(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007698
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
G01P 3/44 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01P3/44 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109274
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】521428941
【氏名又は名称】株式会社黒磯製作所
(71)【出願人】
【識別番号】596149578
【氏名又は名称】宇部興機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】林 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】角 真輝
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 佑斗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】堀内 正司
(72)【発明者】
【氏名】園田 卓司
(57)【要約】
【課題】内部の環境が極限環境になってしまうような用途に誘導電動機が使用されたとしても、誘導電動機の回転数を精度よく検出することができる検出装置を提供する。
【解決手段】誘導電動機の外側において前記誘導電動機から漏れる漏洩磁界の強度を検出する第1検出部と、前記第1検出部から出力される第1信号に基づいて、前記誘導電動機の回転数を示す情報を含む回転数情報を出力する出力部と、を備える検出装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導電動機の外側において前記誘導電動機から漏れる漏洩磁界の強度を検出する第1検出部と、
前記第1検出部から出力される第1信号に基づいて、前記誘導電動機の回転数を示す情報を含む回転数情報を出力する出力部と、
を備える検出装置。
【請求項2】
前記第1信号に基づいて、前記誘導電動機の回転数を算出する算出部を備え、
前記出力部は、前記算出部により算出された前記誘導電動機の回転数を示す情報を含む前記回転数情報を出力する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記誘導電動機の外側において、前記漏洩磁界の強度を検出する第2検出部を更に備え、
前記出力部は、前記第1信号と、前記第2検出部から出力される第2信号とに基づいて、前記回転数情報を出力する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1検出部は、前記誘導電動機の外表面に設けられる、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第1検出部は、前記誘導電動機の外表面から離間している、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項6】
前記回転数情報には、前記誘導電動機の回転数の目標値を示す目標値情報と、前記誘導電動機の回転数と前記目標値との差分を示す差分情報との少なくとも一方が含まれている、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項7】
前記第1検出部の少なくとも一部を覆うカバーを更に備え、
前記カバーは、外部から前記第1検出部への熱の伝導、外部から前記第1検出部への加圧、外部から前記第1検出部への振動の伝導のうちの少なくとも1つを抑制する、
請求項1に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導電動機の回転数を検出する検出装置についての研究、開発が行われている。
【0003】
これに関し、所定のキャリア周波数を与えて、互いに検出位相の異なる複数のコイルによって回転子の回転による磁界の時間変化を検出することにより、回転子の機械角、回転数を求める方式(レゾルバ方式)が知られている(特許文献1参照)。また、回転子に永久磁石を担持させ、磁気センサによって回転子の永久磁石の磁束を検出することにより、回転子の回転数を求める方式(ホールセンサ方式)が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ルネサスエレクトロニクス株式会社、「モータソリューションカタログ」、[online]、[令和05年06月15日検索]、インターネット <URL: https://www.renesas.com/jp/ja/document/bro/motor-solution-brochure>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に記載された方式では、誘導電動機の回転数を検出するためには、誘導電動機の内部にレゾルバを設けなければならない。また、特許文献2に記載された方式では、誘導電動機の回転数を検出するためには、誘導電動機の内部にホールセンサを設けなければならない。このように、従来、誘導電動機の回転数を検出するには、誘導電動機の内部に誘導電動機の回転数を検出するための部材(例えば、上記のレゾルバ、ホールセンサ等)を設ける必要があった。一方、誘導電動機は、例えば、ロケットの燃料を噴射させるポンプを駆動するため等の特定の使用用途に用いられる場合、誘導電動機の内部に設けられる部材が、高温、高圧、高振動等の極限環境に曝されてしまうことがある。しかしながら、誘導電動機の内部に設けられる部材は、極限環境に耐えられないことが多かった。このため、誘導電動機の回転数を検出する装置として、新たな方式を採用した装置の登場が望まれていた。
【0007】
本開示は、このような事情を考慮してなされたもので、内部の環境が極限環境になってしまうような用途に誘導電動機が使用されたとしても、誘導電動機の回転数を精度よく検出することができる検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、誘導電動機の外側において前記誘導電動機から漏れる漏洩磁界の強度を検出する第1検出部と、前記第1検出部から出力される第1信号に基づいて、前記誘導電動機の回転数を示す情報を含む回転数情報を出力する出力部と、を備える検出装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、内部の環境が極限環境になってしまうような用途に誘導電動機が使用されたとしても、誘導電動機の回転数を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】所定の更新周期が経過する毎に検出装置1が行う処理の流れの一例を示す図である。
【
図4】ステップS130において生成された情報が示す周波数スペクトルの一例を示す図である。
【
図5】検出装置1から回転数情報を取得する毎に制御装置2が行う処理の流れの一例を示す図である。
【
図6】
図3及び
図5において説明した検出装置1及び制御装置2が行う処理の流れを示すイメージ図である。
【
図8】検出装置1の構成の更に他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
<検出装置の概要>
まず、本実施形態に係る検出装置の概要について説明する。
【0013】
実施形態に係る検出装置は、第1検出部と、出力部を備える。第1検出部は、誘導電動機の外側において誘導電動機から漏れる漏洩磁界の強度を検出する。出力部は、第1検出部から出力される第1信号に基づいて、誘導電動機の回転数を示す情報を含む回転数情報を出力する。
【0014】
これにより、実施形態に係る検出装置は、内部の環境が極限環境になってしまうような用途に誘導電動機が使用されたとしても、誘導電動機の回転数を精度よく検出することができる。
【0015】
以下では、実施形態に係る検出装置の構成と、当該検出装置が行う処理とについて詳しく説明する。
【0016】
<検出装置の構成>
以下、実施形態に係る検出装置の構成について、検出装置1を例に挙げて説明する。
【0017】
【0018】
検出装置1は、誘導電動機の回転数を検出する。
図1に示した例では、検出装置1は、誘導電動機Mの回転数を検出する。誘導電動機Mは、巻線型の三相誘導電動機である。なお、誘導電動機Mは、巻線型の三相誘導電動機に代えて、かご型の三相誘導電動機等の他の誘導電動機であってもよい。
図1では、誘導電動機Mの内部構造を明確にするため、誘導電動機Mの回転軸と直交する仮想的な面で誘導電動機Mを切断した断面が見えるように、誘導電動機Mが描かれている。誘導電動機Mの内部の構造については、既知であること、誘導電動機として駆動することが可能な如何なる構造であってもよいこと等の理由から、符号を用いた詳細な説明を省略する。
【0019】
誘導電動機Mは、固定子内に回転磁界を発生させ、発生させた回転磁界によって回転子を回転させる。誘導電動機Mは、巻線型の三相誘導電動機であるため、誘導電動機Mの固定子及び回転子のそれぞれには、予め決められた方法によってコイルが巻き回されている。固定子に巻き回されている複数のコイルのそれぞれは、電流が流されることによって界磁となる。誘導電動機Mは、それらの界磁からの磁界によって回転子のコイルに誘導電流を流すことによって、回転子を回転させる。このようにして誘導電動機Mの筐体内において発生する磁界のほとんどは、誘導電動機Mの筐体内から漏れ出ることがない。しかしながら、当該磁界の一部は、誘導電動機Mの筐体外に漏れ出る。以下では、説明の便宜上、このようにして誘導電動機Mの筐体外に漏れ出る磁界を、漏洩磁界と称して説明する。
【0020】
検出装置1は、誘導電動機Mの筐体外において漏洩磁界を検出し、検出した漏洩磁界に基づいて、誘導電動機Mの回転数を検出する。このため、検出装置1は、誘導電動機Mの筐体内の環境が極限環境になるような使用用途に誘導電動機Mが用いられたとしても、極限環境に直接曝されることがない。その結果、検出装置1は、不具合が生じてしまうことを抑制することができるとともに、誘導電動機の回転数を精度よく検出することができる。
【0021】
なお、極限環境は、例えば、高温、高圧、高振動のうちの少なくとも1つが実現している環境のことであり、例えば、ロケットの電動ターボポンプを駆動させる誘導電動機内の環境等のことである。そのような極限環境では、レゾルバ、ホールセンサ等の回転数を検出する部材を備える誘導電動機の筐体内において、当該部材は、極限環境に耐えられずに不具合を発生させてしまうことがある。これは、ロケットの打ち上げの失敗に繋がるため、望ましいことではない。このような事情から、誘導電動機Mの筐体外において漏洩磁界を検出する検出装置1は、誘導電動機Mの筐体内の環境が極限環境になるような使用用途に誘導電動機Mが用いられたとしても、誘導電動機Mの回転数を精度よく検出することができるため、有用である。
【0022】
また、検出装置1は、誘導電動機Mの筐体外において漏洩磁界を検出するため、誘導電動機Mの製造段階において誘導電動機Mの筐体内に埋め込む必要がない。すなわち、検出装置1は、製造された後の誘導電動機Mに外部から取り付けることができ、検出装置1を含む各種の装置の設計自由度を向上させることができる。
【0023】
検出装置1は、例えば、検出部10と、本体装置20を備える。なお、検出装置1は、他の装置、他の部材等を更に備える構成であってもよい。
図1に示した例では、本体装置20は、誘導電動機Mを制御する制御装置2と通信可能に接続されている。また、当該例では、検出部10は、本体装置20と別体に構成されている。しかしながら、検出部10は、本体装置20と一体に構成されてもよい。
【0024】
検出部10は、誘導電動機Mの筐体外(すなわち、誘導電動機Mの外側)において誘導電動機Mから漏れる漏洩磁界の強度を検出する。検出部10は、例えば、磁気インピーダンスセンサである。なお、検出部10は、磁気インピーダンスセンサに代えて、ホールセンサ等であってもよい。ただし、検出部10は、誘導電動機Mからの漏洩磁界の強度が小さい場合であっても漏洩磁界の強度を検出可能となるため、磁気インピーダンスセンサのように、ホールセンサよりも高い感度で漏洩磁界を検出可能なセンサであることが望ましい。以下では、一例として、検出部10が磁気インピーダンスセンサである場合について説明する。
【0025】
検出部10は、漏洩磁界の強度を検出し、検出した強度を示す信号を本体装置20に出力する。この信号は、アナログ信号であってもよく、デジタル信号であってもよい。以下では、一例として、検出部10から出力される信号がアナログ信号である場合について説明する。
【0026】
ここで、検出部10は、誘導電動機Mの外表面に設けられる構成であってもよく、誘導電動機の外表面から離間している構成であってもよい。ただし、検出部10は、誘導電動機Mの筐体外において、他の部材と干渉せず、且つ、漏洩磁界の強度の時間的な変化を検出可能な位置に設けられる。このため、検出部10は、誘導電動機Mの筐体外において、漏洩磁界の強度を検出可能な位置であっても、漏洩磁界の強度が時間的に変化しない位置に設けられない。誘導電動機Mの筐体外において、他の部材と干渉せず、且つ、漏洩磁界の強度の時間的な変化を検出可能な位置は、例えば、事前の実験、シミュレーション等によって特定される。なお、当該位置は、他の方法により特定される構成であってもよい。
【0027】
本体装置20は、検出部10から出力される信号に基づいて、誘導電動機Mの回転数を算出する。本体装置20は、算出した回転数を示す情報を含む回転数情報を出力する。例えば、本体装置20は、算出した回転数情報を制御装置2に出力する。これにより、検出装置1は、誘導電動機Mの回転数に応じた誘導電動機Mの制御を、制御装置2のような他の装置に行わせることができる。なお、回転数情報は、検出部10から出力される信号そのものではない。
【0028】
ここで、回転数情報には、誘導電動機Mの回転数の目標値を示す目標値情報と、誘導電動機Mの回転数と当該目標値との差分を示す差分情報との少なくとも一方が含まれている。以下では、一例として、回転数情報には、誘導電動機Mの回転数を示す情報とともに、差分情報が含まれている場合について説明する。この場合、本体装置20は、誘導電動機Mの回転数とともに、当該目標値を算出する。そして、本体装置20は、当該回転数と当該目標値との差分を算出する。これにより、本体装置20は、差分情報を生成することができる。
【0029】
制御装置2は、本体装置20から出力された回転数情報を取得した場合、取得した回転数情報に含まれる情報が示す回転数と、当該回転数情報に含まれる差分情報が示す差分とに基づいて、誘導電動機Mを制御する。具体的には、制御装置2は、当該場合、誘導電動機Mの回転数が、誘導電動機Mの回転数の目標値に近づくように誘導電動機Mの回転数を変化させる。
【0030】
<本体装置の構成>
以下、
図2を参照し、本体装置20の構成について説明する。
図2は、本体装置20の構成の一例を示す図である。
【0031】
本体装置20は、例えば、制御部21と、記憶部22と、通信部23を備える。なお、本体装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23とに加えて、他の機能部を備える構成であってもよい。
【0032】
制御部21は、検出装置1の全体を制御する。制御部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプロセッサを含んで構成される。
【0033】
制御部21は、例えば、取得部211と、AD(Analog Digital)変換部212と、フーリエ変換部213と、算出部214と、出力部215を備える。制御部21が備えるこれらの機能部は、例えば、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Circuit)等のハードウェア機能部である。なお、制御部21が備えるこれらの機能部のうちの一部又は全部は、制御部21に含まれるプロセッサが記憶部22に記憶された各種のプログラムを実行することにより実現されてもよい。
【0034】
取得部211は、所定の更新周期が経過する毎に、検出部10から出力された信号を所定時間取得する。所定の更新周期は、検出装置1から出力される回転数情報に応じて行う制御の内容によって変わる。例えば、所定の更新周期は、1秒であるが、これに限られるわけではない。また、所定時間は、誘導電動機Mの回転数の目標値に応じて異なる。例えば、当該目標値が60000[rpm]であった場合、当該目標値は、数ミリ秒程度であるが、これに限られるわけではない。なお、所定時間は、誘導電動機Mの回転数を検出可能な信号を取得可能な時間であれば、如何なる時間であってもよい。
【0035】
AD変換部212は、取得部211により取得された信号を、デジタル信号に変換する回路であれば、如何なる回路であってもよく、例えば、ADコンバータである。
【0036】
フーリエ変換部213は、AD変換部212によって変換された後のデジタル信号をフーリエ変換し、当該デジタル信号の周波数スペクトルを示す情報を生成する。フーリエ変換部213は、例えば、当該デジタル信号へのFFT(Fast Fourier Transform)を実行することにより、当該情報を生成する。
【0037】
算出部214は、フーリエ変換部213によって生成された情報が示す周波数スペクトルに基づいて、誘導電動機Mの回転数と、誘導電動機Mの回転数の目標値とのそれぞれを特定する。また、算出部214は、当該回転数と当該目標値との差分を算出する。
【0038】
出力部215は、算出部214が算出した誘導電動機Mの回転数を示す情報と、算出部214が算出した差分を示す差分情報とを含む回転数情報を生成する。出力部215は、生成した回転数情報を出力する。例えば、出力部215は、当該回転数情報を制御装置2に出力する。なお、出力部215は、当該回転数情報を、本体装置20が備える他の機能部に出力する構成であってもよく、制御装置2以外の他の装置に出力する構成であってもよく、他の出力先へ出力する構成であってもよい。
【0039】
記憶部22は、記憶装置であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。なお、記憶部22は、外部から接続される外部記憶装置であってもよい。
【0040】
通信部23は、無線通信用のアンテナ、有線通信用の各種のポート等を含んで構成される通信装置である。
【0041】
<検出装置が行う処理>
以下、
図3を参照し、検出装置1が行う処理について説明する。検出装置1は、所定の更新周期で誘導電動機Mの回転数の検出を行う。
図3は、所定の更新周期が経過する毎に検出装置1が行う処理の流れの一例を示す図である。以下では、一例として、
図3に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、誘導電動機Mが回転し始めている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、所定の更新周期が経過した場合について説明する。検出装置1は、例えば、検出装置1の電源がOFFに切り替えられるまで、所定の更新周期が経過する毎に、
図3に示したステップS110~ステップS160の処理を繰り返し行う。
【0042】
所定の更新周期が経過した後、取得部211は、検出部10から出力された信号を所定時間取得する(ステップS110)。
【0043】
次に、AD変換部212は、ステップS110において取得部211により取得された信号をデジタル信号に変換する(ステップS120)。
【0044】
次に、フーリエ変換部213は、ステップS120において変換された後のデジタル信号へのFFTを実行し、周波数スペクトルを示す情報を生成する(ステップS130)。
図3では、ステップS130の処理を「フーリエ変換」によって示している。
【0045】
次に、算出部214は、ステップS130において生成された情報が示す周波数スペクトルに基づいて、誘導電動機Mの回転数と、前述の差分とを算出する(ステップS140)。
図3では、ステップS140の処理を「回転数算出」によって示している。ここで、
図4は、ステップS130において生成された情報が示す周波数スペクトルの一例を示す図である。
図4に示したグラフの横軸は、周波数を示す。また、当該グラフの縦軸は、漏洩磁界の強度を示す。そして、当該グラフ上には、ステップS130において生成された情報が示す周波数スペクトルの一例がプロットされている。算出部214は、
図4に示したような周波数スペクトルにおいて、最も大きなピークにおける周波数P1を、誘導電動機Mの回転数の目標値として特定する。
図4に示した例では、当該周波数は、52[Hz]である。この場合、算出部214は、1秒間に約52回転、すなわち、3120[rpm]を当該目標値として特定する。一方、算出部214は、
図4に示したような周波数スペクトルにおいて、最も低周波数側に位置するピークP2における周波数を、誘導電動機Mの回転数として特定する。当該例では、当該周波数は、28[Hz]である。この場合、算出部214は、1秒間に28回転、すなわち、1680[rpm]を当該回転数として特定する。また、算出部214は、このようにして算出した誘導電動機Mの回転数と、その目標値との差分を算出する。
図4に示した例では、算出部214は、1440[rpm]を当該差分として算出する。
【0046】
次に、出力部215は、ステップS140において算出した回転数を示す情報と、ステップS140において算出した差分を示す差分情報とを含む回転数情報を生成する。そして、出力部215は、生成した回転数情報を制御装置2に出力する(ステップS150)。
【0047】
ステップS150の処理が行われた後、制御部21は、
図3に示したフローチャートの処理を終了し、次に所定の更新周期が経過した後、再び当該フローチャートの処理を開始する。
【0048】
<制御装置が行う処理>
以下、
図5を参照し、検出装置1から回転数情報を取得する毎に制御装置2が行う処理について説明する。
図5は、検出装置1から回転数情報を取得する毎に制御装置2が行う処理の流れの一例を示す図である。制御装置2は、例えば、検出装置1から回転数情報を取得する毎に、
図5に示したステップS210の処理を繰り返し行う。
【0049】
検出装置1から出力された回転数情報を取得した後、制御装置2は、取得した回転数情報に含まれる差分情報に基づいて、当該差分情報が示す差分が0に近づくように誘導電動機Mの回転数を変化させる回転数変化処理を行う(ステップS210)。すなわち、制御装置2は、ステップS210において、当該回転数情報に含まれる情報が示す回転数を、誘導電動機Mの回転数の目標値に近づける。例えば、制御装置2は、回転数変化処理において、制御装置2が備える図示しないインバータを制御し、当該差分が0に近づくように当該回転数を変化させる。
【0050】
ステップS210の処理が行われた後、制御装置2は、
図5に示したフローチャートの処理を終了し、次に回転数情報を取得した後、再び当該フローチャートの処理を開始する。
【0051】
ここで、
図6は、
図3及び
図5において説明した検出装置1及び制御装置2が行う処理の流れを示すイメージ図である。
図6に示したように、検出装置1は、誘導電動機Mの回転数についてのフィードバック制御を制御装置2に行わせる。すなわち、検出装置1は、検出部10により誘導電動機Mの漏洩磁界の強度を示す信号(より具体的には、当該強度の時間的な変化を示すアナログ信号)を検出し、検出した信号をAD変換部212によってデジタル信号に変換する。そして、検出装置1は、変換した後のデジタル信号をフーリエ変換部213によって周波数スペクトルに変換し、変換した後の周波数スペクトルに基づいて算出部214によって誘導電動機Mの回転数とその目標値を算出する。また、検出装置1は、当該回転数と当該目標値との差分を算出する。これにより、検出装置1は、回転数情報を生成し、生成した回転数情報を制御装置2に出力する。制御装置2は、取得した回転数情報に基づいて、制御装置2が備えるインバータを制御し、当該回転数を当該目標値に近づける(すなわち、当該差分を0に近づける)。このようなフィードバック制御により、誘導電動機Mの回転数は、制御される。そして、検出装置1及び制御装置2は、このようなフィードバック制御を、誘導電動機Mの筐体外に位置する検出部10から出力される信号に基づいて実現する。従って、検出装置1は、内部の環境が極限環境になってしまうような用途に誘導電動機が使用されたとしても、誘導電動機の回転数についてのフィードバック制御を、精度よく実現させることができる。
【0052】
上記において説明した検出装置1は、例えば、検出部10が誘導電動機Mの筐体外に位置しているため、
図7に示したように、検出部10の少なくとも一部を覆うカバー40を備えることもできる。
図7は、検出装置1の構成の他の例を示す図である。
図7に示した例では、検出部10は、誘導電動機Mの筐体の外表面に設けられている。このため、カバー40は、検出部10と本体装置20とを接続するケーブルが通る孔を除いて、検出部10が有する面のうち当該外表面と接面していないすべての面を覆っている。
【0053】
カバー40は、外部から検出部10への熱の伝導、外部から検出部10への加圧、外部から検出部10への振動の伝導のうちの少なくとも1つを抑制する。カバー40は、当該少なくとも1つを抑制することが可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。これにより、検出部10は、例えば、誘導電動機Mがロケットに搭載される誘導電動機であったとしても、漏洩磁界の強度の検出を精度よく行うことができる。すなわち、検出装置1は、内部の環境が極限環境になってしまうような用途に誘導電動機Mが使用されたとしても、誘導電動機Mの回転数を精度よく検出することができる。
【0054】
なお、カバー40は、漏洩磁界の磁束が透過可能な材質によって構成されている場合、検出部10と本体装置20とを接続するケーブルが通る孔を除いて、検出部10が有するすべての面を覆う構成であってもよい。この場合、カバー40は、誘導電動機Mから検出部10への熱、圧力、振動のうちの少なくとも1つの伝達も抑制することができる。その結果、検出装置1は、内部の環境が極限環境になってしまうような用途に誘導電動機Mが使用されたとしても、誘導電動機Mの回転数を、より確実に精度よく検出することができる。
【0055】
以上のように、実施形態に係る検出装置1は、誘導電動機Mの外側において誘導電動機Mから漏れる漏洩磁界の強度を検出する検出部10と、検出部10から出力される信号に基づいて、誘導電動機Mの回転数を示す情報を含む回転数情報を出力する出力部215と、を備える。これにより、検出装置1は、内部の環境が極限環境になってしまうような用途に誘導電動機Mが使用されたとしても、誘導電動機Mの回転数を精度よく検出することができる。
【0056】
なお、上記において説明した検出装置1は、例えば、
図8に示したように、漏洩磁界の強度を検出する検出部を2つ以上備える構成であってもよい。
図8は、検出装置1の構成の更に他の例を示す図である。
図8に示した例では、検出装置1は、漏洩磁界の強度を検出する2つ以上の検出部の一例として、検出部10と、検出部50との2つの検出部を備えている。
【0057】
検出部50は、誘導電動機Mの筐体外(すなわち、誘導電動機Mの外側)において誘導電動機Mから漏れる漏洩磁界の強度を検出する。検出部50は、検出部10と同じ種類の磁気センサであってもよく、検出部10と異なる種類の磁気センサであってもよい。以下では、一例として、検出部50が、検出部10と同じ種類の磁気センサである場合について説明する。この場合、検出部50は、磁気インピーダンスセンサである。
【0058】
検出部50は、漏洩磁界の強度を検出し、検出した強度を示す信号を本体装置20に出力する。この信号は、アナログ信号であってもよく、デジタル信号であってもよい。以下では、一例として、検出部50から出力される信号がアナログ信号である場合について説明する。
【0059】
ここで、検出部50は、誘導電動機Mの外表面に設けられる構成であってもよく、誘導電動機の外表面から離間している構成であってもよい。ただし、検出部50は、検出部10と同様に、誘導電動機Mの筐体外において、他の部材と干渉せず、且つ、漏洩磁界の強度の時間的な変化を検出可能な位置に設けられる。このため、検出部50は、誘導電動機Mの筐体外において、漏洩磁界の強度を検出可能な位置であっても、漏洩磁界の強度が時間的に変化しない位置に設けられない。
図8に示した例では、検出部50は、誘導電動機Mの回転軸が延伸する方向に向かって誘導電動機Mを見た場合において、当該回転軸を中心とした円周上に検出部10とともに設けられており、且つ、当該回転軸と検出部10とを結ぶ直線に対して、当該回転軸と検出部50とを結ぶ直線が90°傾く位置に設けられている。
【0060】
検出装置1が検出部10とともに検出部50を備える場合、本体装置20は、検出部10から出力される信号と、検出部50から出力される信号とに基づいて、誘導電動機Mの回転数を算出し、算出した当該回転数を示す情報を含む回転数情報を出力する。より具体的には、本体装置20は、例えば、これら2つの信号の差分を生成し、当該差分に基づいて、誘導電動機Mの回転数を算出する。これにより、検出装置1は、誘導電動機Mの回転数を、より高い精度で算出することができる。なお、検出装置1は、当該差分に代えて、これら2つの信号に基づく他の情報に基づいて、当該回転数を算出する構成であってもよい。
【0061】
また、上記において説明した事項は、如何様に組み合わされてもよい。
【0062】
<付記>
[1]
誘導電動機の外側において前記誘導電動機から漏れる漏洩磁界の強度を検出する第1検出部と、前記第1検出部から出力される第1信号に基づいて、前記誘導電動機の回転数を示す情報を含む回転数情報を出力する出力部と、を備える検出装置。
[2]
前記第1信号に基づいて、前記誘導電動機の回転数を算出する算出部を備え、前記出力部は、前記算出部により算出された前記誘導電動機の回転数を示す情報を含む前記回転数情報を出力する、[1]に記載の検出装置。
[3]
前記誘導電動機の外側において、前記漏洩磁界の強度を検出する第2検出部を更に備え、前記出力部は、前記第1信号と、前記第2検出部から出力される第2信号とに基づいて、前記回転数情報を出力する、[1]又は[2]に記載の検出装置。
[4]
前記第1検出部は、前記誘導電動機の外表面に設けられる、[1]から[3]のうちいずれか一項に記載の検出装置。
[5]
前記第1検出部は、前記誘導電動機の外表面から離間している、[1]から[3]のうちいずれか一項に記載の検出装置。
[6]
前記回転数情報には、前記誘導電動機の回転数の目標値を示す目標値情報と、前記誘導電動機の回転数と前記目標値との差分を示す差分情報との少なくとも一方が含まれている、[1]から[5]のうちいずれか一項に記載の検出装置。
[7]
前記検出部の少なくとも一部を覆うカバーを更に備え、前記カバーは、外部から前記検出部への熱の伝導、外部から前記検出部への加圧、外部から前記検出部への振動の伝導のうちの少なくとも1つを抑制する、[1]から[6]のうちいずれか一項に記載の検出装置。
【0063】
以上、本開示の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…検出装置、2…制御装置、10…検出部、20…本体装置、21…制御部、22…記憶部、23…通信部、40…カバー、50…検出部、211…取得部、212…AD変換部、213…フーリエ変換部、214…算出部、215…出力部、M…誘導電動機