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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007630
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/40 20060101AFI20250109BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E02F3/40 E
E02F3/43 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109160
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 将
【テーマコード(参考)】
2D003
2D012
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA02
2D003BB04
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D012HA00
(57)【要約】
【課題】ローテータ部を備える構造において、土砂のこぼれを抑制できるショベルを提供する。
【解決手段】ショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に設けられる上部旋回体2と、上部旋回体2に設けられ、バケット6を保持するアタッチメントATと、を備える。アタッチメントATは、バケット6の基端の軸回りであるロール方向にバケット6を回転させて、バケット6の開口面&Coのロール角度を調整するローテータ機構22を有する。アタッチメントATは、上部旋回体2の旋回動作においてローテータ機構22を動作させ、旋回方向により形成される旋回平面に対してバケット6の開口面6Coをロール方向に傾ける。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に設けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に設けられ、バケットを保持するアタッチメントと、を備え、
前記アタッチメントは、前記バケットの基端の軸回りであるロール方向に前記バケットを回転させて、前記バケットの開口面のロール角度を調整するローテータ部を有し、
前記上部旋回体の旋回動作において前記ローテータ部を動作させ、旋回方向により形成される旋回平面に対して前記バケットの開口面を前記ロール方向に傾ける、
ショベル。
【請求項2】
前記ローテータ部の動作を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記上部旋回体の旋回方向にかかる旋回加速度に基づき、前記ロール角度を調整する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記コントローラは、前記旋回加速度の絶対値が大きい程、前記旋回平面に対する前記ロール角度を大きくする、
請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記ローテータ部の動作を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記上部旋回体の旋回動作において、予め設定されたロール角度に基づき、前記バケットの開口面を前記ロール方向に傾ける、
請求項1記載のショベル。
【請求項5】
前記アタッチメントは、前記旋回動作の中間期間の前記ロール角度よりも前記旋回動作の開始初期および前記旋回動作の終了期間の前記ロール角度を大きくする、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項6】
前記アタッチメントは、前記上部旋回体の旋回動作において、前記バケットのバケット角度を調整するバケットシリンダを動作させ、前記旋回平面に対して前記バケットの開口面が前記上部旋回体を向く方向に傾ける、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項7】
前記アタッチメントは、前記旋回動作の開始初期および前記旋回動作の終了期間のバケット角度よりも、前記旋回動作の中間期間の前記バケット角度を大きくする、
請求項6に記載のショベル。
【請求項8】
前記バケットシリンダの動作を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記上部旋回体の旋回速度に基づき、前記バケット角度を調整する、
請求項6に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルにおいて掘削から排土の動作を行う場合は、バケットに土砂が入った状態で上部旋回体およびアタッチメントを一体に旋回して、ダンプ等の荷台の排土位置までバケットを移動させる。この旋回動作において、バケットに収容した土砂が途中でこぼれ落ちてしまうことがある。
【0003】
特許文献1には、上記のような旋回動作において、バケットにかかる遠心力に基づき、バケットのバケット角度を傾けることにより、バケットの開口面を水平方向に対して傾斜させるショベルが開示されている。このバケットの傾斜姿勢によって、旋回動作において遠心力を受けても土砂のこぼれが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6851701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ショベルは、バケットのバケット角度を変えるだけでなく、バケットをロール方向に回転させるローテータ部を備えるものもある。
【0006】
本開示は、ローテータ部を備えるショベルにおいて、土砂のこぼれを大幅に抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に設けられる上部旋回体と、前記上部旋回体に設けられ、バケットを保持するアタッチメントと、を備え、前記アタッチメントは、前記バケットの基端の軸回りであるロール方向に前記バケットを回転させて、前記バケットの開口面のロール角度を調整するローテータ部を有し、前記上部旋回体の旋回動作において前記ローテータ部を動作させ、旋回方向により形成される旋回平面に対して前記バケットの開口面を前記ロール方向に傾ける、ショベルが提供される。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、ローテータ部を備えるショベルにおいて、土砂のこぼれを大幅に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るショベルの全体構成を概略的に示す側面図である。
図2】実施形態に係るショベルの構成の一例を概略的に示す図である。
図3】ショベルの旋回動作時にバケットに作用する力を説明するための概略平面図である。
図4】バケットの開口面の姿勢を算出する原理を示す説明図であり、(A)は、バケットのバケット角度の姿勢を示し、(B)は、バケットのロール角度の姿勢を示す。
図5】旋回時におけるバケットの姿勢を自動的に調整する際の信号の流れを示すブロック図である。
図6図6(A)は、実施形態に係る旋回動作におけるバケットの姿勢調整方法を示すフローチャートである。図6(B)は、変形例に係る旋回動作におけるバケットの姿勢調整方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
図1は、実施形態に係るショベル100の全体構成を概略的に示す側面図である。図1に示すように、ショベル100は、下部走行体1と、上部旋回体2と、アタッチメントATと、を備える。
【0012】
下部走行体1は、左右一対のクローラ1Cを有する。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている走行アクチュエータ1L、1R(図2参照)によって駆動される。下部走行体1には、旋回機構3を介して上部旋回体2が旋回可能に搭載される。旋回機構3は、旋回アクチュエータ3A(図2参照)を有し、旋回アクチュエータ3Aにより上部旋回体2を旋回させる。なお、走行アクチュエータ1L、1Rおよび旋回アクチュエータ3Aは、油圧アクチュエータ、内燃機関、電動アクチュエータのいずれであってもよい。
【0013】
上部旋回体2は、操作者が搭乗してショベル100を操作するための操作室であるキャビン10を、前方かつ左側(ブーム4の左側)に備える。また、上部旋回体2は、後部にカウンタウェイトを備えると共に、ショベル100を動作させる各種の装置を内部に備える。
【0014】
実施形態に係るアタッチメントATは、掘削用アタッチメントであり、上部旋回体2に対して俯仰動可能に取り付けられるブーム4と、ブーム4の先端に回動可能に取り付けられるアーム5と、アーム5の先端に回動可能に取り付けられるバケット6と、を含む。バケット6は、土砂等を収容可能な凹部6Cを有すると共に、アーム5の連結箇所と反対側の縁部に複数の爪部6Nを有するエンドアタッチメントである。なお、バケット6は、法面バケットであってもよい。
【0015】
ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。ブームシリンダ7、アームシリンダ8およびバケットシリンダ9は、アタッチメントアクチュエータを構成している。
【0016】
また、実施形態に係るショベル100は、アーム5とバケット6の間にチルトローテータ20を備える。チルトローテータ20は、アーム5が支持する中心部を基点としてバケット6を左右方向の角度(幅方向、ヨー方向:以下、チルト角度という)を変更可能とし、かつバケット6の基端の軸回りの角度(ロール方向:以下、ロール角度という)を変更可能としている。
【0017】
チルトローテータ20は、例えば、アーム5側に設けられるチルト機構21と、このチルト機構21とバケット6の間に設けられるローテータ機構22と、を有する。チルト機構21は、アーム5に固定される基部211と、基部211に連結されるチルト軸212と、チルト軸212に対し揺動可能に支持される支持盤213と、支持盤213のチルト角を変化させるチルトアクチュエータ214と、を含む。チルトアクチュエータ214は、例えば、チルト軸212を間に挟んだ一対のシリンダにより構成される。
【0018】
ローテータ機構22は、チルト機構21の支持盤213に固定されるローテータモータ221と、ローテータモータ221により回転する回転シャフト222と、回転シャフト222とバケット6の間を連結する連結部223と、を含む。回転シャフト222は、支持盤213の中心から短く突出して連結部223に連なっている。連結部223は、バケット6の基端中心部を固定しており、基端の中心軸回りにバケット6を回転させることで、バケット6のロール角度を調整する。
【0019】
ショベル100は、アームシリンダ8の伸縮動作に伴ってチルトローテータ20全体をピッチ方向に回動させることにより、チルトローテータ20全体およびバケット6のバケット角度(ピッチ角度)を一体的に変動させる。また、ショベル100は、チルトアクチュエータ214の動作に伴って基部211に対して支持盤213を左右方向に回転させることにより、バケット6のチルト角度を変動させる。例えば、バケット6の開口面6Coのチルト角度は、所望の角度範囲(一例として、右方向に45°~左方向に45°の範囲)で調整される。さらに、ショベル100は、ローテータモータ221の動作に伴って連結部223およびバケット6を軸回りに回転させる。これにより、バケット6の開口面6Coのロール角度は、360°の範囲で調整される。
【0020】
次に、図2を参照して、実施形態に係るショベル100の具体的な構成について説明する。図2は、実施形態に係るショベル100の構成の一例を概略的に示す図である。なお、図2において、機械的動力系は二重線で示し、作動油ラインは実線で示し、パイロットラインは破線で示し、電気制御系は点線で示す。
【0021】
ショベル100の駆動系は、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17とを含む。また、ショベル100の油圧駆動系は、下部走行体1、上部旋回体2、ブーム4、アーム5およびバケット6のそれぞれを油圧駆動する各油圧アクチュエータを含む。この油圧アクチュエータとしては、走行アクチュエータ1L、1R、旋回アクチュエータ3A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、チルトアクチュエータ214およびローテータモータ221等があげられる。
【0022】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、上部旋回体2の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、後述するコントローラ30の制御下に目標回転数で一定回転し、メインポンプ14およびパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
【0023】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(傾転角)を調節する。
【0024】
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様に、上部旋回体2の後部に搭載される。メインポンプ14は、エンジン11により駆動され、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出量(吐出圧)が制御される。
【0025】
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体2の中央部に搭載され、操作者による操作装置26に対する操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26の操作状態に応じて、油圧アクチュエータ(走行アクチュエータ1L、1R、旋回アクチュエータ3A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、チルトアクチュエータ214、ローテータモータ221)に選択的に供給する。
【0026】
具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する制御弁171~178を含む。例えば、制御弁171は、左側の走行アクチュエータ1Lに対応し、制御弁172は、右側の走行アクチュエータ1Rに対応し、制御弁173は、旋回アクチュエータ3Aに対応する。また、制御弁174は、バケットシリンダ9に対応し、制御弁175は、ブームシリンダ7に対応し、制御弁176は、アームシリンダ8に対応する。そして制御弁177は、チルトアクチュエータ214に対応し、制御弁178は、ローテータモータ221に対応する。
【0027】
ショベル100の操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26とを含む。また、ショベル100の操作系は、コントローラ30によるマシンコントロール機能に関する構成として、シャトル弁32を含む。
【0028】
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体2の後部に搭載され、パイロットラインを介して操作装置26にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、エンジン11により駆動される。
【0029】
操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、操作者が各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体2、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。操作装置26は、操作者の操作に基づき油圧アクチュエータ(走行アクチュエータ1L、1R、旋回アクチュエータ3A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、チルトアクチュエータ214、ローテータモータ221等)の操作を行う。
【0030】
操作装置26は、二次側のパイロットラインを通じて直接的に、あるいは二次側のパイロットラインに設けられるシャトル弁32を介して間接的に、コントロールバルブ17にそれぞれ接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体2、ブーム4、アーム5およびバケット6等の操作状態に応じたパイロット圧が入力される。
【0031】
そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、それぞれの油圧アクチュエータを駆動できる。操作装置26は、例えば、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、バケット6(バケットシリンダ9)、上部旋回体2(旋回アクチュエータ3A)のそれぞれを操作するレバー装置を含む。また、操作装置26は、例えば、下部走行体1の左右一対のクローラ1C(走行アクチュエータ1L、1R)のそれぞれを操作するレバー装置やペダル装置を含む。さらに、操作装置26は、例えば、チルトローテータ20(チルトアクチュエータ214、ローテータモータ221)のチルト角度、ロール角度をそれぞれ操作するボタンや回転ダイヤル等を含む。
【0032】
シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有し、2つの入口ポートに入力されたパイロット圧のうちの高い方のパイロット圧を有する作動油を出口ポートに出力させる。シャトル弁32は、2つの入口ポートのうちの一方が操作装置26に接続され、他方が比例弁31に接続される。シャトル弁32の出口ポートは、パイロットラインを通じて、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに接続されている。そのため、シャトル弁32は、操作装置26が生成するパイロット圧と比例弁31が生成するパイロット圧のうちの高い方を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
【0033】
つまり、コントローラ30は、操作装置26から出力される二次側のパイロット圧よりも高いパイロット圧を比例弁31から出力させることにより、操作者による操作装置26の操作に依らず、対応する制御弁を制御し、各種動作要素の動作を制御できる。
【0034】
なお、操作装置26(左操作レバー、右操作レバー、左走行レバー、および右走行レバー)は、パイロット圧を出力する油圧パイロット式ではなく、電気信号を出力する電気式であってもよい。この場合、操作装置26からの電気信号は、コントローラ30に入力され、コントローラ30は、入力される電気信号に応じて、コントロールバルブ17内の各制御弁171~178を制御することにより、操作装置26に対する操作内容に応じた、各種油圧アクチュエータの動作を実現する。
【0035】
例えば、コントロールバルブ17内の制御弁171~178は、コントローラ30からの指令により駆動する電磁ソレノイド式スプール弁であってよい。また、例えば、パイロットポンプ15と各制御弁171~178のパイロットポートとの間には、コントローラ30からの電気信号に応じて動作する電磁弁が配置されてもよい。
【0036】
この場合、電気式の操作装置26を用いた手動操作が行われると、コントローラ30は、その操作量(例えば、レバー操作量)に対応する電気信号によって、当該電磁弁を制御しパイロット圧を増減させることで、操作装置26に対する操作内容に合わせて、各制御弁171~178を動作させることができる。
【0037】
本実施形態に係るショベル100の制御系は、コントローラ30と、吐出圧センサ28と、操作圧センサ29と、比例弁31と、表示装置40と、入力装置42と、音声出力装置43と、記憶装置57と、ブーム角度センサS1と、アーム角度センサS2と、バケット角度センサS3と、機体傾斜センサS4と、旋回状態センサS5と、撮像装置S6と、ブーム圧センサS7と、アーム圧センサS8と、バケット圧センサS9と、チルト角センサ215と、ロール角センサ224と、測位装置PSと、通信装置T1とを含む。
【0038】
コントローラ30は、例えば、キャビン10内に設けられ、ショベル100の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、あるいはその組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、図示しない1以上のプロセッサ、メモリ、入出力インターフェースおよび通信インターフェースを有するコンピュータである。1以上のプロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものであり、メモリに記憶されたプログラムを実行処理する。メモリは、半導体メモリ等からなる主記憶装置、およびディスクや半導体メモリ(フラッシュメモリ)等からなる補助記憶装置を含む。
【0039】
例えば、コントローラ30は、操作者等の操作により予め設定される作業モード等に基づき、目標回転数を設定し、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。また、コントローラ30は、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また例えば、コントローラ30は、操作者による操作装置26を通じたショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能に関する制御を行う。あるいは、コントローラ30は、操作者による操作装置26を通じたショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能に関する制御を行う。
【0040】
このため、コントローラ30は、マシンガイダンス機能またはマシンコントロール機能に関する機能部としてマシンガイダンス部50を有する。また、コントローラ30は、土砂の重量を算出する土砂重量処理部60を有する。なお、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラにより実現されてもよい。すなわち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されうる。例えば、マシンガイダンス機能およびマシンコントロール機能は、専用のコントローラにより実現されてもよい。
【0041】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出し、その検出信号をコントローラ30に送信する。操作圧センサ29は、操作装置26の二次側のパイロット圧、言い換えれば、それぞれの動作要素に関する操作装置26の操作状態(例えば、操作方向や操作量等の操作内容)に応じたパイロット圧を検出し、その検出信号をコントローラ30に送信する。なお、操作圧センサ29の代わりに、それぞれの動作要素に関する操作装置26の操作状態を検出可能な他のセンサ(エンコーダやポテンショメータ等)が設けられてもよい。
【0042】
比例弁31は、パイロットポンプ15とシャトル弁32とを接続するパイロットラインに設けられ、その流路面積(作動油が通流可能な断面積)を変更できるように構成される。比例弁31は、コントローラ30から入力される制御指令に応じて動作する。これにより、コントローラ30は、操作装置26が操作されていない場合であっても、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31およびシャトル弁32を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。
【0043】
表示装置40は、キャビン10内の着座した操作者から視認し易い場所に設けられ、コントローラ30による制御下に各種の情報を表示する。入力装置42は、キャビン10内のシートに着座した操作者から手が届く範囲に設けられ、操作者による各種操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。入力装置42は、各種情報画像を表示する表示装置40のディスプレイに実装されるタッチパネル、レバー装置の先端に設けられるノブスイッチ、表示装置40の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル、回転ダイヤル等を含む。音声出力装置43は、例えば、キャビン10内に設けられるスピーカやブザー等であり、コントローラ30の制御下に音声を出力する。
【0044】
記憶装置57は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体であり、キャビン10内に設けられ、コントローラ30の制御下に各種情報を記憶する。記憶装置57は、通信装置T1等を介して取得される、あるいは入力装置42等を通じて設定される目標施工面に関するデータを記憶してもよい。当該目標施工面は、ショベル100の操作者により設定(保存)されてもよいし、施工管理者等により設定されてもよい。
【0045】
ブーム角度センサS1は、ブーム4の上部旋回体2に対する俯仰角度(以下、「ブーム角度」)、例えば、側面視において、上部旋回体2の旋回平面に対してブーム4の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出し、その情報をコントローラ30に送信する。ブーム角度センサS1は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含んでよい。また、ブーム角度センサS1は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、ブーム角度に対応する油圧シリンダ(ブームシリンダ7)のストローク量を検出するストロークセンサ等を含んでもよい。以下のアーム角度センサS2、バケット角度センサS3についても同様である。
【0046】
アーム角度センサS2は、アーム5のブーム4に対する回動角度(以下、「アーム角度」)、例えば、側面視において、ブーム4の両端の支点を結ぶ直線に対してアーム5の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出し、その情報をコントローラ30に送信する。
【0047】
バケット角度センサS3は、バケット6のアーム5に対する回動角度(以下、「バケット角度」)、例えば、側面視において、アーム5の両端の支点を結ぶ直線に対してバケット6の支点と先端とを結ぶ直線が成す角度を検出し、その情報をコントローラ30に送信する。
【0048】
機体傾斜センサS4は、水平面に対する機体(上部旋回体2、下部走行体1)の傾斜状態を検出し、その情報をコントローラ30に送信する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体2に取り付けられ、ショベル100(上部旋回体2)の前後方向および左右方向の2軸回りの傾斜角度を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU等を含んでよい。
【0049】
旋回状態センサS5は、上部旋回体2の旋回状態を検出し、その情報をコントローラ30に送信する。旋回状態としては、例えば、上部旋回体2の旋回速度および旋回角度があげられる。旋回状態センサS5は、例えば、ジャイロセンサ、レゾルバ、ロータリエンコーダ等を含んでよい。
【0050】
撮像装置S6は、ショベル100の周辺を撮像して、その情報をコントローラ30に送信する空間認識装置である。撮像装置S6は、ショベル100の前後左右の各々にカメラを含んでよく、アタッチメントに取り付けられたアタッチメントカメラを含んでもよい。撮像装置S6は、単眼の広角カメラ、ステレオカメラや距離画像カメラ等を適用し得る。空間認識装置は、ショベル100の周囲に存在する物体までの距離を算出してもよく、カメラの他に(あるいはカメラに代えて)超音波センサ、ミリ波レーダ、LiDAR、赤外線センサ等を適用してよい。コントローラ30は、撮像した画像を表示装置40に出力できる。
【0051】
ブーム圧センサS7は、ブームシリンダ7のブーム圧を検出し、その情報をコントローラ30に送信する。アーム圧センサS8は、アームシリンダ8のアーム圧を検出し、その情報をコントローラ30に送信する。バケット圧センサS9は、バケットシリンダ9のバケット圧を検出し、その情報をコントローラ30に送信する。ブーム圧センサS7、アーム圧センサS8およびバケット圧センサS9は、ロッド側の圧力とボトム側の圧力をそれぞれ検出する圧力計を有してもよい。
【0052】
チルト角センサ215は、アーム5に対するバケット6の左右方向の傾きであるチルト角度を検出し、その情報をコントローラ30に送信する。ロール角センサ224は、アーム5(チルトローテータ20の支持盤213)に対するバケット6のロール角度を検出し、その情報をコントローラ30に送信する。
【0053】
測位装置PSは、上部旋回体2の位置および向きを測定する。測位装置PSは、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)コンパスであり、上部旋回体2の位置および向きを検出し、上部旋回体2の位置および向きの情報をコントローラ30に送信する。
【0054】
通信装置T1は、基地局を末端とする移動体通信網、衛星通信網、インターネット網等を含む所定のネットワークを通じて、外部機器と通信を行う。外部機器としては、例えば、他のショベル100、ショベル100が作業を行う作業現場を管理する管理コンピュータ、作業者のスマートフォン、タブレット型の端末装置等があげられる。
【0055】
マシンガイダンス部50は、例えば、マシンガイダンス機能やマシンコントロール機能に関するショベル100の制御を実行する。例えば、マシンガイダンス部50は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5、撮像装置S6、測位装置PS、通信装置T1および入力装置42等から情報を取得する。そして、マシンガイダンス部50は、取得した情報に基づき、アタッチメントの先端部が目標軌道に一致するように、アタッチメントの動作を自動的に制御したり、表示装置40や音声出力装置43等を通じて操作者に伝えたりする。
【0056】
一方、土砂重量処理部60は、バケット6で掘削した土砂の重量(土砂重量)を算出する。例えば、土砂重量処理部60は、ブームシリンダ7の推力と、上部旋回体2とブーム4とを連結するピンから土砂の重心の位置までの距離と、上部旋回体2とブーム4とを連結するピン回りのモーメントの式と、に基づいて土砂の重量を算出する。
【0057】
また、土砂重量処理部60は、掘削直後(旋回動作を開始する直前)のバケット6内の土砂(積載物)の重心の位置を算出する。土砂の重心の位置は、上部旋回体2の旋回中心を基点とし土砂の重心までの半径r(図3参照)を算出するために用いられる。土砂の重心位置は、アタッチメントATの姿勢(ブーム4の長さ、アーム5の長さ、バケット6の長さ、ブーム角度、アーム角度、バケット角度)に基づいて算出することができる。ブーム4の長さ、アーム5の長さ、およびバケット6の長さは、予め設定された固定値であり、コントローラ30に記憶しておくことができる。一方、ブーム角度はブーム角度センサS1の検出情報、アーム角度はアーム角度センサS2の検出情報、バケット角度はバケット角度センサS3の検出情報から得ることができる。
【0058】
ここで、ショベル100は、掘削から排土を行う際に、バケット6に土砂が入った状態で上部旋回体2を旋回し、バケット6を排土位置まで移動させる。この際に既述したように、上部旋回体2の旋回が速いと、土砂が途中でこぼれ落ちてしまうことがある。以下、この旋回時におけるバケット6に作用する力について、図3を参照しながら説明する。図3は、ショベル100の旋回動作時にバケット6に作用する力を説明するための概略平面図である。
【0059】
バケット6からの土砂の落下は、旋回時に土砂に作用する力Fによって生じる。この力Fは、バケット6の土砂にかかる遠心力(遠心加速度)のベクトルと、旋回の接線方向の加速度のベクトルとを合成したものとに分解できる。ショベル100の旋回速度をωとした場合、バケット6の土砂にかかる遠心力は、ショベル100の旋回中心からバケット6の土砂の重心までの半径r、旋回速度ωおよび土砂の重量を用いて算出できる。ただし、バケット6の開口面6Coから出ている土砂は、自由状態となっているため、その重量については任意の値(例えば、1)としてよい。また、ショベル100の接線方向の加速度のベクトルは、バケット6の土砂の重心までの半径r、および旋回速度ωを微分した旋回加速度を用いて算出できる。なお、実施形態に係る「旋回加速度」との表現は、旋回の開始初期において旋回速度が増加する加速度を含むと共に、旋回の終了期間において旋回速度が減速する減速度を含む概念である。
【0060】
そのため、コントローラ30は、旋回速度および旋回加速度に基づきバケット6の開口面6Coの角度を算出する姿勢計算部70と、算出された開口面6Coの角度に基づきバケット6の姿勢を調整する姿勢コントロール部80と、を有する(図2参照)。
【0061】
姿勢計算部70は、上部旋回体2の旋回速度、旋回加速度、バケット6に収容された土砂の重心の位置およびバケット6の姿勢等の情報を取得して、土砂をこぼさないバケット6の開口面6Coの目標角度を算出する。上部旋回体2の旋回速度および旋回加速度は、バケット角度センサS3に適用した加速度センサ、6軸センサ、IMU等の検出情報を利用できる。なお、姿勢計算部70は、バケット角度センサS3から旋回加速度を取得した場合、旋回加速度を積分して旋回速度を得てもよい。
【0062】
また、旋回速度は、バケット角度センサS3の検出情報に代えて(あるいはバケット角度センサS3と併用して)、旋回状態センサS5が検出する旋回角速度、また測位装置PSが検出するショベル100の向きの情報により算出してもよい。この場合、旋回加速度については、取得した旋回速度を微分することにより算出できる。
【0063】
また、土砂の重心の位置は、上記した土砂重量処理部60において算出できる。さらに、バケット6の姿勢は、バケット角度センサS3、チルト角センサ215、ロール角センサ224等により認識できる。
【0064】
図4は、バケット6の開口面6Coの姿勢を算出する原理を示す説明図であり、(A)は、バケット6のバケット角度の姿勢を示し、(B)は、バケット6のロール角度の姿勢を示す。図4(A)に示すように、旋回機構3の旋回軸3sに対して半径rだけ離れた土砂の重心の位置において、土砂にかかる遠心力はrωで示される。
【0065】
実施形態において、バケット6の「バケット角度θ」とは、バケット6の旋回方向の回転により形成される旋回平面TF(図4では水平方向)に対し、バケット6の開口面6Coが上部旋回体2側を向く方向に傾く角度を言う。このバケット角度θは、主にバケット6の土砂にかかる遠心力を相殺する傾きとして算出すればよく、姿勢計算部70は、遠心力、重力加速度の合成ベクトルを求め、この合成ベクトルがバケット6の開口面6Coと垂直となるように、バケット角度θを算出する。具体的には、土砂にかかる重力をg、土砂にかかる遠心力をrωとした場合、旋回平面TFに対するバケット6の開口面6Coの傾斜角度(バケット角度θ)は、以下の式(1)で近似できる。
【0066】
θ≒tan-1(rω/g) ・・・(1)
【0067】
また図4(B)に示すように、実施形態において、バケット6の「ロール角度φ」とは、バケット6の旋回方向の回転により形成される旋回平面TF(図4では水平方向)に対し、バケット6の開口面6Coが旋回加速度のベクトルと同方向に傾く角度を言う。このバケット6のロール角度φは、主にバケット6の土砂にかかる接線方向の加速度を相殺するように算出すればよく、姿勢計算部70は、旋回加速度、重力加速度の合成ベクトルを求め、この合成ベクトルがバケット6の開口面6Coと垂直となるように、ロール角度φを算出する。具体的には、土砂にかかる重力をg、接線方向の加速度をr(dω/dt)とした場合、旋回平面TFに対するバケット6の開口面6Coの傾斜角度(ロール角度φ)は、以下の式(2)で近似できる。
【0068】
φ≒tan-1(r(dω/dt)/g) ・・・(2)
【0069】
姿勢コントロール部80は、以上の姿勢計算部70により算出したバケット6の開口面6Coの姿勢(バケット角度θ、ロール角度φ)に基づき、上部旋回体2の旋回時に、バケットシリンダ9、およびローテータモータ221の動作を制御する。姿勢コントロール部80は、旋回動作において上記した操作者による操作装置26の操作状態に依らずにコントロールバルブ17を制御することで、上部旋回体2の旋回動作に開口面6Coの角度を自動的に調整する。
【0070】
例えば、旋回動作の開始初期および終了期間において旋回機構3の旋回加速度(加速度、減速度)の絶対値は、旋回動作の中間期間の旋回加速度よりも大きくなる。コントローラ30は、この旋回加速度の絶対値が大きい程、旋回平面TFに対するロール角度φを大きくするように制御する。言い換えれば、開口面6Coは、加速度が増加する程、上方かつ旋回方向を臨む方向に傾くように制御される。これにより、バケット6の開口面6Coのロール角度φが適切に傾くようになり、旋回加速度に応じて土砂のこぼれを大幅に抑制できる。なお、旋回動作の減速において、コントローラ30は、旋回動作の加速する際の傾きと逆向きにバケット6の開口面6Coを傾けることになる。言い換えれば、開口面6Coは、減速度が大きくなる程(マイナスになる程)、上方かつ旋回方向と反対方向を臨む方向に傾くように制御される。これにより、減速においても土砂のこぼれを防止することができる。
【0071】
また例えば、コントローラ30は、上部旋回体2(バケット6)の旋回速度に基づき、バケット角度θを調整する。言い換えれば、開口面6Coは、旋回速度が速くなる程、上方且つ内側(上部旋回体2側)を臨む方向に傾くように制御される。そして、旋回動作の中間期間の旋回速度は、旋回動作の開始初期および終了期間の旋回速度よりも大きくなる。そのため、コントローラ30は、旋回動作の開始初期および旋回動作の終了期間のバケット角度θよりも、旋回動作の中間期間のバケット角度θを大きくするように制御する。これにより、バケット6の開口面6Coのバケット角度θが適切に傾くようになり、旋回速度に応じて土砂のこぼれを大幅に抑制できる。
【0072】
なお、バケット6のバケット角度θおよびロール角度φは、バケット6の外部環境や土砂の状態に応じて適宜調整してよい。例えば、外乱として旋回動作における風の影響を考慮して、旋回動作の中間期間等において旋回加速度がゼロの場合でも、開口面6Coのロール角度φを若干傾けてもよい。また、ショベル100は、旋回動作でアタッチメントATの動作を行った場合も、上記の式(1)(2)の半径rを入れ直すことで、バケット角度θおよびロール角度φを適切な角度に調整し直すことができる。
【0073】
図5は、旋回時におけるバケット6の姿勢を自動的に調整する際の信号の流れを示すブロック図である。図5に示すように、上部旋回体2の旋回時に、バケット6の姿勢の調整に必要な情報(例えば、バケット角度センサS3が検出するバケット6の旋回加速度の情報)が適宜のセンサからコントローラ30に送信される。なお上記したように、バケット6の姿勢の調整に必要な情報は、旋回状態センサS5や測位装置PS等の検出情報であってもよい。
【0074】
コントローラ30の姿勢計算部70は、受信した情報に基づき、上記した式(1)および(2)を用いてバケット6の開口面6Coの姿勢を算出する。そして、姿勢計算部70は、算出したバケット6のバケット角度θを調整する制御指令、およびバケット6のロール角度φを調整する制御指令を姿勢コントロール部80に出力する。
【0075】
姿勢コントロール部80は、姿勢計算部70から受信した制御指令に基づき、コントロールバルブ17に対する指令を出力することで、上部旋回体2の旋回時に、バケットシリンダ9およびチルトローテータ20を動作させる。この際、姿勢コントロール部80は、比例弁31(図2参照)を制御して、操作装置26が生成するパイロット圧よりも高い圧力をシャトル弁32に出力することで、バケットシリンダ9およびチルトローテータ20を自動的に制御することができる。
【0076】
実施形態に係るショベル100は、基本的には以上のように構成され、以下その動作について、図6を参照しながら説明する。図6(A)は、実施形態に係る旋回動作におけるバケット6の姿勢調整方法を示すフローチャートである。図6(B)は、変形例に係る旋回動作におけるバケット6の姿勢調整方法を示すフローチャートである。
【0077】
ショベル100は、操作者の操作に基づき、バケット6により土砂を掘削した後に、排土位置(ダンプの荷台の上方等)に向かって上部旋回体2を旋回させる。この際、ショベル100のコントローラ30は、バケット6の開口面6Coの姿勢を調整して土砂をこぼさないように制御する。
【0078】
コントローラ30は、操作者の操作下にバケット6で土砂の掘削を行った後、操作者による上部旋回体2の旋回の操作を受信することで、図6(A)に示すように、まず旋回機構3の旋回動作を開始する(ステップS101)。
【0079】
この際、コントローラ30は、バケット6の開口面6Coの姿勢を調整するための情報として、ショベル100の各種のセンサ群から検出情報を取得する(ステップS120)。具体的には、バケット角度センサS3から旋回加速度の情報、および現在のバケット角度θの情報を取得すると共に、ロール角センサ224から現在のロール角度の情報を取得する。また、コントローラ30は、土砂の重心の位置を算出するため、ブーム角度センサS1からブーム角度を取得すると共に、アーム角度センサS2からアーム角度の情報を受信する。あるいは、バケット6の姿勢を算出するために、旋回状態センサS5の情報または測位装置PSの情報を使用する場合には、これらのセンサから情報を取得する。
【0080】
次に、コントローラ30の姿勢計算部70は、取得したセンサ群からの情報に基づき、旋回時のおけるバケット6の姿勢であるバケット角度θおよびロール角度φを算出する(ステップS103)。このバケット角度θは、上記した式(1)を用いて算出できる。またロール角度φも、上記した式(2)を用いて算出できる。
【0081】
その後、コントローラ30の姿勢コントロール部80は、姿勢計算部70が算出したバケット角度θおよびロール角度φに基づき、バケットシリンダ9およびチルトローテータ20の動作を制御してバケット6を傾斜させる(ステップS104)。これにより、バケット6の開口面6Coは、上部旋回体2の旋回動作の遠心力(旋回速度)に対応した角度に傾くと共に、上部旋回体2の旋回加速度に対応した角度に傾くようになる。その結果、ショベル100は、バケット6の凹部6Cに収容された土砂がこぼれることを抑制できる。
【0082】
また、コントローラ30は、旋回機構3の旋回動作を実行している際に、操作者による旋回の操作の状況を監視し、旋回動作が停止したか否かを判定している(ステップS105)。そして、コントローラ30は、旋回動作を継続している場合(ステップS105:NO)に、ステップS102に戻り、以下同様の処理フローを繰り返す。
【0083】
一方、コントローラ30は、操作者の操作による旋回動作の停止を判定すると(ステップS105:YES)、コントローラ30によるバケット6の開口面6Coの姿勢調整方法を終了する。なお、旋回動作の終了時において、コントローラ30は、旋回速度がゼロとなることに基づく、バケット6のバケット角度θやロール角度φを旋回平面TFに合わせる動作を行う。ただし、バケット6が排土位置にある場合には、バケット6から排土動作を直ちに行うために、バケット角度θやロール角度φを傾斜させたままとしてもよく、またはバケット6の傾斜が深くなる方向に姿勢を誘導してもよい。
【0084】
なお、本開示のショベル100は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、実施形態に係るショベル100では、バケット6の左右方向のチルト角度を調整可能かつロール方向のロール角度を調整可能なチルトローテータ20を適用した。しかしながら、ショベル100は、バケット6のロール角度のみを調整可能なローテータ機構22(ローテータ部)のみを有する構成でもよい。また、土砂のこぼれの発生は、土砂の粘度等の影響を受けるため、土砂がこぼれにくい場合もある。そのため、ショベル100は、旋回動作の旋回加速度や旋回速度に対してバケット6の姿勢を小さく調整してもよい。また例えば、ショベル100は、旋回動作においてバケット6のロール角度φのみを調整して、バケット角度θの調整を行わない制御を行ってもよい。
【0085】
また、ショベル100は、旋回動作において、図6(B)に示す変形例に係るバケット6の姿勢調整方法を実行してもよい。具体的には、ショベル100のコントローラ30は、操作者による上部旋回体2の旋回の操作を受信することで、旋回機構3の旋回動作を開始する(ステップS201)。
【0086】
そして、コントローラ30は、この旋回動作において、コントローラ30内に記憶されたバケット角度θおよびロール角度φを読み出し、このバケット角度θおよびロール角度φに基づき、バケット6の開口面6Coの姿勢を傾斜させる(ステップS202)。コントローラ30に記憶されるバケット角度θおよびロール角度φは、例えば、実験やシミュレーションによりバケット6から土砂がこぼれ難くなる角度を求めておけばよい。あるいは、コントローラ30は、複数の旋回速度や複数の旋回加速度に対応する複数のバケット角度θおよびロール角度φのマップ情報を記憶し、旋回動作にて取得した旋回速度や旋回加速度に基づき、バケット角度θやロール角度φの設定値を変更してもよい。さらに、コントローラ30は、旋回動作の時間経過に基づき、複数のバケット角度θおよび複数のロール角度φの設定値を変更してもよい。
【0087】
コントローラ30は、旋回機構3の旋回動作を実行している際に、操作者による旋回の操作の状況を監視し、旋回動作が停止したか否かを判定している(ステップS203)。そして、コントローラ30は、旋回動作が停止した場合(ステップS203:YE)に、ステップS204に進む。
【0088】
ステップS204において、コントローラ30は、傾斜していたバケット6の開口面6Coが旋回平面TFとなるように、バケット角度θおよびロール角度φを復帰させる。これにより、ショベル100は、バケット6の土砂をこぼすことなく旋回することができる。
【0089】
このように、変形例に係るバケット6の姿勢調整方法でも、旋回動作においてバケット6のバケット角度θおよびロール角度φを変化させることができるため、土砂のこぼれを大幅に抑制できる。特に変形例では、センサの検出結果を使用しないことで、処理の効率化を促すことができ、バケット6の姿勢を迅速に調整することが可能となる。
【0090】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0091】
本開示の第1の態様は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に設けられる上部旋回体2と、上部旋回体2に設けられ、バケット6を保持するアタッチメントATと、を備え、アタッチメントATは、バケット6の基端の軸回りであるロール方向にバケット6を回転させて、バケット6の開口面6Coのロール角度φを調整するローテータ部(ローテータ機構22)を有し、上部旋回体2の旋回動作においてローテータ部を動作させ、旋回方向により形成される旋回平面に対してバケット6の開口面6Coをロール方向に傾ける。
【0092】
上記によれば、ローテータ部(ローテータ機構22)を備えるショベル100は、バケット6の開口面6Coをロール方向に傾けることで、土砂のこぼれを大幅に抑制できる。すなわち、旋回動作では、旋回加速度に起因する力が土砂(積載物)にかかるが、この力に対応するようにバケット6を傾けることで、土砂のこぼれを抑制できる。これにより、ショベル100は、排土位置等に土砂を安定して搬送することが可能となり、例えば、排土する土砂の累積重量等を精度よく算出することが可能となる。
【0093】
また、ローテータ部(ローテータ機構22)の動作を制御するコントローラ30を備え、コントローラ30は、上部旋回体2の旋回方向にかかる旋回加速度に基づき、ロール角度を調整する。これにより、ショベル100は、旋回加速度に基づきバケット6の開口面6Coの傾きを調整でき、旋回動作における土砂のこぼれを一層抑制することができる。
【0094】
また、コントローラ30は、旋回加速度の絶対値が大きい程、旋回平面に対するロール角度を大きくする。これにより、ショベル100は、バケット6にかかる旋回加速度が大きくてもバケット6の開口面6Coのロール角度φを調整することで、土砂のこぼれを大幅に抑制することが可能となる。
【0095】
また、ローテータ部(ローテータ機構22)の動作を制御するコントローラ30を備え、コントローラ30は、上部旋回体2の旋回動作において、予め設定されたロール角度に基づき、バケット6の開口面6Coをロール方向に傾ける。この場合でも、ショベル100は、バケット6を適切に傾けることができ、土砂のこぼれを抑制できる。
【0096】
また、アタッチメントATは、旋回動作の中間期間のロール角度φよりも旋回動作の開始初期および旋回動作の終了期間のロール角度φを大きくする。これにより、ショベル100は、旋回動作の開始初期や終了期間に大きくなる旋回加速度に応じてバケット6のロール角度φを傾けることができ、開始初期や終了期間の土砂のこぼれをより良好に抑制できる。
【0097】
また、アタッチメントATは、上部旋回体2の旋回動作において、バケット6のバケット角度を調整するバケットシリンダ9を動作させ、旋回平面に対してバケット6の開口面6Coが上部旋回体2を向く方向に傾ける。これにより、ショベル100は、旋回動作においてバケット角度も調整でき、土砂のこぼれをより一層抑制することが可能となる。
【0098】
また、アタッチメントATは、旋回動作の開始初期および旋回動作の終了期間のバケット角度θよりも、旋回動作の中間期間のバケット角度θを大きくする。これにより、ショベル100は、旋回動作の中間期間に大きくなる旋回速度に応じてバケット6のバケット角度θを傾けることができ、中間期間の土砂のこぼれをより良好に低減できる。
【0099】
また、バケットシリンダ9の動作を制御するコントローラ30を備え、コントローラ30は、上部旋回体2の旋回速度に基づき、バケット角度θを調整する。これにより、ショベル100は、旋回動作において土砂にかかる遠心力に対応したバケット角度θとすることができ、土砂のこぼれをさらに確実に抑制できる。
【0100】
今回開示された実施形態に係るショベル100は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 下部走行体
2 上部旋回体
6 バケット
6Co 開口面
9 バケットシリンダ
20 チルトローテータ
22 ローテータ機構
30 コントローラ
100 ショベル
AT アタッチメント
θ バケット角度
φ ロール角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6