IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大阪製薬の特許一覧

<>
  • 特開-口腔器具洗浄用エアゾール製品 図1
  • 特開-口腔器具洗浄用エアゾール製品 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007574
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】口腔器具洗浄用エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/04 20060101AFI20250109BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20250109BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20250109BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20250109BHJP
   A61Q 11/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C11D17/04
C11D17/06
C11D3/20
C11D3/48
A61Q11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109064
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】稲見 浩之
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083BB01
4C083BB04
4C083BB05
4C083BB06
4C083BB07
4C083BB42
4C083BB48
4C083BB49
4C083CC42
4C083DD08
4C083DD47
4H003AB27
4H003AC05
4H003AC08
4H003AC15
4H003BA20
4H003DA05
4H003EA08
4H003EA31
4H003EB05
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB16
4H003EB20
4H003EB42
4H003EB46
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA30
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】
トリガー式スプレー容器やポンプ式容器などの吐出手段よりも義歯や歯科用矯正器具などの口腔器具の表面に付着した汚れを落とすことができる口腔器具洗浄用エアゾール製品を提供することを目的とする。
【解決手段】
内部に収容空間を有する容器と、前記容器に収容され、界面活性剤を含有する口腔器具洗浄剤と、前記容器の内部に前記口腔器具洗浄剤とともに充填されている不燃性圧縮気体を備えることを特徴とする口腔器具洗浄用エアゾール製品などにより解決することができた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容空間を有する容器と、
前記容器に収容され、界面活性剤を含有する口腔器具洗浄剤と、
前記容器の内部に前記口腔器具洗浄剤とともに充填されている不燃性圧縮気体を備えることを特徴とする口腔器具洗浄用エアゾール製品。
【請求項2】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品。
【請求項3】
前記口腔器具洗浄剤に、酸が含有されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品。
【請求項4】
前記不燃性圧縮気体が、二酸化炭素又は窒素であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品。
【請求項5】
前記口腔器具洗浄剤に、増粘剤が含有されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品。
【請求項6】
前記口腔器具洗浄剤に、可溶化剤が含有されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品。
【請求項7】
前記口腔器具洗浄剤に、殺菌剤が含有されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、入れ歯や人工歯などの義歯、リテーナーやマウスピースなどの歯科用矯正器具などの口腔器具を洗浄するために使用されるエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入れ歯や人工歯などの義歯、リテーナーやマウスピースなどの歯科用矯正器具などの口腔器具に付着したプラーク、ステイン、食物残渣などの汚れを洗浄するための固形や液状の洗浄剤が知られている。そして、液状の洗浄剤を噴霧するようにして使用する口腔器具用洗浄剤製品が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アニオン性界面活性剤や両性界面活性剤などの界面活性剤、ヒドロキシエタンジホスホン酸などの有機ホスホン酸又はその塩、及び水溶性高分子物質などの増粘剤を含有する液体義歯洗浄剤組成物が、トリガー式スプレー容器に充填されているスプレー型義歯洗浄剤製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-100434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の義歯洗浄剤製品においては、液体義歯洗浄剤組成物を泡状で吐出させる泡形成手段を有するトリガー式スプレー容器に充填するものであるが、義歯の表面に付着した汚れをより除去したいとの要望が多い。
【0006】
そこで、本件発明では、トリガー式スプレー容器やポンプ式容器などの吐出手段よりも義歯や歯科用矯正器具などの口腔器具の表面に付着した汚れを落とすことができる口腔器具洗浄用エアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、内部に収容空間を有する容器と、前記容器に収容され、界面活性剤を含有する口腔器具洗浄剤と、前記容器の内部に前記口腔器具洗浄剤とともに充填されている不燃性圧縮気体を備えることを特徴とする口腔器具洗浄用エアゾール製品である。
【0008】
〔2〕そして、前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品である。
【0009】
〔3〕そして、前記口腔器具洗浄剤に、酸が含有されていることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品である。
【0010】
〔4〕そして、前記不燃性圧縮気体が、二酸化炭素又は窒素であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品である。
【0011】
〔5〕そして、前記口腔器具洗浄剤に、増粘剤が含有されていることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品である。
【0012】
〔6〕そして、前記口腔器具洗浄剤に、可溶化剤が含有されていることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品である。
【0013】
〔7〕そして、前記口腔器具洗浄剤に、殺菌剤が含有されていることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の口腔器具洗浄用エアゾール製品である。
【発明の効果】
【0014】
本件発明によれば、トリガー式スプレー容器やポンプ式容器などの吐出手段よりも義歯や歯科用矯正器具などの口腔器具の表面に付着した汚れを落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の口腔器具洗浄用エアゾール製品における中央断面図である。
図2図1におけるα部拡大である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本件発明の口腔器具洗浄用エアゾール製品に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記「~」のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0017】
容器1は、本発明の口腔器具洗浄用エアゾール製品において、使用者から視認することができる最も外側に位置し、内部に口腔器具洗浄剤2及び圧縮ガスを収容する金属性の部材である。容器1の内部に不燃性圧縮気体を充填することから、アルミ合金、ステンレスなどの金属性であり、所定の圧力以下では破断しないように耐圧性を有している。本実施形態において、容器1は、上部に開口を有する中空の有底円筒状である。その上部の開口は、図1に示すように、マウンティングカップ3によって封止される。
【0018】
容器1は、内部に収容空間を有する部材である。本発明がエアゾール製品であり、内部に大気圧以上の圧力が掛かるために、破損等がないようにステンレスやアルミ合金などの金属製であることが好ましい。そして、容器1の内側表面、すなわち、口腔器具洗浄剤2と接触する側の面に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂などから選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層11を有していることが好ましい。被覆層11により、容器1が、酸などを含有する口腔器具洗浄剤2を収容している状態で長期保存しても、容器1の内側表面が腐食されること防止することができる。また、被覆層11の厚みとしては、0.1~100μmが好ましく、0.5~50μmがさらに好ましく、1~30μmが最も好ましい。被覆層11の厚みがこの範囲であると、塗工作業が行い易く、また、口腔器具洗浄剤2による容器1の腐食を抑制することができる。
【0019】
被覆層11として使用することができるポリアミドイミドは、カルボン酸無水物とジアミンなどを縮合重合させて得られたポリアミド酸を、さらに脱水及び環化反応(イミド化)させて得られる樹脂である。例えば、無水ピロメリット酸(ベンゼン-1,2,4,5,-テトラカルボン酸二無水物)と4,4’-ジアミノジフェルエーテルを等モルで縮合重合させて、ポリアミド酸を得て、次いで、そのポリアミド酸を加熱又は触媒を用いてイミド化を行い、ポリ(4,4’-オキシジフェニレン-ピロメリチミド)というポリアミドイミドが得られる。このようなポリアミドイミドは、薬品耐性が高いため、本発明の口腔器具洗浄用エアゾール製品の使用が想定される長期間においても、酸などによって劣化することがない。また、ポリアミドイミドを用いて被覆層11を形成するときには、まず容器1の内側表面に前駆体であるポリアミド酸の溶液を塗布し、溶媒を除去してから熱を加えるなどしてイミド化によりポリアミドイミドを合成することが好ましい。
【0020】
また、被覆層11として使用することができるフェノール系エポキシ樹脂は、主剤又は硬化剤の少なくも一方にフェノール類化合物が用いられているエポキシ樹脂である。例えば、主剤でありフェノール類化合物であるビスフェノールAジグリシジルエーテルと硬化剤でありフェノール類化合物であるビスフェノールAを開環重合させて得られる。このようなフェノール系エポキシ樹脂は、薬品耐性が高いため、本発明の口腔器具洗浄用エアゾール製品の使用が想定される長期間においても、塩化物イオンや酸によって劣化することがない。また、フェノール系エポキシ樹脂を用いて被覆層11を形成するときには、まず容器1の内側表面に、主剤となるグリシジルエーテルと、水酸基、アミノ基、有機酸無水物などの硬化剤を配合した混合物を塗布し、熱を加えるなどして開環重合させてフェノール系エポキシ樹脂を合成することが好ましい。
【0021】
次に、容器1に内包される口腔器具洗浄剤2について説明する。
【0022】
本発明の口腔器具洗浄剤2に含有される界面活性剤は、親水部と親油部を併せ持ち、界面活性を有する有機化合物である。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの界面活性剤は、1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
非イオン性界面活性剤は、親水部がイオン化しない親水性部位を有し、界面活性を有する有機化合物である。ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン付加多価アルコールの脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミドなどが好ましい。具体的には、非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルやポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、n-オクチルグルコシド、n-オクチルマルトシド、n-デシルグルコシド、n-デシルマルトシド、n-ドデシルグルコシド、n-ヘプチルチオグルコシドなどのアルキルグリコシド、モノミリスチン酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステルなどのポリオキシエチレン付加多価アルコールの脂肪酸エステル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸(炭素数8~18)ジエタノールアミドなどの脂肪酸ジエタノールアミドが好ましい。これらの界面活性剤は、1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、非イオン性界面活性剤は、液状、又は固形である100%純分の化合物だけでなく、それらを所定量の水で希釈した水溶液を使用することができる。
【0024】
上記非イオン界面活性剤のうち、グリフィンの式より算出されるHLBが8~18のものが好ましく、HLBが10~17のものがさらに好ましい。HLBが上記範囲の非イオン界面活性剤であると、口腔器具に付着したプラークやステインなどの汚れを落としやすくすることができる。また、2種以上の非イオン界面活性剤を組み合わせて使用するときには、HLBは、各非イオン界面活性剤のHLBに各非イオン界面活性剤の全非イオン界面活性剤に対する配合比率を掛けて得られたHLBの総和が上記範囲となることが好ましい。
【0025】
アニオン界面活性剤は、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型から選ばれる少なくとも1種が好ましく、液状、又は固形である100%純分の化合物だけでなく、それらを所定量の水で希釈した水溶液を使用することができる。アニオン界面活性剤は、具体的に、カルボン酸型のアニオン界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウレス-6カルボン酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム)、ラウロイルサルコシンナトリウム、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ミリスチリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸(炭素数8~18)サルコンシンナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどが好ましい。そして、スルホン酸型のアニオン界面活性剤としては、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、ナフタレントリスルホン酸三ナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムなどが好ましい。そして、硫酸エステル型のアニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)、セチル硫酸ナトリウム、ココグリセリル硫酸ナトリウム(硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどが好ましい。そして、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤としては、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(5)セチルエーテルリン酸ナトリウム)、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸カリウムなどが好ましい。なお、前記アニオン界面活性剤は1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
カチオン界面活性剤は、第4級アンモニウム塩型やアミン塩型から選ばれる少なくとも1種が好ましく、液状、又は固形である100%純分の化合物だけでなく、それらを所定量の水で希釈した水溶液を使用することができる。カチオン界面活性剤は、具体的に、第四級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチル アンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアン モニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウム ヨージド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムヘキ サフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート、アルキル ジメチルアンモニウムクロライドなどが好ましい。そして、アミン塩型のカチオン界面活性剤としては、ココナットアミンアセテート、ステアリル アミンアセテートなどが好ましい。なお、前記カチオン界面活性剤は1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
両性界面活性剤は、アミンオキシド型、ベタイン型から選ばれる少なくとも1種が好ましく、液状、又は固形である100%純分の化合物だけでなく、それらを所定量の水で希釈した水溶液を使用することができる。両性界面活性剤は、具体的に、アミンオキシド型の両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルアミンオキシド(N,N-ジメチルアルキル(炭素数8~18)アミンオキシド)、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド、オレイルジメチルアミンオキシドなどが好ましい。そして、ベタイン型の両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸(炭素数8~18)アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタインなどが好ましい。なお、前記両性界面活性剤は1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
界面活性剤の含有割合は、口腔器具洗浄剤2のうち、0.1~30重量%であることが好ましく、0.5~25重量%であることがさらに好ましく、1~20重量%であることが最も好ましい。界面活性剤の含有割合が、この範囲であれば、口腔器具に付着したプラークやステインなどの汚れを落としやすい。
【0029】
口腔器具洗浄剤2に含有され得る酸は、水溶液としたときに酸性を示す物質である。酸により、口腔器具に付着した汚れを落とすことができる。酸としては、具体的に、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、ホウ酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸などの有機酸や、リン酸、硫酸などの無機酸が好ましい。これらの酸は単独して使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0030】
酸の含有割合は、口腔器具洗浄剤2のうち、0.01~5重量%であることが好ましく、0.05~3重量%であることがさらに好ましく、0.1~2重量%であることが最も好ましい。酸の含有割合がこの範囲にあると、口腔器具に付着した汚れを落とすことができる。
【0031】
口腔器具洗浄剤2に含有され得る前記酸の塩は、上述した有機酸や無機酸に対応する塩である。具体的には、例えば、酸としてクエン酸を用いているときはクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウムなどの塩であり、リンゴ酸を用いているときはリンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウムなどの塩であり、リン酸を用いているときはリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウムなどの塩である。このように、前記酸に対応する塩が含まれることによって、口腔器具洗浄剤2が所定範囲のpHとなるとともに、pHの大きな変動が抑制されるため、使用者は所定範囲の液性にて使用することができる。
【0032】
前記酸の塩の含有割合は、口腔器具洗浄剤2のうち0.01~10重量%であることが好ましく、0.1~5重量%であることがさらに好ましく、0.5~2重量%であることがさらに好ましい。前記酸の塩の含有割合がこの範囲にあると、口腔器具洗浄剤2のpHを所定の範囲に保つことができる。
【0033】
口腔器具洗浄剤2に含有され得る殺菌剤は、口腔器具に付着した汚れに含まれる細菌を無毒化したりウイルスを不活化したりする化合物である。殺菌剤としては、第四級アンモニウム塩化物塩が好ましい。第四級アンモニウム塩化物塩としては、具体的に、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウムなどが好ましく、特に、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが好ましい。これらの第四級アンモニウム塩化物塩を単独して使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0034】
殺菌剤の含有割合は、口腔器具洗浄剤2のうち、0.001~10重量%であることが好ましく、0.005~5重量%であることがさらに好ましく、0.01~2重量%であることがさらに好ましい。殺菌剤の含有割合がこの範囲にあると、細菌の細胞膜が破壊されやすくなり、エンベロープを有するRNAウイルスやDNAウイルスが、より不活化されやすくなる。
【0035】
口腔器具洗浄剤2に含有され得る可溶化剤は、界面活性剤、酸、前記酸の塩、水などを均一な溶液とする化学物質である。可溶化剤としては、アルコールが好ましく、具体的には、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどの単官能アルコール、グリセリン、ソルビトールなどの多官能アルコールが好ましい。
【0036】
可溶化剤の含有割合は、口腔器具洗浄剤2のうち、0.1~20重量%であることが好ましく、1~15重量%であることがさらに好ましく、3~10重量%であることがさらに好ましい。可溶化剤の含有割合がこの範囲にあると、口腔器具洗浄剤2を均一な溶液とすることができる。
【0037】
口腔器具洗浄剤2に含有され得る増粘剤は、口腔器具洗浄剤2の粘度を増加させる化合物である。増粘剤としては、具体的には、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプピルセルロース、ヒドロキシプピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガムなどの多糖類、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸又はその塩や、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、シクロデキストリンなどが好ましい。これらの増粘剤は、1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
増粘剤の含有割合は、口腔器具洗浄剤2のうち、0.01~10重量%であることが好ましく、0.05~7重量%であることがさらに好ましく、0.1~2重量%であることがさらに好ましい。その含有割合が上記範囲であると、口腔器具洗浄剤2を口腔器具へ長く留まらせておくことができ洗浄効果を向上させることができる。
【0039】
さらに、口腔器具洗浄剤2には、パラベンなどの防腐剤、キレート剤、消臭剤、香料、色素などが配合されてもよい。
【0040】
口腔器具洗浄剤2に含有され得る水は、界面活性剤、酸、前記酸の塩などを均一な溶液とするための溶媒である。具体的に、水としては、日本薬局方規格の水が好ましく、例えば、水道水、井戸水などである常水、そして、蒸留、イオン交換膜によるイオン交換処理、限外ろ過膜による限外ろ過処理のいずれか、またはそれらの組み合わせにより常水を処理した精製水、そして、加熱等により精製水を滅菌処理した滅菌精製水などが好ましい。
【0041】
このようにして配合された口腔器具洗浄剤2は容器1に収容されて、最終的に口腔器具洗浄用エアゾール製品が製造される。
【0042】
本発明の口腔器具洗浄用エアゾール製品は、図1に示すように、容器1、口腔器具洗浄剤2、マウンティングカップ3、ステム4、弾性バネ5、チューブ6、アクチュエータ7などから構成されている。容器1に収容されている口腔器具洗浄剤2と不燃性圧縮気体は、容器1の外部より圧力が高くなっている。このため、アクチュエータ7が押下されると、弾性バネ5が付勢力に抗ってステム4も押下されることにより、ステム孔41が容器1の内部と連通し、口腔器具洗浄剤2と不燃性圧縮気体が、チューブ6、ステム4を通じてアクチュエータ7の噴霧口71から外部に排出される。
【0043】
また、マウンティングカップ3のうち容器1側、すなわち、口腔器具洗浄剤2と当接しうる側においては、容器1の内側表面と同様に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層11を有することが好ましい。
【0044】
本発明の不燃性圧縮気体は、口腔器具洗浄剤2とともに容器1に充填され、通常使用される10~30℃程度の常温において、火気により引火及び燃焼が起きず、容器1内にて大気圧より高い圧力の状態である気体である。アクチュエータ7が押されることにより、口腔器具洗浄剤2とともに不燃性圧縮気体が外部へ排出されることとなる。具体的に、不燃性圧縮気体は、窒素、二酸化炭素、空気、亜酸化窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、二酸化炭素であることがさらに好ましい。不燃性圧縮気体がこれらの気体であると、使用者の近くに火気が存在していても引火等しないために本発明の口腔器具洗浄用エアゾール製品を安全に使用することができ、噴射口71から口腔器具洗浄剤2が吐出されたときにウルトラファインバブルとも呼ばれる直径1nm以上1000nm未満の気泡を多く含有する泡状となり、単に口腔器具洗浄剤2を口腔器具の表面に付着した汚れをより落とすことができる。
【0045】
また、口腔器具洗浄剤2とともに容器1に充填されている不燃性圧縮気体の圧力としては、25℃において0.10MPa以上1.0MPa未満であることが好ましく、0.2MPa以上0.9MPa以下であることが好ましい。不燃性圧縮気体の圧力がこの範囲であると、不燃性圧縮気体とともに口腔器具洗浄剤2が円滑に排出される。
【0046】
また、液化石油ガスなどの燃焼し得る圧縮気体を、不燃性圧縮気体とともに容器1の内部に充填することができる。燃焼し得る圧縮気体も充填することにより、不燃性圧縮気体のみを充填した場合よりも噴射口71から口腔器具洗浄剤2が吐出されたときに嵩高い泡状となり、口腔器具の表面により幅広く付着することができる。
【実施例0047】
以下、本件発明における口腔器具洗浄剤2について具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
<処方1>
20℃の室温中において、容量が200mlのグリフィンビーカーに、非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテル(12E.O.)(HLB:15)1.00gと、デシルグリコシド(HLB:17)1.20gと、両性界面活性剤として、ココアミンオキシド(N,N-ジメチルドデシルジメチルアミン=N-オキシド)1.50gと、有機酸としてクエン酸0.35g、有機酸の塩としてクエン酸三ナトリウム1.00gと、可溶化剤としてグリセリン5.28gと、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム0.01gと、殺菌剤として塩化セチルピリジニウム1.00gと、そして、残余として精製水を加え、攪拌し、合計100gの口腔器具洗浄剤を得た。処方1の各化合物については、希釈された製剤としての量ではなく純分としての量である。
【0049】
<処方2~10>
処方2~10は、非イオン性界面活性剤、酸、前記酸に対応する塩、水などを、それぞれ表1に示したように処方し、実施例1と同様にして、合計100gの口腔器具洗浄剤を得た。処方2~10の各化合物については、処方例1と同様に希釈された製剤としての量ではなく純分としての量である。
【0050】
【表1】
【0051】
<実施例1~9>
このようにして処方1~9にて得られた口腔器具洗浄剤2をそれぞれ容器1に収容し、マウンティングカップ3など他の部材を組み立て、不燃性圧縮気体として二酸化炭素を25℃で0.55MPaなどの圧力となるように封入することで、実施例1~9の口腔器具洗浄用エアゾール製品を作製した。
【0052】
<比較例1>
そして、処方10にて得られた口腔器具洗浄剤をポンプ式容器に収容することで、比較例1のポンプ型口腔器具洗浄剤製品を作製した。
【0053】
実施例1~9の口腔器具洗浄用エアゾール製品及び比較例1のポンプ型口腔器具洗浄剤製品を用いて、洗浄力の試験を行って以下の方法に従って評価した。
【0054】
〔洗浄力試験〕
たん白粉末大豆由来0.25g、レシチン大豆由来2g、大豆油5g、モノオレイン0.07g及びオイルレッド(スダンIII)0.05gをクロロホルム10mLに溶解してモデル汚れを作製した。このモデル汚れに義歯を1~2秒間浸し、モデル汚れを付着させた後、風乾した。そして、表2に示す実施例1~9及び比較例1の製品から吐出した口腔器具洗浄剤5gほどを、モデル汚れを付着させた義歯をそれぞれ塗布し、5分間その状態を保った。その後、水道水で口腔器具洗浄剤を洗い流し、汚れの落ち具合を目視にて観察した。また、義歯に口腔器具洗浄剤を塗布せずに水道水で10秒間洗い流したものをコントロールとした。目視により、コントロールと比べて、モデル汚れが完全に落ちたものを「◎」と評価し、汚れがほぼおちいてるものを「○」と評価し、汚れがわずかに落ちているものを「△」と評価し、ほとんど汚れが落ちていないものを「×」と評価した。このとき、「◎」の評価のものを優良と、「○」の評価のものを良好と、「△」及び「×」の評価のものを不良と判断した。
【0055】
実施例1~9の口腔器具洗浄用エアゾール製品及び比較例1のポンプ型口腔器具洗浄剤製品と、それらの洗浄力試験の結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示すように、処方1から処方9の口腔器具洗浄剤及び不燃性圧縮気体として二酸化炭素を内包する実施例1~9の口腔器具洗浄剤用エアゾール製品は、処方10の比較例1のポンプ型口腔器具洗浄剤製品に比べて口腔器具の汚れをより洗浄することができることが分かった。そして、実施例1~9の口腔器具洗浄剤用エアゾール製品での洗浄力試験の結果から、噴射剤に二酸化炭素の他に液化石油ガスを少量混合すると洗浄力が少し低下したことから、噴射剤として不燃性圧縮気体として二酸化炭素のみを混合することがより好ましいことが分かった。
【符号の説明】
【0058】
1・・・容器
11・・・被覆層
2・・・口腔器具洗浄剤
3・・・マウンティングカップ
4・・・ステム
41・・・ステム孔
5・・・弾性バネ
6・・・チューブ
7・・・アクチュエータ
71・・・噴霧口
図1
図2