(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007714
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】複合エンジンおよび航空機
(51)【国際特許分類】
B64D 27/02 20060101AFI20250109BHJP
B64D 27/40 20240101ALI20250109BHJP
B64D 33/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B64D27/02
B64D27/26
B64D33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109294
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 秀之
(72)【発明者】
【氏名】今村 俊介
(72)【発明者】
【氏名】富岡 定毅
(57)【要約】
【課題】流路の切替をスムーズに行うことが可能な複合エンジンおよび航空機を提供する。
【解決手段】複合エンジンは、航空機に搭載される複合エンジンであって、第1速度域に対応する第1エンジンと、第1速度域よりも速い第2速度域に対応する第2エンジンと、第1エンジンの空気流路である第1流路と、前記第2エンジンの空気流路である第2流路とを有する流路部と、流路部における第1流路の開放/閉塞を切替可能な切替部と、を備え、切替部は、第1流路を開放する第1位置と、第1流路を閉塞する第2位置との間を回動可能な回動部材と、スライド移動することで、回動部材を第1位置と第2位置との間を回動させるスライド部材と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に搭載される複合エンジンであって、
第1速度域に対応する第1エンジンと、
前記第1速度域よりも速い第2速度域に対応する第2エンジンと、
前記第1エンジンの空気流路である第1流路と、前記第2エンジンの空気流路である第2流路とを有する流路部と、
前記流路部における前記第1流路の開放/閉塞を切替可能な切替部と、
を備え、
前記切替部は、
前記第1流路を開放する第1位置と、前記第1流路を閉塞する第2位置との間を回動可能な回動部材と、
スライド移動することで、前記回動部材を前記第1位置と前記第2位置との間を回動させるスライド部材と、
を有する、
複合エンジン。
【請求項2】
前記回動部材は、基端部を中心に回動可能に構成され、
前記切替部は、
所定方向に延び、前記スライド部材をスライド移動させるガイドレールと、
前記スライド部材と前記回動部材の前記基端部以外の部位とをリンクすることで、前記スライド部材の移動により前記回動部材を回動させるリンク部材と、
を有する、
請求項1に記載の複合エンジン。
【請求項3】
前記流路部は、前記第1エンジン、前記第2エンジン、および前記切替部を含む筐体で構成され、
前記流路部は、前記第1エンジンと、前記第2エンジンとを隔離する隔離壁を有し、
前記隔離壁は、前記回動部材を回動可能に、前記基端部を支持する、
請求項2に記載の複合エンジン。
【請求項4】
前記切替部は、前記流路部における空気の流入口と、前記流路部における空気の流出口とのそれぞれに設けられている、
請求項3に記載の複合エンジン。
【請求項5】
前記回動部材と対向する位置に配置され、前記回動部材との間で、前記第1流路および前記第2流路の少なくとも1つの流路の一部を構成する対向部材をさらに備え、
前記対向部材は、前記スライド部材において、前記スライド部材の移動に伴い姿勢変更可能に設けられる、
請求項2または請求項3に記載の複合エンジン。
【請求項6】
前記対向部材は、前記少なくとも1つの流路の空気に起因して前記スライド部材にかかる第1力を打ち消す方向の第2力を前記スライド部材に作用させる姿勢で配置される、
請求項5に記載の複合エンジン。
【請求項7】
前記第1エンジン、前記第2エンジンおよび前記流路部を含む、筒状の筐体をさらに備え、
前記第1流路における空気の第1流入口と、前記第2流路における空気の第2流入口とは、それぞれ前記筐体の先端部における異なる位置に配置され、
前記回動部材は、前記第1流入口および前記第2流入口の何れかを閉塞可能な閉塞部を有する、
請求項1に記載の複合エンジン。
【請求項8】
前記スライド部材は、一端が前記回動部材に取り付けられ、伸縮することで前記回動部材を回動させる、
請求項7に記載の複合エンジン。
【請求項9】
前記航空機は、超音速機である、
請求項1に記載の複合エンジン。
【請求項10】
前記航空機は、極超音速機である、
請求項9に記載の複合エンジン。
【請求項11】
機体と、
前記機体の下面に設けられる、請求項1に記載の複合エンジンと、
を備え、
前記機体の下面における前記機体の先端部から前記複合エンジンまでの面は、前記先端部から前記複合エンジンに向かうにつれ下に位置するように傾斜している、
航空機。
【請求項12】
前記面における水平方向に対する角度は、前記機体の先端部と、前記複合エンジンにおける空気の流入口の下縁部とを結ぶ線の、前記水平方向に対する角度より小さい、
請求項11に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合エンジンおよび航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機において、複合エンジンを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。複合エンジンは、複数の速度域のそれぞれに対応した複数のエンジンを含む。複合エンジンでは、複数のエンジンのそれぞれの空気流路の開放/閉塞を切り替え可能な可動要素が設けられている。この構成では、可動要素が上下に回動することで、2つの空気流路を切り替えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可動要素には圧力がかかるため、空気流路を切り替える際に、可動要素が圧力の影響により、動作しにくくなり、ひいては流路の切替をスムーズに行うことができないという問題が生じる。特許文献1に記載の構成は、可動要素を回動させる機構について開示されていないので、上記の問題を解決することができない。
【0005】
本開示の目的は、流路の切替をスムーズに行うことが可能な複合エンジンおよび航空機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る複合エンジンは、
航空機に搭載される複合エンジンであって、
第1速度域に対応する第1エンジンと、
前記第1速度域よりも速い第2速度域に対応する第2エンジンと、
前記第1エンジンの空気流路である第1流路と、前記第2エンジンの空気流路である第2流路とを有する流路部と、
前記流路部における前記第1流路の開放/閉塞を切替可能な切替部と、
を備え、
前記切替部は、
前記第1流路を開放する第1位置と、前記第1流路を閉塞する第2位置との間を回動可能な回動部材と、
スライド移動することで、前記回動部材を前記第1位置と前記第2位置との間を回動させるスライド部材と、
を有する。
【0007】
本開示に係る航空機は、
機体と、
前記機体の下面に設けられる、上記の複合エンジンと、
を備え、
前記機体の下面における前記機体の先端部から前記複合エンジンまでの面は、前記先端部から前記複合エンジンに向かうにつれ下に位置するように傾斜している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、流路の切替をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る複合エンジンを備えた航空機を示す図である。
【
図11】本開示の第2の実施の形態に係る複合エンジンを備えた航空機を示す図である。
【
図12】複合エンジンにおける第1ダクト部分の側断面図である。
【
図13】複合エンジンにおける第2ダクト部分の側断面図である。
【
図14】第1流入口を開放した状態の切替部を示す図である。
【
図15】第2流入口を開放した状態の切替部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の第1の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る複合エンジンを備えた航空機を示す図である。また、本実施の形態の航空機1の構造を説明するにあたり、各図に示す直交座標系を使用する。航空機1は、例えば、地上に位置した際に、X方向が前後方向、Y方向が左右方向、Z方向が上下方向となるように配置される。
【0011】
図1に示すように、航空機1は、例えば、大気中をマッハ5以上の極超音速で飛行可能な極超音速機であり、機体10と、複合エンジン100とを有する。航空機1は、機体10(主翼部分)の前縁で発生する衝撃波によって、機体10の下面の圧力が上昇して大きな揚力を発生する形状(いわゆるウェーブライダー形状)を有する。
【0012】
機体10は、Z方向から見て、略三角形状に構成されており、胴体部11と、主翼12と、操舵翼13と、外翼14と、垂直尾翼15とを有する。
【0013】
胴体部11は、航空機1の胴体を構成する部分であり、機体10のY方向の中央部分に位置している。胴体部11におけるX方向の+側の端部付近の部分は、客室(不図示)である。胴体部11における客室よりもX方向の-側の部分は、燃料タンクを格納する部分(不図示)である。客室および燃料タンクの周囲には、断熱材が設けられる。
【0014】
図2に示すように、胴体部11のZ方向の-側の面(下面)には、脚部11Aが設けられている。脚部11Aは、胴体部11のX方向の+側の部分に1つ、胴体部11のX方向の-側の部分に2つ、設けられている。また、胴体部11の脚部11Aに対応する部分には、脚部11Aを格納するための格納部11Bが設けられている。脚部11Aは、格納部11B内の位置と、格納部11B外の位置との間で回動可能となっており、航空機1の飛行中は、格納部11B内に格納される。
【0015】
また、胴体部11のZ方向の-側の面(下面)には、複合エンジン100が設けられている。また、
図3に示すように、胴体部11のZ方向の-側の面における、機体10の先端部から複合エンジン100(後述する筐体110)までの面11Cは、先端部から複合エンジン100に向かうにつれZ方向の-側(下側)に位置するように傾斜している。具体的には、面11CにおけるX方向(水平方向)に対する角度は、機体10の先端部と、複合エンジン100(後述する筐体110の流入口112)の下縁部とを結ぶ線Lの、X方向に対する角度より小さくなっている。
【0016】
図1に示すように、主翼12は、胴体部11のY方向の両端部に配置される。主翼12は、胴体部11のX方向の略全体にわたって設けられている。主翼12は、X方向の-側に向かうにつれ、胴体部11からの突出量が大きくなるように、胴体部11から延びて構成されている。
【0017】
また、胴体部11および主翼12のZ方向の+側の面(上面)は、空気と干渉しないように、XY平面と略平行になるように構成されている(
図3も参照)。
【0018】
操舵翼13は、主翼12のX方向の-側の端部(後端)に設けられている(
図2も参照)。操舵翼13は、中立位置で後縁の高さが一定となるように、主翼12に設けられている。言い換えると、中立位置で操舵翼13の後縁の高さが一定となるように、主翼12の高さが設定されている。
【0019】
外翼14は、空力中心を調整して機体10の飛行姿勢を維持するものであり、各主翼12のY方向の端部における、X方向の-側の端部部分に設けられている。
【0020】
垂直尾翼15は、主翼12の後端部(X方向の-側)における、上面(主翼12のZ方向の+側の面)に2つ設けられている。2つの垂直尾翼15は、Z方向の+側に向かうにつれ、互いに離れるように傾斜してそれぞれ配置されている。これにより、機体10が気流に対して高い迎角で飛行する際、気流前方から見て垂直尾翼15が主翼12の背後に隠れないようにして方向安定性を得ることが可能となる。
【0021】
図3に示すように、複合エンジン100は、2種類のエンジンが設けられており、胴体部11のZ方向の-側の面に設けられている。複合エンジン100が胴体部11のZ方向の-側の面(下面)に設けられることで、当該下面に発生した衝撃波によって圧力が高まった空気を複合エンジン100に取り込むことが可能となり、ひいてはエンジンの推力を増大させることができる。複合エンジン100は、筐体110と、第1エンジン120と、第2エンジン130と、切替部140とを有する。
【0022】
筐体110は、第1エンジン120および第2エンジン130を収納している。筐体110の内部には、隔離壁111が設けられている。隔離壁111は、第1エンジン120と第2エンジン130とを隔離するためのものである。隔離壁111に対してZ方向の+側の空間には、第1エンジン120が配置され、隔離壁111に対してZ方向の-側の空間には、第2エンジン130が配置されている。
【0023】
筐体110のX方向の+側には、第1エンジン120または第2エンジン130に向かう空気の流入口112が設けられている。筐体110のX方向の-側には、第1エンジン120または第2エンジン130から排出される空気の流出口113が設けられている。筐体110における流入口112および流出口113付近には、可動壁が装着されており、飛行速度に応じて最適な空気流入および燃焼ガス排出を行うことが可能である。
【0024】
第1エンジン120は、第1速度域に対応するターボジェットエンジンである。第1速度域は、例えば、離陸(マッハ0)からマッハ5までの速度域であっても良い。第1エンジン120は、予冷器121と、ターボジェット122と、ラム燃焼器123とを有する。
【0025】
予冷器121は、ターボジェット122よりもX方向の+側に設けられている。この予冷器121により、航空機1の高速飛行時の空力加熱を緩和することができ、ひいては、第1速度域の範囲における連続作動が可能となっている。
【0026】
ラム燃焼器123は、ターボジェット122よりもX方向の-側に設けられている。第1エンジン120では、流入口112から流入した空気が、予冷器121、ターボジェット122およびラム燃焼器123を経由して流出口113から排出されるようになっている。
【0027】
また、第1エンジン120には、ターボジェット122を経由せずに、ラム燃焼器123に空気を導入可能なダクト122Aが設けられている。これにより、航空機1の飛行計画の必要に応じて、ターボ・ラムジェットとして作動することが可能である。
【0028】
第2エンジン130は、第1エンジン120とは異なる速度域(第2速度域)に対応するスクラムジェットエンジンである。第2速度域は、例えば、マッハ5以上の速度域であっても良い。第2エンジン130は、例えば、公知の構成であっても良い。
【0029】
第2エンジン130では、流入口112を通過した空気がスクラム燃焼器に導入され、スクラム燃焼器で超音速燃焼によって高温となった排気ガスが、流出口113を通過して機体10の後方に排出される。このとき、筐体110の流入口112のX方向の-側および流出口113のX方向の+側部分には、機体10をZ方向の+側に押す揚力が発生する。また、流入口112部分には、機体10を後方(X方向の-側)に押す抗力が発生し、流出口113部分には、機体10を前方(X方向の+側)に押す推力が発生する。この場合、スクラム燃焼器での超音速燃焼によって、圧力が高まっているので、流入口112における抗力よりも、流出口113における推力が大きくなることにより、機体10全体をX方向の+側に押す推力が発生する。
【0030】
切替部140は、筐体110内に設けられ、筐体110における空気流路を第1流路110Aと、第2流路110Bとの何れかに切り替える。つまり、切替部140は、筐体110における第1流路110Aと第2流路110Bとの間の開放/閉塞を切替可能に構成されている。
【0031】
第1流路110Aは、第1エンジン120に対応する空気流路であり、隔離壁111よりもZ方向の+側の空間に対応する流路である。第1流路110Aに空気を導入する場合、隔離壁111よりもZ方向の-側の空間にも空気が供給される状態となる。
【0032】
第2流路110Bは、第2エンジン130に対応する空気流路であり、隔離壁111よりもZ方向の-側の空間に対応する流路である。第2流路110Bに空気を導入して第2エンジン130を作動させる場合、
図4に示すように、隔離壁111よりもZ方向の+側の空間は、切替部140により、流入口112に対して閉塞された状態となる。筐体110は、本開示の「流路部」に対応する。
【0033】
切替部140は、第1切替部140Aと、第2切替部140Bとを有する。第1切替部140Aは、筐体110の流入口112のX方向の+側に設けられ、流入口112から流入する空気を第1流路110Aに流すか第2流路に流すかを選択できるように構成されている。第2切替部140Bは、筐体110の流出口113に設けられ、流出口113のZ方向の上側に流出する空気流路を第1流路および第2流路の何れかに切替可能に構成されている。
【0034】
まず、第1切替部140Aの詳細について説明する。
【0035】
第1切替部140Aは、隔離壁111よりもZ方向の+側、かつ、第1エンジン120よりもX方向の+側に配置されている。
図5に示すように、第1切替部140Aは、回動部材141Aと、ガイドレール142Aと、スライド部材143Aと、アクチュエータ144Aと、リンク部材145Aと、第1対向部材146と、第2対向部材147と、を有する。
【0036】
回動部材141Aは、隔離壁111の前端部(X方向の+側の端部)において、基端部を中心に回動可能に支持されている。回動部材141Aの長さは、先端部が流入口112の下縁部と接触する程度の長さである。そのため、回動部材141Aは、先端部が流入口112の下縁部と接触する位置(
図5、
図6に示す第1位置)に配置された際、第1流路110Aに空気を流入させる。
【0037】
また、回動部材141Aは、第1位置よりZ方向の+側(上側)に回動することにより、後述する第1対向部材146と接触する。言い換えると、回動部材141Aは、先端部が第1対向部材146と接触する位置(
図7に示す第2位置)に配置された際、第1流路110Aを閉塞する。
【0038】
ガイドレール142Aは、X方向に延びるレール部材であり、筐体110における回動部材141AよりもZ方向の+側で、回動部材141Aと対向する位置に配置されている。ガイドレール142Aは、スライド部材143AをX方向にスライド移動可能に支持する。
【0039】
スライド部材143Aは、アクチュエータ144Aに接続されており、アクチュエータ144Aの動作に基づいて、ガイドレール142A上をスライド移動する。アクチュエータ144Aは、例えば、公知の構成等、スライド部材143Aをスライド移動可能な構成である限り、どのようなものであっても良い。
【0040】
また、スライド部材143Aは、3つの軸部A1,A2,A3を有する。軸部A1,A2,A3は、スライド部材143AからY方向の両側にそれぞれ突出して設けられている。軸部A1は、3つの軸部A1,A2,A3のうち、X方向において最も+側に位置する。軸部A2は、軸部A1よりもX方向の-側に位置する。軸部A3は、3つの軸部A1,A2,A3のうち、X方向において最も-側に位置する。
【0041】
3つの軸部A1,A2,A3の各先端部には、支持部材A4が設けられている。支持部材A4は、板状に構成されており、スライド部材143AのY方向の両側のそれぞれに設けられている。支持部材A4は、リンク部材145Aを支持する。
【0042】
リンク部材145Aは、支持部材A4を介して、回動部材141Aとスライド部材143Aとをリンクする部材である。リンク部材145Aは、一端が、支持部材A4における、軸部A1よりもZ方向の-側の部位に接続され、他端が、回動部材141Aの基端部および先端部以外の部位に接続されている。
【0043】
リンク部材145Aにより、スライド部材143Aのスライド移動に連動して、回動部材141Aが回動する。すなわち、スライド部材143Aは、スライド移動することで、回動部材141Aを第1位置と第2位置との間を回動させる。
【0044】
具体的には、
図6に示すように、スライド部材143Aが、ガイドレール142Aにおける、X方向の最も-側に位置する場合、回動部材141Aは、第1位置に位置する。
図7に示すように、スライド部材143Aが、ガイドレール142Aにおける、X方向の最も-側の位置からX方向の+側に移動すると、回動部材141Aは、リンク部材145Aにより、第1位置からZ方向の+側に回動して、第2位置に移動する。
【0045】
第1対向部材146は、板状に構成されており、筐体110における回動部材141Aと対向する位置に配置される。具体的には、第1対向部材146は、筐体110内のガイドレール142AよりもX方向の+側の部位に基端部146Aが支持され、基端部146Aを中心に回動可能である。また、第1対向部材146は、Z方向の-側に向かうにつれX方向の-側に位置するように傾斜した方向に沿った姿勢で配置されている。第1対向部材146の先端部は、回動部材141Aと、スライド部材143Aとの間に位置する。第1対向部材146の先端部には、軸部A2に支持される被支持部146Bが設けられる。
【0046】
被支持部146Bは、第1対向部材146の先端部から、Z方向の+側に向かうにつれX方向の-側に位置するように傾斜した方向に延びている。被支持部146Bには、長孔146Cが形成されている。被支持部146Bは、軸部A2と長孔146Cとが係合することで、軸部A2に支持される。
【0047】
また、スライド部材143Aがスライド移動すると、長孔146C内を軸部A2がスライドするので、スライド部材143Aのスライド移動に伴い、第1対向部材146の姿勢が変更される。
【0048】
具体的には、
図6に示すように、第1対向部材146は、回動部材141Aが第1位置に位置する場合、回動部材141Aと離間している。これにより、第1流路110Aが開放されるので、第1対向部材146と回動部材141Aとの間を空気J1が通過して、第1流路110Aに入り込む。この場合、長孔146Cの上縁と、軸部A2とが係合した状態となっている。また、この状態において、回動部材141AのZ方向の―側を通過する空気が第2流路110Bに流入する。
【0049】
このように、回動部材141Aが第1位置に位置する場合、第1対向部材146は、回動部材141Aとの間で、第1流路110Aの一部を構成する。
【0050】
また、
図7に示すように、第1対向部材146は、回動部材141Aが第2位置に位置する場合、回動部材141Aと接触する。この際、回動部材141Aの先端部が、流入口112の下縁部と離間する。これにより、第1流路110Aが閉塞され、第1対向部材146および回動部材141Aの下方を空気J1が通過して、第2流路110Bに入り込む。
【0051】
この場合、長孔146Cの下縁と、軸部A2とが係合した状態となり、第1対向部材146の姿勢が、
図6に示す位置よりも、Z方向の+側に回動した状態となる。つまり、第1対向部材146の姿勢は、回動部材141Aの回動動作に倣う側に変更される。
【0052】
このように、回動部材141Aが第2位置に位置する場合、第1対向部材146が回動部材141Aと接触しつつ、回動部材141Aの回動動作に倣う側に姿勢を変更可能であるので、所望の位置に回動部材141Aを位置させやすくすることができる。
【0053】
第2対向部材147は、板状に構成されており、筐体110における回動部材141Aと対向する位置に配置される。具体的には、第2対向部材147は、筐体110内のガイドレール142AよりもX方向の-側の部位に基端部147Aが支持されることで、基端部147Aを中心に回動可能である。第2対向部材147は、Z方向の-側に向かうにつれX方向の+側に位置するように傾斜した方向に沿った姿勢で配置されており、第2対向部材147の先端部が、回動部材141Aと、スライド部材143Aとの間に位置する。第2対向部材147の先端部には、軸部A3に支持される被支持部147Bが設けられる。
【0054】
被支持部147Bは、第2対向部材147の先端部から、Z方向の+側に延びている。被支持部147Bには、長孔147Cが形成されている。被支持部147Bは、軸部A3と長孔147Cとが係合することで、軸部A3に支持される。
【0055】
また、スライド部材143Aがスライド移動すると、長孔147C内を軸部A3がスライドするので、スライド部材143Aのスライド移動に伴い、第2対向部材147の姿勢が変更される。
【0056】
具体的には、
図6に示すように、第2対向部材147は、回動部材141Aが第1位置に位置する場合、回動部材141Aと離間している。これにより、第2対向部材147と回動部材141Aとの間を空気J1が、通過して、第1流路110Aのさらに奥に入り込む。この場合、長孔147Cの上縁と、軸部A3とが係合した状態となっている。
【0057】
このように、回動部材141Aが第1位置に位置する場合、第2対向部材147は、回動部材141Aとの間で、第1流路110Aの一部を構成する。
【0058】
また、
図7に示すように、第2対向部材147は、回動部材141Aが第2位置に位置する場合、回動部材141Aの上方に位置する。この場合、長孔147Cの下縁と、軸部A3とが係合した状態となっている。
【0059】
このように、回動部材141Aが第2位置に位置する場合、第2対向部材147が姿勢を変更可能であるので、回動部材141Aが第1位置から第2位置に移動しても、第2対向部材147が回動部材141Aの移動を干渉することを抑制することができる。
【0060】
また、
図6に示すように、第1対向部材146および第2対向部材147は、第1流路110Aの空気に起因してスライド部材143Aにかかる第1力を打ち消す方向の第2力を、スライド部材143Aに作用させる姿勢で配置される。
【0061】
第1対向部材146および第2対向部材147のそれぞれと、回動部材141Aとで、第1流路110Aの一部を構成するので、各部材には、第1流路110Aに入り込む空気J1に起因した圧力がかかる。回動部材141Aは、第1流路110AのZ方向の-側の壁を構成するため、回動部材141Aには、Z方向の-側に向かう方向に圧力P1がかかる。圧力P1は、回動部材141Aの両面に係る圧力の差圧である。
【0062】
回動部材141Aはリンク部材145Aを介してスライド部材143Aと接続されているので、回動部材141Aにかかる圧力P1に起因した力がスライド部材143Aに作用する。具体的には、圧力P1に起因して、回動部材141Aとリンク部材145Aとの接続部分において、圧力P1と同じ方向(Z方向の-側に向かう方向)に力F1がかかる。力F1は、圧力P1の面積積分によって求まる力である。
【0063】
この場合、リンク部材145Aは、Z方向の-側に向かうにつれ、X方向の-側に位置するように傾斜しているため、リンク部材145Aには、力F1に起因して、リンク部材145Aに沿った方向の力F2がかかる。これにより、リンク部材145Aと、スライド部材143Aとの接続部分には、力F2の水平方向成分(X方向の-側に向かう方向)の力F3がかかることになる。つまり、回動部材141Aにかかる圧力P1に起因して、スライド部材143Aに水平方向の力F3がかかる。なお、リンク部材145Aと、スライド部材143Aとの接続部分における、力F2の垂直成分は、ガイドレール142Aで拘束される。
【0064】
また、第1対向部材146は、Z方向の-側に向かうにつれX方向の-側に位置するように傾斜した方向に沿って配置されているため、第1流路110Aが、X方向の-側に向かうにつれ狭まる。その結果、第1流路110Aを超音速で流れる空気J1が衝撃波によって圧縮される。この空気J1の圧縮に起因して、圧縮された空気が第1対向部材146のX方向-側の隙間からZ方向+側に流入することで、第1対向部材146には、第1流路110Aを縮小する方向(Z方向の-側に向かうにつれX方向の+側に位置するように傾斜した方向)の圧力P2がかかる。圧力P2は、第1対向部材146の両面にかかる圧力の差圧である。
【0065】
また、第1対向部材146は、被支持部146Bが、スライド部材143Aの軸部A2と接しているので、スライド部材143Aの軸部A2の部分に、圧力P2と平行な方向の力F4がかかる。そのため、スライド部材143Aの軸部A2の部分には、力F4の水平方向成分(X方向の+側に向かう方向)の力F5がかかることになる。つまり、第1対向部材146にかかる圧力P2に起因して、スライド部材143Aに水平方向の力F5がかかる。力F5は、圧力P2の面積積分によって求まる力である。なお、スライド部材143Aの軸部A2の部分における、力F4の垂直成分は、ガイドレール142Aで拘束される。
【0066】
力F5は、回動部材141Aにかかる圧力P1に起因する力F3とは逆向きの力であるので、力F3を打ち消す力である。
【0067】
また、第2対向部材147は、Z方向の-側に向かうにつれX方向の+側に位置するように傾斜した方向に沿って配置されているため、第1流路110Aが、X方向の-側に向かうにつれ広がる。その結果、第1流路110Aを流れる音速以下の空気J1の速度が低下し、圧力が上昇する。この空気J1の圧力上昇に起因して、第2対向部材147には、第1流路110Aを拡大する方向(Z方向の+側に向かうにつれX方向の+側に位置するように傾斜した方向)の圧力P3がかかる。圧力P3は、第2対向部材147の両面にかかる圧力の差圧である。
【0068】
また、第2対向部材147は、被支持部147Bが、スライド部材143Aの軸部A3と接しているので、スライド部材143Aの軸部A3の部分に、圧力P3と平行な力F6がかかる。そのため、スライド部材143Aの軸部A3の部分には、力F6の水平方向成分(X方向の+側に向かう方向)のF7がかかることになる。つまり、第2対向部材147にかかる圧力P3に起因して、スライド部材143Aに水平方向の力F7がかかる。力F7は、圧力P3の面積積分によって求まる力である。なお、スライド部材143Aの軸部A3の部分における、力F6の垂直成分は、ガイドレール142Aで拘束される。
【0069】
力F7は、回動部材141Aにかかる圧力P1に起因する力F3とは逆向きの力であるので、力F3を打ち消す力である。
【0070】
以上のことから、第1切替部140Aでは、回動部材141Aにかかる圧力P1に起因して、スライド部材143Aに水平方向の力F3がかかる。その一方、第1対向部材146および第2対向部材147にかかる圧力P2,P3に起因して、スライド部材143Aに力F3を打ち消す力F5,F7がかかる。すなわち、第1対向部材146および第2対向部材147により、スライド部材143Aにかかる、回動部材141Aに起因した水平方向の力F3を低減することができる。
【0071】
次に、第2切替部140Bの詳細について説明する。
【0072】
図3に示すように、第2切替部140Bは、筐体110における、隔離壁111よりもZ方向の+側、かつ、第1エンジン120よりもX方向の-側に配置されている。
図8に示すように、第2切替部140Bは、回動部材141Bと、ガイドレール142Bと、スライド部材143Bと、アクチュエータ144Bと、リンク部材145Bと、対向部材148と、を有する。
【0073】
回動部材141Bは、隔離壁111の後端部(X方向の-側の端部)において、基端部を中心に回動可能に支持されている。
【0074】
また、筐体110における、隔離壁111および回動部材141BよりもZ方向の+側には、流路形成壁114が設けられている。流路形成壁114は、隔離壁111の後端部に設けられる燃料噴射器115に対応する部分から、X方向の-側に延びて、流出口113の上縁に接続される。燃料噴射器115は、第1エンジン120から噴射される燃焼ガスに更に燃料を噴射するために構成された部分である。
【0075】
流路形成壁114は、回動部材141Bと対向して配置されることで、回動部材141Bとの間で、第1流路の一部を構成する。
【0076】
また、回動部材141Bは、Z方向の-側(下側)に回動した位置(
図8、
図9に示す第3位置)に配置することで、第1流路110Aを開放する。
【0077】
ガイドレール142Bは、X方向に延びるレール部材であり、流路形成壁114における、回動部材141Bとは反対側に配置されている。ガイドレール142Bは、スライド部材143BをX方向にスライド移動可能に支持する。
【0078】
スライド部材143Bは、アクチュエータ144Bに接続されており、アクチュエータ144Bの動作に基づいて、ガイドレール142B上をスライド移動する。なお、アクチュエータ144Bは、例えば、公知の構成等、スライド部材143Bをスライド移動可能な構成である限り、どのようなものであっても良い。
【0079】
また、スライド部材143Bは、1つの軸部B1を有する。軸部B1は、スライド部材143BからY方向の両側にそれぞれ突出して設けられている。軸部B1の各先端部は、リンク部材145Bを支持する。
【0080】
リンク部材145Bは、回動部材141Bとスライド部材143Bとをリンクする部材である。リンク部材145Bは、一端が、軸部B1に接続され、他端が、回動部材141Bの基端部および先端部以外の部位に接続されている。
【0081】
リンク部材145Bにより、スライド部材143Bのスライド移動に連動して、回動部材141Bが回動する。すなわち、スライド部材143Bは、スライド移動することで、回動部材141Bを第3位置と第4位置との間を回動させる。
【0082】
具体的には、
図9に示すように、スライド部材143Bが、ガイドレール142Bにおける、X方向の+側の端部付近に位置する場合、回動部材141Bは、第3位置に位置する。これにより、第1流路110Aが開放され、燃料噴射器115の隙間を通過した空気J2が筐体110の外部に排出される。
【0083】
また、スライド部材143Bが、ガイドレール142Bにおける、X方向の+側の端部付近の位置(
図9に示す位置)からX方向の-側の端部付近の位置(
図10に示す位置)に移動すると、
図10に示すように、回動部材141Bは、リンク部材145Bにより、第3位置からZ方向の+側に回動して、第4位置に移動する。これにより、第2流路110Bを流れる空気J3が、回動部材141Bの下方を通過して、筐体110の外部に排出される。
【0084】
対向部材148は、回動部材141Bと対向する位置に配置され、被支持部148Aと、対向部148Bとを有する。被支持部148Aは、アクチュエータ144Bに接続された移動部材149に回動可能に支持されている。移動部材149は、アクチュエータ144Bの直線移動する部分にスライド部材143Bとともに接続されている。移動部材149は、スライド部材143BよりもX方向の+側に位置している。
【0085】
対向部148Bは、被支持部148Aに接続され、回動部材141Bと対向する位置に配置される。対向部148Bの回動部材141Bとの対向面は、X方向の-側に向かうにつれ、Z方向の+側に位置するように傾斜する傾斜面B2となっている。
【0086】
回動部材141Bが第3位置に位置する際、回動部材141Bと傾斜面B2とで第1流路110Aの一部を構成する。
【0087】
回動部材141Bの長さは、先端部が流路形成壁114と接触する程度の長さである。そのため、回動部材141Bは、先端部が流路形成壁114と接触する位置(
図10に示す第4位置)に配置された際、第1流路110Aを閉塞するとともに、第2流路110BのZ方向+側の壁面を構成する。
【0088】
また、
図10に示すように、移動部材149がスライド部材143BとともにX方向の-側に移動すると、対向部148Bが被支持部148Aを中心にZ方向の+側およびX方向の+側に回動する。すなわち、対向部材148の姿勢が変更される。
【0089】
このように、回動部材141Bが第1流路110Aを閉塞する側に移動しても、対向部材148が姿勢を変更するので、対向部材148が回動部材141Bの移動を干渉することを抑制することができる。
【0090】
また、対向部材148は、第1流路110Aの空気に起因してスライド部材143Bにかかる第1力を打ち消す方向の第2力を、スライド部材143Bに作用させる姿勢で配置される。
【0091】
図9に示すように、回動部材141Bには、第1流路110AのZ方向の-側の壁を構成するため、Z方向の-側に向かう方向に圧力P4がかかる。圧力P4は、回動部材141Bの両面にかかる圧力の差圧である。
【0092】
回動部材141Bはリンク部材145Bを介してスライド部材143Bと接続されているので、回動部材141Bにかかる圧力P4がスライド部材143Aに影響する。具体的には、圧力P4に起因して、回動部材141Bとリンク部材145Bとの接続部分において、圧力P4と同じ方向(Z方向の-側に向かう方向)に力F8がかかる。
【0093】
この場合、リンク部材145Bは、Z方向の-側に向かうにつれ、X方向の+側に位置するように傾斜しているため、リンク部材145Bには、力F8に起因して、Z方向の-側に向かうにつれ、X方向の+側に位置するように傾斜した方向の力F9がかかる。これにより、リンク部材145Bと、スライド部材143Bとの接続部分には、力F9の水平方向成分(X方向の+側に向かう方向)の力F10がかかることになる。つまり、回動部材141Bにかかる圧力P4に起因して、スライド部材143Bに水平方向の力F10がかかる。力F10は、圧力P4の面積積分によって求まる力である。なお、リンク部材145Bと、スライド部材143Bとの接続部分における、力F9の垂直成分は、ガイドレール142Bで拘束される。
【0094】
また、対向部材148の回動部材141Bとの対向面は、X方向の-側に向かうにつれ、Z方向の+側に位置するように傾斜する傾斜面B2であるため、第1流路110Aが、X方向の-側に向かうにつれ広がる。その結果、第1流路110Aを流れる空気の圧力P5がかかる。
【0095】
また、対向部材148には、圧力P5と平行な方向の力F11がかかる。また、被支持部148Aが、スライド部材143Bが接続されたアクチュエータ144Bに接続された移動部材149と接しているので、移動部材149との接続部分に、力F11によって対向部材の回転軸周りに発生するモーメントを受けて水平方向の力F12がかかることになる。つまり、対向部材148にかかる圧力P5に起因して、移動部材149に水平方向の力F12がかかる。力F11は、圧力P5の面積積分によって求まる力である。
【0096】
力F12は、回動部材141Bにかかる圧力P4に起因する力F10とは逆向きの力であるので、力F10を打ち消す力である。
【0097】
以上のことから、第2切替部140Bでは、回動部材141Bにかかる圧力P4に起因して、スライド部材143Bに水平方向の力F10がかかる。その一方、対向部材148にかかる圧力P5に起因して、移動部材149を介して、スライド部材143Bに力F10を打ち消す力F12がかかる。すなわち、対向部材148により、スライド部材143Bにかかる、回動部材141Bに起因した水平方向の力F10を低減することができる。
【0098】
以上のように構成された第1の実施の形態によれば、スライド部材がスライド移動することで、回動部材を第1位置と第2位置との間、または第3位置と第4位置の間を回動させる。すなわち、スライド部材が回動部材の回動動作をアシストするので、回動部材をスムーズに回動させることができ、ひいては流路の切替をスムーズに行うことができる。
【0099】
また、スライド部材が、ガイドレール上を移動し、かつ、リンク部材を介して、回動部材を回動させるので、スライド部材をスムーズに移動させつつ、その移動に連動して回動部材をスムーズに回動させることができる。
【0100】
また、対向部材は、スライド部材の移動に伴い姿勢変更可能に設けられるので、回動部材との関係で、第1流路の一部を構成することができ、かつ、第1流路を閉塞する際に姿勢を変更させることで回動部材の移動を干渉することを抑制することができる。
【0101】
また、対向部材は、第1流路の空気力に起因してスライド部材にかかる第1力を打ち消す方向の第2力を、圧力に基づいてスライド部材に作用させる姿勢で配置される。その結果、対向部材により、スライド部材にかかる、回動部材に起因した水平方向の力を低減することができる。
【0102】
また、機体10の下面における機体10の先端部から複合エンジン100までの面が、先端部から複合エンジンに向かうにつれ下に位置するように傾斜しているので、複合エンジン100に入り込む空気の流路が、複合エンジン100に到達するまでに狭くなる。
【0103】
そのため、複合エンジン100の筐体110に入り込む空気を圧縮することができる。
【0104】
ところで、機体10の前縁で発生する衝撃波によって空気の圧力が高まることにより、機体10の下面が揚力を受けることができる一方、下面の傾斜角が比較的大きいと、衝撃波に基づく抗力の影響を受ける可能性がある。
【0105】
本実施の形態では、機体10の下面における機体10の先端部から複合エンジン100までの面における水平方向に対する角度が、機体10の先端部と、複合エンジン100における空気の流入口112の下縁部とを結ぶ線の、水平方向に対する角度より小さい。
【0106】
つまり、上記の面における水平方向に対する角度を最低限に抑えることができるので、衝撃波に基づく揚力の恩恵を受けつつ、抗力の影響を最低限に抑えることができる。
【0107】
また、機体10の前縁で発生する衝撃波が、複合エンジン100における流入口112の下縁部に当たる場合、複合エンジン100における空気の流入の効率が良好になる。しかし、航空機1の速度に応じて発生する衝撃波の角度(方向)は異なるものとなる。そのため、機体10の先端部と、複合エンジン100における空気の流入口112の下縁部とを結ぶ線が、例えば、最高速度や利用頻度の高い速度で発生する衝撃波と一致するように、筐体110を設定しても良い。
【0108】
次に、本開示の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、第1エンジン120と第2エンジン130とが、筐体110内で、隔離壁111を介してZ方向に並んで収納されていた。第2の実施の形態では、第1エンジンおよび第2エンジンが筐体内で、X方向に並んで収納されていても良い。
【0109】
図11に示すように、第2の実施の形態に係る航空機1は、機体10と、複合エンジン200とを有する。航空機1は、複合エンジン200以外の構成は、第1の実施の形態と同様であっても良い。
【0110】
複合エンジン200は、機体10のZ方向の-側の面に設けられたエンジン筐体部10Aに格納されている。
図12に示すように、複合エンジン200は、筐体210と、ターボジェット220と、ラム燃焼器230と、切替部240とを有する。
【0111】
筐体210は、X方向に延びる筒状に構成されている。筐体210の内部には、ターボジェット220およびラム燃焼器230が収納されている。また、
図12および
図13に示すように、筐体210には、第1ダクト211と、第2ダクト212とが設けられている。
【0112】
第1ダクト211および第2ダクト212は、筐体210に取り込んだ空気の流路を構成するダクトであり、X方向に延びて構成される。第1ダクト211および第2ダクト212のそれぞれは、筐体210の先端面(X方向の端面)を構成する円の周方向において異なる位置に配置されている(
図14および
図15も参照)。第1ダクト211および第2ダクト212のそれぞれは、複数設けられており、第1ダクト211と第2ダクト212とが交互に並ぶように配置されている。
【0113】
ターボジェット220は、X方向において筐体210の中央部分に配置されている。ラム燃焼器230は、X方向において筐体210の-側の端部部分に配置されている。また、切替部240は、X方向において筐体210の+側の端部部分に配置されている。
【0114】
第1ダクト211は、切替部240から、ターボジェット220に向けて延びており、ターボジェット220に空気を導入可能なダクトである。また、第1ダクト211は、ターボジェット220からラム燃焼器230に接続される部分を含む。つまり、第1ダクト211に導入された空気は、ターボジェット220に導入され、ラム燃焼器230を経由して、筐体210のX方向の-側の端部から排出される。
【0115】
第1ダクト211は、航空機1の速度域が第1速度域(例えば、マッハ0~マッハ2)である、ターボジェット作動時に適用される。ターボジェット作動時は、ターボジェット220に接続された回転式発電機が作動して、機体10に電力が供給される。ターボジェット220およびラム燃焼器230は、第2の実施の形態における「第1エンジン」に対応する。第1ダクト211は、第2の実施の形態における「第1流路」に対応する。
【0116】
第2ダクト212は、切替部240から、直接ラム燃焼器230に向けて延びており、ラム燃焼器230に直接空気を導入可能なダクトである。第2ダクト212に導入された空気は、ラム燃焼器230を経由して、筐体210のX方向の-側の端部から排出される。
【0117】
第2ダクト212は、航空機1の速度域が第2速度域(例えば、マッハ2~マッハ5)である、ラムジェット作動時に適用される。ラムジェット作動時は、ラム燃焼器230付近に配置された燃料電池231で発電して、機体10に電力が供給される。ラム燃焼器230は、第2の実施の形態における「第2エンジン」に対応する。第2ダクト212は、第2の実施の形態における「第2流路」に対応する。
【0118】
図14に示すように、切替部240は、第1ダクト211における空気の第1流入口211Aと、第2ダクト212における空気の第2流入口212Aとの開放/閉塞を切り替える。切替部240は、回動部材241と、スライド部材242とを有する。
【0119】
回動部材241は、回動可能な部材であり、内側円環部241Aと、外側円環部241Bと、閉塞部241Cとを有する。
【0120】
内側円環部241Aおよび外側円環部241Bは、円環状に構成されている。内側円環部241Aは、外側円環部241Bの内側に配置され、外側円環部241Bよりも径が小さく構成されている。外側円環部241Bは、筐体210の先端部の円の径と略同じ径で構成されている。
【0121】
閉塞部241Cは、内側円環部241Aと外側円環部241Bとを接続し、第1流入口211Aおよび第2流入口212Aの何れかを閉塞可能に構成されている。閉塞部241Cは、複数設けられている。閉塞部241Cの数は、第1ダクト211の数または第2ダクト212の数に応じた数に設定されている。
【0122】
第2の実施の形態では、第1ダクト211および第2ダクト212の数が、それぞれ12個であるので、閉塞部241Cの数は12個に設定されている。なお、第1ダクト211、第2ダクト212および閉塞部241Cの数は、1以上の数に適宜設定可能である。
【0123】
また、各閉塞部241Cは、板状の部材の中央部分を折り曲げた形状、具体的には、X方向の+側に向かうにつれ、先細りとなる形状を有する。このような構成により、空気流が形成されているときに、中央部分を挟む2つの面にかかる圧力は同じであり、圧力のX方向の成分(軸方向成分)は、回動部材241の軸受けで受け止められる。また、圧力の回動方向の成分は、2つの面で互いに逆向きとなり、相殺される。
【0124】
これにより、スライド部材242には、各面により相殺されて、十分に低減された回動方向の成分の力がかかることになる。すなわち、第2の実施の形態では、スライド部材242にかかる力を十分に低減することができる。
【0125】
複数の閉塞部241Cは、第1流入口211Aまたは第2流入口212Aに対応した位置にそれぞれ配置されている。具体的には、
図14に示すように、複数の閉塞部241Cは、複数の第1流入口211Aの全てを開放し、かつ、複数の第2流入口212Aの全てを閉塞可能である。また、
図15に示すように、複数の閉塞部241Cは、複数の第1流入口211Aの全てを閉塞し、かつ、複数の第2流入口212Aの全てを開放可能である。
【0126】
スライド部材242は、例えば、伸縮可能なアクチュエータである。スライド部材242は、例えば、2つ設けられている。2つのスライド部材242は、回動部材241を構成する円の中心に対して対称に配置されている。
【0127】
なお、スライド部材242の数は、1以上の数に適宜設定可能である。また、スライド部材242の数が2つ以上である場合、回動部材241に均等に力がかかるように、各スライド部材242は等間隔に配置されていても良い。
【0128】
スライド部材242の一端部242Aは、回動部材241の内側円環部241Aに接続されている。スライド部材242の他端部242Bは、例えば、筐体210の任意の固定部位に接続されている。つまり、スライド部材242は、他端部242Bを支点として、一端部242Aが伸縮することで、回動部材241を回動させる。
【0129】
例えば、
図14に示すように、スライド部材242の一端部242Aが比較的大きく伸びた位置に位置する場合、閉塞部241Cは、第2流入口212Aに対応した位置(第1位置)に位置して、第2流入口212Aを閉塞する。第1流入口211Aは、開放された状態となるので、第1流入口211Aを介して第1ダクト211に空気が導入される。
【0130】
また、
図15に示すように、スライド部材242の一端部242Aが比較的大きく縮んだ位置に位置する場合、閉塞部241Cは、第1流入口211Aに対応した位置(第2位置)に位置して、第1流入口211Aを閉塞する。第2流入口212Aは、開放された状態となるので、第2流入口212Aを介して第2ダクト212に空気が導入される。
【0131】
以上のように構成された第2の実施の形態によれば、スライド部材242がスライド移動することで、回動部材241を第1位置と第2位置との間を回動させる。具体的には、第1ダクト211を開放する際には、スライド部材242のスライド移動により、回動部材241が回動して、閉塞部241Cが、第2ダクト212(第2流入口212A)を閉塞する位置に移動する。また、第2ダクト212を開放する際には、スライド部材242のスライド移動により、回動部材241が回動して、閉塞部241Cが、第1ダクト211(第1流入口211A)を閉塞する位置に移動する。
【0132】
すなわち、第2の実施の形態では、簡易な構成により、流路の切替をスムーズに行うことができる。
【0133】
また、回動部材241にかかる圧力に起因してスライド部材242にかかる力を十分に低減することが可能な構成であるので、流路の切替をよりスムーズに行うことができる。
【0134】
また、第2の実施の形態に係る複合エンジン200が、第1の実施の形態に係る複合エンジン100の筐体110に収納されていても良い。この場合、例えば、筐体110における第1エンジン120が収納されている空間(第1流路110A)に複合エンジン200が収納されていても良い。
【0135】
また、上記実施の形態では、航空機の機体が略三角形状に構成されていたが、本開示はこれに限定されず、略三角形状に構成されていなくても良い。
【0136】
また、上記実施の形態では、航空機が極超音速機であったが、本開示はこれに限定されず、例えば、超音速機、超音速に対応していない航空機等であっても良い。
【0137】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本開示の装置は、流路の切替をスムーズに行うことが可能な複合エンジンおよび航空機として有用である。
【符号の説明】
【0139】
1 航空機
10 機体
11 胴体部
12 主翼
13 操舵翼
14 外翼
15 垂直尾翼
100 複合エンジン
110 筐体
111 隔離壁
112 流入口
113 流出口
120 第1エンジン
130 第2エンジン
140 切替部
140A 第1切替部
140B 第2切替部
141A 回動部材
141B 回動部材
142A ガイドレール
142B ガイドレール
143A スライド部材
143B スライド部材
144A アクチュエータ
144B アクチュエータ
145A リンク部材
145B リンク部材
146 第1対向部材
147 第2対向部材
148 対向部材
200 複合エンジン
210 筐体
211 第1ダクト
211A 第1流入口
212 第2ダクト
212A 第2流入口
220 ターボジェット
230 ラム燃焼器
240 切替部
241 回動部材
241A 内側円環部
241B 外側円環部
241C 閉塞部
242 スライド部材
242A 一端部
242B 他端部