(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007637
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】コンクリート構造体の補修用型装置
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
E04G23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109172
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】507175821
【氏名又は名称】株式会社 栄組
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 栄洋
(72)【発明者】
【氏名】仁田 交市
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB01
(57)【要約】
【課題】 型体の設置や取外しを容易に行うことができるようにして作業効率の向上を図る。
【解決手段】 コンクリート構造体Cの表面2,3に形成された欠損部Wに充填材Fを注入するために用いられるもので、欠損部Wのある表面に接合させられて欠損部Wを覆う覆い板10A,10Bを備えるとともに覆い板10Aに設けられ欠損部Wに充填材Fを注入するための注入口20を備えた型体Kと、型体Kの覆い板10Aを表面2に押圧する押圧機40とを備え、押圧機40を、空気の吸引により表面2に吸着させられ吸引解除により表面2から離脱可能な吸着盤42と、吸着盤42に設けられ吸着盤42の吸着時に覆い板10Aの上面に当接して覆い板10Aを表面2に押圧する押圧部材50とを備えて構成した。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造体の表面に形成された欠損部に充填材を注入するために用いられるコンクリート構造体の補修用型装置であって、
上記欠損部のある表面に接合させられて該欠損部を覆う覆い板を備えるとともに該覆い板に設けられ上記欠損部に充填材を注入するための注入口を備えた型体と、該型体の覆い板を上記表面に押圧する押圧機とを備え、
上記押圧機を、空気の吸引により上記表面に吸着させられ吸引解除により該表面から離脱可能な吸着盤と、該吸着盤に設けられ該吸着盤の吸着時に上記覆い板の上面に当接して該覆い板を上記表面に押圧する押圧部材とを備えて構成したことを特徴とするコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項2】
上記覆い板を、透明な樹脂で形成したことを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項3】
上記覆い板に、上記押圧機を着脱自在且つ上下方向に移動自在に保持するとともに装着時に該覆い板に対して該押圧機の上記表面の面方向への移動を規制する保持部を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項4】
上記保持部を複数設け、上記押圧機を上記保持部の数に対応させて複数備えたことを特徴とする請求項3記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項5】
上記吸着盤を、上記表面に対向する板状の本体と、該本体の下面に設けられ上記表面に弾接する樹脂製の環状パッキンと、上記本体に貫通して設けられ上記本体,環状パッキン及び上記表面で形成される空間から空気を吸引する吸引通路が形成された吸引管とを備えて構成し、
上記押圧部材を、上記本体の上面に固定される固定部と、該固定部から一体に延び上記覆い板の上面に当接する当接部とを備えて構成し、
上記保持部を、上記吸着盤の本体が嵌合する貫通孔を有して構成し、該貫通孔を構成する壁面で上記本体を押えることを特徴とする請求項3記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項6】
上記コンクリート構造体は、表面として主表面及び該主表面に直交する別表面を備え、上記欠損部が上記主表面及び別表面で構成されるコーナ部に形成された場合に対応し、
上記型体の覆い板として、一側端縁が上記主表面のコーナ部に沿って該主表面に接合させられて該主表面に露出する欠損部を覆う主覆い板と、該主覆い板の一側端縁側に連設され上記別表面に接合させられて該別表面に露出する欠損部を覆う別覆い板とを備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項7】
上記コンクリート構造体は、上記主表面と別表面とで構成されるコーナ部に面取り面を備え、
上記主覆い板と別覆い板とで構成されるコーナ部に、上記面取り面に接合する断面三角形状の面木材を付設したことを特徴とする請求項6記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項8】
上記コンクリート構造体は、上記別表面として、上記主表面に直交する一方別表面と、上記主表面及び上記一方別表面に夫々直交する他方別表面を備え、
上記型体の別覆い板として、上記主覆い板に連設されるとともに上記一方別表面に接合させられて該一方別表面に露出する欠損部を覆う一方別覆い板と、上記主覆い板及び一方別覆い板に連設されるとともに上記他方別表面に接合させられて該他方別表面に露出する欠損部を覆う他方別覆い板とを備えて構成したことを特徴とする請求項6記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項9】
上記注入口を、上記主覆い板の長手方向に沿って所要間隔で複数設け、各注入口にこれを開閉する蓋を設けたことを特徴とする請求項6記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項10】
上記主覆い板に、上記押圧機が着脱自在に保持されるとともに装着時に該覆い板に対して上下方向に移動自在にして該押圧機の上記表面の面方向への移動を規制する保持部を設けたことを特徴とする請求項6記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項11】
上記保持部を複数設け、上記押圧機を上記保持部の数に対応させて複数備えたことを特徴とする請求項10記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項12】
上記型体を、複数備えるとともに、各型体を上記コーナ部に沿って連結可能にしたことを特徴とする請求項6記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【請求項13】
隣接する型体同士を連結する連結機構を設け、該連結機構を、隣接する型体の何れか一方の別覆い板の外側に設けられる凸状に形成された係合部と、隣接する型体の何れか他方の別覆い板の外側に設けられ上記係合部に係合し上開放の凹状に形成された被係合部とで構成したことを特徴とする請求項12記載のコンクリート構造体の補修用型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製やモルタル製等のコンクリート構造体に生じた欠損部に充填材を充填して補修する際に、欠損部を覆うコンクリート構造体の補修用型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート構造体に剥離や剥落が生じるとその修復を行うことがあるが、その場合は、例えば、要修復部分をウォータージェットではつり取った後、その欠損部分を型体で覆い、この型体に設けた注入口からモルタル等の充填材を注入して行う。従来、この型体は、例えば、特許第4910200号公報(特許文献1)に示されるように、その欠損部分の周囲の表面に打ち込み式の固定具を用いて固定したり、木枠を組むなどして設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の型体にあっては、その欠損部分の周囲の表面に打ち込み式の固定具を用いて固定したり、木枠を組むなどして設置しているので、その設置作業が煩雑になっており、作業効率が極めて悪いという問題があった。また、型体を取外す際にも、打ち込み式の固定具を外したり、木枠を外す作業は煩雑であり、この点でも作業効率が悪いという問題があった。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、型体の設置や取外しを容易に行うことができるようにして作業効率の向上を図ったコンクリート構造体の補修用型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための本発明のコンクリート構造体の補修用型装置は、コンクリート構造体の表面に形成された欠損部に充填材を注入するために用いられるコンクリート構造体の補修用型装置であって、
上記欠損部のある表面に接合させられて該欠損部を覆う覆い板を備えるとともに該覆い板に設けられ上記欠損部に充填材を注入するための注入口を備えた型体と、該型体の覆い板を上記表面に押圧する押圧機とを備え、
上記押圧機を、空気の吸引により上記表面に吸着させられ吸引解除により該表面から離脱可能な吸着盤と、該吸着盤に設けられ該吸着盤の吸着時に上記覆い板の上面に当接して該覆い板を上記表面に押圧する押圧部材とを備えて構成している。
【0006】
これにより、コンクリート構造体に剥離や剥落が生じ、その修復を行うときは、例えば、要修復部分をウォータージェットではつり取った後、欠損部のある表面に型体の覆い板を接合させて欠損部を覆う。尚、はつり取が特に必要がない場合には、剥離部や剥落部をそのまま欠損部として、これを覆うようにして良い。それから、押圧機の押圧部材が覆い板に対面するようにその吸着盤を表面に添接し、空気の吸引により吸着盤を表面に吸着させて取付ける。これにより、押圧部材が覆い板の上面に当接して覆い板を表面に押圧するので、覆い板が表面に圧接させられる。この場合、吸着盤を空気の吸引により表面に取付けるだけで、型体を設置できるので、従来に比較して設置作業が容易になり、作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。この場合、押圧機を複数用いて良い。複数の押圧機で覆い板を押えるので、型体の設置が強固になる。
【0007】
その後、この状態で、注入口から充填材を欠損部に注入し、所要時間養生する。この場合、型体は、押圧機で押さえられているので、それだけ確実に充填材の充填及び養生を確実に行うことができる。そして、適時に、型体を表面から取外して離型する。この際には、吸着盤の空気の吸引を解除し、吸着盤を表面から離脱可能にする。これにより、押圧部材による覆い板の押圧も解除されるので、型体を表面から取外すことができる。この場合も、吸着盤の空気の吸引を解除するだけで、型体を取外すことができるので、取外し作業が容易になり、この点でも作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。
【0008】
そして、必要に応じ、上記覆い板を、透明な樹脂で形成した構成としている。これにより、充填材の充填状態を目視することができ、充填材の適正な量を供給して充填できる。また、樹脂製なので、離型するときに固化した充填材から剥離し易くなる。そのため、これらの点でも作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。
【0009】
また、必要に応じ、上記覆い板に、上記押圧機を着脱自在且つ上下方向に移動自在に保持するとともに装着時に該覆い板に対して該押圧機の上記表面の面方向への移動を規制する保持部を設けた構成としている。これにより、押圧機の吸着盤を表面に取付けるときは、押圧機を保持部に保持して添接し、空気の吸引により吸着盤を表面に吸着させる。この場合、押圧機は上下方向に移動自在に保持されるので、吸着盤の吸着による表面に対する上下方向の移動が制限されることがなく、確実に表面に吸着して押圧部材による覆い板の押圧を行うことができる。また、その後、この状態で、注入口から充填材を欠損部に注入する際に、また、充填材を養生する際にも、覆い板に表面方向の何らかの力が作用して、覆い板が動かされようとしても、保持部により押圧機の表面の面方向への移動が規制されるので、動くことを防止することができ、それだけ充填材の充填を確実に行うことができる。
【0010】
また、上記保持部を複数設け、上記押圧機を上記保持部の数に対応させて複数備えた構成としている。複数の押圧機で覆い板を押えるので、型体の設置がより一層強固になる。
【0011】
更に、必要に応じ、上記吸着盤を、上記表面に対向する板状の本体と、該本体の下面に設けられ上記表面に弾接する樹脂製の環状パッキンと、上記本体に貫通して設けられ上記本体,環状パッキン及び上記表面で形成される空間から空気を吸引する吸引通路が形成された吸引管とを備えて構成し、
上記押圧部材を、上記本体の上面に固定される固定部と、該固定部から一体に延び上記覆い板の上面に当接する当接部とを備えて構成し、
上記保持部を、上記吸着盤の本体が嵌合する貫通孔を有して構成し、該貫通孔を構成する壁面で上記本体を押える構成としている。保持部の構造を簡単にすることができ、また、保持部の貫通孔を覆い板に形成することができるので、覆い板に容易に設けることができる。この場合、押圧部材を、貫通孔の周囲の複数個所を押えるように当接部の数を増せば、押さえをより一層確実にすることができる。
【0012】
そしてまた、必要に応じ、上記コンクリート構造体は、表面として主表面及び該主表面に直交する別表面を備え、上記欠損部が上記主表面及び別表面で構成されるコーナ部に形成された場合に対応し、
上記型体の覆い板として、一側端縁が上記主表面のコーナ部に沿って該主表面に接合させられて該主表面に露出する欠損部を覆う主覆い板と、該主覆い板の一側端縁側に連設され上記別表面に接合させられて該別表面に露出する欠損部を覆う別覆い板とを備えて構成
している。この場合、押圧機を適宜数用いて、主覆い板を押えるようにしても良く、また、別覆い板を押えるようにしても良く、あるいはまた、主覆い板及び別覆い板の両方を押えるようにしても良く、適宜変更して差支えない。
【0013】
これにより、欠損部が主表面及び別表面で構成されるコーナ部に形成された場合に、このコーナ部の欠損部に充填材を注入して補修することができる。コーナ部の欠損部への型体の設置は、従来技術では煩雑を極めるが、この構成によれば、吸着盤を空気の吸引により表面に取付けるだけで、型体を設置できるので、設置作業が容易になり、作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。型体の離型時においても、吸着盤の空気の吸引を解除し、吸着盤を表面から離脱可能にするだけで、型体を表面から取外すことができるので、型体の取外し作業も容易であり、この点でも作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。
【0014】
この構成において、上記コンクリート構造体が、コンクリート製ベース上に設置され上表面を主表面とするとともに側表面を別表面とする矩形板状のコンクリート製のスラブからなる場合に対応することができる。この場合、必要に応じ、上記別覆い板の下端縁に、上記ベースに設置される支持板を設けることができる。別覆い板がベースに設置される支持板に支持されるので、別覆い板の設置が強固になり、より一層確実に充填材の充填と養生を行うことができるようになる。
【0015】
また、必要に応じ、上記コンクリート構造体は、上記主表面と別表面とで構成されるコーナ部に面取り面を備え、
上記主覆い板と別覆い板とで構成されるコーナ部に、上記面取り面に接合する断面三角形状の面木材を付設した構成としている。面取り面を成形できるので、後加工での面取り形成が不要になるとともに、補修品位を向上させることができる。
【0016】
更に、上記コンクリート構造体は、上記別表面として、上記主表面に直交する一方別表面と、上記主表面及び上記一方別表面に夫々直交する他方別表面を備え、
上記型体の別覆い板として、上記主覆い板に連設されるとともに上記一方別表面に接合させられて該一方別表面に露出する欠損部を覆う一方別覆い板と、上記主覆い板及び一方別覆い板に連設されるとともに上記他方別表面に接合させられて該他方別表面に露出する欠損部を覆う他方別覆い板とを備えて構成したことが有効である。
【0017】
これにより、欠損部が、コーナ部でも主表面,一方別表面及び他方別表面が互いに直交する角部に形成された場合に、このコーナ部としての角部の欠損部に充填材を注入して補修することができる。このように、コーナ部でも欠損部が角部にある場合には、この部位への型体の設置は、従来技術では煩雑を極めるが、この構成によれば、吸着盤を空気の吸引により表面に取付けるだけで、型体を設置できるので、設置作業が容易になり、作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。型体の離型時においても、吸着盤の空気の吸引を解除し、吸着盤を表面から離脱可能にするだけで、型体を表面から取外すことができるので、型体の取外し作業も容易であり、この点でも作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。
【0018】
更にまた、必要に応じ、上記注入口を、上記主覆い板の長手方向に沿って所要間隔で複数設け、各注入口にこれを開閉する蓋を設けた構成としている。これによれば、例えば、型体の設置時には、蓋を外して行う。その後、この状態で、何れかの注入口から充填材を注入する。これにより、他の注入口が開放しているので、空気が抜けて隣接する注入口側に充填材が流れて移動していく。そのため、満遍なく欠損部に充填材を行き届かせることができる。充填材を注入した注入口が充填材で満たされたならば、溢れ出ないように蓋をする。そして、別の注入口から充填材を注入していく。この場合、注入口が3以上ある場合に、必ずしも隣接する注入口から順番に充填材を注入しなくても、1つあるいは2つ等離れた注入口に移行して充填材を注入して良い。この場合も、充填材で満たされた注入口には溢れ出ないように蓋をする。
【0019】
また、この主覆い板と別覆い板とを備えた型体において、上記主覆い板に、上記押圧機が着脱自在に保持されるとともに装着時に該覆い板に対して上下方向に移動自在にして該押圧機の上記表面の面方向への移動を規制する保持部を設けたことが有効である。主覆い板と別覆い板の内、一方の主覆い板にのみ保持部を設けたので、構造が簡単になる。また、注入口から充填材を欠損部に注入する際や、充填材を養生する際には、保持部により主覆い板の押圧機の表面の面方向への移動が規制されるが、別覆い板は主覆い板に連設されているので、この別覆い板の面方向への移動も規制されることから、遜色なく、型体が動くことを防止することができ、それだけ充填材の充填を確実に行うことができる。
【0020】
そして、この構成においても、上記保持部を複数設け、上記押圧機を上記保持部の数に対応させて複数備えたことが有効である。複数の押圧機で覆い板を押えるので、型体の設置がより一層強固になる。
【0021】
また、必要に応じ、上記型体を、複数備えるとともに、各型体を上記コーナ部に沿って連結可能にした構成としている。複数の型体を連結して用いることにより、比較的大きなコンクリート構造体に対して、対応できる。特に、欠損部が連続して長いような場合には、有用になる。
【0022】
この場合、隣接する型体同士を連結する連結機構を設け、該連結機構を、隣接する型体の何れか一方の別覆い板の外側に設けられる凸状に形成された係合部と、隣接する型体の何れか他方の別覆い板の外側に設けられ上記係合部に係合し上開放の凹状に形成された被係合部とで構成したことが有効である。連結機構により隣接する型体同士の連結を強固にすることができるので、充填材を漏れなく確実に欠損部に充填することができるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、吸着盤を空気の吸引により表面に取付けるだけで、型体を設置できるので、従来に比較して設置作業が容易になり、作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。また、型体を表面から取外して離型する際にも、吸着盤の空気の吸引を解除し、吸着盤を表面から離脱可能にするだけで、型体を表面から取外すことができるので、型体の取外し作業が容易になり、この点でも作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置をコンクリート構造体としてのスラブとともに示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置をコンクリート構造体としてのスラブに設置した状態で示す平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置において、押圧機及びその保持部の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置において、連結機構を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置において、連結機構を示す正面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置において、注入口の蓋をその取付け手段とともに示す部分切欠き斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置において、注入口に取付けられる充填材のノズル取付板をその取付け手段とともに示す部分切欠き斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置を用いてコンクリート構造体の欠損部に充填材を充填するときの状態を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置を用いてコンクリート構造体の欠損部に充填材を充填した後、充填材を養生するときの状態を示す断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置の変形例を示す
図9相当図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置の別の変形例を示す
図9相当図である。
【
図13】本発明の別の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置を示す
図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置について詳細に説明する。
図1及び
図2に示すように、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造体の補修用型装置Sは、コンクリート構造体Cの表面に形成された欠損部Wに充填材Fを注入するために用いられるものである。充填材Fとしては、例えば、セメント、モルタル、コンクリート等のセメント系材料、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂材料等周知の材料が用いられる。
【0026】
コンクリート構造体Cとしては、種々のものを挙げることができるが、実施の形態では、
図1及び
図2に示すように、例えば、新幹線などの高速軌道車両が走行するスラブ式軌道を構成するスラブに適用される。スラブからなるコンクリート構造体Cは、矩形板状に形成され、コンクリート製の路盤としてのベース1上に設置され、表面として、上表面を構成する主表面2、この主表面2に直交する側表面を構成する別表面3とを備えている。また、スラブからなるコンクリート構造体Cは、別表面3として、主表面2に直交し互いに平行な一対の一方別表面3(a)と、主表面2及び一方別表面3(a)に夫々直交する互いに平行な一対の他方別表面3(b)を備えている。他方別表面3(b)を形成する側表面の中央には、ベース1から突設される突起4に緩衝材を介して接合される凹所5が形成されている。スラブの大きさは、例えば、長手方向の長さが4900mm、短手方向の長さが2220mm、高さが190mmに設定されている。
【0027】
実施の形態に係る補修用型装置Sは、
図1乃至
図10に示すように、欠損部Wが主表面2及び別表面3で構成されるコーナ部に形成された場合に対応して構成され、欠損部Wのある表面に接合させられてこの欠損部Wを覆う覆い板10を備えるとともに、覆い板10に設けられ欠損部Wに充填材Fを注入するための注入口20を備えた型体Kと、型体Kの覆い板10を上記表面に押圧する押圧機40とを備えて構成されている。覆い板10は、例えばアクリルからなる透明な樹脂で形成されている。
【0028】
実施の形態に係る補修用型装置Sは、複数の型体Kを備えるとともに、各型体Kをコーナ部に沿って連結可能にしている。型体Kとしては、第1型体K1、第2型体K2、第3型体K3とを備えている。以下、各型体Kについて説明する。
【0029】
(第1型体K1)
第1型体K1は、主表面2及び一方別表面3(a)で構成されるコーナ部に形成された欠損部Wに対応しうるように構成されている。詳しくは、第1型体K1は、覆い板10として、一側端縁が主表面2のコーナ部に沿って主表面2に接合させられてこの主表面2に露出する欠損部Wを覆う矩形板状の主覆い板10Aと、主覆い板10Aの一側端縁側に連設され別表面3に接合させられてこの別表面3に露出する欠損部Wを覆う矩形板状の別覆い板10Bとを備えて構成されている。別覆い板10Bは主覆い板10Aにビスで固定されている。
【0030】
注入口20は、主覆い板10Aの長手方向に沿って所要間隔で複数(実施の形態では9個)設けられている。各注入口20にはこれを開閉する蓋21が設けられている。注入口20の大きさは、例えば、直径が30~50mm程度である。
【0031】
詳しくは、
図7に示すように、蓋21は、金属製であり、主覆い板10Aの上面に接合させられる矩形状の接合板22と、接合板22の下面に突設され注入口20に嵌合するボス23とから構成されている。ボス23の突出寸法は、主覆い板10Aの厚さと同じであり、注入された充填材Fに接触して充填材Fの面をスラブの主表面2と面一にする。また、蓋21は、軸部24aと頭部24bを有した一対のボルト24により主覆い板10Aに着脱可能になっている。主覆い板10Aにおいて、注入口20を挟んだ対称位置であって注入口20の中心軸Pを中心とした所定半径の円周上にはボルト24の軸部24aが螺合する雌ネジ部25が形成されており、ボルト24は、その頭部24bの裏面と主覆い板10Aの上面との間隔が接合板22の厚さに対応するように、雌ネジ部25に予め螺合させられて立設されている。接合板22には、ボス23の中心軸Qを挟んだ対称位置であってその中心軸Qを中心とした所定半径の円周上には、ボルト24の軸部24aが挿通される第1挿通孔26と、第1挿通孔26に対して一方周方向側の僅かにずれた位置であってボルト24の頭部24bが挿通される第2挿通孔27と、第1挿通孔26の直径と同じ幅で第1挿通孔26と第2挿通孔27とが連通させられる連通路28とが形成されている。これにより、蓋21は、予め立設された一対のボルト24に対して、その第2挿通孔27から挿通してボス23を注入口20に嵌合して接合板22を主覆い板10Aの上面に接合し、その後、他方周方向に向けて接合板22を回転させることにより、相対的に軸部24aを連通路28を通して第1挿通孔26に挿通させる。これにより、第1挿通孔26の周囲がボルト24の頭部24bで押さえられることになり、蓋21は主覆い板10Aに固定されるようになっている。蓋21の押さえが不足するときは、ボルト24をねじ込めばよい。
【0032】
また、主覆い板10Aには、押圧機40が着脱自在に保持されるとともに装着時に覆い板10に対して上下方向に移動自在にしてこの押圧機40の表面の面方向への移動を規制する保持部60が設けられている。保持部60は、長手方向に沿って複数設けられている。実施の形態では、保持部60は3つ設けられており、主覆い板10Aの主表面2及び一方別表面3(a)で構成されるコーナ部に沿う方向に所要間隔で並設されている。押圧機40は、保持部60の数に対応させて複数備えられている。より詳しい押圧機40の構造及び保持部60の構造は後述する。
【0033】
(第2型体K2)
第2型体K2は、主表面2及び一方別表面3(a)で構成されるコーナ部に形成された欠損部Wに対応しうるとともに、主表面2及び他方別表面3(b)で構成されるコーナ部に形成された欠損部Wに対応しうるように構成されている。即ち、第2型体K2は、主表面2,一方別表面3(a)及び他方別表面3(b)で構成されるコーナ部としての角部(
図1中Ca)に形成された欠損部Wに対応しうるように構成されている。詳しくは、第2型体K2は、覆い板10として、一側端縁が主表面2のコーナ部に沿って主表面2に接合させられてこの主表面2に露出する欠損部Wを覆う主覆い板10Aを備えている。主覆い板10Aは、コーナ部に沿って、矩形板状のものを接合してL字状に形成されている。また、主覆い板10Aの一側端縁側に連設され別表面3に接合させられてこの別表面3に露出する欠損部Wを覆う矩形板状の別覆い板10Bを備えている。別覆い板10Bとして、主覆い板10Aに連設されるとともに一方別表面3(a)に接合させられてこの一方別表面3(a)に露出する欠損部Wを覆う一方別覆い板10Baと、主覆い板10A及び一方別覆い板10Baに連設されるとともに他方別表面3(b)に接合させられてこの他方別表面3(b)に露出する欠損部Wを覆う他方別覆い板10Bbとを備えて構成されている。一方別覆い板10Ba及び他方別覆い板10Bbは、主覆い板10Aにビスで固定されている。一方別覆い板10Ba及び他方別覆い板10Bb同士もビスで固定されている。
【0034】
注入口20は、主覆い板10Aの一側端縁側にこれに沿って所要間隔で複数(実施の形態では11個)列設されている。
図7に示すように、各注入口20にはこれを開閉する上記の蓋21が設けられる。注入口20の大きさは、例えば、直径が30~50mm程度である。蓋21は、上記ボルト24に対して主覆い板10Aに着脱可能になっている。
【0035】
また、主覆い板10Aには、押圧機40が着脱自在に保持されるとともに装着時に覆い板10に対して上下方向に移動自在にしてこの押圧機40の表面の面方向への移動を規制する保持部60が設けられている。保持部60は、主覆い板10Aの他側端縁側にこれに沿って複数設けられている。実施の形態では、保持部60は3つ設けられており、2つは、主覆い板10Aの主表面2及び一方別表面3(a)で構成されるコーナ部に沿う方向に所要間隔で並設され、1つは、主覆い板10Aの主表面2及び他方別表面3(b)で構成されるコーナ部に沿う方向に設けられている。押圧機40は、保持部60の数に対応させて複数備えられている。より詳しい押圧機40の構造及び保持部60の構造は後述する。
【0036】
(第3型体K3)
第3型体K3は、第2型体K2と鏡面対称の関係に形成されている。構造は第2型体K2と同様なのでその説明を省略する。即ち、第2型体K2と第3型体K3とは、一方側のコーナ部(角部Ca)を含む側と、他方側のコーナ部(角部Ca)を含む側に、夫々、対応して配置可能に形成されている。
【0037】
また、本補修用型装置Sには、隣接する型体K同士を連結する連結機構30が設けられている。
図5及び
図6に示すように、連結機構30は、隣接する型体Kの何れか一方の別覆い板10Bの外側に設けられる凸状に形成された係合部32を有したブロック状の一方連結体31と、隣接する型体Kの何れか他方の別覆い板10Bの外側に設けられ係合部32に係合し上開放の凹状に形成された被係合部34を有したブロック状の他方連結体33とで構成されている。係合部32の一側面は、下端に向けてテーパ状に傾斜形成されるとともに、被係合部34の一側面もこれに合わせてテーパ状に傾斜形成されており、そのため、型体K同士を接合するときは、係合部32を被係合部34に上から入れると、係合部32は自己求心的に被係合部34に係合していく。
【0038】
尚、第1型体K1は、スラブの長手方向の長さに応じて、複数設けて良い。また、実施の形態に係る補修用型装置Sを、例えば、2台用意し、夫々、スラブの短手方向両側に配置して、1つのスラブを一時に補修できるようにして良く、適宜変更して差支えない。要するに、各型体Kを複数設け、作業環境に合わせて、適宜連結して用いることができる。
【0039】
次に、押圧機40及び保持部60の構造について説明する。
図1乃至
図4、
図9に示すように、押圧機40は、吸引機41(
図2)による空気の吸引により表面に吸着させられ吸引解除により表面から離脱可能な吸着盤42と、吸着盤42に設けられその吸着時に覆い板10の上面に当接してこの覆い板10を表面に押圧する押圧部材50とを備えて構成されている。
【0040】
吸着盤42は、表面に対向する矩形板状の本体44と、本体44の下面に設けられ表面に弾接する樹脂製の環状パッキン45と、本体44に貫通して設けられ本体44,環状パッキン45及び表面で形成される空間から空気を吸引する吸引通路が形成された吸引管46とを備えて構成されている。吸着盤42としては、本体44の大きさが比較的大きい通常タイプと、これより小型タイプの2種類が用いられる。吸引管46には吸引機41からの配管が手動の開閉バルブ47を介して接続される。
【0041】
一方、保持部60は、吸着盤42の本体44が嵌合する貫通孔61を有して構成されており、貫通孔61を構成する壁面で本体44を押えるようにしている。第1型体K1においては、保持部60は、主覆い板10Aに、通常タイプの吸着盤42が嵌合可能な大きさの貫通孔61を形成する枠状部分を突設して構成されている。第2型体K2及び第3型体K3においては、主覆い板10Aの主表面2及び一方別表面3(a)で構成されるコーナ部に沿う方向に所要間隔で並設された2つの保持部60は、夫々、主覆い板10Aに、通常タイプの吸着盤42が嵌合可能な大きさの貫通孔61を形成する枠状部分を突設して構成されている。残りの1つの保持部60は、覆い板10に小型タイプの吸着盤42が嵌合可能な大きさの貫通孔61を形成して構成されている。
【0042】
押圧部材50は、
図4及び
図9に示すように、棒状の板体であり、本体44の上面に固定される固定部51と、固定部51から一体に延び覆い板10の上面に当接する当接部52とを備えて構成されている。固定部51は押圧部材50の途中部分で構成され、吸着盤42の吸引管46にネジ手段により固定されている。ネジ手段は吸引管46の外周に形成した雄ネジ53と、雄ネジ53に螺合する雌ネジ54を有しこの雌ネジ54をねじ込むことにより押圧部材50の固定部51を吸着盤42の本体44の上面に押圧する手動のナット55とから構成されている。また、当接部52は、固定部51の左右で構成されている。これにより、押圧部材50は、貫通孔61の周囲の複数個所(2個所)を押えることになる。
【0043】
図9に示すように、充填材Fは、例えば、図示外の充填材貯留タンクからポンプによりホースを通して供給される。ホースの先端には吐出ノズル70が取付けられる。
図8には、実施の形態に係る補修用型装置Sにおいて、注入口20に取付けられる充填材Fのノズル取付板71を示す。ノズル取付板71は、上記の蓋21と同様に、金属製であり、主覆い板10Aの上面に接合させられ中央にノズル70が挿通される挿通孔72が形成された矩形状の接合板73と、接合板22の下面に突設され注入口20に嵌合するとともに挿通孔72に連通する円筒状の凸部74とから構成されている。凸部74の突出寸法は、主覆い板10Aの厚さと同じである。
図9に示すように、ノズル70は、例えば、その外周に雄ネジ76が形成されており、この雄ネジ76に接合板73を挾持する一対のナット75を螺合して接合板73に取付けられている。また、ノズル取付板71は、
図8に示すように、上記の蓋21と同様の取付手段により、主覆い板10Aに着脱可能になっている。取付手段の構成は、蓋21と同様なので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
従って、このように構成される本実施の形態に係るコンクリート構造体Cの補修用型装置Sを用いて、コンクリート構造体Cとしてのスラブの補修を行うときは、以下のようにする。
図1に示すように、先ず、要修復部分を例えば、ウォータージェットではつり取る。尚、はつり取が特に必要がない場合には、剥離部や剥落部をそのまま欠損部Wとして、これを覆うようにして良い。そして、
図2に示すように、例えば、スラブの片側において、第1型体K1,第2型体K2及び第3型体K3を連結しながら、欠損部Wのある表面にこれらの型体Kの覆い板10を接合させて欠損部Wを覆う。この型体Kの連結は、連結機構30において、凸状の係合部32を凹状の被係合部34に係合して行う。この場合、係合部32の一側面は、下端に向けてテーパ状に傾斜形成されるとともに、被係合部34の一側面もこれに合わせてテーパ状に傾斜形成されており、そのため、型体K同士を接合するときは、係合部32を被係合部34に上から入れると、係合部32は自己求心的に被係合部34に係合していく。そのため、連結を容易に行うことができる。
【0045】
この状態で、複数の押圧機40を各保持部60に装着する。この場合には、押圧機40の押圧部材50が覆い板10に対面するようにその吸着盤42を保持部60の貫通孔61に嵌合し、主表面2に添接する。それから、吸引機41(
図2)による空気の吸引により吸着盤42を表面に吸着させて取付ける。これにより、押圧部材50が覆い板10の上面に当接して覆い板10を表面に押圧するので、覆い板10が表面に圧接させられる。この場合、押圧機40の吸着盤42は保持部60に上下方向に移動自在に保持されるので、吸着盤42の吸着による表面に対する上下方向の移動が制限されることがなく、確実に表面に吸着して押圧部材50による覆い板10の押圧を行うことができる。このため、吸着盤42を空気の吸引により表面に取付けるだけで、型体Kを設置できるので、従来に比較して設置作業が容易になり、作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。
【0046】
押圧機40により型体Kを装着した状態では、保持部60を複数設け、押圧機40を保持部60の数に対応させて複数備えたので、型体Kを複数の押圧機40で覆い板10を押えることから、型体Kの設置がより一層強固になる。また、押圧部材50は、棒状の板体であり、貫通孔61の周囲の複数個所(固定部51の両側の2カ所)を押えるので、押さえがより一層確実になり、この点でも型体Kの設置がより一層強固になる。
【0047】
次に、各型体Kにおいて、注入口20を覆う蓋21を外す。尚、蓋21は、各型体Kの設置前に予め外しておいても良く、適宜変更して差支えない。そして、例えば、何れかの注入口20から充填材Fを注入する。注入は周知の適宜の注入器を用いることができる。この場合、他の注入口20が開放しているので、空気が抜けて隣接する注入口20側に充填材Fが流れて移動していく。そのため、満遍なく欠損部Wに充填材Fを行き届かせることができる。充填材Fを注入した注入口20が充填材Fで満たされたならば、溢れ出ないように蓋21をする。そして、隣接する別の注入口20から充填材Fを注入していく。この場合、隣接する別の注入口20が充填材Fで満たされていたならば、必ずしも隣接する注入口20から順番に充填材Fを注入しなくても、1つあるいは2つ等離れた注入口20に移行して充填材Fを注入して良い。この場合も、充填材Fで満たされた注入口20には溢れ出ないように蓋21をする。
【0048】
この注入の際には、覆い板10が透明な樹脂で形成されているので、充填材Fの充填状態を目視することができ、充填材Fの適正な量を供給して充填できる。また、型体Kは、押圧機40で押さえられているので、それだけ充填材Fの充填を確実に行うことができる。更に、連結機構30により隣接する型体K同士の連結が強固になっているので、この連結部から充填材Fを漏れにくくすることができ、確実に欠損部Wに充填することができるようになる。更にまた、この充填材Fを注入する際には、覆い板10に表面方向の何らかの力が作用して、覆い板10が動かされようとしても、保持部60により押圧機40の表面の面方向への移動が規制されるので、動くことを防止することができ、それだけ充填材Fの充填を確実に行うことができる。この場合、別覆い板10Bは主覆い板10Aに連設されているので、この別覆い板10Bの面方向への移動も規制されることから、遜色なく、型体Kが動くことを防止することができ、それだけ充填材Fの充填を確実に行うことができる。
【0049】
注入が終わり、蓋21の取付も終わったならば、所要時間養生する。この場合、型体Kは、押圧機40で押さえられているので、それだけ充填材Fの養生を確実に行うことができる。この充填材Fを養生する際には、覆い板10に表面方向の何らかの力が作用して、覆い板10が動かされようとしても、保持部60により押圧機40の表面の面方向への移動が規制されるので、動くことを防止することができ、それだけ充填材Fの養生を確実に行うことができる。この場合、別覆い板10Bは主覆い板10Aに連設されているので、この別覆い板10Bの面方向への移動も規制されることから、遜色なく、型体Kが動くことを防止することができ、それだけ充填材Fの養生を確実に行うことができる。
【0050】
そして、適時に、型体Kを表面から取外して離型する。この際には、吸着盤42の空気の吸引を解除し、吸着盤42を表面から離脱可能にする。これにより、押圧部材50による覆い板10の押圧も解除されるので、型体Kを表面から取外すことができる。この場合も、吸着盤42の空気の吸引を解除するだけで、型体Kを取外すことができるので、取外し作業が容易になり、この点でも作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。また、樹脂製なので、離型するときに固化した充填材Fから剥離し易くなる。そのため、これらの点でも作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。
【0051】
このように、本補修用型装置Sは、第1型体K1,第2型体K2及び第3型体K3を備えているので、欠損部Wが、主表面2及び一方別表面3(a)からなるコーナ部、主表面2及び他方別表面3(b)からなるコーナ部に形成された場合に、このコーナ部の欠損部Wに充填材Fを注入して補修することができる。コーナ部の欠損部Wへの型体Kの設置は、従来技術では煩雑を極めるが、この構成によれば、吸着盤42を空気の吸引により表面に取付けるだけで、型体Kを設置できるので、設置作業が容易になり、作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。型体Kの離型時においても、吸着盤42の空気の吸引を解除し、吸着盤42を表面から離脱可能にするだけで、型体Kを表面から取外すことができるので、型体Kの取外し作業も容易であり、この点でも作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。
【0052】
特に、第2型体K2及び第3型体K3により、欠損部Wが、コーナ部でも主表面2,一方別表面3(a)及び他方別表面3(b)が互いに直交する角部(Ca)に形成された場合に、このコーナ部としての角部の欠損部Wに充填材Fを注入して補修することができる。このように、コーナ部でも欠損部Wが角部(Ca)にある場合には、この部位への型体Kの設置は、従来技術では煩雑を極めるが、この構成によれば、吸着盤42を空気の吸引により表面に取付けるだけで、型体Kを設置できるので、設置作業が容易になり、作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。型体Kの離型時においても、吸着盤42の空気の吸引を解除し、吸着盤42を表面から離脱可能にするだけで、型体Kを表面から取外すことができるので、型体Kの取外し作業も容易であり、この点でも作業性を向上させ、作業効率を向上させることができるのである。
【0053】
本補修用型装置S(第1型体K1,第2型体K2及び第3型体K3)により、スラブの片側の修復を終えたならば、次に、反対側のスラブの片側の修復を上記と同様に行う。尚、本補修用型装置Sを複数用意すれば、1つのスラブを同時に修復することができる。このようにして、多数連続するスラブに対して、順次修復を行っていけばよい。また、本補修用型装置Sの数は何台あっても良いので、複数台を修復が必要なスラブに設置して、修復を行うこともできる。
【0054】
尚また、上記の例では、第1型体K1,第2型体K2及び第3型体K3を連結して用いたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第1型体K1,第2型体K2及び第3型体K3の何れか1台を用いても良く、若しくは、何れか2台を連結して用いても良く、適宜変更して差支えない。
【0055】
図11には、本発明の実施の形態に係る補修用型装置Sの変形例を示している。これは、別覆い板10Bの下端縁に、ベース1に設置される支持板80を設けたものである。別覆い板10Bがベース1に設置される支持板80に支持されるので、別覆い板10Bの設置が強固になり、より一層確実に充填材Fの充填と養生を行うことができるようになる。
【0056】
図12には、本発明の実施の形態に係る補修用型装置Sの別の変形例を示している。これは、コンクリート構造体Cが、主表面2と別表面3とで構成されるコーナ部に面取り面Cbを備えたもの用の装置であり、主覆い板10Aと別覆い板10Bとで構成されるコーナ部に、面取り面Cbに接合する断面三角形状の面木材90を付設している。これにより、面取り面Cbを成形できるので、後加工での面取り形成が不要になるとともに、補修品位を向上させることができる。
【0057】
図13には、別の実施の形態に係る補修用型装置Sを示している。これは、コンクリート構造体Cの表面に凹状に形成された欠損部Wに対応する平面用のものであり、一枚の覆い板10からなる型体Kと、押圧機40とを備えて構成されている。保持部60は覆い板10に上記と同様に形成されている。これによっても、吸着盤42を空気の吸引により表面に取付けるだけで、型体Kを設置できる一方、吸着盤42の空気の吸引を解除し、吸着盤42を表面から離脱可能にするだけで、型体Kを表面から取外すことができるので、従来に比較して型体Kの設置作業や取外し作業が容易になり、作業性を向上させ、作業効率を向上させることができる。
【0058】
尚、上記実施の形態に係る補修用型装置Sにおいて、押圧機40の保持部60は、主覆い板10Aに設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、別覆い板10Bに設け、あるいは、主覆い板10Aと別覆い板10Bの両方に設けても良く、適宜変更して差支えない。また、型体Kに押圧機40の保持部60を備えたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、設けなくても型体Kを押えることができる。しかし、押圧機40の位置決めや、型体Kの押えの点では保持部60はあった方が望ましい。更に、型体Kの形状や大きさは上述したものに限定されるものではなく、コンクリート構造体Cの形態や、作業環境に合わせて、適宜変更して良いことは勿論である。
【0059】
更にまた、上記実施の形態に係る補修用型装置Sは、コンクリート構造体Cとして鉄道軌道用のスラブに適用した場合を示したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どのような構造のコンクリート構造体Cに適用しても良く、適宜変更して差し支えない。当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
S 補修用型装置
C コンクリート構造体
Ca 角部
Cb 面取り面
W 欠損部
F 充填材
1 ベース
2 主表面
3 別表面
3(a) 一方別表面
3(b) 他方別表面
4 突起
5 凹所
K 型体
K1 第1型体
K2 第2型体
K3 第3型体
10 覆い板
10A 主覆い板
10B 別覆い板
10Ba 一方別覆い板
10Bb 他方別覆い板
20 注入口
21 蓋
22 接合板
23 ボス
24 ボルト
24a 軸部
24b 頭部
25 雌ネジ部
26 第1挿通孔
27 第2挿通孔
28 連通路
30 連結機構
31 一方連結体
32 係合部
33 他方連結体
34 被係合部
40 押圧機
41 吸引機
42 吸着盤
44 本体
45 パッキン
46 吸引管
47 開閉バルブ
50 押圧部材
51 固定部
52 当接部
53 雄ネジ
54 雌ネジ
55 ナット
60 保持部
61 貫通孔
70 吐出ノズル
71 ノズル取付板
72 挿通孔
73 接合板
74 凸部
80 支持板
90 面木材