(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007611
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】補強済み土嚢、補強リング、仮設支持基盤、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
E02B3/04 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109131
(22)【出願日】2023-07-03
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】505073794
【氏名又は名称】北陸エースコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】戸田 誠
(72)【発明者】
【氏名】辰野 智規
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA29
2D118AA30
2D118BA01
2D118BA07
2D118FB33
2D118GA42
2D118GA57
(57)【要約】
【課題】 建機等の支持基盤を効率的に仮設することを目的とする。
【解決手段】 補強済み土嚢の製造方法は、筒状に成形された土嚢補強用の補強リングの内側に土嚢袋を配置した状態で、前記土嚢袋の中に、土砂又は石を充填する工程と、土砂又は石が充填された前記土嚢袋を、前記補強リング内で鉛直方向に上下動させる工程とを有する。仮設支持基盤は、上記補強済み土嚢が水平方向に複数配列された仮設支持基盤である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土嚢と、
前記土嚢の水平方向の変形の少なくとも一部を規制するように配置された、ベルト状の補強リングと
を有する補強済み土嚢。
【請求項2】
前記補強リングは、可撓性を有するシート状樹脂で構成されており、前記土嚢の側面に密着しており、
前記土嚢は、円柱形状の状態で、前記補強リングの内側に閉じ込められている
請求項1の補強済み土嚢。
【請求項3】
可撓性を有するシートで構成され、筒状に成形された土嚢補強用の補強リング。
【請求項4】
請求項1に記載の補強済み土嚢が水平方向に複数配列された仮設支持基盤。
【請求項5】
筒状に成形された土嚢補強用の補強リングの内側に、土嚢袋を配置した状態で、前記土嚢袋の中に、土砂又は石を充填する工程と、
土砂又は石が充填された前記土嚢袋を、前記補強リング内で鉛直方向に上下動させる工程と
を有する補強済み土嚢の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強済み土嚢、補強リング、仮設支持基盤、及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、盛土等の土圧を支持する土嚢の成形方法において、少なくとも通気性を有する撓性のシート状体で、閉塞した袋体を形成し、この袋体に充填材の注入口を設け、一方、網状体で中空のフレーム部材を形成し、上記袋体をこのフレーム部材内に収納し、袋体の注入口から充填材を圧送して充填することを特徴とする、土嚢の成形方法が開示されている。
また、特許文献2には、内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、その一端が前記直方体バックの底面の内側の中心に固定された第1の吊下体と、各一端が前記直方体バックの底面の4つの頂点の対角線上で中心から所定距離隔たった点にそれぞれ固定され、その各他端が前記第1の吊下体に固定された第2~第5の吊下体とを備えるようにしたことを特徴とする形状保持型吊上げ式直方体バックが開示されている。
また、特許文献3には、内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、前記直方体バックの対角線上に設けられた基底バンドと、前記基底バンドが交差する交点に一端が接続され、他端は吊り下げ部に接続される四角柱形状のリフトバンドと、前記リフトバンドの四角柱の周囲を取り巻く複数の四角柱枠型固定バンドと、各固定バンド毎に、前記リフトバンドの各面において、その各一端が前記リフトバンドと前記固定バンド間に固定され、その各他端はリフトバンドの中心から所定距離隔たった点で前記基底バンドに固定される複数のトラスバンドとを備えるようにしたことを特徴とする形状保持型吊上げ式直方体バックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-164928号公報
【特許文献2】特開2008-156815号公報
【特許文献3】特開2009-046911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、建機等の支持基盤を効率的に仮設することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る補強済み土嚢は、土嚢と、前記土嚢の水平方向の変形の少なくとも一部を規制するように配置された、ベルト状の補強リングとを有する。
【0006】
好適には、前記補強リングは、可撓性を有するシート状樹脂で構成されており、前記土嚢の側面に密着しており、前記土嚢は、円柱形状の状態で、前記補強リングの内側に閉じ込められている。
【0007】
また、本発明に係る補強リングは、可撓性を有するシートで構成され、筒状に成形された土嚢補強用の補強リングである。
【0008】
また、本発明に係る仮設支持基盤は、上記補強済み土嚢が水平方向に複数配列された仮設支持基盤である。
【0009】
また、本発明に係る補強済み土嚢の製造方法は、筒状に成形された土嚢補強用の補強リングの内側に土嚢袋を配置した状態で、前記土嚢袋の中に、土砂又は石を充填する工程と、土砂又は石が充填された前記土嚢袋を、前記補強リング内で鉛直方向に上下動させる工程とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建機等の支持基盤を効率的に仮設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態における補強済み土嚢1を例示する図である。
【
図2】本実施形態における補強リング10を説明する図である。
【
図3】補強済み土嚢1の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
【
図4】
図3の製造方法の各工程(前半)を説明する図である。
【
図5】
図3の製造方法の各工程(後半)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
図1は、本実施形態における補強済み土嚢1を例示する図である。
図1に例示するように、補強済み土嚢1は、充填物が充填された土嚢袋20(すなわち、土嚢)と、この土嚢袋20の水平方向の変形の少なくとも一部を規制するように配置されたベルト状の補強リング10とを有する。
本例の補強リング10は、可撓性を有するシート状樹脂で構成され、ベルト状の網状体を無端リングとしたシート状樹脂リングである。補強リング10は、土嚢の設置状態において土嚢袋20の側面に密着している。
本例の土嚢袋20は、充填物(土砂又は石)が充填されることにより土嚢となり、円柱形状の状態で、補強リング10の内側に閉じ込められている。
【0013】
図2は、本実施形態における補強リング10を説明する図である。
図2に例示するように、補強リング10は、ベルト状に成形された網状シート100の長手方向の両端を、連結部材102により互いに連結して、リング状としたものである。本例の補強リング10は、
図7に例示するように、網状に形成された網状シート100の長手方向の両端を互いに重ね合わせた状態で、棒状の連結部材102を通すことにより、網状シート100の両端を連結させる。これにより、連結部分の強度は、網状シート100の母材以上となる。
網状シート100の素材は、引っ張り応力が強い素材であればよく、例えば、加熱延伸されたポリエチレンである。網状シート100の長手方向(すなわち、補強済み土嚢1の周方向)の長さは、3.0m~3.5mであり、網状シート100の短手方向(すなわち、補強済み土嚢1の高さ方向)の長さは、0.4m~0.6mである。
網状シート100の網目は、土嚢袋20に充填される充填物(土砂又は石)が通過できない大きさであることが望ましい。充填物の流出を抑制することができるからである。
【0014】
図3は、補強済み土嚢1の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
図4及び
図5は、
図3の製造方法の各工程を説明する図である。
図3に例示するように、ステップ100(S100)において、作業者は、
図7に例示するように、網状シート100の長手方向の両端を、連結部材102により互いに連結して、
図4(A)に例示するように、筒状の補強リング10を形成する。本例の網状シート100はジオグリッドであり、連結部材102はジオグリッド接続材である。
ステップ102(S102)において、作業者は、
図4(B)に例示するように、形成された補強リング10の内側に、土嚢袋20を設置する。
ステップ104(S104)において、作業者は、
図4(C)に例示するように、補強リング10の内側に設置された土嚢袋20の中に、充填物(土砂又は石)を充填する。
【0015】
ステップ106(S106)において、作業者は、
図5(A)に例示するように、補強リング10の内側で、土嚢袋20を上下方向にゆすり、土嚢袋20の中の充填物をならす。これにより、土嚢袋20の側面が、補強リング10の内側面に密着し、土嚢袋20が円柱状に成形される。
ステップ108(S108)において、作業者は、
図5(B)に例示するように、上下動により土嚢袋20の中に生じた隙間に、さらに充填物を充填する。
ステップ110(S110)において、作業者は、
図5(C)に例示するように、充填物で満たされた土嚢袋20の袋口を閉めて、補強済み土嚢1を完成させる。
【0016】
上記のように製造された補強済み土嚢1は、設置状態において上面から鉛直荷重がかかった場合に、充填物を介して周方向に内部応力が発生し、この内部応力に対し補強リング10の引張力で抵抗する。このように、補強済み土嚢1は、鉛直方向からの荷重に対して補強された土嚢となる。
【0017】
図6は、補強済み土嚢1の用途を例示する図である。
図6に例示するように、補強済み土嚢1を水平方向に複数配列して、仮設の支持基盤とすることができる。本例では、水平方向に、互いに隣接するように複数の補強済み土嚢1を配列し、これを上下方向に積み上げ、最上段の天面に鉄板を敷き詰めて、建機等の仮設支持基盤とする。
このような仮説支持基盤は、河川敷などの現場で、補強済み土嚢1を製造していることにより効率的に設置することができる。
【0018】
以上説明したように、本実施形態における補強済み土嚢1によれば、鉛直方向の荷重に対して補強された土嚢を効率的に製造できる。具体的には、補強リング10を土嚢袋20に巻くことで、上からの応力に対して、土嚢袋20を拘束することで土嚢1の支持力を高めることができる。
また、本例の補強済み土嚢1によれば、建機等の支持基盤を比較的簡易に仮設できる。具体的には、
図7に例示するように、連結部材102を差し込むだけで補強リング10を後から容易に巻くことができる。さらには、連結部材102を差し込む位置(すなわち、網状シート100の連結位置)を変えることにより、補強リング100の直径を容易に調整できる。また、補強済み土嚢1を使用した後で、解体及び分別も容易である。
【0019】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
上記実施形態では、現場にて網状シート100の長手方向の両端を連結して補強リング10を形成し、形成された補強リング10の内側に土嚢袋20を設置する形態を説明したが、網状シート100又は補強リング10と土嚢袋20とを一体化した状態で現場まで運搬し、現場で補強済み土嚢1を製造してもよい。例えば、大型土嚢袋20と一体化した製品も製造可能である。
また、補強リング10は、土嚢の水平方向の変形の少なくとも一部を規制されたベルト状部材であればよく、上記の網状シートに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0020】
1 補強済み土嚢
10 補強リング
20 土嚢袋