第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1では、四つの第1種光ファイバーコリメーター10aに対し、筐体内回路部は第1~第3の三つの光路(31~33)を有する。すなわち、第1種光ファイバーコリメーター10aの総数より一つ少ない数の光路(31~33)を有する。このような場合には、筐体内回路部の光路(31~33)については、一度調芯した第1種光ファイバーコリメーター10aに対する再度の調芯作業が不要となる。しかし、比較例100のように、筐体内回路部に第1種光ファイバーコリメーター10aと同数以上の光路(31~34)を形成しようとすると、調芯済みの第1種光ファイバーコリメーター10aに対して再度の調芯作業が必要となる可能性が高い。したがって、光回路が、第1種光ファイバーコリメーター10aと同数以上の光路(31~34)を有する場合には、迂回光路を設けることで、調芯済みの第1種光ファイバーコリメーター10aに対する再度の調芯作業を不要にすることができる。
【0033】
言い換えれば、光回路に設けるべき光路の数mが第1種光ファイバーコリメーター10aの数n以上である場合には迂回回路部によってn番目以上の光路を形成すればよい。すなわち、第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1を含めた本発明の実施例の基本構成は、迂回光路を含まない筐体内内回路部と、光路の一部に迂回光路を含む迂回回路部とを有する光回路を備え、m≧nとなっている。
また、第4の光路34を形成するための調芯作業と、第1~第3の光路(31~33)を形成するための調芯作業とは互いに独立した作業であり、一方の調芯作業が他の調芯作業に影響することがない。そのため、当初から極めて高い位置精度で光学素子dを配置する必要がない。すなわち、実施例に係る光伝送用光受動部品1は、その調芯作業に加え、光学素子dの配置に関わる工程に掛かるコストも低減させることができるものとなっている。そして、実施例に係る光伝送用光受動部品1は、各光路(31~34)の両端にある光ファイバーコリメーター10間の結合損失が低く、フリースペース型の光回路が原理的に備える伝送損失が低いという利点との相乗効果により、総合的な損失が極めて低いものとなる。
<調芯機構>
光ファイバーコリメーター(10a,10b)は調芯機構を介して筐体2に取り付けられていてもよい。図5に調芯機構50を介して取り付けられた光ファイバーコリメーター(10a,10b)の概略構成を示した。調芯機構50は、光ファイバーコリメーター(10a,10b)を筐体2に取り付けるためのホルダー60に組み込まれており、調芯機構50は、光ファイバーコリメーター(10a,10b)を調芯可能に、かつ着脱自在に保持するように構成されている。光ファイバーコリメーター(10a,10b)は、ホルダー60は、その調芯機構50と自身を筐体2に取り付けるための部材となる基台53とからなり、基台53が筐体2に固定されることで、光ファイバーコリメーター(10a,10b)が筐体2に調芯可能に取り付けられる。もちろん、ホルダー60に対して光ファイバーコリメーター(10a,10b)が着脱不能に保持されていてもよい。すなわち、光ファイバーコリメーター(10a,10b)自体が調芯機構50を備えたものであってもよい。
【0034】
調芯機構50は、光ファイバーコリメーター(10a,10b)を保持した状態で筐体2に固定された基台53に対して相対的に可動可能な機構であり、例えば、周知のxyステージと同様の構成により、取付面3と平行な方向(x,y)方向に光ファイバーコリメーター(10a,10b)を微動させるための機構51と、周知の回転・チルトステージと同様の構成により、取付面3の法線5を軸とした回転方向θ、及び当該法線5に対して傾斜する方向φに光ファイバーコリメーター(10a,10b)の姿勢を微調整するための機構52とで構成されている。
【0035】
そして、調芯機構50を介して光ファイバーコリメーター(10a,10b)を筐体2に取り付けることで、例えば、光伝送用光受動部品1の製造時に、調芯作業に特化した専用の治具等を用いずに調芯作業を行うことができるようになる。製造後に何らかの理由で光ファイバーコリメーター10の調芯状態がずれた場合には、容易に再調整することもできる。なお、全ての光ファイバーコリメーター(10a,10b)が調芯機構50を介して筐体2に取り付けられている必要はない。
<筐体について>
実施例に係る光伝送用光受動部品1において、第2種光ファイバーコリメーター(15,16)は、外部機器との光信号の送受信に関与しないことから、筐体2と、迂回光路を構成する第2種光ファイバーコリメーター(15,16)と、それに接続されている光ファイバー22とを別の筐体内に収納し、その筐体(以下、「第2の筐体」と言うこともある。)から第1種光ファイバーコリメーター(11~14)に接続されている光ファイバー21を第2の筐体の外方に案内させるようにしてもよい。
【0036】
図6に第2の筐体102を備えた光伝送用光受動部品101の概略構造を示した。第2の筐体102内に筐体2と迂回光路の構成要素(15,16,22)が収納されている。また、第2の筐体102には内外を連絡する孔が形成されている。そして、第1種光ファイバーコリメーター(11~14)に接続されている光ファイバー21が、その孔を介して外方に案内されている。なお、第1種光ファイバイーコリメーター(11~14)に接続されている光ファイバー21の端部を雌側の光コネクターとし、その光コネクターを第2の筐体102に雄側の光コネクターと係合可能に取り付けておいてもよい。また、第2の筐体102に複数の光伝送用光受動部品1が収納されていてもよい。いずれにしても、第2の筐体102は、筐体2と迂回光路とを収納しつつ、自身の外にある外部機器に接続される光ファイバー21を外方に案内するように構成されていればよい。それにより、光伝送用光受動部品101を取り扱う際に、外部機器との接続に関与しない迂回光路の光ファイバー22に不用意に触れて、光ファイバー22が屈曲したり破損したりすることがなくなる。
===第2の実施例===
第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1では、第1種光ファイバーコリメーター10aと第2種光ファイバーコリメーター10bの全てが個別の光ファイバーコリメーター(11~16)で構成されていたが、第2の実施例として、光学素子dを内蔵した二芯光ファイバーコリメーターを用いて、一つの第1種光ファイバーコリメーター10aと一つの第2種光ファイバーコリメーター10bとを兼用させた光伝送用光受動部品を挙げる。
【0037】
図7に第2の実施例に係る光伝送用光受動部品201の概略構成を示した。図7に示した光伝送用光受動部品201の機能は、第1の光伝送用光受動部品1と同じであるが、第4の第1種光ファイバーコリメーター14と、第1の第1種光ファイバーコリメーター15とが、第1の実施例におけるフィルターF3を内蔵する二芯光ファイバーコリメーター210に置換されている。そして、二芯光ファイバーコリメーター210に接続されている二本の光ファイバー20の一方21は外部機器に接続され、他方22は、第2の第2種光ファイバーコリメーター16に接続されている。
【0038】
図8にフィルターF3を内蔵する二芯光ファイバーコリメーター210の概略構造を示した。図8に示したように、中空筒状のスリーブ211の一端側に二本の光ファイバー(22,23)を保持するフェルール212が取り付けられている。スリーブ211の他端は開口している。スリーブ211内には、開口からフェルール212に向かってフィルターF3とコリメートレンズ213とがこの順に配置されている。
【0039】
第2の実施例に係る光伝送用光受動部品201において、二芯光ファイバーコリメーター210は、外部機器から一方の光ファイバー21を伝搬してきた波長帯域λ2の光を内蔵するフィルターF3によって反射させつつ他方の光ファイバー22に結合させて筐体2外へ案内する、それによって当該光ファイバー22を伝搬する光が第2の第2種光ファイバーコリメーター16を介して筐体2内に案内され、第4の光路34の出力ポートとなる第2の第1種光ファイバーコリメーター12に結合する。第3の第1種光ファイバーコリメーター13から第3の光路33を伝搬してきた波長帯域λ1の光信号は、二芯光ファイバーコリメーター210が内蔵するフィルターF3を透過しつつ二本の光ファイバー20の一方21に結合する。
【0040】
なお、第2の実施例に係る光伝送用光受動部品201では、第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1において筐体2内に配置されていたフィルターF3を二芯光ファイバーコリメーター210内に配置したのに伴い、フィルターF4を、第4の光路34における第2の第2種光ファイバーコリメーター16とミラーM2との間に再配置している。
【0041】
このように第2の実施例に係る光伝送用光受動部品201では、二つ一組の第2種光ファイバーコリメーター10bの一方15を第1種光ファイバーコリメーター10aと兼用する二芯光ファイバーコリメーター210に置換することで、第1の実施例に対し、光ファイバーコリメーター(10a,10b)を一つ削減することができ、二つ一組の第2種光ファイバーコリメーター10bの一方15に対する調芯作業を不要にすることができる。また一つの第2種光ファイバーコリメーター10bとともに、一つのミラーM1も省略することができることから、光伝送用光受動部品201をより安価に提供することができ、さらなる小型化も期待できる。
===その他の実施例===
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。そして、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加や削除、置換をすることが可能である。
【0042】
例えば、第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1では、筐体2の二つの取付面3のそれぞれに光ファイバーコリメーター(10a,10b)が3本ずつ取り付けられ、第1種光ファイバーコリメーター同士(11-13,12-14)、及び第2種光ファイバーコリメーター同士(15-16)が互いに対向して取り付けられていたが、第1と第2の光ファイバーコリメーター(10a,10b)が対向していてもよい。あるいは、二つの取付面3のそれぞれに取り付けられている光ファイバーコリメーター(10a,10b)が対面していなくてもよい。すなわち、取付面3の法線5方向から見て、手前と奥の取付面3の光ファイバーコリメーター(10a,10b)が互い違いに配置されていてもよい。いずれにしても、光回路の光学素子dの配置や光路(31~34)の経路に応じて光ファイバーコリメーター(10a,10b)の取り付け位置は適宜に変更することができる。
【0043】
また、第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1では、筐体2において、互いに対面する二面を光ファイバーコリメーター10の取付面3としていた。それによって、第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1は、全ての光ファイバーコリメーター(11~16)が取付面3の法線5方向にのみ突出し、光伝送用光受動部品1全体の設置面積が小さいものとなっていた。もちろん、光ファイバーコリメーター10の取付面3は、互いに対面する二面のみでなくてもよい。例えば、図9に示した光伝送用光受動部品301では、第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1に対し、迂回回路部を構成する二つのミラー(M1,M2)を省略し、筐体2において、第4の光路34上のフィルターF3にて反射された光信号の進行方向にある面4に第2種光ファイバーコリメーター(15,16)を取り付けている。このように、筐体2の任意の面を光ファイバーコリメーター(10a,10b)の取付面(3,4)とすることで、光学素子dの一部を省略することができる。それにより筐体2のサイズをより小型にしたり、部品コスト低減させたりすることが可能となる。もちろん、複数の第1種光ファイバーコリメーター10aのそれぞれに接続される外部機器と、光伝送用光受動部品1との相対的な位置関係等、光伝送用光受動部品1の設置に関わる状況等に応じて、複数の第1種光ファイバーコリメーター10aのそれぞれを、筐体2の適宜な面に取り付けてもよい。
【0044】
また、図10に示した光伝送用光受動部品401のように、第1種光ファイバーコリメーター10aと第2種光ファイバーコリメーター10bとを対向配置させてもよい。それにより、実質的に第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1と同様の光回路を構成しつつ、ミラー(M1,M2)を用いなくても、全ての光ファイバーコリメーター10を、筐体2において互いに対面する取付面3に取り付けることができる。
【0045】
なお、図10に示した光伝送用光受動部品401では、第1の実施例における光路33が迂回回路部によって構成されている。そして、この光伝送用光受動部品401の製造手順における調芯作業は、例えば、まず、第1と第2の第1種光ファイバーコリメーター(11,12)を調芯して互いに空間結合させ、次に第3の第1種光ファイバーコリメーター13を調芯して調芯済みの第2の第1種光ファイバーコリメーター12と空間結合させる。そして、迂回回路部を構成する光路33を形成するために第1の第2種光ファイバーコリメーター16を調芯して調芯済みの第3の第1種光ファイバーコリメーター13と空間結合させた後、第2の第2種光ファイバーコリメーター15と第4の第1種光ファイバーコリメーター14とを調芯して互いに空間結合させる。
【0046】
なお、上述した第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1の製造手順では、まず、第1種光ファイバーコリメーター10aを調芯して筐体内回路部を構成した上で、第2種光ファイバーコリメーターを調芯して迂回回路部を構成していたが、これは、ある光路を形成するために調芯した光ファイバーコリメーター10を、他の光路を形成する際に再度調芯しないようにするものである。したがって、第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1を上記の図10に示した光伝送用光受動部品401の製造手順のように、第1種光ファイバーコリメーター10aと第2種光ファイバーコリメーター10bとを適宜な順番で調芯してもよい。もちろん、第2種光ファイバーコリメーター10bから先に調芯してもよい。
【0047】
いずれにしても、光路の数がm、n≧2として、n個の第1種光ファイバーコリメーター10aを備え、m≧nの光伝送用光受動部品(1,301,401)であれば、第1種、第2種を問わず、n-1番目までの光路を形成するまで適宜な光ファイバーコリメーター10を順次調芯していき、m番目以上の光路を形成する際に、それまでに一度も調芯していない光ファイバーコリメーター10に対して調芯して光回路を完成させればよい。
【0048】
また、上述した光伝送用光受動部品(1,301,401)の製造手順は、全ての光ファイバーコリメーター10を調芯可能に筐体2に取り付けた上で、各光ファイバーコリメーター10に対して順次調芯作業を行ってもよいし、各光ファイバーコリメーター10を、順次調芯しながら取り付けてもよい。いずれにしても、光ファイバーコリメーター10を調芯して取り付ければよい。
【0049】
複数の上記第1あるいは第2の実施例に係る光伝送用光受動部品(1,201)を互いに光ファイバー20を介して接続してもよい。図11に二つの光伝送用光受動部品(1a,1b)を接続した例を示した。図11に示したように、第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1と外観的には同様の構成を備えた二つの光伝送用光受動部品(1a,1b)が互いに光ファイバー23で接続されている。図示した例では、一方の光伝送用光受動部品1aにおける第4の第1種光ファイバーコリメーター14と、他方の光伝送用光受動部品1bにおける第2の第1種光ファイバーコリメーター12とが光ファイバー23によって互いに接続されている。なお、互いに接続される光伝送用光受動部品(1a,1b)の光回路は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
このように、二つの光伝送用光受動部品(1a,1b)の双方の第1種光ファイバーコリメーター10同士を光ファイバー23で接続することで、多数の光学素子dを複数の筐体2に分散配置することができる。それにより、より多くの機能を有する光回路を構築することができる。すなわち、複数の筐体2を有する一つの多機能な光伝送用光受動部品を実現することができる。もちろん、三つ以上の光伝送用光受動部品1を接続してもよい。互いに接続された複数の光伝送用光受動部品1を、一つの第2の筐体102内に収納し、外部機器に接続される光ファイバー21のみを第2の筐体102の外方に案内してもよい。
【0051】
第2の実施例に係る光伝送用光受動部品201では、二芯光ファイバーコリメーター210が第1種光ファイバーコリメーター10a(14)と第2種光ファイバーコリメーター10b(15)とを兼ねていたが、二芯光ファイバーコリメーター210が二つの第1種光ファイバーコリメーター10aを兼ねていてもよい。二つ以上の光路を有する迂回回路部を構成する場合では、二芯光ファイバーコリメーター210によって二つの第2種光ファイバーコリメーター10bを兼用させることもできる。いずれにしても、光学素子dを内蔵した二芯光ファイバーコリメーター210を一つ用いる毎に、筐体2内の光学素子dを一つ削減できるとともに、筐体2において一つの光ファイバーコリメーター10の取り付けに要するスペースを削減することができる。すなわち、光学素子dを内蔵した二芯光ファイバーコリメーター210を用いることで、筐体2を小型にすることができ、結果として、光伝送用光受動部品201全体の小型化を達成することができる。
【0052】
上記第1あるいは第2の実施例に係る光伝送用光受動部品(1,201)の光回路は、本発明の本質の理解を容易にするための一つの例であって、当然のことながら、光回路の構成や光回路に用いる光学素子dは、上述した実施例に限定されない。例えば、第1の実施例は、光学素子dとして波長選択フィルター(F1~F5)を含んで光合分波器として機能する光伝送用光受動部品1であったが、現実的には、一部の波長選択フィルター(F1~F35)は、光軸に対して大きく傾けると特性が安定しないことから、より安定した特性を得るために、例えば、上記の波長選択フィルター(F1~F3,F5)の位置に、ビームスプリッターやハーフミラー等の光学素子dを配置する。そして、これらの光学素子dによって透過、あるいは分岐された光に対し、図3等における波長選択フィルターF4と同様にして波長選択フィルター(F1~F3,F5)を配置する場合が多い。すなわち、波長選択フィルター(F1~F3,F5)は、戻り光を抑止するために僅かに傾けられるものの、光の入射面と入射光とがほぼ直交するように配置される。そのため、筐体2内に配置すべき光学素子dの数が増え、筐体2をより小さくすることが難しくなる。
【0053】
そこで、波長選択フィルター(F1~F5)を、光軸に対して45°の角度に傾けて使用しても安定した特性を得ることができるTAPフィルターに置換することが考えられる。そして、TAPフィルターを用いれば、光学素子dに光を入射したときの反射光と透過光の夫々の光の進行方向が互いに90゜の角度となる。そのため、筐体2の取付面3とそれと直交する面4に光ファイバーコリメーター10を取り付ければ、筐体2において、互いに対面する二面間(3-3,4-4)の距離を短くすることができる。すなわち、図3等を上下方向から光伝送用光受動部品(1,301)を見たときの図とすると、上下方向から見たときの筐体2を正方形に近い形状にすることができ、筐体2をより小型にすることが可能となる。
【0054】
いずれにしても、光回路を構成する光学素子の種類を適宜に選択したり、光路を適宜に設計したりすることで、光アッテネーター、光アイソレーター、光スイッチ、光合波器、光分波器等、異なる機能を有する光伝送用光受動部品を実現したり、一つの光伝送用光受動部品に複数の機能を実装したりすることができる。
【0055】
光ファイバーコリメーター(10a,10b)数は筐体2内に構成する光回路に応じて適宜に変更することができる。例えば、二つ一組の第2種光ファイバーコリメーター10の組数は一つに限らず、第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1において、筐体内回路部を構成する光路(31~33)の一部を迂回光路に置換してもよい。
【0056】
当然のことながら、第1種光ファイバーコリメーター10aの数、及び光ファイバーコリメーター10aの総数は四つ、及び六つに限らない。光回路は、入力ポートと出力ポートの組み合わせが一つ以上あればよい。すなわち、第1種光ファイバーコリメーター10aは二つ以上であり、二つ一組の第2種光ファイバーコリメーター10bの組が一つ以上あればよい。
【0057】
図12に、第1種光ファイバーコリメーター10aの数が二つの光伝送用光受動部品501を例示した。光回路は、筐体内回路部を構成する一つの光路533と、迂回回路部を構成する一つの光路534の合計二つの光路(533,534)を有している。なお、図12に示した光伝送用光受動部品501の光回路では、図3に示した第1の実施例に係る光伝送用光受動部品1と同様に、光路(533,534)を辿る光の波長帯域λ2とλ4を、それぞれ、実線と点線とで示している。また、光学素子dについても、基本的には、図3に示したものと同様に、機能や動作が同じものには同じ符号を付している。すなわち、光伝送用光受動部品501は、波長帯域λ2の光を透過させるとともに、その他の波長帯域の光を反射する第1のフィルターF1と第3のフィルターF3、波長帯域λ4の光を透過させるとともに、その他の波長帯域の光を反射する第4のフィルターF4、及び二つのミラー(M1,M2)を備えている。
【0058】
なお、図12に示した光伝送用光受動部品501の機能としては、ノイズ成分の除去等が考えられる。例えば、外部機器から、ノイズ成分として不要な波長帯域の光を含んだ波長帯域λ2の光と波長帯域λ4の光との合波L1が入力されると、その光L1は、フィルターF2にて波長帯域λ2の光と波長帯域λ4の光とに分波され、その後、夫々の波長帯域(λ2、λ4)の光が夫々の光路(533,534)の途上に配置されたフィルター(F3,F4)を通過しつつフィルターF3にて合波されて他方の第1種光ファイバーコリメーター512に結合する。そして、光は、各フィルター(F1~F5)を通過、あるいは反射する度にノイズ成分が除去され、最終的にノイズ成分が極めて少ない波長帯域λ2の光と波長帯域λ4の光とが合波された光L2が外部機器に向けて出力される。そして、図12に示した光伝送用光受動部品501では、二つの光路(533,534)の一方534が迂回光路を経由している。
【0059】
このように、図12に示した光伝送用光受動部品501では、筐体内回路部の光路533と迂回回路部の光路534のそれぞれの両端で空間結合する第1種光ファイバーコリメーター(511,512)の組み合わせが同じである。もちろん、図12に示した光伝送用光受動部品501における光学素子dや動作は上述したものに限らない。いずれにしても、筐体2内における光学素子dの配置や光回路の構成に応じ、あるいは製造時の調芯作業の容易度に応じて第1種光ファイバーコリメーター10の数や第2種光ファイバーコリメーター10の組数を適宜に設定することができる。
【0060】
上記実施例では、端子として、第1種と第2種の光ファイバーコリメーター(10,10a,10b,11~16,511,512)を有していたが、筐体2内での迷光等、外部機器への入出力に関与しない光を筐体2の外に廃棄するための端子を有していてもよい。
【0061】
上記実施例では、光ファイバーコリメーター(10,10a,10b,11~16,511,512)を端子としていたが、端子は、周知の光コネクターや光ファイバー(31~34,533,534)の開口端であってもよい。光ファイバー(31~34,533,534)の開口端を端子とする場合には、1本の光ファイバーの両端を端子として一つの迂回光路が形成される。いずれにしても、実施例に係る光伝送用光受動部品は、前記筐体外にて光ファイバーで連絡されてなる迂回光路を有している。
【0062】
実施例に係る光伝送用光受動部品に対する外部機器としては、光信号の送受信器や他の光伝送用部品、あるいはエルビウムドープ光ファイバーを用いた光増幅器等がある。
【符号の説明】
【0063】
1,101,201,301,401,501 光伝送用光受動部品、2 筐体、
3 取付面、5 取付面の法線、
10,10a,10b,11~16,511,512 光ファイバーコリメーター、
20,21,22,23 光ファイバー、31~34,533,534 光路、
50 調芯機構、102 第2の筐体、210 二芯光ファイバーコリメーター、
d 光学素子、F1~F5 フィルター、M1, M2 ミラー
図1
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図12