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特開2025-7641電子写真用現像剤、その製造方法及び画像形成装置
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  • 特開-電子写真用現像剤、その製造方法及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007641
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電子写真用現像剤、その製造方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20250109BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G03G9/097 375
G03G9/08 381
G03G9/097 374
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109177
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】紀川 敬一
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA09
2H500BA15
2H500CB06
2H500CB09
2H500CB12
2H500EA42D
2H500EA45D
2H500EA47D
2H500EA52D
2H500EA62D
(57)【要約】
【課題】ATCセンサーが現像剤中のトナー濃度を誤計測するのを抑制でき、延いてはカブリ及びトナー飛散の発生を抑制できる電子写真用現像剤、その製造方法及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー粒子を有する電子写真用現像剤は、酸化カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子及び疎水化処理されていないシリカ粒子を含む。前記水酸化アルミニウム粒子は、物理吸着又は水素結合によって、前記シリカ粒子の表面に付着している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を有する電子写真用現像剤であって、
酸化カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子及び疎水化処理されていないシリカ粒子を含み、
前記水酸化アルミニウム粒子は、物理吸着又は水素結合によって、前記シリカ粒子の表面に付着していることを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項2】
請求項1に記載の電子写真用現像剤であって、
前記水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した前記シリカ粒子は、前記酸化カルシウム粒子の表面に付着していることを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項3】
請求項2に記載の電子写真用現像剤であって、
前記シリカ粒子が表面に付着した前記酸化カルシウム粒子は、前記トナー粒子の表面に付着していることを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真用現像剤であって、
前記酸化カルシウム粒子の平均粒子径は、2μm以上7μm以下であることを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真用現像剤であって、
前記酸化カルシウム粒子の含有量は、0.30質量%以上1質量%以下であることを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真用現像剤であって、
前記シリカ粒子の含有量は、0.05質量%以上0.20質量%以下であることを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真用現像剤であって、
前記水酸化アルミニウム粒子の含有量は、0.02質量%以上0.08質量%以下であることを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真用現像剤を用いる画像形成装置であって、
前記酸化カルシウム粒子と、前記水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した前記シリカ粒子とを、前記電子写真用現像剤に補充する機構を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項2に記載の電子写真用現像剤の製造方法であって、
水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した疎水化処理されていないシリカ粒子と、酸化カルシウム粒子とを混合することで、当該酸化カルシウム粒子の表面に当該シリカ粒子を付着させる工程を備えることを特徴とする電子写真用現像剤の製造方法。
【請求項10】
請求項3に記載の電子写真用現像剤の製造方法であって、
水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した疎水化処理されていないシリカ粒子と、酸化カルシウム粒子とを混合することで、当該酸化カルシウム粒子の表面に当該シリカ粒子を付着させた複合粒子を得る複合粒子作製工程と、
前記複合粒子を含む外添剤と、トナー粒子とを混合することで、当該トナー粒子の表面に当該外添剤を付着させる外添工程と、
を備えることを特徴とする電子写真用現像剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真用現像剤、その製造方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、複合機、プリンタ、ファクシミリ装置等の画像形成装置の現像槽(現像剤容器)には、図2に例示するように、ATC(Automatic Toner Concentration)センサーが設けられてる。ATCセンサーは、現像剤の透磁率を測定して、現像剤中のトナー濃度を調整(制御)するものである。トナー濃度は、トナーカートリッジから現像槽にトナーが補給されることで調整される。
【0003】
電子写真用現像剤及び画像形成装置には、温度及び湿度といった環境の変化にかかわらず、安定した品質の画像を形成できることが望まれる。高温高湿環境下においては、現像剤が吸湿することで、現像剤の流動性が悪化し、現像性も低下してしまう問題がある。
【0004】
特許文献1には、現像剤の帯電性を安定させるべく、除湿剤を通した空気を現像剤内に送り込む画像形成装置が開示されている。しかしながら、送り込む空気を除湿するだけでは、画像形成装置停止中の湿度による影響を十分に排除できず、キャリア及びトナー粒子の表面の水分を十分に除去することは難しい。
【0005】
現像剤に用いるトナーとして、特許文献2には、トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーにおいて、外添剤として使用するシリカ粒子が、その表面に形成されている金属水酸化物層と、当該金属水酸化物層の表面に形成されているコート層とを備え、当該コート層が含窒素樹脂で構成されることが開示されており、高湿環境下でのトナーの帯電性の低下を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-293452号公報
【特許文献2】国際公開第2016/148012号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高温高湿環境下では、現像剤中のトナー濃度が上昇しても現像剤の嵩密度の変化量が少なくなることに起因して、ATCセンサーが現像剤中のトナー濃度を誤計測(読み取りミス)するという課題がある。そのため、現像剤中のトナー濃度が上昇しているにもかかわらず現像剤の嵩密度が増加しないと、現像槽にトナーが過剰に補給されてしまう等、トナーの補給量を最適化できない現象が起こっていた。これにより、カブリ及びトナー飛散が発生するという課題がある。なお、カブリとは、本来はトナーが現像されない非画像部に低帯電量トナーが現像される現象(低帯電量トナーが感光体ドラムに付着する現象)をいう。
【0008】
現像剤の嵩密度の変化量が少なくなる原因は、高温高湿環境下では、水分及び熱によりトナー粒子が吸湿して粒子間での静電的な反発力が弱まり、トナー粒子同士が物理的に凝集しやすくなり、その凝集体がキャリア間の空隙及びキャリア表面の凹部に入り込むことで、トナーを補給しても現像剤に嵩密度変化が起こりにくくなるためであると推察される。特に、鉄粉キャリアは、図3に示すようにその表面に凹凸が多いため表面積が広いことや、鉄粉であるキャリア芯材がコート剤で完全には被覆されずに露出している箇所が存在することに起因して、環境変化の影響を受けやすいため、鉄粉キャリアを用いた二成分現像剤において上記課題は顕著である。
【0009】
本開示の内容は斯かる事情に鑑みて見出されたものであり、ATCセンサーが現像剤中のトナー濃度を誤計測するのを抑制でき、延いてはカブリ及びトナー飛散の発生を抑制できる電子写真用現像剤、その製造方法及び画像形成装置の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本開示の電子写真用現像剤は、トナー粒子を有する電子写真用現像剤であって、酸化カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子及び疎水化処理されていないシリカ粒子を含み、前記水酸化アルミニウム粒子は物理吸着又は水素結合によって前記シリカ粒子の表面に付着していることを特徴とする。
【0011】
上記の電子写真用現像剤にあっては、前記水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した前記シリカ粒子は、前記酸化カルシウム粒子の表面に付着していることが好ましい。この電子写真用現像剤を製造する方法は、水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した疎水化処理されていないシリカ粒子と、酸化カルシウム粒子とを混合することで、当該酸化カルシウム粒子の表面に当該シリカ粒子を付着させる工程を備えることを特徴とする。
【0012】
上記の電子写真用現像剤にあっては、前記シリカ粒子が表面に付着した前記酸化カルシウム粒子は、前記トナー粒子の表面に付着していることが好ましい。この電子写真用現像剤を製造する方法は、水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した疎水化処理されていないシリカ粒子と、酸化カルシウム粒子とを混合することで、当該酸化カルシウム粒子の表面に当該シリカ粒子を付着させた複合粒子を得る複合粒子作製工程と、前記複合粒子を含む外添剤とトナー粒子とを混合することで、当該トナー粒子の表面に当該外添剤を付着させる外添工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
上記の電子写真用現像剤にあっては、前記酸化カルシウム粒子の平均粒子径は2μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0014】
上記の電子写真用現像剤にあっては、前記酸化カルシウム粒子の含有量は0.30質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
【0015】
上記の電子写真用現像剤にあっては、前記シリカ粒子の含有量は0.05質量%以上0.20質量%以下であることが好ましい。
【0016】
上記の電子写真用現像剤にあっては、前記水酸化アルミニウム粒子の含有量は0.02質量%以上0.08質量%以下であることが好ましい。
【0017】
上記課題を解決するために本開示の電子写真用現像剤を用いる画像形成装置は、前記酸化カルシウム粒子と、前記水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した前記シリカ粒子とを、前記電子写真用現像剤に補充する機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本開示の電子写真用現像剤、その製造方法及び画像形成装置によれば、ATCセンサーが現像剤中のトナー濃度を誤計測するのを抑制でき、延いてはカブリ及びトナー飛散の発生を抑制できる等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る電子写真用現像剤が含む粒子を模式的に示す断面図である。
図2】ATCセンサーを備えた現像槽を模式的に示す断面図である。
図3】鉄粉キャリアの形状を例示する電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係る電子写真用現像剤は、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤である。二成分現像剤は、公知の混合機を用いて、トナーとキャリアとを混合することによって製造できる。トナーとキャリアとの質量比は、特に限定されず、例えば、3:97~12:88が挙げられる。
【0021】
さらに、本実施形態に係る電子写真用現像剤は、酸化カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、及び疎水化処理されていないシリカ粒子を含む。以下、本開示の電子写真用現像剤の実施形態について詳述する。
【0022】
なお、本明細書において、「外添」とは粒子表面に添加する(付着させる)ことを意味し、「内添」とは粒子内部に添加することを意味する。
【0023】
1.現像剤が含む粒子
図1は、本実施形態に係る電子写真用現像剤が含む粒子を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る電子写真用現像剤は、酸化カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子及び疎水化処理されていないシリカ粒子を含む。なお、以下において「疎水化処理されていないシリカ粒子」を「未処理シリカ粒子」ともいう。
【0024】
本実施形態に係る電子写真用現像剤において、水酸化アルミニウム粒子は、物理吸着又は水素結合によって、未処理シリカ粒子の表面に付着している。なお、後掲する実施例では、「水酸化アルミニウム粒子が物理吸着又は水素結合によって表面に付着した未処理シリカ粒子」を「吸熱シリカ粒子」ともいう。
【0025】
これらの粒子を含む本実施形態に係る電子写真用現像剤が、上記課題を解決する機序は以下のとおりである。
【0026】
ATCセンサーのトナー濃度の誤計測を抑制するには、トナー粒子が吸湿してトナー粒子同士が凝集するのを抑制する必要がある。そのため、上記課題を解決するためには、高温高湿環境下におけるトナー粒子表面上の水分をできるだけ取り除くことがポイントとなる。
【0027】
トナー粒子の吸湿を抑制する方法として、酸化カルシウムを現像剤に添加する方法が挙げられる。しかしながら、酸化カルシウムの吸湿反応では反応熱が発生する。高温高湿環境下において、反応熱によりさらに高温になることは現像剤にとって望ましくない。
【0028】
本実施形態に係る電子写真用現像剤は水酸化アルミニウム粒子を含むため、トナー表面上にて、図1に示すように、下記式(1)で示す反応(水分(HO)が酸化カルシウム粒子(CaO)と反応して水酸化カルシウム(Ca(OH))を生成する反応)で発生した熱を、下記式(2)の反応により吸熱して、アルミナ(Al)と水とを生成する。これにより、現像剤が反応熱によりさらに高温になるのを防ぐことができる。
CaO+HO→熱+Ca(OH) ・・・(1)
熱+2Al(OH)→Al+3HO ・・・(2)
【0029】
上記式(2)では水が生成されるが、本実施形態に係る電子写真用現像剤にあっては水酸化アルミニウム粒子が「疎水化処理されていないシリカ粒子」表面に物理吸着又は水素結合によって付着しているため、上記式(2)で生成された水は「疎水化処理されていないシリカ粒子」に即座に吸収される。
【0030】
このような機序により、本実施形態に係る電子写真用現像剤は、トナー粒子表面の水分を取り除きつつ、吸湿反応で発生する熱によって現像剤がさらに高温になることを抑制できる。そのため、現像剤中のトナー濃度変化に対する嵩密度変化の応答性を向上させることができ、ATCセンサーが現像剤中のトナー濃度を誤計測するのを抑制できる。延いては、カブリ及びトナー飛散の発生を抑制できる。
【0031】
本実施形態に係る電子写真用現像剤にあっては、水酸化アルミニウム粒子が、酸化カルシウム粒子と未処理シリカ粒子との両方に接して存在しているのが望ましい。そのため、図1に示すように、「水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した未処理シリカ粒子」が、酸化カルシウム粒子の表面に付着していることが好ましい。換言すると、本実施形態に係る電子写真用現像剤は、酸化カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子及び未処理シリカ粒子で構成される複合粒子を含むことが好ましい。なお、この複合粒子のことを、後掲する実施例では「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子」ともいう。酸化カルシウム粒子の表面に対する当該シリカ粒子の付着量は限定されないが、酸化カルシウム粒子の表面上には、その酸化カルシウム粒子100質量部に対して当該シリカ粒子が1質量部以上存在することが好ましく、15質量部以上25質量部以下の範囲内で存在することがより好ましい。
【0032】
これにより、「水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した未処理シリカ粒子」が酸化カルシウム粒子に接触しているため、上記式(1)で発生した反応熱を効率的に吸熱することができ、上述した機序における「酸化カルシウム粒子による吸湿」、「水酸化アルミニウム粒子による吸熱」、「未処理シリカ粒子による吸湿」のプロセスが迅速に進行し、高温高湿環境下でのトナー粒子表面の水分を効率よく取り除くことができる。延いては、カブリ及びトナー飛散の発生を抑制できる。
【0033】
上記複合粒子を含む現像剤を製造するため、本実施形態に係る電子写真用現像剤の製造方法にあっては、水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した疎水化処理されていないシリカ粒子と、酸化カルシウム粒子とを混合することで、当該酸化カルシウム粒子の表面に当該シリカ粒子を付着させる複合粒子作製工程を備えることが好ましい。このように、予め両粒子を混合して複合粒子を形成させたのちに、この複合粒子と他の材料とを混合することで、上記複合粒子を含む現像剤を得ることができる。
【0034】
本実施形態に係る電子写真用現像剤にあっては、「水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した未処理シリカ粒子」が表面に付着した酸化カルシウム粒子は、トナー粒子表面に付着していることが好ましい。換言すると、上記複合粒子がトナー粒子表面に付着していることが好ましい。トナー粒子表面に対する上記複合粒子の付着量は限定されないが、トナー粒子表面上には、そのトナー粒子100質量部に対して上記複合粒子が1質量部以上存在することが好ましく、1質量部以上4質量部未満の範囲内で存在することがより好ましい。トナー粒子表面に上記複合粒子が1質量部以上存在することで、より優れた吸湿効果が得られる。また、トナー粒子表面に存在する上記複合粒子を4質量部未満とすることで、トナーの帯電性がより良好となる。
【0035】
現像剤中の上記複合粒子は、印刷を繰り返すうちにトナーと一緒に紙等の記録媒体に定着されたり、印刷されずに廃トナーと一緒に回収されたりして徐々に消費されていく。上記複合粒子をトナー粒子表面に外添することで、消費されて現像剤から減少した上記複合粒子をトナー補給により補うことができ、高温高湿環境下でも本開示に係る効果を安定して継続することができる。
【0036】
トナー粒子表面に上記複合粒子が付着した現像剤を製造するため、本実施形態に係る電子写真用現像剤の製造方法にあっては、上記複合粒子作製工程と、上記複合粒子を含む外添剤とトナー粒子とを混合することでトナー粒子の表面に外添剤を付着させる外添工程と、を備えることが好ましい。
【0037】
現像剤に分散させる形で酸化カルシウム粒子を添加する場合、酸化カルシウム粒子の平均粒子径(トナー粒子に外添しない場合の平均粒子径)は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上7μm以下であることがより好ましく、4μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。酸化カルシウム粒子の平均粒子径が上記範囲内であることで、酸化カルシウム粒子が効率よく吸湿することができる。酸化カルシウム粒子の平均粒子径が上記下限未満の場合、吸湿能力が低くなりやすい。また、キャリア、感光体ドラム等の他の部材に対する付着性が強くなり離れなくなるおそれがある。酸化カルシウム粒子の平均粒子径が上記上限を超える場合、吸湿能力は高くなるが、上記式(1)にて発生する熱量も大きくなるため、上記式(2)の吸熱反応では吸熱しきれなくなるおそれがある。
【0038】
上記複合粒子をトナー粒子に外添する場合、酸化カルシウム粒子の平均粒子径は、トナー粒子の大きさとの関係から、0.5μm以上2μm以下であることが好ましく、1μm以上2μm以下であることがより好ましい。酸化カルシウム粒子の平均粒子径が上記上限を超える場合、トナー粒子との平均粒子径差が小さくなり、トナー粒子表面に上記複合粒子が保持されにくくなるおそれがある。酸化カルシウム粒子の平均粒子径が上記下限未満の場合、吸湿能力が低くなりやすい。また、キャリア、感光体ドラム等の他の部材に対する付着性が強くなり離れなくなるおそれがある。
【0039】
本実施形態に係る酸化カルシウム粒子は、酸化カルシウムを粉砕及び分級することで製造することができる。酸化カルシウムは、化学式CaOで表される化合物であり、モース硬度が4~4.5程度で比較的砕けやすく、密度は3.34g/cmである。粉砕方法は特に限定されないが、例えば、I型粉砕機にて粉砕することで製造することができる。なお、このように製造した酸化カルシウム粒子を、後掲する実施例では「吸湿酸化カルシウム粒子」ともいう。
【0040】
本実施形態に係る電子写真用現像剤中の酸化カルシウム粒子の含有量は、0.20質量%以上1.5質量%以下であることが好ましく、0.30質量%以上1質量%以下であることがより好ましく、0.50質量%以上0.70質量%以下であることがさらに好ましい。酸化カルシウム粒子の含有量が上記範囲内であることで、高温高湿環境下でのカブリ及びトナー飛散を抑制する効果を高めることができる。酸化カルシウム粒子の含有量が上記下限未満の場合、吸湿効果が弱まることで、カブリ及びトナー飛散を抑制する効果も十分に発揮されないおそれがある。酸化カルシウム粒子の含有量が上記上限を超える場合、帯電性が悪化するおそれがある。
【0041】
本実施形態に係る未処理シリカ粒子としては、ゾルゲル法、ヒュームド法等で作製されたシリカ粒子であって、その表面を疎水処理化されていないものを使用することができる。未処理シリカ粒子の表面は親水性であり、その表面に存在する水酸基(シラノール基)と水酸化アルミニウムとの水素結合が期待できる。
【0042】
本実施形態に係る未処理シリカ粒子の平均粒子径は、30nm以上200nm以下であることが好ましく、50nm150nm以下であることがより好ましい。未処理シリカ粒子の平均粒子径が上記下限未満の場合、外添させる水酸化アルミニウム粒子に対して未処理シリカ粒子のサイズが小さすぎて、水酸化アルミニウム粒子がファンデルワールス力(物理吸着)及び水素結合によって付着しにくくなる。未処理シリカ粒子の平均粒子径が上記上限を超える場合、未処理シリカ粒子が酸化カルシウム粒子上に付着しにくくなり、吸熱効果が低くなるおそれがある。
【0043】
本実施形態に係る電子写真用現像剤中の未処理シリカ粒子の含有量は、0.02質量%以上0.25質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.20質量%以下であることがより好ましく、0.07質量%以上0.15質量%以下であることがさらに好ましい。未処理シリカ粒子の含有量が上記下限未満の場合、未処理シリカ粒子による吸湿効果が弱まるため、上記式(2)の吸熱反応により発生した水分を十分に吸収しきれないおそれがある。未処理シリカ粒子の含有量が上記上限を超える場合、過剰に未処理シリカ粒子が存在することで、トナー及び現像剤の流動性が悪化するおそれがある。
【0044】
本実施形態に係る電子写真用現像剤中の未処理シリカ粒子の含有量は、酸化カルシウム粒子100質量部に対して15質量部以上25質量部以下であることが好ましく、18質量部以上22質量部以下であることがより好ましい。未処理シリカ粒子の含有量が上記下限未満の場合、上記式(2)の吸熱反応により発生した水分を十分に吸収しきれないおそれがある。未処理シリカ粒子の含有量が上記上限を超える場合、上記式(2)の吸熱反応により発生した水分を吸収するという一連のプロセスによる効果は大きくなるものの、水酸化アルミニウム粒子の割合が多くなることで、現像剤の帯電性能が悪化するおそれがある。
【0045】
本実施形態に係る水酸化アルミニウム粒子は、付着させる未処理シリカ粒子の平均粒子径に依存するが、平均粒子径が5nm以上60nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。水酸化アルミニウム粒子は、純度99.9%において、平均粒子径が10nmのものの比表面積が650m/gであり、平均粒子径が50nmのものの比表面積が350m/gである。商品としては、例えば、イーエムジャパン株式会社が販売する「NP-ALO-13-25」(カタログナンバー)等が挙げられる。水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径が上記下限未満の場合、2次凝集が激しくなり、未処理シリカ粒子の表面に均等に分散付着させにくくなるおそれがある。水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径が上記上限を超える場合、水酸化アルミニウム粒子が未処理シリカ粒子表面にファンデルワールス力(物理吸着)及び水素結合によって付着しにくくなるおそれがある。
【0046】
本実施形態に係る電子写真用現像剤中の水酸化アルミニウム粒子の含有量は、0.01質量%以上0.10質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上0.08質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以上0.06質量%以下であることがさらに好ましい。水酸化アルミニウム粒子の含有量が上記下限未満の場合、水酸化アルミニウム粒子による吸熱効果が弱まるため、上記式(1)で発生した熱を十分に吸熱しきれないおそれがある。水酸化アルミニウム粒子の含有量が上記上限を超える場合、過剰に水酸化アルミニウム粒子が存在することで、トナー及び現像剤の流動性が悪化するおそれがある。
【0047】
未処理シリカ粒子100質量部に対する水酸化アルミニウム粒子の含有量は、10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、20質量部以上45質量部以下であることがより好ましい。水酸化アルミニウム粒子の含有量が上記下限未満の場合、水酸化アルミニウム粒子による吸熱効果が弱まるため、上記式(1)で発生した熱を十分に吸熱しきれないおそれがある。水酸化アルミニウム粒子の含有量が上記上限を超える場合、水酸化アルミニウム粒子による未処理シリカ粒子表面の被覆量が多くなり、上記式(2)の吸熱反応により発生した水分を未処理シリカ粒子が効率よく吸収できないおそれがある。
【0048】
本実施形態に係る電子写真用現像剤中の水酸化アルミニウム粒子の含有量は、酸化カルシウム粒子100質量部に対して6質量部以上10質量部以下であることが好ましく、7質量部以上9質量部以下であることがより好ましい。水酸化アルミニウム粒子の含有量が上記下限未満の場合、水酸化アルミニウム粒子による吸熱効果が弱まるため、上記式(1)で発生した熱を十分に吸熱しきれないおそれがある。水酸化アルミニウム粒子の含有量が上記上限を超える場合、現像剤の帯電性能が悪化し、延いてはカブリが発生しやすくなるおそれがある。
【0049】
2.現像剤が含むトナー
本実施形態に係る電子写真用現像剤が含むトナーとしては、トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーを使用できる。さらに必要に応じて、本開示に係る効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。トナー粒子の1次粒子の体積平均粒子径は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5μm以上8μm以下が挙げられる。本実施形態においてトナー粒子は、結着樹脂と、着色剤、離型剤等の内添剤とを含み、内添剤は結着樹脂中に分散している。
【0050】
<結着樹脂>
本実施形態に係るトナー粒子に含まれる結着樹脂としては、特に限定されないが、ポリエステル樹脂を好適に用いることができる。
【0051】
結着樹脂に用いられるポリエステル樹脂は、通常、2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分から選ばれる1種以上と、2価のカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸から選ばれる1種以上とを、公知の方法により、エステル化反応又はエステル交換反応を介して重縮合反応させることにより得られる。
【0052】
縮重合反応における条件は、モノマー成分の反応性により適宜設定すればよく、また重合体が好適な物性になった時点で反応を終了させればよい。例えば、反応温度は170℃~250℃程度、反応圧力は5mmHg~常圧程度である。
【0053】
2価のアルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA;ビスフェノールAのプロピレン付加物;ビスフェノールAのエチレン付加物;水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0054】
3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、スクロース(蔗糖)、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0055】
本実施形態に係るトナーにおいては、上記の2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
2価のカルボン酸として、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0057】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0058】
本実施形態に係るトナーにおいては、上記の2価のカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
結着樹脂は、ガラス転移温度が30℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移温度が上記下限未満であると、画像形成装置内部においてトナーが熱凝集するブロッキングを発生しやすくなり、保存安定性が低下するおそれがある。結着樹脂のガラス転移温度が上記上限を超えると、記録媒体へのトナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
【0060】
また、結着樹脂は、軟化温度が80℃以上150℃以下であることが好ましい。さらに、結着樹脂は、酸価が0KOHmg/g以上30KOHmg/g以下であることが好ましい。
【0061】
トナー粒子中の結着樹脂の含有量は、60質量%以上98質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
<着色剤>
本実施形態に係るトナーにおいて、トナー粒子は着色剤を含み得る。着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系・無機系の様々な種類・色の顔料及び染料を使用でき、例えば、黒色、白色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色の着色剤が挙げられる。
【0063】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト、マグネタイト等が挙げられる。
【0064】
白色の着色剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等が挙げられる。
【0065】
黄色の着色剤としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0066】
橙色の着色剤としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43等が挙げられる。
【0067】
赤色の着色剤としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0068】
紫色の着色剤としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。
【0069】
青色の着色剤としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60等が挙げられる。
【0070】
緑色の着色剤としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0071】
本実施形態に係るトナーにおいては、上記の着色剤の1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、組み合わせは異色であっても同色であってもよい。トナー粒子中の着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。
【0072】
<離型剤>
本実施形態に係るトナー粒子は離型剤を含み得る。離型剤としては、電子写真分野で常用されるワックスを使用することができる。例えば、パラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体等の石油系ワックス;フィッシャー・トロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体、ポリプロピレンワックス及びその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックス等)及びその誘導体等の炭化水素系合成ワックス;カルナウバワックス及びその誘導体、ライスワックス及びその誘導体、キャンデリラワックス及びその誘導体、木蝋等の植物系ワックス;蜜蝋、鯨蝋等の動物系ワックス;脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステル及びその誘導体等の油脂系合成ワックス;シリコーン系重合体、高級脂肪酸等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物等が含まれる。
【0073】
本実施形態に係るトナー粒子中の離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0074】
<その他の内添剤>
本実施形態に係るトナーにおいては、必要に応じて、上記以外の内添剤を含有していてもよい。上記以外の内添剤としては、例えば、帯電制御剤が挙げられる。帯電制御剤は、トナーに好ましい帯電性を付与するために添加される。帯電制御剤としては、特に限定されず、電子写真分野で用いられる正電荷制御用及び負電荷制御用の帯電制御剤を使用できる。
【0075】
<外添剤>
本実施形態に係るトナーは、上記したトナー粒子の表面に外添剤が付着していてもよい。外添剤が担う機能としては、トナーの粉体流動性、摩擦帯電性、耐熱保存性、クリーニング特性を高める機能、感光体表面の摩耗特性を制御する機能等が挙げられる。
【0076】
外添剤としては、例えば、平均粒子径が7nm以上200nm以下のシリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子を使用することができる。それらの無機微粒子の表面に、シランカップリング剤、チタンカップリング剤又はシリコーンオイルで表面処理を施すことで疎水性を付与した無機微粒子が、高湿下において電気抵抗や帯電量の低下が少なくなるためより好適である。
【0077】
外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.2質量部以上3質量部以下であることが好ましい。外添剤の含有量が上記下限未満の場合、流動性が向上する効果を付与することが難しくなる。外添剤の含有量が上記上限を超える場合、定着性が低下するおそれがある。
【0078】
トナー粒子に対する外添剤の添加方法としては、トナー粒子と外添剤とをヘンシェルミキサー等の気流混合機で混合する方法が挙げられる。
【0079】
本実施形態に係る電子写真用現像剤にあっては、上述したように、酸化カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子及び未処理シリカ粒子で構成される複合粒子が、トナー粒子表面に付着していることが好ましい。そのため、外添剤がこの複合粒子を含むことが好ましい。
【0080】
3.現像剤が含むキャリア
キャリアは、現像槽内でトナーと撹拌混合され、トナーに所望の電荷を与える。また、キャリアは、現像装置と感光体との間で電極として働き、電荷を帯びたトナーを感光体上の静電潜像に運び、トナー像を形成させる役割を果たす。キャリアは、磁気力により現像装置の現像ローラ上に保持され、現像に作用した後、再び現像槽に戻り、新たなトナーと再び撹拌混合されて寿命まで繰り返し使用される。
【0081】
キャリアとしては、電子写真分野で用いられるものであれば特に限定されないが、本実施形態に係る電子写真用現像剤は鉄粉キャリアを用いた場合に顕著である課題を解決するものであるため、鉄粉キャリアであることが好ましい。
【0082】
鉄粉キャリアは通常使用されるフェライトキャリアと比較して抵抗が非常に低い。そのため、トナーとの電荷の授受がより早くなり、帯電の立ち上がりが早く高湿環境下でも帯電性に優れるとともに、低湿環境下でのリークポイントともなるため、環境の変化にかかわらず安定した帯電性を発揮できる二成分現像剤を実現できる。キャリアの平均粒子径は特に限定されないが、例えば、30μm以上100μm以下が挙げられる。
【0083】
4.画像形成装置
現像剤中の酸化カルシウム粒子、及び水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した未処理シリカ粒子は、印刷を繰り返すうちにトナーと一緒に紙等の記録媒体に定着されたり、印刷されずに廃トナーと一緒に回収されたりして徐々に消費されていく。そのため、本実施形態に係る電子写真用現像剤を用いる画像形成装置にあっては、酸化カルシウム粒子と、水酸化アルミニウム粒子が表面に付着した未処理シリカ粒子とを、現像剤に補充する機構を備えることが好ましい。これにより、高温高湿環境下でも本開示に係る効果を継続的に安定して発揮することができる。
【実施例0084】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本開示の電子写真用現像剤を具体的に説明する。まず、各種測定方法及び評価方法について説明する。
【0085】
<測定方法及びその測定結果の判定方法>
-トナー濃度変化量に対する現像剤嵩密度変化量の比率(傾き)の測定及び判定-
実施例及び比較例で作製した現像剤において、ATCセンサーによるトナー濃度の誤計測(読み取りミス)がどの程度発生しにくいものであるかを評価するため、以下の手順(1)~(4)に沿った測定・判定を行った。
【0086】
(1)実施例及び比較例で作製した現像剤を、蓋で密閉できるプラスティックボトルに入れて、卓上ボールミルで10分間混合した。
(2)上記(1)で混合後の現像剤の嵩密度を、JIS規格に則り測定した。
(3)現像剤中のトナー濃度だけを増減させて、横軸にトナー濃度(T/D)、縦軸に上記(2)で測定した現像剤の嵩密度(AD)をプロットしたグラフ(T/Dvs.AD)を作成し、1次近似直線を引いた。
(4)上記(1)~(3)の手順で、常温常圧環境下(温度25℃、相対湿度50%)及び高温高湿環境下(温度30℃、相対湿度90%)でのグラフを作成し1次近似直線を引くことで、常温常圧環境下で得られた1次近似直線の傾きをN、高温高湿環境下で得られた1次近似直線の傾きをHとして、H/Nの値を百分率で算出した。この値に基づいて、ATCセンサーによるトナー濃度の誤計測の起こりにくさを判定した。その判定基準は下記のとおりである。
【0087】
◎(優秀):H/Nが90%以上である。
○(良好):H/Nが80%以上90%未満である。
△(可) :H/Nが75%以上80%未満である。
×(不可):H/Nが75%未満である。
【0088】
このような判定基準となる理由は、上記(3)で得られる1次近似直線の傾きの環境差が小さい(H/Nが大きい)ものほど、現像剤中のトナー濃度増加に応じて現像剤の嵩密度が増加する(トナー濃度変化に対する嵩密度変化の応答性がよい)ことから、ATCセンサーによるトナー濃度の誤計測が減るためである。ATCセンサーの誤計測が減ると、高温高湿環境下にてトナーが過剰供給されるのが抑制され、その結果、カブリ及びトナー飛散の発生が抑制される。
【0089】
反対に、上記(3)で得られる1次近似直線の傾きの環境差が大きい(H/Nが小さい)と、現像剤中のトナー濃度が増加しても現像剤の嵩密度の変化が少ない(トナー濃度変化に対する嵩密度変化の応答性が悪い)ことから、ATCセンサーによるトナー濃度の誤計測が増え、その結果、カブリ及びトナー飛散が発生しやすくなる。これは、十分なトナー濃度であるにもかかわらず現像剤の嵩密度が増加しないため、トナー濃度が実際よりも低いとATCセンサーが読み取りミスをして、トナーを過剰に供給してしまうためである。
【0090】
-現像剤の温度上昇幅の測定及び判定-
上記(1)の卓上ボールミルでの混合(撹拌)前後で、現像剤に直接、接触温度計を挿すことで、現像剤の温度上昇幅を測定した。この温度上昇幅に基づいて、ATCセンサーによるトナー濃度の誤計測の起こりにくさを判定した。その判定基準は下記のとおりである。
【0091】
◎(優秀):温度上昇幅が0.5℃以下である。
○(良好):温度上昇幅が0.5℃超1.0℃以下である。
△(可) :温度上昇幅が1.0℃超2.0℃以下である。
×(不可):温度上昇幅が2.0℃超である。
【0092】
このような判定基準となる理由は、酸化カルシウムで吸湿して発生する熱を効率よく水酸化アルミニウムで吸熱できていれば、現像剤全体での発熱は抑制され、その結果、現像剤中のトナー濃度変化に対する現像剤の嵩密度変化の応答性を良好に保つことができるためである。
【0093】
<評価方法>
-カブリの評価-
実施例及び比較例で作製した現像剤を評価機(商品名:BP-30M28、シャープ株式会社製)に充填して、高温高湿環境下(温度30℃、相対湿度85%)において、A4用紙の印刷可能面積に対し10%の領域を塗りつぶす画像を印刷した。測色色差計(型式:ZE6000、日本電色工業株式会社製)を用いて、塗りつぶされていない特定の場所の明度を測定した。この明度(印刷後の明度)と、予め測定しておいた印刷前の明度との差をカブリ値(測定値)とし、下記の基準でカブリを評価した。
【0094】
◎(優秀):カブリ値の規定値に対して測定値が80%以下である。
○(良好):カブリ値の規定値に対して測定値が80%超90%以下である。
△(可) :カブリ値の規定値に対して測定値が90%超100%以下である。
×(不可):カブリ値の規定値に対して測定値が100%超である。
【0095】
-トナー飛散の評価-
上記「カブリの評価」と同条件(高温高湿環境下)で2,000枚印刷を行った後、現像槽を取り出しトナーの飛散状態を目視で確認した。常温常圧環境下(温度25℃、相対湿度50%)でも同様に印刷を行った後、現像槽を取り出しトナーの飛び散り具合を目視で確認した。常温常圧環境下でのトナーの飛散状態を基準として、高温高湿環境下でのトナーの飛散状態を、以下の基準で評価した。
【0096】
◎(優秀):基準と同等レベルであり、遜色がない。
○(良好):基準より若干トナーが飛散しているが、問題ないレベルである。
△(可) :基準よりトナーが飛散しており、許容できる限界に近いレベルである。
×(不可):トナーの飛散が現像槽以外にも散見され、許容できないレベルである。
【0097】
-総合評価-
上記の2項目(カブリ、トナー飛散)の評価結果を用いて、次の基準で総合評価を行った。
【0098】
◎(優秀):2項目がともに○以上であり、◎が1つ以上ある。
○(良好):2項目の組み合わせが「○,○」「○,△」又は「◎,△」である。
△(可) :2項目がともに△である。
×(不可):2項目の少なくとも一方が×である。
【0099】
<現像剤の製造例>
[実施例1]
-トナーの作製工程-
トナー粒子の作製には、以下の原料を用いた。
・ポリエステル樹脂(ガラス転移温度52℃、軟化温度105℃) 100質量部
・カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名:MA-100) 10質量部
・帯電制御剤(保土谷化学工業株式会社製、商品名:TRH) 2質量部
・カルナバワックス(東和化成株式会社製、商品名:TOWAX-131) 4質量部
【0100】
上記の原料をヘンシェルミキサー(商品名:FM20C、日本コークス工業株式会社製)にて3分間混合分散した後、二軸押出機(商品名:PCM-30、株式会社池貝製)を用いて溶融混練分散した。二軸押出機の運転条件は、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数300rpm、原料供給速度20kg/時間とした。得られたトナー混練物を冷却ベルトにて冷却後、φ2mmのスクリーンを有するスピードミルにて粗粉砕した。この粗粉砕物をジェット式粉砕機(商品名:IDS-2、日本ニューマチック工業株式会社製)にて微粉砕し、さらにエルボージェット分級機(商品名、日鉄鉱業株式会社製)にて分級し、トナー粒子(体積平均粒子径6.4μm、変動係数21%)を得た。
【0101】
上記で得られた未外添のトナー粒子100質量部と、外添剤としての1次粒子径(1次粒子の平均粒子径)が100nmの疎水性シリカ粒子(商品名:KE-P10、株式会社日本触媒製)1.0質量部、及び1次粒子径が7nmの疎水性シリカ粒子(商品名:フェームドシリカR976S、日本アエロジル株式会社製)1.5質量部とをヘンシェルミキサー(商品名:FM20C、日本コークス工業株式会社製)に投入し、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定して1分間撹拌混合し、外添トナー1(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23%)を得た。
【0102】
-吸熱シリカ粒子1の作製工程-
1次粒子径が50nmのシリカ粒子(疎水化処理されていないシリカ粒子)1,000gに対して、1次粒子径が10nmの水酸化アルミニウム粒子400gを加えて、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定したヘンシェルミキサー(商品名:FM20C、日本コークス工業株式会社製)で1分間撹拌混合し、吸熱シリカ粒子1を得た。
【0103】
-吸湿酸化カルシウム粒子5の作製工程-
I型(衝突板型)粉砕機で酸化カルシウムを1次粒子径5μmに調整したものを、吸湿酸化カルシウム粒子5とした。
【0104】
-現像剤の作製工程-
1次粒子径が60μmの「鉄粉キャリア1」9,500gに対して、「外添トナー1」500gと「吸湿酸化カルシウム粒子5」50gと「吸熱シリカ粒子1」10gとを、V型混合機に投入して40分間撹拌混合することで、吸湿・吸熱効果のある現像剤1を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿酸化カルシウム粒子5 50g
吸熱シリカ粒子1 10g
【0105】
[実施例2]
-吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5の作製工程-
「吸湿酸化カルシウム粒子5」5,000gと「吸熱シリカ粒子1」1,000gとを、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定したヘンシェルミキサー(商品名:FM20C、日本コークス工業株式会社製)で1分間撹拌混合し、吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5を得た。
【0106】
-現像剤の作製工程-
実施例1でV型混合機に投入した「吸湿酸化カルシウム粒子5」50g及び「吸熱シリカ粒子1」10gを、「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5」60gに変更した以外は、実施例1と同様にして吸湿・吸熱効果のある現像剤2を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5 60g
【0107】
[実施例3]
-吸湿酸化カルシウム粒子1の作製工程-
I型(衝突板型)粉砕機で酸化カルシウムを1次粒子径1μmに調整したものを、吸湿酸化カルシウム粒子1とした。
【0108】
-吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子1の作製工程-
「吸湿酸化カルシウム粒子1」5,000gと「吸熱シリカ粒子1」1,000gとを、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定したヘンシェルミキサー(商品名:FM20C、日本コークス工業株式会社製)で1分間撹拌混合し、吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子1を得た。
【0109】
-現像剤の作製工程-
実施例2でV型混合機に投入した「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5」を「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子1」に変更した以外は、実施例2と同様にして吸湿・吸熱効果のある現像剤3を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子1 60g
【0110】
[実施例4]
-吸湿酸化カルシウム粒子2の作製工程-
I型(衝突板型)粉砕機で酸化カルシウムを1次粒子径2μmに調整したものを、吸湿酸化カルシウム粒子2とした。
【0111】
-吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子2の作製工程-
「吸湿酸化カルシウム粒子2」5,000gと「吸熱シリカ粒子1」1,000gとを、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定したヘンシェルミキサー(商品名:FM20C、日本コークス工業株式会社製)で1分間撹拌混合し、吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子2を得た。
【0112】
-現像剤の作製工程-
実施例2でV型混合機に投入した「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5」を「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子2」に変更した以外は、実施例2と同様にして吸湿・吸熱効果のある現像剤4を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子2 60g
【0113】
[実施例5]
-吸湿酸化カルシウム粒子7の作製工程-
I型(衝突板型)粉砕機で酸化カルシウムを1次粒子径7μmに調整したものを、吸湿酸化カルシウム粒子7とした。
【0114】
-吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子7の作製工程-
「吸湿酸化カルシウム粒子7」5,000gと「吸熱シリカ粒子1」1,000gとを、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定したヘンシェルミキサー(商品名:FM20C、日本コークス工業株式会社製)で1分間撹拌混合し、吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子7を得た。
【0115】
-現像剤の作製工程-
実施例2でV型混合機に投入した「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5」を「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子7」に変更した以外は、実施例2と同様にして吸湿・吸熱効果のある現像剤5を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子7 60g
【0116】
[実施例6]
-吸湿酸化カルシウム粒子9の作製工程-
I型(衝突板型)粉砕機で酸化カルシウムを1次粒子径9μmに調整したものを、吸湿酸化カルシウム粒子9とした。
【0117】
-吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子9の作製工程-
「吸湿酸化カルシウム粒子9」5,000gと「吸熱シリカ粒子1」1,000gとを、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定したヘンシェルミキサー(商品名:FM20C、日本コークス工業株式会社製)で1分間撹拌混合し、吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子9を得た。
【0118】
-現像剤の作製工程-
実施例2でV型混合機に投入した「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5」を「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子9」に変更した以外は、実施例2と同様にして吸湿・吸熱効果のある現像剤6を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子9 60g
【0119】
[実施例7]
「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5」の添加量を24gに変更した以外は実施例2と同様にして、吸湿・吸熱効果のある現像剤7を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5 24g
【0120】
[実施例8]
「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5」の添加量を36gに変更した以外は実施例2と同様にして、吸湿・吸熱効果のある現像剤8を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5 36g
【0121】
[実施例9]
「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5」の添加量を108gに変更した以外は実施例2と同様にして、吸湿・吸熱効果のある現像剤9を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5 108g
【0122】
[実施例10]
「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5」の添加量を144gに変更した以外は実施例2と同様にして、吸湿・吸熱効果のある現像剤10を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5 144g
【0123】
[実施例11]
実施例3の「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子1」60gのうち、14.4gをトナー粒子に外添(実施例1のトナーの作製工程にて示した外添剤に追加)して、残りの45.6gを実施例3と同様に、V型混合機でその他の材料と撹拌混合することで、吸湿・吸熱効果のある現像剤11を得た。
【0124】
[実施例12]
「現像剤の作製工程」において用いる鉄粉キャリアを、1次粒子径が40μmの「鉄粉キャリア2」に変更した以外は実施例1と同様にして、吸湿・吸熱効果のある現像剤12を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア2 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿酸化カルシウム粒子5 50g
吸熱シリカ粒子1 10g
【0125】
[実施例13]
「現像剤の作製工程」において用いる鉄粉キャリアを、1次粒子径が80μmの「鉄粉キャリア3」に変更した以外は実施例1と同様にして、吸湿・吸熱効果のある現像剤13を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア3 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿酸化カルシウム粒子5 50g
吸熱シリカ粒子1 10g
【0126】
[実施例14]
「吸熱シリカ粒子1」の添加量を7.5gに変更した以外は実施例1と同様にして、吸湿・吸熱効果のある現像剤14を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿酸化カルシウム粒子5 50g
吸熱シリカ粒子1 7.5g
【0127】
[実施例15]
「吸熱シリカ粒子1」の添加量を12.5gに変更した以外は実施例1と同様にして、吸湿・吸熱効果のある現像剤15を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿酸化カルシウム粒子5 50g
吸熱シリカ粒子1 12.5g
【0128】
[実施例16]
-吸熱シリカ粒子2の作製工程-
1次粒子径が50nmのシリカ粒子(疎水化処理されていないシリカ粒子)1,000gに対して、1次粒子径が10nmの水酸化アルミニウム粒子350gを加えて、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定したヘンシェルミキサー(商品名:FM20C、日本コークス工業株式会社製)で1分間撹拌混合し、吸熱シリカ粒子2を得た。
【0129】
-現像剤の作製工程-
1次粒子径が60μmの「鉄粉キャリア1」9,500gに対して、「外添トナー1」500gと「吸湿酸化カルシウム粒子5」50gと「吸熱シリカ粒子2」10gとを、V型混合機に投入して40分間撹拌混合することで、吸湿・吸熱効果のある現像剤16を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿酸化カルシウム粒子5 50g
吸熱シリカ粒子2 10g
【0130】
[実施例17]
-吸熱シリカ粒子3の作製工程-
1次粒子径が50nmのシリカ粒子(疎水化処理されていないシリカ粒子)1,000gに対して、1次粒子径が10nmの水酸化アルミニウム粒子450gを加えて、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定したヘンシェルミキサー(商品名:FM20C、日本コークス工業株式会社製)で1分間撹拌混合し、吸熱シリカ粒子3を得た。
【0131】
-現像剤の作製工程-
1次粒子径が60μmの「鉄粉キャリア1」9,500gに対して、「外添トナー1」500gと「吸湿酸化カルシウム粒子5」50gと「吸熱シリカ粒子3」10gとを、V型混合機に投入して40分間撹拌混合することで、吸湿・吸熱効果のある現像剤17を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿酸化カルシウム粒子5 50g
吸熱シリカ粒子3 10g
【0132】
[比較例1]
現像剤の作製工程にて、鉄粉キャリア1及び外添トナー1のみを撹拌混合するように変更した以外は実施例1と同様にして、現像剤R1を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
【0133】
[比較例2]
現像剤の作製工程にて、吸湿酸化カルシウム粒子5を添加しない以外は実施例1と同様にして、現像剤R2を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸熱シリカ粒子1 10g
【0134】
[比較例3]
現像剤の作製工程にて、吸熱シリカ粒子1を添加しない以外は実施例1と同様にして、現像剤R3を得た。この材料を一覧にすると下記のとおりである。
鉄粉キャリア1 9,500g
外添トナー1 500g
吸湿酸化カルシウム粒子5 50g
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
表1は、実施例及び比較例にて用いた材料の種類、物性及び含有率(質量比率)を示したものであり、表2は、実施例及び比較例で得た現像剤の評価結果を示したものである。なお、表1中の「PES」はポリエステル樹脂を意味する。
【0138】
表2によれば、トナー粒子を有する電子写真用現像剤であって、酸化カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子及び疎水化処理されていないシリカ粒子を含み、前記水酸化アルミニウム粒子は物理吸着又は水素結合によって前記シリカ粒子の表面に付着している実施例1~17の現像剤1~17は、ATCセンサーが現像剤中のトナー濃度を誤計測するのを抑制でき、延いてはカブリ及びトナー飛散の発生を抑制できるものであった。
【0139】
これに対して、これらの要件を満たさない比較例1~3は、ATCセンサーの誤計測に関する測定結果、並びにカブリ及びトナー飛散の評価結果が実施例に対して劣っていた。
【0140】
実施例のなかでも優れた評価結果である実施例1,2に関して説明すると、実施例1では、高温高湿環境下でもトナー濃度変化に対する嵩密度変化の応答性がよく、現像剤の温度上昇幅も小さいので、高温高湿環境下でもカブリ及びトナー飛散の発生が少ない良好な評価結果が得られた。
【0141】
実施例2では、吸熱シリカ粒子1が吸湿酸化カルシウム粒子5の表面に付着したものである「吸湿・吸熱酸化カルシウム粒子5」を用いていることで、酸化カルシウム粒子が吸湿して発熱した熱を水酸化アルミニウム粒子が効率よく吸熱し、この吸熱で発生した水分を疎水化処理されていないシリカ粒子が効率よく吸水することができる。そのため、実施例1よりも、高温高湿環境下でのトナー濃度変化に対する嵩密度変化の応答性がよく、現像剤の温度上昇幅も小さいので、高温高湿環境下でもカブリ及びトナー飛散の発生が少ない最良な評価結果が得られた。換言すると、「水酸化アルミニウム粒子が表面に付着したシリカ粒子」を「酸化カルシウム粒子」に予め外添した実施例2は、外添していない実施例1よりも、ATCセンサーが現像剤中のトナー濃度を誤計測するのを抑制でき、延いてはカブリ及びトナー飛散の発生を抑制できるものであった。
【0142】
酸化カルシウム粒子の平均粒子径が2μm以上7μm以下である実施例4,5は、平均粒子径が上記範囲外である実施例3,6よりも、ATCセンサーの誤計測に関する測定結果及びトナー飛散の評価結果に優れることがわかる。
【0143】
具体的には、酸化カルシウム粒子の平均粒子径が2μmである実施例4は、実施例3,6よりも、現像剤の温度上昇幅の判定及びトナー飛散の評価結果に優れることがわかる。また、酸化カルシウム粒子の平均粒子径が7μmである実施例5は、実施例3,6よりも、トナー濃度変化に対する嵩密度変化の応答性の判定及びトナー飛散の評価結果に優れることがわかる。
【0144】
酸化カルシウム粒子の含有量が0.30質量%以上1質量%以下である実施例8,9は、含有量が上記範囲外である実施例7,10よりも、ATCセンサーの誤計測に関する測定結果及びトナー飛散の評価結果に優れることがわかる。
【0145】
また、疎水化処理されていないシリカ粒子の含有量が0.05質量%以上0.20質量%以下である実施例8,9は、含有量が上記範囲外である実施例7,10よりも、ATCセンサーの誤計測に関する測定結果及びトナー飛散の評価結果に優れることがわかる。
【0146】
また、水酸化アルミニウム粒子の含有量が0.02質量%以上0.08質量%以下である実施例8,9は、含有量が上記範囲外である実施例7,10よりも、ATCセンサーの誤計測に関する測定結果及びトナー飛散の評価結果に優れることがわかる。
【0147】
具体的には、実施例8は、実施例9,10よりも、現像剤の温度上昇幅の判定及びトナー飛散の評価結果に優れることがわかる。また、実施例11は、実施例9,10よりも、トナー濃度変化に対する嵩密度変化の応答性の判定及びトナー飛散の評価結果に優れることがわかる。
【0148】
実施例3の酸化カルシウム粒子(「水酸化アルミニウム粒子が表面に付着したシリカ粒子」が表面に付着した酸化カルシウム粒子)の一部を、トナー粒子に外添した例である実施例11は、実施例3よりも、ATCセンサーの誤計測に関する測定結果及びトナー飛散の評価結果に優れることがわかる。
【0149】
キャリアの1次粒子径を40μm及び80μmに変更した実施例12,13においても、ATCセンサーが現像剤中のトナー濃度を誤計測するのを抑制でき、カブリ及びトナー飛散の発生を抑制できていることがわかる。
【0150】
未処理シリカ粒子の含有量が、酸化カルシウム粒子100質量部に対して18質量部以上22質量部以下である実施例1は、含有量が下限未満である実施例14よりもATCセンサーの誤計測に関する測定の判定結果に優れることがわかる。また、含有量が上限を超える実施例15よりもカブリの評価結果に優れることがわかる。
【0151】
未処理シリカ粒子に対する水酸化アルミニウム粒子の含有割合を変更した実施例16,17によれば、未処理シリカ粒子100質量部に対する水酸化アルミニウム粒子の含有量が20質量部以上45質量部以下である実施例16,17は、ATCセンサーの誤計測に関する測定の判定結果、並びにカブリ及びトナー飛散の評価結果に優れることがわかる。
【0152】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0153】
1 酸化カルシウム粒子
2 水酸化アルミニウム粒子
3 疎水化処理されていないシリカ粒子
C 現像槽(現像剤容器)
D 電子写真用現像剤
S ATCセンサー
図1
図2
図3