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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007617
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20250109BHJP
   E02F 9/02 20060101ALI20250109BHJP
   B62D 55/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E02F9/22 A
E02F9/02 A
B62D55/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109138
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭二
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】カーブ走行する際に制限が課されるショベルを提供する。
【解決手段】下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、前記下部走行体のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限する制限部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記下部走行体のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限する制限部と、を有する、ショベル。
【請求項2】
前記下部走行体は、左右一対のクローラを有し、当該一対のクローラの回転速度を互いに異ならせることで前記カーブ走行を行い、
前記制限部は、前記一対のクローラのうちの一方の回転速度に対する他方の回転速度の比率を制限することで前記曲率半径を制限する、請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記制限部は、前記一対のクローラのうち一方の回転速度に比べ、前記下部走行体のカーブ走行の際に回転速度が小さくなる他方のクローラの回転速度を制限することで前記曲率半径を制限する、請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記曲率半径を制限するための閾値半径を特定可能な情報を取得する条件取得部を有し、
前記制限部は、前記条件取得部にて取得された情報に基づいて前記曲率半径を制限する、請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記閾値半径と、地面の硬さを示す硬さ情報とが対応づけられたデータベースを有し、
前記条件取得部は、地面の硬さを示す硬さ情報を取得し、
前記制限部は、前記条件取得部にて取得された硬さ情報に対応する閾値半径を用いて前記曲率半径を制限する、請求項4に記載のショベル。
【請求項6】
前記硬さ情報は、地面の硬さを複数のレベルで示し、
前記条件取得部は、地面の硬さを示すレベルが入力されることで、地面の硬さを示す硬さ情報を取得する、請求項5に記載のショベル。
【請求項7】
前記閾値半径と前記硬さ情報とは、地面の硬さが柔らかくなるほど前記閾値半径が大きくなるように対応づけられている、請求項5に記載のショベル。
【請求項8】
前記下部走行体の一部を地面から浮かせて前記ショベルの走行方向を変更する空中ターンを検出する検出部を有し、
前記制限部は、前記検出部にて前記空中ターンが検出された際、前記曲率半径を制限しない、請求項1に記載のショベル。
【請求項9】
前記下部走行体の走行ルートを表示する表示部を有する、請求項1に記載のショベル。
【請求項10】
前記制限部による制限をON/OFFするための操作部を有する、請求項1に記載のショベル。
【請求項11】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
ルート設定部にて設定された走行ルートに従って前記下部走行体を走行させる走行制御部と、を有し、
前記ルート設定部は、前記下部走行体のカーブ走行の際の曲率半径が、特定された閾値半径以上となるように前記走行ルートを設定する、ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両において、障害物の位置に基づいて初期位置から目的位置へ移動するための経路を探索する技術が、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-157259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、ショベルがカーブ走行する際に制限を課す構成については開示されていない。
【0005】
本発明は、カーブ走行する際に制限が課されるショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記下部走行体のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限する制限部とを有するショベルである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カーブ走行する際に制限が課されるショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のショベルの一実施形態を示す側面図である。
図2】本発明のショベルの一実施形態を示す上面図である。
図3図1及び図2に示したショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。
図4】ショベルのカーブ走行の一例を説明するための図である。
図5】ショベルがスピンターンする場合のクローラの動きを説明するための図である。
図6】本実施形態におけるショベルの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図7】表示装置に表示される硬さ指定画面の一例を示す図である。
図8】硬さ/半径データベースの構成の一例を示す図である。
図9】本実施形態のショベルのカーブ走行の際の軌道の一例を示す図である。
図10】表示装置にカーブ走行の際のショベルの軌道を表示する例を示す図である。
図11】表示装置に表示される閾値半径指定画面の一例を示す図である。
図12】本実施形態におけるショベルの動作の他の例を説明するためのフローチャートである。
図13】本実施形態のショベルのカーブ走行の際の軌道の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
《ショベルの概要》
まず、本発明のショベルの一実施形態の概要について説明する。
【0011】
図1は、本発明のショベルの一実施形態を示す側面図であり、図2は、本発明のショベルの一実施形態を示す上面図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、各種作業を行うためのアタッチメントATと、キャビン10とを備える。以下、ショベル100(上部旋回体3)の前方は、ショベル100を上部旋回体3の旋回軸に沿って真上から平面視(上面視)で見たときに、上部旋回体3に対するアタッチメントが延び出す方向に対応する。また、ショベル100(上部旋回体3)の左方及び右方は、それぞれ、キャビン10内の操縦席に着座するオペレータから見た左方及び右方に対応する。
【0013】
下部走行体1は、例えば、左右一対のクローラ1Cを含む。具体的には、クローラ1Cは、左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。下部走行体1は、左クローラ1CL及び右クローラ1CRが左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRでそれぞれ油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。なお、左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRは電動モータであってもよい。
【0014】
上部旋回体3は、旋回機構2が旋回用油圧モータ2Aで油圧駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。なお、旋回用油圧モータ2Aは電動モータであってもよい。
【0015】
アタッチメントAT(作業アタッチメントの一例)は、ブーム4、アーム5及びバケット6を含む。
【0016】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に取り付けられ、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に取り付けられる。
【0017】
バケット6は、エンドアタッチメントの一例である。バケット6は、例えば、掘削作業等に用いられる。また、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、他のエンドアタッチメントが取り付けられてもよい。他のエンドアタッチメントは、例えば、大型バケット、法面用バケット、浚渫用バケット等の他の種類のバケットであってよい。また、他のエンドアタッチメントは、攪拌機、ブレーカ、グラップル等のバケット以外の種類のエンドアタッチメントであってもよい。
【0018】
ブーム4、アーム5及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9により油圧駆動される。
【0019】
なお、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等の被駆動要素の一部が電気駆動される構成であってもよい。即ち、ショベル100は、被駆動要素の一部が電動アクチュエータで駆動される、ハイブリッドショベルや電動ショベル等であってもよい。
【0020】
キャビン10は、オペレータが搭乗する操縦室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。なお、ショベル100が遠隔操作される場合や完全自動運転によって動作する場合、キャビン10は、省略されてもよい。
【0021】
また、ショベル100は、例えば、通信装置T1を搭載し、所定の通信回線を通じて、外部装置と相互に通信可能であってよい。
【0022】
ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータの操作に応じて、アクチュエータ(例えば、油圧アクチュエータ)を動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等の動作要素(以下、被駆動要素と称する)を駆動する。
【0023】
キャビン10の操縦席付近には、操作装置26が設けられている。操作装置26は、オペレータが各種被駆動要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うために用いられる。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの被駆動要素を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、左側走行用油圧モータ2ML、左側走行用油圧モータ2ML、旋回用油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等)の操作を行うために用いられる。例えば、これら各種被駆動要素にそれぞれ対応したレバーを有し、このレバーを操作することで各種被駆動要素の操作を行う。
【0024】
上部旋回体3の後部には、エンジン11が搭載されている。エンジン11は、原動機であり、油圧駆動系におけるメイン動力源である。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。なお、エンジン11の搭載位置は、上部旋回体3の後部に限らない。
【0025】
なお、ショベル100には、エンジン11に代えて、或いは、加えて、他の原動機が搭載されてもよい。他の原動機は、例えば、後述するメインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動可能な電動機である。
【0026】
キャビン10には、表示装置D1と音出力装置D2とが設けられている。
【0027】
表示装置D1は、本願発明の表示部の一例となるものである。表示装置D1は、キャビン10内の着座したオペレータから視認し易い場所に設けられ、各種情報画像を表示し、視覚的な方法で各種情報を出力する。表示装置D1は、タッチパネルを有していてもよい。その場合、表示装置D1は、本願発明の操作部の一例として機能する。表示装置D1は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイである。
【0028】
音出力装置D2は、聴覚的な方法で各種情報を出力する。音出力装置D2には、例えば、ブザー、アラーム、スピーカ等が含まれる。
【0029】
また、ショベル100は、コントローラ30を有する。コントローラ30の機能については後述する。
【0030】
《ショベルの駆動系の構成》
次に、ショベル100の駆動系の構成について説明する。
【0031】
図3は、図1及び図2に示したショベル100の駆動系の構成例を示すブロック図である。図3中、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン及び電気制御系をそれぞれ二重線、太実線、破線及び点線で示している。
【0032】
図3に示すように、ショベル100の駆動系は、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、コントローラ30及びパイロット圧調整装置31等を含む。
【0033】
エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に連結されている。エンジン11は、コントローラ30による直接或いは間接的な制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。
【0034】
メインポンプ14は、高圧油圧ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0035】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0036】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26及びパイロット圧調整装置31を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
【0037】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を介して、メインポンプ14が吐出する作動油を1または複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。
【0038】
制御弁171~176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ2ML、右側走行用油圧モータ2MR及び旋回用油圧モータ2Aを含む。
【0039】
操作装置26は、本実施形態では、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバーまたはペダル(図示せず)の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0040】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0041】
操作圧センサ29は、操作装置26を用いたオペレータの操作内容を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバーまたはペダルの操作方向及び操作量を圧力(操作圧)の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、操作圧センサ29以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
【0042】
パイロット圧調整装置31は、流量制御弁のパイロットポートに供給されるパイロット圧を調整するように構成されている。本実施形態では、パイロット圧調整装置31は、コントローラ30が出力する制御電流に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を用いてパイロット圧を増減させる減圧弁である。この構成により、パイロット圧調整装置31は、例えば、オペレータによるバケット操作レバーの操作とは無関係に、コントローラ30からの制御電流に応じてバケット6を開閉させることができる。また、オペレータによるブーム操作レバーの操作とは無関係に、コントローラ30からの制御電流に応じてブーム4を上下させることができる。また、オペレータによるブーム操作レバーの操作とは無関係に、コントローラ30からの制御電流に応じて下部走行体1の前進及び後進を、左クローラ1CLと右クローラ1CRとで独立に制御することができる。また、上部旋回体3の左旋回、右旋回、アーム5の開閉等についても同様である。なお、これらバケット6の開閉、ブーム4の上下、下部走行体1の前進及び後進のための左クローラ1CLと右クローラ1CRの回転、上部旋回体3の左旋回及び右旋回、並びにアーム5の開閉は、電動モータによって制御してもよい。
【0043】
コントローラ30は、ショベル100全体を制御する制御部である。
【0044】
コントローラ30は、回転速度検出部301と、硬さ検出部302と、条件取得部303と、制限部304と、空中ターン検出部305と、ルート設定部306とを有する。
【0045】
回転速度検出部301は、左右一対となる左クローラ1CL及び右クローラ1CRを回転させるための左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRの回転速度を検出する。下部走行体1は、左右一対となる左クローラ1CL及び右クローラ1CRの回転速度を互いに異ならせることでカーブ走行を行う。回転速度検出部301は、左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRそれぞれの回転速度を検出する。
【0046】
硬さ検出部302は、ショベル100が走行する地面の硬さを検出する。
【0047】
条件取得部303は、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径を特定可能な情報を取得する。
【0048】
制限部304は、条件取得部303が取得した情報に基づいて、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限するための制御電流をパイロット圧調整装置31に対して出力する。
【0049】
ルート設定部306は、下部走行体1のカーブ走行の際の曲率半径が、条件取得部303が取得した情報によって特定される閾値半径以上となるように、下部走行体1の走行ルートを設定する。
【0050】
空中ターン検出部305は、下部走行体1の一部を地面から浮かせてショベル100の走行方向を変更する空中ターンを検出する。空中ターンにおいては、具体的には、ジャッキアップによって下部走行体1の一部を地面から浮かせてショベル100の走行方向を変更することになる。
【0051】
《ショベルのカーブ走行》
図4は、ショベル100のカーブ走行の一例を説明するための図である。
【0052】
例えば図4に示すように、ショベル100がスタート地点Sから出発し、中間地点Mを通過してゴール地点Gに向かうとする。また、スタート地点Sから中間地点Mまでの直線ルートと、中間地点Mからゴール地点Gまでの直線ルートとが互いに直交しているものとする。
【0053】
その場合、ショベル100は、スタート地点Sから中間地点Mまでまっすぐ走行し、中間地点Mにてゴール地点Gに向かって方向変換してゴール地点Gに向かうルートR1を走行する。すると、ショベル100は、中間地点Mにて、その場で旋回するいわゆるスピンターンによって方向変換する場合がある。
【0054】
図5は、ショベル100がスピンターンする場合の左クローラ1CL及び右クローラ1CRの動きを説明するための図である。
【0055】
上述したように、ショベル100は、操作装置26のレバーまたはペダルの操作方向及び操作量に応じた圧力が制御弁171~176のパイロットポートに供給される。そして、制御弁171~176によって、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、並びに、左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRを含む油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量が制御される。これにより、左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含むアタッチメントATが動作する。
【0056】
そこで、図5に示すように、右クローラ1CRの回転方向がAとなり、左クローラ1CLの回転方向がAとは反対方向となるBとなるように操作装置26のレバーまたはペダルを操作することで、ショベル100をスピンターンさせることができる。
【0057】
しかしながらその場合、特に右クローラ1CR及び左クローラ1CLの側面にて地面との間に大きな摩擦力が生じ、地面が削れてしまう。これは、ショベル100がスピンターンする場合に限らず、ショベル100のカーブ走行時の軌道の曲率半径が小さい場合に生じやすい。軌道の曲率半径を小さくするには、左クローラ1CLの回転速度と右クローラ1CRの回転速度との比率を大きくすることになる。例えば、左クローラ1CLの回転速度と右クローラ1CRの回転速度との比率が、100:80の場合よりも、100:70の場合の方が、軌道の曲率半径が小さくなる。一方、ショベル100のスピンターンは、上述したように、左クローラ1CL及び右クローラ1CRを互いに反対方向に回転させることで行う。すなわち、スピンターンにおける左クローラ1CLの回転速度と右クローラ1CRの回転速度との比率は、100:-100と大きなものとなる。
【0058】
このように、左クローラ1CLの回転速度と右クローラ1CRの回転速度との比率が大きいほど、地面が削られやすくなる。また、ショベル100が走行する地面の硬さが柔らかいほど、地面が削られやすくなる。
【0059】
そこで、本実施形態においては、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限することで、地面が削られてしまうことを抑制する。
【0060】
《ショベルの動作》
図6は、本実施形態におけるショベル100の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0061】
〈制限設定フェーズ〉
ショベル100にて下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限する場合は、制限をON/OFFするための操作部を操作することで、制限をON状態とする(ステップS601)。操作部としては、例えば、表示装置D1が有するタッチパネルを用いてもよい。その場合、表示装置D1に、制限をON/OFFするためのボタンを表示させ、そのボタンの操作に基づいて、制限のON/OFFが制御されることになる。また、操作部として、表示装置D1とは異なる物理的なスイッチを設けてもよい。
【0062】
制限がON状態に設定されると、まず、表示装置D1に、地面の硬さを指定するための画面が表示される(ステップS602)。
【0063】
図7は、表示装置D1に表示される硬さ指定画面の一例を示す図である。
【0064】
例えば図7に示すように、表示装置D1に表示される硬さ指定画面には、地面の硬さを指定するための硬さ指定領域701が設けられている。硬さ指定領域701は、地面の硬さを5つのレベルで選択可能となっており、ショベル100を操作するオペレータは、硬さ指定領域701に表示された5つのレベルのうち、ショベル100が走行する地面の硬さに応じたレベルを選択することができる。このレベルの選択は、表示装置D1が有するタッチパネルにて認識される。
【0065】
このように、地面の硬さを複数のレベルで示し、地面の硬さを示すレベルが表示装置D1等に入力されることで、条件取得部303が、地面の硬さを示す硬さ情報を取得する。これにより、オペレータは簡単な操作で地面の硬さを指定することができる。なお、選択可能なレベルの数は5つに限らない。
【0066】
硬さ指定画面にて指定された地面の硬さは、条件取得部303にて地面の硬さを示す硬さ情報として取得され(ステップS603)、制限部304に対して、下部走行体1の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径を特定可能な情報として出力される。
【0067】
制限部304は、硬さ/半径データベース307を参照し、条件取得部303から出力された硬さ情報に基づいて、下部走行体1の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径を決定する(ステップS604)。
【0068】
図8は、硬さ/半径データベース307の構成の一例を示す図である。
【0069】
図8に示すように、硬さ/半径データベース307には、硬さ情報となる地面の硬さのレベルと、下部走行体1の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径とが対応づけられている。上述したように、左クローラ1CLの回転速度と右クローラ1CRの回転速度との比率が大きい、すなわち、下部走行体1の軌道の曲率半径が小さいほど、地面が削られやすくなる。また、ショベル100が走行する地面の硬さが柔らかいほど、地面が削られやすくなる。
【0070】
そのため、硬さ/半径データベース307においては、図7に示した硬さ指定画面に表示された地面の硬さが柔らかいほど、下部走行体1の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径が大きくなるように設定づけられている。
【0071】
これにより、制限部304は、図7に示した硬さ指定画面にて指定された地面の硬さが柔らかいほど、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径が大きくなるように決定する。このような構成とすることで、柔らかい地面において地面が削られることが抑制される。
【0072】
このようにして、ショベル100の走行時における下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径が、ショベル100が走行する地面の硬さに応じて決定される。
【0073】
なお、地面の硬さは、上述したように図7に示した硬さ指定画面にてオペレータが指定するものに限らず、コントローラ30の硬さ検出部302にて検出することもできる。その場合は、例えば、硬さ検出部302において、バケット6を地面に押し付けた際のブームシリンダ7のロッド側油室の作動油の圧力に基づいて地面の硬さを検出してもよい。その場合、硬さ検出部302において、バケット6を地面に押し付けた際のブームシリンダ7のロッド側油室の作動油の圧力を用いて所定の演算を行って地面の硬さを検出してもよいし、ブームシリンダ7のロッド側油室の作動油の圧力と地面の硬さとを対応づけたテーブルを参照して地面の硬さを検出してもよい。なお、硬さ検出部302においてバケット6を地面に押し付けた際のブームシリンダ7のロッド側油室の作動油の圧力に基づいて地面の硬さを検出する場合は、バケット6の角度も考慮することが好ましい。
【0074】
このように、本実施形態においては、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径と、地面の硬さを示す硬さ情報とが対応づけられた硬さ/半径データベース307を有している。そして、条件取得部303にて地面の硬さを示す硬さ情報を取得し、制限部304が、条件取得部303にて取得された硬さ情報に対応する閾値半径を用いて下部走行体1のカーブ走行の際の曲率半径を制限している。これにより、ショベル100が走行する地面の硬さに応じて、地面が過度に削られない程度の適切な曲率半径で下部走行体1を走行させることができる。例えば、地面がコンクリートで覆われている場合、地面が削られることはほとんどないため、下部走行体1の曲率半径を小さくする必要はない。このように、地面の硬さに応じた必要最小限の曲率半径で下部走行体1を走行させることができる。
【0075】
〈制限実行フェーズ〉
下部走行体1の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径が決定され、下部走行体1の軌道の曲率半径を制限された状態でショベル100を走行させると、回転速度検出部301にて、左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRの回転速度が検出される。ここで、ショベル100の走行時においてショベル100をカーブ走行させる場合は、上述したように、オペレータは操作装置26のレバーまたはペダルを操作し、左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRを介して左クローラ1CL及び右クローラ1CRの回転速度を互いに異ならせる。そして、回転速度検出部301は、左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRの回転速度を検出する。
【0076】
上述したように、下部走行体1の軌道の曲率半径は、左クローラ1CLの回転速度と右クローラ1CRの回転速度との比率に応じたものとなる。そのため、回転速度検出部301にて、左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRの回転速度をそれぞれ検出することで、制限部304において、それらの回転速度の比率に基づいて下部走行体1の軌道の曲率半径を認識することができる。
【0077】
制限部304においては、左クローラ1CLの回転速度と右クローラ1CRの回転速度との比率を監視している。そして、これらの比率による下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径が、ステップS604にて決定した閾値半径未満である場合(ステップS605のYES)、制限部304は、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を閾値半径とするための制御電流をパイロット圧調整装置31に対して出力する。この際、制限部304は、左クローラ1CLと右クローラ1CRとのうち、カーブ走行のために回転速度が小さくなるクローラの回転速度を制限するための制御電流をパイロット圧調整装置31に対して出力する。
【0078】
そして、パイロット圧調整装置31において、制限部304から出力された制御電流に基づいて、左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRの回転速度が制御され、下部走行体1の軌道の曲率半径が閾値半径となるように下部走行体1の軌道の曲率半径が制限される(ステップS606)。
【0079】
一方、左クローラ1CLの回転速度と右クローラ1CRの回転速度との比率による下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径が、ステップS604にて決定した閾値半径以上の場合は(ステップS605のNO)、制限部304は、クローラの回転速度を制限するための制御電流をパイロット圧調整装置31に対して出力しない。これにより、左クローラ1CL及び右クローラ1CRは、オペレータの操作装置26のレバーまたはペダルに対する操作に基づく回転速度で回転し、下部走行体1は、オペレータの操作装置26のレバーまたはペダルに対する操作に応じた軌道で走行する(ステップS607)。
【0080】
上記動作がショベル100の走行が終了するまで行われる(ステップS608)。
【0081】
図9は、本実施形態のショベル100のカーブ走行の際の軌道の一例を示す図である。
【0082】
例えば図9に示すように、ショベル100がスタート地点Sから出発し、中間地点Mを通過してゴール地点Gに向かうとする。また、スタート地点Sから中間地点Mまでの直線ルートと、中間地点Mからゴール地点Gまでの直線ルートとが互いに直交しているものとする。
【0083】
その場合、ショベル100は、スタート地点Sから中間地点Mまでまっすぐ走行し、中間地点Mにてゴール地点Gに向かって方向変換してゴール地点Gに向かうルートを走行する。ここで、上述した制限部304による軌道の制限がなければ、ショベル100は、中間地点Mにてゴール地点Gに向かうためにその場で旋回するいわゆるスピンターンによって方向変換するルートR1を走行する場合がある。
【0084】
ところが、上述した制限部304による軌道の制限によって、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径が制限され、ショベル100は、制限された曲率半径に従ってカーブしたルートR2を走行してゴール地点Gに向かうことになる。また、制限された曲率半径が大きな場合は、ショベル100は、ルートR2よりも大回りするルートR3を走行してゴール地点Gに向かうことになる。
【0085】
このように、制限部304において、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限することで、カーブ走行する際に制限が課されるショベルを提供することができる。その結果、地面が削れられることが抑制され、ショベル100が走行した後の地面が平坦に維持され、その後、地面を平坦に戻す作業が減り、作業者の負担が低減される。
【0086】
また、制限部304が、一対となる左クローラ1CL及び右クローラ1CRのうちの一方の回転速度に対する他方の回転速度の比率を制限することで曲率半径を制限する構成とすることにより、一対となる左クローラ1CL及び右クローラ1CRの回転速度の比率が大きいことに起因して地面が削られることを抑制できる。
【0087】
また、制限部304が、一対となる左クローラ1CL及び右クローラ1CRのうち一方の回転速度に比べ、下部走行体1のカーブ走行の際に回転速度が小さくなる他方のクローラの回転速度を制限することで曲率半径を制限している。これにより、下部走行体1のカーブ走行の際の速度を大きく低減させることなく、地面が削られることを抑制できる。
【0088】
また、曲率半径を制限するための閾値半径を特定可能な情報を取得する条件取得部303を有し、制限部304が、条件取得部303にて取得された情報に基づいて曲率半径を制限している。これにより、曲率半径を制限するための閾値半径を特定可能な情報をオペレータの操作等から取得することができる。
【0089】
なお、本実施形態においては、表示装置D1が有するタッチパネル等を操作して制限をON状態に設定することで、ショベル100にて下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限している。そのため、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限したくない場合は、表示装置D1が有するタッチパネル等を操作して制限をOFF状態に設定すれば、オペレータの操作に応じて制限なく、ショベル100を走行させることができる。
【0090】
ここで、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径が制限されることで、ショベル100が走行する軌道がオペレータの操作によるものとは異なる場合、オペレータが戸惑ってしまう場合がある。そこで、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道を表示する構成としてもよい。
【0091】
図10は、表示装置D1にカーブ走行の際のショベル100の軌道を表示する例を示す図である。
【0092】
図10に示すように、表示装置D1に、ショベル100の走行が制限されている旨を示す制限情報901と、制限による走行ルートを示すルート情報902とを表示してもよい。それにより、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径が制限されることで、ショベル100が走行する軌道がオペレータの操作によるものとは異なる場合であっても、オペレータが戸惑うことを回避できる。この場合、制限情報901及びルート情報902を、図8に示した硬さ/半径データベース307にて地面の硬さのレベルと対応づけておき、ステップS603にて取得された硬さ情報に対応する制限情報901及びルート情報902を表示させてもよい。
【0093】
本実施形態では、表示装置D1に、図7に示したような地面の硬さを指定するための画面が表示され、この硬さ指定画面を用いて、ショベル100が走行する地面の硬さを指定可能としている。そして、その地面の硬さに応じた閾値半径によって、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限している。
【0094】
しかしながら、下部走行体1の軌道の曲率半径を制限するため閾値半径自体を指定する構成としてもよい。
【0095】
図11は、表示装置D1に表示される閾値半径指定画面の一例を示す図である。
【0096】
例えば図11に示すように、表示装置D1に表示される閾値半径指定画面には、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径を指定するための半径指定領域1101が設けられている。半径指定領域1101は、閾値半径を5つのレベルで選択可能となっており、ショベル100を操作するオペレータは、半径指定領域1101に表示された5つのレベルのうち、ショベル100がカーブ走行する際の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径のレベルを選択することができる。すなわち、オペレータは、ショベル100がカーブ走行する際にこれ以上小さな曲率半径ではカーブできなくなる半径を選択することができる。このレベルの選択は、表示装置D1が有するタッチパネルにて認識される。
【0097】
このように、ショベル100がカーブ走行する際の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径を複数のレベルで示し、閾値半径を示すレベルが表示装置D1等に入力されることで、条件取得部303が、閾値半径を特定可能な情報を取得する。これにより、オペレータは簡単な操作で、ショベル100がカーブ走行する際にこれ以上小さな曲率半径ではカーブできなくなる半径を指定することができる。なお、選択可能なレベルの数は5つに限らない。この場合、硬さ/半径データベース307は不要となる。
【0098】
なお、図11に示した画面を用いた曲率半径の制限は、ショベル100の走行における曲率半径の支援制御にも利用できる。曲率半径の支援制御を行う場合においても、例えば、ステップS601にて操作部を操作することで、制限をON状態とすることになるが、制限をON状態としない場合、ブザー等の警告を出力してもよい。
【0099】
また、本実施形態では、キャビン10に設けられた操作装置26へのオペレータの操作に対して制限をかけている。しかしながら、ショベル100を遠隔操作する場合の遠隔操作ユニットへの操作に対して制限をかけてもよい。
【0100】
ここで、ショベル100においては、方向変換をする場合、ジャッキアップによって下部走行体1の一部を地面から浮かせてショベル100の走行方向を変更する空中ターンが行われることがある。空中ターンは、例えば、バケット6を地面に押さえつけることで左クローラ1CL及び右クローラ1CRの一部を地面から浮かせ、その状態で旋回機構2によって下部走行体1に対して上部旋回体3を旋回させる。そのため、上述したスピンターンをはじめとした方向変換に比べて削られる地面の範囲は狭くなる。
【0101】
そこで、空中ターン検出部305にて空中ターンを検出した場合、制限部304が、上述した曲率半径をあえて制限しない構成としてもよい。その場合、空中ターン検出部305は、上述した空中ターン時におけるアタッチメントAT及び旋回機構2に対する操作を検出した場合に空中ターンと判断してもよく、また、ショベル100の姿勢が傾いた状態で旋回機構2に対する操作を検出した場合に空中ターンと判断してもよい。それにより、地面が削られる可能性が低い空中ターン時にて、あえて曲率半径を制限することなくショベル100を走行させることができる。なお、空中ターン時は、そもそも左クローラ1CL及び右クローラ1CRが回転しない。そのため、上述した曲率半径を制限した場合も制限しない場合も、地面の削られ方が大きく異なるわけではないが、上記動作によって、あえて曲率半径を制限することなくショベル100を走行させることができる。
【0102】
(ショベルの動作の他の例)
以下に、ショベル100を自動走行させる場合の動作の他の例について説明する。
【0103】
図12は、本実施形態におけるショベル100の動作の他の例を説明するためのフローチャートである。
【0104】
〈制限設定フェーズ〉
ショベル100にて下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限する場合は、制限をON/OFFするための操作部を操作することで、制限をON状態とする(ステップS1201)。操作部としては、例えば、表示装置D1が有するタッチパネルを用いてもよい。その場合、表示装置D1に、制限をON/OFFするためのボタンを表示させ、そのボタンの操作に基づいて、制限のON/OFFが制御されることになる。また、操作部として、表示装置D1とは異なる物理的なスイッチを設けてもよい。
【0105】
制限がON状態に設定されると、まず、表示装置D1に、ショベル100のゴール地点を指定するための画面が表示される(ステップS1202)。ゴール地点を指定する画面では、緯度経度によってゴール地点を指定可能としてもよいし、地図を表示させ、地図上で指定可能としてもよい。
【0106】
指定されたゴール地点を示す情報は、ルート設定部306にて取得される(ステップS1203)。
【0107】
次に、表示装置D1に、図7に示したような、地面の硬さを指定するための硬さ指定画面が表示される(ステップS1204)。
【0108】
そして、表示装置D1に表示された硬さ指定画面にて地面の硬さが選択されると、選択された地面の硬さが、条件取得部303にて地面の硬さを示す硬さ情報として取得される(ステップS1205)。条件取得部303にて取得された硬さ情報は、ルート設定部306に対して、ショベル100の走行ルートを設定する際に用いる制限情報として出力される。
【0109】
なお、ステップS1202,S1203における処理と、ステップS1204,S1205における処理とは順番を入れ替えて行ってもよい。
【0110】
次に、ルート設定部306が、まず、硬さ/半径データベース307を参照し、条件取得部303から出力された硬さ情報に基づいて、下部走行体1の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径を決定する(ステップS1206)。すなわち、下部走行体1の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径は、表示装置D1に表示された硬さ指定画面にて地面の硬さが選択されることで特定されることになる。
【0111】
次に、ルート設定部306が、ショベル100の現在の位置及び向きと、ステップS1203にて取得されたゴール地点の情報と、ステップS1206にて決定した閾値半径とに基づいて、ショベル100の走行ルートを設定する(ステップS1207)。なお、ショベル100の現在の位置は、ショベル100に搭載されたGPS等によって特定することができるが、オペレータが地図上で指定してもよい。また、ショベル100の現在の向きは、方位センサ等を用いて特定することができる。
【0112】
ルート設定部306は、例えばまず、ショベル100の現在の位置及び向きと、ステップS1203にて取得されたゴール地点の情報とから、ショベル100の現在の位置からゴール地点までの最短ルートを設定する。
【0113】
次に、ショベル100の現在の位置及び向きにおいて、ゴール地点まで走行するために下部走行体1がスピンターンを含むカーブ走行を実行する必要がある場合、そのカーブ走行における軌道の曲率半径が、ステップS1206にて決定した閾値半径未満であるかどうかを判断する。
【0114】
そして、カーブ走行における軌道の曲率半径が、ステップS1206にて決定した閾値半径未満である場合は、カーブ走行における軌道の曲率半径が、ステップS1206にて決定した閾値半径以上となるように走行ルートを変更する。
【0115】
〈制限実行フェーズ〉
ショベル100の走行ルートが設定された後、ショベル100を自動走行させると、ショベル100は、現在の位置からゴール地点まで、ステップS1207にて設定された走行ルートを走行するようになる(ステップS1208)。
【0116】
上記動作がショベル100の走行が終了するまで行われる(ステップS1209)。
【0117】
図13は、本実施形態のショベル100のカーブ走行の際の軌道の他の例を示す図である。
【0118】
例えば図13に示すように、ショベル100がスタート地点Sから出発してゴール地点Gに向かうとする。また、ショベル100は、スタート地点Sにおいて、ゴール地点Gとは異なる方向を向いている。
【0119】
その場合、上述したルート設定部306におけるカーブ走行の際の軌道の曲率半径についての制限がなければ、ショベル100は、スタート地点Sからまず、ゴール地点Gに向かうようにスピンターンまたは小さな曲率半径の軌道でカーブ走行し、その後、ゴール地点Gまでまっすぐ向かうルートR4を走行することになる。
【0120】
ところが、上述したように、ルート設定部306において、カーブ走行における軌道の曲率半径が、ステップS1206にて決定した閾値半径以上となるように走行ルートが設定されている。それにより、ショベル100は、スタート地点Sからゴール地点Gまでまっすぐ向かうのではなく、下部走行体1のカーブ走行の際の曲率半径が、ステップS1206にて決定した閾値半径以上となるルートR5を走行してゴール地点Gに向かうことになる。また、地面の硬さによって制限された曲率半径が大きな場合は、ショベル100は、ルートR6よりも大回りするルートR6を走行してゴール地点Gに向かうことになる。その場合、ルート設定部306にて設定された走行ルートを下部走行体1が走行するような制御電流がパイロット圧調整装置31に出力される。そして、パイロット圧調整装置31が走行制御部の一例となって、左側走行用油圧モータ2ML及び右側走行用油圧モータ2MRの回転速度を制御し、下部走行体1を走行させることができる。
【0121】
このように、ショベル100を自動走行させる場合においても、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径に制限をかけた走行ルートを設定することができる。
【0122】
なお、本例においては、ショベル100が走行する地面の硬さに応じて下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径に制限をかけた走行ルートを設定している。しかしながら、本例においても、図11を用いて説明したように、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径を制限するための閾値半径を指定することで、下部走行体1のカーブ走行の際の軌道の曲率半径に制限をかけた走行ルートを設定してもよい。
【0123】
また、本実施形態では、ルート設定部306がショベル100に設けられている。しかしながら、ルート設定部306をショベル100の外部に設け、ルート設定部306にて設定された走行ルートに従ってショベル100を自動制御する構成としてもよい。その場合、ショベル100は通信装置T1を用いて、自動制御のための通信を行ってもよい。
【0124】
以上、ショベルの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態、及び変形例等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0125】
1 下部走行体
1C クローラ
2ML 左側走行用油圧モータ
2MR 右側走行用油圧モータ
2A 旋回用油圧モータ
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
13 レギュレータ
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
17 コントロールバルブ
26 操作装置
28 吐出圧センサ
29 操作圧センサ
30 コントローラ(制御装置)
31 パイロット圧調整装置
100 ショベル
AT アタッチメント(作業アタッチメント)
D1 表示装置
D2 音出力装置
T1 通信装置(取得装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13