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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007652
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】クッション
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20250109BHJP
   A47C 27/16 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A47C27/15 A
A47C27/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109191
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】503285852
【氏名又は名称】やまと産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 裕司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩
(72)【発明者】
【氏名】谷 泰孝
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB02
3B096AB11
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】所望の機能(例えばマットレスの場合では、床ずれ(褥瘡)の抑制、体位変換や起き上がりなどの容易性など)を発揮させることができると共に、輸送や保管における省スペース化も図かることができるクッションを提供する。
【解決手段】クッション(マットレスM1)は、平板状で可撓性を有する基体1と、平板状で上下方向の厚さが2mm以上8mm以下で、密度が前記基体1より高く、可撓性を有する高密度部材2a,2bとを有し、前記基体1の上面の長手方向略中央部で短手方向両端部に前記高密度部材2a,2bが積層されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状で可撓性を有する基体と、
平板状で上下方向の厚さが2mm以上8mm以下で、密度が前記基体より高く、可撓性を有する高密度部材とを有し、
前記基体の上下方向一方面側または両方面側の少なくとも一部に前記高密度部材が積層されていることを特徴とするクッション。
【請求項2】
前記高密度部材の密度が100kg/m以上500kg/m以下の範囲である請求項1記載のクッション。
【請求項3】
前記基体が発泡ポリエチレン及び/又は発泡ポリウレタンからなる請求項1又は2記載のクッション。
【請求項4】
前記高密度部材が発泡ポリエチレン及び/又は発泡ポリウレタンを圧縮加熱して塑性変形させたものである請求項1又は2記載のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クッションの一つであるマットレスに求められる機能としては、例えば、介護用のマットレスの場合には、床ずれ(褥瘡)の抑制、体位変換や起き上がりなどの容易性などがある。
【0003】
一つのマットレスでこのような複数の機能を発揮させようとこれまで種々の提案がなされている。例えば特許文献1では、上層、中層、下層の三層からなるマットレスにおいて、下層を複数の構成体で構成し、使用者の体格及び腰痛の有無により身体の各部位に対応する構成体の硬度・クッション性を調整可能とする技術が提案されている。また特許文献2では、面剛性の異なる複数のクッション材を積層して充填材とし、体圧分散性を高めて床ずれの抑制や起き上がり性の向上を図る技術が提案されている。
【0004】
また本出願人も、特性の異なる2以上の層が積層されてなり、各層の積層順が組み替え可能な構成を有し、最小限の品数で被介護者の様々な要求に対応可能なマットレスを提案した(特許文献3)。そしてまた、本出願人は、マットレスの所定位置に配置することによってマットレスに所望の機能を付加できる、所定の厚みと圧縮硬さとを有する介護用補助クッションも提案した(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-319059号公報
【特許文献2】特開2001-292870号公報
【特許文献3】実用新案登録第3217938号
【特許文献4】実用新案登録第3220661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、物流業界では、トラックドライバーの労働環境を改善するために、時間外労働の上限規制が予定されている。またドライバー不足も相俟って輸送量の減少が懸念されている。輸送能力の減少に対応するには物流の効率化が欠かせない。
【0007】
クッション、特にマットレスなどの大型のクッションについても、輸送や保管における省スペース化は今後の重要な課題である。
【0008】
そこで本発明の目的は、床ずれ(褥瘡)の抑制、体位変換や起き上がりなどの容易性などの所望の機能を発揮できると共に、輸送や保管における省スペース化も図れるクッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成する本発明に係るクッションは、板状で可撓性を有する基体と、平板状で上下方向の厚さが2mm以上8mm以下で、密度が前記基体より高く、可撓性を有する高密度部材とを有し、前記基体の上下方向一方面側または両方面側の少なくとも一部に前記高密度部材が積層されていることを特徴とする。
【0010】
前記構成のクッションにおいて、前記高密度部材の密度が100kg/m以上500kg/m以下の範囲であるのが好ましい。
【0011】
前記構成のクッションにおいて、前記基体が発泡ポリエチレン及び/又は発泡ポリウレタンからなるものであってもよい。
【0012】
前記構成のクッションにおいて、前記高密度部材が発泡ポリエチレン及び/又は発泡ポリウレタンを圧縮加熱して塑性変形させたものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクッションによれば、所望の機能(例えばマットレスの場合では、床ずれ(褥瘡)の抑制、体位変換や起き上がりなどの容易性など)を発揮させることができると共に、輸送や保管における省スペース化を図かることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るマットレス(クッション)の一実施形態を示す分解斜視図である。
図2図1のマットレスの平面図である。
図3図1のマットレスの組み立て工程図である。
図4図1のマットレスの使用状態を示す斜視図である。
図5図1のマットレスを圧縮・梱包する説明図である。
図6図1のマットレスを圧縮・梱包する説明図である。
図7】本発明に係るマットレス(クッション)の他の実施形態を示す分解斜視図である。
図8図7のマットレスの平面図である。
図9図7のマットレスの使用状態を示す斜視図である。
図10】本発明に係る枕(クッション)の一実施形態を示す分解斜視図である。
図11図10の枕の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るクッションについて図に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。また、本明細書における「長手方向」、「短手方向」、「上下方向」は、各図に示す長手方向、短手方向、上下方向を意味するものとする。また、本明細書において示す「~」は、特に断りのない限り、その前後に記載の数値を下限値及び上限値として含むものとする。
【0016】
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態に係るマットレス(クッション)M1の分解斜視図を示す。図1に示すマットレスM1は、平面視において長方形の平板状の基体1と、基体1の上面の長手方向略中央部で短手方向両端部に設置された平板状の一対の高密度部材2a,2bと、一対の高密度部材2a,2bを挟むように基体1の上面に配置される、上面にプロファイル加工がなされた、平面視において基体1と同じ長方形で平板状の第1積層部材3とを備える。
【0017】
(基体1)
基体1は、平面視において長方形の平板形状を有する。基体1の材質としては可撓性を有するもの、すなわちロール状に丸められるものであれば特に限定はない。例えば、発泡ポリエチレンや発泡ポリウレタンなどが体圧分散性等の点から好適に使用できる。
【0018】
基体1の密度に特に限定はないが、体圧分散性などの観点からは10kg/m~40kg/mの範囲が好ましい。なお、基体1、高密度部材2a,2bおよび第1積層部材3の密度はJIS K7222に準じて測定した値である。
【0019】
基体1の大きさに関して、その厚みは特に限定はないが、通常、50mm以上100mm以下の範囲が好ましい。またマットレスM1がシングルサイズの場合、基体1の長手方向長さは、通常、1900mm~2100mmの範囲、短手方向長さは900mm~1100mmの範囲である。
【0020】
(高密度部材2a,2b)
高密度部材2a,2bは長方形の平板形状を有する。本発明で使用する高密度部材2a,2bは可撓性と基体1よりも高い密度とを有することが重要である。高密度部材2a,2bが可撓性を有することで、マットレスM1がロール状に丸められ輸送・保管された際に、高密度部材2a,2bに亀裂が生じたり基体1との接着が外れるといった不具合が抑制される。また、高密度部材2a,2bが基体1よりも高い密度を有することで、図1および図2に示す位置に高密度部材2a,2bを配置した場合、仰臥姿勢から座位姿勢への体位変換や座位姿勢の保持が容易となる(図4を参照)。
【0021】
このような高密度部材2a,2bは、例えば、ブロック形状の発泡ポリエチレンや発泡ポリウレタンを圧縮・加熱して所定の厚みに塑性変形させることによって得ることができる。例えば、圧縮成形機の上盤と下盤との間にブロック形状の発泡体を設置した後、上下方向に所定の圧力で圧縮・加熱することで高密度部材2a,2bを作製することができる。高密度部材2a,2bの密度は、発泡体の圧縮率(厚み変化率)によって調整することができ、発泡体の圧縮率は圧縮成形機の上盤と下盤との間に配置するスペーサーによって調整できる。高密度部材2a,2bの密度は、基体1の密度よりも高い限りにおいて特に限定はないが、通常、100kg/m~500kg/mの範囲が好ましい。高密度部材2a,2bの密度がこの範囲であることで、マットレスM1がロール状に丸められ輸送・保管された際に高密度部材2a,2bの亀裂の発生が抑制される。
【0022】
高密度部材2a,2bの厚さは2mm~8mmの範囲である。高密度部材2a,2bの厚さがこの範囲であることによって、高密度部材2a,2bが基体1上に設置されたときに生じる段差が顕著なものとならず、またマットレスM1がロール状に丸められ輸送・保管された際に、高密度部材2a,2bに亀裂が生じたり基体1との接着が外れるといった不具合が抑制される。
【0023】
(第1積層部材3)
第1積層部材3は、平面視において基体1と同じ長方形で平板形状を有する。第1積層部材3の材質としては可撓性を有するものが好ましく、基体1と同様に、発泡ポリエチレンや発泡ポリウレタンなどが体圧分散性等の点から好適に使用できる。
【0024】
第1積層部材3の下面は、基体1および高密度部材2a,2bとの接着面を広くするために平面とされている。第1積層部材3の上面は、使用者への指圧性や通気性を向上させるためにプロファイル加工がなされている。勿論、第1積層部材3の上面は平面としてもよい。
【0025】
第1積層部材3の密度に特に限定はないが、体圧分散性の向上などの観点からは基体1よりも低くするのが好ましい。第1積層部材3の密度としては、通常、10kg/m~40kg/mの範囲が好ましい。
【0026】
(マットレスM1の作製)
図3に、マットレスM1の作製工程図を示す。図3(a)に示すように、まず、基体1の所望位置(本実施形態では長手方向略中央部の短手方向両端部)に、従来公知の接着部材91が塗布され、高密度部材2b(2a)が基体1の上面に取り付けられる。次いで、図3(b)に示すように、基体1の上面および高密度部材2b(2a)の上面に接着部材92が塗布される。そして、図3(c)に示すように、高密度部材2b(2a)を挟み込むように基体1の上面に第1積層部材3が取り付けられる。
なお、高密度部材2b(2a)の裏面に接着部材91を、第1積層部材3の裏面に接着部材92をそれぞれ塗布して高密度部材2b(2a)と第1積層部材3を基体1に積層しても勿論構わない。
【0027】
(使用例)
このような構成のマットレスM1によれば、図2に示すように、短手方向中央部の使用者が仰臥姿勢となる領域は、高密度部材2a,2bが配置されておらず、硬度の低い領域であるので、体圧分散性が高く褥瘡の抑制や寝返り容易性が発揮される。一方、マットレスM1の短手方向両端部の使用者が端座姿勢となる領域では、高密度部材2a,2bが配置されており、図4に示すように、使用者は端座姿勢を保持しやすくなる。
【0028】
(マットレスM1の圧縮梱包)
図5及び図6にマットレスM1の圧縮梱包例を示す。図5に示すように、まず、マットレスM1を内包可能な容積の樹脂フィルム製の袋51に挿入する。次に、不図示の圧縮機によって厚み方向からマットレスM1が挿入された袋51の上下面全体に圧力を加えてマットレスM1を厚み方向に圧縮する。そして圧縮した状態で袋51の開口部分を熱圧着などによって封止する。圧縮後のマットレスM1の厚みは、マットレスM1の圧縮解放後の復元力を考慮し適宜決定すればよいが、通常、数cm程度である。
【0029】
図6に示すように、圧縮されたマットレスM1が挿入された袋51はロール状に巻き取られて、包装袋6に挿入されて保管および輸送され得る。このような圧縮梱包によれば、マットレスM1の運送や保管などにおける省スペース化が図れる。なお、圧縮されたマットレスM1は平板状のまま積み重ねて保管してもよい。一方、マットレスM1を使用する際は袋51を開放すれば外部空気が袋51内に流入して、圧縮梱包されていたマットレスM1は元の厚みに戻る。
【0030】
(第2実施形態)
図7に第2実施形態に係るマットレスM2の分解斜視図、図8にマットレスM2の平面図、図9にマットレスM2の使用状態を示す斜視図を示す。なお、第2実施形態に係るマットレスM2と第1実施形態のマットレスM1とは、高密度部材の大きさと設置位置とが異なるだけでその他の基本構成は同じである。第1実施形態のマットレスM1と同一部材分には同一の符号を付し説明は省略することとする。また、マットレスM2でも第1積層部材3の表面はプロファイル加工されているが図7図9では省略している。
【0031】
図7及び図8に示すように、基体1の長手方向略中央部で短手方向略中央部に、平面形状が長方形の高密度部材4が取り付けられている。なお、高密度部材4の平面形状は長方形状に限定されるものではなく、マットレスM2上で仰臥姿勢の使用者の少なくとも腰・臀部に対向する領域をカバーする大きさであればよい。高密度部材4の平面形状は、使用者の腰・臀部に対向する領域をカバーする限りにおいて円形状や多角形状などあっても構わない。前述のように、マットレスM2の平面形状はシングルサイズの場合、長手方向長さは1900mm~2100mmの範囲、短手方向長さは900mm~1100mmの範囲であるから、高密度部材4の長手方向長さは400mm以上500mm以下の範囲が好ましく、短手方向長さは600mm以上800mm以下の範囲が好ましい。図8に示す本実施形態の高密度部材4では、長手方向長さは450mm、短手方向長さは700mm、上下方向厚みは4mmに設定されている。
【0032】
このような構造のマットレスM2によれば、例えば図9に示すような、使用者を上半身を起こした半座位姿勢としたとき、使用者の荷重が集中する仙骨周辺に高密度部材4が配置されていることで荷重分散が促進補助され褥瘡の発生が抑えられる。
【0033】
(第3実施形態)
図10に第3実施形態に係る枕(クッション)Pの分解斜視図、図11に枕Pの平面図を示す。図10に示す枕Pは、平面視において長方形の平板状の基体7と、基体7の上面の長手方向足側端で短手方向中央部に設置された平板状の高密度部材8aと、長手方向略中央部で短手方向両端部に設置された一対の高密度部材8b,8cと、高密度部材8a,8b,8cを挟むように基体7の上面に配置される、平面視において基体7と同じ長方形で平板状の第2積層部材9とを備える。
【0034】
基体7、高密度部材8a,8b,8cおよび第2積層部材9の材質および密度は、第1実施形態で例示した基体1、高密度部材2a,2bおよび第1積層部材3の材質および密度がここでも例示される。
【0035】
また、枕Pの作製は、第1実施形態で示したマットレスM1の作製例(図3)がここでも例示される。
【0036】
このような構造の枕Pによれば、図11に示すように、高密度部材8aによって使用者の頸椎が支持される。また使用者が横向きとなったときに、高密度部材8b,8cによって顔が支持されて過度の沈み込みが抑制され心地よい睡眠が得られる。
【0037】
(その他)
以上説明した実施形態に係るマットレスM1,M2および枕Pでは、基体、高密度部材、第1積層部材または第2積層部材が積層された3層構造であったが、本発明に係るクッションは基体と高密度部材とが積層された2層構造であってもよいし、4層以上の積層構造であってもよい。また、高密度部材は基体の下面に設けてもよいし、上面および下面に設けてもよい。ただし、高密度部材と基体との段差に使用者が違和感を覚えないように、第1積層部材や第2積層部材などの他の積層部材を高密度部材の外側に積層して高密度部材が上下方向最外層とならないようにするのが望ましい。
【0038】
本発明に係るクッションはマットレスや枕の外、座布団などとしても使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のクッションによれば、例えばマットレスの場合では、床ずれ(褥瘡)の抑制、体位変換や起き上がりなどの容易性などを発揮させることができると共に、輸送や保管における省スペース化を図かることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 基体
2a,2b 高密度部材
3 第1積層部材
4 高密度部材
7 基体
8a,8b,8c 高密度部材
9 第2積層部材
M1,M2 マットレス(クッション)
P 枕(クッション)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11