(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007713
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】温度検出回路
(51)【国際特許分類】
G01K 1/20 20060101AFI20250109BHJP
G01K 7/01 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01K1/20
G01K7/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109292
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 淳志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 明
(72)【発明者】
【氏名】大森 仁規
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056JT06
(57)【要約】
【課題】対象温度及び判定温度間の高低関係を高精度に検出する。
【解決手段】温度検出回路(10)は、対象温度(Tx)に対して負の温度特性を有する第1電圧(V1)を生成する第1回路(110)と、所定の基準電圧(Vref)の供給を受け、基準電圧を対象温度に対して正の温度特性を有する第2電圧(V2)に変換する第2回路(120)と、第1電圧を第2電圧と比較することで、対象温度と所定の判定温度との高低関係を示す温度検出信号(TSD)を生成する比較出力回路(130)と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象温度に対して負の温度特性を有する第1電圧を生成するよう構成された第1回路と、
所定の基準電圧の供給を受け、前記基準電圧を前記対象温度に対して正の温度特性を有する第2電圧に変換するよう構成された第2回路と、
前記第1電圧を前記第2電圧と比較することで、前記対象温度と所定の判定温度との高低関係を示す温度検出信号を生成するよう構成された比較出力回路と、を備える
、温度検出回路。
【請求項2】
前記第2回路は、変換用トランジスタと、前記変換用トランジスタに直列接続された直列抵抗と、を備え、
前記変換用トランジスタは前記基準電圧を受けるベースを有するバイポーラトランジスタであり、
前記第2回路は、前記変換用トランジスタ及び前記直列抵抗の直列回路に対し、前記変換用トランジスタのベース-エミッタ間電圧に応じて増減する電流を供給し、前記電流に応じて前記第2電圧を生成する
、請求項1に記載の温度検出回路。
【請求項3】
前記第2回路は、前記直列回路に対し前記電流として第1電流を供給するとともに、前記第1電流に比例する第2電流を発生させるよう構成されたカレントミラー回路と、前記第2電流を受けて前記第2電圧を発生させるよう構成された電圧変換抵抗と、を備える
、請求項2に記載の温度検出回路。
【請求項4】
前記第2回路において、前記対象温度の上昇に伴い前記変換用トランジスタのベース-エミッタ間電圧が低下することを通じ前記第1電流が増大し、前記第1電流の増大により前記第2電流が増大することで前記第2電圧が上昇する
、請求項3に記載の温度検出回路。
【請求項5】
前記第1回路は、温度検出ダイオードを有し、前記温度検出ダイオードの順方向に定電流を供給することで前記温度検出ダイオードに発生する順方向電圧に基づき、前記第1電圧を生成する
、請求項1~4の何れかに記載の温度検出回路。
【請求項6】
前記温度検出ダイオードは、互いに接続されたコレクタ及びベースを有するバイポーラトランジスタにて形成される
、請求項5に記載の温度検出回路。
【請求項7】
前記第1回路は、互いに直列接続された複数の温度検出ダイオードを有し、前記複数の温度検出ダイオードの順方向に定電流を供給することで前記複数の温度検出ダイオードに発生する複数の順方向電圧の和に基づき、前記第1電圧を生成する
、請求項1~4の何れかに記載の温度検出回路。
【請求項8】
各温度検出ダイオードは、互いに接続されたコレクタ及びベースを有するバイポーラトランジスタにて形成される
、請求項7に記載の温度検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルシャットダウンなどの用途のために温度検出回路が各種装置に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
[概要]
温度の検出精度を相応に高めることが求められる。
【0005】
本開示の一態様に係る温度検出回路は、対象温度に対して負の温度特性を有する第1電圧を生成するよう構成された第1回路と、所定の基準電圧の供給を受け、前記基準電圧を前記対象温度に対して正の温度特性を有する第2電圧に変換するよう構成された第2回路と、前記第1電圧を前記第2電圧と比較することで、前記対象温度と所定の判定温度との高低関係を示す温度検出信号を生成するよう構成された比較出力回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る半導体装置の概略全体構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る半導体装置の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係り、半導体装置がスイッチング電源装置を形成するための装置である場合における、機能回路の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、参考温度検出回路に係り、温度検出のために対比されるべき2つの電圧の関係を示す図である。
【
図5】
図5は、参考温度検出回路に係り、温度検出のために対比されるべき2つの電圧の関係を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係り、温度検出のために対比されるべき2つの電圧の関係を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係り、温度検出のために対比されるべき2つの電圧の関係を示す図である。
【
図8】
図8は、参考温度検出回路と、本開示の実施形態に係る温度検出回路と、を比較するための図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係る温度検出回路の内部構成図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係り、対象温度と、温度検出回路内の幾つかの信号と、温度検出回路内のトランジスタの状態と、の関係を示す図である。
【
図11】
図11は、参考方法に係り、温度の検出可能範囲を説明するための図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係り、温度の検出可能範囲を説明するための図である。
【0007】
[詳細な説明]
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0008】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。
【0009】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号について、当該信号がハイレベルであるとき、当該信号の反転信号はローレベルをとり、当該信号がローレベルであるとき、当該信号の反転信号はハイレベルをとる。
【0010】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。
【0011】
以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。また、任意のトランジスタについて、トランジスタがオン状態となっている期間をオン期間と称し、トランジスタがオフ状態となっている期間をオフ期間と称する。ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる期間をハイレベル期間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる期間をローレベル期間と称する。
【0012】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0013】
対比されるべき任意の2つの電圧が電圧V1及びV2であるとした場合、“V1>V2”は電圧V1が電圧V2よりも高いことを表し、“V1<V2”は電圧V1が電圧V2よりも低いことを表す。電圧以外の物理量を含む他の式についても同様である。
【0014】
図1に本開示の実施形態に係る半導体装置1の概略全体構成を示す。
図2は半導体装置1の外観斜視図である。半導体装置1は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から半導体装置1の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置1が形成される。尚、
図2に示される半導体装置1の外部端子の数及び半導体装置1の筐体の種類は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。
【0015】
半導体装置1は、上記半導体集積回路に含まれる回路として温度検出回路10、機能回路20及び内部電源回路30を備える。
【0016】
温度検出回路10は、対象温度Txと所定の判定温度Tthとの高低関係を検出し、その検出結果を表す温度検出信号TSDを出力する。温度検出信号TSDは、“0”又は“1”の値を有する二値信号である。温度検出回路10は、対象温度Txが判定温度Tthより高いときには“1”の値を有する温度検出信号TSDを出力し、対象温度Txが判定温度Tthより低いときには“0”の値を有する温度検出信号TSDを出力する。このため、“1”の値を有する温度検出信号TSDは、対象温度Txが判定温度Tthより高いことを示し、“0”の値を有する温度検出信号TSDは、対象温度Txが判定温度Tthより低いことを示す。温度検出回路10は、対象温度Txが判定温度Tthとちょうど一致するときには“1”又は“0”の値を有する温度検出信号TSDを出力する。
【0017】
機能回路20は所定の機能動作を実行する回路である。機能動作は、半導体装置1が実現すべき機能に応じた動作である。
【0018】
内部電源回路30は、図示されない外部電源から半導体装置1に供給される直流の入力電圧に基づいて、所定の直流電圧値を有する内部電源電圧を生成する。温度検出回路10及び機能回路20は内部電源電圧に基づいて動作する。
【0019】
本実施形態では、温度検出信号TSDをサーマルシャットダウン信号として利用することを想定する(但し、温度検出信号TSDはサーマルシャットダウン信号以外の信号でも良い)。この場合、温度検出回路10を、サーマルシャットダウン回路又は温度保護回路などと称することもできる。サーマルシャットダウン信号としての温度検出信号TSDは機能回路20に入力される。機能回路20は、温度検出信号TSDが“0”の値を有することを条件に上記機能動作を実行し、“1”の値を有する温度検出信号TSDが温度検出回路10から出力されると、半導体装置1を過大な熱から保護すべく上記機能動作を停止する。
【0020】
対象温度Txは、半導体装置1内における所定の検出対象位置の温度である。検出対象位置は、半導体チップ上で最も高温となることが想定される位置又はその近傍であると良く、半導体チップ上で最も高温となることが想定される位置の近傍に温度検出回路10を設置しておくと良い。検出対象位置は温度検出回路10の配置位置に相当する、と考えることもできる。温度検出回路10は半導体装置1の半導体チップに設けられるため、半導体チップの温度が対象温度Txであると解することもできる。
【0021】
図3に、半導体装置1がスイッチング電源装置を形成するための装置(いわゆる電源IC)である場合における、機能回路20の構成例を示す。
図3に示すスイッチング電源装置は、所定の入力電圧Vinから目標電圧にて安定化された所定の出力電圧Voutを生成する降圧型のDC/DCコンバータである。入力電圧Vin及び出力電圧Voutは正の直流電圧値を有する(但し、Vin>Vout)。
図3の機能回路20は出力段回路21及び制御回路22を備える。出力段回路21は、ハイサイドトランジスタ21H及びローサイドトランジスタ21Lの直列回路であるハーフブリッジ回路である。
図3の構成例において、トランジスタ21H及び21LはNチャネル型のMOSFETとして構成される。出力段回路21に対し直流の入力電圧Vinが加わる。制御回路22はトランジスタ21H及び21Lのゲート電位を制御することでトランジスタ21H及び21Lを交互にオン、オフさせる。これにより、トランジスタ21H及び21L間の接続ノードに矩形波状の電圧が発生する。矩形波状の電圧が、コイルL1及び出力コンデンサC1から成る整流平滑回路にて整流及び平滑化されることで出力電圧Voutが得られる。出力電圧Voutの分圧がフィードバック電圧Vfbとして制御回路22に入力される。制御回路22は、フィードバック電圧Vfbが所定の基準電圧と一致するようにトランジスタ21H及び21Lの状態(オン、オフの状態)を制御する。これにより、出力電圧Voutが所定の目標電圧にて安定化される。
図3の機能回路20においては、制御回路22によるトランジスタ21H及び21Lを交互にオン、オフする動作が、機能回路20が実行すべき機能動作に含まれる。“1”の値を有する温度検出信号TSDが温度検出回路10から出力されることに基づき機能動作が停止されると、トランジスタ21H及び21Lが共にオフ状態で維持される。
【0022】
半導体装置1がスイッチング電源装置を形成するための装置(いわゆる電源IC)である場合の機能動作について説明したが、機能回路20が実行すべき機能動作は任意である。即ち例えば、半導体装置1はモータ駆動システムに組み込まれるべきモータドライバであっても良く、この場合、機能回路20は、三相モータの各コイルに矩形波状の端子電圧を供給する機能動作を実行する。また例えば、半導体装置1は発光システムに組み込まれるべきLEDドライバであっても良く、この場合、機能回路20は、発光システムに設けられたLED(発光ダイオード)に発光用の駆動電流を供給する機能動作を実行する。何れにおいても、“1”の値を有する温度検出信号TSDが温度検出回路10から出力されると、半導体装置1を過大な熱から保護すべく上記機能動作を停止する。
【0023】
本実施形態に係る温度検出回路10の内部構成の説明に先立ち、
図4を参照して、参考温度検出回路(不図示)を説明する。参考温度検出回路では、対象温度Txに対して負の温度特性を有する電圧Vaと対象温度Txに依存しない基準電圧Vrefとを生成し、対象温度Txの上昇に伴って電圧Vaが基準電圧Vrefを下回ったときに、温度検出信号TSDの値を“0”から“1”に変化させる。
図4は、電圧Va及びVrefが共に設計通りの理想値を有するときの電圧Va及びVref間の関係を示す。参考温度検出回路において、仮に電圧Va及びVrefが共に設計上の理想値を有する場合、対象温度Txの上昇過程で対象温度Txが理想判定温度Tth_iに達したときに、温度検出信号TSDの値が“0”から“1”に切り替わる。
【0024】
しかしながら、実際には製造ばらつきの影響を受けて電圧Va及びVrefは、ばらつく。
図5に、製造ばらつきによって電圧Va及びVrefが夫々にばらつく状況を示す。製造ばらつきの影響を受けて、電圧Vaの温度特性は破線911で示される特性から破線912で示される特性までの間でばらつき、基準電圧Vrefの温度特性は破線921で示される特性から破線922で示される特性までの間でばらつく。この結果、参考温度検出回路において、温度検出信号TSDの値が“0”から“1”に切り替わるときの対象温度Txは、温度Tth_min2から温度Tth_max2までの間でばらつく。“Tth_min2<Tth_i<Tth_max2”が成立する。
【0025】
製造ばらつきによる電圧Vaの変動範囲内において電圧Vaが最小値を持ち、且つ、製造ばらつきによる基準電圧Vrefの変動範囲内において電圧Vrefが最大値を持つ場合、対象温度Txが温度Tth_min2に達したときに、温度検出信号TSDの値が“0”から“1”に切り替わる。製造ばらつきによる電圧Vaの変動範囲内において電圧Vaが最大値を持ち、且つ、製造ばらつきによる基準電圧Vrefの変動範囲内において基準電圧Vrefが最小値を持つ場合、対象温度Txが温度Tth_max2に達したときに、温度検出信号TSDの値が“0”から“1”に切り替わる。差(Tth_max2-Tth_min2)は、参考温度検出回路による温度検出のばらつき幅に相当する。ばらつき幅の増大は温度検出の精度低下に相当する。温度検出のばらつき幅は極力小さい方が好ましい。
【0026】
これを考慮し、温度検出回路10では、
図6に示す如く、対象温度Txに対して負の温度特性を持つ電圧V1を生成する一方で、対象温度Txに依存しない基準電圧Vref(
図6において不図示)を対象温度Txに対して正の温度特性を有する電圧V2に変換する。その上で、温度検出回路10は、当該変換により得られた電圧V2を電圧V1と比較し、対象温度Txの上昇に伴って電圧V1が電圧V2を下回ったときに、温度検出信号TSDの値を“0”から“1”に変化させる。温度検出回路10において電圧V1及びV2が共に設計上の理想値を有する場合、対象温度Txの上昇過程で対象温度Txが理想判定温度Tth_iに達したときに、温度検出信号TSDの値が“0”から“1”に切り替わる。
【0027】
図7に、製造ばらつきによって電圧V1及びV2が夫々にばらつく状況を示す。製造ばらつきの影響を受けて、電圧V1の温度特性は破線611で示される特性から破線612で示される特性までの間でばらつき、電圧V2の温度特性は破線621で示される特性から破線622で示される特性までの間でばらつく。この結果、温度検出回路10において、温度検出信号TSDの値が“0”から“1”に切り替わるときの対象温度Txは、温度Tth_min1から温度Tth_max1までの間でばらつく。“Tth_min1<Tth_i<Tth_max1”が成立する。
【0028】
製造ばらつきによる電圧V1の変動範囲内において電圧V1が最小値を持ち、且つ、製造ばらつきによる電圧V2の変動範囲内において電圧V2が最大値を持つ場合、対象温度Txが温度Tth_min1に達したときに、温度検出信号TSDの値が“0”から“1”に切り替わる。製造ばらつきによる電圧V1の変動範囲内において電圧V1が最大値を持ち、且つ、製造ばらつきによる基準電圧V2の変動範囲内において電圧V2が最小値を持つ場合、対象温度Txが温度Tth_max1に達したときに、温度検出信号TSDの値が“0”から“1”に切り替わる。“Tth_min1<Tth_i<Tth_max1”が成立する。差(Tth_max1-Tth_min1)は、温度検出回路10による温度検出のばらつき幅に相当する。
【0029】
比較のため、参考温度検出回路に対応する
図5の温度特性図と、温度検出回路10に対応する
図7の温度特性図とを、
図8にあわせて示す。製造ばらつきによる電圧Va、Vref、V1及びV2の変動範囲の大きさが互いに同じであると考えた場合、ばらつき幅(Tth_max1-Tth_min1)は、ばらつき幅(Tth_max2-Tth_min2)より小さくなる。これは、対比されるべき2つの電圧の傾きの差(対象温度Txに対する傾きの差)が、温度検出回路10において参考温度検出回路よりも大きいことに起因する。ばらつき幅の縮小により温度検出の精度が向上する。
【0030】
図9に温度検出回路10の内部構成例を示す。
図9の温度検出回路10は、第1電圧生成回路110、第2電圧生成回路120及び比較検出回路130を備えると共に、基準電圧源161、定電流源162、トランジスタ163及びインバータ回路164を備える。また温度検出回路10に設けられる電源配線Wvregには所定の正の直流電圧値を有する内部電源電圧Vregが印加される。
図1の内部電源回路30にて内部電源電圧Vregが生成される。グランド配線Wgndは0Vのグランド電位を有する。尚、グランド配線Wgndへの接続と、グランドへの接続は、互いに同義である。
【0031】
第1電圧生成回路110は、温度検出素子111及びトランジスタ112を備える。
図9の例において温度検出素子111は温度検出ダイオード111a及び111bの直列回路を有する。第2電圧生成回路120は、変換用トランジスタ121、直列抵抗122、トランジスタ123、124及び126並びに電圧変換抵抗125を備える。
図9の例において電圧変換抵抗125は抵抗125a及び125bの直列回路を有する。比較検出回路130は、トランジスタ131~136、抵抗137、インバータ回路138及びバッファ回路139を備える。
【0032】
トランジスタ112、123、124、131~133及び163はPチャネル型のMOSFETである。トランジスタ126及び134~136はNチャネル型のMOSFETである。温度検出ダイオード111a及び111bは各々にNPNバイポーラトランジスタにより構成される。このため、以下、温度検出ダイオード111a、111bは、夫々、トランジスタ111a、111bと称され得る。変換用トランジスタ121はNPNバイポーラトランジスタである。
【0033】
トランジスタ163及び112、123、124及び133の各ソースは電源配線Wvregに接続され、内部電源電圧Vregの供給を受ける。トランジスタ163のドレイン及びゲートとトランジスタ112及び133の各ゲートはノード174に接続される。定電流源162はノード174及びグランド間に挿入され、トランジスタ163に一定のドレイン電流が流れるよう動作する。
【0034】
トランジスタ112のドレインはノード171に接続される。トランジスタ111aのコレクタ及びベースは互いに短絡され且つノード171に接続される。トランジスタ111bのコレクタ及びベースは互いに短絡され且つトランジスタ111aのエミッタに接続される。トランジスタ111bのエミッタはグランド配線Wgndに接続される。
【0035】
トランジスタ123のゲート及びドレインと、トランジスタ124のゲートと、変換用トランジスタ121のコレクタと、は互いに接続される。変換用トランジスタ121のベースに対して基準電圧源161の出力端が接続される。基準電圧源161は所定の正の直流電圧値を有する基準電圧Vrefを生成し、自身の出力端から基準電圧Vrefを出力する。故に、変換用トランジスタ121のベースには基準電圧Vrefが供給される。バンドギャップリファレンス等を用いて基準電圧源161を形成できる。変換用トランジスタ121と直列抵抗122は互いに直列接続される。具体的には、変換用トランジスタ121のエミッタは直列抵抗122の第1端に接続され、直列抵抗122の第2端はグランド配線Wgndに接続される。
【0036】
トランジスタ124のドレインはノード172に接続される。ノード172とグランド配線Wgndとの間に電圧変換抵抗125が設けられる。具体的には、抵抗125aの第1端がノード172に接続され、抵抗125aの第2端及び抵抗125bの第1端はノード173に接続され、抵抗125bの第2端はグランド配線Wgndに接続される。トランジスタ126のドレインはノード173に接続され、トランジスタ126のソースはグランド配線Wgndに接続される。
【0037】
トランジスタ133のドレインとトランジスタ131及び132の各ソースはノード175にて共通接続される。トランジスタ131のゲートはノード171に接続され、トランジスタ132のゲートはノード172に接続される。トランジスタ131及び132は互いに同じ構造及び電気的特性を有する2つのトランジスタの対(差動対)である。ノード171における電圧は電圧V1であり、ノード172における電圧は電圧V2である。
【0038】
トランジスタ132のドレインはトランジスタ134のドレイン及びゲートとトランジスタ135のゲートに接続される。トランジスタ131のドレインはトランジスタ135のドレイン及びトランジスタ136のゲートに接続される。トランジスタ134~136の各ソースはグランド配線Wgndに接続される。抵抗137の第1端は電源配線Wvregに接続されて内部電源電圧Vregの供給を受ける。抵抗137の第2端及びトランジスタ136のドレインはノード176に接続される。
【0039】
インバータ回路138の入力端はノード176に接続され、インバータ回路138の出力端はノード177に接続される。バッファ回路139の入力端はノード177に接続され、バッファ回路139の出力端から温度検出信号TSDが出力される。インバータ回路164の入力端はノード177に接続され、インバータ回路164の出力端はトランジスタ126のゲートに接続される。
【0040】
ノード176の信号はインバータ回路138への入力信号である。インバータ回路138は自身への入力信号の反転信号を自身の出力端から出力する(従ってノード177に出力する)。このため、ノード176の信号がハイレベルを有するとき、インバータ回路138の出力信号はローレベルを有し、ノード176の信号がローレベルを有するとき、インバータ回路138の出力信号はハイレベルを有する。インバータ回路164はノード177の信号の反転信号を自身の出力端から出力する。このため、ノード177の信号がハイレベルを有するとき、インバータ回路164の出力信号はローレベルを有し、ノード177の信号がローレベルを有するとき、インバータ回路164の出力信号はハイレベルを有する。インバータ回路164の出力信号はトランジスタ126のゲートに供給される。インバータ回路164の出力信号がハイレベルを有するとき、トランジスタ126はオン状態であり、インバータ回路164の出力信号がローレベルを有するとき、トランジスタ126はオフ状態である。
【0041】
インバータ回路138及び164はグランド電位を基準に内部電源電圧Vregに基づいて駆動する。インバータ回路138の入力信号及び出力信号並びにインバータ回路164の入力信号及び出力信号におけるハイレベルは内部電源電圧Vregと一致するか、内部電源電圧Vregよりも若干低く、少なくとも上側閾電圧Vh_th以上である。インバータ回路138の入力信号及び出力信号並びにインバータ回路164の入力信号及び出力信号におけるローレベルはグランド電位と一致するか、グランド電位よりも若干高く、少なくとも下側閾電圧Vl_th以下である。“0<Vl_th<Vh_th<Vreg”が成立する。
【0042】
バッファ回路139は、インバータ回路138の出力信号がハイレベルを有するとき、ハイレベルの温度検出信号TSDを出力し、インバータ回路138の出力信号がローレベルを有するとき、ローレベルの温度検出信号TSDを出力する。ハイレベルの温度検出信号TSDは“1”の値を有し、ローレベルの温度検出信号TSDは“0”の値を有する。バッファ回路139はグランド電位を基準に内部電源電圧Vregに基づいて駆動して良く、この場合、バッファ回路139の出力信号におけるハイレベルは実質的に内部電源電圧Vregの電位を有する。或いは、バッファ回路139はグランド電位を基準に内部電源電圧Vregとは異なる他の電源電圧VDD(不図示)に基づいて駆動して良く、この場合、バッファ回路139の出力信号におけるハイレベルは実質的に電源電圧VDDの電位を有する。バッファ回路139の出力信号におけるローレベルは実質的にグランド電位を有する。尚、インバータ回路138の出力信号が温度検出信号TSDであっても良い。
【0043】
トランジスタ163、112及び133はカレントミラー回路CM1を形成する。カレントミラー回路CM1において、トランジスタ163は入力側のトランジスタであり、トランジスタ112及び133は出力側のトランジスタである。カレントミラー回路CM1は、トランジスタ163のドレイン電流に比例する電流がトランジスタ112のドレイン電流として発生するよう且つトランジスタ163のドレイン電流に比例する他の電流がトランジスタ133のドレイン電流として発生するよう動作する。
【0044】
トランジスタ123及び124はカレントミラー回路CM2を形成する。カレントミラー回路CM2において、トランジスタ123は入力側のトランジスタであり、トランジスタ124は出力側のトランジスタである。カレントミラー回路CM2は、トランジスタ123のドレイン電流に比例する電流がトランジスタ124のドレイン電流として発生するよう動作する。
【0045】
トランジスタ134及び135はカレントミラー回路CM3を形成する。カレントミラー回路CM3において、トランジスタ134は入力側のトランジスタであり、トランジスタ135は出力側のトランジスタである。カレントミラー回路CM3は、トランジスタ134のドレイン電流に比例する電流がトランジスタ135のドレイン電流として発生するよう動作する。
【0046】
上述したように、基準電圧Vrefは対象温度Txに依存しない。即ち、対象温度Txの変化に対して基準電圧Vrefの値が変化することが無いよう基準電圧源161が構成される。厳密には、対象温度Txが変化したとき、基準電圧Vrefが若干変化することもあるが、ここでは、対象温度Txの変化に対して基準電圧Vrefは不変であるとする。
【0047】
温度検出回路10の構成要素の全部又は一部は、対象温度Txを有するか、対象温度Txに近い温度を持つ。少なくとも、温度検出素子111及び変換用トランジスタ121は検出対象位置に配置される。故に、温度検出素子111及び変換用トランジスタ121の温度は、対象温度Txの上昇に伴って単調に上昇し、対象温度Txの低下に伴って単調に低下する。トランジスタ111a、111b及び121は、互いに同じ構造及び電気的特性を有する3つのトランジスタであると良い。
【0048】
トランジスタ111a及び111bの夫々におけるベース-エミッタ間電圧は、対象温度Txの上昇に伴って減少する一方、対象温度Txの低下に伴って増加する。このため、ノード171における電圧V1は対象温度Txに対して負の温度特性を持つ。即ち、電圧V1は、対象温度Txの上昇に伴って単調に低下し、対象温度Txの低下に伴って単調に上昇する。
【0049】
今、説明の便宜上、変換用トランジスタ121の電流増幅率が十分に大きいものとし、変換用トランジスタ121のコレクタ電流及びエミッタ電流が同じ値を持つと考える。また変換用トランジスタ121のベース-エミッタ間電圧を記号“Vbe”にて表し、直列抵抗122の抵抗値を記号“R122”にて表す。そうすると、変換用トランジスタ121のコレクタ電流は電流Iaであって、“Ia=(Vref-Vbe)/R122”で表される。電流Iaはトランジスタ123のドレイン電流として変換用トランジスタ121に供給されるため、トランジスタ124のドレイン電流である電流Ibは電流Iaに比例する。ここにおける比例の係数は任意であるが、1であるとする。そうすると、“Ib=Ia=(Vref-Vbe)/R122”が成立する。
【0050】
ここで、変換用トランジスタ121のベース-エミッタ間電圧Vbeは、バイポーラトランジスタの特性に従い、対象温度Txの上昇に伴って単調に減少し、対象温度Txの低下に伴って単調に増大する。故に、直列抵抗R122の温度係数が十分に小さいとして無視すれば、電流Ia及びIbは、対象温度Txの上昇に伴って単調に増大し、対象温度Txの低下に伴って単調に減少する。電圧V2は電流Ibを電圧変換抵抗125に供給することで電圧変換抵抗125に発生する電圧降下であるため、電圧V2は対象温度Txの上昇に伴って単調に上昇し、対象温度Txの低下に伴って単調に低下する。即ち、電圧V2は対象温度Txに対して正の温度特性を持つことなる。
【0051】
尚、対象温度Txに対して正の温度特性を持つ抵抗と対象温度Txに対して負の温度特性を持つ抵抗とを組み合わせて直列抵抗122を構成することで、直列抵抗R122の温度係数を十分に低く設定して良い。対象温度Txの上昇に対する電流Iaの増大率を大きくすべく、対象温度Txに対して負の温度特性を持つ抵抗を直列抵抗R122として採用しても良い。
【0052】
このように、第1電圧生成回路110は、対象温度Txに対して負の温度特性を有する電圧V1を生成する。第1電圧生成回路110は、温度検出ダイオードを有し、温度検出ダイオードの順方向に定電流(トランジスタ112のドレイン電流に相当)を供給することで温度検出ダイオードに発生する順方向電圧に基づき電圧V1を生成する。
図9の例では、温度検出ダイオードとして互いに直列接続された温度検出ダイオード111a及び111bが設けられる。このため、
図9の第1電圧生成回路110は、温度検出ダイオード111a及び111bの順方向に定電流(トランジスタ112のドレイン電流に相当)を供給することで温度検出ダイオード111a及び111bに発生する順方向電圧の和に基づき電圧V1を生成する。
【0053】
これに対し、第2電圧生成回路120は、所定の基準電圧Vrefの供給を受け、基準電圧Vrefを対象温度Txに対して正の温度特性を有する電圧V2に変換する。第2電圧生成回路120は、変換用トランジスタ121及び直列抵抗122の直列回路に対し、変換用トランジスタ121のベース-エミッタ間電圧Vbeに応じて増減する電流Iaを供給し、電流Iaに応じて電圧V2を生成する。この際、カレントミラー回路CM2により電流Iaに比例する電流Ibを発生させ、電流Ibを電圧変換抵抗125に供給することで電圧V2を生成する。
【0054】
比較出力回路130は、電圧V1を電圧V2と比較することで、対象温度Txと所定の判定温度Tthとの高低関係を示す温度検出信号TSDを生成及び出力する。比較出力回路130は、“V1>V2”の成立時にはローレベルの比較結果信号TSDを生成及び出力し、“V1<V2”の成立時にはハイレベルの比較結果信号TSDを生成及び出力する。“V1=V2”の成立時において比較結果信号TSDはローレベル又はハイレベルを有する。
【0055】
温度検出信号TSDの生成に際し、比較出力回路30にはヒステリシス特性が付与される。このため、判定温度Tthには、上側の判定温度Tth1と、上側の判定温度Tth1よりも低い下側の判定温度Tth2と、がある。判定温度Tth1、Tth2は、例えば、夫々、125℃、100℃である。ヒステリシス特性は電圧変換抵抗125及びトランジスタ126を用いて実現される。トランジスタ126のオン抵抗値は抵抗125a及び125bの各値に比べて十分に小さい。このため、トランジスタ126のオン抵抗値がゼロであるとみなす。そうすると、トランジスタ126がオフであるとき、電圧変換抵抗125の値は抵抗125a及び125bの各値の和である一方、トランジスタ126がオンであるとき、電圧変換抵抗125の値は抵抗125aの値に等しい。
【0056】
電圧V2は電流Ibを電圧変換抵抗125に供給することで電圧変換抵抗125に発生する電圧降下であるので、電流Ibが一定であると仮定すれば、トランジスタ126のオフ期間における電圧V2は、抵抗125bで発生する電圧降下の分だけ、トランジスタ126のオン期間における電圧V2よりも高くなる。これを利用して比較出力回路30にヒステリシス特性が付与される。
【0057】
図10を参照し、対象温度Txの変化に対して温度検出信号TSDの値が切り替わる動作を説明する。
図10には、対象温度Txが変化したときの、電圧V1及びV2並びに温度検出信号TSDの波形とトランジスタ126の状態が示される。
【0058】
対象温度Txが十分に低いとき(少なくとも“Tx<Tth2”であるとき)、“V1>V2”が成立する。カレントミラー回路CM1の作用により電源配線Wvregからトランジスタ133を介し一定の電流がノード175に向けて供給され、ノード175への供給電流はトランジスタ131及び132に分配される。“V1>V2”の成立時には、トランジスタ131のドレイン電流よりもトランジスタ132のドレイン電流の方が大きく、故にカレントミラー回路CM3の作用により、トランジスタ136がオフとなる。結果、ノード176はハイレベルを有するので、温度検出信号TSDはローレベルを有する。温度検出信号TSDのローレベル期間ではトランジスタ126はオンである。
【0059】
温度検出信号TSDがローレベルである状態を起点に、対象温度Txが上昇する過程において“Tx<Tth1”の成立状態から“Tx>Tth1”の成立状態に切り替わると“V1>V2”の成立状態から“V1<V2”の成立状態に切り替わる。即ち、対象温度Txが上昇する過程において“V1>V2”の成立状態から“V1<V2”の成立状態に切り替わるときの対象温度Txが、判定温度Tth1に相当する。
【0060】
“V1<V2”の成立時には、トランジスタ132のドレイン電流よりもトランジスタ131のドレイン電流の方が大きく、故にカレントミラー回路CM3の作用により、トランジスタ136がオンとなる。結果、ノード176はローレベルを有するので、温度検出信号TSDはハイレベルを有する。温度検出信号TSDのハイレベル期間ではトランジスタ126はオフである。つまり、“V1>V2”の成立状態から“V1<V2”の成立状態に切り替わったとき、トランジスタ126がオン状態からオフ状態に切り替わるので、電圧V2が、抵抗125bでの電圧降下の分だけ急峻に増大する。
【0061】
その後、対象温度Txが判定温度Tth1よりも高い状態から低下してゆき、対象温度Txが低下する過程において“Tx>Tth2”の成立状態から“Tx<Tth2”の成立状態に切り替わると“V1<V2”の成立状態から“V1>V2”の成立状態に切り替わる。“V1>V2”の成立時には、上述したように、温度検出信号TSDはローレベルを有し、トランジスタ126はオン状態となる。つまり、対象温度Txが判定温度Tth1よりも高い温度から低下する過程において対象温度Txが判定温度Tth2を下回ることを契機に、温度検出信号TSDのレベルがハイレベルからローレベルに切り替わる。また、トランジスタ126がオフ状態からオン状態に切り替わる際、電圧V2が抵抗125bでの電圧降下の分だけ急峻に減少する。
【0062】
本実施形態に係る温度検出回路10は、温度検出の精度向上に加えて、温度の検出可能範囲を拡大できる点において優位性を持つ。これについて説明する。上述の参考温度検出回路(
図4参照)の如く、対象温度Txに対して負の温度特性を有する電圧Vaを対象温度Txに依存しない基準電圧Vrefと比較する場合、電圧Vaと基準電圧Vrefとが交差する部分において温度検出信号TSDの値が“0”及び“1”間で切り替わる。
図11に示す如く、電圧Vaと基準電圧Vrefとが交差するときの対象温度Txを“Tmin”で表す。基準電圧Vrefの抵抗による分圧を利用すれば、基準電圧Vref1又はVref2など、基準電圧Vrefより低い一定電圧を得ることができる。電圧Vaを当該一定電圧と比較すれば、温度検出信号TSDの値が“0”及び“1”間で切り替わる対象温度Txを温度Tminより高めることができる。即ち、電圧Vaを対象温度Txに依存しない一定電圧(例えばVref、Vref1又はVref2)と比較する参考方法では、温度検出信号TSDの値が“0”及び“1”間で切り替わるときの対象温度Txを、温度Tim以上の検出可能範囲内で設定できる(温度Tim未満には設定できない)。
【0063】
これに対し、
図9の温度検出回路10では、カレントミラー回路CM2のミラー比(即ち電流Ia及びIb間の比)又は抵抗122の値などを調整することで、電圧V1と対比されるべき電圧V2の特性を、
図12の破線631、632及び633の如く、様々に設計可能である。このため、温度検出回路10では、温度検出信号TSDの値が“0”及び“1”間で切り替わるときの対象温度Txを、参考方法よりも、広い温度範囲内で任意に設定できる。
【0064】
<<変形等>>
上述の事項に対する変形技術又は補足事項等を説明する。
【0065】
基準電圧Vrefを対象温度Txに対して正の温度特性を有する電圧V2に変換する機能を持つ限り、第2電圧生成回路120の構成は
図9に示すものに限定されない。但し、
図9の例によれば、簡素な構成で第2電圧生成回路120を形成できる。PNPバイポーラトランジスタにて変換用トランジスタ121が形成されるよう、第2電圧生成回路120を変形しても良い。上記ヒステリシス特性の付与は必須ではなく、故に第2電圧生成回路120からトランジスタ126が省略されることがあっても良い。
【0066】
図9の例では、感温検出素子111を2つの温度検出ダイオード(111a、111b)にて形成している。しかしながら、単一の温度検出ダイオードにて感温検出素子111を形成するようにしても良く、この場合、
図9の構成において温度検出ダイオード111bを削除した上で、温度検出ダイオード111aとしてのトランジスタのエミッタをグランド配線Wgndに接続すれば良い。或いは、互いに直列接続された3以上の温度検出ダイオードにて感温検出素子111を形成するようにしても良い。
【0067】
NPNバイポーラトランジスタの代わりに、PNPバイポーラトランジスタを用いて温度検出ダイオード(111a、111b)を形成しても良い。
【0068】
バイポーラトランジスタを用いて温度検出ダイオード(111a、111b)を形成するのではなく、半導体のPN接合により形成される任意のダイオードを温度検出ダイオードとして用いても良い。
【0069】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0070】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。
【0071】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0072】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0073】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0074】
本開示の一側面に係る温度検出回路(10)は、対象温度(Tx)に対して負の温度特性を有する第1電圧(V1)を生成するよう構成された第1回路(110)と、所定の基準電圧(Vref)の供給を受け、前記基準電圧を前記対象温度に対して正の温度特性を有する第2電圧(V2)に変換するよう構成された第2回路(120)と、前記第1電圧を前記第2電圧と比較することで、前記対象温度と所定の判定温度との高低関係を示す温度検出信号(TSD)を生成するよう構成された比較出力回路(130)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0075】
これにより、対象温度及び判定温度間の高低関係を高精度に検出することが可能となる(換言すれば、検出のばらつきを抑制できる)。
【0076】
上記第1の構成に係る温度検出回路において、前記第2回路は、変換用トランジスタ(121)と、前記変換用トランジスタに直列接続された直列抵抗(122)と、を備え、前記変換用トランジスタは前記基準電圧を受けるベースを有するバイポーラトランジスタであり、前記第2回路は、前記変換用トランジスタ及び前記直列抵抗の直列回路に対し、前記変換用トランジスタのベース-エミッタ間電圧(Vbe)に応じて増減する電流(Ia)を供給し、前記電流に応じて前記第2電圧を生成する構成(第2の構成)であっても良い。
【0077】
これにより、簡素な構成にて基準電圧を第2電圧に変換できる。
【0078】
上記第2の構成に係る温度検出回路において、前記第2回路は、前記直列回路に対し前記電流として第1電流(Ia)を供給するとともに、前記第1電流に比例する第2電流(Ib)を発生させるよう構成されたカレントミラー回路(CM2)と、前記第2電流を受けて前記第2電圧を発生させるよう構成された電圧変換抵抗(125)と、を備える構成(第3の構成)であっても良い。
【0079】
これにより、簡素な構成にて基準電圧を第2電圧に変換できる。
【0080】
上記第3の構成に係る温度検出回路において、前記第2回路において、前記対象温度の上昇に伴い前記変換用トランジスタのベース-エミッタ間電圧が低下することを通じ前記第1電流が増大し、前記第1電流の増大により前記第2電流が増大することで前記第2電圧が上昇する構成(第4の構成)であっても良い。
【0081】
上記第1~第4の構成の何れかに係る温度検出回路において、前記第1回路は、温度検出ダイオード(111a又は111b)を有し、前記温度検出ダイオードの順方向に定電流を供給することで前記温度検出ダイオードに発生する順方向電圧に基づき、前記第1電圧を生成する構成(第5の構成)であっても良い。
【0082】
上記第5の構成に係る温度検出回路において、前記温度検出ダイオードは、互いに接続されたコレクタ及びベースを有するバイポーラトランジスタにて形成される構成(第6の構成)であっても良い。
【0083】
上記第1~第4の構成の何れかに係る温度検出回路において、前記第1回路は、互いに直列接続された複数の温度検出ダイオード(111a及び111b)を有し、前記複数の温度検出ダイオードの順方向に定電流を供給することで前記複数の温度検出ダイオードに発生する複数の順方向電圧の和に基づき、前記第1電圧を生成する構成(第7の構成)であっても良い。
【0084】
上記第7の構成に係る温度検出回路において、各温度検出ダイオードは、互いに接続されたコレクタ及びベースを有するバイポーラトランジスタにて形成される構成(第8の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0085】
1 半導体装置
10 温度検出回路
20 機能回路
21 出力段回路
21H ハイサイドトランジスタ
21L ローサイドトランジスタ
22 制御回路
30 内部電源回路
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
Vfb フィードバック電圧
L1 コイル
C1 出力コンデンサ
TSD 温度検出信号
110 第1電圧生成回路
111 温度検出素子
111a、111b 温度検出ダイオード
120 第2電圧生成回路
121 変換用トランジスタ
122 直列抵抗
123、124、126 トランジスタ
125 電圧変換抵抗
125a、125b 抵抗
130 比較出力回路
131~136 トランジスタ
137 抵抗
138 インバータ回路
139 バッファ回路
161 基準電圧源
162 定電流源
163 トランジスタ
164 インバータ回路
Vref 基準電圧
V1、V2 電圧
CM1~CM3 カレントミラー回路