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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007724
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車室構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20250109BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60K1/04 Z ZHV
B62D25/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109311
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】福島 嘉男
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB06
3D203BB07
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB18
3D203BB20
3D203BB22
3D203BB24
3D203BB35
3D203BB54
3D203BC15
3D203CA04
3D203CA23
3D203CA57
3D203CA75
3D203CB09
3D203CB19
3D203DA17
3D203DA25
3D203DA51
3D203DA53
3D203DA73
3D203DA87
3D203DB05
3D235AA01
3D235BB18
3D235BB25
3D235CC15
3D235DD25
3D235DD27
3D235EE63
3D235EE64
3D235FF06
3D235FF07
3D235FF09
3D235FF12
3D235FF14
3D235FF17
3D235FF37
(57)【要約】
【課題】バッテリ容量の確保と車体剛性の向上とを両立できる車室構造を提供することを目的とする。
【解決手段】電動車両1のフロントフロアパネル5と、車幅方向に所定間隔を隔ててフロントフロアパネル5上に配置された左右一対の後席S2とを備えた車室構造であって、後席S2の車両後方に配置される第1バッテリ31、及び後席S2の間に配置される第2バッテリ32を収容保持する高剛性なバッテリ筐体33を備え、バッテリ筐体33は、第1バッテリ31が収容保持される筐体後部34と、第2バッテリ32が収容保持される筐体前部35とで平面視略T字状に一体形成され、バッテリ筐体33の筐体後部34は、後席S2よりも車両後方に位置する左右一対の車体の高剛性部位に固定され、バッテリ筐体33の筐体前部35は、後席S2のシートバックよりも車両前方に位置する車体の高剛性部位に固定されたことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の客室床面をなすフロントフロアパネルと、
車幅方向に所定間隔を隔てて前記フロントフロアパネル上に配置されるとともに、最も車両後方に位置する左右一対の座席とを備えた車室構造であって、
前記座席の車両後方に配置される第1バッテリ、及び前記座席の間に配置される第2バッテリを収容保持する高剛性なバッテリ筐体を備え、
該バッテリ筐体は、
一方の前記座席の車幅方向外側から他方の前記座席の車幅方向外側に亘って車幅方向に延びるとともに、前記第1バッテリが収容保持される筐体後部と、
該筐体後部から前記座席の間を通って車両前方へ向けて延びるとともに、前記第2バッテリが収容保持される筐体前部とで平面視略T字状に一体形成され、
前記バッテリ筐体の前記筐体後部は、
前記座席よりも車両後方に位置する左右一対の車体の高剛性部位に固定され、
前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、
前記座席のシートバックよりも車両前方に位置する車体の高剛性部位に固定された
車室構造。
【請求項2】
前記フロントフロアパネルの車両後方で車両の荷室床面をなすリヤフロアパネルを備え、
前記第1バッテリは、前記リヤフロアパネル上に配置され、
前記バッテリ筐体の前記筐体後部は、
前記リヤフロアパネルに対して車幅方向で隣接する前記高剛性部位に固定された
請求項1に記載の車室構造。
【請求項3】
前記リヤフロアパネルの車幅方向の端部が接合される左右一対のリヤサイドフレームを備え、
前記バッテリ筐体の前記筐体後部は、
車幅方向の端部が左右の前記リヤサイドフレームに固定された
請求項2に記載の車室構造。
【請求項4】
前記リヤフロアパネルの車幅方向外側に隣接するとともに、リヤサスダンパの上端を支持するダンパ支持部を備え、
前記バッテリ筐体の前記筐体後部は、
車幅方向の端部が前記ダンパ支持部に固定された
請求項2に記載の車室構造。
【請求項5】
左右一対の前記座席は、
前記フロントフロアパネルの後部に配置された後席で構成され、
前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、
前記後席の間を通るとともに、前記後席の足元空間を車幅方向に隔てる車両前後方向の長さで形成された
請求項1に記載の車室構造。
【請求項6】
前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、
座席を取り付ける座席取付部に固定された
請求項1に記載の車室構造。
【請求項7】
車両前後方向に延びるとともに、前記フロントフロアパネルにおける車幅方向の端部が接合される左右一対のサイドシルと、
該サイドシルを車幅方向に連結するとともに、前記フロントフロアパネルとで車幅方向に延びる閉断面をなすフロアクロスメンバとを備え、
前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、
前記フロントフロアパネルと前記フロアクロスメンバとがなす閉断面部に固定された
請求項1に記載の車室構造。
【請求項8】
前記フロントフロアパネルは、
車両上方へ突出するとともに、車幅方向略中央を車両前後方向に延びるトンネル部を備え、
前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、
前記トンネル部の車両上方に配置されるとともに、前記トンネル部に設けた前記高剛性部位に固定された
請求項1に記載の車室構造。
【請求項9】
前記フロントフロアパネルの前端から車両上方へ延設され、車室内外を隔てるダッシュパネルと、
該ダッシュパネルとで車幅方向に延びる閉断面をなすダッシュクロスメンバとを備え、
前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、
前記ダッシュパネルと前記ダッシュクロスメンバとがなす閉断面部に固定された
請求項1に記載の車室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電動車両において、回転電機に電力を供給する複数のバッテリを車室内に配置したような車室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ガソリンなどを燃料とする内燃機関に替えて、回転電機の出力を駆動力とする電動車両が増加している。このような電動車両では、回転電機に電力を供給するバッテリの容量を確保して、航続距離の延長による商品価値の向上を図りたいというニーズがある。
【0003】
さらに、プラグインハイブリッドなどの電動車両には、内燃機関の出力を駆動力とするグレードの車体を使用したものがある。この場合、電動車両専用の車体ではないため、バッテリをまとめて搭載するスペースが限られ、所望されるバッテリ容量を確保し難いという問題があった。
【0004】
そこで、上述したような電動車両では、複数のバッテリを分散配置してバッテリ容量を確保することが考えられている。
例えば特許文献1は、車両の車室内において、前席の間や後席の下にバッテリを分散配置することで、バッテリ容量を確保している。
【0005】
ところで、車両の走行安定性や乗り心地を改善する際、補強部材を車体に追加して車体剛性を向上することが考えられるが、例えば駆動源の異なる他のグレードと車体を使用するような電動車両では、車体を共用するために補強部材を容易に追加できないおそれがある。
【0006】
さらに、仮に補強部材を設けることができても、バッテリを分散配置するスペースが補強部材によって制限され、所望されるバッテリ容量を確保できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-107727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、バッテリ容量の確保と車体剛性の向上とを両立できる車室構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、車両の客室床面をなすフロントフロアパネルと、車幅方向に所定間隔を隔てて前記フロントフロアパネル上に配置されるとともに、最も車両後方に位置する左右一対の座席とを備えた車室構造であって、前記座席の車両後方に配置される第1バッテリ、及び前記座席の間に配置される第2バッテリを収容保持する高剛性なバッテリ筐体を備え、該バッテリ筐体は、一方の前記座席の車幅方向外側から他方の前記座席の車幅方向外側に亘って車幅方向に延びるとともに、前記第1バッテリが収容保持される筐体後部と、該筐体後部から前記座席の間を通って車両前方へ向けて延びるとともに、前記第2バッテリが収容保持される筐体前部とで平面視略T字状に一体形成され、前記バッテリ筐体の前記筐体後部は、前記座席よりも車両後方に位置する左右一対の車体の高剛性部位に固定され、前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、前記座席のシートバックよりも車両前方に位置する車体の高剛性部位に固定されたことを特徴とする。
【0010】
上記最も車両後方に位置する左右一対の座席とは、2シーターの車両における運転席及び助手席、あるいは4シーターの車両における左右の後席などのことをいう。
上記座席の車両後方に配置されるとは、客室内における座席の車両後方に配置される、あるいは客室の車両後方に位置する荷室内に配置される、もしくは座席の車両後方に位置する客室と荷室との境界部分に配置されることをいう。
【0011】
上記筐体後部が固定される高剛性部位、及び筐体前部が固定される高剛性部位とは、周囲に比べて高剛性な部位であって、例えば車幅方向または車両前後方向に延びる閉断面部、あるいは複数のパネル部材を重ね合わせた部位などのことをいう。より好ましくは、衝突荷重を伝達する荷重伝達経路となる部位、あるいは車体骨格部材などのことをいう。
【0012】
この発明によれば、車室に配置された第1バッテリ及び第2バッテリによって、車両のバッテリ容量を確保することができる。
この際、第1バッテリ及び第2バッテリが高剛性なバッテリ筐体に収容保持されているため、車室構造は、意図しない外力から第1バッテリ及び第2バッテリを保護することができる。
【0013】
さらに、座席よりも車両後方に位置する車体の高剛性部位に、バッテリ筐体の筐体後部が固定されるため、車室構造は、後輪からの入力荷重が加わる車体の荷重入力点に近い部位を、筐体後部によって車幅方向に連結することができる。
【0014】
加えて、筐体後部が筐体前部を介して、座席のシートバックよりも車両前方に位置する車体の高剛性部位に固定されるため、車室構造は、後輪からの入力荷重によって、筐体後部に曲げや捩れが生じることを防止できる。
これにより、車室構造は、車体を補強するフレーム部材としてバッテリ筐体を機能させることができるため、車体の曲げ剛性や車体の捩じり剛性を向上することができる。
【0015】
加えて、車室構造は、バッテリ筐体とは別体の連結部材を用いて荷重入力点に近い部位を車幅方向に連結する場合に比べて、重量の増加を抑えることができる。
よって、車室構造は、バッテリ容量の確保と車体剛性の向上とを車両重量の増加を抑えて両立することができる。
【0016】
この発明の態様として、前記フロントフロアパネルの車両後方で車両の荷室床面をなすリヤフロアパネルを備え、前記第1バッテリは、前記リヤフロアパネル上に配置され、前記バッテリ筐体の前記筐体後部は、前記リヤフロアパネルに対して車幅方向で隣接する前記高剛性部位に固定されてもよい。
【0017】
この構成によれば、例えば客室と荷室とが一体的に設けられた車室内において、バッテリ筐体の筐体後部を左右の荷重入力点により近づけて固定することができる。
これにより、車室構造は、車体を補強するフレーム部材としてバッテリ筐体を確実に機能させることができるため、車体剛性をより向上させることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記リヤフロアパネルの車幅方向の端部が接合される左右一対のリヤサイドフレームを備え、前記バッテリ筐体の前記筐体後部は、車幅方向の端部が左右の前記リヤサイドフレームに固定されてもよい。
【0019】
この構成によれば、バッテリ筐体の筐体後部が既存の高剛性部位であるリヤサイドフレームに固定されるため、荷室に別途、高剛性部位を設けることを不要にできる。
さらに、後輪からの入力荷重が作用し易いリヤサイドフレームを筐体後部によって車幅方向に連結できるため、車室構造は、後輪からの入力荷重による車体の捩れをバッテリ筐体によってより確実に抑えることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記リヤフロアパネルの車幅方向外側に隣接するとともに、リヤサスダンパの上端を支持するダンパ支持部を備え、前記バッテリ筐体の前記筐体後部は、車幅方向の端部が前記ダンパ支持部に固定されてもよい。
【0021】
この構成によれば、バッテリ筐体の筐体後部が既存の高剛性部位であるダンパ支持部に固定されるため、荷室に別途、高剛性部位を設けることを不要にできる。
さらに、後輪からの入力荷重が直接的に作用するダンパ支持部を筐体後部によって車幅方向に連結できるため、車室構造は、後輪からの入力荷重による車体の捩れをバッテリ筐体によってより確実に抑えることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、左右一対の前記座席は、前記フロントフロアパネルの後部に配置された後席で構成され、前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、前記後席の間を通るとともに、前記後席の足元空間を車幅方向に隔てる車両前後方向の長さで形成されてもよい。
【0023】
この構成によれば、後席の間の空間を有効利用して、バッテリ容量を確保することができるとともに、左右の後席を筐体前部によって隔てることで独立した座席空間を形成することができる。
【0024】
さらに、例えば筐体前部をセンターコンソールで覆うことで、車室構造は、バッテリ筐体の筐体前部によって左右の座席の間の見栄えが低下することを防止するとともに、客室後部の居住性や高級感を向上することができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、座席を取り付ける座席取付部に固定されてもよい。
上記座席取付部は、座席の脚部またはシートレールを取り付ける部位であって、2シーターの車両における運転席及び助手席を取り付ける部位、あるいは4シーターの車両における前席または後席を取り付ける部位などのことをいう。
【0026】
この構成によれば、バッテリ筐体の筐体前部が既存の高剛性部位である座席取付部に固定されるため、客室に別途、高剛性部位を設けること不要にすることができる。このため、車室構造は、重量増加を抑えて、車体剛性を向上させることができる。
【0027】
またこの発明の態様として、車両前後方向に延びるとともに、前記フロントフロアパネルにおける車幅方向の端部が接合される左右一対のサイドシルと、該サイドシルを車幅方向に連結するとともに、前記フロントフロアパネルとで車幅方向に延びる閉断面をなすフロアクロスメンバとを備え、前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、前記フロントフロアパネルと前記フロアクロスメンバとがなす閉断面部に固定されてもよい。
【0028】
この構成によれば、バッテリ筐体の筐体前部が既存の高剛性部位である閉断面部に固定されるため、客室に別途、高剛性部位を設けること不要にすることができる。このため、車室構造は、重量増加を抑えて、車体剛性を向上させることができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記フロントフロアパネルは、車両上方へ突出するとともに、車幅方向略中央を車両前後方向に延びるトンネル部を備え、前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、前記トンネル部の車両上方に配置されるとともに、前記トンネル部に設けた前記高剛性部位に固定されてもよい。
【0030】
上記トンネル部に設けた高剛性部位とは、トンネル部を補強する補強部材とトンネル部とで形成された閉断面部、あるいは筐体前部を固定するために設けられ、トンネル部とで閉断面をなすブラケットなどのことをいう。
【0031】
この構成によれば、フロントフロアパネルにトンネル部を備えた場合であっても、バッテリ筐体の筐体前部を確実に支持できるため、車体剛性を確実に向上させることができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記フロントフロアパネルの前端から車両上方へ延設され、車室内外を隔てるダッシュパネルと、該ダッシュパネルとで車幅方向に延びる閉断面をなすダッシュクロスメンバとを備え、前記バッテリ筐体の前記筐体前部は、前記ダッシュパネルと前記ダッシュクロスメンバとがなす閉断面部に固定されてもよい。
【0033】
この構成によれば、バッテリ筐体の筐体前部が既存の高剛性部位である閉断面部に固定されるため、客室に別途、高剛性部位を設けること不要にすることができる。
さらに、ダッシュクロスメンバがなす閉断面部が、筐体前部を介して筐体後部に連結されるため、車室構造は、車両前方からの衝突荷重を、バッテリ筐体を介して車両後方に分散伝達することができる。
これにより、車室構造は、後輪からの入力荷重に対する車体剛性の向上だけでなく、車両前方からの衝突荷重に対する車体剛性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、バッテリ容量の確保と車体剛性の向上とを両立できる車室構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】車両後方から見た電動車両の車室の外観を示す外観斜視図。
図2】電動車両の車室の外観を平面視で示す平面図。
図3図2中のA-A矢視断面図。
図4図2中のB-B矢視断面図。
図5図2中のC-C矢視断面図。
図6図2中のD-D矢視断面図。
図7】実施例2の電動車両における車室の外観を示す外観斜視図。
図8】A-A矢視断面におけるダッシュ固定部の断面を示す断面図。
図9】別の実施例における筐体前部の固定構造を説明する説明図。
図10】別の実施例における筐体前部の固定構造を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例0037】
実施例1の車両は、回転電機の出力を駆動力とする電動車両であって、回転電機に電力を供給するバッテリの一部が車室R内に配置されている。このような電動車両1の車室構造について、図1から図6を用いて説明する。
【0038】
なお、図1は車両後方から見た電動車両1の車室Rの外観斜視図を示し、図2は電動車両1の車室Rの平面図を示し、図3図2中のA-A矢視断面図を示し、図4図2中のB-B矢視断面図を示している。
さらに、図5図2中のC-C矢視断面図を示し、図6図2中のD-D矢視断面図を示している。
【0039】
また、図1中において図示を明確にするため、車両左側の前席S1及び後席S2と、車両右側の後席S2のシートバックの図示を省略している。さらに、図4から図6において図示を明確にするため、車両右側のみを図示している。
【0040】
また、図中において、矢印Fr及び矢印Rrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。さらに、矢印Rh及び矢印Lhは車幅方向を示しており、矢印Rhは右方向を示し、矢印Lhは左方向を示している。
【0041】
まず、実施例1の電動車両1は、図1及び図2に示すように、乗員が着座する左右一対の前席S1及び左右一対の後席S2を有する客室R1と、客室R1の車両後方で荷物などを搭載する荷室R2とで構成された車室Rを有する車両である。
【0042】
この電動車両1は、図1及び図2に示すように、車室Rの前壁をなすダッシュパネル2と、ダッシュパネル2における車幅方向両端の下部から車両後方に延びる左右一対のサイドシル3と、サイドシル3の後部に連結され、車両後方に延びる左右一対のリヤサイドフレーム4とを備えている。
【0043】
さらに、電動車両1は、サイドシル3の間で客室R1の床面をなすフロントフロアパネル5と、リヤサイドフレーム4の間で荷室R2の床面をなすリヤフロアパネル6と、ダッシュパネル2からフロントフロアパネル5にかけて車両前後方向に延びる左右一対のフロアフレームアッパ7とを備えている。
【0044】
加えて、電動車両1は、図2及び図3に示すように、左右のサイドシル3を車幅方向に連結する左右一対の第1フロアクロスメンバ8、左右一対の第2フロアクロスメンバ9及び第3フロアクロスメンバ10と、左右のリヤサイドフレーム4を車幅方向に連結する第4フロアクロスメンバ11とを備えている。
【0045】
引き続き、上述した電動車両1の各構成要素について、さらに詳述する。
ダッシュパネル2は、図1に示すように、車両前後方向に厚みを有するパネル部材であって、下端における車幅方向の略中央近傍が車両上方に突出した形状に形成されている。
【0046】
なお、ダッシュパネル2は、車幅方向の両端がサイドシル3の前端に立設したヒンジピラー(図示省略)に連結されている。
このダッシュパネル2の前面には、図1及び図3に示すように、下端に沿って車幅方向に延びるとともに、ヒンジピラー(図示省略)に連結されるダッシュクロスメンバ12が接合されている。
【0047】
このダッシュクロスメンバ12は、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状がダッシュパネル2とで閉断面をなす車体骨格部材であって、車両前方へ突出した断面略ハット状に形成されている。
【0048】
また、左右のサイドシル3は、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなす車体骨格部材であって、図1に示すように、車幅方向内側に位置するサイドシルインナ3aと、サイドシルインナ3aに対して車幅方向外側に位置するサイドシルアウタ(図示省略)とで構成されている。
【0049】
また、左右一対のリヤサイドフレーム4は、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなす車体骨格部材であって、サイドシル3の後部における車幅方向内側に前端部が接合されている。
【0050】
このリヤサイドフレーム4は、車両上方に位置するサイドフレームアッパ4a(図5参照)と、サイドフレームアッパ4aに対して車両下方に位置するサイドフレームロア4b(図5参照)とで構成されている。
【0051】
さらに、リヤサイドフレーム4のサイドフレームアッパ4aには、図1及び図2に示すように、リヤサスダンパ(図示省略)の上端を支持するダンパ支持部材13が、後述する第4フロアクロスメンバ11よりも車両後方の位置に接合されている。
【0052】
このダンパ支持部材13は、例えばアルミダイキャスト製の高剛性部材であって、荷室R2の内壁をなす左右一対のリヤサイドパネル(図示省略)、サイドフレームアッパ4a及び後述する第4フロアクロスメンバ11に接合され、車体骨格部材として機能するように構成されている。
なお、ダンパ支持部材13の車両下方には、リヤサスダンパに支持された後輪(図示省略)が配置されている。
【0053】
また、フロントフロアパネル5は、図2及び図3に示すように、ダッシュパネル2の下端に接合された板状のフロアパネル前部51と、フロアパネル前部51の後端から車両上方に起立したキックアップ部52と、キックアップ部52の上端から車両後方へ延設されたフロアパネル後部53とで構成されている。
【0054】
より詳しくは、フロアパネル前部51は、図2に示すように、平面視において、ダッシュパネル2の下端から後席S2の前端に至る車両前後方向の範囲で客室R1の床面を構成している。
【0055】
さらに、フロアパネル前部51には、図1から図3に示すように、車幅方向の略中央近傍において、ダッシュパネル2からキックアップ部52に至る車両前後方向の長さで車両上方へ突出したトンネル部51aが形成されている。
【0056】
このトンネル部51aは、図4に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、上面が短辺をなす断面略台形状に形成され、シフトレバーなどの適宜の機器が上面に固定されている。
なお、トンネル部51aには、図3の二点鎖線で示すように、左右の前席S1に車幅方向で隣接する位置に前席センターコンソール14が配置固定されている。
【0057】
さらに、フロアパネル前部51の下面には、図4に示すように、トンネル部51aの下端に沿って車両前後方向に延びる左右一対のトンネルフレーム15が接合されている。このトンネルフレーム15は、車幅方向に沿った縦断面における断面形状がフロアパネル前部51とで閉断面をなす車体骨格部材であって、その前端がダッシュクロスメンバ12に連結されている。
【0058】
キックアップ部52は、図3に示すように、フロアパネル前部51の後端から車両上方かつ僅かに車両後方へ向けて延設されている。
フロアパネル後部53は、図3に示すように、キックアップ部52の上端から車両後方へ延設されたのち、斜め後方下方へ向けて延設されている。
【0059】
このフロアパネル後部53には、図2の二点鎖線で示すように、車幅方向の略中央近傍を挟んで、車幅方向に所定間隔を隔てた位置に後席S2の座面部(符号省略)が載置固定されている。
【0060】
また、リヤフロアパネル6は、車両前後方向の略中央近傍及び車幅方向の略中央近傍が最も車両下方に位置するように凹設されたパネル部材であって、図3に示すように、前端が後述する第4フロアクロスメンバ11を介してフロントフロアパネル5の後端に連結されている。
【0061】
また、左右のフロアフレームアッパ7は、図1及び図2に示すように、サイドシル3とフロントフロアパネル5のトンネル部51aとの間において、前端に対して後端が車幅方向外側に位置するように車室R内に配置されている。
【0062】
具体的には、フロアフレームアッパ7は、図2に示すように、平面視において、ダッシュパネル2から車両前方へ延びるフロントサイドフレーム16の後端と、後述する第1フロアクロスメンバ8の車幅方向外側とを結ぶ仮想直線(図示省略)に沿って配設されている。
【0063】
このフロアフレームアッパ7は、ダッシュパネル2及びフロアパネル前部51に接合され、車幅方向に沿った縦断面における断面形状がフロアパネル前部51とで閉断面をなす車体骨格部材として設けられている。
【0064】
さらに、詳細な図示を省略するが、フロアフレームアッパ7の後端部は、フロアパネル前部51の下面に接合されたフロアフレームロア(図示省略)の前端部に、フロアパネル前部51を挟んで接合されている。
なお、フロアフレームロアの後端部は、例えばリヤサイドフレーム4の前端部に連結されている。
【0065】
また、左右の第1フロアクロスメンバ8は、図2に示すように、フロアパネル前部51における車両前後方向の略中央近傍において、フロントフロアパネル5のトンネル部51aを介して左右のサイドシル3を連結している。
【0066】
具体的には、第1フロアクロスメンバ8は、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状がフロアパネル前部51とで閉断面をなす車体骨格部材であって、フロアパネル前部51の上面に接合されている。
【0067】
さらに、第1フロアクロスメンバ8は、図1及び図2に示すように、車幅方向外側が第1外側取付部8aを介してサイドシル3に連結され、車幅方向内側が第1内側取付部8bを介してトンネル部51aに連結されている。
【0068】
なお、第1外側取付部8a及び第1内側取付部8bは、トンネル部51aの上面よりも車両下方の位置で、前席S1のシートレールにおける前部が締結固定される部材である。
【0069】
より詳しくは、第1外側取付部8aは、車両下方及び車幅方向外側が開口した略ボックス状に形成され、車幅方向に沿った縦断面形状がサイドシル3及び第1フロアクロスメンバ8とで閉断面をなすように形成されている。
【0070】
一方、第1内側取付部8bは、車両下方及び車幅方向内側が開口した略ボックス状に形成され、車幅方向に沿った縦断面形状がトンネル部51a及び第1フロアクロスメンバ8とで閉断面をなすように形成されている。
【0071】
また、左右の第2フロアクロスメンバ9は、図2に示すように、第1フロアクロスメンバ8とキックアップ部52との間における車両前後方向の略中央近傍において、フロントフロアパネル5のトンネル部51aを介して左右のサイドシル3を連結している。
【0072】
具体的には、第2フロアクロスメンバ9は、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状がフロアパネル前部51とで閉断面をなす車体骨格部材であって、フロアパネル前部51の上面に接合されている。
【0073】
さらに、第2フロアクロスメンバ9は、図1及び図2に示すように、車幅方向外側が第2外側取付部9aを介してサイドシル3に連結され、車幅方向内側が第2内側取付部9bを介してトンネル部51aに連結されている。
【0074】
なお、第2外側取付部9a及び第2内側取付部9bは、トンネル部51aの上面よりも車両下方の位置で、前席S1のシートレールにおける後部が締結固定される部材である。
【0075】
より詳しくは、第2外側取付部9aは、図4に示すように、車両下方及び車幅方向外側が開口した略ボックス状に形成され、車幅方向に沿った縦断面形状がサイドシル3及び第2フロアクロスメンバ9とで閉断面をなすように形成されている。
【0076】
一方、第2内側取付部9bは、図4に示すように、車両下方及び車幅方向内側が開口した略ボックス状に形成され、車幅方向に沿った縦断面形状がトンネル部51a及び第2フロアクロスメンバ9とで閉断面をなすように形成されている。
【0077】
この第2内側取付部9bの上面には、図4に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略クランク形状で、後述するバッテリユニット30が締結固定される締結ブラケット17が接合されている。
この締結ブラケット17は、図4に示すように、トンネル部51a及び第2内側取付部9bとで閉断面を形成することで、トンネル部51aに高剛性部位を構成している。
【0078】
具体的には、締結ブラケット17は、図4に示すように、第2内側取付部9bの上面に接合される平板状の下側基部17aと、トンネル部51aの上面に接合される平板状の上側基部17bと、トンネル部51aの側面に対して車幅方向外側に所定間隔を隔てて対向する平板状の連結部17cとで断面略クランク形状に一体形成されている。
【0079】
さらに、締結ブラケット17の上側基部17bには、後述するバッテリユニット30の固定に用いるボルト18を挿通する挿通孔(符号省略)が開口形成されるとともに、ボルト18が螺合するウエルドナット17dが下面に接合されている。
【0080】
また、第3フロアクロスメンバ10は、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状がフロントフロアパネル5とで閉断面をなす車体骨格部材であって、図3に示すように、キックアップ部52を跨いでフロアパネル前部51の後端及びフロアパネル後部53の前端に接合されている。
【0081】
また、第4フロアクロスメンバ11は、図3に示すように、フロアパネル後部53とリヤフロアパネル6との境界に配設されている。この第4フロアクロスメンバ11は、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなす車体骨格部材であって、車両上方側に位置するクロスメンバアッパ11aと、クロスメンバアッパ11aに対して車両下方側に位置するクロスメンバロア11bとで構成されている。
【0082】
このような車体構造の電動車両1には、図1から図3に示すように、回転電機に電力を供給するバッテリユニット30が、客室R1と荷室R2とに亘って配設されている。
このバッテリユニット30は、図2及び図3に示すように、荷室R2に配置される第1バッテリ31と、客室R1に配置される第2バッテリ32と、これらを一体的に収容保持するバッテリ筐体33とで構成されている。
【0083】
詳述すると、第1バッテリ31は、図2及び図3に示すように、車幅方向に長い平面視略矩形であって、後席S2のシートバック(符号省略)に対して車両後方側で近接するように、リヤフロアパネル6の前部に配置されている。
【0084】
一方、第2バッテリ32は、図2に示すように、第1バッテリ31よりも幅狭で車両前後方向に長い平面視略矩形であって、左右の後席S2の間に配置されている。
なお、第1バッテリ31及び第2バッテリ32は、例えばリチウムイオンバッテリなどで構成されている。
【0085】
また、バッテリ筐体33は、図2及び図3に示すように、例えばアルミダイキャスト製の高剛性な筐体であって、第1バッテリ31を収容保持する筐体後部34と、第2バッテリ32を収容保持する筐体前部35とで平面視略T字状に一体形成されている。
【0086】
このバッテリ筐体33は、上面をなす板状の蓋部(符号省略)と、蓋部によって閉塞される開口を車両上方側に有する収容部(符号省略)とで構成されるとともに、蓋部が収容部に締結固定され、収容部が車体の高剛性部位に締結固定されている。
【0087】
より詳しくは、筐体後部34は、図2に示すように、一方のリヤサイドフレーム4から他方のリヤサイドフレーム4に至る車幅方向の長さと、第4フロアクロスメンバ11からリヤフロアパネル6の車両前後方向の略中央に至る前後方向の長さとを有する略箱状に形成されている。
【0088】
この筐体後部34は、図2に示すように、ダンパ支持部材13よりも車両後方のリヤサイドフレーム4に締結固定するための左右一対の第1固定部34aと、ダンパ支持部材13に締結固定するための左右一対の第2固定部34bとを備えている。
【0089】
具体的には、左右の第1固定部34aは、図2及び図5に示すように、筐体後部34における後端近傍の側面から車幅方向外側へ突出した平板状であって、車幅方向に所定間隔を隔ててリヤサイドフレーム4に立設した2つのウエルドボルト19に締結固定されている。
なお、第1固定部34aは、下面の車幅方向内側とリヤサイドフレーム4の上面との間にスペーサ36を介在させた状態でリヤサイドフレーム4に固定されている。
【0090】
一方、左右の第2固定部34bは、図2及び図6に示すように、筐体後部34における前端近傍の側面から車幅方向外側へ突出した平板状であって、ダンパ支持部材13に立設した1つのウエルドボルト20に締結固定されている。
【0091】
また、筐体前部35は、図2及び図3に示すように、後席S2の足元空間を車幅方向に隔てるとともに、その前端が前席センターコンソール14の内部に位置する車両前後方向の長さで形成されている。
【0092】
具体的には、筐体前部35は、図2及び図3に示すように、筐体後部34の前端から第2フロアクロスメンバ9に至る車両前後方向の長さを有するとともに、上面が筐体後部34の上面よりも車両下方に位置する略箱状に形成されている。
【0093】
なお、筐体前部35は、図3の二点鎖線で示すように、左右の後席S2の間に配置されるとともに、前席センターコンソール14に連続して車両後方に延びる後席センターコンソール21で覆われている。
【0094】
このような筐体前部35には、図2に示すように、フロアパネル前部51と第2フロアクロスメンバ9とがなす閉断面部、及び第2内側取付部9bに固定するための左右一対の第3固定部35aを備えている。
【0095】
具体的には、左右の第3固定部35aは、図2及び図4に示すように、筐体前部35における前端近傍の側面から車幅方向外側へ突出した平板状であって、締結ブラケット17にボルト18を用いて締結固定されている。
【0096】
このように、バッテリユニット30の筐体後部34は、リヤサスダンパを挟んで車両前後方向に所定間隔を隔てた位置の高剛性部位(左右のリヤサイドフレーム4及び左右のダンパ支持部材13)を車幅方向に連結している。
【0097】
さらに、バッテリユニット30の筐体前部35は、筐体後部34を後席S2よりも車両前方の高剛性部位(第2フロアクロスメンバ9がなす閉断面部、締結ブラケット17がなす閉断面部、及び第2内側取付部9b)に連結している。
【0098】
換言すると、電動車両1は、左右のリヤサイドフレーム4及び左右のダンパ支持部材13を、バッテリユニット30を介して、後席S2よりも車両前方の高剛性部位(第2フロアクロスメンバ9がなす閉断面部、締結ブラケット17がなす閉断面部、及び第2内側取付部9b)に連結している。
【0099】
以上のように、実施例1における電動車両1の車室構造は、客室R1の床面をなすフロントフロアパネル5と、車幅方向に所定間隔を隔ててフロントフロアパネル5上に配置されるとともに、最も車両後方に位置する左右一対の後席S2とを備えている。
【0100】
さらに、電動車両1の車室構造は、後席S2の車両後方に配置される第1バッテリ31、及び後席S2の間に配置される第2バッテリ32を収容保持する高剛性なバッテリ筐体33を備えている。
【0101】
このバッテリ筐体33は、一方の後席S2の車幅方向外側から他方の後席S2の車幅方向外側に亘って車幅方向に延びるとともに、第1バッテリ31が収容保持される筐体後部34と、筐体後部34から後席S2の間を通って車両前方へ向けて延びるとともに、第2バッテリ32が収容保持される筐体前部35とで平面視略T字状に一体形成されている。
【0102】
そして、バッテリ筐体33の筐体後部34が、後席S2よりも車両後方に位置する左右一対の車体の高剛性部位(リヤサイドフレーム4及びダンパ支持部材13)に固定されたものである。
【0103】
さらに、バッテリ筐体33の筐体前部35が、後席S2のシートバックよりも車両前方に位置する車体の高剛性部位(第2フロアクロスメンバ9がなす閉断面部、締結ブラケット17がなす閉断面部、及び第2内側取付部9b)に固定されたものである。
【0104】
この構成によれば、車室Rに配置された第1バッテリ31及び第2バッテリ32によって、電動車両1のバッテリ容量を確保することができる。
この際、第1バッテリ31及び第2バッテリ32が高剛性なバッテリ筐体33に収容保持されているため、電動車両1の車室構造は、意図しない外力から第1バッテリ31及び第2バッテリ32を保護することができる。
【0105】
さらに、後席S2よりも車両後方に位置する車体の高剛性部位に、バッテリ筐体33の筐体後部34が固定されるため、電動車両1の車室構造は、後輪からの入力荷重が加わる車体の荷重入力点に近い部位を、筐体後部34によって車幅方向に連結することができる。
【0106】
加えて、筐体後部34が筐体前部35を介して、後席S2のシートバックよりも車両前方に位置する車体の高剛性部位に固定されるため、電動車両1の車室構造は、後輪からの入力荷重によって、筐体後部34に曲げや捩れが生じることを防止できる。
これにより、電動車両1の車室構造は、車体を補強するフレーム部材としてバッテリ筐体33を機能させることができるため、車体の曲げ剛性や車体の捩じり剛性を向上することができる。
【0107】
加えて、電動車両1の車室構造は、バッテリ筐体33とは別体の連結部材を用いて荷重入力点に近い部位を車幅方向に連結する場合に比べて、重量の増加を抑えることができる。
よって、電動車両1の車室構造は、バッテリ容量の確保と車体剛性の向上とを電動車両1重量の増加を抑えて両立することができる。
【0108】
また、電動車両1の車室構造は、フロントフロアパネル5の車両後方で荷室R2の床面をなすリヤフロアパネル6を備えている。
さらに、第1バッテリ31は、リヤフロアパネル6上に配置されている。
【0109】
そして、バッテリ筐体33の筐体後部34は、リヤフロアパネル6に対して車幅方向で隣接する高剛性部位(リヤサイドフレーム4及びダンパ支持部材13)に固定されている。
【0110】
この構成によれば、例えば客室R1と荷室R2とが一体的に設けられた車室R内において、バッテリ筐体33の筐体後部34を左右の荷重入力点により近づけて固定することができる。
これにより、電動車両1の車室構造は、車体を補強するフレーム部材としてバッテリ筐体33を確実に機能させることができるため、車体剛性をより向上させることができる。
【0111】
また、電動車両1の車室構造は、リヤフロアパネル6の車幅方向の端部が接合される左右一対のリヤサイドフレーム4を備えている。
そして、バッテリ筐体33の筐体後部34は、車幅方向の端部が左右のリヤサイドフレーム4に固定されている。
【0112】
この構成によれば、バッテリ筐体33の筐体後部34が既存の高剛性部位であるリヤサイドフレーム4に固定されるため、荷室R2に別途、高剛性部位を設けることを不要にできる。
【0113】
さらに、後輪からの入力荷重が作用し易いリヤサイドフレーム4を筐体後部34によって車幅方向に連結できるため、電動車両1の車室構造は、後輪からの入力荷重による車体の捩れをバッテリ筐体33によってより確実に抑えることができる。
【0114】
また、電動車両1の車室構造は、リヤフロアパネル6の車幅方向外側に隣接するとともに、リヤサスダンパの上端を支持するダンパ支持部材13を備えている。そして、バッテリ筐体33の筐体後部34は、車幅方向の端部がダンパ支持部材13に固定されている。
【0115】
この構成によれば、バッテリ筐体33の筐体後部34が既存の高剛性部位であるダンパ支持部材13に固定されるため、荷室R2に別途、高剛性部位を設けることを不要にできる。
さらに、後輪からの入力荷重が直接的に作用するダンパ支持部材13を筐体後部34によって車幅方向に連結できるため、電動車両1の車室構造は、後輪からの入力荷重による車体の捩れをバッテリ筐体33によってより確実に抑えることができる。
【0116】
また、バッテリ筐体33の筐体前部35は、後席S2の間を通るとともに、後席S2の足元空間を車幅方向に隔てる車両前後方向の長さで形成されている。
この構成によれば、後席S2の間の空間を有効利用して、バッテリ容量を確保することができるとともに、左右の後席S2を筐体前部35によって隔てることで独立した座席空間を形成することができる。
【0117】
さらに、筐体前部35を後席センターコンソール21で覆うことで、電動車両1の車室構造は、バッテリ筐体33の筐体前部35によって左右の後席S2の間の見栄えが低下することを防止するとともに、客室R1の後部における居住性や高級感を向上することができる。
【0118】
また、バッテリ筐体33の筐体前部35は、前席S1を取り付ける第2内側取付部9bに固定されている。
この構成によれば、バッテリ筐体33の筐体前部35が既存の高剛性部位である第2内側取付部9bに固定されるため、客室R1に別途、高剛性部位を設けること不要にすることができる。このため、電動車両1の車室構造は、重量増加を抑えて、車体剛性を向上させることができる。
【0119】
また、電動車両1の車室構造は、車両前後方向に延びるとともに、フロントフロアパネル5における車幅方向の端部が接合される左右一対のサイドシル3と、サイドシル3を車幅方向に連結するとともに、フロントフロアパネル5とで車幅方向に延びる閉断面をなす第2フロアクロスメンバ9とを備えている。
【0120】
そして、バッテリ筐体33の筐体前部35は、フロントフロアパネル5と第2フロアクロスメンバ9とがなす閉断面部に固定されている。
【0121】
この構成によれば、バッテリ筐体33の筐体前部35が既存の高剛性部位である閉断面部に固定されるため、客室R1に別途、高剛性部位を設けること不要にすることができる。このため、電動車両1の車室構造は、重量増加を抑えて、車体剛性を向上させることができる。
【0122】
また、フロントフロアパネル5は、車両上方へ突出するとともに、車幅方向略中央を車両前後方向に延びるトンネル部51aを備えている。
そして、バッテリ筐体33の筐体前部35は、トンネル部51aの車両上方に配置されるとともに、トンネル部51aに設けた高剛性部位(締結ブラケット17がなす閉断面部)に固定されている。
【0123】
この構成によれば、フロントフロアパネル5にトンネル部51aを備えた場合であっても、バッテリ筐体33の筐体前部35を確実に支持できるため、車体剛性を確実に向上させることができる。
【実施例0124】
実施例2の電動車両1の車室構造は、上述した実施例1に対して、バッテリ筐体33の筐体前部35の支持構造が異なる。このような実施例2のバッテリ筐体33について、図7及び図8を用いて説明する。
【0125】
なお、図7は実施例2の電動車両1における車室Rの外観斜視図を示し、図8はA-A矢視断面におけるダッシュ固定部37の断面図を示している。
また、上述した実施例1と同じ構成は、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0126】
実施例2のバッテリ筐体33は、図7及び図8に示すように、第1バッテリ31を収容保持する筐体後部34と、第2バッテリ32を収容保持する筐体前部35と、筐体前部35をダッシュパネル2に連結するダッシュ固定部37とで平面視略T字状に一体形成されている。
【0127】
具体的には、筐体後部34は、図7に示すように、車幅方向に長い平面視略矩形の略箱状であって、リヤサイドフレーム4に締結固定される左右一対の第1固定部34aと、ダンパ支持部材13に締結固定される左右一対の第2固定部34bとを備えている。
【0128】
また、筐体前部35は、図7に示すように、車両前後方向に長い平面視略矩形の略箱状であって、締結ブラケット17に締結固定される左右一対の第3固定部35aを備えている。
また、ダッシュ固定部37は、図7及び図8に示すように、筐体前部35の下部からトンネル部51aに沿って車両前方へ延設され、筐体前部35をダッシュパネル2に連結している。
【0129】
このダッシュ固定部37は、図7及び図8に示すように、筐体前部35の下部からトンネル部51aに沿って車両前方へ延設した延長部分37aと、延長部分37aの前端に設けられ、ダッシュパネル2の背面に当接する当接部分37bとで構成されている。
【0130】
具体的には、延長部分37aは、車幅方向に沿った縦断面における断面形状がトンネル部51aの外形に沿うように、筐体前部35の上面よりも車両下方に上面が位置するとともに、下方が開口した断面略台形状に形成されている。
【0131】
なお、延長部分37aには、図8に示すように、シフトレバーをトンネル部51aに固定するための開口部37cが開口形成されている。
一方、当接部分37bは、図7に示すように、延長部分37aの先端を車両上方側へ延設して、ダッシュクロスメンバ12に沿った形状の板状に形成されている。
【0132】
この当接部分37bには、ダッシュパネル2に立設したウエルドボルト22が挿通する挿通孔(符号省略)が開口形成されている。
なお、ウエルドボルト22は、図8に示すように、ダッシュパネル2とダッシュクロスメンバ12とで形成される閉断面部に設けられている。
【0133】
このように、バッテリユニット30のダッシュ固定部37は、筐体前部35をダッシュパネル2とダッシュクロスメンバ12とがなす閉断面部に連結している。
換言すると、電動車両1は、左右のリヤサイドフレーム4及び左右のダンパ支持部材13を、バッテリユニット30を介してダッシュパネル2とダッシュクロスメンバ12とがなす閉断面部に連結している。
【0134】
以上のように、実施例2における電動車両1の車室構造は、筐体後部34が後席S2よりも車両後方に位置する高剛性部位に固定され、筐体前部35が後席S2よりも車両前方に位置する高剛性部位に固定されるため、上述した実施例1と同様に、バッテリ容量の確保と車体剛性の向上とを両立することができる。
【0135】
さらに、実施例2の電動車両1の車室構造は、フロントフロアパネル5の前端から車両上方へ延設され、車室内外を隔てるダッシュパネル2と、ダッシュパネル2とで車幅方向に延びる閉断面をなすダッシュクロスメンバ12とを備えている。
【0136】
そして、実施例2の電動車両1の車室構造は、バッテリ筐体33の筐体前部35が、ダッシュパネル2とダッシュクロスメンバ12とがなす閉断面部に固定されたものである。
【0137】
この構成によれば、バッテリ筐体33の筐体前部35が既存の高剛性部位である閉断面部に固定されるため、客室R1に別途、高剛性部位を設けること不要にすることができる。
さらに、ダッシュクロスメンバ12がなす閉断面部が、筐体前部35を介して筐体後部34に連結されるため、電動車両1の車室構造は、車両前方からの衝突荷重を、バッテリ筐体33を介して車両後方に分散伝達することができる。
これにより、電動車両1の車室構造は、後輪からの入力荷重に対する車体剛性の向上だけでなく、車両前方からの衝突荷重に対する車体剛性の向上を図ることができる。
【0138】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の車両は、実施形態の電動車両1に対応し、
以下同様に、
最も車両後方に位置する座席は、後席S2に対応し、
筐体後部が固定される高剛性部位は、リヤサイドフレーム4及びダンパ支持部材13に対応し、
筐体前部が固定される高剛性部位は、第2フロアクロスメンバ9がなす閉断面部、締結ブラケット17がなす閉断面部、及び第2内側取付部9bに対応し、
ダンパ支持部は、ダンパ支持部材13に対応し、
座席取付部は、第2内側取付部9bに対応し、
フロアクロスメンバは、第2フロアクロスメンバ9に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0139】
例えば上述した実施例1及び実施例2において、第1バッテリ31を荷室R2に配置したが、最も車両後方に位置する座席の車両後方に第1バッテリ31が配置された構成であれば荷室R2に限定しない。
例えば、客室R1における座席の車両後方に第1バッテリ31が配置された構成、あるいは客室R1と荷室R2との境界部分に第1バッテリ31が配置された構成であってもよい。
【0140】
また、左右一対の前席S1及び左右一対の後席S2を備えた4シーターの電動車両1としたが、これに限定せず、左右一対の座席を備えた2シーターの電動車両1であってもよい。この場合、バッテリユニット30の筐体後部34を客室R1と荷室R2とを隔てる隔壁として機能させてもよい。
【0141】
また、バッテリ筐体33の筐体後部34をリヤサイドフレーム4及びダンパ支持部材13に締結固定したが、これに限定せず、筐体後部34をリヤサイドフレーム4またはダンパ支持部材13のいずれか一方に締結固定してもよい。
【0142】
また、スペーサ36を介してリヤサイドフレーム4に固定される筐体後部34の第1固定部34aとしたが、これに限定せず、スペーサ36が一体形成された第1固定部であってもよい。
【0143】
また、アルミダイキャスト製のダンパ支持部材13にかえて、荷室R2内へ膨出するとともに、上部にリヤサスダンパが連結されるホイールハウスと、ホイールハウスとで閉断面をなす補強部材とを備えた電動車両であってもよい。この場合、バッテリ筐体33の筐体後部34を補強部材とホイールハウスとがなす閉断面部に締結固定する。
【0144】
第2フロアクロスメンバ9に第2外側取付部9a及び第2内側取付部9bが接合された構成としたが、これに限定せず、第2外側取付部9a及び第2内側取付部9bが、第2フロアクロスメンバ9に対して車両前後方向の異なる位置に配置されてもよい。
【0145】
また、第2外側取付部9a及び第2内側取付部9bを介してサイドシル3とトンネル部51aとを連結する第2フロアクロスメンバ9としたが、これに限定せず、サイドシル3とトンネル部51aとを直接的に連結する第2フロアクロスメンバであってもよい。
この場合、フロアパネル前部51と第2フロアクロスメンバ9とがなす閉断面部に、締結ブラケット17を介してバッテリ筐体33の筐体前部35を固定する。
【0146】
また、トンネル部51aを備えたフロントフロアパネル5としたが、これに限定せず、トンネル部51aを備えていないフロントフロアパネル5であってもよい。この場合、第1フロアクロスメンバ8及び第2フロアクロスメンバ9は、左右のサイドシル3を直接的に連結する構成とする。
【0147】
また、バッテリ筐体33の筐体前部35を、前席センターコンソール14の内部に前端が位置する前後方向の長さとしたが、これに限定せず、例えば前端が第3フロアクロスメンバ10の車両上方に位置する前後方向の長さであってもよい。
【0148】
また、バッテリ筐体33の筐体前部35を、締結ブラケット17を介して第2内側取付部9bに固定したが、これに限定しない。
例えば第1内側取付部8bに筐体前部35を固定する、あるいはキックアップ部52と第3フロアクロスメンバ10とがなす閉断面部に筐体前部35を締結固定してもよい。
【0149】
もしくは例えば、別の実施例における筐体前部の固定構造を説明する説明図を示す図9(a)のように、バッテリ筐体33の筐体前部35が、フロントフロアパネル5とトンネルフレーム15とで形成される閉断面部に締結ブラケット23を介して締結固定される構成であってもよい。
【0150】
あるいは、図9(b)に示すように、筐体前部35が車幅方向の両端から車両下方へ向けて延びる左右一対の脚部35bを備え、筐体前部35の脚部35bが、フロントフロアパネル5とトンネルフレーム15とで形成される閉断面部に締結固定される構成であってもよい。
【0151】
さらにまた、別の実施例における筐体前部の固定構造を説明する説明図を示す図10(a)のように、トンネル部51aの上面と側面とに接合することで、トンネル部51aとで閉断面をなす締結ブラケット24に、バッテリ筐体33の筐体前部35が締結固定される構成であってもよい。
【0152】
あるいは、図10(b)に示すように、トンネル部51aの車両下方から補強するトンネルレインフォースメント25を備え、トンネル部51aとトンネルレインフォースメント25とがなす閉断面部にバッテリ筐体33の筐体前部35が締結固定される構成であってもよい。
【0153】
この場合、締結ブラケット24またはトンネルレインフォースメント25がトンネル部51aに高剛性部位を構成するため、上述した実施例と同様に、バッテリ筐体33の筐体前部35を確実に支持することができる。
【0154】
また、バッテリ筐体33の筐体後部34が固定される高剛性部位、及び筐体前部35が固定される高剛性部位は、上述した高剛性部位に限定せず、周囲に比べて高剛性な部位であれば適宜の部位であってもよい。
【0155】
例えば車幅方向または車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面となる部位ではなく、複数のパネル部材を重ね合わせた高剛性部位であってもよい。なお、バッテリ筐体33が固定される高剛性部位は、衝突荷重を伝達する荷重伝達経路となる部位、あるいは車体骨格部材であることが望ましい。
【0156】
また、筐体前部35の上面が筐体後部34の上面に対して下方に位置するバッテリ筐体33としたが、これに限定せず、筐体後部34の上面と筐体前部35の上面とが略同じ上下方向の位置に位置するバッテリ筐体33であってもよい。
【0157】
この構成によれば、後輪からの入力荷重に対するバッテリ筐体33の剛性を確保することができる。
【0158】
具体的には、バッテリ筐体33は、筐体前部35における車幅方向の長さが筐体後部34よりも短くなるため、後輪からの入力荷重によって、筐体後部34と筐体前部35との境界近傍に意図しない荷重が加わるおそれがある。
【0159】
そこで、筐体後部34と筐体前部35との境界近傍における上面を略平坦な形状にすることで、車室構造は、筐体後部34と筐体後部34との境界近傍で変形が生じることを防止できる。
これにより、車室構造は、後輪からの入力荷重に対するバッテリ筐体33の剛性を確保できるため、車体を補強するフレーム部材としてバッテリ筐体33を確実に機能させることができる。
【0160】
また、バッテリ筐体33の構成は上述した実施例1及び実施例2に限定せず、例えば後席センターコンソール21が固定されるコンソール固定部、あるいは車載機器が固定される機器固定部を備えたバッテリ筐体33であってもよい。
【符号の説明】
【0161】
1…電動車両
2…ダッシュパネル
3…サイドシル
4…リヤサイドフレーム
5…フロントフロアパネル
6…リヤフロアパネル
9…第2フロアクロスメンバ
9b…第2内側取付部
12…ダッシュクロスメンバ
13…ダンパ支持部材
17…締結ブラケット
31…第1バッテリ
32…第2バッテリ
33…バッテリ筐体
34…筐体後部
35…筐体前部
51…フロアパネル前部
51a…トンネル部
S2…後席
R1…客室
R2…荷室
図1
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図10