(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007576
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】一軸アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/06 20060101AFI20250109BHJP
H02K 7/00 20060101ALI20250109BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20250109BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02K7/06 A
H02K7/00 A
F16H25/22 Z
F16H25/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109066
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】517316269
【氏名又は名称】株式会社マツイ
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】松井 源太郎
【テーマコード(参考)】
3J062
5H607
【Fターム(参考)】
3J062AA21
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA12
3J062CD04
3J062CD22
3J062CD45
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD03
5H607EE07
5H607EE10
5H607EE19
5H607EE52
(57)【要約】
【課題】コストを抑えながら、小型化することができる一軸アクチュエータを提供する。
【解決手段】駆動モータ2とボールねじ機構3との間に、モータ軸2aとボールねじ軸3bの回転を規制する無励磁ブレーキ4を設ける。無励磁ブレーキ4は、可動磁性板4cと固定制動板4dとの間に、内径部にカップリング嵌着孔4fを有したブレーキ板4eを備える。カップリング5は、モータ軸2aを連結するモータ軸連結ハブ5aをカップリング嵌着孔4fに挿入するとともに、モータ軸連結ハブ5aとカップリング嵌着孔4fとは相対回転不可となる形状にそれぞれ形成する。ボールねじ機構3bのブラケット部3cの端面3gに、フランジ部材6をインロー接続し、連結ボルト7にて、フランジ部材6と駆動モータ2を連結するとともに、フランジ部材6と駆動モータ2との間に無励磁ブレーキ4を固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータと、該駆動モータの回転を直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、
該ボールねじ機構は、前記駆動モータの作動により回転するボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合するボールねじナットを含むスライダとを備え、
前記駆動モータのモータ軸と前記ボールねじ軸とをカップリングで連結した一軸アクチュエータにおいて、
前記駆動モータと前記ボールねじ機構との間に、前記モータ軸と前記ボールねじ軸の回転を規制する無励磁ブレーキを設け、
該無励磁ブレーキは、可動磁性板と固定制動板との間に、内径部にカップリング嵌着孔を有したブレーキ板を備え、
前記カップリングは、前記モータ軸を連結するモータ軸連結ハブを前記カップリング嵌着孔に挿入するとともに、前記モータ軸連結ハブと前記カップリング嵌着孔とは相対回転不可となる形状にそれぞれ形成されることを特徴とする一軸アクチュエータ。
【請求項2】
前記ボールねじ機構の駆動モータ側端面に、フランジ部材を接続し、連結ボルトにて、前記フランジ部材と前記駆動モータを連結するとともに、前記フランジ部材と前記駆動モータとの間に前記無励磁ブレーキを固定し、
前記フランジ部材は、前記駆動モータ側端面に形成された凹凸形状に嵌まり合う凹凸形状を有していることを特徴とする請求項1記載の一軸アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、XYテーブルや産業用ロボット等に用いられる一軸アクチュエータに関し、詳しくは、モータ一体型の一軸アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、一軸アクチュエータは、駆動モータと、該駆動モータの回転を直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、ボールねじ機構は、駆動モータの作動により回転するボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合するボールねじナットを含むスライダとを有し、駆動モータのモータ軸とボールねじ軸とは、カップリングで連結されていた。また、産業機器に使用される一軸アクチュエータでは、スライダの往復運動部以外の長手方向の長さを短くし、小型化することが求められている。しかしながら、駆動モータとボールねじ機構とを連結する際に、これらの間に中間フランジを介装させ、中間フランジに駆動モータとボールねじ機構とをそれぞれボルト止めしていたことから、一軸アクチュエータの長手方向の長さが長くなっていた。また、ボールねじ軸と駆動モータのモータ軸とを一体に形成し、カップリングを省略することで長手方向の長さの短縮を図ったものがあった(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のものでは、ボールねじ軸とモータ軸とを一体化させるのが困難で、特に、ボールねじ軸の長さが長くなった場合では、モータの巻線工程やコアの圧入工程に対応できる製造装置がなく、これに対応させるためには、大型な製造設備が必要になりコストが嵩んでいた。
【0005】
そこで本発明は、コストを抑えながら、小型化することができる一軸アクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一軸アクチュエータは、駆動モータと、該駆動モータの回転を直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、該ボールねじ機構は、前記駆動モータの作動により回転するボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合するボールねじナットを含むスライダとを備え、前記駆動モータのモータ軸と前記ボールねじ軸とをカップリングで連結した一軸アクチュエータにおいて、前記駆動モータと前記ボールねじ機構との間に、前記モータ軸と前記ボールねじ軸の回転を規制する無励磁ブレーキを設け、該無励磁ブレーキは、可動磁性板と固定制動板との間に、内径部にカップリング嵌着孔を有したブレーキ板を備え、前記カップリングは、前記モータ軸を連結するモータ軸連結ハブを前記カップリング嵌着孔に挿入するとともに、前記モータ軸連結ハブと前記カップリング嵌着孔とは相対回転不可となる形状にそれぞれ形成されることを特徴としている。
【0007】
さらに、前記ボールねじ機構の駆動モータ側端面に、フランジ部材を接続し、連結ボルトにて、前記フランジ部材と前記駆動モータを連結するとともに、前記フランジ部材と前記駆動モータとの間に前記無励磁ブレーキを固定し、前記フランジ部材は、前記駆動モータ側端面に形成された凹凸形状に嵌まり合う凹凸形状を有していると好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一軸アクチュエータの無励磁ブレーキは、カップリングと一体に回転するブレーキ板を、可動磁性板を介して固定制動板に押圧することでブレーキ板の回転を規制し、モータ軸とボールねじ軸の回転を規制する。本発明は、駆動モータのブレーキとして、このような無励磁ブレーキを用い、さらに、ブレーキ板とカップリングのモータ軸連結ハブとは、軸方向にオーバーラップさせた状態で連結されることから、コストを抑えながら、一軸アクチュエータの軸方向の長さを短くすることができる。
【0009】
また、フランジ部材と連結ボルトとを用いて、駆動モータとボールねじ機構とを連結するとともに、フランジ部材と駆動モータとの間に無励磁ブレーキを固定させることできるので、部品点数を少なくし、一軸アクチュエータの軸方向の長さを短くすることができる。さらに、フランジ部材は、駆動モータ側端面に形成された凹凸形状に嵌まり合う凹凸形状を備えていることから、フランジ部材によって一軸アクチュエータの軸方向の長さが長くなることを極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一形態例を示す一軸アクチュエータの一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図9は、本発明の一軸アクチュエータの一形態例を示す図である。一軸アクチュエータ1は、回転駆動源である正転・逆転可能な駆動モータ2と、駆動モータ2の回転を直線運動に変換するボールねじ機構3と、駆動モータ2とボールねじ機構3との間に配設される無励磁ブレーキ4と、カップリング5とがボールねじ機構3の軸方向に直列に配置されている。さらに、ボールねじ機構3に取り付けられるフランジ部材6と、該フランジ部材6と駆動モータ2とを連結するとともに、駆動モータ2とボールねじ機構3との間に無励磁ブレーキ4を固定させる4本の連結ボルト7とを備えている。
【0012】
ボールねじ機構3は、
図1乃至
図4に示されるように、本体ケース3a内に収容されている。本体ケース3a内には、本体ケース3aの長手方向に延出する案内レール(図示せず)と、該案内レールに沿って、軸受板(図示せず)を介して配置されるボールねじ軸3bと、該ボールねじ軸3bに螺合するボールねじナット(図示せず)を有するスライダ8が設けられ、ボールねじ軸3bが回転することで、スライダ8がボールねじ軸3bに沿って往復動する。また、ボールねじ機構3の駆動モータ側には、ブラケット部3cが設けられている。
【0013】
ブラケット部3cには、カップリング5を回転可能に収容するカップリング収容部3dが設けられ、該カップリング収容部3dにボールねじ軸3bの一端が突出して設けられている。さらに、ブラケット部3cの駆動モータ側面(ボールねじ機構の駆動モータ側端面)には、フランジ部材6をインロー接続するための凹部3e(本発明の凹凸形状)と、フランジ部材6をブラケット部3cに取り付ける4本の取付けボルト9の挿通孔3fとがそれぞれ設けられている。
【0014】
カップリング5は、
図1,
図2,
図5に示されるように、駆動モータ2のモータ軸2aとボールねじ3bとを連結するもので、駆動モータ2側に、角柱状のモータ軸連結ハブ5aを有している。カップリング5は、モータ軸連結ハブ5aにモータ軸2aを連結するモータ軸連結孔5bが、ボールねじ機構3側にボールねじ軸3bを連結するボールねじ軸連結孔5cがそれぞれ設けられている。さらに、モータ軸連結ハブ5aは、モータ軸2aを固定させる固定ボルト10を挿通させる固定ボルト挿通孔5dが、モータ軸連結孔5bと直交する方向に設けられている。
【0015】
無励磁ブレーキ4は、
図1,
図2,
図6,
図7に示されるように、駆動モータ2側に取り付けられるヨーク4aと、コイル4bとを有している。また、ヨーク4aとブラケット部3cとの間には、ヨーク4a側に可動磁性板4cが、ブラケット部3c側に固定制動板4dが配置さ、固定制動板4dと駆動モータ2とは、3本のボルト11で連結されている。可動磁性板4cと固定制動板4dとの間には、ブレーキ板4eが設けられ、可動磁性板4cとブレーキ板4eとは、軸方向に移動可能に設けられている。固定制動板4dは、3本のカラー4iを介して3本のボルト11で連結され、軸方向に移動可能で、且つ、回転不能に設けられている。可動磁性板4cと固定制動板4dとの間には、ブレーキ板4eが、軸方向に移動可能に設けられている。
【0016】
ブレーキ板4eには、角柱状のモータ軸連結ハブ5aを嵌合させる角孔状のカップリング嵌着孔4fが設けられ、モータ軸連結ハブ5aをカップリング嵌着孔4fに嵌合させることで、モータ軸連結ハブ5aとカップリング嵌着孔4fとは相対回転不可となり、ブレーキ板4eとカップリング5とは一体に回転する。また、ヨーク4aと可動磁性板4cとには、モータ軸2aを挿通させるモータ軸挿通孔4gが、固定制動板4dにはカップリング5を挿通させるカップリング挿通孔4hがそれぞれ設けられている。さらに、ヨーク4aには、可動磁性板4cに当接するスプリング(図示せず)が設けられている。
【0017】
無励磁ブレーキ4は、駆動モータ2及びコイル4bに電流を流さないときには、電磁吸引力が可動磁性板4cに作用せず、スプリングの弾発力により可動磁性板4cが固定制動板4d側に移動し、ブレーキ板4eを押動してブレーキ板4eを固定制動板4dに押圧させる。これにより、ブレーキ板4eの回転が規制され、カップリング5を介してモータ軸2a及びボールねじ軸3bの回転が規制される。一方、駆動モータ2及びコイル4bに電流を流したときには、可動磁性板4cがコイル4b側に吸着され、ブレーキ板4eがフリー状態となることからブレーキ板4eとともに、カップリング5を介してモータ軸2a及びボールねじ軸3bが回転する。
【0018】
フランジ部材6は、
図1,
図2,
図8,
図9に示されるように、ブラケット部3cの駆動モータ側の端面3g(ボールねじ機構の駆動モータ側端面)に取り付けられる板状の部材で、幅方向両側部に、4本の連結ボルト7をそれぞれ挿通させる連結ボルト挿通孔6aと、4本の取付けボルト9を挿通させる取付けボルト挿通孔6bが設けられている。
【0019】
さらに、フランジ部材6の中央部には、カップリング5を挿通させるカップリング挿入孔6cが形成されている。カップリング挿入孔6cの外周側には、フランジ部材6をインロー接続するための凸部6d(本発明の凹凸形状)が、前記凹部3eに対応して形成されている。また、フランジ部材6の上部からカップリング挿入孔6cに向けて、カップリング5を固定する固定ボルト(図示せず)を挿通する固定ボルト挿通孔6eがカップリング挿入孔6cと直交する方向に形成されている。
【0020】
連結ボルト7は、フランジ部材6と駆動モータ2とを連結するとともに、連結ボルト7を締結することで、無励磁ブレーキ4がフランジ部材6と駆動モータ2との間に固定される。
【0021】
上述の一軸アクチュエータ1は、モータ軸2aとボールねじ軸3bの回転を規制するブレーキとして、無励磁ブレーキ4を用いたことにより、一軸アクチュエータ1の軸方向の長さを短くすることができる。さらに、無励磁ブレーキ4のブレーキ板4eと、カップリング5のモータ軸連結ハブ5aとが軸方向にオーバーラップした状態で連結されていることから、一軸アクチュエータ1の軸方向の長さを、さらに短くすることができる。
【0022】
また、フランジ部材6と連結ボルト7とを用いて、駆動モータ2とボールねじ機構3とを連結するとともに、無励磁ブレーキ4をフランジ部材6と駆動モータ2との間に固定することができるので、部品点数を少なくすることができ、一軸アクチュエータ1の軸方向の長さを短くすることができる。さらに、ブラケット部3cとフランジ部材6とは、凹部3eと凸部6dとにより、インロー接続されていることから、フランジ部材6によって、一軸アクチュエータ1の軸方向の長さが長くなることを極力抑制することができる。
【0023】
なお、本発明は上述の形態例のように、モータ軸連結ハブを角柱状に形成し、ブレーキ板のカップリング嵌着孔を角孔状に形成するものに限らず、互いに相対回転不可となる形状に形成されていればよく、例えば、互いに係合する歯を備えたスプライン形状のもの等でも良い。
【符号の説明】
【0024】
1…一軸アクチュエータ、2…駆動モータ、2a…モータ軸、3…ボールねじ機構、3a…本体ケース、3b…ボールねじ軸、3c…ブラケット部、3d…カップリング収容部、3e…凹部、3f…挿通孔、3g…端面、4…無励磁ブレーキ、4a…ヨーク、4b…コイル、4c…可動磁性板、4d…固定制動板、4e…ブレーキ板、4f…カップリング嵌着孔、4g…モータ軸挿通孔、4h…カップリング挿通孔、4i…カラー、5…カップリング、5a…モータ軸連結ハブ、5b…モータ軸連結孔、5c…ボールねじ軸連結孔、5d…固定ボルト挿通孔、6…フランジ部材、6a…連結ボルト挿通孔、6b…取付けボルト挿通孔、6c…カップリング挿入孔、6d…凸部、6e…固定ボルト挿通孔、7…連結ボルト、8…スライダ、9…取付けボルト、10…固定ボルト、11…ボルト