IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

特開2025-76785情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
<>
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図1
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図2
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図3
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図4
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図5
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図6
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図7
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図8
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図9
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図10
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図11
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図12
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025076785
(43)【公開日】2025-05-16
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20250509BHJP
   H02J 3/12 20060101ALI20250509BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20250509BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/12
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188644
(22)【出願日】2023-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 孝二郎
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA03
5G066AA03
5G066AA09
5G066DA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電力系統の状態を精度良く推定する情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、電力系統に含まれる負荷の有効電力の第1合計値及び無効電力の第2合計値を取得する第1取得部と、前記電力系統の送り出し点に対応する第1ノードN01、配電用変圧器の一次側の所定の点に対応する第2ノードN02、配電用変圧器の二次側の所定の点に対応する第3ノードN03、少なくとも電力系統に含まれる負荷を仮想的にまとめた第4ノードN04、第1、第2ノードを接続する第1ブランチB01、第2、第3ノードを接続する第2ブランチB02、第3、第4ノードを接続する第3ブランチB03を含むモデルを取得する第2取得部と、第4ノードの有効電力及び無効電力が夫々第1合計値及び第2合計値である場合の、配電用変圧器の一次側及び二次側の間の変圧比を変更可能なタップの位置及び第3ノードの電圧を計算する第1計算部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路電圧降下補償方式によって一次側及び二次側の間の変圧比をタップで変更可能な配電用変圧器と、前記配電用変圧器の二次側に一端が接続された複数の配電線と、前記複数の配電線のそれぞれに接続された複数の負荷と、を含む電力系統の状態を計算する情報処理装置であって、
前記電力系統に含まれる前記負荷の有効電力の第1合計値及び無効電力の第2合計値を取得する第1取得部と、
前記電力系統の送り出し点に対応する第1ノード、前記配電用変圧器の一次側の所定の点に対応する第2ノード、前記配電用変圧器の二次側の所定の点に対応する第3ノード、少なくとも前記電力系統に含まれる前記負荷を仮想的にまとめた第4ノード、前記第1及び第2ノードを接続する第1ブランチ、前記第2及び第3ノードを接続する第2ブランチ、前記第3及び第4ノードを接続する第3ブランチを含むモデルを取得する第2取得部と、
前記モデルと、前記電力系統の構成要素及び前記構成要素の電気特性を示す系統情報とに基づいて、前記第4ノードの有効電力及び無効電力がそれぞれ前記第1及び第2合計値である場合の前記タップの位置及び前記第3ノードの電圧を計算する第1計算部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記モデルを生成する生成部を更に備える、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記電力系統は、前記複数の配電線のそれぞれに前記負荷よりも上流側に設置された第1センサを更に含み、
前記第1取得部は、前記複数の配電線のそれぞれの前記第1センサの有効電力の測定値の合計値を前記第1合計値として取得し、前記複数の配電線のそれぞれの前記第1センサの無効電力の測定値の合計値を前記第2合計値として取得する、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記第4ノードは、前記負荷及び前記電力系統に含まれる発電設備を仮想的にまとめたノードである、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一に記載の情報処理装置であって、
計算された前記第3ノードの電圧を、前記複数の配電線のそれぞれの上流端の電圧として、前記複数の配電線のうち少なくとも一の配電線を含む前記電力系統の区間について潮流計算を実行する第2計算部を更に備える、
情報処理装置。
【請求項6】
情報処理装置が、線路電圧降下補償方式によって一次側及び二次側の間の変圧比をタップで変更可能な配電用変圧器と、前記配電用変圧器の二次側に一端が接続された複数の配電線と、前記複数の配電線のそれぞれに接続された複数の負荷と、を含む電力系統の状態を計算する情報処理方法であって、
前記電力系統に含まれる前記負荷の有効電力の第1合計値及び無効電力の第2合計値を取得するステップと、
前記電力系統の送り出し点に対応する第1ノード、前記配電用変圧器の一次側の所定の点に対応する第2ノード、前記配電用変圧器の二次側の所定の点に対応する第3ノード、前記電力系統に含まれる前記負荷を仮想的にまとめた第4ノード、前記第1及び第2ノードを接続する第1ブランチ、前記第2及び第3ノードを接続する第2ブランチ、前記第3及び第4ノードを接続する第3ブランチを含むモデルを取得するステップと、
前記モデルと、前記電力系統の構成要素及び前記構成要素の電気特性を示す系統情報とに基づいて、前記第4ノードの有効電力及び無効電力がそれぞれ前記第1及び第2合計値である場合の前記タップの位置及び前記第3ノードの電圧を計算するステップと、を含む、
情報処理方法。
【請求項7】
情報処理装置に、線路電圧降下補償方式によって一次側及び二次側の間の変圧比をタップで変更可能な配電用変圧器と、前記配電用変圧器の二次側に一端が接続された複数の配電線と、前記複数の配電線のそれぞれに接続された複数の負荷と、を含む電力系統の状態を計算する情報処理プログラムであって、
前記電力系統に含まれる前記負荷の有効電力の第1合計値及び無効電力の第2合計値を取得する第1取得部と、
前記電力系統の送り出し点に対応する第1ノード、前記配電用変圧器の一次側の所定の点に対応する第2ノード、前記配電用変圧器の二次側の所定の点に対応する第3ノード、前記電力系統に含まれる前記負荷を仮想的にまとめた第4ノード、前記第1及び第2ノードを接続する第1ブランチ、前記第2及び第3ノードを接続する第2ブランチ、前記第3及び第4ノードを接続する第3ブランチを含むモデルを取得する第2取得部と、
前記モデルと、前記電力系統の構成要素及び前記構成要素の電気特性を示す系統情報とに基づいて、前記第4ノードの有効電力及び無効電力がそれぞれ前記第1及び第2合計値である場合の前記タップの位置及び前記第3ノードの電圧を計算する第1計算部と、を実現させる、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統における配電線の状態を推定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、変電所に設置された線路電圧降下補償方式による配電用変圧器の二次側の複数の配電線の状態を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6132994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配電用変圧器の制御方式として、プログラムコントロール方式と、線路電圧降下補償(LDC:Line Drop Compensation)方式とが知られている。
【0005】
プログラムコントロール方式は、複数の配電線の上流端の電圧を時間帯に応じて所定の値となるよう制御する方式である。LDC方式は、配電用変圧器の二次側の所定の点の電圧を、電力系統の負荷の状態に応じた所定の値となるよう制御する方式である。
【0006】
近年、配電線に接続される太陽光発電設備等の発電設備が大量に導入されるようになり、プログラムコントロール方式を用いる利点が薄れ、LDC方式が用いられる場合が増加している。
【0007】
しかしながら、LDC方式の場合、プログラムコントロール方式に比べて配電線の上流端の電圧を精度良く把握することが困難になる。
【0008】
特許文献1に記載された発明では、配電線の上流端の電圧の精度について考慮されていないため、配電線の状態の計算の精度が劣化するおそれがある。
【0009】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、電力系統の状態を精度良く推定することが可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための一の発明は、線路電圧降下補償方式によって一次側及び二次側の間の変圧比をタップで変更可能な配電用変圧器と、前記配電用変圧器の二次側に一端が接続された複数の配電線と、前記複数の配電線のそれぞれに接続された複数の負荷と、を含む電力系統の状態を計算する情報処理装置であって、前記電力系統に含まれる前記負荷の有効電力の第1合計値及び無効電力の第2合計値を取得する第1取得部と、前記電力系統の送り出し点に対応する第1ノード、前記配電用変圧器の一次側の所定の点に対応する第2ノード、前記配電用変圧器の二次側の所定の点に対応する第3ノード、少なくとも前記電力系統に含まれる前記負荷を仮想的にまとめた第4ノード、前記第1及び第2ノードを接続する第1ブランチ、前記第2及び第3ノードを接続する第2ブランチ、前記第3及び第4ノードを接続する第3ブランチを含むモデルを取得する第2取得部と、前記モデルと、前記電力系統の構成要素及び前記構成要素の電気特性を示す系統情報とに基づいて、前記第4ノードの有効電力及び無効電力がそれぞれ前記第1及び第2合計値である場合の前記タップの位置及び前記第3ノードの電圧を計算する第1計算部と、を備える、情報処理装置である。
【0011】
また、情報処理装置が、線路電圧降下補償方式によって一次側及び二次側の間の変圧比をタップで変更可能な配電用変圧器と、前記配電用変圧器の二次側に一端が接続された複数の配電線と、前記複数の配電線のそれぞれに接続された複数の負荷と、を含む電力系統の状態を計算する情報処理方法であって、前記電力系統に含まれる前記負荷の有効電力の第1合計値及び無効電力の第2合計値を取得するステップと、前記電力系統の送り出し点に対応する第1ノード、前記配電用変圧器の一次側の所定の点に対応する第2ノード、前記配電用変圧器の二次側の所定の点に対応する第3ノード、前記電力系統に含まれる前記負荷を仮想的にまとめた第4ノード、前記第1及び第2ノードを接続する第1ブランチ、前記第2及び第3ノードを接続する第2ブランチ、前記第3及び第4ノードを接続する第3ブランチを含むモデルを取得するステップと、前記モデルと、前記電力系統の構成要素及び前記構成要素の電気特性を示す系統情報とに基づいて、前記第4ノードの有効電力及び無効電力がそれぞれ前記第1及び第2合計値である場合の前記タップの位置及び前記第3ノードの電圧を計算するステップと、を含む、情報処理方法である。
【0012】
また、情報処理装置に、線路電圧降下補償方式によって一次側及び二次側の間の変圧比をタップで変更可能な配電用変圧器と、前記配電用変圧器の二次側に一端が接続された複数の配電線と、前記複数の配電線のそれぞれに接続された複数の負荷と、を含む電力系統の状態を計算する情報処理プログラムであって、前記電力系統に含まれる前記負荷の有効電力の第1合計値及び無効電力の第2合計値を取得する第1取得部と、前記電力系統の送り出し点に対応する第1ノード、前記配電用変圧器の一次側の所定の点に対応する第2ノード、前記配電用変圧器の二次側の所定の点に対応する第3ノード、前記電力系統に含まれる前記負荷を仮想的にまとめた第4ノード、前記第1及び第2ノードを接続する第1ブランチ、前記第2及び第3ノードを接続する第2ブランチ、前記第3及び第4ノードを接続する第3ブランチを含むモデルを取得する第2取得部と、前記モデルと、前記電力系統の構成要素及び前記構成要素の電気特性を示す系統情報とに基づいて、前記第4ノードの有効電力及び無効電力がそれぞれ前記第1及び第2合計値である場合の前記タップの位置及び前記第3ノードの電圧を計算する第1計算部と、を実現させる、情報処理プログラムである。本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力系統の状態を精度良く推定することが可能な情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】情報処理装置2が状態を推定する電力系統1の一例を示す図である。
図2】情報処理装置2のハードウェア構成を説明する図である。
図3】情報処理装置2の機能ブロックを示す図である。
図4】系統モデルMを説明するための図である。
図5】有効電力の合計値P及び無効電力の合計値Qを説明する図である。
図6】第1計算部213による計算を説明するための図である。
図7】第1計算部213による計算の結果を示す図である。
図8】第2計算部214による計算を説明するための図である。
図9】第2計算部214による計算を説明するための図である。
図10】情報処理装置2が潮流計算の結果を表示するまでの処理を説明するフローチャートである。
図11】情報処理装置2が潮流計算の結果を表示するまでの処理を説明するフローチャートである。
図12】第1計算部213による潮流計算の設定を説明する図である。
図13】第2計算部214による潮流計算の設定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0017】
==実施形態==
<<電力系統1>>
図1は、後述する情報処理装置2が状態を推定する電力系統1の一例を示す図である。電力系統1は、複数の配電用変圧器10と、複数の配電線11と、複数の配電線11のそれぞれに設置された遮断器FCBと、複数の負荷Lと、複数の発電設備とを含む。
【0018】
[配電用変圧器10]
配電用変圧器10は、配電変電所に設置され、送電線12から供給される電圧を変圧し、6.6kVの電圧を複数の配電線11へと出力する。本実施形態では、配電変電所には2台の配電用変圧器101,102が設置されている。
【0019】
本実施形態では、配電用変圧器10の制御方式として、線路電圧降下補償(LDC:Line Drop Compensation)方式が採用される。配電用変圧器10は、LDC方式によって一次側及び二次側の間の変圧比をタップで変更可能である。
【0020】
[配電線11]
配電線11は、配電用変圧器10を起点とし、配電用変圧器10に放射状に複数接続されている。配電線11は、三相交流方式の配電線である。複数の配電線11のそれぞれは、配電用変圧器10の二次側に一端が接続されている。
【0021】
本実施形態では、配電用変圧器101の二次側に、4本の配電線111~114のそれぞれの一端が接続されている。また、配電用変圧器102の二次側に、3本の配電線115~117のそれぞれの一端が接続されている。
【0022】
[遮断器FCB]
遮断器FCBは、複数の配電線11のそれぞれに設置されている。遮断器FCBの負荷側近傍には、少なくとも有効電力及び無効電力といった設置点における測定値を、定周期で測定可能なセンサが設置されている。
【0023】
なお、複数の配電線11のそれぞれにおいて、遮断器FCBの下流側には需要家の負荷が設置されている。本実施形態の遮断器FCBが有するセンサのように、複数の配電線11のそれぞれにおいて、負荷よりも上流側に設置されたセンサは、「第1センサ」に相当する。
【0024】
[負荷]
負荷Lは、需要家の負荷であり、配電線11を介して供給された電力を消費する。複数の配電線のそれぞれには、複数の負荷が接続されている。なお、図1では配電線111のノードNに設置された電柱に設置された柱上変圧器など(図示せず)を介して配電線111に接続された一の負荷Lのみを示し、他の負荷は省略している。
【0025】
[発電設備]
発電設備Gは、需要家の発電設備である。発電設備Gは、例えば太陽光発電設備PV等である。複数の配電線のそれぞれには、複数の発電設備が接続されている。なお、図1では配電線111のノードNに設置された電柱に設置された柱上変圧器など(図示せず)を介して配電線111に接続された一の太陽光発電設備PVのみを示し、他の発電設備Gは省略している。
【0026】
<<情報処理装置2>>
情報処理装置2は、上述した電力系統1の状態を推定するための計算を実行する装置である。詳細は後述するが、情報処理装置2は、配電用変圧器101,102の二次側の所定の点B1,B2(図1)の電圧を高精度で計算することにより、電力系統1の状態を高精度で計算することが可能な装置である。
【0027】
以下、情報処理装置2のハードウェア構成、各種データベース及び情報処理装置2の機能ブロックの順に説明する。
【0028】
<情報処理装置2のハードウェア構成>
図2は、本実施形態の情報処理装置2のハードウェア構成を説明する図である。情報処理装置2は、CPU(Central Processing Unit)200と、メモリ201と、通信装置202と、記憶装置203と、入力装置204と、出力装置205と、記録媒体読取装置206とを有するコンピュータである。
【0029】
[CPU200]
CPU200は、メモリ201や記憶装置203に記憶された情報処理プログラムを実行することにより、情報処理装置2が有する様々な機能を実現する。
【0030】
[メモリ201]
メモリ201は、例えばRAM(Random-Access Memory)等であり、様々なプログラムやデータ等の一時的な記憶領域として用いられる。
【0031】
[通信装置202]
通信装置202は、通信ネットワーク4を介して、他のコンピュータと各種プログラムやデータの受け渡しを行う。
【0032】
[記憶装置203]
記憶装置203は、CPU200によって、実行または処理される各種データを格納する非一時的な(例えば不揮発性の)記憶装置である。
【0033】
記憶装置203には、系統情報DB220、測定値DB221及び計算値DB222といった各種データベースが格納されている。これらの詳細については後述する。
【0034】
[入力装置204]
入力装置204は、ユーザによるコマンドやデータの入力を受け付ける装置であり、キーボード、タッチパネルディスプレイ上でのタッチ位置を検出するタッチセンサなどの入力インタフェースを含む。
【0035】
[出力装置205]
出力装置205は、例えばディスプレイやプリンタなどの装置である。
【0036】
[記録媒体読取装置206]
記録媒体読取装置206は、メモリカードや光ディスク、コンパクトディスク等の記録媒体3に記録された情報処理プログラム等の様々なデータを読み取り、記憶装置203に格納する。
【0037】
<各種データベース>
上述のように、記憶装置203には、系統情報DB220、測定値DB221及び計算値DB222といった各種データベースが格納されている。それぞれについて説明する。
【0038】
[系統情報DB220]
系統情報DB220は、電力系統1の系統情報に関するデータベースである。系統情報は、電力系統1の構成要素及び構成要素の電気特性を示す情報である。
【0039】
電力系統1の構成要素とは、例えば、状態を推定する対象となる区間における複数のノードのそれぞれの識別子、複数のノードのそれぞれの接続先のノードの識別子等を含む。構成要素の電気的特性は、隣接するノード間の配電線11のインピーダンス等を含む。
【0040】
例えば、図1の配電線111については、ノードNA+1の識別子はA+1であり、ノードNA+1の接続先のノードの識別子は、上流側に隣接するノードNの識別子(A)である。更に、互いに隣接するノードN及びノードNA+1の間の配電線111のインピーダンス等が系統情報DB220に格納される。他のノードについても同様である。
【0041】
[測定値DB221]
測定値DB221は、遮断器FCBのセンサによって測定された有効電力及び無効電力の測定値を蓄積するデータベースである。
【0042】
測定値DB221に格納されているデータは、記憶装置203に予め記憶されていてもよいし、CPU200が、通信装置202を介して、遮断器FCBのセンサから測定値を取得し、取得した測定値を測定値DB221に書き込むことで、随時更新されてもよい。
【0043】
[計算値DB222]
計算値DB222は、情報処理装置2が計算したスラックノードの電圧、潮流計算の結果が記録されたデータベースである。後述する出力部215が潮流計算の結果を出力するとともに、計算結果が計算値DB222に格納される。
【0044】
<情報処理装置2の機能ブロック>
図3は、情報処理装置2の機能ブロックを示す図である。情報処理装置2は、生成部210と、第1取得部211と、第2取得部212と、第1計算部213と、第2計算部214と、出力部215と、を備える。
【0045】
[生成部210]
生成部210は、系統モデルM(「モデル」に相当する)を生成する。系統モデルMは、電力系統1の送り出し点A(図1)と、一の配電用変圧器10と、配電用変圧器10に接続された複数の配電線11とを含む電力系統1の区間を模擬するモデルである。
【0046】
以下の説明では、系統モデルMとして、図1の電力系統1における配電用変圧器10のうち配電用変圧器101と、配電用変圧器101に接続された4本の配電線111~114とを含む電力系統1の区間を模擬するモデルとする。
【0047】
図4は、系統モデルMを説明するための図である。系統モデルMは、ノードN01~N04、ブランチB01~B03を含むノード・ブランチモデルである。
【0048】
ノードN01(「第1ノード」に相当する)は、電力系統1の送り出し点A(図1)に対応するノードである。また、ノードN01は、系統モデルMにおいて、電圧の基準となるノードである。
【0049】
なお、系統モデルM及び後述する系統モデルM~Mのように電力系統1又はその一部の区間を模擬するモデルにおいて、電圧の基準となるノードを「スラックノード」と称する。つまり、ノードN01は、系統モデルMにおけるスラックノードである。
【0050】
ノードN02(「第2ノード」に相当する)は、配電用変圧器101の一次側の所定の点に対応するノードである。一次側の所定の点としては特に制限はない。ノードN02は、例えば、送電線12と、配電用変圧器101との接続点である。
【0051】
ノードN03(「第3ノード」に相当する)は、配電用変圧器101の二次側の所定の点に対応するノードである。二次側の所定の点としては、配電線11に接続された需要家の負荷よりも上流側であればよい。ノードN03は、例えば、配電用変圧器101から下流側の所定距離の点である。
【0052】
ノードN04(「第4ノード」に相当する)は、少なくとも電力系統1に含まれる負荷を仮想的にまとめたノードである。本実施形態では、ノードN04は、負荷及び電力系統に含まれる発電設備1を仮想的にまとめたノードである。
【0053】
ブランチB01(「第1ブランチ」に相当する)は、ノードN01及びノードN02を接続するブランチである。ブランチB02(「第2ブランチ」に相当する)は、ノードN02及びノードN03を接続するブランチである。ブランチB03(「第3ブランチ」に相当する)は、ノードN03及びノードN04を接続するブランチである。
【0054】
[第1取得部211]
第1取得部211は、電力系統1に含まれる負荷の有効電力の合計値P(「第1合計値」に相当する)及び無効電力の合計値Q(「第2合計値」に相当する)を取得する。
【0055】
本実施形態では、第1取得部211は、複数の配電線11のそれぞれの遮断器FCBのセンサの有効電力の測定値の合計値を、合計値Pとして取得する。そして、第1取得部211は、複数の配電線11のそれぞれの遮断器FCBのセンサの無効電力の測定値の合計値を、合計値Qとして取得する。
【0056】
図5は、有効電力の合計値P及び無効電力の合計値Pを説明する図である。本実施形態では、第1取得部211は、先ず、4本の配電線111~114のそれぞれに設置された遮断器FCBのセンサから、測定値DB221を介して有効電力P~P及び無効電力Q~Qを取得する。
【0057】
なお、本実施形態では、配電線11での電力の損失は、需要家の負荷における電力の消費に比べて十分に小さいとする。
【0058】
このような場合、例えば有効電力Pは、配電線111に接続された複数の需要家の負荷の有効電力の合計値に近似的に等しい。また、無効電力Qは、配電線111に接続された複数の需要家の負荷の無効電力の合計値に近似的に等しい。有効電力P~P及び無効電力Q~Qについても同様である。
【0059】
そして、第1取得部211は、有効電力P~Pの和(P+P+P+P)を有効電力の合計値Pとして取得する。第1取得部211は、更に、無効電力Q~Qの和(Q+Q+Q+Q)を無効電力の合計値Qとして取得する。
【0060】
ここで、有効電力の合計値Pは、4本の配電線111~114に接続された複数の需要家の負荷の有効電力の合計値に近似的に等しい。同様に、無効電力の合計値Qは、配電線111~114に接続された複数の需要家の負荷の無効電力の合計値に近似的に等しい。
【0061】
[第2取得部212]
第2取得部212は、生成部210によって生成された系統モデルMを取得する。第2取得部212によって取得された系統モデルMは、後述する第1計算部213による計算に用いられる。
【0062】
[第1計算部213]
第1計算部213は、後述する第2計算部214が潮流計算を実行する前に、配電用変圧器10の二次側の点B1,B2(図1)を計算する。
【0063】
具体的には、第1計算部213は、系統モデルM図4)と、系統情報とに基づいて、配電用変圧器10のタップの位置及び系統モデルMのノードN03の電圧を計算する。このとき、第1計算部213は、系統モデルMのノードN04の有効電力及び無効電力がそれぞれ合計値P及び合計値Qである場合について計算する。
【0064】
図6は、第1計算部213による計算を説明するための図である。図6に示すように、第1計算部213は、系統モデルMのノードN04に、第1取得部211が取得した有効電力の合計値P(=P+P+P+P)及び無効電力の合計値Q(=Q+Q+Q+Q)を設定する。
【0065】
この例では、有効電力の合計値Pは3000.0kWであり、無効電力の合計値Qは1300.0kVarであることを示している。
【0066】
第1計算部213は、更に、系統モデルMのスラックノードであるノードN01に、電力系統1の送り出し電圧として所定値である66kVを設定する。
【0067】
第1計算部213は、系統モデルMに対して上述の設定値を適用し、例えば潮流計算により、配電用変圧器101のタップの位置及びノードN03の電圧を計算する。
【0068】
図7は、第1計算部213による計算の結果を示す図である。この例では、ノードN02の電圧として66,000V、ノードN03の電圧として6,800V、ノードの電圧N04として6,699Vが潮流計算により得られたことが示されている。
【0069】
ここで得られたノードN03の電圧(6,800V)が、配電用変圧器101の二次側の所定の点A1(図1)の電圧とみなされ、後述する第2計算部214による潮流計算に用いられる。
【0070】
なお、第1計算部213が実行する計算の詳細な設定については、フローチャートを用いた説明とともに後述する。
【0071】
[第2計算部214]
第2計算部214は、対象区間について潮流計算を実行する。ここで、対象区間とは、複数の配電線11のうち少なくとも一の配電線を含む電力系統1の区間である。本実施形態では、対象区間として、複数の配電線11のうち一の配電線11を含む電力系統の区間とする。
【0072】
このとき、第2計算部214は、第1計算部213によって計算された系統モデルMのノードN03の電圧を、複数の配電線11のそれぞれの上流端の電圧として潮流計算を実行する。
【0073】
図8及び図9は、第2計算部214による計算を説明するための図である。図8において、配電用変圧器101(図1)に接続された4本の配電線111~114のそれぞれを模擬する系統モデルM~Mが示されている。
【0074】
系統モデルM~Mはそれぞれ、配電線111~114を含む区間に応じたノード・ブランチモデルである。図8では、系統モデルM~Mのそれぞれの上流端のノードN11~N41のみが示され、他のノードが省略されている。
【0075】
この例では、系統モデルM~Mのそれぞれの上流端のノードN11~N41は、配電用変圧器の二次側の点A1(図1)に対応する。また、ノードN11~N41はそれぞれ、系統モデルM~Mにおけるスラックノードとする。ノードN11~N41には、第1計算部213によって計算された系統モデルMにおけるノードN03の電圧である6,800Vが設定される。
【0076】
本実施形態では、第2計算部214は、系統モデルM~Mのそれぞれについて潮流計算を実行する。つまり、第2計算部214は、4本の配電線111~114のそれぞれを含む区間ごとに潮流計算を実行することにより、4本の配電線111~114の全てを含む区間の潮流計算を完了させる。
【0077】
以下では、図9を用いて、特に配電線111を含む区間Kについて第2計算部214が潮流計算を実行する手順を説明する。
【0078】
図9(a)は、配電用変圧器101(図1)に接続された配電線111を含む区間Kを説明する図である。区間Kは、遮断器FCBよりも下流側に、電柱121~128、柱上変圧器SVR、需要家の負荷L1~L3を含む。
【0079】
この例では、電柱121~128は、上流側からこの順番で配置されている。柱上変圧器SVRは、制御方式がLDC方式であり、電柱124に設置されている。需要家の負荷L1~L3はそれぞれ、電柱121,123,126に接続されている。
【0080】
図9(b)は、区間Kを模擬する系統モデルMの詳細を説明する図である。系統モデルMは、ノードN11~N19を含む。
【0081】
ノードN11は、区間Kの送り出し点に対応するノードである。また、ノードN11は、前述のように系統モデルMにおけるスラックノードであり、第1計算部213によって計算された系統モデルMのノードN03の電圧である6,800V(図7)が設定される。
【0082】
ノードN12~N19はそれぞれ、この順に電柱121~128に対応するノードである。
【0083】
第2計算部214は、潮流計算を実行するにあたり、状態変数(図9におけるP+jQであり、Pは有効電力、Qは無効電力である)の初期値を設定する。
【0084】
そして、第2計算部214は、逐次的な前進計算によりノードN11~N19の系統状態量(有効電力、無効電力、電圧等)の計算を実行する。つまり、第2計算部214は、設定された状態変数P+jQを用いて、ノードN11から末端のノードN19に向かって逐次的に系統状態量を計算する。
【0085】
ここで、この例では末端のノードN19には需要家の負荷が接続されていないことから、ノードN19の電力(有効電力及び無効電力)は0(零)となる条件が課される。第2計算部214は、前進計算によるノードN19の電力の計算結果と0(零)との誤差の絶対値が所定の判定基準値より小さいか否かにより、収束判定を行う。
【0086】
前進計算によって得られたノードN19の電力の誤差の絶対値が所定の判定基準値より大きい場合(つまり、収束していない場合)、第2計算部214は、誤差分だけノードN11の状態変数(P+jQ)を修正する。
【0087】
以上のように、第2計算部214は、系統状態量の計算から状態変数の修正までを繰り返すことにより、収束計算を実行する。
【0088】
第2計算部214が実行する潮流計算において、スラックノードであるノードN11の電圧が高精度で定められているため、潮流計算の結果も高精度となる。
【0089】
そして、第2計算部214は、他の配電線112~114のそれぞれを含む区間についても同様の潮流計算を実行する。
【0090】
なお、第2計算部214が実行する計算の詳細な設定については、フローチャートを用いた説明とともに後述する。
【0091】
[出力部215]
出力部215は、第2計算部214によって計算された潮流計算の結果を、情報処理装置2の出力装置205(図2)を介して出力する。出力装置305は、液晶モニタ等の表示装置に測定結果を表示したり、スピーカ等の音声出力装置によって測定結果を音声化したりすることにより、ユーザに対して計算の結果を示す。
【0092】
また、第2計算部214によって計算された潮流計算の結果は、計算値D222に格納される。
【0093】
<<潮流計算の結果を表示するまでの処理>>
情報処理装置2が潮流計算の結果を表示するまでの処理について、フローチャートを用いて説明する。
【0094】
なお、以下の説明においても、図1に示した電力系統1のうち、配電用変圧器101の二次側に接続された配電線111~114を含む区間に関する処理について説明する。
【0095】
図10は、情報処理装置2が潮流計算の結果を表示するまでの処理を説明するフローチャートである。図10に示すように、この処理は、ステップS10~ステップS60を含んでいる。
【0096】
また、図11は、図10のステップS30の詳細を説明するフローチャートである。図10に示すように、ステップS30は、ステップS31~ステップS35を含んでいる。
【0097】
先ず、ステップS10において、生成部210は、配電用変圧器101と、配電用変圧器101に接続された4本の配電線111~114とを含む電力系統1の区間を模擬する系統モデルM図4)を生成する。
【0098】
次いで、ステップS20において、第2取得部212は、ステップS10で生成された系統モデルMを取得する。
【0099】
次いで、ステップS30において、第1計算部213は、後のステップS40の潮流計算において用いられるスラックノードの電圧を計算する。ここでのスラックノードの電圧として、系統モデルMのノードN03の電圧が用いられる。以下、ステップS30について詳細に説明する。
【0100】
ステップS20が終了すると、図11に示すステップS31に進み、第1取得部211は、4本の配電線111~114に接続された需要家の負荷(有効電力及び無効電力)の合計値を取得する。
【0101】
本実施形態では、第1取得部211は、先ず、4本の配電線111~114のそれぞれの遮断器FCBのセンサから、測定値DB221を介して有効電力P~P及び無効電力Q~Qを取得する(図5)。
【0102】
そして、第1取得部211は、有効電力P~Pの合計値Pを、配電線111~114に接続された需要家の負荷の有効電力とする。更に、第1取得部211は、無効電力Q~Qの合計値Qを、配電線111~114に接続された需要家の負荷の無効電力とする。
【0103】
次いで、ステップS32において、第1計算部213は、系統モデルMのノードN04に、ステップS31で取得された合計値P及び合計値Qを設定する(図6)。
【0104】
次いで、ステップS33において、第1計算部213は、系統モデルMについて潮流計算を実行する。このとき、第1計算部213は、潮流計算によって配電用変圧器101のタップの位置及びノードN03の電圧を計算する。
【0105】
図12は、ステップS33における第1計算部213による潮流計算の設定を説明する図である。図12に示された設定値が、系統モデルMに適用される。
【0106】
図12(a)は、特に系統モデルMにおけるスラックノードであるノードN01の情報を示す図である。この例では、フィーダ番号、ノード番号、基準電圧及び基準位相角が示されている。
【0107】
ここで、「フィーダ番号」とは、配電線11を識別するための番号である(図12において同じ)。この例において、系統モデルMは、配電線111~114をまとめたモデルである。フィーダ番号が0であることは、配電線111~114をまとめていることを示している。
【0108】
また、「ノード番号」とは、ノードN01~N04のいずれかに対応する番号である(図12において同じ)。具体的には、ノード番号が1~4であることはそれぞれ、ノードN01~N04であることを示している。
【0109】
図12(a)において、ノードN01(ノード番号=1)には、基準電圧として66,000V、基準位相角として0.0radが設定されている。
【0110】
図12(b)は、ノードN01~N04の情報を示す図である。この例では、フィーダ番号、ノード番号、ノードタイプ、有効電力、無効電力等が示されている。
【0111】
ここで、「ノードタイプ」とは、スラック、配電用変圧器(一次側)、配電用変圧器(二次側)及び負荷のいずれかである。
【0112】
ここで、ノードタイプが負荷でないノードN01~N03(ノード番号=1~3)については、有効電力はいずれも0.0kWであり、無効電力はいずれも0.0kVarである。
【0113】
一方、ノードタイプが負荷であるノードN04(ノード番号=4)については、有効電力は3,000.0kWである。これは、ステップS31で第1取得部211が取得した有効電力の合計値に相当する(図6)。同様に、無効電力は1,300kVarであり、ステップS31で第1取得部211が取得した無効電力の合計値に相当する。
【0114】
図12(c)は、ブランチB01~B03の情報を示す図である。この例では、フィーダ番号、ノード番号(上流側)、ノード番号(下流側)、ブランチタイプ、配電線抵抗、配電線アドミッタンス等が示されている。
【0115】
「ノード番号(上流側)」及び「ノード番号(下流側)」は、互いに隣接するノードであり、これらのノードを結合するブランチを規定する。例えば、ノード番号(上流側)が1であり、ノード番号(下流側)が2であるブランチは、ブランチB01に対応する。
【0116】
「配電線抵抗」は、ノード番号(電源側)及びノード番号(負荷側)に対応する機器の間の配電線11の抵抗である。
【0117】
「配電線アドミタンス」は、ノード番号(電源側)及びノード番号(負荷側)に対応する機器の間の配電線のアドミタンスである。
【0118】
図12(d)は、配電用変圧器101の情報を示す図である。この例では、ノード番号、制御モード、一次定格電圧、二次定格電圧、目標電圧、不感帯、昇降電圧幅が示されている。
【0119】
図12(d)の「ノード番号」とは、配電用変圧器101が紐づけられるノードを示す番号であり、この例では配電用変圧器101の二次側のノード番号(=3)が示されている。
【0120】
「制御モード」とは、配電用変圧器101が採用する制御モードであり、この例ではLDCである。「一次定格電圧」及び「二次定格電圧」とは、配電用変圧器101の一次側及び二次側において定格として定められている上限の電圧である。
【0121】
「目標電圧」とは、配電用変圧器101が調整する電圧の目標値である。「不感帯」は、電圧等の信号が変化しても配電用変圧器101が調整動作を実行しない電圧範囲である。「昇降電圧幅」は、タップの位置を一段階切り替えることによって昇降する電圧の幅である。
【0122】
なお、図12のそれぞれの図における項目の値は、系統情報DB220(図2)に記録されている。
【0123】
ステップS33の潮流計算によって得られたノードN03の電圧は、配電用変圧器101の二次側の電圧とみなされる。この例では、配電用変圧器101の二次側の電圧は、図7に示したように6,800Vである。
【0124】
次いで、ステップS34において、第2計算部214は、ステップS33の潮流計算によって得られた配電用変圧器101の二次側の電圧(6,800V)を取得する。
【0125】
次いで、ステップS35において、第2計算部214は、ステップS34で取得された電圧を、計算の対象である4本の配電線111~114のそれぞれのスラックノードの電圧に設定する。
【0126】
次いで、図10に戻り、ステップS40において、第2計算部214は、系統モデルM~Mのそれぞれについて潮流計算を実行する。
【0127】
このとき、図8に示したように、系統モデルM~Mのそれぞれのスラックノード(ノードN11,N21,N31,N41)には、ステップS33の潮流計算によって得られた配電用変圧器101の二次側の電圧(6,800V)が設定されている。
【0128】
図13は、ステップS40における第2計算部214による潮流計算の設定を説明する図である。図13で示されている項目は、図12で示されている項目と同じであるため、重複する点については詳細な説明は省略する。
【0129】
なお、図13において、「フィーダ番号」が1であることは、配電線111であることを示している。
【0130】
また、図13における「ノード番号」は、系統モデルM図9(b))のノードN11~N19のいずれかに対応する番号である。具体的には、ノード番号が1~9であることはそれぞれ、ノードN11~N19であることを示している。
【0131】
特に図13(a)において、基準電圧は、ステップS30において計算された系統モデルMのノードN03の電圧(6,800V)に設定されている。
【0132】
次いで、ステップS50において、出力部215は、ステップS40における潮流計算の結果を測定値DB221(図2)に出力する。
【0133】
最後に、ステップS60において、出力部215は、ステップS40における潮流計算の結果を液晶モニタ等の表示装置に測定結果を表示する。
【0134】
以上で、潮流計算の結果を表示するまでの処理が終了する。以上説明した手順によれば、先ず、配電用変圧器の二次側の点B1(図1)の電圧が精度良く計算される。従って、その後の潮流計算において、電力系統の状態を精度良く推定することが可能となる。
【0135】
==まとめ==
以上説明した実施形態の情報処理装置2は、LDC方式によって一次側及び二次側の間の変圧比をタップで変更可能な配電用変圧器10と、配電用変圧器10の二次側に一端が接続された複数の配電線11と、複数の配電線11のそれぞれに接続された複数の負荷と、を含む電力系統1の状態を計算する情報処理装置2であって、電力系統1に含まれる負荷の有効電力の第1合計値P及び無効電力の第2合計値Qを取得する第1取得部211と、電力系統1の送り出し点に対応するノードN01、配電用変圧器10の一次側の所定の点に対応するノードN02、配電用変圧器10の二次側の所定の点に対応するノードN03、少なくとも電力系統1に含まれる負荷を仮想的にまとめたノードN04、ノードN01及びノードN02を接続するブランチB01、ノードN02及びノードN03を接続するブランチB02、ノードN03及びノードN04を接続するブランチB03を含むモデルを取得する第2取得部212と、系統モデルMと、電力系統1の構成要素及び構成要素の電気特性を示す系統情報とに基づいて、ノードN04の有効電力及び無効電力がそれぞれ合計値P及び合計値Qである場合のタップの位置及びノードN03の電圧を計算する第1計算部213と、を備える。
【0136】
このような構成によれば、LDC方式による配電用変圧器10の二次側の所定の点における電圧が、ノードN03の電圧として精度良く計算される。従って、電力系統1の状態を精度良く推定することが可能となる。
【0137】
上記実施形態の情報処理装置2は、系統モデルMを生成する生成部210を更に備える。このような構成によれば、一の装置で系統モデルMの生成及び電力系統1の状態の計算を実行することができる。
【0138】
また、上記実施形態の情報処理装置2において、電力系統1は、複数の配電線11のそれぞれに負荷よりも上流側に設置されたセンサを更に含み、第1取得部211は、複数の配電線11のそれぞれのセンサの有効電力の測定値の合計値を合計値Pとして取得し、複数の配電線11のそれぞれのセンサの無効電力の測定値の合計値を合計値Qとして取得する。このような構成によれば、ノードN04の有効電力の合計値P及び無効電力の合計値Qの精度が向上する。従って、電力系統1の状態を更に精度良く推定することが可能となる。
【0139】
また、上記実施形態の情報処理装置2において、ノードN04は、負荷及び電力系統1に含まれる発電設備を仮想的にまとめたノードである。このような構成によれば、配電線11に接続される太陽光発電設備等の発電設備が大量に導入される場合であっても、電力系統1の状態を精度良く推定することが可能となる。
【0140】
また、上記実施形態の情報処理装置2は、計算されたノードN03の電圧を、複数の配電線11のそれぞれの上流端の電圧として、複数の配電線11のうち少なくとも一の配電線11を含む電力系統1の区間について潮流計算を実行する第2計算部214を更に備える。このような構成によれば、配電線11を含む区間の状態も精度良く推定することが可能となる。
【0141】
上記実施形態の情報処理方法は、情報処理装置2が、LDC方式によって一次側及び二次側の間の変圧比をタップで変更可能な配電用変圧器10と、配電用変圧器10の二次側に一端が接続された複数の配電線11と、複数の配電線11のそれぞれに接続された複数の負荷と、を含む電力系統1の状態を計算する情報処理方法であって、電力系統1に含まれる負荷の有効電力の合計値P及び無効電力の合計値Qを取得するステップと、電力系統の送り出し点に対応するノードN01、配電用変圧器10の一次側の所定の点に対応するノードN02、配電用変圧器10の二次側の所定の点に対応するノードN03、電力系統1に含まれる負荷を仮想的にまとめたノードN04、ノードN01及びノードN02を接続するブランチB01、ノードN02及びノードN03を接続するブランチB02、ノードN03及びノードN04を接続するブランチB03を含む系統モデルMを取得するステップと、系統モデルMと、電力系統1の構成要素及び構成要素の電気特性を示す系統情報とに基づいて、ノードN04の有効電力及び無効電力がそれぞれ合計値P及び合計値Qである場合のタップの位置及びノードN03の電圧を計算するステップと、を含む。
【0142】
このような方法によれば、LDC方式による配電用変圧器10の二次側の所定の点における電圧が、ノードN03の電圧として精度良く計算される。従って、電力系統1の状態を精度良く推定することが可能となる。
【0143】
上記実施形態の情報処理プログラムは、情報処理装置2に、LDC方式によって一次側及び二次側の間の変圧比をタップで変更可能な配電用変圧器10と、配電用変圧器10の二次側に一端が接続された複数の配電線11と、複数の配電線11のそれぞれに接続された複数の負荷と、を含む電力系統1の状態を計算する情報処理プログラムであって、電力系統1に含まれる負荷の有効電力の合計値P及び無効電力の合計値Qを取得する第1取得部211と、電力系統1の送り出し点に対応するノードN01、配電用変圧器10の一次側の所定の点に対応するノードN02、配電用変圧器10の二次側の所定の点に対応するノードN03、電力系統1に含まれる負荷を仮想的にまとめたノードN04、ノードN01及びノードN02を接続するブランチB01、ノードN02及びN03を接続するブランチB02、ノードN03及びノードN04を接続するブランチB03を含む系統モデルMを取得する第2取得部212と、系統モデルMと、電力系統1の構成要素及び構成要素の電気特性を示す系統情報とに基づいて、ノードN04の有効電力及び無効電力がそれぞれ合計値P及び合計値Qである場合のタップの位置及びノードN03の電圧を計算する第1計算部213と、を実現させる。
【0144】
このようなプログラムによれば、LDC方式による配電用変圧器10の二次側の所定の点における電圧が、ノードN03の電圧として精度良く計算される。従って、電力系統1の状態を精度良く推定することが可能となる。
【0145】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0146】
電力系統 1
配電用変圧器 10,101,102
配電線 11,111,112,113,114,115,116,117
送電線 12
情報処理装置 2
CPU 200
メモリ 201
通信装置 202
記憶装置 203
入力装置 204
出力装置 205
記録媒体読取装置 206
生成部 210
第1取得部 211
第2取得部 212
第1計算部 213
第2計算部 214
出力部 215
系統情報 DB220
測定値DB 221
計算値DB 222
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13